(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022024327
(43)【公開日】2022-02-09
(54)【発明の名称】コールド成形装置
(51)【国際特許分類】
B29C 70/88 20060101AFI20220202BHJP
B29C 70/46 20060101ALI20220202BHJP
B29L 9/00 20060101ALN20220202BHJP
【FI】
B29C70/88
B29C70/46
B29L9:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020121981
(22)【出願日】2020-07-16
(71)【出願人】
【識別番号】000135988
【氏名又は名称】株式会社ヒロタニ
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 渉
(72)【発明者】
【氏名】坂井 尚平
(72)【発明者】
【氏名】尾神 快
(72)【発明者】
【氏名】宮家 康行
(72)【発明者】
【氏名】冨原 暢
【テーマコード(参考)】
4F205
【Fターム(参考)】
4F205AC03
4F205AD16
4F205AD17
4F205AE06
4F205AG03
4F205AH26
4F205AK02
4F205AM11
4F205HA08
4F205HA22
4F205HA32
4F205HA35
4F205HA43
4F205HB01
4F205HB12
4F205HF05
4F205HG01
4F205HK03
4F205HK31
4F205HT12
4F205HT13
4F205HT26
(57)【要約】
【課題】防音成形体の成形精度を維持しつつ、かつ、成形時間を低減できるコールドプレス成形装置を提供する。
【解決手段】上型20には、上側成形面21の全域に亘って対応する空洞部22が設けられる。上型20の上側成形面21には、冷却用エアを吹き出すための小孔50が所定の間隔をあけて多数形成される。空洞部22には、上側成形面21に対応するように環状に延びる形状をなす環状管路40と、多数の可撓性チューブ60とが配設される。環状管路40には、冷却用エアを導入するエア導入口41及び冷却用エアを吐出する多数のエア吐出口42が形成される。可撓性チューブ60の一端は、エア吐出口42に接続される一方、他端は、小孔50に接続される。各小孔50、各可撓性チューブ60及び各エア吐出口42の直径は、環状管路40及びエア導入口41の直径よりも小さく設定される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上側成形面を有する上型と、該上型に対向配置され、下側成形面を有する下型とを備え、上記下側成形面に非通気性シートからなる合成樹脂製の遮音材と加熱状態にある繊維体からなる熱可塑性樹脂製の繊維吸音材とを順に載置した状態で上記上型及び下型を型閉じして上記遮音材と上記繊維吸音材とを上記上側成形面と上記下側成形面とで挟み込んで加圧するとともに冷却用エアを用いて急冷することにより、上記遮音材と上記繊維吸音材とが一体に積層されてなる防音成形体を得るよう構成されたコールド成形装置であって、
上記上型の内部には、上記上側成形面の全域に亘って対応する空洞部が設けられ、
上記上型の上側成形面には、当該上型及び下型の型閉じ時において、上記繊維吸音材に冷却用エアを吹き出すための小孔が所定の間隔をあけて多数形成され、
上記空洞部には、上記上側成形面に対応するように環状に延びる形状をなし、冷却用エアを導入する1つのエア導入口及び冷却用エアを吐出する多数のエア吐出口が形成された環状管路と、一端が上記エア吐出口に接続される一方、他端が上記小孔に接続される多数の可撓性チューブとが配設され、
上記各小孔、各可撓性チューブ及び各エア吐出口の直径は、上記環状管路及び上記エア導入口の直径よりも小さく設定されていることを特徴とするコールド成形装置。
【請求項2】
請求項1に記載のコールド成形装置において、
上記環状管路は、水平方向に延び、且つ、互いに平行に延びる一対の第1対向辺部と、該両第1対向辺部と直交する水平方向に延び、且つ、互いに平行に延びる一対の第2対向辺部とで平面視で矩形枠状をなす形状をなしており、
上記各エア吐出口は、上記各第1対向辺部において当該第1対向辺部の延長方向に所定の間隔を開けて並設されていることを特徴とするコールド成形装置。
【請求項3】
請求項2に記載のコールド成形装置において、
上記各小孔は、上記第1対向辺部に沿う方向に複数並設されるとともに、上記第2対向辺部に沿う方向にも複数並設されていることを特徴とするコールド成形装置。
