(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022024371
(43)【公開日】2022-02-09
(54)【発明の名称】フラックス塗料、塗膜、熱交換器用アルミニウムチューブ、および熱交換器
(51)【国際特許分類】
B23K 35/363 20060101AFI20220202BHJP
C22C 21/00 20060101ALN20220202BHJP
【FI】
B23K35/363 H
C22C21/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020123277
(22)【出願日】2020-07-17
(71)【出願人】
【識別番号】000176707
【氏名又は名称】三菱アルミニウム株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000168414
【氏名又は名称】荒川化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】古村 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】兵庫 靖憲
(72)【発明者】
【氏名】山崎 彰寛
(72)【発明者】
【氏名】東本 徹
(57)【要約】
【課題】本願は、ろう付けされる構成の熱交換器に対し適用可能であり、塗膜とした状態で密着性を向上させることができるフラックス塗料と塗膜および該塗膜を備えた熱交換器の提供を目的とする。
【解決手段】本発明に係るフラックス塗料は、Zn非含有フラックスと合成樹脂と有機溶剤と酸性リン酸エステルを含むことを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Zn非含有フラックスと合成樹脂と有機溶剤と酸性リン酸エステルを含むことを特徴とするフラックス塗料。
【請求項2】
前記酸性リン酸エステルは下記化学式(1)で示され、化学式(1)において、nは1または2であり、Rはそれぞれ独立にアルキル基、またはアルケニル基で表される化合物であり、化学式(1)について上記した「Rはそれぞれ独立に」とは、下記化学式(2)(nが2であるとき)においてR
1とR
2が異なる基であってもよいことを意味することを特徴とする請求項1に記載のフラックス塗料。
【化1】
【化2】
【請求項3】
前記リン酸エステルが前記合成樹脂の質量に対し0.04質量%以上6.5質量%以下含有されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のフラックス塗料。
【請求項4】
前記リン酸エステルに、メチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、プロピルアシッドホスフェート、イソプロピルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、オクチルアシッドホスフェート、2-エチルヘキシルアシッドホスフェート、デシルアシッドホスフェート、ラウリルアシッドホスフェート、ステアリルアシッドホスフェート、オレイルアシッドホスフェート、ベヘニルアシッドホスフェート、ジメチルアシッドホスフェート、ジエチルアシッドホスフェート、ジプロピルアシッドホスフェート、ジイソプロピルアシッドホスフェート、ジブチルアシッドホスフェート、ジオクチルアシッドホスフェート、ジ-2-エチルヘキシルアシッドホスフェート、ジラウリルアシッドホスフェート、ジステアリルアシッドホスフェートのうち、1種または2種以上が含まれていることを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか一項に記載のフラックス塗料。
【請求項5】
Zn含有フラックスが含まれていることを特徴とする請求項1~請求項4のいずれか一項に記載のフラックス塗料。
【請求項6】
ろう材が含まれていることを特徴とする請求項1~請求項5のいずれか一項に記載のフラックス塗料。
【請求項7】
請求項1~請求項6のいずれか一項に記載のフラックス塗料からなることを特徴とする塗膜。
【請求項8】
請求項7に記載の塗膜を有することを特徴とする熱交換器用アルミニウムチューブ。
【請求項9】
請求項8に記載のアルミニウムチューブを備えたことを特徴とする熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラックス塗料、塗膜、熱交換器用アルミニウムチューブ、および熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、フィンと複数のチューブを一体化した構造の熱交換器を組み立てるため、ろう付けするべき材料の表面にフラックスを塗布する方法やフラックスとろう材との混合組成物を塗布する方法が実施されており、ろう付けに好適な成分組成を改良したろう付け用塗料組成物が提案されている。
