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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022024360
(43)【公開日】2022-02-09
(54)【発明の名称】3Dフェイスシールド
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/11 20060101AFI20220202BHJP
   A42B 3/20 20060101ALN20220202BHJP
【FI】
A41D13/11 L
A41D13/11 Z
A42B3/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020122978
(22)【出願日】2020-07-17
(71)【出願人】
【識別番号】520179224
【氏名又は名称】大塚 元博
(74)【代理人】
【識別番号】100102738
【弁理士】
【氏名又は名称】岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】大塚 元博
【テーマコード(参考)】
3B107
【Fターム(参考)】
3B107DA07
(57)【要約】      (修正有)
【課題】使い勝手に優れるとともに、顔全体を介してのウィルス、菌の感染を有効に防止可能な3Dフェイスシールドを提供する。
【解決手段】顔全体を覆う3Dフェイスシールド10であって、内面が顔の表面に密着可能なように曲面状に一体成形された透明な薄板状樹脂製本体部14を有し、前記内面の鼻部に相当する位置には、鼻部を収容可能な凹部が、外面に突出するように形成され、口部に相当する位置には、大開口21が設けられ、該大開口21を覆うのに十分な大きさを有する通気性マスク素材22が、前記内面に密着固定される、ことを特徴とする3Dフェイスシールド10。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔全体を覆う3Dフェイスシールドであって、
内面が顔の表面に密着可能なように曲面状に一体成形された透明な薄板状樹脂製本体部を有し、
前記内面の鼻部に相当する位置には、鼻部を収容可能な凹部が、外面に突出するように形成され、
口部に相当する位置には、大開口が設けられ、
該大開口を覆うのに十分な大きさを有する通気性マスク素材が、前記内面に密着固定される、
ことを特徴とする3Dフェイスシールド。
【請求項2】
さらに、前記薄板状本体部の両側部それぞれに、対応する端部が固定され、前記内面側に掛け渡された伸縮自在バンドが設けられるとともに、耳に掛ける耳掛け紐が設けられる、請求項1に記載の3Dフェイスシールド。
【請求項3】
さらに、前記突出部30の底面には、鼻穴に相当する位置に小開口が設けられ、該小開口を覆うのに十分な大きさを有する通気性マスク素材が、前記内面に密着固定される、請求項1に記載の3Dフェイスシールド。
【請求項4】
さらに、前記薄板状本体部は、繰り返し折り畳み可能な材質で形成され、前記薄板状本体部の前記内面側の両縁部それぞれに、粘着部が設けられ、前記薄板状本体部を前記内面を閉じるように折り畳む際、該粘着部同士を介して、折り畳み保持される、請求項1に記載の3Dフェイスシールド。
【請求項5】
前記材質は、ポリエチレンテレフタラートである、請求項4に記載の3Dフェイスシールド。
【請求項6】
前記薄板状本体部は、耳部を覆う大きさである、請求項1ないし5いずれか1項に記載の3Dフェイスシールド。
【請求項7】
前記薄板状本体部の内面のおでこ相当部位には、それぞれ内面から顔に向かって張り出す、対向側壁と対向側壁それぞれの下縁間に及ぶ底壁とからなるアイスパッド用凹部が設けられ、アイスパッド用凹部が設けられる部位に相当する外面には、アイスパッド用凹部を隠す帯状の装飾材が付設される、請求項5に記載の3Dフェイスシールド。
【請求項8】
前記薄板状本体部の上下方向の大きさは、上縁部および下縁部がそれぞれ、おでこの髪の生え際部、および顎の下をカバーする程度である、請求項1ないし5いずれか1項に記載の3Dフェイスシールド。
【請求項9】
前記薄板状本体部は、顔の中央部相当部位に、横方向に横断する切れ目が入れられ、該切れ目を介して、該切れ目の上部または下部の前記薄板状本体部を該切れ目の下部または上部の前記薄板状本体部に対して上下方向に移動させることにより、顔の一部を露出可能である、請求項1ないし5いずれか1項に記載の3Dフェイスシールド。
【請求項10】
前記マスク素材は、外層および内層を備える多層性である、請求項1ないし5いずれか1項に記載の3Dフェイスシールド。
【請求項11】
