(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022024345
(43)【公開日】2022-02-09
(54)【発明の名称】電源制御装置、スイッチング電源装置及び通信装置
(51)【国際特許分類】
H02M 1/08 20060101AFI20220202BHJP
H03K 17/0812 20060101ALI20220202BHJP
H02M 3/28 20060101ALI20220202BHJP
H03K 17/08 20060101ALN20220202BHJP
H03K 17/695 20060101ALN20220202BHJP
【FI】
H02M1/08 A
H03K17/0812
H02M3/28 H
H03K17/08 C
H03K17/695
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020122607
(22)【出願日】2020-07-17
(71)【出願人】
【識別番号】504411166
【氏名又は名称】アラクサラネットワークス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001678
【氏名又は名称】特許業務法人藤央特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 正明
(72)【発明者】
【氏名】森嶋 良行
【テーマコード(参考)】
5H730
5H740
5J055
【Fターム(参考)】
5H730AA17
5H730AS05
5H730BB23
5H730CC01
5H730DD04
5H730EE08
5H730FF05
5H730FF09
5H730FG01
5H730VV03
5H730XC09
5H740BA12
5H740BB07
5H740BC01
5H740BC02
5H740BC10
5H740HH01
5H740JA01
5H740JB01
5H740KK01
5H740MM12
5J055AX34
5J055AX55
5J055BX16
5J055CX14
5J055CX19
5J055DX13
5J055DX22
5J055DX55
5J055EY05
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5J055EY21
5J055EZ10
5J055EZ11
5J055EZ13
5J055EZ29
5J055EZ39
5J055EZ52
5J055FX26
5J055GX02
5J055GX04
5J055GX09
(57)【要約】
【課題】外部からの電源供給開始から突入電流発生までの時間を簡易な回路構成で初回の起動時から制御する。
【解決手段】予め設定された識別情報を保持する不揮発性メモリと、前記不揮発性メモリに書き込み又は読み出しを行う通信インターフェースと、前記不揮発性メモリに格納した識別情報を第1の遅延時間に変換する変換部と、前記第1の遅延時間をカウントして前記第1の遅延時間が経過した後にEnable信号を送信するタイマー部と、前期Enable信号を受信してMOSFET駆動部を駆動するアナログ部と、を有し、前記MOSFET駆動部が外付け又は内蔵のMOSFETを駆動する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め設定された識別情報を保持する不揮発性メモリと、
前記不揮発性メモリに書き込み又は読み出しを行う通信インターフェースと、
前記不揮発性メモリに格納した前記識別情報を第1の遅延時間に変換する変換部と、
前記第1の遅延時間をカウントして前記第1の遅延時間が経過した後にEnable信号を送信するタイマー部と、
前期Enable信号を受信してMOSFET駆動部を駆動するアナログ部と、を有し、
前記MOSFET駆動部が外付け又は内蔵のMOSFETを駆動することを特徴とする電源制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電源制御装置であって、
外付けコンデンサに接続する端子と、
前記端子から前記外付けコンデンサへのチャージ電流を供給する電流源と、
前記外付けコンデンサの両端電圧を検出して、所定の電圧に達するとRESET信号を出力するヒステリシス付きコンパレーターと、をさらに有し、
前記タイマー部は、
前記ヒステリシス付きコンパレーターからのRESET信号を受信すると前記第1の遅延時間のカウントを開始することを特徴とする電源制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電源制御装置であって、
前記第1の遅延時間と前記RESET信号のそれぞれについてイネーブル又はディセーブルを選択するセレクター端子をさらに有することを特徴とする電源制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載の電源制御装置であって、
前記不揮発性メモリは、
前記第1の遅延時間と前記RESET信号のそれぞれについてイネーブル又はディセーブルを選択する動作モード情報を格納可能であって、