ろう付け用塗料組成物は一般的にはろう材とフラックスと合成樹脂と有機溶剤の混合塗料組成物であり、この混合塗料組成物をフィンと接合するチューブに塗布しておき、フィンとチューブを組み立ててから全体をろう付け温度に加熱してろう付けすることが行われている。
【0003】
また、以下の特許文献1には、絶縁性、加工性、塗膜密着性および耐傷付き性に優れた高絶縁性アルミニウム塗装材が開示されている。
この高絶縁性アルミニウム塗装材は、アルミニウム基材上に形成された化成皮膜と、この化成皮膜上に形成された塗膜を有する。この塗膜は、硬度:10N/mm2~100N/mm2、ガラス転移温度:120℃~160℃ であり、かつ、エポキシ-アミノ樹脂を70~90重量%、硫酸バリウムを10~30重量% 、有機シリコーン系化合物を0~5重量% 、ポリアクリル酸を0~28重量%含有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、これまで、フィンとチューブをろう付けするタイプの熱交換器を組み立てる場合に用いるろう付け用塗料として、ろう材粉末とZn含有フラックスと合成樹脂を有機溶剤中に配合したろう付け用塗料について研究開発を行っている。
また、本発明者は、この研究開発の一環として、ろう材粉末とZn非含有フラックスと合成樹脂を有機溶剤に配合したろう付け用塗料について研究し、このろう付け用塗料をチューブ表面に塗布して塗膜を得た場合、塗膜密着性が不足することを知見した。
【0006】
チューブ表面の塗膜密着性が低い場合、熱交換器の組み立てのためにフィンに形成した透孔やスリットに沿ってチューブを差し込んだ場合、塗膜剥離が発生し易く、塗膜剥離を生じた部分においてろう付け性が低下するおそれがあった。
また、適用対象の熱交換器によっては、チューブの一部をリサイズすることがあり、リサイズするためにダイス等の工具を用いてチューブの一部を加工すると、加工部分において塗膜が容易に剥離する問題があることを知見した。
【0007】
本願発明は、フィンとチューブがろう付けされるタイプの熱交換器に対し適用可能であり、塗膜とした状態でアルミニウムに対する密着性を向上させることができるフラックス塗料および塗膜と該塗膜を備えたアルミニウムフィンと熱交換器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のフラックス塗料は、Zn非含有フラックスと合成樹脂と有機溶剤と酸性リン酸エステルを含むことを特徴とする。
本発明のフラックス塗料において、前記酸性リン酸エステルは下記化学式(1)で示され、化学式(1)において、nは1または2であり、Rはそれぞれ独立に、アルキル基で表される化合物であり、化学式(1)について上記した「Rはそれぞれ独立に」とは、下記化学式(2)(nが2であるとき)においてR1とR2が異なる基であってもよいことを意味する。
【0009】
【0010】
【0011】
本発明のフラックス塗料において、前記リン酸エステルが前記合成樹脂の質量に対し0.04質量%以上6.5質量%以下含有されていることが好ましい。
本発明のフラックス塗料において、前記リン酸エステルに、メチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、プロピルアシッドホスフェート、イソプロピルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、オクチルアシッドホスフェート、2-エチルヘキシルアシッドホスフェート、デシルアシッドホスフェート、ラウリルアシッドホスフェート、ステアリルアシッドホスフェート、オレイルアシッドホスフェート、ベヘニルアシッドホスフェート、ジメチルアシッドホスフェート、ジエチルアシッドホスフェート、ジプロピルアシッドホスフェート、ジイソプロピルアシッドホスフェート、ジブチルアシッドホスフェート、ジオクチルアシッドホスフェート、ジ-2-エチルヘキシルアシッドホスフェート、ジラウリルアシッドホスフェート、ジステアリルアシッドホスフェートのうち、1種または2種以上が含まれていることが好ましい。
【0012】
本発明のフラックス塗料において、Zn含有フラックスが含まれていても良い。
本発明のフラックス塗料において、ろう材が含まれていても良い。
本発明の塗膜は先のいずれかに記載のフラックス塗料からなることが好ましい。
本発明の熱交換器用アルミニウムチューブは、先に記載の塗膜を有することを特徴とする。
本発明の熱交換器は、先に記載のアルミニウムチューブを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によるフラックス塗料は、Zn非含有フラックスと合成樹脂と有機溶剤と酸性リン酸エステルを含むので、酸性リン酸エステルの添加によりアルミニウムの表面に塗膜として形成した場合に剥がれにくくなり、更に、塗膜硬度が上昇することも関連してアルミニウムの表面に塗膜とした場合の塗膜密着性を向上できる。
