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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022024368
(43)【公開日】2022-02-09
(54)【発明の名称】クリック感調整機構およびレンズ鏡筒
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/02 20210101AFI20220202BHJP
   G03B 17/02 20210101ALI20220202BHJP
   G02B 7/10 20210101ALI20220202BHJP
   H01H 3/50 20060101ALN20220202BHJP
   H01H 19/56 20060101ALN20220202BHJP
【FI】
G02B7/02 E
G03B17/02
G02B7/10 C
H01H3/50
H01H19/56 Y
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020123126
(22)【出願日】2020-07-17
(71)【出願人】
【識別番号】000133227
【氏名又は名称】株式会社タムロン
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】常 蘭
【テーマコード(参考)】
2H044
2H100
5G219
【Fターム(参考)】
2H044AE03
2H044EC03
2H100AA20
5G219GS12
5G219MS02
5G219MS12
(57)【要約】
【課題】クリック感を安価に調整可能な機構を実現する。
【解決手段】クリック感調整機構(10)は、X方向に移動可能な操作部材(142)に固定されているとともに係合部材(14)に係合する板バネ(13)に、係合部材(14)とは反対側から当接部材(15)の凸部(15b)を当接させる。クリック感調整機構(10)は、例えばレンズ鏡筒のスイッチに適用される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の方向に延在するとともに第一係合部を有し、前記第一の方向に交差する第二の方向に撓む弾性を有する弾性部材と、
前記第二の方向における前記弾性部材の弾性によって付勢されている前記第一係合部が係合可能な第二係合部を有し、前記弾性部材に対して前記第一の方向に沿って相対的に移動可能な係合部材と、
前記第二の方向における前記係合部材とは反対側から、前記弾性部材に対して支点として機能するように前記弾性部材に当接可能な当接部材と、を有し、
前記弾性部材または前記係合部材は、前記第一の方向に移動可能な操作部材に固定されている、クリック感調整機構。
【請求項2】
前記当接部材は、前記第一の方向において、前記弾性部材に当接する位置を変更可能である、請求項1に記載のクリック感調整機構。
【請求項3】
前記当接部材は、前記第一の方向に沿って延在するスリットをさらに有し、前記スリットに案内される範囲において前記弾性部材に当接する位置を変更可能である、請求項2に記載のクリック感調整機構。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載のクリック感調整機構および前記操作部材を備えるレンズ鏡筒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリック感調整機構およびレンズ鏡筒に関する。
【背景技術】
【0002】
レンズ鏡筒など様々な機器には、当該機器の使用者が操作するスイッチを備えている機器がある。当該スイッチについては、当該スイッチを操作する使用者に、スイッチの操作に伴うクリック感を付与する機構が知られている。使用者は、スイッチの操作時におけるクリック感によってスイッチの操作の適否を確認することができる。
【0003】
このようなクリック感を発生させる機構には、例えば、固定部材および移動部材の一方に固定されるクリックバネが、固定部材および移動部材の他方に設けられる複数の凹部のいずれかに係合する機構が知られている。当該機構において、クリックバネは、当該凹部に向けて付勢するように配置されている。上記の機構は、移動部材を移動させる操作者に対して、ある凹部に係合しているクリックバネが隣の凹部に係合する際にクリック感を発生する。(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-232596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のような従来技術では、クリック感の強弱は、クリックバネの弾性力に応じて決まる。したがって、クリック感の強さを調整するためには、クリックバネの弾性力を調整する必要がある。クリックバネには板バネを利用することができ、このような板バネの弾性力を調整するためには、板バネを作製するための金型を修正するか、あるいは新規に作製する必要がある。