【請求項4】
請求項3記載のコールド成形装置において、
上記エア導入口は、上記第2対向辺部に設けられていることを特徴とするコールド成形装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1つに記載のコールド成形装置において、
上記小孔の開口率は、0.009~6.5%であり、直径は、2mm~8mmであることを特徴とするコールド成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽量で吸音性能及び遮音性能に優れた防音成形体用のコールド成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に用いられる防音成形体の成形装置として、熱可塑性樹脂シート等の遮音材と熱成形フェルト等の吸音材とを一体に成形するコールド成形装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1に開示されているコールド成形装置は、上側成形面を有する上型と、下側成形面を有する下型とを備え、加熱炉内で加熱した熱可塑性樹脂シートと熱成形フェルトとを順に下型の下側成形面に載置した後、上型と下型とを型閉じして熱可塑性樹脂シートと熱成形フェルトとを上側成形面と下側成形面とで挟み込んで加圧することにより、遮音材と吸音材とが一体に積層されてなる積層体が得られ、しかる後、上型を若干上昇させて上型及び下型の外周部分のシール状態を解除し、その後、積層体の内部に上側成形面に開口する複数のエア通路から冷却用エアを積層体に供給して当該積層体内部を通過させた後、上型及び下型の外周部分から逃がすことにより、積層体を強制冷却して防音成形体を得るようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のコールド成形装置は、型閉じして熱可塑性樹脂シートと熱成形フェルトとを一体成形して積層体を得た後、上型を若干上昇させて積層体を冷却する強制冷却工程を設けているので、当該強制冷却工程を経る分だけ防音成形体の成形時間が増加してしまうという問題がある。
【0006】
また、特許文献1における積層体に冷却用エアを供給する上型の内部に設けられたエア通路は、穴加工により水平方向に延びるように形成された水平通路と、穴加工により垂直方向に延びるように形成され、先端が上側成形面に開口する一方、基端が水平通路に連続する複数の垂直通路とで構成され、各垂直通路の先端開口から冷却用エアを吹き出すことにより、積層体を冷却するようになっている。そのため、垂直通路を所望する形状に加工したり、或いは、上型の強度を維持するために、各垂直通路の間隔を広く開けるとともに、ある程度大きな直径の通路にする必要がある。したがって、各垂直通路の先端開口の間隔が広くなってしまうとともに、各先端開口の直径が大きくなってしまうので、積層体に冷却され易い部分と冷却され難い部分とが出てしまい、成形精度の低下や冷却時間の増加といった問題が生じてしまう。
【0007】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、遮音材と吸音材とを重ねて防音成形体を成形するコールドプレス成形装置において、防音成形体の成形精度を維持しつつ、かつ、成形時間を低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、上型内部に形成した空洞部に比較的大きな直径の環状管路と比較的小さな直径の多数の可撓性チューブとをそれぞれ配設するとともに、上型の上側成形面に多数の小孔を形成して当該各小孔から冷却用エアを供給するようにしたことを特徴とする。
【0009】
具体的には、上側成形面を有する上型と、該上型に対向配置され、下側成形面を有する下型とを備え、上記下側成形面に非通気性シートからなる合成樹脂製の遮音材と加熱状態にある繊維体からなる熱可塑性樹脂製の繊維吸音材とを順に載置した状態で上記上型及び下型を型閉じして上記遮音材と上記繊維吸音材とを上記上側成形面と上記下側成形面とで挟み込んで加圧するとともに冷却用エアを用いて急冷することにより、上記遮音材と上記繊維吸音材とが一体に積層されてなる防音成形体を得るよう構成されたコールド成形装置を対象とし、次のような対策を講じた。
【0010】
すなわち、第1の発明では、上記上型の内部には、上記上側成形面の全域に亘って対応する空洞部が設けられ、上記上型の上側成形面には、当該上型及び下型の型閉じ時において、上記繊維吸音材に冷却用エアを吹き出すための小孔が所定の間隔をあけて多数形成され、上記空洞部には、上記上側成形面に対応するように環状に延びる形状をなし、冷却用エアを導入する1つのエア導入口及び冷却用エアを吐出する多数のエア吐出口が形成された環状管路と、一端が上記エア吐出口に接続される一方、他端が上記小孔に接続される多数の可撓性チューブとが配設され、上記各小孔、各可撓性チューブ及び各エア吐出口の直径は、上記環状管路及び上記エア導入口の直径よりも小さく設定されていることを特徴とする。