酸性リン酸エステル中の極性基とアルミニウム表面の電気的な相互作用により密着性が向上する。
【0014】
また、フラックス塗料中にろう材を含んでいると、ろう付けに利用できるフラックス塗料となり、アルミニウムチューブに塗布してろう付け用塗膜を得ることができる。
このろう付け用塗膜であるならば、アルミニウムチューブとフィンを組み合わせてろう付けし、熱交換器を構成する場合、ろう付け用塗膜を備えたアルミニウムチューブとフィンの組立時に両者が接触して擦れた場合であっても、塗膜剥がれを生じない。
このため、目的の位置に目的量のろう付け塗膜を備えたアルミニウムチューブを用いてろう付け不良箇所を生じることのない、良好なろう付け接合性の熱交換器を提供できる。
【0015】
なお、ろう材を含んでいないフラックス塗料の場合、ろう材層が形成されているクラッドフィンと組み合わせることでチューブとフィンをろう付け接合した熱交換器を製造できる。または、ろう材の供給源として別途棒ろうやペーストろうを組み合わせることも可能となる。
通常のろう付の場合、フラックスは不可欠なため、チューブにフラックスが塗布されていない場合、各部材を熱交換器の形に組み付けた後、フラックス液に浸漬するかスプレー塗布を行うなど、何らかの方法でフラックスを塗布する必要がある。
これらに対し、チューブにフラックスを塗布している場合、フラックスの塗布工程を省くことができ、熱交換器を製造する場合のメリットとなる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係るフラックス塗膜を適用して製造された第1実施形態の熱交換器の正面図である。
【
図2】第1実施形態の熱交換器において、チューブの長さ方向に沿って縦断面をとった部分断面図である。
【
図3】第1実施形態の熱交換器をろう付けする前の熱交換器組立体を示す部分断面図である。
【
図4】本発明に係るフラックス塗膜を適用して製造された第2実施形態の熱交換器を示す斜視図である。
【
図5】第2実施形態の熱交換器において、チューブの長さ方向に直交する面に沿って横断面をとった断面図である。
【
図6】第2実施形態の熱交換器において、チューブの長さ方向に沿って縦断面をとった断面図であり、ろう付け工程前の状態を示す図である。
【
図7】第2実施形態の熱交換器において、チューブの長さ方向に沿って縦断面をとった断面図であり、ろう付け工程後の状態を示す図である。
【
図8】実施例で得られた試料におけるリン酸エステル添加量と鉛筆硬度の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面に基づき、本発明の一実施形態について詳細に説明する。
本実施形態のフラックス塗料は、有機溶剤に対し、ろう材とZn非含有フラックスと合成樹脂と酸性リン酸エステルを個々に所定量添加してなる塗料である。また、このフラックス塗料においては、Zn非含有フラックスに加え、Zn含有フラックスを一部含んでいても良い。また、フラックス塗料はろう材を含むので、ろう付け用フラックス塗料と呼称することができ、このフラックス塗料を塗布することでろう付け用フラックス塗膜を得ることができる。
【0018】
フラックス塗料に含まれるろう材として、Si粉末あるいはSiを含む合金粉末などのろう材粉末を用いることができる。
Zn非含有フラックスとして、LiF、KF、CaF2、AlF3、K2SiF6、KAlF4、K3AlF6、K2AlF5・5H2Oのうち、1種または2種以上を選択して用いることができる。
Zn含有フラックスとして、KZnF3、ZnF3のうち、1種または2種を選択して用いることができる。
合成樹脂として、アクリル樹脂、ポリエーテル骨格を有する樹脂、セルロース系樹脂のうち、1種または2種以上を選択して用いることができる。
有機溶剤として、IPA(イソプロピルアルコール)、MMB(3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール)、ギ酸、フタル酸ジブチル(DBP)、酢酸エチル、フェノールのうち、1種または2種以上などを用いることができる。
【0019】
酸性リン酸エステルとして使用可能なエステルは、例えば、下記化学式(1)で示される。下記化学式(1)において、nは1または2であり、Rはそれぞれ独立にアルキル基で表される化合物である。
化学式(1)について上記記載した「Rはそれぞれ独立に」とは、例えば、下記化学式(2)(nが2であるとき)において、R1とR2が異なる基であってもよいことを意味する。
【0020】
【0021】
【0022】