【0006】
しかしながら、当該金型を修正または新調するためには、多大なコストがかかる。また、弾性力の調整によって板バネの寸法が変更され、当該クリック感発生機構におけるスイッチに関する構造の寸法を変更することが余儀なくされることがある。このように、従来のクリック感を発生する機構には、クリック感を調整する観点から検討の余地が残されている。
【0007】
本発明の一態様は、クリック感を安価に調整可能な機構を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を解決するために、本発明の一態様に係るクリック感調整機構は、第一の方向に延在するとともに第一係合部を有し、第一の方向に交差する第二の方向に撓む弾性を有する弾性部材と、第二の方向における弾性部材の弾性によって付勢されている第一係合部が係合する第二係合部を有し、弾性部材に対して第一の方向に沿って相対的に移動可能な係合部材と、第二の方向における係合部材とは反対側から、弾性部材に対して支点として機能するように弾性部材に当接可能な当接部材と、を有し、弾性部材または係合部材は、第一の方向に移動可能な操作部材に固定されている。
【0009】
また、上記の目的を解決するために、本発明の一態様に係るレンズ鏡筒は、上記のクリック感調整機構および操作部材を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様に係るクリック感調整機構およびレンズ鏡筒によれば、クリック感を安価に調整可能な機構を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態1に係るクリック感調整機構の一例の構成を模式的に示す図である。
図2図1に示されるクリック感調整機構における当接部材の一例の構成を模式的に示す斜視図である。
図3図1に示されるクリック感調整機構において係合部材を弾性部材に対して移動させた後の状態を模式的に示す図である。
図4】本発明の実施形態2に係るクリック感調整機構の一例の構成を模式的に示す図である。
図5】本発明の実施形態3に係るクリック感調整機構の一例の構成を模式的に示す図である。
図6】本発明の実施形態4に係るクリック感調整機構の一例の構成を模式的に示す図である。
図7】本発明の実施形態5に係るクリック感調整機構の一例の構成を模式的に示す図である。
図8】本発明の実施形態6に係るレンズ鏡筒の斜視図である。
図9】本発明の実施形態6に用いられる板バネの斜視図である。
図10】本発明の実施形態6に係るレンズ鏡筒における要部の断面を示す部分断面図である。
図11】クリック感を調整した後の本発明の実施形態6に係るレンズ鏡筒における要部の断面を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態1に係るクリック感調整機構の一例の構成を模式的に示す図である。なお、図1は、当該クリック感調整機構を含む機械要素の要部の断面を示す部分断面図である。
【0013】
[構成]
図1に示されるように、クリック感調整機構10は、基部12とその上に離れて配置されている外殻11とを有する二重構造において構築されている。外殻11は、X方向に沿って延在するスリット111を有している。基部12は、ねじ121が螺合するねじ穴122を有している。なお、以下の実施形態において、外殻11と基部12との隙間の広がりにおける一方向をX方向とし、外殻11と基部12との対向方向をY方向とする。
【0014】
外殻11と基部12との隙間には、板バネ13が配置されている。板バネ13は、外殻11に結合している固定部131へねじ132によって固定されている。板バネ13は、X方向に沿って延在し、先端部には折り曲げ部13aが形成されている。折り曲げ部13aは、Y方向において外殻11側に凸になるように折り曲げられた部分である。このように、板バネ13は、X方向に延在するとともに先端部に折り曲げ部13aを有し、かつY方向に撓む弾性を有している。
【0015】
外殻11のスリット111には、スリット111に沿って摺動自在な連結部141が挿通されている。連結部141における外殻11の外側には、操作部材142が固定されている。操作部材142は、操作部材142をX方向に移動させることを容易にするために、Y方向に突出する凸部を有している。連結部141における操作部材142とは反対側には、係合部材14が固定されている。係合部材14は、Y方向における外殻11と板バネ13との間に位置している。このように、操作部材142は、板バネ13に固定されており、X方向に移動可能である。
