(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022024295
(43)【公開日】2022-02-09
(54)【発明の名称】マスクブランク、転写用マスクの製造方法及び半導体デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 1/54 20120101AFI20220202BHJP
G03F 1/80 20120101ALI20220202BHJP
G03F 1/32 20120101ALI20220202BHJP
C23C 14/06 20060101ALN20220202BHJP
【FI】
G03F1/54
G03F1/80
G03F1/32
C23C14/06 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020121204
(22)【出願日】2020-07-15
(71)【出願人】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098268
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 豊
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(74)【代理人】
【識別番号】100150865
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 司
(72)【発明者】
【氏名】宍戸 博明
(72)【発明者】
【氏名】野澤 順
【テーマコード(参考)】
2H195
4K029
【Fターム(参考)】
2H195BA02
2H195BA07
2H195BB02
2H195BB03
2H195BB16
2H195BB35
2H195BB36
2H195BC05
2H195BC09
2H195BC24
4K029AA09
4K029AA24
4K029BA07
4K029BA11
4K029BA41
4K029BB02
4K029BD01
4K029CA06
4K029DC04
4K029DC34
4K029DC35
4K029DC39
4K029JA02
(57)【要約】
【課題】20nm程度といった微小な寸法の補助パターンを有する転写用マスクを精度良く作成することのできるマスクブランクを提供することを目的とする。
【解決手段】基板の主表面上に、パターン形成用薄膜、第1ハードマスク膜、第2ハードマスク膜がこの順に積層した構造を備えるマスクブランクであって、パターン形成用薄膜は、遷移金属を含有し、第1ハードマスク膜は、ケイ素およびタンタルから選ばれる1以上の元素と酸素とを含有し、第2ハードマスク膜は、遷移金属を含有し、第2ハードマスク膜の遷移金属の含有量は、前記パターン形成用薄膜の遷移金属の含有量よりも少なく、主表面上における第1ハードマスク膜が形成されている領域は、パターン形成用薄膜が形成されている領域よりも小さく、第2ハードマスク膜とパターン形成用薄膜は、少なくとも一部で接していることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の主表面上に、パターン形成用薄膜、第1ハードマスク膜、第2ハードマスク膜がこの順に積層した構造を備えるマスクブランクであって、
前記パターン形成用薄膜は、遷移金属を含有し、
前記第1ハードマスク膜は、ケイ素およびタンタルから選ばれる1以上の元素と酸素とを含有し、
前記第2ハードマスク膜は、遷移金属を含有し、
前記第2ハードマスク膜の遷移金属の含有量は、前記パターン形成用薄膜の遷移金属の含有量よりも少なく、
前記主表面上における第1ハードマスク膜が形成されている領域は、前記パターン形成用薄膜が形成されている領域よりも小さく、
前記第2ハードマスク膜と前記パターン形成用薄膜は、少なくとも一部で接している
ことを特徴とするマスクブランク。
【請求項2】
前記第2ハードマスク膜の酸素および窒素の合計含有量は、前記パターン形成用薄膜の酸素および窒素の合計含有量よりも多いことを特徴とする請求項1記載のマスクブランク。
【請求項3】
前記主表面上における第2ハードマスク膜が形成されている領域は、前記第1ハードマスク膜が形成されている領域よりも大きいことを特徴とする請求項1または2に記載のマスクブランク。
【請求項4】
前記パターン形成用薄膜の遷移金属の含有量と前記第2ハードマスク膜の遷移金属の含有量との間の差は、10原子%以上であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のマスクブランク。
【請求項5】
前記第2ハードマスク膜の酸素および窒素の合計含有量は、30原子%以上であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のマスクブランク。
【請求項6】
前記第2ハードマスク膜の膜厚は、5nm以下であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のマスクブランク。
【請求項7】
前記第1ハードマスク膜の酸素および窒素の合計含有量は、50原子%以上であることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のマスクブランク。
【請求項8】
前記第1ハードマスク膜の酸素含有量は、50原子%以上であることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のマスクブランク。
【請求項9】
前記第1ハードマスク膜の膜厚は、7nm以上であることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載のマスクブランク。
【請求項10】
前記パターン形成用薄膜の膜厚は、60nm以下であることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載のマスクブランク。
【請求項11】
前記パターン形成用薄膜は、遮光膜であり、前記基板と前記遮光膜の間に位相シフト膜を備えることを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載のマスクブランク。
【請求項12】
前記位相シフト膜は、ケイ素を含有することを特徴とする請求項11記載のマスクブランク。
【請求項13】
前記位相シフト膜は、露光光を1%以上の透過率で透過させる機能と、前記位相シフト膜を透過した前記露光光に対して前記位相シフト膜の厚さと同じ距離だけ空気中を通過した前記露光光との間で150度以上210度以下の位相差を生じさせる機能とを有することを特徴とする請求項11または12に記載のマスクブランク。
【請求項14】
請求項1から10のいずれかに記載のマスクブランクを用いる転写用マスクの製造方法であって、
前記第2ハードマスク膜上に形成された転写パターンを有するレジスト膜をマスクとし、酸素含有塩素系ガスを用いたドライエッチングにより、前記第2ハードマスク膜に転写パターンを形成する工程と、
前記転写パターンが形成された第2ハードマスク膜をマスクとし、フッ素系ガスを用いたドライエッチングにより、前記第1ハードマスク膜に転写パターンを形成する工程と、
前記転写パターンが形成された第1ハードマスク膜をマスクとし、酸素含有塩素系ガスを用いたドライエッチングにより、前記パターン形成用薄膜に転写パターンを形成する工程とを有することを特徴とする転写用マスクの製造方法。
【請求項15】
請求項11から13のいずれかに記載のマスクブランクを用いる転写用マスクの製造方法であって、
前記第2ハードマスク膜上に形成された転写パターンを有するレジスト膜をマスクとし、酸素含有塩素系ガスを用いたドライエッチングにより、前記第2ハードマスク膜に転写パターンを形成する工程と、
前記転写パターンが形成された第2ハードマスク膜をマスクとし、フッ素系ガスを用いたドライエッチングにより、前記第1ハードマスク膜に転写パターンを形成する工程と、
前記転写パターンが形成された第1ハードマスク膜をマスクとし、酸素含有塩素系ガスを用いたドライエッチングにより、前記遮光膜に転写パターンを形成する工程と、
前記転写パターンが形成された遮光膜をマスクとし、フッ素系ガスを用いたドライエッチングにより、前記位相シフト膜に転写パターンを形成する工程と
を有することを特徴とする転写用マスクの製造方法。
【請求項16】
請求項14または15に記載の転写用マスクの製造方法で製造された転写用マスクを用い、半導体基板上のレジスト膜に転写パターンを露光転写する工程を有することを特徴とする半導体デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスクブランク、転写用マスクの製造方法及び半導体デバイスの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体デバイスの製造工程では、フォトリソグラフィー法を用いて微細パターンの形成が行われている。また、この微細パターンの形成には通常何枚もの転写用マスクと呼ばれている基板が使用される。半導体デバイスのパターンを微細化するに当たっては、転写用マスクに形成されるマスクパターンの微細化に加え、フォトリソグラフィーで使用される露光光源の波長の短波長化が必要となる。半導体装置製造の際の露光光源としては、近年ではKrFエキシマレーザー(波長248nm)から、ArFエキシマレーザー(波長193nm)へと短波長化が進んでいる。
