(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022024331
(43)【公開日】2022-02-09
(54)【発明の名称】磁気ビーズ撹拌機構を備えた核酸増幅反応用装置
(51)【国際特許分類】
C12M 1/00 20060101AFI20220202BHJP
C12Q 1/6844 20180101ALI20220202BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20220202BHJP
【FI】
C12M1/00 A
C12Q1/6844 Z
C12N15/09 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020122057
(22)【出願日】2020-07-16
(71)【出願人】
【識別番号】899000057
【氏名又は名称】学校法人日本大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲桑▼原 正靖
(72)【発明者】
【氏名】藤田 博仁
【テーマコード(参考)】
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
4B029AA07
4B029AA23
4B063QA11
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR32
4B063QR62
4B063QS24
4B063QS36
(57)【要約】
【課題】磁気ビーズに固定化されたプライマーを用いた核酸増幅反応をより効率よく進行させるための装置を提供すること。
【解決手段】磁気ビーズに固定化されたプライマーオリゴヌクレオチドを含む反応試薬を収容した反応容器内で核酸増幅反応を進行させるための装置であって、交流電源に接続可能なコイル、およびコイル内部に設置され、前記反応容器を載置可能な熱伝導性の磁性体からなる支持体、を含む、装置、好ましくはさらに前記支持体を加温するヒーターを含む、装置。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気ビーズに固定化されたプライマーオリゴヌクレオチドを含む反応試薬を収容した反応容器内で核酸増幅反応を進行させるための装置であって、
交流電源に接続可能なコイル、および
コイル内部に設置され、前記反応容器を載置可能な熱伝導性の磁性体からなる支持体、
を含む、装置。
【請求項2】
前記支持体は、反応容器を挿入できる1又は複数の窪みを有する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記磁性体が鉄含有合金である、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
さらに、前記支持体を加温するヒーターを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
核酸増幅反応がSATIC反応である、請求項1~4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
磁気ビーズに固定化されたプライマーオリゴヌクレオチドを含む反応試薬を収容した反応容器内で核酸増幅反応を進行させる方法であって、反応容器を交流磁場内に置き、反応容器内の磁気ビーズを交流磁場により攪拌しつつ核酸増幅反応を行うことを特徴とする方法。
【請求項7】
交流磁場が交流電源に接続されたコイル内の磁場である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
交流周波数が1~50Hzである、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
交流電圧が10~50Vである、請求項6~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記反応容器を請求項1~4のいずれか一項に記載の装置の支持体上に載置して反応を行う、請求項7~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
核酸増幅反応がSATIC反応である、請求項6~10のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は検査や研究の分野などで使用される、核酸増幅反応を効率よく実行するための方法及びそれに使用される核酸増幅反応用装置に関する。
【背景技術】
【0002】
核酸増幅反応はウイルスなどの病原体の検出や遺伝子検査などに汎用される技術であるが、検出や検査を効率よく行うため、より簡便で迅速な手法が求められる。
【0003】
発明者らは、一本鎖環状DNAとプライマーを用い、標的(鋳型)核酸と一本鎖環状DNAとプライマーの三者複合体を形成させ、等温で核酸を増幅させるSATIC法を開発した(特許文献1)。発明者らはさらにSATIC法を簡便に行うため、プライマーを磁気ビーズに固定化して反応を行うことを開示した(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO 2016/152936
