(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022024259
(43)【公開日】2022-02-09
(54)【発明の名称】ローラー塗装用、ロール塗装用、刷毛塗装用またはヘラ塗装用の塗料組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 201/00 20060101AFI20220202BHJP
C09D 7/43 20180101ALI20220202BHJP
B05D 1/28 20060101ALN20220202BHJP
【FI】
C09D201/00
C09D7/43
B05D1/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020120052
(22)【出願日】2020-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】000230054
【氏名又は名称】日本ペイントホールディングス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】515096952
【氏名又は名称】日本ペイント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100179866
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 正樹
(72)【発明者】
【氏名】石田 聡
(72)【発明者】
【氏名】川上 晋也
【テーマコード(参考)】
4D075
4J038
【Fターム(参考)】
4D075AC48
4D075AC49
4D075AC96
4D075DA06
4D075DB01
4D075DB12
4D075DB13
4D075DB31
4D075DC02
4D075DC03
4D075DC08
4D075DC11
4D075DC12
4D075DC13
4D075DC21
4D075DC31
4D075DC38
4D075DC50
4D075EA06
4D075EA14
4D075EB07
4D075EB16
4D075EB22
4D075EB32
4D075EB33
4D075EB35
4D075EB37
4D075EB38
4D075EB42
4D075EC11
4D075EC13
4D075EC33
4J038CG031
4J038CG141
4J038CH031
4J038CH121
4J038CH151
4J038KA08
4J038MA08
4J038MA10
4J038MA15
4J038NA01
4J038PA15
4J038PC04
(57)【要約】
【課題】塗料筋およびタレを抑制し、外観に優れた塗膜を形成可能な、塗料組成物を提供すること。
【解決手段】ローラー塗装用、ロール塗装用、刷毛塗装用またはヘラ塗装用の塗料組成物であって、前記塗料組成物に23℃でせん断速度1000s
-1のせん断変形を30秒間かけた直後、せん断速度0.01s
-1のせん断変形を5秒間かけたときの粘度η1が、40Pa・s以下であり、前記塗料組成物の23℃での貯蔵弾性率が、50Pa以上であり、かつ、前記塗料組成物の23℃、せん断速度0.01s
-1でのせん断変形の定常流測定での粘度の定常値η2が、50Pa・s以上である、ローラー塗装用、ロール塗装用、刷毛塗装用またはヘラ塗装用の塗料組成物。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローラー塗装用、ロール塗装用、刷毛塗装用またはヘラ塗装用の塗料組成物であって、
前記塗料組成物に23℃でせん断速度1000s-1のせん断変形を30秒間かけた直後、せん断速度0.01s-1のせん断変形を5秒間かけたときの粘度η1が、40Pa・s以下であり、
前記塗料組成物の23℃での貯蔵弾性率が、50Pa以上であり、かつ、
前記塗料組成物の23℃、せん断速度0.01s-1でのせん断変形の定常流測定での粘度の定常値η2が、50Pa・s以上である、
ローラー塗装用、ロール塗装用、刷毛塗装用またはヘラ塗装用の塗料組成物。
【請求項2】
前記粘度の定常値η2が、50~500Pa・sである、請求項1に記載のローラー塗装用、ロール塗装用、刷毛塗装用またはヘラ塗装用の塗料組成物。
【請求項3】
前記粘度η1が、3~40Pa・sである、請求項1または2に記載のローラー塗装用、ロール塗装用、刷毛塗装用またはヘラ塗装用の塗料組成物。
【請求項4】
前記貯蔵弾性率が、50~400Paである、請求項1~3のいずれか一項に記載のローラー塗装用、ロール塗装用、刷毛塗装用またはヘラ塗装用の塗料組成物。
【請求項5】
樹脂成分と粘性調整剤とを含み、
前記粘性調整剤が、アルカリ膨潤型粘性調整剤、ウレタン会合型粘性調整剤およびセルロース系粘性調整剤からなる群より選択される1種以上である、請求項1~4のいずれか一項に記載のローラー塗装用、ロール塗装用、刷毛塗装用またはヘラ塗装用の塗料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ローラー塗装用、ロール塗装用、刷毛塗装用またはヘラ塗装用の塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ローラー、ロール、刷毛、ヘラなどの塗装具を用いる塗装では、スプレーを用いるスプレー塗装と異なり、塗料を保持した塗装具と被塗物とが接触し、塗装具または被塗物が他方に対して移動することによって、塗装が行われる。
【0003】