【0003】
転写用マスクの種類としては、従来の透光性基板上にクロム系材料からなる遮光パターンを備えたバイナリマスクの他に、ハーフトーン型の位相シフトマスクが知られている。このハーフトーン型の位相シフトマスクは、透明基板上に形成するマスクパターンを、実質的に露光に寄与する強度の光を透過させる部分(光透過部)と、実質的に露光に寄与しない強度の光を透過させる部分(光半透過部)とで構成し、かつ、この光半透過部を通過する光の位相をシフトさせて、光半透過部を透過した光の位相が上記光透過部を透過した光の位相に対して実質的に反転する関係となるようにすることにより、光透過部と光半透過部との境界部近傍を透過した光が互いに打ち消しあうようにして境界部のコントラストを良好に保持できるようにしたものである。
【0004】
ハーフトーン型の位相シフトマスクのマスクブランクとして、光半透過部を構成するハーフトーン位相シフト膜、遮光膜、無機系材料からなるエッチングマスク膜(ハードマスク膜)が積層された構造を有するマスクブランクが以前より知られている。
また、バイナリマスクにおいても、遮光膜上にエッチングマスク膜(ハードマスク膜)が積層された構造を有するマスクブランクが以前より知られている。
【0005】
例えば、特許文献1には、透明基板上に、遮光膜、ケイ素を含有するマスク層及びクロム窒化系膜が順次形成されてなるマスクブランクが開示されている。
また、特許文献2には、電子線描画によりレジストパターンを形成する電子線描画用のマスクブランクであって、透明基板上に、遮光膜と、この遮光膜のエッチングに対して耐性を有する無機系材料からなるエッチングマスク膜がこの順に形成されたマスクブランクの製造方法であって、エッチングマスク膜を成膜する際に、基板の少なくとも側面には成膜されないように遮蔽板にて遮蔽する製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5348866号公報
【特許文献2】特許第5393972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
フォトリソグラフィー技術においては、投影露光装置で転写できる最小の寸法(解像度)は、露光に用いる光の波長に比例し、投影光学系のレンズの開口数(NA)に反比例するため、半導体素子の微細化への要求に伴い、露光光の短波長化及び投影光学系の高NA化が進んでいるが、短波長化及び高NA化だけでこの要求を満足するには限界となっている。
そこで解像度を上げるために、プロセス定数k1(k1=解像線幅×投影光学系の開口数/露光光の波長)の値を小さくすることによって微細化を図る超解像技術が近年提案されている。このような超解像技術の一つとして、露光光学系の特性に応じてマスクパターンに補助パターンや線幅オフセットを与えてマスクパターンを最適化する方法がある。
補助パターンを用いる方法は、ウェハ上に転写されるパターン(以後、主パターンと称する。)の近傍に、投影光学系の解像限界以下であってウェハ上には転写されないパターン(以後、補助パターンと称する。)を配置し、主パターンの解像度と焦点深度を向上させる効果を有する転写用マスクを用いるリソグラフィ方法である。補助パターンはSRAF(Sub Resolution Assist Feature)とも呼ばれている(以後、本発明では補助パターンをSRAFとも称する。)。
【0008】
しかしながら、半導体素子パターンの微細化に伴って、補助パターンを有する転写用マスクはマスク製作上で困難な点が生じてきた。まず、補助パターンは上述のようにそれ自身ウェハ上に結像しないことが必要であり、主パターンの寸法よりも微小な寸法でなければならない点が挙げられる。その結果、主パターン寸法の微細化に伴い、求められる補助パターンの線幅寸法は数100nmから40nm程度、さらには20nm程度といった微小な寸法へと微小化してきている。
しかし、従来のマスクブランクでは、20nm程度といった微小な寸法の補助パターンを有する転写用マスクを製作することが困難であることが判明した。
【0009】
本発明は、従来の課題を解決するためになされたものであり、20nm程度といった微小な寸法の補助パターンを有する転写用マスクを精度良く作成することのできるマスクブランクを提供することを目的としている。また、本発明は、このマスクブランクを用いることにより、パターン形成用薄膜に精度よく微細なパターンを形成することが可能な転写用マスクの製造方法を提供する。そして、本発明は、このような転写用マスクの製造方法で製造された転写用マスクを用いた半導体デバイスの製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の課題を達成するため、本発明は以下の構成を有する。
(構成1)
基板の主表面上に、パターン形成用薄膜、第1ハードマスク膜、第2ハードマスク膜がこの順に積層した構造を備えるマスクブランクであって、
前記パターン形成用薄膜は、遷移金属を含有し、
前記第1ハードマスク膜は、ケイ素およびタンタルから選ばれる1以上の元素と酸素とを含有し、
前記第2ハードマスク膜は、遷移金属を含有し、
前記第2ハードマスク膜の遷移金属の含有量は、前記パターン形成用薄膜の遷移金属の含有量よりも少なく、
前記主表面上における第1ハードマスク膜が形成されている領域は、前記パターン形成用薄膜が形成されている領域よりも小さく、
前記第2ハードマスク膜と前記パターン形成用薄膜は、少なくとも一部で接している
ことを特徴とするマスクブランク。
【0011】
(構成2)
前記第2ハードマスク膜の酸素および窒素の合計含有量は、前記パターン形成用薄膜の酸素および窒素の合計含有量よりも多いことを特徴とする構成1記載のマスクブランク。
(構成3)
前記主表面上における第2ハードマスク膜が形成されている領域は、前記第1ハードマスク膜が形成されている領域よりも大きいことを特徴とする構成1または2に記載のマスクブランク。
【0012】
(構成4)
前記パターン形成用薄膜の遷移金属の含有量と前記第2ハードマスク膜の遷移金属の含有量との間の差は、10原子%以上であることを特徴とする構成1から3のいずれかに記載のマスクブランク。
(構成5)
前記第2ハードマスク膜の酸素および窒素の合計含有量は、30原子%以上であることを特徴とする構成1から4のいずれかに記載のマスクブランク。
【0013】
(構成6)
前記第2ハードマスク膜の膜厚は、5nm以下であることを特徴とする構成1から5のいずれかに記載のマスクブランク。
(構成7)
前記第1ハードマスク膜の酸素および窒素の合計含有量は、50原子%以上であることを特徴とする構成1から6のいずれかに記載のマスクブランク。
【0014】
(構成8)
前記第1ハードマスク膜の酸素含有量は、50原子%以上であることを特徴とする構成1から7のいずれかに記載のマスクブランク。
(構成9)
前記第1ハードマスク膜の膜厚は、7nm以上であることを特徴とする構成1から8のいずれかに記載のマスクブランク。
【0015】
(構成10)
前記パターン形成用薄膜の膜厚は、60nm以下であることを特徴とする構成1から9のいずれかに記載のマスクブランク。
【0016】
(構成11)
前記パターン形成用薄膜は、遮光膜であり、前記基板と前記遮光膜の間に位相シフト膜を備えることを特徴とする構成1から10のいずれかに記載のマスクブランク。
【0017】
(構成12)
前記位相シフト膜は、ケイ素を含有することを特徴とする構成11記載のマスクブランク。
【0018】
(構成13)
前記位相シフト膜は、露光光を1%以上の透過率で透過させる機能と、前記位相シフト膜を透過した前記露光光に対して前記位相シフト膜の厚さと同じ距離だけ空気中を通過した前記露光光との間で150度以上210度以下の位相差を生じさせる機能とを有することを特徴とする構成11または12に記載のマスクブランク。
【0019】
(構成14)
構成1から10のいずれかに記載のマスクブランクを用いる転写用マスクの製造方法であって、
前記第2ハードマスク膜上に形成された転写パターンを有するレジスト膜をマスクとし、酸素含有塩素系ガスを用いたドライエッチングにより、前記第2ハードマスク膜に転写パターンを形成する工程と、
前記転写パターンが形成された第2ハードマスク膜をマスクとし、フッ素系ガスを用いたドライエッチングにより、前記第1ハードマスク膜に転写パターンを形成する工程と、
前記転写パターンが形成された第1ハードマスク膜をマスクとし、酸素含有塩素系ガスを用いたドライエッチングにより、前記パターン形成用薄膜に転写パターンを形成する工程とを有することを特徴とする転写用マスクの製造方法。
【0020】
(構成15)
構成11から13のいずれかに記載のマスクブランクを用いる転写用マスクの製造方法であって、
前記第2ハードマスク膜上に形成された転写パターンを有するレジスト膜をマスクとし、酸素含有塩素系ガスを用いたドライエッチングにより、前記第2ハードマスク膜に転写パターンを形成する工程と、