【0016】
係合部材14は、X方向に延在する部材である。係合部材14は、Y方向において、板バネ13に対向する凹凸形状を有している。より詳しくは、係合部材14は、X方向に沿って二つ並んで形成されている凹部14a、14bを有している。凹部14a、14bの開口部には、いずれも、板バネ13の折り曲げ部13aが当接する傾斜部が形成されている。係合部材14においてより先端側の凹部14aの傾斜部に折り曲げ部13aが当接することで、凹部14aが折り曲げ部13aに係合している。このように、係合部材14は、折り曲げ部13aが係合可能な凹部14a、14bを有している。また、係合部材14は、板バネ13に対してX方向に沿って移動可能である。
【0017】
当接部材15は、基部12上において、ねじ穴121に螺合するねじ122によって固定されている。当接部材15の凸部15bは、Y方向における基部12側から、板バネ13における、X方向における板バネ13の固定端と折り曲げ部13aとの間の部分に固定され、板バネ13に当接している。より詳しくは、X方向における板バネ13の固定端から折り曲げ部13aの頂部までの距離をLとし、凸部15bが板バネ13に当接する位置から折り曲げ部13aの頂部まで距離をLとしたとき、LはLよりも小さい。このように、当接部材15は、Y方向における係合部材14とは反対側から板バネ13に当接可能に配置されている。
【0018】
図2は、図1に示されるクリック感調整機構10における当接部材15の構成を模式的に示す斜視図である。図2に示されるように、当接部材15は、本体15a、凸部15bおよび孔15cを有する。本体15aは、平面視したときの形状が矩形であり、平板部151、段部152および傾斜部153を有している。当接部材15の材料は限定されないが、当接部材15は、例えば樹脂の成形体である。
【0019】
平板部151は、本体15aにおいて最も薄い部分であり、本体15aの平面形状である矩形の一側縁、一端縁およびその間の角を共有するより小さな矩形の平面形状を有する。
【0020】
段部152は、本体15aにおいて最も厚い部分であり、矩形の平面形状を有する。より詳しくは、段部152は、平面視したときに、平板部151に隣接し、平板部151に対して、平板部151の他端縁の一部を共有している。また、段部152は、平面視したときに、本体15aの平面形状である矩形に対して、本体15aの矩形の一側縁における残りの部分、他端縁および他側縁の一部を共有している。
【0021】
傾斜部153は、平面視したときに、段部152の一端部から本体15aの一端縁に向けて傾斜する斜面を有している。
【0022】
当接部材15は、段部152上に凸部15bを有する。凸部15bは、例えば、平面形状の矩形における短手方向に沿って延在する突条である。凸部15bの当該短手方向に直交する断面の形状は、略半円形状である。また、当接部材15は、平板部151において、平板部151を貫通する孔15cを有している。孔15cの平面形状は円形であり、ねじ122が挿通するように、ねじ122に応じた径を有している。
【0023】
[クリック感の発生]
図3は、図1に示されるクリック感調整機構において係合部材を弾性部材に対して移動させた後の状態を模式的に示す図である。操作部材142を矢印X1方向へ移動させると、凹部14aに係合している折り曲げ部13aは、Y方向における基部12側に曲がりながら凹部14aおよび14bの間の凸部に当接する。その後、X1方向に移動してきた凹部14bに係合する。このように、係合部材14では、Y方向における板バネ13の弾性によって付勢されている折り曲げ部13aが、凹部14bに係合する。
【0024】
折り曲げ部13aが上記凸部に当接している間は、折り曲げ部13aは、板バネ13の弾性によって上記凸部に向けて付勢されており、上記凸部を押圧する。その結果、操作部材142を移動させている操作者は、操作部材142を移動させる操作に重さを感じる。
【0025】
一方で、折り曲げ部13aが凹部14bに係合した時には、折り曲げ部13aは係合部材14に向けて付勢されていることから、凹部14bに瞬時に係合する。また、折り曲げ部13aにおける板バネ13の弾性による付勢は解消する。操作部材142の操作者にとっては、操作部材142のやや重たい移動操作から、折り曲げ部13aの凹部14bへの係合によって操作部材142が軽快かつ瞬時に停止する手応えを感じる。このときの手応えを「クリック感」とも言う。
【0026】
[クリック感の調整]