【特許文献2】PCT/JP2020/016793
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の通り、プライマーを磁気ビーズに固定化することでSATIC法の検出感度が向上したが、更なる検出感度向上と、検出時間の短縮が求められていた。
そこで、本発明は、磁気ビーズに固定化されたプライマーを用いた核酸増幅反応をより効率よく進行させることのできる方法および装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を行った。そして、まず、磁気ビーズを含む反応液を撹拌することでSATIC法における検出時間を顕著に短縮できることを見出した。そして、撹拌を自動的に行うことのできる装置を検討した結果、交流電源に接続可能なコイルと、コイル内部に設置され、前記反応容器を載置可能な熱伝導性の磁性体からなる支持体を含む装置を用い、コイルに交流磁場を印加することで、磁力によりSATIC反応試薬に含まれる磁気ビーズを振動させることで機械的な撹拌機構なしで撹拌ができ、かつ、当該支持体をヒーターで加温することで、反応温度を制御でき、SATIC反応を迅速に遂行できる装置が簡便に作製できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
本発明の要旨は以下の通りである。
[1]磁気ビーズに固定化されたプライマーオリゴヌクレオチドを含む反応試薬を収容した反応容器内で核酸増幅反応を進行させるための装置であって、
交流電源に接続可能なコイル、および
コイル内部に設置され、前記反応容器を載置可能な熱伝導性の磁性体からなる支持体、
を含む、装置。
[2]前記支持体は、反応容器を挿入できる1又は複数の窪みを有する、[1]に記載の装置。
[3]前記磁性体が鉄含有合金である、[1]または[2]に記載の装置。
[4]さらに、前記支持体を加温するヒーターを含む、[1]~[3]のいずれかに記載の装置。
[5]核酸増幅反応がSATIC反応である、[1]~[4]のいずれかに記載の装置。
[6]磁気ビーズに固定化されたプライマーオリゴヌクレオチドを含む反応試薬を収容した反応容器内で核酸増幅反応を進行させる方法であって、反応容器を交流磁場内に置き、反応容器内の磁気ビーズを交流磁場により攪拌しつつ核酸増幅反応を行うことを特徴とする方法。
[7]交流磁場が交流電源に接続されたコイル内の磁場である、[6]に記載の方法。
[8]交流周波数が1~50Hzである、[6]または[7]に記載の方法。
[9]交流電圧が10~50Vである、[6]~[8]のいずれかに記載の方法。
[10]前記反応容器を[1]~[4]のいずれかに記載の装置の支持体上に載置して反応を行う、[7]~[9]のいずれかに記載の方法。
[11]核酸増幅反応がSATIC反応である、[6]~[10]のいずれかに記載の方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の方法および装置によれば、制御された温度下で、磁気ビーズを撹拌しつつ、SATIC反応などの核酸増幅反応を行うことができるため、振とう機などを用いることなく簡便かつ迅速に核酸増幅反応を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の装置の一態様を示す模式図。Aがコイルを、Bが支持体を示し、Cがコイルの中に支持体を配置した装置の模式図である。
【
図2】本発明の装置の使用態様の一態様を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の方法は、磁気ビーズに固定化されたプライマーオリゴヌクレオチドを含む反応試薬を収容した反応容器内で核酸増幅反応を進行させる方法であって、反応容器を交流磁場内に置き、反応容器内の磁気ビーズを交流磁場により攪拌しつつ核酸増幅反応を行うことを特徴とする。
【0011】
<核酸増幅反応>
核酸増幅反応は、標的遺伝子配列を含む鋳型核酸に対し、プライマーをハイブリダイズさせて、核酸ポリメラーゼによりポリヌクレオチド鎖を伸長させる反応であって、磁気ビーズに固定化されたプライマーを用いる方法であればよいが、等温反応が好ましく、後述のSATIC法がより好ましい。
【0012】
磁気ビーズとしては、粒子状の不溶性担体であり、その平均粒径は例えば10 nm~100 μmであり、好ましくは30nm~10μmであり、より好ましくは30nm~1μm、さらに好ましくは30nm~500nmである。ビーズの材質は磁性材料であれば特に限定されないが、例えば、フェライトやマグネタイトなどの酸化鉄、酸化クロム、コバルトなどの磁性材料が挙げられる。
【0013】
磁気ビーズにはプライマーが1種類または2種類以上固定化されていればよく、SATIC法の場合は、後述の通り、第1プライマーおよび第2プライマーが同一の磁気ビーズに固定化されていることが好ましい。
【0014】
プライマーを磁気ビーズに固定化するためには、公知の方法を採用することができる。例えば、プライマーの5’末端にビオチン、アミノ基、アルデヒド基又はSH基等を修飾し、磁気ビーズの表面にアビジンもしくはその誘導体(例えば、ストレプトアビジン、ニュートラビジンなど)を導入するか、またはアミノ基、アルデヒド基、SH基などと反応する官能基を導入し、両者を反応させることで、プライマーを磁気ビーズに固定化することができる。