前記転写パターンが形成された第2ハードマスク膜をマスクとし、フッ素系ガスを用いたドライエッチングにより、前記第1ハードマスク膜に転写パターンを形成する工程と、
前記転写パターンが形成された第1ハードマスク膜をマスクとし、酸素含有塩素系ガスを用いたドライエッチングにより、前記遮光膜に転写パターンを形成する工程と、
前記転写パターンが形成された遮光膜をマスクとし、フッ素系ガスを用いたドライエッチングにより、前記位相シフト膜に転写パターンを形成する工程と
を有することを特徴とする転写用マスクの製造方法。
【0021】
(構成16)
構成14または15に記載の転写用マスクの製造方法で製造された転写用マスクを用い、半導体基板上のレジスト膜に転写パターンを露光転写する工程を有することを特徴とする半導体デバイスの製造方法。
【発明の効果】
【0022】
本発明のマスクブランクによれば、20nm程度といった微小な寸法の補助パターンを有する転写用マスクを精度良く作成することが可能となる。また、本発明は、このマスクブランクを用いることにより、パターン形成用薄膜に精度よく微細なパターンを形成することが可能な転写用マスクを製造することが可能となる。そして、本発明は、このような転写用マスクの製造方法で製造された転写用マスクを用いた半導体デバイスの製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の第1の実施形態におけるマスクブランク(バイナリマスクブランク)の構成を示す断面図である。
【
図2】本発明の第2の実施形態におけるマスクブランク(位相シフトマスクブランク)の構成を示す断面図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態における転写用マスク(バイナリマスク)の構成を示す断面図である。
【
図4】本発明の第2の実施形態における転写用マスク(位相シフトマスク)の製造工程を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について説明する前に、本発明に至った経緯について述べる。
上述のような線幅20nm程度の補助パターンを遷移金属系材料からなるパターン形成用薄膜(遮光膜等)に形成する場合、有機系材料のレジストパターンをマスクとするドライエッチングでパターン形成用薄膜に補助パターンを形成することは困難である。ドライエッチング時、レジストパターンの膜厚方向へのエッチング量が比較的多く、レジスト膜を厚くする必要があるためである。また、レジストパターンの側壁方向のへのエッチング量(サイドエッチング量)も比較的大きい。一般に、このサイドエッチングの影響を見込んで線幅を実際に形成する線幅よりも大きくして、レジスト膜にパターンを電子線で描画露光する。サイドエッチング量が大きいと、この調整が困難になる。
【0025】
これらの問題を解決するために、パターン形成用薄膜とレジストパターンの間にケイ素系材料からなるハードマスク膜を設けることが考えられる。この場合、最初に、レジストパターンをマスクとするドライエッチングをハードマスク膜に対して行ってハードマスクパターンを形成し、続いて、そのハードマスク膜をマスクとするドライエッチングをパターン形成用薄膜に対して行って薄膜パターンを形成するというプロセスを行う。ハードマスク膜は、パターン形成用薄膜に求められるような光学的な制約が基本的にない。このため、ハードマスク膜は、パターン形成用薄膜よりも厚さを薄くすることできる。さらに、レジスト膜は、このハードマスク膜をパターニングするときのドライエッチング時にマスクとして機能するだけの厚さがあれば十分である。
【0026】
ハードマスク膜の厚さを薄くするほど、レジスト膜の厚さを薄くすることができる。しかし、パターン形成用薄膜のドライエッチング時、パターン形成用薄膜ほど顕著ではないが、ハードマスク膜もエッチングされる。また、ハードマスク膜の厚さが薄くなるほど、ドライエッチングで形成されるハードマスク膜のパターンの側壁の垂直性は低下する傾向がある。ハードマスクパターンをマスクとするパターン形成用薄膜のドライエッチング時、ハードマスクパターンのパターンエッジ部(ハードマスクパターンの上面と側壁との稜線部)が特にエッチングされやすい。そのドライエッチング時にこのパターンエッジ部がエッチングされて丸くなっていくと、パターン形成用薄膜に形成されるパターンの形状精度(LER(Line Edge Roughness)など)が低下する傾向がある。ハードマスク膜の厚さを薄くするほど、パターン形成用薄膜に形成されるパターンの形状精度が低下する。パターン形成用薄膜に線幅20nm程度の補助パターンを形成する場合、このパターンの形状精度の低下の影響は顕著である。このため、ハードマスク膜には一定以上の厚さが必要となる。
【0027】
一般に、レジスト膜にパターンを電子線で描画露光する際、レジスト膜の下の薄膜にアースピン等の除電機構を接触させ、レジスト膜に帯電する電子を外部に逃がすことが行われている。しかし、酸化ケイ素系材料のハードマスク膜は導電性が乏しく、レジスト膜の電子をハードマスク膜のみで外部に逃がすことは難しい。遷移金属材料のパターン形成用薄膜は比較的導電性が高く、レジスト膜中の電子はハードマスク膜を経由してパターン形成用薄膜から外部に逃げることができる。しかし、ハードマスク膜の厚さが厚くなるにつれ、レジスト膜中の電子がハードマスク膜を通過してパターン形成用薄膜に到達することが難しくなる。このため、ハードマスク膜の厚さを厚くすると、電子線での描画露光時にチャージアップが生じやすくなるという問題が生じる。一方、近年では、複数の電子銃でレジスト膜に対して描画するマルチビームライターが開発されており、レジスト膜に対してマルチビームライターで露光描画を行う場合、この問題は顕著になる。なお、これらの問題は、ハードマスク膜に酸化タンタル系材料を用いた場合でも生じる。
【0028】
そこで、この導電性の問題を解決するために、酸化ケイ素系材料あるいは酸化タンタル系材料のハードマスク膜(第1ハードマスク膜)の上に、さらに遷移金属系材料のハードマスク膜(第2ハードマスク膜)を設けることを考えた。一般に、レジストパターンの線幅に対する厚さの比であるアスペクト比は、1:2以下であることが望まれる。レジスト膜のパターン倒れを抑制するためであり、線幅20nmのような微細なパターンの場合、その必要性はより大きくなる。すなわち、レジストパターンの膜厚は40nm以下とすることが求められる。このような薄い膜厚のレジストパターンをマスクとするドライエッチングで、第2ハードマスク膜にパターンを形成するためには、第2ハードマスク膜のエッチングレートを速くする必要がある。通常、第2ハードマスク膜の遷移金属の含有量が多くなるほど、エッチングレートが低下する傾向がある。また、第2ハードマスク膜中において酸素や窒素のような常温で気体の元素の含有量が多くなるほど、エッチングレートが速くなる傾向がある。これらの元素を添加することで第2ハードマスク膜中の遷移金属の含有量を少なくし、エッチングレートを向上させることを考えた。しかし、第2ハードマスク膜の遷移金属の含有量を少なくすることでエッチングレートは向上するが、導電性は低下してしまうことが判明した。すなわち、このような第2ハードマスク膜は、第1ハードマスク膜ほどではないが、パターン形成用薄膜に比べて導電性が大幅に低下し、電子線露光描画時にレジスト膜に帯電する電子を十分に逃がすことが難しいことが判明した。
【0029】
本発明者らは、これらの問題を解決することを鋭意検討した結果、パターン形成用薄膜と第2ハードマスク膜を電気的に接続することを着想した。
すなわち、本発明のマスクブランクは、基板の主表面上に、パターン形成用薄膜、第1ハードマスク膜、第2ハードマスク膜がこの順に積層した構造を備えるマスクブランクであって、パターン形成用薄膜は、遷移金属を含有し、第1ハードマスク膜は、ケイ素およびタンタルから選ばれる1以上の元素と酸素とを含有し、第2ハードマスク膜は、遷移金属を含有し、第2ハードマスク膜の遷移金属の含有量は、パターン形成用薄膜の遷移金属の含有量よりも少なく、主表面上における第1ハードマスク膜が形成されている領域は、パターン形成用薄膜が形成されている領域よりも小さく、第2ハードマスク膜とパターン形成用薄膜は、少なくとも一部で接していることを特徴とするものである。
【0030】
<第1の実施形態>
[マスクブランクとその製造]
以下、実施の形態について図面を参照しながら説明を行う。
図1は、本発明の第1の実施形態に係るマスクブランク(バイナリマスクブランク)10の構成を示す断面図である。
図1に示す本発明のマスクブランク10は、基板1上に、遮光膜(パターン形成用薄膜)2、第1ハードマスク膜3、第2ハードマスク膜4、レジスト膜5がこの順に積層された構造を有する。
【0031】
基板1は、合成石英ガラスのほか、石英ガラス、アルミノシリケートガラス、ソーダライムガラス、低熱膨張ガラス(SiO2-TiO2ガラス等)などで形成することができる。これらの中でも、合成石英ガラスは、ArF露光光に対する透過率が高く、変形を起こしにくい十分な剛性も有するため、マスクブランクの基板を形成する材料として特に好ましい。
【0032】