【0011】
この第1の発明では、上型内部に形成した空洞部に環状管路を設けるとともに、この環状管路に設けられた各エア吐出口と上型の上側成形面に設けられた各小孔とをそれぞれ環状管路の直径よりも小さな直径で設定された可撓性チューブで接続するので、特許文献1の如き上型の内部に穴加工を施して冷却用エアの通路を形成する場合と比べて、各小孔に到達する冷却用エアの圧力差が低減されるとともに、上型の上側成形面に形成する各小孔を接近した位置にすることが可能になる。したがって、上側成形面をほぼ均等にしかも速く冷却することができるようになり、成形時における冷却ムラを低減して防音成形体の成形精度を維持することができる。また、防音成形体において冷却速度の速い部分と遅い部分との差が少なくなるので、成形時における冷却時間を短くすることができる。
【0012】
本発明では、多数の小孔と述べたが、繊維成形体の全域にバラつき無く冷却用エアが供給されるように、所定の小径の小孔が比較的微小間隔で接近して設けられていることを意味するものである。
【0013】
また、本発明では、小孔の径は、可撓性チューブに接続される小孔の直径を称するものである。この小孔にシャワーヘッドのような微細な孔、例えば、0.3mmの直径の微細な孔を開けたヘッド部材を上記小孔に嵌め込んで、微細な孔とすることも可能であるが、本発明では、この場合の微細な孔の直径でなく、このヘッド部材を嵌め込む小孔の直径のことを意味するものとする。
【0014】
なお、本発明では、吸音性及び遮音性を含む防音機能を防音性と呼ぶことにする。また、環状管路や可撓性チューブの直径は、いずれも内径のことである。
【0015】
第2の発明では、第1の発明において、上記環状管路は、水平方向に延び、且つ、互いに平行に延びる一対の第1対向辺部と、該両第1対向辺部と直交する水平方向に延び、且つ、互いに平行に延びる一対の第2対向辺部とで平面視で矩形枠状をなす形状をなしており、上記各エア吐出口は、上記各第1対向辺部において当該第1対向辺部の延長方向に所定の間隔を開けて並設されていることを特徴とする。
【0016】
この第2の発明では、各エア吐出口が、環状管路における平行に延びる一対の第1対向辺部にその延長方向に所定の間隔を開けて並設されているので、可撓性チューブを容易に接続でき、配置できる。
【0017】
第3の発明では、第2の発明において、上記各小孔は、上記第1対向辺部に沿う方向に複数並設されるとともに、上記第2対向辺部に沿う方向にも複数並設されていることを特徴とする。
【0018】
この第3の発明では、環状管路における平行に延びる一対の第1対向辺部に沿う方向に多数の小孔を設けるだけでなく、環状管路における一対の第1対向辺部と直交して水平に延びる一対の第2対向辺部に沿う方向にも多数の小孔が設けられているので、成形面における広い領域を均一に冷却することができる。
【0019】
第4の発明では、第3の発明において、上記エア導入口は、上記第2対向辺部に設けられていることを特徴とする。
【0020】
この第4の発明では、エア導入口が、各エア吐出口が設けられた環状管路の第1対向辺部ではなく環状管路の第2対向辺部に設けられているので、各エア吐出口をエア導入口から離れた位置にすることができ、各エア吐出口から吐出される冷却用エアの圧力差を大幅に低減することができる。
【0021】
第5の発明では、第1から第4のいずれか1つの発明において、上記小孔の開口率は、0.009~6.5%であり、直径は、2mm~8mmであることを特徴とする。
【0022】
この第5の発明では、小孔の開口率が0.009~6.5%であり、直径が2mm~8mmであるので、成形面において多くの小孔が接近する状態になり、防音成形体の全域を均一に且つ短時間で冷却することができる。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように、本発明によれば、従来の如き上型の内部に穴加工を施して冷却用エアの通路を形成する場合に比べて、上型の上側成形面に形成する多数の小孔を小径にしてかつ接近して設けることが可能となった。また、本発明では、上型の内部に環状管路を設けるとともに、当該環状管路と多数の小孔とを多数の可撓性チューブで接続することで環状管路から各可撓性チューブに吐出される冷却用エアの圧力差が低減されるようになり、各小孔から供給される冷却用エアの供給量のばらつきが減るので、成形時における冷却ムラを低減して防音成形体の成形精度を維持することができる。また、成形面における冷却速度の早い部分と遅い部分との差が少なくなるので、成形時における冷却時間を短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の実施形態1に係るコールド成形装置を示す概略断面図であり、型開きした上型及び下型の間に遮音材と吸音材とをセットした状態を示す図である。