本発明者らは、特許文献1で塗装作業性に優れ、かつ塗料の塗り感が良好な塗料組成物を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らが特許文献1の塗料組成物をさらに検討したところ、被塗物と接触するローラーなどの塗装具を用いる塗装では、例えば、
図2に示すように、得られた塗膜に塗料の筋(ローラーによる塗料の筋の場合はローラーマークともいう)が生じ、塗膜の外観に劣る場合があることがわかった。
【0006】
また、垂直または傾斜した面に塗装した塗膜では、塗料の筋(以下、「塗料筋」という)だけでなく、塗料のタレ(塗膜の乾燥までの間に塗料が下方に移動して起こる局所的な膜厚の異常)も塗膜の外観を低下させるため、塗料のタレも抑制する必要がある。
【0007】
そこで、本発明は、塗料筋およびタレを抑制し、外観に優れた塗膜を形成可能な、塗料組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る塗料組成物は、
ローラー塗装用、ロール塗装用、刷毛塗装用またはヘラ塗装用の塗料組成物であって、
前記塗料組成物に23℃でせん断速度1000s-1のせん断変形を30秒間かけた直後、せん断速度0.01s-1のせん断変形を5秒間かけたときの粘度η1が、40Pa・s以下であり、
前記塗料組成物の23℃での貯蔵弾性率が、50Pa以上であり、かつ、
前記塗料組成物の23℃、せん断速度0.01s-1でのせん断変形の定常流測定での粘度の定常値η2が、50Pa・s以上である、
ローラー塗装用、ロール塗装用、刷毛塗装用またはヘラ塗装用の塗料組成物である。これにより、塗料筋およびタレを抑制し、外観に優れた塗膜を得ることができる。
【0009】
本発明に係る塗料組成物の一実施形態では、前記粘度の定常値η2が、50~500Pa・sである。
【0010】
本発明に係る塗料組成物の一実施形態では、前記粘度η1が、3~40Pa・sである。
【0011】
本発明に係る塗料組成物の一実施形態では、前記貯蔵弾性率が、50~400Paである。
【0012】
本発明に係る塗料組成物の一実施形態では、ローラー塗装用、ロール塗装用、刷毛塗装用またはヘラ塗装用の塗料組成物は、樹脂成分と粘性調整剤とを含み、
前記粘性調整剤が、アルカリ膨潤型粘性調整剤、ウレタン会合型粘性調整剤およびセルロース系粘性調整剤からなる群より選択される1種以上である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、塗料筋およびタレを抑制し、外観に優れた塗膜を形成可能な、塗料組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、実施例5の塗膜の外観を示した図である。
【
図2】
図2は、比較例2の塗膜の外観を示した図である。
【
図3】
図3は、従来の塗料を用いたローラー塗装時の塗料筋の形成過程を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について説明する。これらの記載は、本発明の例示を目的とするものであり、本発明を何ら限定するものではない。
【0016】
本発明において、2以上の実施形態を任意に組み合わせることができる。
【0017】
本発明において、塗料と塗料組成物は相互互換的に用いることができる。
【0018】
本明細書において、数値範囲は、別段の記載がない限り、その範囲の上限値および下限値を含むことを意図している。例えば、50~500Pa・sは、50Pa・s以上500Pa・s以下を意味する。
【0019】
本発明において、塗料組成物に23℃でせん断速度1000s-1のせん断変形を30秒間かけた直後、せん断速度0.01s-1のせん断変形を5秒間かけたときの粘度η1は、実施例に記載の方法により求める。
【0020】
本発明において、塗料組成物の23℃での貯蔵弾性率は、実施例に記載の方法により求める。
【0021】
本発明において、塗料組成物の23℃、せん断速度0.01s-1でのせん断変形の定常流測定での粘度の定常値η2は、実施例に記載の方法により求める。
【0022】
(塗料組成物)
本発明に係る塗料組成物は、
ローラー塗装用、ロール塗装用、刷毛塗装用またはヘラ塗装用の塗料組成物であって、
前記塗料組成物に23℃でせん断速度1000s-1のせん断変形を30秒間かけた直後、せん断速度0.01s-1のせん断変形を5秒間かけたときの粘度η1が、40Pa・s以下であり、
前記塗料組成物の23℃での貯蔵弾性率が、50Pa以上であり、かつ、
前記塗料組成物の23℃、せん断速度0.01s-1でのせん断変形の定常流測定での粘度の定常値η2が、50Pa・s以上である、
ローラー塗装用、ロール塗装用、刷毛塗装用またはヘラ塗装用の塗料組成物である。
【0023】
本発明者らは、ローラーなどを用いた塗装による塗料筋と塗膜の外観との関係について調べたところ、塗料筋の高さが低いほど、塗料筋が塗膜の観察者に視認されにくく、塗膜の観察者は塗膜の外観が良いと評価することがわかった。
【0024】
図3は、従来の塗料を用いたローラー塗装時の塗料筋の形成過程を示した模式図である。本発明者らが塗料筋をさらに調べたところ、塗料筋は
図3のA~Eのように形成されることがわかった。まず、垂直方向の面1に対してローラー2を下側に引いて塗装を行う場合、ローラー2と面1とが離れつつある部分では、塗料の液膜3が発生する(
図3のA)。ローラー2が下方に移動すると、その液膜3の一部が破れて空隙4が生ずる(
図3のB)。さらにローラー2が移動すると、空隙4が大きくなり、糸状の塗料糸5になる(
図3のC)。さらにローラー2が移動すると、塗料糸5が破断する(
