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▶ 株式会社三和商会の特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022024250
(43)【公開日】2022-02-09
(54)【発明の名称】卵殻複合樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20220202BHJP
   C08K 3/00 20180101ALI20220202BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20220202BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20220202BHJP
   C08K 5/092 20060101ALI20220202BHJP
   C08K 5/098 20060101ALI20220202BHJP
   C08L 101/16 20060101ALN20220202BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K3/00
C08K3/04
C08K3/36
C08K5/092
C08K5/098
C08L101/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020119859
(22)【出願日】2020-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】509119049
【氏名又は名称】株式会社三和商会
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】特許業務法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】角谷 雅和
(72)【発明者】
【氏名】船谷 和宏
(72)【発明者】
【氏名】山崎 周一
(72)【発明者】
【氏名】角谷 知洋
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 毅
(72)【発明者】
【氏名】青木 久典
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 賢一
【テーマコード(参考)】
4J002
4J200
【Fターム(参考)】
4J002AA001
4J002AB021
4J002BB021
4J002BB111
4J002BE021
4J002BF031
4J002BN151
4J002CF001
4J002CF031
4J002CF051
4J002CF181
4J002CL001
4J002DA017
4J002DJ017
4J002DM006
4J002EF067
4J002EG047
4J002FD016
4J002FD207
4J200AA04
4J200BA12
4J200BA13
4J200BA14
4J200BA19
4J200BA20
4J200BA25
4J200BA38
4J200EA21
(57)【要約】      (修正有)
【課題】卵殻の配合率を高くしても悪臭を発生せず、さらに造粒性に優れる卵殻複合樹脂組成物を提供する。
【解決手段】樹脂成分と卵殻粉末とを50:50~10:90の重量比で含み、前記卵殻粉末の臭い成分である硫化水素を除去する消臭成分をさらに含む、卵殻粉末樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂成分と卵殻粉末とを50:50~10:90の重量比で含み、
前記卵殻粉末の臭い成分である硫化水素を除去する消臭成分をさらに含む、
卵殻粉末樹脂組成物。
【請求項2】
前記消臭成分は、焼成貝殻の粉末を含む請求項1に記載の卵殻粉末樹脂組成物。
【請求項3】
前記消臭成分は、活性炭、シリカゲル及びゼオライトのうち少なくとも一つを含む請求項1又は請求項2に記載の卵殻粉末樹脂組成物。
【請求項4】
クエン酸及び珈琲エキスの少なくとも一方を含むことにより前記臭い成分をマスキングする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の卵殻粉末樹脂組成物。
【請求項5】
ステアリン酸亜鉛を0.2~1.0重量%の範囲で配合する請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の卵殻粉末樹脂組成物。
【請求項6】
前記消臭成分は、前記卵殻粉末に対し、比重が1.5~3.0の範囲で重く設定されている請求項1に記載の卵殻粉末樹脂組成物。
【請求項7】
前記消臭成分は、前記卵殻粉末に対し、平均粒径が1.0~3.2の範囲で大きく設定されている請求項6に記載の卵殻粉末樹脂組成物。
【請求項8】
前記卵殻粉末は、卵殻膜を30%以上除去したものである請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の卵殻粉末樹脂組成物。
【請求項9】
前記樹脂成分は、生分解性を有するものである請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の卵殻粉末樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、卵殻粉末を樹脂に充填した卵殻複合樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂の補強性、耐熱性、加工性、経済性等の諸特性を向上させる目的で充填される充填剤の一つとして、鉱物由来の炭酸カルシウムが広く用いられている(例えば、特許文献1)。この充填剤目的の炭酸カルシウムは、国内で豊富に産出される石灰石を機械的に粉砕したり、化学的に合成されたりして生産される。
【0003】
一方において、食品廃棄物として大量に廃棄される卵殻は、炭酸カルシウムを94重量%(その他、炭酸マグネシウム、リン酸カルシウム、微量の有機物や水)を含んでいる。このため、この卵殻を粉末にして、鉱物由来の炭酸カルシウムに代替して、樹脂の充填剤に利用することが検討されている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6661155号公報
【特許文献2】特開2020-084033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、卵殻粉末を樹脂に配合すると、成型工程の加熱により、卵殻膜ならびに卵殻内部に含有されるたんぱく質から硫化水素が発生し、硫黄に似た卵殻特有の悪臭が発生し、使用時ならびに成形時に不快感をもたらす。またこの卵殻粉末のいびつな粒子形状より流動性は著しく悪化し造粒性が悪化する。