【0015】
核酸増幅反応用反応液には、前記プライマー以外に、核酸増幅反応を行う核酸ポリメラーゼと、核酸伸長反応の基質となるデオキシヌクレオチド三リン酸(dNTPS)、さらには必要に応じて反応緩衝剤や界面活性剤などが含まれてよい。
【0016】
反応容器は特に制限されないが、例えば、マイクロチューブやマルチウェルプレート(例えば、96穴もしくは384穴)などを使用することができる。
【0017】
<核酸増幅反応用装置>
本発明の装置は、磁気ビーズに固定化されたプライマーオリゴヌクレオチド(以下、単にプライマーと呼ぶ)を含む反応試薬を収容した反応容器内で核酸増幅反応を進行させるための装置であって、交流電源に接続可能なコイル、およびコイル内部に設置され、前記反応容器を載置可能な熱伝導性の磁性体からなる支持体、を含む。
【0018】
コイルは内部に磁界を生じさせることのできるものであれば特に制限はなく、通常のコイルを使用することができる。例えば、筒状体の周りにポリウレタンやエナメルなどで被覆された銅線などの金属線やカーボンファイバーなどの導電線を巻くことで作製することができる。筒状体は磁気を通すことができるものであれば特に制限はなく、ステンレスなどの金属材料でもよいし、プラスチック材料でもよい。
なお、円柱状の支持体を使用するときには、コイルは当該支持体に直接導電線を巻くことで作製することもできる。
また、コイルを構成する導電線の両端は交流電源に接続できるように、接続プラグなどを有していてもよい。
コイルの特性(インダクタンス)は10~500mHとすることが好ましく、50~200mHとすることがより好ましい。コイル特性はコイルの巻き数や径により調整することができる。
【0019】
コイルの内部に配置される支持体はコイル内部の磁界を増強できる芯材(磁芯)として機能しうるものであって、ヒーターによって反応温度に加熱できる材料、すなわち、熱伝導性の磁性体であればよく、その材料は特に制限されないが、鉄、フェライトなどの酸化鉄、ステンレスなどの鉄含有合金などが挙げられる。
【0020】
支持体の形状はコイル内に配置可能で、反応容器を載置できる形状であれば特に制限されないが、例えば、柱状であり、好ましくは(略)円柱状である。好ましくは、支持体の上面が反応容器を載置できるような形状を取っており、例えば、平面でもよいし、反応容器として反応チューブを用いる場合には、反応チューブを挿入できる1又は複数の窪みを有していてもよい(例えば、
図2)。
なお、前述の筒状体と支持体とを同じ材料で形成する場合には、筒状体と磁性体は一体成型されてもよい。
一方で、支持体は反応時にコイル内に配置されれば十分であるため、支持体とコイルが別々に準備され、反応時に、反応容器を載置した支持体をコイル内に一定時間配置させることで核酸増幅反応を進行させてもよい。
【0021】
また、載置とは、反応容器内の反応液が支持体から熱を受けて加熱されるような態様であれば特に制限されない。
【0022】
支持体はヒーター(加熱手段)に接続され、反応温度に加温される。コイルと支持体を含む装置をホットプレートのような加熱板を有するヒーター上に置き、支持体が加熱板と接することで支持体が加温されてもよい。
【0023】
以下、
図1および
図2を参照して本発明の装置及びそれを利用した核酸増幅反応について説明する。
図1(A)のように、コイルは筒状体の周りに金属線(導電線)を巻きつけることにより形成される。
そして、
図1(B)のような円柱部を有する磁性体を用意し、コイル内に設置することで、核酸増幅反応用装置を構成することができる(
図1C)。なお、コイルについては筒状体の全体に金属線を巻き付ける必要はなく、コイル内の磁性体(支持体)が存在する部分の外側を覆う程度に金属線が巻かれていれば十分である。
【0024】
図2に使用例の一態様を示す。
まず、筒状体12に金属線11を巻きつけることで形成されたコイルと、コイル内に配置された支持体13からなる装置10をホットプレート14上に置き、磁性体(支持体13)を加熱しておく。
そして、標的核酸および磁気ビーズに固定化されたプライマーや酵素等を含む反応試薬を反応液を収容した反応チューブ15を磁性体の上部に設けられた窪み(穴)に挿入することで、反応液を37℃に加温し、反応が開始される。
なお、
図2では、窪みを有する磁性体を用いて窪みに挿入して反応を行ったが、このような窪みは必須でなく、柱状の磁性体の上面に反応チューブを横たえて反応させてもよい。
【0025】
そして、コイルの導電線の両端に接続された交流電源から交流電流を流し、交流磁場を印加する。これにより、支持体上の磁場が変化し、チューブ内の磁気ビーズが撹拌され、反応が効率よく進行する。
【0026】
なお、本発明の方法においては、磁気ビーズに固定化されたプライマーオリゴヌクレオチドを含む反応試薬を収容した反応容器を交流磁場内に置くことで、反応容器内の磁気ビーズを交流磁場により攪拌しつつ核酸増幅反応を行うことができるので、必ずしも上記のような装置を用いる必要はない。例えば、交流電源に接続されたコイル内に反応容器を置くことで、磁気ビーズは交流磁場によって撹拌されるので、支持体はコイル内の磁場を増強するために用いることが好ましいものの、必須ではない。例えば、ヒーター上にコイルを置き、コイル内のヒーター上に反応容器を直接置いてコイルに交流電流を流すことでも反応は進行させることができる。