本実施の形態では、遮光膜2上に、第1ハードマスク膜3、第2ハードマスク膜4を積層している。遮光膜2、第1ハードマスク膜3、第2ハードマスク膜4は、単層構造および2層以上の積層構造のいずれも適用可能である。また、単層構造または積層構造の各層は、膜または層の厚さ方向でほぼ同じ組成である構成であっても、層の厚さ方向で組成傾斜した構成であってもよい。
【0033】
遮光膜2は、マスクブランクからバイナリマスクが製造されたときに、転写パターンが形成されるパターン形成用薄膜である。バイナリマスクは、遮光膜2のパターンに高い遮光性能が求められる。遮光膜2のみで露光光に対する光学濃度(OD)が2.8以上であることが求められ、3.0以上のODがあるとより好ましい。
【0034】
遮光膜2は、塩素系ガスを含むエッチングガスによるドライエッチングで転写パターンをパターニング可能な材料で形成される。このような特性を有する材料としては、遷移金属を含有する材料が挙げられる。遮光膜2に含有させる遷移金属としては、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、バナジウム(V)、ジルコニウム(Zr)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、ニオブ(Nb)、パラジウム(Pd)等のいずれか1つの金属またはこれらの金属の合金が挙げられる。
【0035】
遮光膜2を形成する材料には、光学濃度が大きく低下しない範囲であれば、酸素、窒素、炭素、ホウ素、水素から選ばれる1以上の元素を含有させてもよい。遮光膜2の基板1とは反対側の表面における露光光に対する反射率を低減させるために、その基板1とは反対側の表層に酸素や窒素を多く含有させてもよい。遮光膜2は、ケイ素の含有量が5原子%以下であることが好ましく、3原子%以下であるとより好ましく、X線光電子分光法で分析して得られるSi2pのナロースペクトルの最大ピークが検出下限値以下であるとさらに好ましい。なお、遮光膜2は、後述の通り、スパッタリング法によって形成される。このため、遮光膜2には、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)、ヘリウム(He)、ネオン(Ne)等の貴ガスを含有してもよい。
【0036】
遮光膜2は、特に、クロムを含有する材料で形成されることが好ましい。遮光膜2を形成するクロムを含有する材料としては、クロム金属の他、クロム(Cr)に酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)、ホウ素(B)およびフッ素(F)から選ばれる1つ以上の元素を含有する材料が挙げられる。一般に、クロム系材料は、塩素系ガスと酸素ガスの混合ガスでエッチングされるが、クロム金属はこのエッチングガスに対するエッチングレートがあまり高くない。塩素系ガスと酸素ガスの混合ガスのエッチングガスに対するエッチングレートを高める点を考慮すると、遮光膜2を形成する材料としては、クロムに酸素、窒素、炭素、ホウ素およびフッ素から選ばれる一以上の元素を含有する材料が好ましい。また、遮光膜2を形成するクロムを含有する材料にモリブデン、インジウムおよびスズのうち一以上の元素を含有させてもよい。モリブデン、インジウムおよびスズのうち一以上の元素を含有させることで、塩素系ガスと酸素ガスの混合ガスに対するエッチングレートをより速くすることができる。
【0037】
遮光膜2の膜厚は、線幅20nm程度のSRAFパターンを高精度に形成するために、60nm以下であることが好ましく、50nm以下であることがより好ましい。一方、遮光膜2の膜厚は、光学濃度の確保と導電性の確保の観点から、30nm以上であることが好ましい。
【0038】
第1ハードマスク膜3は、遮光膜2をエッチングする時に用いられるエッチングガスに対してエッチング選択性を有するように、ケイ素およびタンタルから選ばれる1以上の元素と酸素とを含有する材料で形成している。
ケイ素と酸素を含有する材料としては、SiO2、SiONなどを適用することが好ましい。この場合、第1ハードマスク膜3は、ケイ素および酸素の合計含有量が96原子%以上であることが好ましく、98原子%以上であるとより好ましい。また、第1ハードマスク膜3は、ケイ素、窒素および酸素の合計含有量が96原子%以上であることが好ましく、98原子%以上であるとより好ましい。なお、ケイ素と酸素を含有する材料で形成される第1ハードマスク膜3は、遮光膜2および第2ハードマスク膜4との間で、十分なエッチング選択性が得られる範囲で遷移金属を含有してもよい。
また、タンタルと酸素を含有する材料としては、タンタルと酸素のほか、窒素、ホウ素および炭素から選ばれる一以上の元素を含有させた材料などが挙げられる。たとえば、TaO、TaON、TaBO、TaBON、TaCO、TaCON、TaBOCNなどが挙げられる。この場合、第1ハードマスク膜3は、これらの材料のうち、ホウ素を含有するものであることが好ましい。
【0039】
第1ハードマスク膜3の酸素および窒素の合計含有量は、50原子%以上であることが好ましく、55原子%以上であるとより好ましく、60原子%以上であるとさらに好ましい。また、第1ハードマスク膜3の酸素含有量は、50原子%以上であることがより好ましく、55原子%以上であるとより好ましく、60原子%以上であるとさらに好ましい。このようにすることで、遮光膜2および第2ハードマスク膜4をパターニングするときのエッチングガスに対するエッチング選択性をより高めることができる。反面、第1ハードマスク膜3の抵抗値が高くなるため、電子線による描画露光時にレジスト膜に照射された電子が第1ハードマスク膜を経由して流出することが難しくなる。
【0040】
第1ハードマスク膜3は、平面視(基板1の主表面上)において、遮光膜2が形成されている領域よりも小さい領域に形成されることが好ましい。このような構成とすることで、遮光膜2と第2ハードマスク膜4とが少なくとも一部で接するようにすることが容易になる。第1ハードマスク膜3は、パターン転写領域を覆うのに必要な大きさであればよい。例えば、第1ハードマスク膜3は、基板1の中心を基準とした一辺が132mmの四角形の領域を少なくとも含む領域を覆うように形成されていることが好ましい。
【0041】
第1ハードマスク膜3の膜厚は、パターン形成用薄膜である遮光膜2に20nm程度のSRAFパターンを高精度に形成可能なハードマスクとして機能するために、7nm以上であることが好ましく、12nm以上であることがより好ましい。他方、後述の比較的薄い膜厚の第2ハードマスク膜のパターンをマスクとするドライエッチングで20nm程度のSRAFパターンを第1ハードマスク膜3に高精度に形成するために、第1ハードマスク膜3の膜厚は、20nm以下であることが好ましく、15nm以下であるとより好ましい。
【0042】
また、第1ハードマスク膜3の膜密度は、1.5g/cm3~9.0g/cm3であると好ましい。第1ハードマスク膜3の膜密度が上記の下限値以上であれば、遮光膜2に対するドライエッチングを行ったときの物理的なエッチング作用に対する耐性が向上する。特に、第1ハードマスク膜3がケイ素と酸素を含有する材料で形成されている場合、その膜密度は、1.5g/cm3~3.0g/cm3であると好ましい。他方、第1ハードマスク膜3がタンタルと酸素を含有する材料で形成されている場合、その膜密度は、7.5g/cm3~9.0g/cm3であると好ましい。
【0043】
また、第1ハードマスク膜3上に、第2ハードマスク膜4が積層されている。第2ハードマスク膜4は、第1ハードマスク膜3をパターニングするときのエッチングガスに対し、高いエッチング選択性を有する必要がある。この観点から、第2ハードマスク膜4は、遷移金属を含有することが好ましい。第2ハードマスク膜4に含有させる遷移金属としては、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、ハフニウム(Hf)、ニッケル(Ni)、バナジウム(V)、ジルコニウム(Zr)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、ニオブ(Nb)、パラジウム(Pd)等のいずれか1つの金属またはこれらの金属の合金が挙げられる。第2ハードマスク膜4は、塩素系ガスを含むエッチングガスによるドライエッチングでパターニング可能な材料で形成されていることが好ましい。また、遮光膜2と第2ハードマスク膜4に同じ遷移金属を含有させると、同じエッチングガスによるドライエッチングでエッチングすることがより容易になるため、好ましい。
【0044】
第2ハードマスク膜4は、酸素および窒素の少なくともいずれかを含有していると、エッチングレートを高められる点で好ましく、酸素を含有しているとより好ましい。そして、遮光膜2よりもエッチングレートを高くする等のために、第2ハードマスク膜4の酸素および窒素の合計含有量は、遮光膜2の酸素および窒素の合計含有量よりも多いことが好ましい。同様の理由で、第2ハードマスク膜4の遷移金属の含有量は、遮光膜2の遷移金属の含有量よりも少ないことが好ましい。さらに、遮光膜2の遷移金属の含有量と第2ハードマスク膜4の遷移金属の含有量との間の差は、10原子%以上であることが好ましく、15原子%以上であることがより好ましい。そのうえで、第2ハードマスク膜4の遷移金属の含有量は、60原子%以下であると好ましく、55原子%以下であるとより好ましい。