前記薄板状本体部の周縁部が、顔の表面と線接触可能なように、前記薄板状本体部の前記周縁部に向かう環状部分は、湾曲状に形成される、請求項1に記載の3Dフェイスシールド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3Dフェイスシールドに関し、より詳細には、使い勝手に優れるとともに、顔全体を介してのウィルス、菌の感染を有効に防止可能な3Dフェイスシールドに関する。
【背景技術】
【0002】
昨今のコロナ渦において、自身がウィルス、菌に感染するリスクを低減するとともに、ウィルス、菌を他人へ感染させるリスクを低減する観点から、マスクおよびフェイスシールドが多用されている。
マスクおよびフェイスシールドは、顔を覆うことにより、ウィルス、菌が付着しているリスクのある指で顔に触れにくくする点で共通であるが、それぞれに固有の長所、短所がある。
【0003】
マスクは、平型マスク、プリーツ型マスク、および立体型マスクに大別されるが、いずれも、着用者の顔面の鼻や口や顎(対象部位) 等を覆う通気性マスク素材22と、この通気性マスク素材22を着用者の耳に係止するための左右一対の耳掛け部とを備えており、鼻または口からのウィルス、菌の侵入を防止しつつ、鼻、口に指で触れることにより感染するのを防止するが、装着中の息苦しさは避けられず、目等顔全体を覆うものでないことから、指で目に触れることは容易であり、人からの飛沫が鼻、口に及ぶ、いわゆる直接的な人感染のリスクを、マスクを通じて低減するが、手で物に触れことにより、ウィルス、菌が付着する指で、たとえば、目に触れることにより、感染するという、いわゆる間接的な物感染を有効に予防するに不十分である。
【0004】
さらに、装着中に、会話、せき等で口を動かすことにより、マスクが上下方向にずれ、鼻部が露出することがあり、耳掛け部によるマスクの顔への締付力を増大すれば、このようなマスクのずれを抑制するのにある程度有効であるが、その分、装着中の息苦しさが増大し、また、長時間装着していると、耳掛け部により耳部に痛みが引き起こされる。
【0005】
一方、フェイスシールドは、顔全体を覆う曲面状シールドと、曲面状シールドを顔全体を覆う位置に固定保持する固定保持具とを有するが、顔全体を覆い、鼻、口、目に指で触れることにより感染するリスクを低減しつつ、装着中の息苦しさを軽減するが、曲面状シールドにより他人からの飛沫を遮断するに過ぎず、曲面状シールドは顔の表面に密着するものでなく、装着中のずれの問題は生じない反面、曲面状シールドと顔との間の隙間から鼻、口、目を通じて感染するリスクがある。さらに、マスクに比べ、硬質素材で外形が大きいことから、顔に装着しない場合に、手で携帯したり、ポケット、鞄等に保管したりするのに不便である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上の技術的問題点に鑑み、本発明の目的は、使い勝手に優れるとともに、顔全体を介してのウィルス、菌の感染を有効に防止可能な3Dフェイスシールドを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を達成するために、本発明の3Dフェイスシールドは、
顔全体を覆う3Dフェイスシールドであって、
内面が顔の表面に密着可能なように曲面状に一体成形された透明な薄板状樹脂製本体部を有し、
前記内面の鼻部に相当する位置には、鼻部を収容可能な凹部が、外面に突出するように形成され、
口部に相当する位置には、大開口が設けられ、
該大開口を覆うのに十分な大きさを有する通気性マスク素材が、前記内面に密着固定される、
構成としている。
【0008】
以上の構成を有する3Dフェイスシールド(平面状でなく奥行のあるフェイスシールドとして3Dフェイスシールドと称する)によれば、従来のマスクの長所を生かしつつ、その短所を補うとともに、従来のフェイスシールドの長所を生かしつつ、その短所を補うものである。
より詳細には、従来のマスクにおいては、鼻または口からのウィルス、菌の侵入を防止しつつ、鼻、口に指で触れることにより感染するのを防止するが、装着中の息苦しさは避けられず、目等顔全体を覆うものでないことから、ウィルス、菌が付着する指で、たとえば、目に触れることにより、感染するという、いわゆる間接的な物感染を有効に予防するに不十分であり、さらに、装着中に、会話、せき等で口を動かすことにより、マスクが上下方向にずれ、鼻部が露出することがあるところ、本3Dフェイスシールドによれば、目を含む顔全体を透明な薄板状本体部により覆うとともに、口部に相当する位置には、大開口が設けられる一方、鼻穴に相当する位置に小開口が設けられ、それぞれの開口を覆うのに十分な大きさを有する通気性マスク素材が、内面に密着固定されることから、装着中の息苦しさを軽減しつつ、間接的な物感染を有効に予防するのに十分であり、内面に設けた凹部に使用者の鼻部が納まることで、装着中のずれを防止可能である。