前記リン酸エステルには、メチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、プロピルアシッドホスフェート、イソプロピルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、オクチルアシッドホスフェート、2-エチルヘキシルアシッドホスフェート、デシルアシッドホスフェート、ラウリルアシッドホスフェート、ステアリルアシッドホスフェート、オレイルアシッドホスフェート、ベヘニルアシッドホスフェート、ジメチルアシッドホスフェート、ジエチルアシッドホスフェート、ジプロピルアシッドホスフェート、ジイソプロピルアシッドホスフェート、ジブチルアシッドホスフェート、ジオクチルアシッドホスフェート、ジ-2-エチルヘキシルアシッドホスフェート、ジラウリルアシッドホスフェート、ジステアリルアシッドホスフェートのうち、1種または2種以上が含まれていることが好ましい。
【0023】
「フラックス塗料中のろう材含有量:1.5~60質量%」
フラックス塗料におけるろう材含有量は1.5質量%以上60質量%以下の範囲が好ましい。
ろう材含有量が1.5質量%未満では塗膜に必要なろう材量を確保することができなくなり、ろう付け性が低下する。
ろう材含有量が60質量%を超えると塗膜に過剰なろう材を含むこととなり、ろう材としてSi粉末を使用する場合、未反応Si残渣が発生するとともにチューブの腐食深さが大きくなり、フィン分離防止の面で不利となる。
【0024】
「フラックス塗料中のフラックス含有量:2.5~60質量%」
フラックス塗料におけるZn非含有フラックスの含有量は2.5質量%以上60質量%以下の範囲が好ましい。
フラックスの含有量が2.5質量%未満であると、ろうの形成が不十分になり、被ろう付材(チューブ)の表面酸化皮膜の破壊除去が不十分なためにろう付不良を招く。一方、フラックスの含有量が60質量%を超えると、塗膜が厚過ぎるため、ろう付け時にフィンとチューブの隙間が大きく接合不良が発生するおそれがある。
【0025】
「フラックス塗料中の合成樹脂含有量:4.5~14.5質量%」
フラックス塗料における合成樹脂含有量(バインダの含有量)は4.5質量%以上14.5質量%以下の範囲が好ましい。
フラックス塗料におけるバインダの含有量が4.5質量%未満であると、塗膜硬度が低下し、加工性(耐塗膜剥離性)が低下する。一方、バインダの含有量が14.5質量%を超えるようであると、塗膜未反応によるフィレット未形成の影響でろう付け性が低下するおそれがある。
【0026】
「フラックス塗料中の有機溶剤含有量:25.5~83質量%」
フラックス塗料における有機溶剤含有量は25.5質量%以上83質量%以下の範囲が好ましい。
有機溶剤の含有量を25.5質量%より少なくすると、塗料粘度が高くなり過ぎて塗料としての広がり性に欠け、フラックスとろう材の不均一性によってろう付性が低下するおそれがある。有機溶剤の含有量を83質量%より多くすると、塗料粘度が低くなり過ぎて塗料として過度の広がり性を有することとなり、フラックスとろう材の不均一性によって耐食性およびろう付性低下のおそれを生じる。
【0027】
「フラックス塗料中の合成樹脂(固形分)の全質量に対する酸性リン酸エステルの含有量:0.04~6.5質量%」
フラックス塗料中の酸性リン酸エステル含有量は塗料中の前記合成樹脂の全質量に対し0.04質量%以上6.5質量%以下の範囲が好ましい。
酸性リン酸エステルはアルミニウムに対する塗膜密着性向上のために添加する。また、酸性リン酸エステルの添加によりアクリル系樹脂を使用した場合に塗膜硬度(鉛筆硬度)を向上できる。
酸性リン酸エステルの含有量が合成樹脂の全質量に対し0.04質量%未満の場合、塗膜密着性の向上効果が不足するおそれがある。また、酸性リン酸エステルの含有量が合成樹脂の質量に対し6.5質量%を超える場合、塗膜硬度が低下するおそれがある。
酸性リン酸エステルは、上述の組成の塗料に対し、アルミニウムに対し剥がれにくくするとともに、塗膜硬度を向上させる効果がある。
また、酸性リン酸エステル中の極性基とアルミニウム表面との電気的な相互作用が密着性改善に効いていると推定できる。
【0028】
アルミニウムの表面に前述のフラックス塗料を塗布して塗膜を形成する場合、各成分の塗布量は以下の範囲となっていることが望ましい。
「ろう粉末塗布量:1~30g/m2」
ろう粉末(ろう材)の塗布量は1g/m2以上30g/m2以下の範囲であることが好ましい。ろう粉末の塗布量が少なすぎる場合は、ろう付け性が低下する恐れがあり、多すぎる場合は、過剰なろう形成によりフィレットが優先腐食されるおそれがある。
【0029】
「Zn非含有フラックス塗布量:3~30g/m2」
Zn非含有フラックスの塗布量は3g/m2以上30g/m2以下の範囲であることが好ましい。
フラックス塗膜においてZn非含有フラックスの塗布量が3g/m2未満であると、ろうの形成が不十分となるので、被ろう付材(アルミニウムチューブ)の表面酸化皮膜の破壊除去が不十分なためにろう付不良を招く。一方、Zn非含有フラックスの塗布量が30g/m2を超えると、塗膜が厚いため、ろう付け時にフィンとチューブの隙間が大きく接合不良が発生するおそれがある。
【0030】