図3のD)。そして、破断した塗料糸5が塗膜6上に残り、塗料筋7が形成される(
図3のE)。
【0025】
この観察結果から、本発明者らは、当初、乾燥前の塗膜と塗料筋とを形成している塗料組成物の粘度に相当する、せん断速度0.01s-1でのせん断変形の定常流測定での粘度を低くして、塗料筋のレベリングを促進することで塗料筋の高さを低くし、塗膜の外観を向上することができると考えた。しかし、上記定常流測定での粘度を低くすると、塗料筋の高さは低くなるが、塗膜が乾燥する前に塗料組成物がタレてしまい、塗膜の外観を低下させることがわかった。
【0026】
これらの結果に基づき、次に本発明者らは、以下の(1)および(2)が、塗料筋の高さを低くし、そして以下の(3)が塗料組成物のタレを抑制するのに有効であろうと推測した:
(1)塗料筋の粘度を低くして、塗料筋のレベリングを促進する。
(2)塗料筋の長さを短くして、塗料筋の表面積(表面自由エネルギー)を大きくすることで、塗料筋のレベリングを促進する。
(3)塗料筋の粘度ではなく、乾燥前の塗膜と塗料筋とを形成している塗料組成物の粘度を高くする。
【0027】
上記(1)について、塗装直後の短い時間(例えば、約5秒)における塗料筋は、塗装前の塗料とは異なり、
図3のC~Eに示したように、ローラー(塗装具)による一定以上のせん断速度によって塗料の分子鎖の絡み合いが少なくなるなどミクロな構造が壊れた状態(
図3E)であると考えられる。そのため、この状態における塗料筋の粘度を想定して、本発明者らは、塗料組成物に23℃でせん断速度1000s
-1のせん断変形を30秒間かけた直後、せん断速度0.01s
-1のせん断変形を5秒間かけたときの粘度η1(以下、単に「粘度η1」ということがある)を設定した。塗料にせん断速度1000s
-1のせん断変形を30秒間かけることで、塗装具による塗装で破断した塗料糸(例えば、
図3のD)の状態となり、そしてこの30秒間の直後に塗料組成物にさらにせん断速度0.01s
-1のせん断変形を5秒間かける(前記30秒経過した時点で0.01s
-1のせん断速度のせん断変形を開始する)ことで、
図3のEに示した、形成直後の塗料筋の状態を再現ないし近似することができると考えられる。そして、この形成直後の塗料筋の粘度を想定した粘度η1を低くすることで、塗料筋のレベリングを促進する。
【0028】
上記(2)について、1個当たりの塗料筋の長さを短くすると、1個当たりの塗料筋の長さが長い場合よりも、その塗料筋の表面積は大きくなる。塗料筋の表面積が大きいと、塗料筋の表面自由エネルギーも大きくなるが、このとき、表面積を小さくして表面自由エネルギーを小さくしようとする力が塗料筋に働き、塗料筋のレベリングが促進されると考えられる。そこで、本発明者らは、塗料組成物の貯蔵弾性率に着目した。塗装時の塗料の液膜および塗料糸(
図3のB~
図3のD)は、弾性成分と粘性成分とを有する粘弾性体と考えることができ、弾性成分(貯蔵弾性率)を大きくすると、液膜および塗料糸の伸びが小さくなり、塗料糸とその塗料糸から生ずる塗料筋も短くなると考えられる。そして、この塗料組成物の貯蔵弾性率を高くすることで、塗料筋のレベリングを促進する。
【0029】
そして、本発明者らは、塗料組成物の粘度η1を40Pa・s以下とすること、および塗料組成物の23℃での貯蔵弾性率(以下、「貯蔵弾性率」は、特に断らない限り、23℃での値を指す)を50Pa以上とすることで、塗料筋の高さを低くすることができることを見出した。
【0030】
上述したように、塗料筋の高さが低くなるほど、塗料筋が塗膜の観察者に視認されにくくなることから、塗膜における塗料筋の目視での視認性によって塗料筋の高さを評価することができる。また、本発明者らは、塗料筋の高さを定量化することについても検討した。まず、塗膜を有する塗装板を机上に水平に置く;次に、塗膜表面に塗装板の真横から光を照射し、塗膜に対して正面方向からデジタルカメラで塗膜表面を撮影する;次に、得られた画像の塗膜表面の輝度を数値化する(塗料筋の高さが高い場所では輝度が高く、塗料筋がない場所および塗膜表面が平坦な場所では輝度が低い);そして、得られた数値から、塗料筋の高さに相当する値を算出する。この定量化した方法によっても、塗料筋の高さに相当する値が高い場合は、塗膜の外観に劣ることがわかった。また、塗膜を目視で観察した場合と、塗料筋の高さを定量化した場合で、塗料筋についての塗膜の外観の評価結果はほぼ同じであることもわかった。そのため、目視での塗膜の観察は、塗料筋の高さの定量化に比べて非常に簡便ながら、十分な塗料筋の高さの評価が可能であることもわかった。
【0031】
上記(3)について、塗料組成物のタレは、塗装後かつ塗膜の乾燥前の塗料組成物の下方への移動であるため、形成直後の短い時間における塗料筋の粘度ではなく、塗装後のせん断変形がほとんどなく安定しているが乾燥していない塗膜と塗料筋とを形成している塗料組成物の粘度を高くすることで、塗料組成物のタレを抑制することができると考えられる。本発明者らは、この塗装後の安定しているが乾燥していない塗料組成物の粘度は、上記粘度η1よりもさらに時間が経過し、粘度が定常値となったときの粘度で表すことができること、および、塗料組成物の23℃、せん断速度0.01s-1でのせん断変形の定常流測定での粘度の定常値η2を50Pa・s以上とすることで、塗料組成物のタレを抑制することができることを見出した。
【0032】