【0009】
一方、従来のフェイスシールドにおいては、顔全体を覆い、鼻、口、目に指で触れることにより感染するリスクを低減しつつ、装着中の息苦しさを軽減するが、曲面状シールドは顔の表面に密着するものでなく、装着中のずれの問題は生じない反面、曲面状シールドと顔との間の隙間から鼻、口、目を通じて感染するリスクがあり、さらに、硬質素材で外形が大きいことから、携帯または保管が不便であるところ、本3Dフェイスシールドによれば、透明な薄板状本体部の内面が顔の表面に密着可能なように曲面状に形成されていることから、顔との間の隙間から鼻、口、目を通じて感染するリスクを有効に低減可能であるとともに、たとえば、二つに折り畳んで、ポケット、鞄内に保管可能である。
以上より、本3Dフェイスシールドによれば、使い勝手に優れるとともに、顔全体を介してのウィルス、菌の感染を有効に防止可能である。
【0010】
さらに、前記薄板状本体部の両側部それぞれに、対応する端部が固定され、前記内面側に掛け渡された伸縮自在バンドが設けられるとともに、耳に掛ける耳掛け紐が設けられるのがよい。
また、前記突出部30には、鼻穴に相当する位置に小開口が設けられ、該小開口を覆うのに十分な大きさを有する通気性マスク素材が、前記内面に密着固定されるのがよい。
加えて、前記薄板状本体部は、繰り返し折り畳み可能な材質で形成され、前記薄板状本体部の前記内面側の両縁部それぞれに、粘着部が設けられ、前記薄板状本体部を前記内面を閉じるように折り畳む際、該粘着部同士を介して、折り畳み保持されるのがよい。
【0011】
また、前記材質は、ポリエチレンテレフタラートでよい。
さらに、前記薄板状本体部は、耳部を覆う大きさであるのがよい。
さらにまた、前記薄板状本体部の内面のおでこ相当部位には、それぞれ内面から顔に向かって張り出す、対向側壁と対向側壁それぞれの下縁間に及ぶ底壁とからなるアイスパッド用凹部が設けられ、アイスパッド用凹部が設けられる部位に相当する外面には、アイスパッド用凹部を隠す帯状の装飾材が付設されるのがよい。
【0012】
また、前記薄板状本体部の上下方向の大きさは、上縁部および下縁部がそれぞれ、おでこの髪の生え際部、および顎の下をカバーする程度であるのがよい。
さらに、前記薄板状本体部は、顔の中央部相当部位に、横方向に横断する切れ目が入れられ、該切れ目を介して、該切れ目の上部または下部の前記薄板状本体部を該切れ目の下部または上部の前記薄板状本体部に対して上下方向に移動させることにより、顔の一部を露出可能であるのがよい。
加えて、前記マスク素材は、外層および内層を備える多層性であるのがよい。
また、前記薄板状本体部の周縁部が、顔の表面と線接触可能なように、前記薄板状本体部の前記周縁部に向かう環状部分は、湾曲状に形成されるのがよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明に係る3Dフェイスシールドの第1実施形態を図1ないし図3を参照しながら、以下に詳細に説明する。
図1に示すように、3Dフェイスシールド10は、顔F全体を覆う大きさであり、内面12が顔Fの表面に密着可能なように曲面状に形成された無色透明な薄板状本体部14をする。内面12が顔Fの表面に密着可能なように、内面12の、目に相当する部位、および頬の相当する部位には、目および頬の窪みに沿うように、凹部が形成されている。なお、薄板状本体部14は、有色の透明性でもよい。
特に、目に相当する部位に設ける凹部の大きさ、および深さを調整することにより、眼鏡をしていても、内面12の顔Fの表面に対する密着性を保持しつつ、そのうえから3Dフェイスシールド10を装着することが可能である。
薄板状本体部14は、保形性を有し、繰り返し折り畳み可能な材質および厚みで形成され、材質は、ポリエステル系樹脂製、厚みは、後述するように、保管の際、薄板状本体部14を二つ折可能なように、数ミリ程度である。
【0014】
ポリエステル系樹脂としては、分子内にエステル基を有する樹脂であればよく、特に限定されないが、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサメチレングリコール等の脂肪族グリコール;シクロヘキサンジメタノール等の脂環族グリコール;ビスフェノール等の芳香族ジヒドロキシ化合物或いはこれらの2種以上から選ばれたジヒドロキシ化合物(ジオール化合物)と、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタリンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ウンデカジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸;ヘキサヒドロジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸或いはこれらの2種以上から選ばれたジカルボン酸との縮合反応により形成されたものが挙げられる。