【0027】
本発明の方法においては、交流電圧の強さ(Vp-p)は10~50Vが好ましく、10~30Vがより好ましい。また、交流電流の周波数は1~50Hzが好ましく、2~20Hzがより好ましい。この範囲に調節することで、核酸増幅反応を阻害せず、検出時間を短縮することができるので特に好ましい。
【0028】
以下、核酸増幅反応の好ましい態様であるSATIC法について説明する。
SATIC法は、特許文献1に開示されている一本鎖環状DNAとプライマーを用い、標的(鋳型)核酸と一本鎖環状DNAとプライマーの三者複合体を形成させ、等温(37℃)で核酸を増幅させる方法であり、好ましくは以下で説明する第1および第2の一本鎖環状DNAと第1および第2のプライマーを用いる方法を意味する。
【0029】
好ましいSATIC法の態様においては、
(i)標的核酸の第1の部位に相補的な10~30塩基の配列と、
該配列の5’側に隣接した、7~8塩基の第1プライマー結合配列と、
第2一本鎖環状DNA結合配列と、
を含む第1一本鎖環状DNAと、
(ii)標的核酸の、第1の部位の3’側に隣接した第2の部位に相補的な8~15塩基の配列と、
該配列の3’側に隣接した、第1一本鎖環状DNAの第1プライマー結合部位に相補的な7~8塩基の配列と、
を含む第1のオリゴヌクレオチドプライマーと、
(iii)第1一本鎖環状DNAの第2一本鎖環状DNA結合配列と同一の配列と、
該配列の5’側に隣接した、第2プライマー結合配列と、
を含む、第2一本鎖環状DNAと、
(iv)第1一本鎖環状DNAの第2一本鎖環状DNA結合配列の5’側に隣接した部位と同一の配列と、
該配列の3’側に隣接した、第2一本鎖環状DNAの第2プライマー結合配列に相補的な配列と、
を含む、第2のオリゴヌクレオチドプライマーと、
が使用され、
前記第1のオリゴヌクレオチドプライマーは、その5’末端を介して、磁気ビーズと結合しており、
前記第2のオリゴヌクレオチドプライマーは、その5’末端を介して、前記第1のオリゴヌクレオチドプライマーが結合している前記磁気ビーズと結合している。
【0030】
<第1一本鎖環状DNA>
第1一本鎖環状DNAは、標的核酸の第1の部位に相補的な10~30塩基の配列と、
該配列の5’側に隣接した、7~8塩基のプライマー結合配列と、
第2一本鎖環状DNA結合配列と、
を含む。
【0031】
SATIC法について、
図3を参照して説明する。ただし、一本鎖環状DNAでは、時計回りに5’→3’である。また、
図3では、便宜上、磁気ビーズは記載していない。
第1一本鎖環状DNA20は標的核酸21の第1の部位211に相補的な配列201と、その5’側に連結したプライマー結合配列202と、第2一本鎖環状DNA結合配列203を含む。
配列201の長さは、通常、10~30塩基であり、好ましくは15~25塩基であり、GC含量は好ましくは30~70%である。配列202の長さは7塩基または8塩基であり、配列は特に制限されないが、GC含量は好ましくは30~70%である。第1一本鎖環状DNA20全体の長さは、好ましくは35~100塩基である。
【0032】
第1一本鎖環状DNA20は、一本鎖DNA(ssDNA)を環状化することによって得ることができる。一本鎖DNAの環状化は、任意の手段によって行うことができるが、例えば、CircLigase(登録商標)、CircLigase II(登録商標)、ssDNA Ligase(Epicentre社)、ThermoPhage ligase(登録商標) single-stranded DNA(Prokzyme社)を用いて行うことができる。
【0033】
<第1オリゴヌクレオチドプライマー>
第1オリゴヌクレオチドプライマー22は、標的核酸21の、第1の部位211の3’側に隣接した第2の部位212に相補的な8~15塩基の配列221と、その3’側に連結された、第1一本鎖環状DNA20のプライマー結合部位202に相補的な7~8塩基の配列222と、を含む。
【0034】
第1のオリゴヌクレオチドプライマー22は、その5’末端を介して、磁気ビーズと結合している。
第1のオリゴヌクレオチドプライマー22の5’末端として、例えば、ビオチン、アミノ基、アルデヒド基、又はSH基で修飾されたものなどが挙げられる。磁気ビーズとしては、例えば、アビジン(その誘導体、すなわち、例えば、ストレプトアビジン、ニュートラ
ビジンなどを含む。)が固定されている磁気ビーズ、また、アミノ基、アルデヒド基、又はSH基と反応する官能基を有するシランカップリング剤で表面処理された磁気ビーズなどが挙げられる。固定化は常法に従えばよい。
【0035】
磁気ビーズは、第1のオリゴヌクレオチドプライマー22と後述する第2オリゴヌクレオチドプライマー25とを近傍に固定化する。両者が近傍に存在することで、第1オリゴヌクレオチドプライマー22から第1増幅産物23が増幅される段階と、第2オリゴヌクレオチドプライマー25から第2増幅産物26が増幅される段階とが効率的に行われ、結果として検出感度の著しい向上が達せられる。
【0036】