クリック感は、板バネ13の折り曲げ部13aを付勢する力が強いほどより明確になる。このような付勢力は、板バネ13が同一である場合には、板バネ13における支点から作用点までの距離が小さいほど強くなる。支点とは、固定部131で固定されている板バネ13の固定端であり、当接部材15の凸部15bが板バネ13に当接する場合には、板バネ13における凸部15bが当接している部分である。作用点は、板バネ13における係合部材14の凹部14a、14bに係合する部分であり、本実施形態では、折り曲げ部13aの頂部とする。
【0027】
ここで、図1に示されるクリック感調整機構10に当接部材15がないと仮定する。この場合、X方向における板バネ13の固定端が前述の始点となり、当該固定端から折り曲げ部13aの頂部までの距離はLである。この場合に操作部材142を矢印X1方向に移動させる際に折り曲げ部13aに生じる付勢力をFとする。
【0028】
一方、図1に示されるように、クリック感調整機構10において、当接部材15が板バネ13に基部12側から当接している場合では、板バネ13に接している凸部15bは、前述の始点となる。当該支点から折り曲げ部13aの頂部までの距離はL(ただしL<L)である。この場合に操作部材142を矢印X1方向に移動させる際に折り曲げ部13aに生じる付勢力をFとする。
【0029】
上記の両者では、板バネ13の寸法および物性は一定である。このため、付勢力Fは付勢力Fに比べて大きくなる。このように、当接部材15は、Y方向における係合部材14とは反対側から板バネ13に当接して、板バネ13に対して支点として機能している。したがって、支点から作用点までの距離をLからLへ、短くすることにより、クリック感を強くすることができる。また、当該距離を長くすることにより、クリック感を弱めることができる。
【0030】
このように、クリック感調整機構10は、当接部材15を板バネ13に当接させることにより、当接部材15を板バネ13に当接させない場合に比べて、クリック感をより強くしている。
【0031】
[作用効果]
従来では、クリック感が不十分な場合、板バネ13の固定端から折り曲げ部13aまでの距離を小さくする、あるいは板バネ13の厚さまたは幅を変更するなど、板バネ13の寸法を変更する必要がある。板バネ13の寸法を変更するためには、板バネ13を作製するための金型を修正するか、あるいは新たに作製する必要がある。しかしながら、板バネ13の金型の修正または新調には、多大な費用を要する。
【0032】
また、板バネ13の固定端からの長さを変更する場合には、係合部材14の寸法または配置を変更する必要が生じる。このため、クリック感を要する装置の仕様を変更する必要が生じることがあり、少なからぬ費用と労力を要する。
【0033】
一方、当接部材15は、X方向における、固定部131に固定された板バネ13の固定端から折り曲げ部13aまでの所望の位置にねじ穴121を形成することによって固定することが可能である。また、クリック感の調整が不要な場合には、凸部15bが板バネ13に当接しない位置まで当接部材15を回動させて固定すればよい。このように、クリック感調整機構10は、凸部15bが板バネ13に当接しない場合と、凸部15bが板バネ13に当接する場合との二段階で、クリック感を調整することが可能である。
【0034】
したがって、本実施形態によれば、クリック感を発生させる構成には、従来の構成を採用することができる。したがって、クリック感の調整の有無に関わらず、クリック感を発生させる構成の変更を要さない。また、当接部材15は、前述したように樹脂製の部材であってよいため、安価である。さらに、クリック感を調整するために、部材の追加または変形を要さない。したがって、クリック感を調整する場合でも、そのための部材の追加または変形にかかる費用が追加で発生することがない。
【0035】
このように、本実施形態では、X方向における板バネ13の固定端と折り曲げ部13aとの間に支点を設けて板バネ13のたわみ量を変更可能にしている。このため、クリック感を発生させる機構を採用する構造において、板バネ13の設計変更のために金型を追加で修正しあるいは新たに作製することなく、クリック感を容易に調整することが可能である。よって、クリック感調整機構10によれば、クリック感を安価に調整することができる。
【0036】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。本実施形態は、基部12がX方向に並んで形成される複数のねじ穴を有する以外は、前述した実施形態1と同様である。図4は、本発明の実施形態2に係るクリック感調整機構の一例の構成を模式的に示す図である。図4は、当該クリック感調整機構を含む機械要素の要部の断面を示す部分断面図である。
【0037】