また、第2ハードマスク膜4のエッチングレートを一定以上の大きさにするために、第2ハードマスク膜4の酸素および窒素の合計含有量は、30原子%以上であると好ましく、32原子%以上であることが好ましい。また、第2ハードマスク膜4の酸素含有量は、20原子%以上であることが好ましい。
【0045】
第2ハードマスク膜4は、特に、クロムを含有する材料で形成されることが好ましい。第2ハードマスク膜4を形成するクロムを含有する材料としては、クロム金属の他、クロム(Cr)に酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)、ホウ素(B)およびフッ素(F)から選ばれる1つ以上の元素を含有する材料が挙げられる。一般に、クロム系材料は、塩素系ガスと酸素ガスの混合ガスでエッチングされるが、クロム金属はこのエッチングガスに対するエッチングレートがあまり高くない。塩素系ガスと酸素ガスの混合ガスのエッチングガスに対するエッチングレートを高める点を考慮すると、第2ハードマスク膜4を形成する材料としては、クロムに酸素、窒素、炭素、ホウ素およびフッ素から選ばれる一以上の元素を含有する材料が好ましい。また、第2ハードマスク膜4を形成するクロムを含有する材料にモリブデン、インジウムおよびスズのうち一以上の元素を含有させてもよい。モリブデン、インジウムおよびスズのうち一以上の元素を含有させることで、塩素系ガスと酸素ガスの混合ガスに対するエッチングレートをより速くすることができる。
【0046】
第2ハードマスク膜4の膜厚は、膜厚40nm以下のレジストパターンをマスクとするドライエッチングで、20nm程度のSRAFパターンを高精度に形成可能とするために、5nm以下であると好ましく、4nm以下であるとより好ましい。他方、第2ハードマスク膜4のパターンが第1ハードマスク膜にパターンを形成するドライエッチングのときにマスクとして十分機能するには、第2ハードマスク膜4の膜厚は2nm以上であると好ましい。
【0047】
基板1の主表面上における第2ハードマスク膜4が形成されている領域は、第1ハードマスク膜3が形成されている領域よりも大きいことが好ましい。これにより、上述の通り、第1ハードマスク膜3が形成されている領域は、遮光膜2が形成されている領域よりも小さいので、第2ハードマスク膜4と遮光膜2とが第1ハードマスク膜3の外側において接するように、第2ハードマスク膜4と遮光膜2を成膜することができ、この外周側領域において導電性を確保することが可能となる。第2ハードマスク膜4は、第1ハードマスク膜3が形成されている領域の外周縁を超える領域まで形成されている(すなわち、第1ハードマスク膜3は、第2ハードマスク膜4によって全体が覆われている。)ことが好ましい。他方、第2ハードマスク膜4は、一部を第1ハードマスク膜3が形成されている領域の外周縁を超える領域まで形成して遮光膜2と接するようにしつつ、それ以外は第1ハードマスク膜3が形成されている領域と同じ領域に形成するようにしてもよい。
また、第2ハードマスク膜4の膜密度は、3.5g/cm3~7.0g/cm3であると好ましい。
【0048】
マスクブランク10において、第2ハードマスク膜4の表面に接して、有機系材料のレジスト膜5が40nm以下の膜厚で形成されていることが好ましい。このようにすると、20nm程度の微細な補助パターンを含む転写用パターンを描画する場合でも、レジストパターンの断面アスペクト比が1:2以上と低くすることができるので、レジスト膜5の現像時、リンス時等にレジストパターンが倒壊や脱離することを抑制できる。
【0049】
遮光膜2、第1ハードマスク膜3、第2ハードマスク膜4は、反応性スパッタリング法により成膜することによりそれぞれ形成することができる。スパッタリング法としては、直流(DC)電源を用いたもの(DCスパッタリング)でも、高周波(RF)電源を用いたもの(RFスパッタリング)でもよい。またマグネトロンスパッタリング方式であっても、コンベンショナル方式であってもよい。DCスパッタリングの方が、機構が単純である点で好ましい。また、マグネトロンスパッタリング方式を用いた方が、成膜レートが速くなり、生産性が向上する点から好ましい。なお、成膜装置はインライン型でも枚葉型でも構わない。
また、成膜装置内の回転ステージに基板1を配置し、遮光膜2、第1ハードマスク膜3、第2ハードマスク膜4を成膜する際に、基板1の主表面上にマスクシールドを設置し、そのマスクシールドの開口領域を調整することで、それぞれの膜の基板1の主表面上の成膜領域を所望の領域に調整することが可能となる。
また、レジスト膜5は、スピン塗布法によって形成される。
【0050】
このように、
図1を参照して本実施形態のマスクブランク10の構成を説明したが、この構成に限定されるものではなく、例えば、レジスト膜5の表層に帯電防止層(CDL:Charge Dissipation Layer)を形成してもよいし、また、レジスト膜5を有していない構成のマスクブランクであってもよい。
【0051】
[転写用マスク(バイナリマスク)の製造方法]
この第1の実施形態に係るマスクブランク10を用いた転写用マスク(バイナリマスク)の製造方法について、
図3を用いて説明する。
図1に示されるマスクブランク10においてスピン塗布法によって形成された膜厚40nm以下のレジスト膜5に対して、遮光膜2に形成すべき第1のパターンを電子線で描画し、さらに現像処理等の所定の処理を行うことによって、第1のパターンを有するレジスト膜(レジストパターン)5aを形成する(
図3(a)参照)。この第1のパターンには、半導体デバイスに転写されるパターン(主パターン)の他に、線幅20nm程度の補助パターンも含まれている。
【0052】
このとき、第1ハードマスク膜3よりも外側における、第2ハードマスク膜4と遮光膜2とが接触している所定の領域において、図示しないアースピンが接触しており、レジスト膜5と、第2ハードマスク膜4と、遮光膜2との間でアースが確保されている。このため、レジスト膜5に電子線を描画する際におけるチャージアップを抑制することができ、位置精度の高い露光描画を行うことができる。
続いて、レジストパターン5aをマスクとして、塩素系ガスと酸素系ガスの混合ガスを用いたドライエッチングを第2ハードマスク膜4に対して行い、第1のパターンを有する第2ハードマスク膜(ハードマスクパターン)4a(
図3(b)参照)を形成する。その後、レジストパターン5aを除去する。
【0053】
次に、第2ハードマスクパターン4aをマスクとして、フッ素系ガスを用いたドライエッチングを第1ハードマスク膜3に対して行い、第1のパターンを有する第1ハードマスク膜(第1ハードマスクパターン)3a(
図3(b)参照)を形成する。続いて、別のレジスト膜をスピン塗布法によって形成する。その後、このレジスト膜に対して、第1ハードマスクパターン3aが形成されている範囲にレーザー描画を行って、さらに現像処理等の所定の処理を行うことによって第2のパターンを有するレジスト膜(レジストパターン)6b(
図3(c)参照)を形成する(なお、この段階では遮光膜2は
図3(b)に示されるように残存している)。その後、第1ハードマスクパターン3aおよびレジストパターン6bをマスクとして、塩素系ガスと酸素ガスの混合ガスを用いたドライエッチングを遮光膜2に対して行い、第1のパターンを有する遮光膜(遮光パターン)2aを形成する(
図3(c)参照)。このとき、第2ハードマスクパターン4aの露出している部分はドライエッチングにより除去され、第2のパターンを有する第2ハードマスク膜(第2ハードマスクパターン)4bとなる(
図3(c)参照)。
【0054】
そして、レジストパターン6bおよび第2ハードマスクパターン4bをマスクとして、フッ素系ガスを用いたドライエッチングを第1ハードマスクパターン3aに対して行い、第1ハードマスクパターン3aを除去する。さらに、レジストパターン6bを除去し、洗浄工程を行って、転写用マスク(バイナリマスク)100を製造することができる(
図3(d)参照)。
【0055】
[半導体デバイスの製造]
第1の実施形態の半導体デバイスの製造方法は、第1の実施形態のバイナリマスク(転写用マスク)100または第1の実施形態のマスクブランク10を用いて製造されたバイナリマスク100を用い、半導体基板上のレジスト膜に転写用パターンを露光転写することを特徴としている。このため、第1の実施形態のバイナリマスク100を用いて半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写すると、半導体デバイス上のレジスト膜に設計仕様を十分に満たす精度でパターンを形成することができる。
【0056】
<第2の実施形態>
[マスクブランクとその製造]
本発明の第2の実施形態に係るマスクブランクは、基板と遮光膜との間に位相シフト膜を備えるものであり、位相シフトマスク(転写用マスク)を製造するために用いられるものである。
図2に、この第2の実施形態のマスクブランクの構成を示す。この第2の実施形態に係るマスクブランク20は、基板11の主表面上に、位相シフト膜12、遮光膜(パターン形成用薄膜)13、第1ハードマスク膜14、第2ハードマスク膜15、レジスト膜16を備えている。基板11、レジスト膜16は第1の実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0057】