【
図2】
図1のコールド成形装置の上型内部における概略斜視図である。
【
図3】
図1のコールド成形装置の上型内部における概略平面図である。
【
図4】本発明の実施形態2に係るコールド成形装置の上型内部における概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0026】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係るコールド成形装置10を示す。該コールド成形装置10は、下方に向く上側成形面21を有する上型20と、上方に向く下側成形面31を有する下型30とを備え、該下型30は、フロアに設置された基台11の上面に取り付けられる一方、上型20は、基台11の上方に対向配置された昇降台12の下面に取り付けられている。このコールド成形装置10では、予め別工程において非通気性を有する合成樹脂シートから下側成形面31に対応する形状に成形した遮音材2と、シート状の繊維体からなる熱可塑性樹脂製の繊維吸音材3とをそれぞれ用意し、繊維吸音材3を加熱軟化させた状態で遮音材2から順に下型30の下側成形面31に載置し、その後、昇降台12を下降させて上型20と下型30とを型閉じして遮音材2と繊維吸音材3とを上側成形面21と下側成形面31とで挟み込んで加圧するとともに冷却用エアを用いて急冷することにより、遮音材2と繊維吸音材3とが一体に積層されてなる防音成形体1を所定形状で得るようになっている。尚、遮音材2は、ポリ塩化ビニルで形成されたオレフィンシート等からなり、繊維吸音材3は、例えば、短繊維、極細繊維を熱融着繊維で混合した繊維層からなる。
【0027】
上型20の内部には、
図1乃至
図3に示すように、上側成形面21のほぼ全域に亘って対応する大きさの空洞部22が設けられている。該空洞部22には、例えばステンレスパイプからなる平面視で矩形枠状をなす環状管路40が配設され、該環状管路40は、上側成形面21に対応するように環状に延びる形状をなしている。詳細には、環状管路40は、水平方向に延び、且つ、互いに平行に延びる一対の対向する長辺部40a(第1対向辺部)と、両長辺部40aと直交する水平方向の延び、且つ、互いに平行に延びる一対の短辺部40b(第2対向辺部)とで構成されている。一方の短辺部40bの略中央部分には、冷却用エアを導入するエア導入口41が設けられる一方、各長辺部40aには、冷却用エアを吐出するそれぞれ多数の微細な孔からなるエア吐出口42が各長辺部40aの延長方向に所定の間隔を開けて並設されている。つまり、エア導入口41は、環状管路40の長辺部40aとは異なるエア吐出口42が設けられてない短辺部40bに設けられている。エア導入口41が設けられた短辺部40bには、エア吐出口42が設けられていないので、各エア吐出口42をエア導入口41から離れた位置にすることができ、各エア吐出口42から吐出される冷却用エアの圧力差を大幅に低減することができる。
【0028】
上型20の上側成形面21には、上型20及び下型30の型閉じ時において、繊維吸音材3に向けて冷却用エアを吹き出すための多数の微細な小孔50が所定の間隔をあけて多数形成されている。
【0029】
空洞部22には、例えば、ナイロンチューブ等で構成され、一端がエア吐出口42に接続される一方、他端が小孔50に接続される多数の可撓性チューブ60が配設されている。各エア吐出口42が、環状管路40における平行に延びる一対の長辺部40aにその延長方向に所定の間隔を開けて並設されているので、可撓性チューブ60を容易に接続でき、配置できる。また、上側成形面21は、防音成形体1の形状に応じて凹凸形状に変化しているが、環状管路40はほぼ水平に延びる形状をなしており、対応する各エア吐出口42と各小孔50との間の距離はそれぞれ異なるが、可撓性チューブ60の長さや向きを調整することで、容易に接続できる。また、上側成形面21の形状によって小孔50の向きが異なっていても、可撓性チューブ60の向きを自由に変更できるので、簡単に接続できる。更に、異なる場所に位置する小孔50から吹き出される冷却用エアに圧力差があっても、可撓性チューブ60の長さを調整することで、それぞれ吹き出される冷却用エアの圧力差を調整することも可能である。