図4に示されるように、クリック感調整機構20は、基部12がねじ穴121の他にねじ穴221、222をさらに有する。ねじ穴221は、ねじ穴121よりもX方向における固定部131側に形成されており、ねじ穴222は、ねじ穴121よりもX方向における固定部131とは反対側に形成されている。ねじ穴221、222は、いずれも、ねじ穴121と同様に、ねじ122が螺合可能である。
【0038】
図4中の矢印P1~P3は、それぞれ、凸部15bが板バネ13に当接する位置を示している。ねじ穴221にねじ122を螺合させて当接部材15を固定する場合では、凸部15bは、矢印P1の位置で板バネ13に当接する。ねじ穴121にねじ122を螺合させて当接部材15を固定する場合では、凸部15bは、矢印P2の位置で板バネ13に当接する。ねじ穴222にねじ122を螺合させて当接部材15を固定する場合では、凸部15bは、矢印P3の位置で板バネ13に当接する。このように、クリック感調整機構20は、当接部材15は、X方向において、板バネ13に当接する位置を変更可能である。
【0039】
クリック感調整機構20では、凸部15bが板バネ13に当接する位置が、矢印P1、P2、P3の順で、操作部材142を移動させる操作者が感じるクリック感がより強くなる。このように、クリック感調整機構20では、当接部材15の固定箇所を三か所選ぶことができ、当該固定箇所に応じてクリック感を調整することが可能である。したがって、クリック感調整機構20は、凸部15bを板バネ13に当接させない向きで当接部材15を固定する場合を含めて、四段階でクリック感を調整することができる。
【0040】
〔実施形態3〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。本実施形態は、当接部材15の平板部151に形成されている孔15cが細長に形成されている以外は、前述した実施形態1と同様である。図5は、本発明の実施形態3に係るクリック感調整機構の一例の構成を模式的に示す図である。図5は、当該クリック感調整機構を含む機械要素の要部の断面を示す部分断面図である。
【0041】
図5に示されるように、クリック感調整機構30では、当接部材15は、平板部151に、当接部材15の平面形状の長手方向に沿って延在するスリット35cを有する。スリット35cは、細長な孔であり、その長手方向の任意の位置にねじ122を挿通できるように形成されている。当接部材15は、スリット35cに挿通させたねじ122を基部12のねじ穴121に螺合させることによって固定される。
【0042】
図5中の矢印P4、P5は、それぞれ、凸部15bが板バネ13に当接可能な範囲の両端の位置を示している。スリット35cにおける最も凸部15b寄りの位置にねじ122を挿通させた場合では、凸部15bは、矢印P4の位置で板バネ13に当接する。スリット35cにおける最も凸部15bから離れた位置にねじ122を挿通させた場合では、凸部15bは、矢印P5の位置で板バネ13に当接する。スリット35cにおけるねじ122の挿通位置は、スリット35cの長手方向において任意に決めることが可能である。このように、クリック感調整機構30では、当接部材15は、X方向に沿って延在するスリット35cを有し、スリット35cに案内される範囲において板バネ13に当接する位置を変えることが可能である。
【0043】
クリック感調整機構30では、板バネ13に対する凸部15bの当接位置が矢印P4の位置に近いほどクリック感が弱くなり、当該当接位置が矢印P5の位置に近いほどクリック感が強くなる。このように、クリック感調整機構30では、当接部材15の固定箇所を矢印P4が示す位置から矢印P5が示す位置までの任意の位置に選ぶことができ、当該固定箇所に応じてクリック感を調整することが可能である。したがって、クリック感調整機構30は、所定の範囲において連続的にクリック感を調整することができる。
【0044】
〔実施形態4〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。本実施形態は、当接部材15が基部12のX方向における任意の位置に固定可能に構成されている以外は、前述した実施形態1と同様である。図6は、本発明の実施形態4に係るクリック感調整機構の一例の構成を模式的に示す図である。図6は、当該クリック感調整機構を含む機械要素の要部の断面を示す部分断面図である。
【0045】
図6に示されるように、クリック感調整機構40では、基部12は、X方向に沿って延在するスリット421を有する。スリット421は、その長手方向の任意の位置にねじ122を挿通できるように形成されている。当接部材15は、孔15cに挿通させたねじ122を基部12のスリット421にさらに挿通させ、ねじ122に、基部12の外殻11とは反対側からナット45dを螺合させることによって固定される。
【0046】