「Zn含有フラックス塗布量:3~30g/m2」
Zn含有フラックスの塗布量は3g/m2以上30g/m2以下の範囲であることが好ましい。
フラックス塗膜においてZn含有フラックスの塗布量が3g/m2未満であると、耐食性の向上効果が得られない。一方、Zn含有フラックスの塗布量が30g/m2を超えると、塗膜が厚いため、ろう付け時にフィンとチューブの隙間が大きく耐フィン剥離性が低下するおそれがある。
【0031】
「合成樹脂(バインダ)塗布量:0.5~10g/m2」
フラックス塗膜におけるバインダの塗布量が0.5g/m2未満であると、塗膜硬度が低下し、加工性(耐塗膜剥離性)が低下する。一方、バインダの塗布量が8.3g/m2を超えると、塗膜未反応によるフィレット未形成の影響でろう付け性が低下するおそれがある。なお、バインダは、通常、ろう付の際の加熱により蒸散する。
【0032】
以上説明のろう付け用フラックス塗料は、アルミニウム板、あるいは、後述する扁平多穴管などのアルミニウムまたはアルミニウム合金からなるチューブに塗布されて利用される。
上述の各成分の塗布量を確保できるようにロールコーターなどの塗布装置でアルミニウム板あるいはチューブなどの必要な面に塗布し、140~180℃などの温度に数分間、加熱炉などにおいて加熱乾燥(焼付)させて塗膜を得ることができる。
【0033】
以下、添付図面に基づき、本発明に係るフラックス塗料をアルミニウムフィンと熱交換器に適用した一実施形態について説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合がある。
「熱交換器の第1実施形態」
図1は、本発明に係る熱交換器の第1実施形態を示す斜視図である。
この熱交換器30は、ルームエアコンディショナーの室内・室外機用の熱交換器、あるいは、HVAC(Heating Ventilating Air Conditioning)用の室外機、自動車用の熱交換器などの用途に使用されるオールアルミニウム熱交換器である。
【0034】
この第1実施形態の熱交換器30は、
図1に示すように左右に離間して平行に立設配置されたヘッダーパイプ31、32と、ヘッダーパイプ31、32の間に相互に間隔を保って平行に、かつ、ヘッダーパイプ31、32に対して直角に接合された複数の扁平管からなるチューブ33と、各チューブ33に付設された波形のフィン(コルゲートフィン)34とから構成されている。
【0035】
ヘッダーパイプ31、32の相対向する側面に複数のスリット36が各パイプの長さ方向に一定の間隔で形成され、これらヘッダーパイプ31、32の相対向するスリット36にチューブ33の端部を挿通してヘッダーパイプ31、32間にチューブ33が架設されている。また、ヘッダーパイプ31、32間に所定間隔で架設された複数のチューブ33、33の上面側と下面側にフィン34が配置され、これらのフィン34がチューブ33の上面側あるいは下面側にろう付けされている。
【0036】
図2に示す如く、ヘッダーパイプ31、32のスリット36に対してチューブ33の端部を挿通した部分においてろう材により第1のフィレット部38が形成され、ヘッダーパイプ31、32に対しチューブ33がろう付けされている。また、波形のフィン34において波の頂点の部分を隣接するチューブ33の表面または裏面に対向させてそれらの間の部分に生成されたろう材により第2のフィレット部39が形成され、チューブ33の表面側と裏面側に波形のフィン34がろう付けされている。
【0037】
フィン34は、JIS1050系などの純アルミニウム系あるいはJIS3003系のアルミニウム合金をベースとした合金からなる板状の基材34aと、基材34aの全面(表面と裏面及び両側面)に付着された親水性皮膜35aを有している。
チューブ33は、例えば、JIS1050系などの純アルミニウム系あるいはJIS3003系のアルミニウム合金をベースとした合金からなる。
ヘッダーパイプ31、32は、例えば、Al-Mn系をベースとしたアルミニウム合金からなる。
【0038】
本実施形態の熱交換器30は、ヘッダーパイプ31、32とそれらの間に架設された複数のチューブ33と複数のフィン34とを組み付けて
図3に示す如く熱交換器組立体41を形成し、これを加熱してろう付けすることにより製造されたものである。
図3に示すように、ろう付け前のチューブ33は、その上面33Aと下面33Bに形成されたろう付用フラックス塗膜37を有している。チューブ33は、例えば、その内部に複数の冷媒通路33Cが形成された扁平多穴管である。
このろう付け用フラックス塗膜37は、先に説明した組成のろう付け用フラックス塗料をチューブ33の上面33Aと下面33Bにロールコーターで塗布し、乾燥させて得た塗膜である。ここで用いるろう付け用フラックス塗料の組成は先に説明した通りであり、塗膜としての各成分の塗布量も先に説明した通りである。また、塗料塗布後の乾燥条件も先に説明した範囲とする。
【0039】