本発明の塗料組成物の粘度η1は、40Pa・s以下である。粘度η1が40Pa・sより高いと、塗料筋の高さを十分に低くすることができず、外観に優れた塗膜を得られない。本発明の塗料組成物の粘度η1は、例えば、1~40Pa・sである。本発明の塗料組成物の一実施形態では、粘度η1は、40Pa・s以下、35Pa・s以下、30Pa・s以下、25Pa・s以下、20Pa・s以下、15Pa・s以下、10Pa・s以下、7Pa・s以下、5Pa・s以下または3Pa・s以下である。本発明の塗料組成物の別の実施形態では、粘度η1は、1Pa・s以上、3Pa・s以上、5Pa・s以上、7Pa・s以上、10Pa・s以上、15Pa・s以上、20Pa・s以上、25Pa・s以上、30Pa・s以上または35Pa・s以上である。本発明の塗料組成物のさらに別の実施形態では、粘度η1は、5~40Pa・sである。
【0033】
本発明に係る塗料組成物の一実施形態では、前記粘度η1が、3~40Pa・sである。
【0034】
本発明の塗料組成物の粘度η1を低くするためには、例えば、後述する粘性調整剤として、分子量の小さいものを用いる方法が挙げられる。分子量の小さい粘性調整剤としては、例えば、ADEKA社製のUH-140S、UH-752、UH-420、UH-472などのUHシリーズ;サンノプコ社製のSN シックナー 612などのウレタン会合型粘性調整剤などが挙げられる。
【0035】
本発明の塗料組成物の貯蔵弾性率は、50Pa以上である。貯蔵弾性率が50Pa未満では、塗料筋の高さを十分に低くすることができず、外観に優れた塗膜を得られない。本発明の塗料組成物の貯蔵弾性率は、例えば、50~700Paである。本発明の塗料組成物の一実施形態では、貯蔵弾性率は、50Pa以上、60Pa以上、70Pa以上、80Pa以上、90Pa以上、100Pa以上、130Pa以上、150Pa以上、170Pa以上、200Pa以上、230Pa以上、250Pa以上、300Pa以上、350Pa以上、400Pa以上、450Pa以上、500Pa以上、550Pa以上、600Pa以上、650Pa以上または700Pa以上である。本発明の塗料組成物の別の実施形態では、貯蔵弾性率は、700Pa以下、650Pa以下、600Pa以下、550Pa以下、500Pa以下、450Pa以下、400Pa以下、350Pa以下、300Pa以下、250Pa以下、230Pa以下、200Pa以下、170Pa以下、150Pa以下、130Pa以下、100Pa以下、90Pa以下、80Pa以下、70Pa以下または60Pa以下である。本発明の塗料組成物のさらに別の実施形態では、貯蔵弾性率は、70~500Paである。
【0036】
本発明に係る塗料組成物の一実施形態では、前記貯蔵弾性率が、50~400Paである。
【0037】
本発明の塗料組成物の貯蔵弾性率を高くするためには、例えば、後述する粘性調整剤として、分子量の大きいものまたは硬い構造を有するものを用いる方法が挙げられる。このような粘性調整剤としては、例えば、サンノプコ社製のSN シックナー 630、636;中部サイデン社製のバンスター S100A;ダウケミカル社製のプライマル ASE-60 シックナーなどのアルカリ膨潤型粘性調整剤;およびダウケミカル社製のセロサイズ QP4400、52000Hなどのセルロース系粘性調整剤などが挙げられる。貯蔵弾性率を高くする場合、アルカリ膨潤型粘性調整剤よりもセルロース系粘性調整剤の方が、貯蔵弾性率を高くしやすい。
【0038】
本発明の塗料組成物の粘度の定常値η2は、50Pa・s以上である。粘度の定常値η2が50Pa・s未満では、塗料組成物のタレを十分に抑制できず、外観に優れた塗膜を得られない。本発明の塗料組成物の粘度の定常値η2は、例えば、50~1000Pa・sである。本発明の塗料組成物の一実施形態では、粘度の定常値η2は、50Pa・s以上、60Pa・s以上、70Pa・s以上、80Pa・s以上、90Pa・s以上、100Pa・s以上、150Pa・s以上、200Pa・s以上、250Pa・s以上、300Pa・s以上、350Pa・s以上、400Pa・s以上、450Pa・s以上、500Pa・s以上、550Pa・s以上、600Pa・s以上、650Pa・s以上、700Pa・s以上、750Pa・s以上、800Pa・s以上、850Pa・s以上、900Pa・s以上、950Pa・s以上または1000Pa・s以上である。本発明の塗料組成物の別の実施形態では、粘度の定常値η2は、1000Pa・s以下、950Pa・s以下、900Pa・s以下、850Pa・s以下、800Pa・s以下、750Pa・s以下、700Pa・s以下、650Pa・s以下、600Pa・s以下、550Pa・s以下、500Pa・s以下、450Pa・s以下、400Pa・s以下、350Pa・s以下、300Pa・s以下、250Pa・s以下、200Pa・s以下、150Pa・s以下、100Pa・s以下、90Pa・s以下、80Pa・s以下、70Pa・s以下または60Pa・s以下である。本発明の塗料組成物のさらに別の実施形態では、粘度の定常値η2は、80~400Pa・sである。
【0039】
本発明に係る塗料組成物の一実施形態では、前記粘度の定常値η2が、50~500Pa・sである。
【0040】
本発明の塗料組成物の粘度の定常値η2を高くするためには、例えば、後述する粘性調整剤として、分子量の大きいものを用いる方法が挙げられる。分子量の大きい粘性調整剤としては、例えば、サンノプコ社製のSN シックナー 630、636;中部サイデン社製のバンスター S100A;ダウケミカル社製のプライマル ASE-60 シックナーなどのアルカリ膨潤型粘性調整剤;およびダウケミカル社製のセロサイズ QP4400、52000Hなどのセルロース系粘性調整剤などが挙げられる。
【0041】