前記タイマー部は、
前記不揮発性メモリに前記動作モード情報が格納されている場合には、前記セレクター端子に優先して前記動作モード情報に基づいて、前記第1の遅延時間と前記RESET信号のそれぞれについてイネーブル又はディセーブルを選択することを特徴とする電源制御装置。
【請求項5】
請求項2に記載の電源制御装置であって、
前記外付けコンデンサは、
前記電流源に常時接続される第1のコンデンサと、
前記第1のコンデンサと並列に接続され、かつスイッチを介して前記電流源に接続される第2のコンデンサと、をさらに有し、
前記スイッチの開閉に応じて前記RESET信号が出力されるまでの第2の遅延時間を変更することを特徴とする電源制御装置。
【請求項6】
請求項5に記載の電源制御装置であって、
前記不揮発性メモリに格納された識別情報は、予め設定された識別番号であって、
前記変換部は、
前記識別番号の所定の桁の値に応じて第1の遅延時間を設定することを特徴とする電源制御装置。
【請求項7】
交流を入力して直流に変換する整流素子を有する入力部と、
前記直流を入力してMOSFETでスイッチングを行うスイッチング部と、
前記MOSFETを制御する電源制御部と、
前記MOSFETの出力を絶縁トランスとダイオード及びインダクタによって所定の電圧の直流を出力する出力部と、
外部の装置と通信を行う通信ドライバと、を有し、
前記電源制御部は、
予め設定された識別情報を保持する不揮発性メモリと、
前記不揮発性メモリに書き込み又は読み出しを行う通信インターフェースと、
前記不揮発性メモリに格納した識別情報を第1の遅延時間に変換する変換部と、
前記第1の遅延時間をカウントして前記第1の遅延時間が経過した後にEnable信号を送信するタイマー部と、
前期Enable信号を受信してMOSFET駆動部を駆動するアナログ部と、を有し、
前記MOSFET駆動部が、前記MOSFETを駆動することを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項8】
請求項7に記載のスイッチング電源装置であって、
外付けコンデンサに接続する端子と、
前記端子から前記外付けコンデンサへのチャージ電流を供給する電流源と、
前記外付けコンデンサの両端電圧を検出して、所定の電圧に達するとRESET信号を出力するヒステリシス付きコンパレーターと、をさらに有し、
前記タイマー部は、
前記ヒステリシス付きコンパレーターからのRESET信号を受信すると前記第1の遅延時間のカウントを開始することを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項9】
請求項8に記載のスイッチング電源装置であって、
前記第1の遅延時間と前記RESET信号のそれぞれについてイネーブル又はディセーブルを選択するセレクター端子をさらに有することを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項10】
請求項9に記載のスイッチング電源装置であって、
前記不揮発性メモリは、
前記第1の遅延時間と前記RESET信号のそれぞれについてイネーブル又はディセーブルを選択する動作モード情報を格納可能であって、
前記タイマー部は、
前記不揮発性メモリに前記動作モード情報が格納されている場合には、前記セレクター端子に優先して前記動作モード情報に基づいて、前記第1の遅延時間と前記RESET信号のそれぞれについてイネーブル又はディセーブルを選択することを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項11】
請求項8に記載のスイッチング電源装置であって、
前記外付けコンデンサは、
前記電流源に常時接続される第1のコンデンサと、
前記第1のコンデンサと並列に接続され、かつスイッチを介して前記電流源に接続される第2のコンデンサと、をさらに有し、
前記スイッチの開閉に応じて前記RESET信号が出力されるまでの第2の遅延時間を変更することを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項12】
請求項11に記載のスイッチング電源装置であって、
前記不揮発性メモリに格納された識別情報は、予め設定された識別番号であって、
前記変換部は、
前記識別番号の所定の桁の値に応じて第1の遅延時間を設定することを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項13】
スイッチング電源装置と論理ボードを有する通信装置であって、
前記論理ボードは、
外部の装置間の通信を制御する通信部と、
予め設定された識別情報を保持する記憶部と、
前記通信部を制御し、前記記憶部の識別情報を前記スイッチング電源装置へ書き込む演算部と、を有し、
前記スイッチング電源装置は、
交流を入力して直流に変換する整流素子を有する入力部と、
前記直流を入力してMOSFETでスイッチングを行うスイッチング部と、
前記MOSFETを制御する電源制御部と、