【0015】
また、ポリエステル系樹脂としては、環状ジエステルであるラクチド類や、環状エステルであるラクトン類の開環重合によって形成されたものも挙げられる。
これらポリエステル系樹脂は、エポキシ樹脂等の他の成分により変性されていてもよい。
【0016】
ポリエステル系樹脂としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」ともいう)、ポリブチレンサクシネート(以下、「PBS」ともいう)、ポリブチレンサクシネートアジペート(以下、「PBSA」ともいう)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(以下、「PBAT」ともいう)、ポリブチレンテレフタレート(以下、「PBT」ともいう)、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、エチレンテレフタレート-イソフタレート共重合体、ポリ乳酸(以下、「PLA」ともいう)、及びポリ酪酸等のポリヒドロキシアルカン酸(以下、「PHA」ともいう)から選ばれる一種以上が好ましいものとして挙げられる。
これらの中でも、工業生産性、機械強度、加工性(成形性)の観点から、分子内に芳香族炭化水素化合物単量体単位を含有する芳香族系ポリエステルがより好ましく、さらに好ましくはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンサクシネート、及びポリヒドロキシアルカン酸から選ばれる1種以上であり、さらにより好ましくはポリエチレンテレフタレー卜、ポリブチレンテレフタレートである。
ポリエステル系樹脂は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0017】
薄板状本体部14は、このような曲面形状であるが、一体成形により製造され、大量生産が可能である。特に、後述するように、薄板状本体部14の内面12には、鼻部Nを収容可能な凹部16およびアイスパッドCを収容可能な凹部31を、外面に向かって突出するように設けるので、一体成形が容易である。
【0018】
薄板状本体部14の内面12側の両縁部32それぞれに、粘着部34が設けられ、薄板状本体部14を内面12を閉じるように折り畳む際、粘着部34同士を介して、折り畳み保持される。これにより、3Dフェイスシールド10を、たとえば、ポケット、鞄内に保管する際、内面12を露出することなく、保管可能であり、無用なウィルス、菌の付着のリスクを引き起こさないことが可能である。粘着部34は、たとえば、透明または白色の両面テープでよい。
薄板状本体部14の周縁部15が、顔の表面と線接触可能なように、薄板状本体部14の周縁部15に向かう環状部分は、湾曲状に形成されるのがよい。これにより、薄板状本体部14の周縁部と顔の表面との間で面接触をし、これにより隙間が形成されやすいところ、この隙間の形成のリスクを低減することが可能である。特に、一体成形により形成される周縁部15が鋭い線状となり、3Dフェイスシールド10の装着または脱着の際、顔が傷つくことがないように、折り返し部を設けてもよい。なお、この環状折り返し部を利用して、装飾用帯状部材を嵌め込み、デザイン性を向上するのでもよい。
【0019】
薄板状本体部14の上下方向の大きさは、上縁部32および下縁部38がそれぞれ、おでこの髪の生え際部、および顎の下をカバーする程度であり、通常の既存マスクと同様に、各側部24には、上端47および下端49が対応する側部の上下方向に適宜間隔を隔てた状態で、固定されるループ状の耳掛け部48が付設されている。
口部Mに相当する位置には、大開口21が設けられ、大開口21を覆うのに十分な大きさを有する通気性マスク素材22が、内面12に密着固定される。大開口21の形状、大きさは、口部Mを覆うのに十分であれば、任意であり、通気性マスク素材22は、大開口21の周縁部23に設けた両面テープにより固定すればよい。
内面12の鼻部Nに相当する位置には、鼻部Nを収容可能な凹部16が、外面18に突出するように形成される。凹部16は、鼻部Nの形状に沿うように、下方に向かって広がりが形成される略三角錐台形状であり、三角形底面には、鼻穴に相当する位置に小開口20が設けられ、大開口21と同様に、小開口20を覆うのに十分な大きさを有する通気性マスク素材22が、内面12に密着固定される。なお、通気性マスク素材22は後述するが、大開口21および小開口20に設ける通気性マスク素材22の材質は同じであるのが好ましい。