本発明の塗料組成物の好適な一実施形態では、粘度η1が、0.1~10Pa・sであり、貯蔵弾性率が、200~500Paであり、かつ、粘度の定常値η2が、200~400Pa・sである。本発明の塗料組成物の好適な別の実施形態では、粘度η1が、5~40Pa・sであり、貯蔵弾性率が、70~500Paであり、かつ、粘度の定常値η2が、80~400Pa・sである。
【0042】
本発明の塗料組成物は、典型的には、樹脂成分、粘性調整剤、顔料、ならびに水および/または溶剤を含む。塗料組成物は、架橋剤、その他の成分を含んでいてもよい。
【0043】
・樹脂成分
樹脂成分は塗膜形成要素としての働きを有する。樹脂成分としては、従来公知の塗料組成物の樹脂成分を用いることができる。樹脂成分としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテル樹脂などを挙げることができる。また、樹脂成分として、例えば、シリコーン樹脂、アルコキシシラン縮合物などの、無機成分を含む、または、無機成分からなる高分子化合物を用いることもできる。樹脂成分は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0044】
樹脂成分は、有機溶剤形、水性形(水溶性、水分散性もしくはエマルション)、または非水分散形のいずれでもよい。
【0045】
樹脂成分を用いた塗料組成物は、例えば、一液形でもよいし、主剤および硬化剤から構成される二液混合形でもよく、三液混合形以上の多成分混合形であってもよい。
【0046】
樹脂成分は、加熱により、または常温で硬化反応を進行させることができる。
【0047】
樹脂成分の含有量は、特に限定されず、適宜調節すればよい。一実施形態では、樹脂成分の固形分と顔料の固形分との合計100質量部に対して、樹脂成分の固形分が10~90質量部または10~60質量部である。
【0048】
・粘性調整剤
本発明では、塗料組成物の粘度η1、貯蔵弾性率および粘度の定常値η2を調節するために公知の粘性調整剤を用いてもよい。粘性調整剤としては、例えば、アルカリ膨潤型粘性調整剤、ウレタン会合型粘性調整剤、セルロース系粘性調整剤、アマイド系粘性調整剤、無機層状化合物系粘性調整剤およびアミノプラスト系粘性調整剤などが挙げられる。
【0049】
アルカリ膨潤型粘性調整剤としては、例えば、ポリカルボン酸系粘性調整剤、ポリスルホン酸系粘性調整剤、ポリリン酸系粘性調整剤などが挙げられる。
【0050】
アルカリ膨潤型粘性調整剤の市販品としては、例えば、サンノプコ社製のSN シックナー 615、630、636、640などのSN シックナーシリーズ;ダウケミカル社製のプライマル ASE-60 シックナーなどのプライマルシリーズ;中部サイデン社製のバンスター S100Aなどが挙げられる。一実施形態では、アルカリ膨潤型粘性調整剤は、SN シックナー 630、636、バンスター S100Aおよびプライマル ASE-60 シックナーからなる群より選択される1種以上である。
【0051】
ウレタン会合型粘性調整剤としては、例えば、ウレタン変性ポリエーテル型粘性調整剤などが挙げられる。
【0052】
ウレタン会合型粘性調整剤の市販品としては、例えば、ADEKA社製のアデカノール(登録商標) UH-140S、420、450、472、526、540、550、752などのアデカノール(登録商標) UHシリーズ;サンノプコ社製のSN シックナー 612、665Tなどが挙げられる。一実施形態では、ウレタン会合型粘性調整剤は、アデカノール(登録商標) UH-140S、420、472、752およびSN シックナー 612からなる群より選択される1種以上である。
【0053】
セルロース系粘性調整剤としては、例えば、結晶セルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース系粘性調整剤などが挙げられる。
【0054】
セルロース系粘性調整剤の市販品としては、例えば、旭化成社製のセオラス(登録商標)RCシリーズなどのセオラス(登録商標)シリーズ;ダウケミカル社製のセロサイズ QP 4400、52000Hなどのセロサイズシリーズが挙げられる。一実施形態では、セルロース系粘性調整剤は、セロサイズ QP 4400およびセロサイズ QP 52000Hからなる群より選択される1種以上である。
【0055】
アマイド系粘性調整剤としては、例えば、脂肪酸アマイド、ポリアマイド、アクリルアマイド、長鎖ポリアミノアマイド、アミノアマイドおよびこれらの塩(例えばリン酸塩)などが挙げられる。
【0056】
無機層状化合物系粘性調整剤として、例えば、モンモリロナイト、ベントナイト、クレーなどの層状化合物が挙げられる。
【0057】
アミノプラスト系粘性調整剤としては、例えば、疎水変性エトキシレートアミノプラスト系会合型粘性調整剤などが挙げられる。
【0058】
粘性調整剤は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0059】
本発明に係る塗料組成物の一実施形態では、粘性調整剤が、アルカリ膨潤型粘性調整剤、ウレタン会合型粘性調整剤およびセルロース系粘性調整剤からなる群より選択される1種以上である。
【0060】
本発明に係る塗料組成物の一実施形態では、ローラー塗装用、ロール塗装用、刷毛塗装用またはヘラ塗装用の塗料組成物は、樹脂成分と粘性調整剤とを含み、
前記粘性調整剤が、アルカリ膨潤型粘性調整剤、ウレタン会合型粘性調整剤およびセルロース系粘性調整剤からなる群より選択される1種以上である。
【0061】
本発明の塗料組成物における粘性調整剤の含有量は、特に限定されず、適宜調節すればよい。
【0062】