図6中の矢印P6、P7は、それぞれ、凸部15bが板バネ13に当接可能な範囲の両端の位置を示している。スリット421における最も固定部131寄りの位置で当接部材15を固定した場合では、凸部15bは、矢印P6の位置で板バネ13に当接する。スリット421における最も固定部131から離れた位置に当接部材15を固定した場合では、凸部15bは、矢印P7の位置で板バネ13に当接する。スリット421におけるねじ122の挿通位置は、スリット421の長手方向において任意に決めることが可能であり、X方向における当接部材15の固定位置は、当該挿通位置に応じて任意に決めることが可能である。このように、クリック感調整機構40は、基部12がX方向に沿って延在するスリット421を有し、当接部材15は、スリット421に案内される範囲において板バネ13に当接する位置を変更可能である。
【0047】
クリック感調整機構40では、板バネ13に対する凸部15bの当接位置が矢印P6の位置に近いほどクリック感が弱くなり、当該当接位置が矢印P7の位置に近いほどであるとクリック感が強くなる。このように、クリック感調整機構40では、当接部材15の固定箇所を矢印P6が示す位置から矢印P7が示す位置までの任意の位置に選ぶことができ、当該固定箇所に応じてクリック感を調整することが可能である。したがって、クリック感調整機構40も、クリック感調整機構30と同様に、所定の範囲において連続的にクリック感を調整することができる。
【0048】
〔実施形態5〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。本実施形態は、固定されている係合部材14に対して、操作部材142の移動に伴って板バネ13が移動するように構成されている以外は、前述した実施形態1と同様である。図7は、本発明の実施形態5に係るクリック感調整機構の一例の構成を模式的に示す図である。図7は、当該クリック感調整機構を含む機械要素の要部の断面を示す部分断面図である。
【0049】
図7に示されるように、クリック感調整機構50では、操作部材142は、スリット111を摺動自在な固定部531と結合している。固定部531は、操作部材142に結合している連結部532と、連結部532の先端からX方向に沿って延在する平板部533とを有している。固定部531の正面から見た形状は、略L字形状である。
【0050】
連結部532は、不図示の凹部と連結部532の先端から当該凹部に達するねじ穴とを有しており、当該凹部には板バネ13が挿入され、板バネ13は、当該ねじ穴に螺合するねじ132によって連結部532に固定されている。このようにして、板バネ13は、X方向に延在し、基端側に固定端を有するとともに先端側が自由端となるように、固定部531に固定されている。
【0051】
平板部533には、当接部材15が固定される。当接部材15は、実施形態3における当接部材15と同様に構成されており、スリット35cを有している。当接部材15は、スリット35cに挿通されるねじ122が、平板部533における不図示のねじ穴に螺合することによって、平板部533上に固定されている。
【0052】
外殻11と基部12との隙間に面する外殻11の表面には、係合部材14が固定されている。係合部材14は、X方向に沿って配置されている二つの凹部14a、14bを有している。凹部14aには、固定部531に固定されている板バネ13の折り曲げ部13aが係合している。
【0053】
クリック感調整機構50では、操作部材142を矢印X1方向に移動させると、板バネ13が矢印X方向に移動し、凹部14aに係合している折り曲げ部13aが凹部14a、14b間の凸部を乗り越えて凹部14bに係合する。板バネ13には、当接部材15の凸部15bが当接している。したがって、クリック感調整機構50は、操作部材142を移動させる操作者に、凸部15bが当接する位置に応じたクリック感を与える。
【0054】
なお、実施形態3と同様に、スリット35cにおけるねじ122の挿通位置に応じて、板バネ13における凸部15bの当接位置を任意に設定することができる。したがって、クリック感調整機構50では、X方向における当該当接位置の範囲内でクリック感を連続的に調整することが可能である。
【0055】
このように、本発明では、相対的に移動可能な板バネおよび係合部材のいずれか一方が、移動可能な操作部材に固定されていればよく、移動可能な操作部材のクリック感を適宜に調整することが可能である。
【0056】
〔実施形態6〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。図8は、本発明の実施形態6に係るレンズ鏡筒の斜視図である。レンズ鏡筒600は、ズームレンズであり、円筒状の外殻611と外殻611上に配置されているスイッチ602とを有し、不図示のクリック感調整機構を備える。スイッチ602は、操作部材642を有し、操作部材642は、レンズ鏡筒600の周方向に沿って移動可能である。