薄板状本体部14の大きさとして、大人用、高中小学生用、幼児用として、互いに相似形の大、中、小の3種類を具備するのがよい。
【0020】
図2に示すように、薄板状本体部14の両側部24それぞれの上部に、より詳細には、おでこ相当部位に、対応する端部26が固定され、内面12側に掛け渡された伸縮自在バンド28が設けられる。
これにより、薄板状本体部14の上部は、伸縮自在バンド28により、薄板状本体部14の中央部は、耳掛け部48により、それぞれ、顔Fの表面に向かって押圧されるので、薄板状本体部14の内面12が顔F全体に密着するように構成される。
変形例として、薄板状本体部14は、顔Fの中央部相当部位に、横方向に横断する切れ目(図示せず)が入れられ、切れ目を介して、切れ目の上部または下部の前記薄板状本体部14を切れ目の下部または上部の薄板状本体部14に対して上下方向に移動させることにより、顔Fの一部を露出可能である。
マスク素材22は、ウィルス、菌の感染防止に用いられる通常のマスク素材でよいが、外層および内層を備える多層性である。
通気性マスク素材22は、マスク着用時に外気と接触する側より着用者鼻口部と接触する側に向けて、順に外層および内層を備える多層性のマスク本体である。( 以後の説明では、マスク着用時において通気性マスク素材22の外気と接触する面側を「外側」と称し、着用者鼻口部と接触する面側を「内側」と称することがある。)
【0021】
ここで、外層は不織布の層よりなり、肉眼で目視可能な程度の粗粒子を遮断する機能を果たす。外層は粗粒子を遮断するのみで良いので、不織布の目付けは小さくて良い。外層は単層であっても複層であっても良いが典型的には単層である。
【0022】
通気性マスク素材22は、外層の内側に内層を備える。内層は更にフィルター層と吸湿層を備えている。フィルター層は微細粒子捕捉機能を高め、他方吸湿層はマスク着用時のムレ感を解消する。
【0023】
フィルター層は単層であっても良いが、二層以上であることが捕捉性能を高める上で好ましい。
【0024】
吸湿層は単層であっても複層であっても良い。
また吸湿層が単層の場合、吸湿層は内層において少なくとも一以上のフィルター層よりも内側に配置されていることが好ましい。したがって、フィルター層が二層または三層の場合、吸湿層は、フィルター層とフィルター層の間に挟む構成とするか、最も内側のフィルター層の内側に配置する構成とすることが好ましい。
【0025】
以下、外層および内層の詳細について説明する。
外層は粗目の粉塵等を遮断するべく、汎用の不織布により構成される。
汎用の不織布としては、素材別にポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維よりなる不織布を挙げることができる。また合成繊維の単一の繊維からなる単一成分型不織布のほか、これらの合成繊維の異種を複合させた複合型不織布も使用できる。
ポリオレフィン系の合成繊維としては、ポリエチレン系、ポリプロピレン系、ポリ1-ブテン系繊維を挙げることができる。中でも軽量性、加工性の点からポリプロピレン繊維を好適に使用できる。
これら合成繊維を原料素材とする不織布はニードルパンチ法、スパンレース法、フラッシュボンド法、スパンボンド法に代表される公知の製法によって製造された不織布を使用できるが、中でもスパンボンド不織布を好適に用いることができる。
外層は、肉眼で目視可能なハウスダストや粉塵等を遮断するのみでよいので、不織布は目付けの小さな不織布が選択される。典型的には目付が20~40g/m2 、平均繊維径が10~30μmの不織布を採用することができる。
【0026】
内層は、フィルター層と吸湿層を備える。
【0027】
フィルター層は、微細粒子を捕捉するべく、極細繊維不織布で構成されるが、特に極細合成繊維不織布を好適に使用できる。極細合成繊維不織布としてはメルトブロー( またはメルトブローン) 不織布を好適に用いることが出来る。メルトブロー不織布は0.5~8μm程度の極細繊維で出来ているため、効率よく微細粒子を捕捉する。
フィルター層は、単層または複層であっても良いが、二層以上の複層とすることにより、微細粒子の捕捉効率を高めることが出来る。
フィルター層はマスクの微粒子捕捉性能を高めるため、目付けが40g/m2以上であることが好ましく、50g/m2以上であることがより好ましい。但し、目付けが90g/m2を超えると通気抵抗が増し、着用時に息苦しくなるので好ましくない。目付けは80g/m2以下であることがより好ましい。目付けを高めるには、一層のみで高い目付けを有する不織布を用いても良いし、不織布を積層することによっても良い。