位相シフト膜12は、フッ素系ガスのエッチングガスによるドライエッチングでパターニング可能な材料で形成されており、具体的にはケイ素を含有する材料からなる。位相シフト膜12は、露光光を1%以上の透過率で透過させる機能(透過率)と、位相シフト膜を透過した前記露光光に対して前記位相シフト膜の厚さと同じ距離だけ空気中を通過した前記露光光との間で150度以上210度以下の位相差を生じさせる機能とを有することが好ましい。また、位相シフト膜12の透過率は、2%以上であるとより好ましい。位相シフト膜12の透過率は、30%以下であることが好ましく、20%以下であるとより好ましい。
【0058】
位相シフト膜12は、ケイ素の他に、窒素(N)を含有する材料で形成されていることが好ましい。位相シフト膜12は、フッ素系ガスを用いたドライエッチングによってパターニングが可能であれば、さらに、半金属元素、非金属元素、金属元素から選ばれる1以上の元素を含有していてもよい。このうち、半金属元素は、ケイ素に加え、いずれの半金属元素であってもよい。非金属元素は、窒素に加え、いずれの非金属元素であってもよく、例えば酸素(O)、炭素(C)、フッ素(F)及び水素(H)から選ばれる一以上の元素を含有させると好ましい。金属元素は、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、ニオブ(Nb)、バナジウム(V)、コバルト(Co)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、ルテニウム(Ru)、スズ(Sn)、ホウ素(B)、ゲルマニウム(Ge)が例示される。
【0059】
位相シフト膜12の膜厚は80nm以下であることが好ましく、70nm以下であるとより好ましい。位相シフト膜12の膜厚は50nm以上とすることが好ましい。アモルファスの材料で位相シフト膜12を形成しつつ、位相シフト膜12の位相差を150度以上とするためには50nm以上は必要なためである。なお、位相シフト膜12は、単層構造および2層以上の積層構造のいずれも適用可能である。また、単層構造または積層構造の各層は、膜または層の厚さ方向でほぼ同じ組成である構成であってもよく、層の厚さ方向で組成傾斜した構成であってもよい。
【0060】
また、位相シフト膜12は、平面視(基板1の主表面上)において、遮光膜13が形成されている領域よりも小さい領域で形成されることが好ましい。位相シフト膜12が形成される領域は、少なくともパターン転写領域を含む大きさであることが求められる。例えば、位相シフト膜12は、基板11の主表面の中心を基準とした1辺が132mmの四角形の領域を少なくとも含む領域を覆うように形成されていることが好ましい。
【0061】
位相シフト膜12において、前記の光学特性と膜の厚さに係る諸条件を満たすため、位相シフト膜の露光光(ArF露光光)に対する屈折率nは、1.9以上であると好ましく、2.0以上であるとより好ましい。また、位相シフト膜12の屈折率nは、3.1以下であると好ましく、2.7以下であるとより好ましい。位相シフト膜12のArF露光光に対する消衰係数kは、0.26以上であると好ましく、0.29以上であるとより好ましい。また、位相シフト膜12の消衰係数kは、0.62以下であると好ましく、0.54以下であるとより好ましい。
【0062】
なお、位相シフト膜12を含む薄膜の屈折率nと消衰係数kは、その薄膜の組成だけで決まるものではない。その薄膜の膜密度や結晶状態なども屈折率nや消衰係数kを左右する要素である。このため、反応性スパッタリングで薄膜を成膜する時の諸条件を調整して、その薄膜が所望の屈折率nおよび消衰係数kとなるように成膜する。位相シフト膜12を、上記の屈折率nと消衰係数kの範囲にするには、反応性スパッタリングで成膜する際に、貴ガスと反応性ガス(酸素ガス、窒素ガス等)の混合ガスの比率を調整することが有効であるが、それだけに限られることではない。反応性スパッタリングで成膜する際における成膜室内の圧力、スパッタターゲットに印加する電力、ターゲットと基板11との間の距離等の位置関係など多岐に渡る。また、これらの成膜条件は成膜装置に固有のものであり、形成される位相シフト膜12が所望の屈折率nおよび消衰係数kになるように適宜調整されるものである。
【0063】
マスクブランク20は、位相シフト膜12上に、遮光膜13を備える。この構成の場合の遮光膜13では、位相シフト膜12にパターンを形成する際に用いられるエッチングガスに対して十分なエッチング選択性を有する材料を適用する必要がある。
この場合の遮光膜13においても、上記の第1の実施形態で説明した遮光膜2と同様のものが適用可能である。ただし、後述の通り、位相シフト膜12の上に設ける遮光膜13の場合、バイナリマスク用の遮光膜2ほどのODは求められない。このため、遮光膜13の膜厚は、50nm以下であることが好ましく、45nm以下であることがより好ましい。一方、遮光膜13の膜厚は、光学濃度の確保と導電性の確保の観点から、20nm以上であることが好ましい。
【0064】
遮光膜13は、位相シフトマスクの完成後において、位相シフト膜12との積層構造で遮光帯等を形成する。このため、遮光膜13は、位相シフト膜12との積層構造で、2.0よりも大きい光学濃度(OD)を確保することが求められ、2.8以上のODであると好ましく、3.0以上のODがあるとより好ましい。
【0065】
遮光膜13の上には、第1ハードマスク膜14が形成されている。第1ハードマスク膜14は、遮光膜13をエッチングする時に用いられるエッチングガスに対してエッチング選択性を有するように、ケイ素およびタンタルから選ばれる1以上の元素と酸素とを含有する材料で形成している。具体的な材料や膜厚は、第1の実施形態における第1ハードマスク膜3と同様である。
【0066】
また、第1ハードマスク膜14は、平面視(基板1の主表面上)において、遮光膜13が形成されている領域よりも小さい領域で形成されることが好ましい。このような構成とすることで、遮光膜13と第2ハードマスク膜15とが少なくとも一部で接するようにすることが容易になる。第1ハードマスク膜14は、位相シフト膜12が形成されているパターン転写領域を覆うのに必要な大きさであればよい。例えば、第1ハードマスク膜14は、基板11の主表面の中心を基準とした1辺が132mmの四角形の領域を少なくとも含む領域を覆うように形成されていることが好ましい。
【0067】
また、第1ハードマスク膜14上に、第2ハードマスク膜15が積層されている。第2ハードマスク膜15は、第1ハードマスク膜14をパターニングするときのエッチングガスに対し、高いエッチング選択性を有する必要がある。この観点から、第2ハードマスク膜15は、遷移金属を含有することが好ましい。具体的な材料や膜厚は、第1の実施形態における第2ハードマスク膜4と同様である。
また、基板11の主表面上における第2ハードマスク膜15が形成されている領域は、第1ハードマスク膜14が形成されている領域よりも大きいことが好ましい。これにより、上述の通り、第1ハードマスク膜14が形成されている領域は、遮光膜13が形成されている領域よりも小さいので、第2ハードマスク膜15と遮光膜13とが第1ハードマスク膜14の外側において接するように、第2ハードマスク膜15と遮光膜13を成膜することができ、この外周側領域において導電性を確保することが可能となる。
【0068】
第2ハードマスク膜15は、第1ハードマスク膜14が形成されている領域の外周縁を超える領域まで形成されている(すなわち、第1ハードマスク膜14は、第2ハードマスク膜15によって全体が覆われている。)ことが好ましい。他方、第2ハードマスク膜15は、一部を第1ハードマスク膜14が形成されている領域の外周縁を超える領域まで形成して遮光膜13と接するようにしつつ、それ以外は第1ハードマスク膜14が形成されている領域と同じ領域に形成するようにしてもよい。
【0069】
位相シフト膜12、遮光膜13、第1ハードマスク膜14、第2ハードマスク膜15は、第1実施形態と同様に、反応性スパッタリング法により成膜することによりそれぞれ形成することができる。
また、位相シフト膜12、遮光膜13、第1ハードマスク膜14、第2ハードマスク膜15を成膜する際に、マスクシールドの開口領域を調整することで、それぞれの膜の成膜領域を所望の領域に調整することが可能となる。
また、レジスト膜16は、スピン塗布法によって形成される。
【0070】
[転写用マスク(位相シフトマスク)の製造方法]
この第2の実施形態に係るマスクブランク20を用いた転写用マスク(位相シフトマスク)の製造方法について、
図4を用いて説明する。
図2に示されるマスクブランク20においてスピン塗布法によって形成された膜厚40nm以下のレジスト膜16に対して、位相シフト膜12に形成すべき第1のパターンを電子線で描画し、さらに現像処理等の所定の処理を行うことによって第1のパターンを有するレジスト膜(レジストパターン)16aを形成する(
図4(a)参照)。この第1のパターンには、半導体デバイスに転写されるパターン(主パターン)の他に、線幅20nm程度の補助パターンも含まれている。