【0057】
図9は、本発明の実施形態6に用いられる板バネの斜視図である。図9に示されるように、板バネ613には、固定用の端部と折り曲げ部613aとの間に屈曲部613bが形成されている。
【0058】
レンズ鏡筒600におけるクリック感調整機構について説明する。図10は、レンズ鏡筒600における要部の断面を示す部分断面図である。図10に示されるように、クリック感調整機構60は、円周方向に沿うように形成され、また配置されている以外は、実施形態3のクリック感調整機構30と同様に構成されている。
【0059】
クリック感調整機構60は、円筒状の基部612とその上に離れて配置されている外殻611とを有する二重構造において構築されている。基部612は、例えば、レンズ鏡筒600のレンズを固定している。本実施形態において、X方向は、レンズ鏡筒600の断面形状における円周方向であり、Y方向は、レンズ鏡筒600の断面形状における径方向である。
【0060】
操作部材642には、外殻611に形成されているスリット651を摺動自在な連結部641を介して、係合部材614が接続されている。係合部材614は、凹部614a、614bを有しており、外殻611に沿うように形成されている。
【0061】
板バネ613は、外殻611と基部612との間の隙間において、先端の折り曲げ部613aが自由端となるように、不図示の固定部に固定されている。より詳しくは、板バネ613は、当該隙間において、屈曲部613bが外殻611に向けて凸になるように固定されている。それにより、板バネ613は、X方向に沿って延出している。折り曲げ部613aは、係合部材614の凹部614aに係合している。
【0062】
当接部材615は、基部612の外周面上に固定されている。正面から見たときの当接部材615の下面は、基部612の外周面に沿う円弧形状となっており、当接部材615は、基部612の外周面に沿って固定される。当接部材615は、X方向に沿って延在するスリット615cを有しており、スリット615cに挿通されたねじ122が基部612のねじ穴622に螺合することによって、基部612上に固定される。このように、レンズ鏡筒600は、クリック感調整機構60を備えている。
【0063】
図10において、当接部材615の凸部615bは、板バネ613の屈曲部613bに向けて突き出ているが、屈曲部613bには当接していない。したがって、レンズ鏡筒600のスイッチ602におけるクリック感は、板バネ613が本来有する弾性力に応じた強さである。このときの板バネ613の固定端から折り曲げ部613aまでのX方向における長さをLとすると、Lは、クリック感調整機構60において最長である。そして、このときのクリック感は、クリック感調整機構60が発現するクリック感のうちで最も弱い。
【0064】
ここで、上記クリック感をより強くする必要が生じたとする。当該必要とは、たとえば、レンズ鏡筒600の使用に伴う板バネ613の弾性力の低下、あるいは、レンズ鏡筒600のユーザによるクリック感を強めたい旨の要求、などである。
【0065】
図11は、クリック感を調整した後のレンズ鏡筒600における要部の断面を示す部分断面図である。図11に示されるように、クリック感調整機構60では、当接部材615が矢印X方向に移動した位置で基部612に固定されている。また、当接部材615の凸部615bは、X方向における板バネ613の屈曲部613bよりも折り曲げ部613a側の位置で、Y方向における基部612側から、板バネ613に当接している。
【0066】
このときの板バネ613の、凸部615bの当接位置から折り曲げ部613aまでのX方向における長さをLとすると、Lは前述のLよりも短い。このため、係合部材614の前述の凸部を乗り越えるときの板バネ613の撓みによる板バネ613のY方向における弾性力は、板バネ613の固定端から折り曲げ部613aまでの距離がLのときのそれに比べてより強くなる。したがって、クリック感はより強くなっている。
【0067】
本実施形態によれば、前述した他の実施形態と同様に、レンズ鏡筒600のスイッチ602におけるクリック感を安価に調整することが可能である。本実施形態において、クリック感を適度に弱めることは、スイッチ602の操作を伴うレンズ鏡筒600の操作性を高める観点から好ましい。また、クリック感を適度に強くすることは、上記の操作性を維持しつつ、スイッチ602の予期せぬ移動によるレンズ鏡筒600の誤動作が発生することを抑制する観点から好ましい。
【0068】
〔変形例〕
本発明は上述した各実施形態に限定されず、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態も、本発明の技術的範囲に含まれる。