また極細繊維不織布の平均繊維径は、より好ましくは5μm以下、さらに好ましくは3μm以下である。
【0028】
フィルター層とともに内層を構成する吸湿層は、マスク使用時の呼気中に含まれる水分を吸収することにより、ムレ感を改善する。
吸湿層は、吸湿性繊維不織布にて構成される。吸湿層は単層であっても、複層であっても良いが、典型的には単層である。
吸湿性繊維としては再生セルロース繊維を含有する不織布よりなる。
再生セルロース繊維としては、キュプラ、ビスコースレーヨン、ポリノジックレーヨン、ライオセル( lyocell) を挙げることができる。
【0029】
また再生セルロース繊維を含有する不織布としては、再生セルロース繊維単独の不織布のほか、不織布の吸湿性を損なわない範囲で、再生セルロース繊維と熱可塑性合成繊維を混用した不織布が含まれる。不織布の吸湿性を損なわない前記熱可塑性合成繊維の混用率( 不織布全重量に占める再生セルロース繊維重量の比率) は50重量%以下であることが好ましく、30重量%以下であることがより好ましい。
なお、鼻部Nを覆うマスク素材としては、特に、バクテリア飛沫捕集性の観点から、高性能フィルター機能を有するものとして、たとえば、ユニクロ社製、商品名『ユニクロエアリズム』または、3M社製の医療マスク商品名『N95』の素材を用いてもよい。
【0030】
変形例として、日焼け防止等紫外線対策として、外面のおでこ相当レベルにサンバイザーを付設してもよい。サンバイザーは、薄板状本体部14の外面に沿う湾曲部と、湾曲部から延びる本体部とを有し、湾曲部を介して、たとえば、伸縮自在バンド28により薄板状本体部14の外面に固定すればよい。
さらなる変形例として、髪部を覆うヘッドカバーを別途オプションで付設してもよい。ヘッドカバーの固定は、たとえば、3Dフェイスシールド10の薄板状本体部14の上縁部32に透明または白色の両面テープを貼り付けて、ヘッドカバーの下縁部を粘着固定するのでもよい。これにより、たとえば、車両に乗車中に、着座中に前方に立っている乗客の発する飛沫が下方に飛び、着座中の頭部に付着し、それにより、頭部(髪部)にウィルス、菌が付着することを有効に防止可能である。
【0031】
さらなる変形例として、鼻部に相当する突出部30を摘まみながら、3Dフェイスシールド10を容易に脱着が可能となるように、突出部30を摘まみながら、3Dフェイスシールド10を顔に対して移動可能となるように、突出部30、すなわち、凹部16に補強用溝部を凹部16の長手方向長さ、すなわち、鼻部の鼻柱の延び方向に沿って、複数本設けるのがよく、これは、3Dフェイスシールド10を一体成形することにより、別途加工することがなく、補強用溝部の形成が可能である。
【0032】
以上の構成を有する3Dフェイスシールド10の作用について、以下に、3Dフェイスシールド10の装着、脱着、および3Dフェイスシールド10の繰り返し使用の場合に大別して、説明する。
(1) 3Dフェイスシールド10の装着
図3に示すように、鼻部を凹部16内に、マスク素材22が口部にあてがわれる状態で、内面12が顔に密着し、顔全体が覆われた状態で、後頭部で伸縮自在バンド28を締結するとともに、耳掛け部48を耳に掛ける。
これにより、3Dフェイスシールド10の内面12と顔の表面との間に略隙間のない状態が形成されるとともに、通気性マスク素材22を介して息苦しさを感じずに装着保持することが可能である。
特に、目に相当する部位に設ける凹部の大きさ、および深さを調整することにより、眼鏡をしていても、内面12の顔Fの表面に対する密着性を保持しつつ、そのうえから3Dフェイスシールド10を装着することが可能である。
なお、たとえば、食事の際、バンドを外して、3Dフェイスシールド10を脱着せずに、切れ目42を介して、透明本体部14の上部を、透明本体部14の下部に対して上方に移動させることにより、切れ目42の開口面積が大きくなり、口部が露出するようになり、3Dフェイスシールド10を装着したまま食事することも可能である。
(2) 3Dフェイスシールド10の脱着
耳掛け部48および伸縮自在バンド28を外して、3Dフェイスシールド10を脱着し、3Dフェイスシールド10を内面12が閉じられる向きに二つ折りにして、各端部の両面テープの粘着部同士をくっ付けた状態で、たとえば、ポケット、鞄内に容易に保管することが可能であり、その際、内面12が露出しないので、保管中の内面12へのウィルス、菌の付着を有効に防止することが可能である。
(3) 3Dフェイスシールド10の繰り返し使用の場合
3Dフェイスシールド10は繰り返し使用しつつ、通気性マスク素材22は適宜、内面12から脱着して、新しい通気性マスク素材22に交換して、再度、大開口21を閉鎖するように固定すればよい。なお、3Dフェイスシールド10の外面は、適宜、アルコール消毒等するのがよい。