なお、ろう付け用フラックス塗膜37にZn含有フラックスを含む場合は、ろう付け時の加熱によってチューブ33の表面側と裏面側に
図2に示すZn溶融拡散層(犠牲陽極層)42が形成される。また、ろう付け用フラックス塗膜37にZn含有フラックスを含まない場合は、
図2に示すZn溶融拡散層(犠牲陽極層)42は生成されない。
【0040】
図3に示すように組み立てられたヘッダーパイプ31、32、チューブ33及びフィン34からなる熱交換器組立体41を不活性ガス雰囲気の加熱炉などにおいてろう材の融点以上の温度に加熱し、加熱後に冷却すると、
図2に示すように、ろう材層44、ろう付け用フラックス塗膜37が溶けてヘッダーパイプ31とチューブ33、チューブ33とフィン34が各々接合され、
図1と
図2に示す構造の熱交換器30が得られる。この時、ヘッダーパイプ31の内周面のろう材層44は溶融してスリット36近傍に流れ、フィレット38を形成してヘッダーパイプ31とチューブ33とが接合される。また、チューブ33の表面のろう付け用フラックス塗膜37は溶融してAl-ZnろうあるいはAl-SiろうあるいはAl-Si-Znろうとなり、毛管力によりフィン34近傍に流れ、フィレット39を形成してチューブ33とフィン34とが接合される。符号31Aはヘッダーパイプ11の芯材、43はヘッダーパイプ31、32に犠牲陽極層を生成するためのZnを含む被覆層である。
【0041】
図3に示すように、熱交換器組立体41を構成する場合、チューブ33の両端を左右のヘッダーパイプ31、32に設けたスリット36に挿入し、チューブ33の上下にコルゲート型のフィン34が位置するように組み付ける。コルゲート型のフィン34の波形の頂点部分をチューブ33の上面あるいは下面に接するように配置する。
この熱交換器組立体41を構成する場合、チューブ33は必然的にフィン34あるいはヘッダーパイプ31、32と擦れ合う。ここでろう付け用フラックス塗膜37が十分な硬度を有し、塗膜密着性が高い場合、ろう付け用フラックス塗膜37の剥離を防止できる。
【0042】
ろう付けに際しては、不活性ガス雰囲気などの適切な雰囲気で適温に加熱して、ろう付け用フラックス塗膜37、ろう材層44を溶融させる。そうすると、フラックスの活性度が上がって、フラックス中のZnが被ろう付材(チューブ33)表面に析出し、その肉厚方面に拡散するのに加え、ろう材及び被ろう付材の双方の表面の酸化皮膜を破壊してろう材と被ろう付材との間のぬれを促進する。
ろう付の条件は特に限定されない。一例として、炉内を窒素雰囲気とし、熱交換器組立体101を昇温速度5℃/分以上でろう付け温度(実体到達温度)580~620℃に加熱し、ろう付け温度で30秒以上保持し、ろう付け温度から400℃ までの冷却速度を10℃/分以上として冷却してもよい。
【0043】
上述の組成のろう付け用フラックス塗膜37であるならば、硬度が高く、アルミニウムに対する密着性に優れている。このため、熱交換器組立体41を組み立てた場合にチューブ33とフィン34とが接触して擦れた場合、あるいは、チューブ33の端部がヘッダーパイプ31、32のスリット36内面と擦れ合ったとしても、チューブ上あるいはチューブ端部のフラックス塗膜37に剥離を生じない。このため、ろう付け時にろう付け不良箇所を生むことがなく、優れたろう付け接合性の熱交換器30を得ることができる。
【0044】
「熱交換器の第2実施形態」
図4~
図7は本発明に係る第2実施形態の熱交換器を示すもので、この熱交換器11は、
図4に示すように左右一対のヘッダ管14と、左右のヘッダ管14の間に上下に配置された複数本の扁平型のチューブ22と、これらチューブ22を構成する管体12の外面(上面または下面)12bにろう付けされた複数枚のフィン13を備えている。
図4において右側のヘッダ管14の上端部には、ヘッダ管14を介しチューブ22に冷媒を供給する供給管15が接続されている。左側のヘッダ管14の下端部には、チューブ22を経由した冷媒を回収する回収管16が接続されている。チューブ22、フィン13、ヘッダ管14、供給管15、回収管16は、いずれもアルミニウムまたはアルミニウム合金から構成されている。
【0045】
図5は、チューブ22の長さ方向に直交する面に沿って横断面をとった熱交換器11の部分断面図である。
図5に示すように、チューブ22を構成する管体12の内部には幅方向に沿って並ぶ複数(本実施形態では6つ)の冷媒流路12aが形成されている。また、
図5に示すようにフィン13には、チューブ22の断面形状に対応する形状の切り欠き部19が、上下に所定の間隔をあけて複数形成されている。これらの切り欠き部19には、それぞれチューブ22が嵌合され、個々のチューブ22がろう付けによりフィン13に固定されている。
図5に示すように、チューブ22を構成する管体12の外面12bは、平坦な表面(上面)6A及び裏面(下面)6Bと、これら表面6A及び裏面6Bに隣接する第1の側面6C及び第2の側面6Dとからなる。第1の側面6Cは、フィン13の切り欠き部19の開口側に位置し外部に開放されている。第2の側面6Dは、第1の側面6Cの反対側に位置し切り欠き部19に囲まれて配置されている。