本発明の塗料組成物における粘性調整剤の固形分量は、例えば、塗料組成物100質量部に対して、0.1~3.0質量部または0.5~2.0質量部である。本発明の塗料組成物の一実施形態では、粘性調整剤の固形分量は、塗料組成物100質量部に対して、0.1質量部以上、0.3質量部以上、0.5質量部以上、0.6質量部以上、0.7質量部以上、0.8質量部以上、0.9質量部以上、1.0質量部以上、1.2質量部以上、1.4質量部以上、1.6質量部以上、1.8質量部以上、2.0質量部以上、2.2質量部以上、2.4質量部以上、2.6質量部以上、2.8質量部以上または3.0質量部以上である。本発明の塗料組成物の別の実施形態では、粘性調整剤の固形分量は、塗料組成物100質量部に対して、3.0質量部以下、2.8質量部以下、2.6質量部以下、2.4質量部以下、2.2質量部以下、2.0質量部以下、1.8質量部以下、1.6質量部以下、1.4質量部以下、1.2質量部以下、1.0質量部以下、0.9質量部以下、0.8質量部以下、0.7質量部以下、0.6質量部以下、0.5質量部以下または0.3質量部以下である。なお、本発明では、「塗料組成物100質量部」は、樹脂成分、顔料成分、粘性調整剤などにおける固形分に加えて、これらの分散媒;水および/または溶剤を含む塗料組成物全体の100質量部を意味する。
【0063】
・架橋剤
塗料組成物は架橋剤を含むことができる。架橋剤は、上記樹脂成分の有する硬化性官能基に応じて選択することができる。例えば、架橋剤としては、カルボジイミド化合物、ヒドラジン化合物、アミノ樹脂、(ブロック)ポリイソシアネート化合物、アミン系化合物、ポリアミド系化合物および多価カルボン酸化合物などが挙げられる。架橋剤は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0064】
・顔料
顔料は、特に限定されず、公知の塗料用顔料を用いることができる。顔料としては、例えば、二酸化チタン、カーボンブラック、弁柄、フタロシアニンブルーなどの着色顔料;炭酸カルシウム、タルク、マイカなどの体質顔料;防錆顔料などが挙げられる。顔料は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0065】
本発明の塗料組成物は、水性塗料組成物または溶剤系塗料組成物のいずれでもよい。一実施形態では、本発明の塗料組成物は、水性塗料組成物である。別の実施形態として、JIS A 6909の規定を満たす塗料組成物である。
【0066】
本発明では、塗料組成物中の含有量が最も多い分散媒が、水であるものを水性塗料組成物という。本発明では、塗料組成物中の含有量が最も多い分散媒が、溶剤であるものを溶剤系塗料組成物という。
【0067】
本発明の塗料組成物における塗料固形分の合計量としては、適宜調節すればよく、特に限定されない。例えば、塗料固形分の合計量は、塗料組成物100質量部に対して、20~80質量部である。本発明の塗料組成物の一実施形態では、塗料固形分の合計量は、塗料組成物100質量部に対して、20質量部以上、30質量部以上、40質量部以上、50質量部以上、60質量部以上、70質量部以上または80質量部以上である。本発明の塗料組成物の別の実施形態では、塗料固形分の合計量は、塗料組成物100質量部に対して、80質量部以下、70質量部以下、60質量部以下、50質量部以下、40質量部以下、30質量部以下または20質量部以下である。
【0068】
・水
水を用いる場合、従来公知の水を適宜選択して用いることができる。水としては、例えば、水道水、蒸留水、脱イオン水、精製水などが挙げられる。
【0069】
水を用いる場合、塗料組成物の水の含有量は、適宜調節すればよい。塗料組成物の水の含有量は、例えば、塗料組成物100質量部に対して、20~80質量部である。本発明の塗料組成物の一実施形態では、塗料組成物100質量部に対して、20質量部以上、30質量部以上、40質量部以上、50質量部以上、60質量部以上、70質量部以上または80質量部以上である。本発明の塗料組成物の一実施形態では、塗料組成物100質量部に対して、80質量部以下、70質量部以下、60質量部以下、50質量部以下、40質量部以下、30質量部以下または20質量部以下である。
【0070】
・溶剤
溶剤を用いる場合、従来公知の塗料組成物の溶剤を適宜選択して用いることができる。溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、2-プロパノール、1-ブタノールなどのアルコール類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、プロピオン酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのエステル類;ジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)などのエーテル類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1、3-ブチレングリコール、ペンタメチレングリコール、1、3-オクチレングリコールなどのグリコール類;ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルフォキシド(DMSO)、N-メチルピロリドン(NMP)などのアミド類;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;ミネラルスピリット、灯油などの脂肪族炭化水素;トルエン、キシレン、メシチレン、ドデシルベンゼンなどの芳香族炭化水素;クロロホルム、ジクロロメチレンなどのハロゲン系溶媒などが挙げられる。溶剤は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0071】