前記MOSFETの出力を絶縁トランスとダイオード及びインダクタによって所定の電圧の直流を出力する出力部と、
前記演算部と通信を行う通信ドライバと、を有し、
前記電源制御部は、
予め設定された識別情報を保持する不揮発性メモリと、
前記不揮発性メモリに書き込み又は読み出しを行う通信インターフェースと、
前記不揮発性メモリに格納した識別情報を第1の遅延時間に変換する変換部と、
前記第1の遅延時間をカウントして前記第1の遅延時間が経過した後にEnable信号を送信するタイマー部と、
前期Enable信号を受信してMOSFET駆動部を駆動するアナログ部と、を有し、
前記MOSFET駆動部が、前記MOSFETを駆動することを特徴とする通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源制御装置、スイッチング電源装置、及びそれらを搭載した通信装置等の電子・電気機器に関し、特に電源供給開始時の突入電流の発生タイミングを制御可能な電源制御装置、スイッチング電源装置、及びそれらを搭載した通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、多数の小型サーバーや、ネットワーク装置(通信装置)をラックマウントで高密度搭載するシステムが増えてきている。これらの装置に組み込まれるスイッチング電源には様々な方式の突入電流抑制回路が組み込まれている。
【0003】
例えば、特許文献1に示される電流制限抵抗とリレーを組み合わせたものもその一例である。しかしこの事例においても突入電流のピーク値を下げることができるが、突入電流が全く発生しないというレベルには達していない。また比較的小容量のスイッチング電源では突入抑制回路を有していない。
【0004】
これらのスイッチング電源を搭載した多数の装置を使用したシステムでは、自然災害や設備点検等による停電の後の復電時に全装置に同時に突入電流が発生する。このため個々の突入電流は小さくても重畳的になるため配電設備に高負荷がかってしまい、上位にあるブレーカーが遮断されるため、その下位にある電子・電気機器が全て止まってしまう障害事例が散見される。
【0005】
近年の給電系の異常に対して繊細なサーバーやネットワーク装置では、突然の電源断によって損傷を受ける可能性もあり、装置の可用性や寿命などの信頼性に影響を与えてしまう。
【0006】
このように複数の装置が同時に起動することによって突入電流が重畳されてしまう問題に対しては、例えば特許文献3に記載されているような、複数の装置に同時に電源供給が開始された場合であっても、各装置間で異なるタイミングで突入電流が発生するように制御し、配電設備に高負荷がかかること防ぐ技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2018-67985号公報
【特許文献2】特開2019-4577号公報
【特許文献3】特開2018-36800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
サーバーやネットワーク機器は、CPUなどを搭載した一つ又は複数の論理ボードと、それらに電源を供給するスイッチング電源装置で構成される。一般にこれらの機器の論理ボードは消費電力が大きく、突入電流の重畳を防ぐために特許文献3の技術を適用して突入電流発生のタイミングを制御しようとした場合、論理ボード自体は特許文献3における負荷部13aに相当する。制御部14aが実行している電源投入制御のソフトウェア処理を論理ボード上のCPUに実行させることはできない。
【0009】
さらに、特許文献3の技術では、「初回の起動時には、各機器の遅延時間は一致するため、突入電流によりシステム9には過電流が発生して、各機器の起動は失敗する。」という問題があった。
【0010】
本発明の目的は、外部からの電源供給開始から突入電流発生までの時間を簡易な回路構成で初回の起動時から制御できるようにした電源制御装置、スイッチング電源装置、及び、それを搭載した通信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、予め設定された識別情報を保持する不揮発性メモリと、前記不揮発性メモリに書き込み又は読み出しを行う通信インターフェースと、前記不揮発性メモリに格納した前記識別情報を第1の遅延時間に変換する変換部と、前記第1の遅延時間をカウントして前記第1の遅延時間が経過した後にEnable信号を送信するタイマー部と、前期Enable信号を受信してMOSFET駆動部を駆動するアナログ部と、を有し、前記MOSFET駆動部が外付け又は内蔵のMOSFETを駆動する。
【発明の効果】
【0012】
各通信装置内のスイッチング電源装置が、論理ボードへ電源供給を開始する時間を個別に異なる時間にすることで、初回の起動時から突入電流が発生するタイミングをずらすことができ、配電設備にかかる突入電流のピーク電流値を下げることができる。
【0013】