【0006】
本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、卵殻の配合率を高くしても悪臭を発生せず、さらに造粒性に優れる卵殻複合樹脂組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る卵殻粉末樹脂組成物は、樹脂成分と卵殻粉末とを50:50~10:90の重量比で含み、前記卵殻粉末の臭い成分である硫化水素を除去する消臭成分をさらに含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、卵殻の配合率を高くしても悪臭を発生せず、さらに造粒性に優れる卵殻複合樹脂組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を説明する。
本実施形態で適用される卵殻は、供給、品質及び価格の安定性の観点から、飼養されているニワトリ、ウズラ等のものを利用することが望ましいが、適用することができる卵殻は、これらに限定されるものではない。
【0010】
卵殻は、洗浄、卵殻膜の除去、乾燥、粉砕などの一連の作業を経て卵殻粉末となる。なお、卵殻膜の除去は30%以上することが望ましい。その理由は、卵殻膜は、硫黄分を含有するケラチンを主成分とするたんぱく質からなるため、硫化水素を発生して悪臭の発生源になるからである。
【0011】
卵殻粉末は、卵殻を90~120℃で乾燥させた後に粉砕することもできるが、800℃以上の温度で焼成してから粉砕させてもよい。粉砕した卵殻粉末は、必要に応じて所定のメッシュ数のフルイで分級して、平均粒径及び粒度分布を0.1μm~100μmの範囲で適切に調整する。
【0012】
消臭成分は、硫化水素を吸着し、卵殻粉末の臭い成分を除去するもので、具体的には焼成貝殻の粉末を使用することができる。この焼成貝殻の粉末は、貝殻を800℃以上の温度で焼成してから粉砕する。また消臭成分として、活性炭、シリカゲル及びゼオライトを使用することもできる。これら消臭成分は、一種類もしくは複数の組み合わせで使用することができる。これら消臭剤は、臭い成分である硫化水素を吸着する吸着型の消臭剤である。これら消臭剤は、複合樹脂組成物を成型した後、成型品の表面に析出し、内部から発生した臭い成分を取り込み、消臭効果を高めることができる。
【0013】
なお消臭成分は、卵殻粉末に対し、比重が1.5~3.0の範囲で重く設定されていることが望ましい。これにより、消臭成分が成形品の表面に析出し易くなり、消臭効果をさらに高めることができる。
【0014】
また消臭成分は、所定のメッシュ数のフルイで分級することにより、その平均粒径の比率を、卵殻粉末に対し1.0~3.2の範囲で大きく設定されることが望ましい。これにより、さらに消臭成分が成形品の表面に析出し易くなり、消臭効果をさらに高めることができる。
【0015】
樹脂成分は、上述した卵殻粉末及び消臭成分と共に溶融混錬することができる熱可塑性樹脂である。具体的には、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)を含むポリエチレンと、エチレンビニルアセテート(EVA)と、ポリビニルアルコール(PVA)と、ポリプロピレン(PP)、ABS、ナイロン、ポリエステル等といった、汎用プラスチック及びエンジニアリングプラスチックを採用することができる。
【0016】
また樹脂成分として、自然界の微生物によって完全に消費され最終的に水と二酸化炭素に分解される生分解性プラスチックを採用することができる。そのような生分解性プラスチックとして、具体的には、ポリ乳酸(PLA)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)、ポリブチレンサクシネートカーボネート(PEC)、ポリエチレンテレフタレート/サクシネート(PETS)、ポリブチレンアジペート/テレフタレート(PBAT)、ポリエチレンサクシネート(PES)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリヒドロキシブチレート(PHB)、酢酸セルロース(CA)等が挙げられる。
【0017】
また、そのような生分解性プラスチックとして、バイオマスの配合度を高めた、市販品を採用することができる。具体的には、ブラスケム社のバイオポリエチレン(商標)、ネイチャーワークスのIngeo PLA(商標)、三菱ケミカルのバイオPBS(商標)等が挙げられる。
【0018】
そして、卵殻粉末と樹脂成分は、50:50~10:90の重量比で混合され加熱され溶融混練される。なお卵殻粉末の含量比率が高い程、得られる卵殻粉末樹脂組成物の諸物性(例えば、引張強度、伸率、衝撃強度など)が低下する場合がある。このような物性の低下を抑制するために、可塑剤を配合する場合がある。配合される可塑剤の種類に特に制限はなく、公知の一般的なものを採用することができる。また配合量についても、所望する物性が得られるように調整される。さらに卵殻粉末樹脂組成物には、経時劣化を抑制するための公知の安定剤を配合してもよい。
【0019】
さらに卵殻粉末樹脂組成物は、クエン酸及び珈琲エキスの少なくとも一方を配合することにより、臭い成分(硫化水素)をマスキングすることができる。卵殻粉末樹脂組成物におけるマスキング剤の配合量は、0.2~20.0重量%の範囲となるように設定される。
【0020】
さらに卵殻粉末樹脂組成物は、ステアリン酸亜鉛を配合することにより、溶融混錬時の流動性を向上させて、卵殻粉末及び消臭成分を凝集させることなく樹脂マトリックスに微細に均一に分散させることができる。卵殻粉末樹脂組成物におけるステアリン酸亜鉛の配合量は、0.2~1.0重量%の範囲となるように設定される。
【0021】
<製造方法>
卵殻複合樹脂組成物の製造は、一般的な押出機を用いておこなうことができる。この押出機を、樹脂の溶融温度に設定し、所定の比率で混合させた樹脂成分、卵殻粉末、消臭成分を、その上流側から投入する(適宜、可塑剤、安定剤、マスキング剤等を含める)。溶融混練が完了した後は、押出機の下流の吐出口から吐出させ、冷却固化させた後に造粒(ペレット化)する。
【0022】
このようにペレット化された卵殻粉末樹脂組成物は、出荷され市場に流通した後、再溶融され成型され、成型品に形を変えた卵殻粉末樹脂組成物となる。このように、卵殻粉末を樹脂に充填した複合樹脂組成物において、消臭剤が配合されていることにより、卵殻から発生する硫化水素等の悪臭を効果的に抑制できる。さらにステアリン酸亜鉛等の消臭成分が含まれることによって混練時の流動性が高まり卵殻粉末及び消臭成分の微細分散化が促進され悪臭の抑制効果、並びに造粒性が向上する。