本発明の塗料組成物は、常温乾燥型でもよいし、加熱乾燥型でもよい。一実施形態では、本発明の塗料組成物は、常温乾燥型である。
【0072】
本発明の塗料組成物は、1液型でもよいし、2液型でもよい。
【0073】
塗料組成物が、水性塗料組成物である場合、溶剤の含有量は、適宜調節すればよい。例えば、塗料組成物100質量部に対して、0~15質量部、好ましくは0~10質量部である。また、この場合の溶剤としては、例えば、アルコール類を用いることができる。
【0074】
・その他の成分
本発明の塗料組成物は、上述した成分以外に、分散剤、造膜助剤、凍結防止剤、架橋促進剤、硬化剤、レベリング剤、表面調整剤、消泡剤、可塑剤、防腐剤、防カビ剤、紫外線安定剤などのその他の成分を含んでいてもよい。これらその他の成分はそれぞれ、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0075】
本発明に係る塗料組成物は、ローラー塗装用、ロール塗装用、刷毛塗装用またはヘラ塗装用の塗料組成物である。ローラー塗装は、特に限定されず、手持ちローラーを用いた塗装など公知のローラー塗装であってもよい。ロール塗装は、特に限定されず、ロールコーティングなど公知のロール塗装であってもよい。ロール塗装のロールの本数は、限定されず、1本、2本、3本または4本でもよい。刷毛塗装は、特に限定されず、ずんどうばけ、丸はけ、平はけ、すじかいばけ、ブラシなどを用いた、公知の刷毛塗装であってもよい。本発明では、刷毛は、ブラシを含むものとする。ヘラ塗装は、特に限定されず、鋼べら、木べら、プラスチックへら、ナイフなど公知のヘラ塗装であってもよい。
【0076】
・塗料組成物の調製方法
塗料組成物の調製方法は、粘度η1、貯蔵弾性率および粘度の定常値η2が所定範囲内であれば、特に限定されず、上述した樹脂成分、顔料、粘性調整剤などを従来公知の方法で混合して調製することができる。また、樹脂成分と顔料を含む市販の塗料に粘性調整剤などを添加して粘度η1、貯蔵弾性率および粘度の定常値η2を所定範囲内に調節して、本発明の塗料組成物としてもよい。
【0077】
・塗膜の作製方法
塗膜の作製方法は、従来公知のローラー塗装、ロール塗装、刷毛塗装またはヘラ塗装法を用いることができる。塗料組成物を塗布した後の乾燥温度は、溶剤などに応じて適宜調節すればよい。例えば、10秒~30分などの短時間での乾燥が必要な場合には、60~200℃とすることができ、80~160℃が好ましい。また、短時間での乾燥が必要でない場合には、例えば、室温などで乾燥してもよい。
【0078】
本発明の塗料組成物を用いて塗膜を形成する対象物としては、特に限定されず、適宜選択することができる。例えば、対象物としては、自動車、鉄道車両などの車両の車体、航空機の機体、船舶の船体および上部構造物(艤装)、の内装および外装;建築物の内装、外装および屋根部;家具、建具;車両、航空機、船舶、建築物などの窓ガラス;ケース、容器、樹脂板、フィルム;ディスプレイ、モニター、冷蔵庫などの電化製品の筺体およびガラス部材;これらに塗装した塗膜;各種セメント、窯業建材、軽量発泡コンクリート、モルタル、スレート板、屋根、瓦、ALCなどの無機建材;木材;各種ガラス類;鋼板、アルミニウム、ステンレススチールなどの金属基材;などが挙げられる。
【0079】
したがって、本発明の塗料組成物を用いて形成された塗膜を有する物品としては、例えば、自動車、鉄道車両などの車両、航空機、船舶、建築物、家具、建具、窓ガラス、透明体(ケース、容器、樹脂板およびフィルムを含む)、電化製品などが挙げられる。
【実施例0080】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、これらの実施例は、本発明の例示を目的とするものであり、本発明を何ら限定するものではない。
【0081】
塗料組成物の粘度η1は、アントンパール社製の応力制御型レオメーター「MCR302」を用いて、50mmのコーンプレート、ギャップ:0.1mm、測定温度:23℃、せん断速度1000s-1のせん断変形を30秒間かけ、その直後、せん断速度=0.01-1のせん断変形を5秒間かける定常流測定を行ったときの粘度を用いた。
【0082】
塗料組成物の貯蔵弾性率は、アントンパール社製の応力制御型レオメーター「MCR302」を用いて、50mmのコーンプレート、ギャップ:0.1mm、測定温度:23℃、ひずみ:線形ひずみ、角周波数:100s-1の条件で測定して得られた貯蔵弾性率を用いた。
【0083】
塗料組成物の定常値η2は、アントンパール社製の応力制御型レオメーター「MCR302」を用いて、50mmのコーンプレート、ギャップ:0.1mm、測定温度:23℃、せん断速度0.01-1でのせん断変形の定常流測定での粘度の定常値を用いた。
【0084】
実施例で用いた塗料組成物の各成分の詳細は以下のとおりである。
水:水道水
樹脂成分:後述する調製例で調製したアクリルエマルション
白色顔料:二酸化チタン(固形分量:100%)
体質顔料:炭酸カルシウム(固形分量:100%)
添加剤:分散剤(ビックケミージャパン社製の商品名「DISPERBYK-190」)、消泡剤(共栄社化学社製の商品名「アクアレン8020」)、造膜助剤(JNC社製の商品名「CS-12」)および表面調整剤(共栄社化学社製の商品名「ポリフローKL-100」)。表1では、分散剤、消泡剤、造膜助剤および表面調整剤をまとめて添加剤と表記する。添加剤の固形分量は、50%である。