【0046】
図6、
図7は、熱交換器11においてチューブ22の長さ方向に沿って縦断面をとった部分断面図であり、
図6はろう付け工程前の状態を示し、
図7はろう付け工程後の状態を示す。フィン13は、チューブ22の長さ方向に沿って複数枚、並列配置されるとともに、個々の切り欠き部19にチューブ22が挿通されている。複数のフィン13は、一定の間隔をおいて相互に平行に並列配置されている。フィン13は、切り欠き部19の周縁部にチューブ22の外面12bに沿ってフィン13の厚さ方向一側に屈曲した屈曲部20を有している。
フィン13は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる板状の基材3と、基材3の第1の面3a及び第2の面3bのほぼ全面とそれら以外の側面に設けられた親水性皮膜1とを有している。
【0047】
図6示すろう付け前のチューブ22として、管体12の外面(上面と下面)12bに予め、ろう付け用フラックス塗膜5を形成したものが用いられている。ろう付け用フラックス塗膜5は、管体12の上面と下面と側面においてフィン13と接合する領域全域をカバーする範囲に塗布されている。
ろう付け用フラックス塗膜5は、一例として、管体12の外面12bのうちフィン13と当接する領域に、即ち、管体12の表面6Aと裏面6Bに形成されている。
チューブ22とフィン13は、一定間隔に並べた複数のフィン13をチューブ22が串刺し貫通するように配置され、フィン13の切り欠き部19内にチューブ22が嵌合され、ろう付け後にフィン13とチューブ22が
図7に示すように個々に固定されている。
【0048】
図6に示すろう付け前のろう付け用フラックス塗膜5は、先に説明した組成のろう付け用フラックス塗料をチューブ22の上面と下面にロールコーターなどの塗布装置で塗布し、乾燥させて得た塗膜である。ここで用いるろう付け用フラックス塗料の組成は先に説明した通りであり、塗膜としての各成分の塗布量も先に説明した通りである。また、塗料塗布後の乾燥条件も先に説明した範囲とする。
図6に示すろう付け前の熱交換器11において、チューブ22のろう付け用フラックス塗膜5は、フィン13の屈曲部20のチューブ22と対向する部分(対向面20a)とチューブ22との間に位置する。ろう付け用フラックス塗膜5は、600℃前後の加熱(ろう付け工程)後に冷却されることで、対向面20aとチューブ22との間に満たされた状態で固化し、
図7に示すようにフィレット5A(ろう材層)となり、フィン13とチューブ22をろう付け接合する。
図7の符号1aはろう付け後の親水性皮膜を示す。
【0049】
図5、
図7に示す構成の熱交換器11においても、
図6に示すようにろう付け前に一定間隔に並べた複数のフィン13をチューブ22が串刺し貫通するようにチューブ22を配置する必要がある。
この場合、チューブ22は必然的にフィン13あるいはヘッダー管14、14と擦れ合う。ここでろう付け用フラックス塗膜5が十分な硬度を有し、塗膜密着性が高い場合、ろう付け用フラックス塗膜5の剥離を防止できる。
【0050】
上述の組成のろう付け用フラックス塗膜5であるならば、硬度が高く、アルミニウムに対する密着性に優れているため、
図6に示すようにチューブ22とフィン13を組み立てた場合にチューブ上のフラックス塗膜5に剥離を生じていない。
このため、ろう付け時にろう付け不良箇所を生むことがなく、優れたろう付け接合性の熱交換器11を得ることができる。
【0051】
ところで、これまで説明した熱交換器11、30は本発明のろう付け用フラックス塗料を適用した一例に過ぎず、本発明の塗料と塗膜は一般的なろう付け構造の熱交換器に広く適用できることは勿論である。
【実施例0052】
以下、実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<<サンプルの作製>>
Si:0.4質量%、Mn:0.3質量%を含み残部不可避不純物とAlからなるチューブ用アルミニウム合金を溶製し、このアルミニウム合金から押出加工により、横断面形状が扁平状の熱交換器用アルミニウム合金の扁平多穴管(肉厚0.26mm×幅12.0mm×全体厚1.4mm:17穴)を得た。
この扁平多穴管の表裏面にバーコーターにて表1、表2に示す組成のろう付け用フラックス塗料を表1、表2に示す量塗布して150℃で5分間乾燥させ、実施例1~19と比較例1~30のろう付け用フラックス塗膜付きの扁平多穴管を得た。
【0053】
表1、表2に示す試料では、ろう材としてSi粉末(D(99)粒度10μm)を用い、フラックスとして(ノコロックフラックス(NOCOLOK FLUX:ノコロックはソルベイフルオール社登録商標)を用い、合成樹脂としてアクリル樹脂を用い、有機溶剤として3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノールとイソプロピルアルコールの混合溶剤を用いた。