好ましい磁気ビーズの形状としては、粒子状の不溶性担体であり、その平均粒径は例えば10 nm~100 μmであり、好ましくは30nm~10μmであり、より好ましくは30nm~1μm、さらに好ましくは30nm~500nmである。磁気ビーズの材質は、例えば、フェライトやマグネタイトなどの酸化鉄、酸化クロム、コバルトなどの磁性材料である。
【0037】
<第2一本鎖環状DNA>
第2一本鎖環状DNA24は、第1一本鎖環状DNA20の第2一本鎖環状DNA結合配列203と同一の配列241と、
該配列の5’側に隣接した、第2プライマー結合配列242と、
を含む。
配列203の長さは、通常、10~30塩基であり、好ましくは15~25塩基であり、GC含量は好ましくは30~70%である。配列242の長さは7塩基または8塩基であり、配列は特に制限されないが、GC含量は好ましくは30~70%である。配列242の長さは7塩基または8塩基であり、配列は特に制限されないが、GC含量は好ましくは30~70%である。第2一本鎖環状DNA24全体の長さは、好ましくは35~100塩基である。第2一本鎖環状DNA24は上述した方法で、一本鎖DNA(ssDNA)を環状化することによって得ることができる。
【0038】
第2一本鎖環状DNA24は、検出用試薬結合配列に相補的な配列を含むことが好ましい。該検出用試薬結合配列としては、例えばグアニン四重鎖形成配列が挙げられる。
グアニン四重鎖形成配列としては、Nat Rev Drug Discov. 2011 Apr; 10(4): 261-275.に記載されたような配列が挙げられ、G3N1-10G3N1-10G3N1-10G3で表されるが、具体的には、特許文献1に記載の配列などが例示される。よって、グアニン四重鎖形成配列に相補的な配列243としては、C3N1-10C3N1-10C3N1-10C3が例示される。すなわち、連続する3つのCが、1~10個(好ましくは1~5個)の任意の塩基(N=A,T,GまたはC)からなる配列をスペーサーとして、4回繰り返される配列である。
【0039】
<第2オリゴヌクレオチドプライマー>
第2オリゴヌクレオチドプライマー25は、第1一本鎖環状DNA20の第2一本鎖環状DNA結合配列203の5’側に隣接した部位204と同一の配列251(好ましくは8~15塩基の配列)と、
該配列の3’側に隣接した、第2一本鎖環状DNA24の第2プライマー結合配列242に相補的な配列252(好ましくは7~8塩基の配列)と、
を含む。
【0040】
第2のオリゴヌクレオチドプライマー25は、その5’末端を介して、第1のオリゴヌクレオチドプライマー22が結合している前記磁気ビーズと結合している。
すなわち、第1のオリゴヌクレオチドプライマー22は、その5’末端がビオチン等で修飾されており、該ビオチン等を介して、アビジン等が固定されている磁気ビーズと結合しており、第2のオリゴヌクレオチドプライマー25は、その5’末端がビオチン等で修飾
されており、該ビオチン等を介して、第1のオリゴヌクレオチドプライマー22が結合している前記磁気ビーズと結合していることが好ましい。
【0041】
磁気ビーズに固定化された、第1オリゴヌクレオチドプライマー22と第2オリゴヌクレオチドプライマー25の量比は、モル比で、好ましくは1:10~1:100であり、より好ましくは1:10~1:30であり、さらに好ましくは1:10~1:25である。
【0042】
増幅反応時(使用時)の第1オリゴヌクレオチドプライマー22の濃度は、好ましくは0.0025 pmol/μL以上、より好ましくは0.005 pmol/μL以上であり、一方で、好ましくは0.04 pmol/μL以下、より好ましくは0.02 pmol/μL以下である。
また、増幅反応時(使用時)の第2オリゴヌクレオチドプライマー25の濃度は、好ましくは0.0125 pmol/μL以上、より好ましくは0.025 pmol/μL以上であり、一方で、0.8 pmol/μL以下、より好ましくは0.4 pmol/μL以下である。
【0043】
増幅反応時(使用時)の第1一本鎖環状DNA20と第2一本鎖環状DNA24の量比は、モル比で、好ましくは1:2~1:1000、より好ましくは1:3~1:500、さらに好ましくは1:4~1:400である。
【0044】
また、増幅反応時(使用時)の第1一本鎖環状DNA20の濃度は、下限が例えば0.1nM以上、1nM以上、10nM以上、50nM以上であり、一方で、上限が例えば500nM以下、200nM以下である。
また、増幅反応時(使用時)の第2一本鎖環状DNA24の濃度は、下限が例えば20nM以上、40nM以上、100nM以上、200nM以上であり、一方で、上限が例えば1000nM以下、500nM以下である。
【0045】
<増幅方法>
図3に示されるように、まず、標的核酸21に第1一本鎖環状DNA20およびプライマー22をハイブリダイズさせて三者の複合体を形成させた後、ローリングサークル増幅(RCA)法によって標的核酸21に基づく核酸増幅反応を行う。
【0046】
ハイブリダイゼーションの条件は、当業者であれば、一本鎖環状DNA20と標的核酸21とプライマーの組み合わせを検討し、適宜設定できる。
【0047】