【0069】
たとえば、クリック感調整機構において、係合部材は三以上の凹部を有していてもよい。たとえば、前述のレンズ鏡筒において、操作部材が回動可能な可動リングであり、軸方向において可動リングに隣接する固定リングの周方向における内周面側に、係合部材の凹部が多数周設されてもよい。
【0070】
また、前述の実施形態では、板バネにおける凸状の折り曲げ部と係合部材における凹部とが係合しているが、板バネの凹部と係合部材の凸部とが係合してもよい。
【0071】
また、クリック感調整機構において、当接部材は、弾性部材に対して接近、離間可能な部材であってもよい。たとえば、当接部材は、基部のねじ穴に、弾性部材とは反対側からの螺合により、弾性部材に対して接近して当接し、後退して離間するねじであってもよい。この場合、当接部材の弾性部材に対する当接強さによっても、クリック感を調整することが可能になる。
【0072】
また、クリック感調整機構は、操作部材を操作する者にクリック感を与える機器であれば、レンズ鏡筒以外の機器にも適用可能である。また、レンズ鏡筒は、ズームレンズでなくてもよい。レンズ鏡筒は、例えば単焦点レンズ鏡筒であってもよい。
【0073】
また、レンズ鏡筒において、スイッチの移動方向は、レンズ鏡筒の周方向ではなく、軸方向であってもよい。このとき、実施形態1~5に記載のクリック感調整機構をレンズ鏡筒の光軸方向をX軸として配置してもよい。なお、実施形態6では、レンズ鏡筒がズームレンズである場合を例に説明したが、単焦点レンズであってもよい。
【0074】
〔まとめ〕
本発明の実施形態に係るクリック感調整機構(10、20、30、40、50、60)は、第一の方向(X方向)に延在するとともに第一係合部(折り曲げ部13a、613a)を有し、第一の方向に交差する第二の方向(Y方向)に撓む弾性を有する弾性部材(板バネ13、613)と、第二の方向における弾性部材の弾性によって付勢されている第一係合部が係合可能な第二係合部(凹部14a、14b、614a、614b)を有し、弾性部材に対して第一の方向に沿って相対的に移動可能な係合部材(14、614)と、第二の方向における係合部材とは反対側から、弾性部材に対して支点として機能するように弾性部材に当接可能な当接部材(15、615)と、を有し、弾性部材または係合部材は、第一の方向に移動可能な操作部材(142、642)に固定されている。この構成によれば、弾性部材の金型の設計変更をせずにクリック感を調整することが可能であることから、弾性部材の金型の設計変更を伴う場合に比べて、クリック感を安価に調整可能な機構を実現することができる。
【0075】
本発明の実施形態において、当接部材は、第一の方向において、弾性部材に当接する位置を変更可能であってもよい。この構成は、弾性部材の始点から作用点までの距離を複数設定することが可能であることから、クリック感を精密に調整する観点からより効果的である。
【0076】
また、本発明の実施形態において、クリック感調整機構は、当接部材が第一の方向に沿って延在するスリット(35c、421、615c)をさらに有し、スリットに案内される範囲において弾性部材に当接する位置を変更可能であってもよい。この構成は、弾性部材の始点から作用点までの距離を所定の範囲において連続的に設定することが可能であることから、クリック感を精密に調整する観点からより一層効果的である。
【0077】
また、本発明の実施形態に係るレンズ鏡筒は、上記のクリック感調整機構および操作部材を備える。この構成によれば、本発明の実施形態に係るクリック感調整機構をレンズ鏡筒のスイッチに適用することができ、レンズ鏡筒においてクリック感を安価に調整可能な機構を実現することができる。その結果、当該レンズ鏡筒において、スイッチの誤作動の発生を安価な構成で抑制することができる。
【符号の説明】
【0078】
10、20、30、40、50、60 クリック感調整機構
11、611 外殻
12、612 基部
13、613 板バネ(弾性部材)
13a、613a 折り曲げ部(第一係合部)
14、614 係合部材
14a、14b、614a、614b 凹部(第二係合部)
15、615 当接部材
15a 本体
15b、615b 凸部
15c 孔
35c、111、421、615c、651 スリット
45d ナット
121、221、222、622 ねじ穴
122、132 ねじ
131、531 固定部
141、532、641 連結部
142、642 操作部材
151、533 平板部
152 段部
153 傾斜部
600 レンズ鏡筒
602 スイッチ
613b 屈曲部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11