粘性調整剤1(ウレタン会合型粘性調整剤):ADEKA社製の商品名「アデカノール(登録商標)UH-140S」(固形分量:30%、表1ではUH140Sと表記)
粘性調整剤2(ウレタン会合型粘性調整剤):ADEKA社製の商品名「アデカノール(登録商標)UH-752」(固形分量:30%、表1ではUH752と表記)
粘性調整剤3(ウレタン会合型粘性調整剤):ADEKA社製の商品名「アデカノール(登録商標)UH-420」(固形分量:30%、表1ではUH420と表記)
粘性調整剤4(ウレタン会合型粘性調整剤):ADEKA社製の商品名「アデカノール(登録商標)UH-472」(固形分量:30%、表1ではUH472と表記)
粘性調整剤5(ウレタン会合型粘性調整剤):サンノプコ社製の商品名「SN シックナー 612」(固形分量:40%、表1ではSN612と表記)
粘性調整剤6(アルカリ膨潤型粘性調整剤):サンノプコ社製の商品名「SN シックナー 630」(固形分量:30%、表1ではSN630と表記)
粘性調整剤7(アルカリ膨潤型粘性調整剤):中部サイデン社製の商品名「バンスター S100A」(固形分量:28%、表1ではS100Aと表記)
粘性調整剤8(アルカリ膨潤型粘性調整剤):サンノプコ社製の商品名「SN シックナー 636」(固形分量:30%、表1ではSN636と表記)
粘性調整剤9(アルカリ膨潤型粘性調整剤):ダウケミカル社製の商品名「プライマル ASE-60 シックナー」(固形分量:28%、表1ではASE60と表記)
粘性調整剤10(セルロース系粘性調整剤):ダウケミカル社製の商品名「セロサイズ QP 4400」(固形分量:100%、表1ではQP 4400と表記)
粘性調整剤11(セルロース系粘性調整剤):ダウケミカル社製の商品名「セロサイズ QP 52000H」(固形分量:100%、表1ではQP 52000Hと表記)
【0085】
ローラーは、大塚刷毛製造社製の商品名「ウーローラーB レギュラー 4B」を用いた。スレート板は、TP技研社製の商品名「スレート板」(長さ90cm、幅45cm)を用いた。下塗り塗料として、日本ペイント社製の商品名「ニッペ水性透明シーラー」を用いた。
【0086】
(アクリルエマルションの調製例)
撹拌機、還流冷却管、温度計および窒素導入管を備えた反応器に、脱イオン水68.5質量部、およびポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸ナトリウム(花王社製の商品名「レベノールWZ」)1質量部を仕込んだ。次いで、その溶液を80℃まで昇温して保持した。次いで、その溶液に、10%濃度の過硫酸アンモニウム水溶液1質量部を添加した。次いで、その溶液に、スチレン66.0質量部、2-エチルヘキシルアクリレート28.5質量部、アクリル酸3.5質量部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート2.0質量部、アセトアセトキシエチルメタクリレート8.5質量部、n-ドデシルメルカプタン0.85質量部、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸ナトリウム(「レベノールWZ」)8質量部および脱イオン水49.4質量部からなるモノマー混合物と、2%濃度の過硫酸アンモニウム水溶液10質量部とを並行して3時間かけて滴下した。その反応容器内を80℃に保持したまま5時間撹拌を続けた。次いで、その反応容器を室温まで冷却した。次いで、その反応容器内に、25%アンモニア水2質量部およびジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート17質量部を添加して撹拌した。生成物として、固形分49質量%、体積平均粒子径0.12μmのエマルション樹脂を得た。表1ではAcEmと表記する。
【0087】
(実施例1~7および比較例1~3)
表1に示す配合(質量部)で、各成分を混合して塗料組成物を調製した。その塗料組成物について、粘度η1、貯蔵弾性率および粘度の定常値η2を測定した。その結果を表1に合わせて示す。
【0088】
(塗装板の調製)
地面に対してスレート板を垂直に立て、下塗り塗料をローラーでスレート板に塗装した。次いで、約30μmの乾燥膜厚となるように、各実施例および比較例の塗料組成物をローラーでスレート板に塗装した。そのスレート板を室温で2時間静置した。次いで、再度、約30μmの乾燥膜厚となるように、各実施例および比較例の塗料組成物をローラーでスレート板に塗装した。そのスレート板を室温で1日静置して、塗膜を有するスレート板を調製した。実施例5と比較例2の塗膜の外観をそれぞれ、
図1,
図2に示す。
【0089】
(塗膜の外観の評価)
得られた塗膜の外観について、以下に述べる方法で塗料筋の視認性と、塗料組成物のタレを評価した。
【0090】
・塗料筋の視認性
以下に示す基準で、塗料筋の目視での視認性を5人で評価し、評価の中央値を求めた。その結果を表1に合わせて示す。評点3~5が合格である。
評点5:全塗装面積における占める長さ2cm以上の塗料筋の割合が、5%未満
評点4:塗料筋の割合が、5%以上~10%未満
評点3:塗料筋の割合が、10%以上~20%未満
評点2:塗料筋の割合が、20%以上~30%未満
評点1:塗料筋の割合が、30%以上
【0091】
・塗料組成物のタレ
以下に示す基準で、塗料組成物のタレを5人で評価し、過半数の評価結果を採用した。結果を表1に合わせて示す。
合格:塗料組成物がタレていない
不合格:塗料組成物がタレている
【0092】
【0093】
表1に示すように、本発明によれば、塗料筋およびタレを抑制し、外観に優れた塗膜を形成可能な、塗料組成物を提供することができた。