RCA法はLizardi et al., Nature Genet. 19: 225-232 (1998);米国特許第5,854,033号及び同第6,143,495号;PCT出願WO97/19193などに記載されている。RCA法は、例えば、上述したようなphi29 DNA polymeraseなどの鎖置換型DNAポリメラーゼを用いることで行うことができる。
【0048】
RCAによるDNAの伸長反応は、例えば、25℃~65℃の範囲の一定の温度において実施される。反応温度は、酵素の至適温度とプライマー鎖長に基づく変性温度(プライマーがDNAに結合(アニール)/解離する温度帯)に基づいて通常の手順により適宜設定される。さらに、一定の比較的低温においても実施される。例えば、鎖置換型DNA合成酵素としてphi29DNAポリメラーゼを使用する場合は、好ましくは25℃~42℃、より好ましくは約30~37℃で反応する。
【0049】
RCAによって、標的核酸21依存的に、プライマー22から第1一本鎖環状DNA20に沿って第1増幅産物23が増幅される。
【0050】
増幅産物23は、第1一本鎖環状DNA20の第2一本鎖環状DNA結合配列203に相補的な配列233を含むため、この配列203と同一の配列241を含む第2一本鎖環状DNA2
4は、第1増幅産物23の配列233に、配列241を介してハイブリダイズする。
このようにしてできた、第1増幅産物23と、第2一本鎖環状DNA24の複合体に、第2オリゴヌクレオチドプライマー25がハイブリダイズして三者の複合体ができる。
【0051】
すなわち、第2オリゴヌクレオチドプライマー25は、第1一本鎖環状DNA20の第2一本鎖環状DNA結合配列203の5’側に隣接した部位204と同一の配列251を有するので、第1増幅産物23の、第1一本鎖環状DNA20の部位204に相補的な領域234に、配列251を介してハイブリダイズする。
【0052】
また、第2オリゴヌクレオチドプライマー25は、配列251の3’側に、第2一本鎖環状DNA24の第2プライマー結合配列242に相補的な配列252を有するので、第2一本鎖環状DNA24にも配列252を介してハイブリダイズする。
【0053】
この第1増幅産物23と、第2一本鎖環状DNA24と、第2オリゴヌクレオチドプライマー25との三者複合体から、RCAにより、第2増幅産物26が増幅される。第2増幅産物26は、例えばグアニン四重鎖を含む配列261を含んでおり、グアニン四重鎖検出試薬262によって検出される。第1増幅産物23に含まれる領域231のそれぞれに第2一本鎖環状DNA24がハイブリダイズしてRCA反応が起こる。
【0054】
第1オリゴヌクレオチドプライマー22と第2オリゴヌクレオチドプライマー25が同一磁気ビーズ上に固定化されることにより、第1オリゴヌクレオチドプライマー22から第1増幅産物23が増幅される段階と、第2オリゴヌクレオチドプライマー25から第2増幅産物26が増幅される段階とが、近傍で行われるため、検出感度の著しい向上が達せられる。
【0055】
第2一本鎖環状DNA24が検出用試薬結合配列に相補的な配列を含むことにより、RCAによって得られる第2増幅産物26には検出用試薬結合配列が含まれる。該検出用試薬結合配列がグアニン四重鎖形成配列等である場合には、RCAによって得られる増幅産物は、グアニン四重鎖結合試薬を用いて検出することができる。グアニン四重鎖結合試薬としては、特許文献1に開示されたチオフラビンT(ThT)またはその誘導体などが挙げられる。
【0056】
また、以下のPEG鎖を含むThT誘導体(ThT-PEG)を使用することもできる。
ここで、R
1はアミノ基、水酸基、アルキル基、またはカルボキシル基であり、nは4~50の整数であり、好ましくは5~20の整数であり、より好ましくは8~15の整数であり、特に好ましくは11である。ThT-PEGとしては、R
1がアミノ基の化合物がより好ましい。この化合物は特開2018-154564においてThT-P42として記載されている。
【化1】
【0057】
以下のThTがPEG鎖で連結されたThT誘導体(ThT-PEG-ThT)を使用することもできる。
ここで、nは4~50の整数であり、好ましくは5~20の整数であり、より好ましくは8~15の整数であり、特に好ましくは11である。また、ThT-PEG-ThTのPEG鎖はスペルミンリンカーで置換されてもよい。この化合物は後述の合成例に記載の方法で合成できる。
【化2】
【0058】
検出は、例えば、ThT誘導体と、RCA産物を含む試料を接触させ、グアニン四重鎖構造に結合したThT誘導体を、ThT誘導体が発する蛍光に基づいて検出することにより、被検DNA中のグアニン四重鎖構造を検出することができる。ThT誘導体はあらかじめ反応液に添加されていることが好ましい。
【0059】
なお、グアニン四重鎖結合試薬としてThT-PEGやThT-PEG-ThTを使用する場合には、RCA産物にThT-PEGまたはThT-PEG-ThTが結合すると特異的な凝集が起こるため、その凝集を目視で観察することによって蛍光検出装置を用いなくとも簡便にRCA増幅の有無を確認できる。なお、ThT-PEGとThT-PEG-ThTを同時に使用してもよい。ThT-PEGまたはThT-PEG-ThTの濃度は例えば、5~50μM、好ましくは5~20μMである。
【0060】