【0030】
空洞部22には、例えばステンレスパイプからなる冷却用エアの供給配管43が配設されている。該供給配管43は、エア導入口41に接続されて垂直方向に延びる第1供給管43a、該第1供給管43aに接続されるとともに環状管路40の短辺部40bに沿って延びる第2供給管43b及び当該第2供給管43bに接続されて長辺部40aに沿って当該長辺部40aと略同じ長さに延びる第3供給管43cを備え、当該第3供給管43cが上型20の外側に位置する冷却用エアの供給源(図示省略)に接続されている。
【0031】
環状管路40の直径及びエア導入口41の直径は比較的に大きな径になっているが、エア吐出口42の直径は比較的に小さな径になっている。冷却用エアの流れをスムーズにするためには、環状管路40及びエア導入口41はほぼ同じ直径からなることが好ましく、各小孔50、可撓性チューブ60及びエア吐出口42は、ほぼ同じ直径からなることが好ましい。この実施形態1では、環状管路40、エア導入口41及び供給配管43のそれぞれの直径は、それぞれ35mmになっている。一方、エア吐出口42、可撓性チューブ60及び小孔50の直径は、それぞれ4mmになっている。
図1では、図示を省略したが、空洞部22の内面には、補強用及び環状管路40の支持用に複数のリブが設けられている。
【0032】
各小孔50は、
図3に示すように、平面視で、環状管路40の長辺部40aに沿う方向と短辺部40bに沿う方向とに所定の間隔を開けてジグザグに設けられ、隣接する小孔50間の間隔は100mmになっている。エア吐出口42は、
図2に示すように、環状管路40における長辺部40aの両側面に所定間隔で長辺部40aの延長方向に並設されている。一方の側面のエア吐出口42は、長辺部40aの延長方向に並んだ2列の小孔50に可撓性チューブ60で接続され、両側面のエア吐出口42は、4列分の小孔50に可撓性チューブ60で接続されている。その結果、両長辺部40aにおいてトータル8列分の小孔50に可撓性チューブ60が接続されている。なお、このような小孔50の並び方は、一例に過ぎず、他の並び方でも良く、列数も8列に限定されない。また、
図2において、格子状に延びる2点鎖線で示すラインは、小孔50が、格子状に並んでいることを説明するために引いただけであり、実際の上型20には無いラインである。
【0033】
上型20の上側成形面21に形成された小孔50の開口率は、0.15%である。なお、
図2及び
図3において示される2点鎖線は、防音成形体1の平面での大きさを示す。
【0034】
小孔50は、その直径が大き過ぎる場合、吹き出す冷却用エアによる繊維吸音材3に直接当たる部分と直接当たらない部分との間における冷却に差が出て目立つので好ましくなく、その一方で、その直径が小さ過ぎる場合、製作コストが増加してしまうので、実用的には、小孔50の直径を2mm~8mmの範囲とすることが好ましい。なお、小孔50の直径を更に小さいものとする場合には、シャワーヘッドのような微細穴(例えば直径0.3mm)が多数設けられたキャップ等を小孔50に嵌め込むようにすればよい。各小孔50の間の寸法は30mm~200mmになっている。上型20の上側成形面21に形成された小孔50の開口率についても、上記と同様の理由で、0.009~6.5%とすることが好ましい。
【0035】
本発明のコールド成形装置10は、上型20と下型30とを型閉じして上側成形面21及び下側成形面31を合わせた際に、両成形面21,31の周囲に冷却用エアを排出する隙間を敢えて設けていない。
【0036】
なお、冷却用エアの逃げ道を必要とする場合には、上型20或いは下型30に、冷却用エアの逃げ道を設けるようにしても良い。一方、従来技術のように、冷却用エアを排出するために型閉じ状態から上型20を少し上昇させて上型20と下型30との間に隙間を形成する工程を設ける必要はない。
【0037】
プレス成形時のプレス圧やエア圧は、遮音材2の素材、厚さ、繊維吸音材3の厚さ、目付及び防音成形体1の面積などによって異なるが、プレス圧を0.3MPa~2.0MPaとし、エア圧を0.15MPa~0.4MPaとすることが好ましい。また、加圧冷却時間は、数十秒である。
【0038】
本発明では、上型20内部に大きな空洞部22を設け、この空洞部22には、平面視で矩形枠状をなす環状管路40が配設され、この環状管路40に形成した各エア吐出口42と上型20の上側成形面21に設けた各小孔50とをそれぞれ比較的小径な可撓性チューブ60で接続しているので、特許文献1の如き上型の内部に穴加工を施して冷却用エアの通路を形成する場合と比べて、各小孔50に到達する冷却用エアの圧力差が低減されるとともに、上型20の上側成形面21に形成する各小孔50を接近した位置にすることが可能になる。