このとき、第1ハードマスク膜14よりも外側における、第2ハードマスク膜15と遮光膜13とが接触している所定の領域において、図示しないアースピンが接触しており、レジスト膜16と、第2ハードマスク膜15と、遮光膜13との間でアースが確保されている。このため、レジスト膜16に電子線を描画する際におけるチャージアップを抑制することができ、位置精度の高い露光描画を行うことができる(なお、後述するレジストパターン17b、18cを形成するときにも、同様にチャージアップを抑制することができ、位置精度の高い露光描画を行うことができる)。
続いて、レジストパターン16aをマスクとして、塩素系ガスと酸素系ガスの混合ガスを用いたドライエッチングを第2ハードマスク膜15に対して行い、第1のパターンを有する第2ハードマスク膜(ハードマスクパターン)15a(
図4(b)参照)を形成する。その後、レジストパターン16aを除去する。
【0071】
次に、第2ハードマスクパターン15aをマスクとして、フッ素系ガスを用いたドライエッチングを第1ハードマスク膜14に対して行い、第1のパターンを有する第1ハードマスク膜(第1ハードマスクパターン)14aを形成する(
図4(b)参照)。続いて、別のレジスト膜をスピン塗布法によって形成する。その後、このレジスト膜に対して、第1ハードマスクパターン14aが形成されている範囲にレーザー描画を行って、さらに現像処理等の所定の処理を行うことによって第2のパターンを有するレジスト膜(レジストパターン)17b(
図4(c)参照)を形成する(なお、この段階では遮光膜13、第2ハードマスクパターン15aは
図4(b)に示されるように残存している)。その後、第1ハードマスクパターン14aおよびレジストパターン17bをマスクとして、塩素系ガスと酸素ガスの混合ガスを用いたドライエッチングを遮光膜13に対して行い、第1のパターンを有する遮光膜(遮光パターン)13aを形成する(
図4(c)参照)。このとき、第2ハードマスクパターン15aの露出している部分はドライエッチングにより除去され、第2のパターンを有する第2ハードマスク膜(第2ハードマスクパターン)15bとなる(
図4(c)参照)。
【0072】
そして、遮光パターン13aをマスクとして、フッ素系ガスを用いたドライエッチングを位相シフト膜12に対して行い、第1のパターンを有する位相シフト膜(位相シフトパターン)12aを形成する(
図4(d)参照)。このとき、第1ハードマスクパターン14aは除去される(
図4(d)参照)。
そして、レジストパターン17bを除去し、洗浄工程を行って、別のレジスト膜をスピン塗布法によって形成する。その後、このレジスト膜に対して、遮光膜13に形成すべき第3のパターンを電子線で描画し、さらに現像処理等の所定の処理を行うことによって第3のパターンを有するレジスト膜(レジストパターン)18c(
図4(e)参照)を形成する。その後、レジストパターン18cをマスクとして、塩素系ガスと酸素ガスの混合ガスを用いたドライエッチングを遮光膜13に対して行い、第3のパターンを有する遮光膜(遮光パターン)13cを形成する。そして、レジストパターン18cを除去し、洗浄工程を行って、転写用マスク(位相シフトマスク)200を製造することができる(
図4(f)参照)。
【0073】
[半導体デバイスの製造]
第2の実施形態の半導体デバイスの製造方法は、第2の実施形態の位相シフトマスク200または第1の実施形態のマスクブランク20を用いて製造された位相シフトマスク200を用い、半導体基板上のレジスト膜に転写用パターンを露光転写することを特徴としている。このため、第2の実施形態の位相シフトマスク200を用いて半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写すると、半導体デバイス上のレジスト膜に設計仕様を十分に満たす精度でパターンを形成することができる。
【0074】
なお、本発明のマスクブランクは、EUVリソグラフィ(Extreme Ultraviolet Lithography)用の反射型マスクを製造するときに用いられる反射型マスクブランクであってもよい。この場合においては、吸収体膜を上記のパターン形成用薄膜で構成することが好ましい。
【0075】
この反射型マスクブランクの場合、基板には、低熱膨張ガラス(SiO2―TiO2ガラス等)を適用することが好ましい。また、その基板の上に、多層反射膜、保護膜、吸収体膜(パターン形成用薄膜)、第1ハードマスク膜、第2ハードマスク膜をこの順に積層した構成とすることが好ましい。吸収体膜、第1ハードマスク膜、第2ハードマスク膜の構成については、上記の各実施形態に示した構成と同様とすることが好ましい。吸収体膜は、上述のクロムを含有する材料で形成されることが好ましい。一方、吸収体膜は、ルテニウムを含有する材料を用いてもよい。この場合のルテニウムを含有する材料としては、ルテニウム金属単体のほか、ルテニウムに、窒素、酸素のうち少なくともいずれかを含む材料があげられる。
【0076】
多層反射膜は、反射型マスクにおいて、EUV光を反射する機能を付与するものである。多層反射膜は、屈折率の異なる元素を主成分とする各層が周期的に積層された多層膜である。一般的には、多層反射膜として、高屈折率材料である軽元素又はその化合物の薄膜(高屈折率層)と、低屈折率材料である重元素又はその化合物の薄膜(低屈折率層)とが交互に40から60周期(ペア)程度積層された多層膜が用いられる。
【0077】
高屈折率層としては、例えば、ケイ素(Si)を含む材料を用いることができる。ケイ素を含む材料としては、ケイ素単体の他に、ケイ素に、ホウ素(B)、炭素(C)、ジルコニウム(Zr)、窒素(N)及び酸素(O)から選択される少なくとも1つの元素を含むケイ素化合物を用いることができる。低屈折率層としては、例えば、モリブデン(Mo)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、及び白金(Pt)から選ばれる少なくとも1種の金属単体、又はこれらの合金を用いることができる。例えば波長13nmから14nmのEUV光を反射するための多層反射膜としては、Moを含む層とSiを含む層とを交互に40から60周期程度積層したMo/Si周期積層膜が好ましく用いられる。
【0078】
保護膜は、例えば、ケイ素(Si)、ケイ素(Si)および酸素(O)を含む材料、ケイ素(Si)および窒素(N)を含む材料、ケイ素(Si)、酸素(O)および窒素(N)を含む材料などのケイ素系材料を用いることができる。また、吸収体膜が、ルテニウムを含有する材料で形成される場合は、保護膜は、クロム(Cr)、またはクロム(Cr)と、酸素(O)、窒素(N)、および炭素(C)のうち少なくとも1以上の元素とを含むクロム系材料から選択される材料を用いることができる。他方、吸収体膜を構成する材料によっては、保護膜は、ルテニウムを含有する材料を用いることができる。ルテニウムを含有する材料の例としては、Ru金属単体、Ruにチタン(Ti)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)、ホウ素(B)、ランタン(La)、コバルト(Co)、レニウム(Re)、及びロジウム(Rh)から選択される少なくとも1つの金属を含有したRu合金、及びそれらに窒素を含む材料が挙げられる。
【実施例0079】
以下、実施例により、本発明の実施の形態をさらに具体的に説明する。
(実施例1)
[マスクブランクの製造]
図2を参照し、主表面の寸法が約152mm×約152mmで、厚さが約6.35mmの合成石英ガラスからなる基板11を準備した。この基板11は、主表面が所定の表面粗さ(Rqで0.2nm以下)に研磨され、その後、所定の洗浄処理及び乾燥処理が施されている。
【0080】
次に、枚葉式DCスパッタリング装置内に基板11を設置し、モリブデン(Mo)とケイ素(Si)との混合焼結ターゲット(Mo:Si=11原子%:89原子%)を用い、アルゴン(Ar)、窒素(N2)及びヘリウム(He)の混合ガスをスパッタリングガスとする反応性スパッタリング(DCスパッタリング)により、基板11上に、モリブデン、ケイ素及び窒素からなる位相シフト膜12を69nmの厚さで形成した。この位相シフト膜12を形成するスパッタリングのとき、マスキングプレートを用いた。使用したマスキングプレートは、基板の中心を基準とする一辺が146mmの正方形の開口を有する(すなわち、設計領域は、一辺が146mmの正方形の領域。)。
【0081】
次に、この位相シフト膜12が形成された基板11に対して、位相シフト膜12の膜応力を低減するため、及び表層に酸化層を形成するための加熱処理を行った。具体的には、加熱炉(電気炉)を用いて、大気中で加熱温度を450℃、加熱時間を1時間として、加熱処理を行った。位相シフト量測定装置(レーザーテック社製 MPM193)を用いて、加熱処理後の位相シフト膜12の波長193nmの光に対する透過率と位相差を測定したところ、透過率が6.0%、位相差が177.0度(deg)であった。
【0082】