第1のプライマーと第2のプライマーが固定化された磁気ビーズ、第1および第2の一本鎖環状DNA、核酸ポリメラーゼ、核酸基質、反応緩衝剤等を含む反応試薬を反応容器に収容し、ここに検出対象となる核酸含有試料を添加する。
そして、この反応容器を、あらかじめ反応温度に加温された本発明の装置の支持体上に置くことでSATIC反応が開始される。
そして、コイルに交流電流を印加して支持体上に交流磁場を発生させることで、反応容器内の磁気ビーズが効率よく撹拌され、SATIC反応が効率よく進行する。
反応開始後、約20~30分で核酸増幅反応物の生成に基づく磁気ビーズの凝集がみられるので、それにより、標的核酸の存在を目視で確認することができる。
【実施例0061】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例の態様には限定されない。
【0062】
SATIC法
1-1) プライマー固定化ナノ粒子(磁気ビーズ)の調製
a) ビオチン化プライマーの調製
ビオチン化プライマー(P1)とビオチン化プライマー(P2)を1×φ29 DNA polymerase reaction bufferに溶解させ、P1 (1 μM)、P2(20 μM)のP1・P2混合溶液を調製した。
【0063】
b) ナノ粒子の使用前の準備・洗浄
FGビーズ(FG beads streptavidin 多摩川精機)をよくボルテックスし、均一な粒子になるまで撹拌し、4 μLすくいとり、1.5 mLのエッペンドルフ社製チューブに入れた。
磁気ラック(磁石のついたチューブたて)にチューブをセットして、磁気ビーズと上清を分離した(5 分)。上清を抜き取り、1×φ29 DNA polymerase reaction bufferを40 μL加えてピペッティングした。
上記操作をさらに2回行った。
【0064】
c) ナノ粒子にプライマーを固定化・洗浄
磁気ラック(磁石のついたチューブたて)にチューブをセットして、磁気ビーズと上清を分離した(5 分)。上清を抜きとった。
洗浄したFGビーズに上記P1・P2混合溶液4 μLを加えた。
25℃、30分間インキュベーションした。その際、5分おきにボルテックスを行った。
磁気ラック(磁石のついたチューブたて)にチューブをセットして、磁気ビーズと上清を分離した(5 分)。上清を抜き取り、1×φ29 DNA polymerase reaction bufferを40 μL加えてピペッティングした。
上記操作をさらに2回行った。
磁気ラック(磁石のついたチューブたて)にチューブをセットして、磁気ビーズと上清を分離した(5 分)。上清を抜き取り、水を40 μL加えてピペッティングした。
上記操作をさらに2回行った。これを使用するまで冷蔵保存した。
【0065】
1-2) プライマー固定化ナノ粒子を用いた反応
P1・P2固定化FGビーズ2 μLをすくいとり、0.5 mL エッペンドルフ社製チューブに加えた。磁気ラック(磁石のついたチューブたて)にチューブをセットして、磁気ビーズと上清を分離した(1 分)。上清を除去した。
【0066】
表1に記載のSATIC試薬45μLを加えて、さらにターゲットRNA(2copies/μL) を5 μL加え、37℃のホットプレート上で反応させた。反応セットを2つ用意し、一方は撹拌機で撹拌しながら(2Hz)、もう一方は静置した状態で反応を行った。
【0067】
1-3) 目視による観察
ナノ粒子の変化を目視で観察した。その結果、撹拌しながら反応を行った場合は約15分でSATIC反応の増幅産物に基づくナノ粒子の沈降が見られたが、静置した状態で反応させた場合には約55分経過してようやくナノ粒子の沈降が見られた。
このことから、撹拌により、検出時間を顕著に短縮できることが分かった。
【0068】
【0069】
なお、一本鎖環状DNA、プライマーおよび鋳型RNAの配列は以下の通りである。
cT1:67mer(配列番号1)
CCCCAAAAAGGAGCTTGAGGTTCTCCTTTAAAAAGAAGCTGTTGTATTGTTGTCGAAGAAGAAAAGT
cT2:62mer(配列番号2)
CCCAACCCTACCCACCCTCAAGAAAAAAAAGTGATAATTGTTGTCGAAGAAGAAAAAAAATT
P1:18mer (5’biotin) (配列番号3)
GGATCAGGCCATTTTTGG
P2:18mer(5’biotin) (配列番号4)
GAAGCTGTTGTTATCACT
40mer target RNA:40mer(配列番号5)
GGGUUGGCCAAAGGAGAACCUCAAGCUCCUGGCCUGAUCC
【0070】
<反応装置の作製と当該装置を用いたSATIC法>
次に、撹拌を交流磁場を印加して自動的に行うために、SATIC反応用の装置を作製した(
図2)。
コイルは直径50mm のステンレス筒状部材に直径0.29mm のポリウレタン線を 1200 回巻いて作製した。コイルの特性はおおよそ100mH(100Hz) となった。
電磁石の磁力を増すために、ステンレス筒状部材の中にステンレス柱を反応場の台座(反応チューブ支持体)として設置した。
そして、これをホットプレート上に置き、ホットプレートを37℃に加温した。
コイルには交流電源に接続し、20Vp-p(2Hz)の交流電圧を印加した。
【0071】