これら扁平多穴管のろう付け用フラックス塗膜について鉛筆硬度(鉛筆引っ掻き試験:750g荷重)を測定した。その結果を以下の表1、表2に記載する。
【0054】
表1、表2に示す塗料について、ろう材を含む塗料については、扁平多穴管と
図1、
図2に示すコルゲートフィン(JIS3000系合金)との組み合わせにより、扁平管を3段設ける熱交換器試験体を組み立て、窒素ガス雰囲気の加熱炉中において600℃に2分間加熱するろう付け処理を行った。
表1、表2に示す塗料について、ろう材を含まない塗料については、扁平多穴管と
図1、
図2に示すブレージングシート製コルゲートフィン(JIS4343合金からなるAl-Si合金層を10μmの厚さでJIS3000系合金板に貼り合せたブレージングシート)との組み合わせにより、扁平管を3段設ける熱交換器試験体を組み立て、窒素ガス雰囲気の加熱炉中において600℃に2分間加熱するろう付け処理を行った。
ろう付け性の評価は、それぞれろう付けにより形成した熱交換器においてろう付け部分を50箇所目視検査し、ろう付け不良箇所が生じていないものを合格(○)と判断し、ろう付け不良箇所が1箇所でも生じていると不良(×)と判断し、それらの結果を表1、表2に記載した。
なお、コルゲートフィンをJIS3000系合金から構成したのは一つの例であり、コルゲートフィンについてはフィン用として一般に用いられる他のアルミニウム合金を用いても良いのは勿論である。
【0055】
【0056】
【0057】
表1に示す実施例1~19の試料は、合成樹脂の固形分の質量に対する酸性リン酸エステルの含有量を0.04質量%~6.5質量%の範囲で変量した試料であるが、いずれの試料も塗膜鉛筆硬度が3Bあるいは4Bを示した。実施例1~8の試料はSi粉末を添加していないフラックス塗料であり、実施例9~19の試料はSi粉末を添加したろう付け用フラックス塗料である。
これらに対し、比較例1、2は酸性リン酸エステルの添加量が望ましい範囲より少なすぎるフラックス塗料と多すぎるフラックス塗料であるが、ろう付け性には優れるものの塗膜硬度が低下した。
比較例3、4はフラックス含有量が多いか少ない例、比較例5は有機溶剤の含有量が多い例、比較例6はフラックス量が多い例、比較例7、8は合成樹脂含有量が多いか少ない例、比較例9は塗布量が少ない例、比較例10は塗布量が多い例である。
比較例9は塗布量が少なく、塗料中の合成樹脂(固形分)量も少ないため、塗膜中に含まれる合成樹脂(固形分)量が望ましい範囲(0.5~10g/m2)より少ない試料である。
比較例10は塗布量が多く、塗料中の合成樹脂(固形分)量も比較的多いため、塗膜中に含まれる合成樹脂(固形分)量が望ましい範囲(0.5~10g/m2)より多い試料である。
比較例11、12は酸性リン酸エステルの添加量が望ましい範囲より少なすぎるろう付け塗料と多すぎるろう付け塗料であるが、ろう付け性が低下し、塗膜硬度も低下した。
比較例13は、有機溶剤の量が多い例、比較例14は合成樹脂の少ない例、比較例15はSi粉末の量が多い例、比較例16はSi粉末の量が少ない例、比較例17は有機溶剤量が少なく、塗布量が多い例、比較例18は合成樹脂量が多く、塗布量も多い例、比較例19はフラックス量が多い例、比較例20はフラックス量が少ない例である。
比較例21は有機溶剤が少なく塗布量が多い例、比較例22はフラックス塗布量が少ない例、比較例23は合成樹脂の多い例、比較例24は合成樹脂の少ない例、比較例25は合成樹脂塗布量が多い例、比較例26は合成樹脂塗布量が少ない例である。
比較例22は塗布量が比較的に多いが、塗料中のフラックス量が少ないため、塗膜中に含まれるフラックス量が望ましい範囲(3~30g/m2)より少ない試料である。
比較例25は塗料中の合成樹脂含有量が比較的多く、塗料中の合成樹脂量も多いため、塗膜中に含まれる合成樹脂塗布量が望ましい範囲(0.5~10.0g/m2)より多い試料である。
比較例26は塗料中の合成樹脂含有量が比較的少なく、塗布量も多くはないため、塗膜中に含まれる合成樹脂塗布量が望ましい範囲(0.5~10g/m2)より少ない試料である。
比較例27~30は酸性リン酸エステルの含有量が多い例である。
【0058】
図8は、表1に掲載した結果の一部(フラックス40%、合成樹脂(固形)10%、塗布量12.5g/m
2)をグラフに表示したもので、縦軸に鉛筆硬度(荷重750g)を示し、横軸にリン酸エステルの添加量を示し、それらの相関性を表示したグラフである。
図8に示す結果から、リン酸エステルの添加量は、合成樹脂の質量に対し、0.04質量%~6.5質量%の範囲であれば、塗膜硬度4B以上を得られることがわかる。
また、上述の範囲内でも、リン酸エステルの含有量を合成樹脂の質量に対し、0.2~1.5質量%の範囲とすることがより好ましいと考えられる。