次に、枚葉式DCスパッタリング装置内に位相シフト膜12が形成された基板11を設置し、クロム(Cr)ターゲットを用いて、アルゴン(Ar)、二酸化炭素(CO2)及びヘリウム(He)の混合ガス雰囲気での反応性スパッタリング(DCスパッタリング)を行った。これにより、位相シフト膜12に接して、クロム、酸素及び炭素からなる遮光膜(CrOC膜 Cr:O:C=70.4原子%:15.4原子%:14.2原子%)13を36nmの膜厚で形成した。この遮光膜13を形成するスパッタリングのときもマスキングプレートを用いた。ただし、ここで使用したマスキングプレートは、基板の中心を基準とする一辺が150mmの正方形の開口を有する(すなわち、設計領域は、一辺が150mmの正方形の領域。)ものである。基板11の主表面の一辺の大きさは、151.2mmであり、設計領域との間での裕度はかなり小さい。
【0083】
次に、上記遮光膜(CrOC膜)13が形成された基板11に対して、加熱処理を施した。具体的には、ホットプレートを用いて、大気中で加熱温度を280℃、加熱時間を5分として、加熱処理を行った。加熱処理後、位相シフト膜12及び遮光膜13が積層された基板11に対し、分光光度計(アジレントテクノロジー社製 Cary4000)を用い、位相シフト膜12と遮光膜13の積層構造のArFエキシマレーザーの光の波長(約193nm)における光学濃度を測定したところ、3.0以上であることが確認できた。
【0084】
次に、遮光膜13の上に第1ハードマスク膜14(SiO2膜 Si:O=33.8原子%、66.2原子%)を12nmの厚さで形成した。具体的には、枚葉式DCスパッタリング装置内に、位相シフト膜12及び遮光膜13が積層された基板11を設置し、ケイ素(Si)ターゲットを用い、アルゴン(Ar)ガス、酸素(O2)ガスをスパッタリングガスとし、DCスパッタリングにより第1ハードマスク膜14を形成した。この第1ハードマスク膜14を形成するスパッタリングのとき、マスキングプレートを用いた。使用したマスキングプレートは、基板の中心を基準とする一辺が146mmの正方形の開口を有する(すなわち、設計領域は、一辺が146mmの正方形の領域。)。
別の基板上に第1ハードマスク膜14を12nmの厚さで成膜して、膜密度を測定したところ、1.8g/cm3であった。また、シート抵抗値を測定したところ、40kΩであった。
【0085】
次に、第1ハードマスク膜14の上に、第2ハードマスク膜15(CrOCN膜 Cr:54.7原子%、O:22.2原子%、C:11.9原子%、N:11.2原子%)を、3nmの厚さで形成した。具体的には、枚葉式DCスパッタリング装置内に、位相シフト膜12、遮光膜13および第1ハードマスク膜14が積層された基板11を設置し、クロム(Cr)ターゲットを用いて、アルゴン(Ar)、二酸化炭素(CO2)、窒素(N2)及びヘリウム(He)の混合ガス雰囲気での反応性スパッタリング(DCスパッタリング)を行った。この第2ハードマスク膜15を形成するスパッタリングのとき、マスキングプレートを用いた。使用したマスキングプレートは、基板の中心を基準とする一辺が148mmの正方形の開口を有する(すなわち、設計領域は、一辺が148mmの正方形の領域。)。
別の基板上に第2ハードマスク膜を3nmの厚さで成膜して、膜密度を測定したところ、4.9g/cm3であった。また、シート抵抗値を測定したところ、200kΩであった。
そして、所定の洗浄処理を施した後、レジスト膜16を40nmの膜厚でスピン塗布法により形成し、実施例1のマスクブランク20を製造した。
【0086】
[転写用マスク(位相シフトマスク)の製造]
次に、この実施例1のマスクブランク20を用い、
図4を用いて上述した手順で実施例1のハーフトーン型の位相シフトマスク200を製造した。
より具体的には、第2ハードマスク膜15のエッチングには、塩素ガス(Cl
2)と酸素ガス(O
2)の混合ガス(ガス流量比 Cl
2:O
2=15:1)を用いて、第2ハードマスクパターン15aを作成した(
図4(b)参照)。
また、第1ハードマスク膜14のエッチングには、フッ素系ガスとしてCF
4ガスを用いて、第1ハードマスクパターン14aを作成した(
図4(b)参照)。
また、遮光膜13のエッチングには、塩素ガス(Cl
2)と酸素ガス(O
2)の混合ガス(ガス流量比 Cl
2:O
2=15:1)を用いて、遮光パターン13a、13cを作成した(
図4(c)、
図4(d)参照)。
また、位相シフト膜12のエッチングには、フッ素系ガスとしてSF
4ガスを用いて、位相シフトパターン12aを作成した(
図4(b)参照)。
また、これらの一連の工程において、電子線描画の際には、2本の電子銃を備えるマルチビームライターを用い、第1ハードマスク膜14よりも外側における、第2ハードマスク膜15と遮光膜13とが接触している所定の領域において、図示しないアースピンを接触させていた。これにより、それぞれのレジスト膜には所望の位置に電子線が描画され、所望のレジストパターン16a、17b、18cを形成することができた。このレジストパターン16aは、転写用の主パターンに加え、線幅20nmの微細なSRAFパターンを含むものであった。
【0087】
実施例1の位相シフトマスク200に対して、線幅20nmのSRAFパターンが形成されている領域を中心に測長SEM(CD-SEM:Critical Dimension-Scanning Electron Microscope)でパターンの測長を行った。その結果、転写用の主パターンはもちろんのこと、線幅20nmの微細なSRAFパターンも良好なLERで位相シフトパターンが形成されていることを確認できた。
【0088】
以上の手順を得て作製された位相シフトマスク200に対し、AIMS193(Carl Zeiss社製)を用いて、波長193nmの露光光で半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写したときにおける転写像のシミュレーションを行った。このシミュレーションの露光転写像を検証したところ、設計仕様を十分に満たしていた。この結果から、この実施例1の位相シフトマスク200を露光装置のマスクステージにセットし、半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写したとしても、最終的に半導体デバイス上に形成される回路パターンは高精度で形成できるといえる。
【0089】
(比較例1)
[マスクブランクの製造]
この比較例1のマスクブランクは、ハードマスク膜以外については、実施例1と同様の手順で製造した。この比較例1のハードマスク膜は、実施例1の第2ハードマスク膜15を形成せずに、第1ハードマスク膜14と同じ材料(SiO2膜 Si:O=34原子%、66原子%)のものを12nmの膜厚で形成した。そして、このハードマスク膜の表面に対してHMDS(Hexamethyldisilazane)処理を行った後、40nmのレジスト膜をスピン塗布法により形成した。
【0090】
[転写用マスク(位相シフトマスク)の製造]
次に、この比較例1のマスクブランクを用い、ハーフトーン型の位相シフトマスクの製造を試みた。
比較例1のマスクブランクに形成したレジスト膜に対し、実施例1と同様の手順で電子線での描画を行った。このとき、比較例1のハードマスク膜と遮光膜が接触している所定の領域においてアースピンを接触させておいた。しかしながら、レジストパターンを形成する過程において、チャージアップが発生してしまい、所望のパターンを描画することができなかった。
【0091】
(比較例2)
[マスクブランクの製造]
この比較例2のマスクブランクは、ハードマスク膜以外については、実施例1と同様の手順で製造した。この比較例2のハードマスク膜は、第2ハードマスク膜15の構成のみを実施例1のものから変更している。具体的には、遮光膜と同じ成膜条件で第2のハードマスク膜をクロム、酸素及び炭素からなる材料(CrOC膜 Cr:O:C=70.4原子%:15.4原子%:14.2原子%)のものを3nmの膜厚で形成した。そして、このハードマスク膜の上に40nmのレジスト膜をスピン塗布法により形成した。
【0092】
[転写用マスク(位相シフトマスク)の製造]
次に、この比較例2のマスクブランクを用い、ハーフトーン型の位相シフトマスクの製造を行った。位相シフトマスクの製造のプロセスは、実施例1において説明したものと同様である。
比較例2のマスクブランクに形成したレジスト膜に対し、電子線での描画を行う際には、比較例2の第2ハードマスク膜と遮光膜が接触している所定の領域においてアースピンを接触させておいた。
このように、実施例1と同様にして、比較例2の位相シフトマスクを製造した。
比較例2の位相シフトマスクに対して、線幅20nmのSRAFパターンが形成されている領域を中心に測長SEM(CD-SEM:Critical Dimension-Scanning Electron Microscope)でパターンの測長を行った。その結果、転写用の主パターンおよび線幅20nmの微細なSRAFパターンともに、パターン自体が形成できていない箇所がいくつも見つかった。これは、40nmの膜厚のレジストパターンをマスクとするドライエッチングで第2ハードマスク膜をパターニングしたときに、第2ハードマスク膜のエッチングレートが遅く、第2ハードマスク膜にパターンが形成し終える前にレジストパターンが消失してしまったことに起因するものと推測される。