【0033】
以上の構成を有する3Dフェイスシールド10によれば、従来のマスクの長所を生かしつつ、その短所を補うとともに、従来のフェイスシールドの長所を生かしつつ、その短所を補うものである。
より詳細には、従来のマスクにおいては、鼻または口からのウィルス、菌の侵入を防止しつつ、鼻、口に指で触れることにより感染するのを防止するが、装着中の息苦しさは避けられず、目等顔全体を覆うものでないことから、ウィルス、菌が付着する指で、たとえば、目に触れることにより、感染するという、いわゆる間接的な物感染を有効に予防するに不十分であり、さらに、装着中に、会話、せき等で口を動かすことにより、マスクが上下方向にずれ、鼻部が露出することがあるところ、本3Dフェイスシールド10によれば、目を含む顔全体を透明な薄板状本体部14により覆うとともに、口部に相当する位置には、大開口が設けられる一方、鼻穴に相当する位置に小開口が設けられ、それぞれの大小開口を覆うのに十分な大きさを有する通気性マスク素材22が、内面12に密着固定されることから、装着中の息苦しさを軽減しつつ、間接的な物感染を有効に予防するのに十分であり、内面12に設けた凹部16に使用者の鼻部が納まることで、装着中の上下方向のずれを防止可能である。
【0034】
一方、従来のフェイスシールドにおいては、顔全体を覆い、鼻、口、目に指で触れることにより感染するリスクを低減しつつ、装着中の息苦しさを軽減するが、曲面状シールドは顔の表面に密着するものでなく、装着中のずれの問題は生じない反面、曲面状シールドと顔との間の隙間から鼻、口、目を通じて感染するリスクがあり、さらに、硬質素材で外形が大きいことから、携帯または保管が不便であるところ、本3Dフェイスシールド10によれば、透明な薄板状本体部14の内面12が顔の表面に密着可能なように曲面状に形成されていることから、顔との間の隙間から鼻、口、目を通じて感染するリスクを有効に低減可能であるとともに、たとえば、二つに折り畳んで、ポケット、鞄内に保管可能である。
以上より、本3Dフェイスシールド10によれば、息苦しさ低減、装着時の違和感低減、保管の利便性、眼鏡の曇り防止等使い勝手に優れるとともに、顔全体を介してのウィルス、菌の感染を有効に防止可能である。
【0035】
以下に、本発明の第2実施形態について、図4ないし図6を参照しながら説明する。以下の説明において、第1実施形態と同様な構成要素については、同様な参照番号を付することによりその説明は省略し、以下では、本実施形態の特徴部分について詳細に説明する。
本発明の第2実施形態の特徴は、特に、夏季において、3Dフェイスシールド10を装着中の暑さ対策として、3Dフェイスシールド10の内面12に、アイスパッドCを設ける凹部16を設けた点である。
【0036】
より詳細には、図4ないし図6に示すように、薄板状本体部14の内面12のおでこ相当部位Tには、それぞれ内面12から顔Fに向かって張り出す、対向側壁36と対向側壁36それぞれの下縁間に及ぶ底壁40とからなるアイスパッド用凹部31が設けられ、アイスパッド用凹部31が設けられる部位に相当する外面18には、アイスパッド用凹部31を隠す帯状の装飾材29が付設される。伸縮自在バンド28を3Dフェイスシールド10の外面を横断するように設け、アイスパッド用凹部31を隠す帯状の装飾材を兼ねてもよい。
アイスパッドCは、従来既知のものでよく、常温でゲル状を冷蔵庫で冷却して固化するタイプでよく、アイスパッドCの大きさ、特に厚みは、なるべく薄いのが好ましい。
なお、アイスパッドCをあてがう位置は、おでこ相当部位において、各眉毛中央部直上方の2か所がよく、面積は、直径1センチ程度でよい。
【0037】
以上の構成を有する3Dフェイスシールド10によれば、装着の際、アイスパッドCをアイスパッド用凹部31に収容してから、伸縮自在バンド28を締め付けることにより、アイスパッドCの冷却面がおでこの表面を冷却し、夏季において、装着中の熱中症防止等暑さ対策として有効に機能する。なお、伸縮バンド28を締め付けることにより、対向側壁36と対向側壁36それぞれの下縁間に及ぶ底壁40とは、3Dフェイスシールド10の材質と同じであることから、変形して、内面12に沿う形態となることから、装着の際の邪魔となるものでない。以上より、夏場は、アイスパッドCにより、おでこを冷却しながら、3Dフェイスシールド10を装着することが可能であり、熱中症対策が可能である。
【0038】
以上、本発明の実施形態を詳細に説明したが、本発明の範囲から逸脱しない範囲内において、当業者であれば、種々の修正あるいは変更が可能である。