【0039】
本発明では、小径の多数の小孔50がそれぞれ接近した位置になっているので、上型20の小孔50から繊維吸音材3の全域にバラつき無く冷却用エアが供給されるようになり、冷却時間を短くでき、かつ冷却ムラの発生を抑制することができる。
【0040】
また、多数の小孔50を接近した配置にするとともに当該各コアな50と環状管路40とを多数の可撓性チューブ60を用いて接続することで各エア吐出口42から吐出されて小孔50から吹き出される冷却用エアの圧力差が低減されるようになる。したがって、防音成形体1をほぼ均等に速く冷却することができ、成形時における冷却ムラを低減して防音成形体1の成形精度を維持することができる。また、防音成形体1において冷却速度の速い部分と遅い部分との差が少なくなるので、成形時における冷却時間を短くすることができる。
【0041】
(実施形態2)
実施形態2では、実施形態1と異なるものだけの説明に留める。実施形態2において実施形態1と異なるのは、成形品が大型であるために、冷却用エアの配管系統を2系統にしたものである。実施形態1の配管系統、即ち、エア吐出口42が設けられてない第2供給管43bを基準にして、環状管路40及び供給配管43を対称に配置し、細長い防音成形体1の右半分と左半分とを2系統で冷却するようにしたものである。
【0042】
上述の如き細長い大型の防音成形体1をコールド成形する場合、防音成形体1の全域を覆うように環状管路40を1系統だけとすると、端部に位置するエア吐出口42から吐出される冷却用エアの圧力差が大きくなり、小孔50から供給される冷却用エアの圧力差が顕著になるおそれがあるが、実施形態2では2系統としたので、各エア吐出口42から吐出される冷却用エアの圧力差が小さくなり、成形品の全域をバラつき無く冷却することができる。
【0043】
また、実施形態2では、冷却系統を2系統としたので、それぞれの系統において、冷却用エアの圧力や小孔50の径や配置等を変更することも可能である。
【0044】
また、2系統の環状管路40を同じ大きさとしたが、異なる大きさとしても良い。防音成形体1の大きさに応じては、3系統以上とすることも可能である。
【0045】
(実施形態3)
実施形態3では、実施形態1と異なるものだけの説明に留める。実施形態3では、下型30の下半部分に中空部32が水平方向の全域に亘って形成され、該中空部32は、真空ポンプ36に接続されている。
【0046】
下型30の上半部分には、上下に延びる複数の真空孔33が所定の間隔をあけて形成され、該各真空孔33の上端は、下側成形面31に開口する一方、下端は、中空部32に連通している。
【0047】
また、下型30の上半部分には、下方に開口するとともに蛇行して延びる凹条溝部34が形成され、該凹条溝部には、冷却用配管35が配設されている。
【0048】
そして、実施形態3のコールド成形装置10は、シート状の遮音材2とシート状の繊維吸音材3との両方を加熱軟化させた状態で遮音材2から順に下型30の下側成形面31に載置し、その後、昇降台12を下降させて上型20と冷却用配管35により冷却状態の下型30とを型閉じして遮音材2と繊維吸音材3とを上側成形面21と下側成形面31とで挟み込んで加圧するとともに、冷却用配管35で下型30を冷却しつつ真空ポンプ36により真空引きしながら冷却用エアを上型20から吐出して急冷することにより、遮音材2と繊維吸音材3とが一体に積層されてなる防音成形体1を所定形状で得るようになっている。
【0049】
尚、実施形態1~3では、上側成形面21に多数の小孔50をジグザグに配置したが、この配置に限られるものではなく、上側成形面21に多数の小孔50を縦横に平行に所定の間隔で設けるようにしても良い。
【0050】
また、実施形態1~3のコールド成形装置1は、防音成形体を1つ成形しているが、防音成形体1が小物である場合には、複数個の防音成形体1を同時に成形するような構成にすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
車両用の防音成形体、例えば、ダッシュインシュレータ、内装トリム、トノボードなどを成形するコールドプレス成形装置に好適である、
【符号の説明】
【0052】
1 防音成形体
2 遮音材
3 繊維吸音材
10 コールド成形装置
20 上型
21 上側成形面
22 空洞部
30 下型
31 下側成形面
40 環状管路
40a 長辺部(第1対向辺部)
40b 短辺部(第2対向辺部)
41 エア導入口
42 エア吐出口
43 供給配管
43a 第1供給管
43b 第2供給管
43c 第3供給管
50 小孔
60 可撓性チューブ