反応液は表1に記載のものを使用し、ターゲットRNAを加えてトータル50μLを反応チューブ内に収容したうえで、当該反応チューブを、あらかじめ37℃に加温され、交流磁場を発生させた上記ステンレス中の台座(支持体)上に置いて交流磁場により磁気ビーズを攪拌しながら反応を行った。
反応チューブ内のナノビーズの変化を経時的に観察したところ、約15分でビーズの沈降がみられ、SATIC反応によるターゲット増幅が短時間で生じることが分かった。
【0072】
<与える周波数による凝集体のでき易さの検討>
上記と同様にして、P1・P2固定化FGビーズを含む表1に記載のSATIC試薬45μLを反応チューブに加えて、さらにターゲットRNA(CIDEC:40merおよび全長RNA 2copies/μL) を5 μL加えたうえで、あらかじめ37℃に加温され、交流磁場を発生させた上記ステンレス中の台座(支持体)上に置いて交流磁場により磁気ビーズを攪拌しながら反応を行った。このときの交流電流の周波数は2, 20, 200, または2k Hzとした。
【0073】
各周波数の交流磁場において反応させた反応チューブにおけるナノ粒子の変化を経時的に目視で観察した結果、表2に示すように、コイルに交流電流を流さない場合は55分でようやく凝集体がみられたが、コイルに2~20Hzの交流電流を与えたときには凝集体が短時間に生成されることが分かった。
【0074】
【0075】
[合成例]
ThT誘導体の合成
以下のスキームに従ってThT-PEG-ThTを合成した。なお、ThT-AEの合成法は参考文献(Kataoka, Y.; Fujita, H.; Afanaseva, A.; Nagao, C.; Mizuguchi, K.; Kasahara, Y.; Obika, S.; Kuwahara, M. Biochemistry, 2019, 58, 493.)に記載の通りである。
【化3】
スキーム. ThT誘導体の合成
【0076】
[化合物T1の合成]
ThT-AE (32 mg, 0.10 mmol)にdry Dichloromethane (CH2Cl2) (0.30 mL)を加えて撹拌し、そこにTriethylamine (TEA) (85 μL, 0.61 mmol)を加えた後にSuccinic anhydride (11 mg, 0.11 mmol)を加え、室温で30分撹拌した。反応混合物を減圧留去した後、残渣を水で懸濁させ、CH2Cl2で洗浄した。水層を減圧留去することで化合物T1を定量的に得た。ESI-MS (positive ion mode) m/z, found =412.15, calculated for [M+] =412.17.
【0077】
[ThT-PEG-ThTの合成]
ThT-PEG (10 mg, 10 μmol)(特開2018-154564のThT-P42)にdry DMF (0.3 mL)を加えて撹拌し、そこにHOBt・H2O (4. 2 mg, 26 μmol)、PyBOP (14 mg, 26 μmol)を加えた後にDIPEA (14 μL, 80 μmol)を加えた。そこに、dry DMF (0.2 mL)に溶解した化合物T1 (5.6 mg, 13 μmol)を加え、室温で5時間撹拌した。反応混合物を減圧留去した後、残渣をCH2Cl2で溶解し、水で洗浄した。有機層を減圧留去し、ジエチルエーテルで固液抽出した後にHPLCを用いて精製することでThT-PEG-ThTを得た。
収量 : 0.82 mg 収率 : 6.1%
【0078】
1H NMR (500 MHz, Deuterium oxide) δ 8.01 (2H, d) 7.97 (2H, s) 7.75 (6H, t) 6.95
(4H, d) 5.12 (4H, t) 3.86 (4H, s) 3.68 (44H, q) 3.61 (4H, q) 3.42-3.35 (4H, m) 3.10 (12H, s) 2.65 (4H, t) 2.57 (3H, s) 2.54 (3H, t); ESI-MS (positive ion mode)
m/z, found = 1348.51, calculated for [H+]= 1348.67.
20・・・一本鎖環状DNA、21・・・標的核酸、22・・・第1オリゴヌクレオチドプライマー、23・・・第1増幅産物、24・・・第2一本鎖環状DNA、25・・・第2オリゴヌクレオチドプライマー、26・・・第2増幅産物、201・・・第1の部位に相補的な配列、202・・・第1プライマー結合配列、203・・・第2一本鎖環状DNA結合配列、204・・・203の5’側に隣接した部位、211・・・第1の部位、212・・・第2の部位、221・・・第2の部位に相補的な配列、222・・・第1プライマー結合部位に相補的な配列、231・・・、203の相補領域、232・・・部位204に相補的な領域、233・・・配列203に相補的な配列、241・・・第2一本鎖環状DNA結合配列203と同一の配列、242・・・第2プライマー結合配列、243・・・グアニン四重鎖形成配列に相補的な配列、251・・・部位204と同一の配列、252・・・第2一本鎖環状DNAの第2プライマー結合配列242に相補的な配列、261・・・グアニン四重鎖を含む配列、262・・・グアニン四重鎖検出試薬