たとえば、本実施形態において、3Dフェイスシールド10の開口にマスク素材22をあてがうものとして説明したが、それに限定されることなく、3Dフェイスシールド10の大開口21が通気性マスク素材22により閉鎖される限り、耳部に耳掛け部を掛けることにより、従来のマスクを装着し、マスクが3Dフェイスシールド10の大開口21を覆うようにして、3Dフェイスシールド10を装着してもよく、これにより、マスク素材22をいちいち3Dフェイスシールド10の大開口21に固定し、マスク素材22を交換する場合には、3Dフェイスシールド10の大開口21から脱着する必要なしに、3Dフェイスシールド10とは無関係に、従来のマスクとして、交換すればよい。
【0039】
たとえば、本実施形態において、3Dフェイスシールド10の開口に平型マスクのマスク素材22をあてがうものとして説明したが、それに限定されることなく、3Dフェイスシールド10の開口が通気性マスク素材22により閉鎖される限り、プリーツ型マスクのマスク素材22をあてがうのでもよく、これにより、3Dフェイスシールド10の開口において、プリーツを上下に拡げることにより、装着中の息苦しさを軽減することが可能である。
たとえば、本実施形態において、3Dフェイスシールド10の大開口21が長方形のものとして説明したが、それに限定されることなく、3Dフェイスシールド10の大開口21が通気性マスク素材22により閉鎖される限り、大開口21は、楕円形、菱形でもよく、任意の閉曲線形状でもよい。
【0040】
たとえば、本実施形態において、3Dフェイスシールド10を上下方向に交差する横方向線に沿って二つ折りにして、上部および下部それぞれに設けた粘着部を介して、内面が露出しないように、折り畳むものとして説明したが、それに限定されることなく、3Dフェイスシールド10を上下方向(凹部の長手方向)に沿って二つ折りにして、両側部それぞれに設けた粘着部を介して、内面が露出しないように、折り畳むものでもよい。
たとえば、本実施形態において、アイスパッドCをアイスパッド用凹部に収容して、アイスパッドCの冷却面がおでこの表面を冷却し、夏季において、装着中の熱中症防止等暑さ対策として活用するものとして説明したが、それに限定されることなく、冬場においては、袋入り発熱剤をアイスパッド用凹部に収容して、おでこの表面を温めるのでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】本発明の第1実施形態に係る3Dフェイスシールド10の全体正面図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る3Dフェイスシールド10の平面図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る3Dフェイスシールド10を顔に装着している図である。
図4】本発明の第2実施形態に係る3Dフェイスシールド10の、図1と同様な図である。
図5】本発明の第2実施形態に係る3Dフェイスシールド10の、図3と同様な図である。
図6図4の線A-Aに沿う断面図である。
図5】本発明の第2実施形態に係る3Dフェイスシールド10の、図1と同様な図である。
図6図5の線A-Aに沿う断面図である。
【符号の説明】
【0042】
F 顔
N 鼻部
M 口部
T おでこ相当部位
E 耳部
C アイスパッド
10 3Dフェイスシールド
12 内面
14 薄板状本体部
15 周縁部
16 凹部
18 外面
20 小開口
21 大開口
22 通気性マスク素材
23 周縁部
24 両側部
26 端部
28 伸縮自在バンド
29 帯状装飾材
30 突出部
31 アイスパッド用凹部
32 上縁部
38 下縁部
34 粘着部
36 対向側壁
38 下縁
40 底壁
47 上端
49 下端
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2020-09-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0041
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0041】
図1】本発明の第1実施形態に係る3Dフェイスシールド10の全体正面図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る3Dフェイスシールド10の平面図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る3Dフェイスシールド10を顔に装着している図である。
図4】本発明の第2実施形態に係る3Dフェイスシールド10の、図1と同様な図である。
図5】本発明の第2実施形態に係る3Dフェイスシールド10の、図3と同様な図である。
図6図4の線A-Aに沿う断面図である。