本明細書において開示される主題の、少なくとも一つの実施の詳細は、添付されている図面と以下の記述の中で述べられる。開示される主題のその他の特徴、態様、効果は、以下の開示、図面、請求項により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施例1による論理ボードへ電源を供給する通信装置の一構成例を示したブロック図である。
【
図2】本発明の実施例1による通信装置の構成の一例を示したブロック図である。
【
図3】本発明の実施例1によるスイッチング電源装置に含まれる電源制御部の構成の一例を表したブロック図である。
【
図4】本発明の実施例1によるスイッチング電源装置の動作を示すタイミングチャートである。
【
図5】従来例の通信装置を用いた場合の突入電流発生の様子を模式的に示した図である。
【
図6】本発明の実施例1による通信装置を用いた場合の突入電流発生の様子を模式的に示した図である。
【
図7A】本発明の実施例2によるスイッチング電源装置の背面図である。
【
図7B】本発明の実施例2によるスイッチング電源回路の一部を示した図である。
【
図8A】本発明の実施例3によるスイッチング電源装置の回路の一部を示した図である。
【
図8B】本発明の実施例3によるスイッチング電源装置の動作モードを示した図である。
【
図9】本発明の実施例1による通信装置の識別子とタイマー遅延時間の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【実施例0016】
図1は、本発明による複数の通信装置(又は電子・電気機器)を電源供給源に接続したシステムの一例を示す図である。このシステムの例は、100V又は200Vの交流電源が供給される分電盤27と、分電盤27に接続される複数のコンセントボックス13~16と、コンセントボックス13に接続される複数の通信装置1~5により構成される。
【0017】
図では省略しているが、コンセントボックス14から16にも、コンセントボックス13と同様に複数の通信装置がそれぞれ接続されているものとする。また、分電盤27には主遮断器26(例えば遮断電流50A)と、複数の遮断器21~24(例えば遮断電流20A)が含まれている。
【0018】
このような構成で複数の通信装置1~5に100V又は200Vの交流電力が供給され、万一何からの理由で過電流が発生した場合は、主遮断器26又は遮断器21~24が電力供給を遮断する仕組みとなっている。なお、通信装置1やコンセントボックスの数は、図示されているものに限定されない。
【0019】
図2は、本発明による通信装置1の内部構成を示したブロック図である。通信装置2~5も同様の構成であり、以降では個々の通信装置を区別しない場合、代表して通信装置1を対象として説明する。
【0020】
通信装置1は、電源としてAC_IN100にてAC100V/AC200Vを受電しDC電圧(12V)をDC_OUT102から出力するスイッチング電源装置6と、そのDC電圧を受電して仕様に応じた様々な機能を有する論理ボード7からなる。本実施例では、論理ボード7として通信処理を行う例を示す。
【0021】
スイッチング電源装置6は突入電流を抑止する突入電流抑制NTC(Negative Temperature Coefficient)サーミスター35と整流ダイオード34からなる入力部と、電源制御部(又は電源制御装置)50と、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)56のスイッチング部と、絶縁トランス38とダイオード39~40とインダクタ41からなる出力部と、絶縁型I2Cバスドライバ48を有する。
【0022】
また、論理ボード7は、給電ケーブル33を通してスイッチング電源装置6のDC_OUT102から受電したDC電圧(12V)を内部用電圧に変換するDC/DCコンバーター44と、通信装置1のシリアル番号などの識別情報(又は識別番号)を保存するUIM(Unique Information Memory)45と、UIM45の内容をスイッチング電源装置6へ書き込むマイコン(マイクロコンピュータ)46と、マイコン46の制御により装置間の通信を制御する通信部81と、通信部81に接続されて外部の装置と接続するポート82からなる。
【0023】
UIM45は、例えば、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)などの不揮発性メモリで構成される。
【0024】
図3は、スイッチング電源装置6に内蔵される電源制御部50の内部構成を示したブロック図である。
【0025】
電源制御部50内には内部電圧を生成するレギュレーター58と、アナログ部59、デジタル部61、MOSFET駆動部60、ヒステリシス付きコンパレーター66、外付けコンデンサ51にチャージ電流Iccを流す電流源67、ディレイ時間を保持するEEPROM65からなる。
【0026】
デジタル部61は、I2C(Inter-Integrated Circuit)インターフェース部64と、EEPROM65の2進値を時間に変換する変換部63と、遅延タイマー部62からなる。なお、
図2、
図3において、電源制御部50は、一つのIC(Integrated Circuit)として構成した例で記載しているが、このような構成方法に限定されるものではない。
【0027】
以上説明したような構成を有する通信装置1において、突入電流が発生するタイミングをどのように制御するかについて
図2と
図3を用いてさらに説明する。
【0028】
まず、通信装置1に突入電流が発生するタイミングを決定するために必要な情報をEEPROM65に設定する。具体的には、例えば通信装置1の製品名と製造Lot番号、シリアル番号など製品固有の情報(識別情報)を製品出荷前に予め格納する。
【0029】
製品名、Lot番号、シリアル番号は通信装置1の外部から確認できるようにバーコードやQRコード(登録商標)などの形式で製品銘板などに印刷されているので、それらのコードをリーダーで読み取り、まず、論理ボード7のUIM45に書き込む。あるいは、遅延時間に対応する任意の値を使用者が決めて、上記の製品固有情報の代わりにUIM45に書き込んでもよい。
【0030】
マイコン46はUIM45から情報を読み取りI2Cバス47、絶縁型I2Cバスドライバ48、I2Cバス49を経て、電源制御部50内のEEPROM65に書き込む。又は、UIM45の情報ではなく電源制御部50内のEEPROM65に直接使用者が遅延時間に対応する値を書き込んでもよい。
【0031】
以上の操作は、製品出荷準備段階や通信装置1の初期設定段階など、安定した電源供給環境で通信装置1が動作している場合に実施する。EEPROM65は不揮発性のメモリなので、一度書き込みを行えばその後に電源断となっても設定された値は残っている。
【0032】
以上のように設定された状態において例えば停電等で一度電源断となり、その後復電したような場合に通信装置1は次のように動作する。
【0033】
スイッチング電源装置6に、100VAC又は200VACを印可すると整流ダイオード34により140Vピーク又は280VピークのDC電圧に変換されて抵抗37、54の分圧抵抗によりVCCA103に電圧が印加され電源制御部50に給電される。同時にEN信号104がプルアップ抵抗55によってハイレベルになり電源制御部50が動作を開始する。
【0034】
電源制御部50は、初期化が完了した後、電流源67から外付けコンデンサ51にIcc電流のチャージを開始してCSS(Current Source power Supply)端子107の電圧が上昇を始め、遅延時間T_delay= Ct×Vth/Icc経過後、スレッショルド電圧69(Vth)を超えると、ヒステリシス付きコンパレーター66はRESET信号106をローレベルからハイレベルにして遅延タイマー部62のリセットを解除し、遅延タイマー部62は動作を開始する。なお、上記Ctは、外付けコンデンサ51の静電容量を示す。
【0035】
遅延タイマー部62は、EEPROM65の値から変換部63で5ms/bitでDELAY_Timer時間を計算しDELAY_Timer時間が経過した後、アナログ部59にEnable信号105を送信する。
【0036】
DELAY_Timer時間に変換する際の単位時間は5ms/bitである必要はなく、1ms/bit~100ms/bitなどでもよい。また、変換部63は、EEPROM65内の値が製品固有情報であった場合、DELAY_Timer時間へ変換する前に、EEPROM65内の値に例えば適当なハッシュ関数等を適用してから所定のビット数を取り出すなどの操作を行って、通信装置1~5のそれぞれでDELAY_Timer時間を一定の時間範囲内でずらして分散させるような処理を行ってもよい。
【0037】
アナログ部59及びMOSFET駆動部60はEnable信号105を受信すると動作を開始して外付けMOSFET56を駆動し、スイッチング動作を開始する。なお、外付けMOSFET56は電源制御部50に内蔵されていてもよい。
【0038】
図4は、以上説明した動作を、100VAC又は200VACが印可されてからのスイッチング電源装置6内部の主な信号などの様子をタイムチャートとして示したものである。
【0039】
時刻T0では、100VAC又は200VACの印可開始と同時にVCCA103とEN信号104の電圧がローレベルからハイレベルになり、また、CSS端子107の電圧が上昇を始める。
【0040】
T_delay= Ct×Vth/Iccが経過した後、CSS端子107の電圧がスレッショルド電圧(Vth)を超える時刻T1では、電源制御部50内のRESET信号106がローレベルからハイレベルになる。
【0041】
さらにDelay_Timer時間経過後の時刻T2では、電源制御部50内のEnable信号105がローレベルからハイレベルになり、スイッチング電源装置6のDC_OUT102が立ち上がると同時に、入力電流I_IN101において突入電流が発生する。
【0042】
ここで、Delay_Timer時間は、製品固有情報又は予め使用者が決めた値に基づいて決定され、通信装置1~5の突入電流発生タイミングはそれぞれ異なったものとなるように構成されているため、突入電流の重畳が軽減される。
【0043】
図5と
図6は、本発明により突入電流の重畳が軽減する効果が得られることを模式的に説明した図である。
図5は従来例の突入電流の様子を表し、
図6は、通信装置1~5に本発明を適用した場合の突入電流の様子を表したものである。
【0044】
図5のシステムでは、通信装置1~5に本発明を適用していないので、分電盤27からコンセントボックス13を経由して電源供給が開始された場合、それぞれで発生する突入電流8~12は全て同じタイミングで発生し、コンセントボックス13が接続される遮断器21を流れる突入電流17のピーク値は、突入電流8~12のピーク値を足し合わせたものとなる。
【0045】
コンセントボックス14~16にもコンセントボックス13と同様に通信装置1が接続されていた場合、突入電流18~20も同様となる。さらに、主遮断器26を流れる突入電流25のピーク値は、突入電流17~20のピーク値を足し合わせたものとなる。もし、このピーク値が主遮断器26の容量を超えていた場合、主遮断器26は回路を遮断し、配下の全ての通信装置1が再度電源遮断となってしまう事故が発生してしまう。
【0046】
一方、
図6のシステムでは、通信装置1~5に本発明を適用しているので、突入電流8~12の発生時期を例えば図示したように異なるタイミングにすることができる。その結果、遮断器21を流れる突入電流28のピーク値は、図示するように単純に突入電流8~12のピーク値の和とはならず、前記従来例に比してピーク値が抑制されることになる。
【0047】
コンセントボックス14~16の突入電流29~31も同様である。以上から、主遮断器26を流れる突入電流32も、図示しているように
図5の突入電流25と比べてピーク値が抑制されたものとなり、再度の電源遮断が発生してしまう事故を抑止する効果が得られる。
【0048】
図9は、スイッチング電源装置の識別子と遅延時間の関係を示す図である。
図9は、通信装置1のシリアル番号を製品固有の情報(識別情報)としてUIM45に書き込んで、シリアル番号に対応する遅延時間(Delay_Timer時間)を設定する例を示す。
図9は、シリアル番号の下1桁を示すシリアル651と、遅延時間(msec)652の関係を示す。
【0049】
図示の例では、通信装置1のシリアル番号を16進数で表記し、シリアル番号の下一桁について100(msec)の間隔で番号の昇順で遅延時間を設定している。なお、遅延時間の間隔は一例であり、図示の例に限定されるものではなく、所望の間隔で設定すればよい。
【0050】
本実施例では、変換部63が、シリアル番号の下一桁の値に応じて、Delay_Timer時間を16種類に分散するので、スイッチング電源装置6が論理ボード7へ電源供給を開始する時間を通信装置1毎に異なる時間に設定することで初回の起動時から突入電流が発生するタイミングをずらすことができ、配電設備にかかる突入電流のピーク電流値を低減することができる。
【0051】
なお、上記実施例1では、スイッチング電源装置6が通信装置1を構成する論理ボード7に電源を供給する例を示したが、これに限定されるものではなく、スイッチング電源装置6が電子機器又は電気機器へ電力を供給する構成であればよい。
分電盤27の配下に接続される通信装置1の台数が多くなった場合に、突入電流の重畳が起こる可能性をより低くするため、利用者の設定による遅延時間の補助的な制御を容易に行えるとよいケースもある。
スイッチA70~スイッチD73が取り付けられた透明板74は通信装置1の筐体68の背面から操作可能な位置に透明板固定ネジ75で固定され、手動でON/OFFを切り替えることができる。
例えばスイッチA70がON、スイッチB71~スイッチD73がOFFの場合、電源制御部50のCSS端子107に接続されている外付けコンデンサは並列接続されたCta51aとCte51eなので外付けコンデンサによる遅延時間T_delayは(Cta+Cte)×Vth/Iccとなり、全てのスイッチがOFFの場合はCte×Vth/Iccとなる。
また、仮にCte51eを設けず、かつ全てのスイッチOFFの場合は、遅延時間T_delay=0となり、電源制御部50内のDELAY_Timer時間のみとする形態にすることもできる。
これにより、通信装置1の台数が非常に多く、製品固有の情報に基づいて算出したDelay_Timer時間だけでは、それらが偶然一致してしまう恐れがある場合に、遅延時間T_delayの設定をさらに加えてそれらを分散させることが可能となる。
すなわち、外付けコンデンサCta51a~Cta51dの静電容量の値と、スイッチA70~D73のON-OFFの組み合わせによって多種の遅延時間T_delay(第2の遅延時間)に変更することができる。
したがって、16種類のDelay_Timer時間に加えて、遅延時間T_delayを通信装置1~5毎に変更することで、多数の通信装置1~5間での突入電流の重畳をさらに低減することが可能となる。
以上のように、実施例2の通信装置1は、稼働を開始した後でも、スイッチA70~スイッチD73のON、OFFの組み合わせに応じて、遅延時間T_delayを変更することができ、通信装置1の設置場所の移動や他の計算機との組み合わせの変更などに応じて、突入電流が発生するタイミングを変更することが可能となる。