(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022024401
(43)【公開日】2022-02-09
(54)【発明の名称】照射制御装置、放射線治療システム及び照射制御方法
(51)【国際特許分類】
A61N 5/10 20060101AFI20220202BHJP
A61B 6/03 20060101ALI20220202BHJP
【FI】
A61N5/10 M
A61B6/03 371
A61B6/03 377
A61B6/03 370B
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020126957
(22)【出願日】2020-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】591001765
【氏名又は名称】安西メディカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】新井 博文
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 猛
(72)【発明者】
【氏名】澤畠 篤
【テーマコード(参考)】
4C082
4C093
【Fターム(参考)】
4C082AE01
4C082AG08
4C082AJ05
4C082AJ07
4C082AJ08
4C082AN01
4C082AP07
4C082AP08
4C082AT03
4C093AA01
4C093AA22
4C093AA25
4C093FA36
4C093FA54
4C093FB02
4C093FD03
4C093FD09
4C093FD11
4C093FD13
4C093FF12
4C093FF17
4C093FF22
4C093FF24
4C093FF46
4C093FH06
4C093FH07
(57)【要約】
【課題】被検体の呼吸によって腫瘍等の治療対象部分の位置が周期的に変動する場合でも、該治療対象部分に対して放射線ビームを精度良く照射させる。
【解決手段】照射制御装置18、照射制御方法及び放射線治療システム10において、位置ずれ量計算部18dは、ガントリの同一の回転角度の透視画像及びDRR画像を用いて、DRR画像中の被検体の横隔膜20の位置に対する透視画像中の横隔膜22の呼吸性の位置ずれ量を計算する。照射許可判定部18eは、位置ずれ量が第1所定値以下であれば、放射線ビーム源から被検体への放射線ビームの照射を許可する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に対する放射線治療の治療計画を治療計画装置が立案し、
放射線治療装置が、回転軸を中心にガントリを回転させながら、前記回転軸上に位置する前記被検体に対して前記ガントリに設けられた放射線ビーム源から放射線ビームを照射可能であり、
前記回転軸と略同軸に配置された透視画像生成装置が前記被検体の透視画像を生成し、
前記治療計画及び前記透視画像に基づいて、前記放射線ビーム源から前記被検体への前記放射線ビームの照射を制御する照射制御装置において、
前記透視画像生成装置からストリーミング出力された前記透視画像と、前記透視画像を生成した際の前記ガントリの回転角度とを少なくとも受信する第1受信部と、
前記治療計画装置から送信された前記被検体の特定の呼吸位相における前記治療計画用のCT画像とアイソセンタ座標とを受信する第2受信部と、
前記CT画像及び前記アイソセンタ座標から前記被検体の前記回転角度毎のDRR画像を計算するDRR画像計算部と、
同一の前記回転角度の前記透視画像及び前記DRR画像を用いて、前記DRR画像中の前記被検体の横隔膜の位置を基準としたときの前記透視画像中の前記被検体の横隔膜の呼吸性の位置ずれ量を計算する位置ずれ量計算部と、
前記位置ずれ量が所定値以下であるときに、前記放射線ビーム源から前記被検体への前記放射線ビームの照射を許可する照射許可判定部と、
を備える、照射制御装置。
【請求項2】
請求項1記載の照射制御装置において、
前記特定の呼吸位相は、前記被検体の最大呼気又は最大吸気である、照射制御装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の照射制御装置において、
前記位置ずれ量計算部は、前記透視画像と前記DRR画像との正規化相関係数を計算し、
前記照射許可判定部は、前記正規化相関係数の値が前記所定値に応じた正規化相関係数の値以上である場合、前記放射線ビーム源から前記被検体への前記放射線ビームの照射を許可する、照射制御装置。
【請求項4】
請求項3記載の照射制御装置において、
前記位置ずれ量計算部は、同一の前記回転角度の前記透視画像及び前記DRR画像に対して、前記横隔膜を含む単一の部分画像領域をそれぞれ選択し、選択した前記透視画像の部分画像領域と前記DRR画像の部分画像領域とについて、前記正規化相関係数を計算する、照射制御装置。
【請求項5】
請求項3又は4記載の照射制御装置において、
前記位置ずれ量計算部は、
前記第1受信部が受信した前記透視画像を第1透視画像とし、前記DRR画像計算部が計算した前記DRR画像を第1DRR画像とした場合に、
同一の前記回転角度の前記第1透視画像と前記第1DRR画像とについて、前記正規化相関係数を計算するか、
前記第1透視画像と同一の前記回転角度の前記第1DRR画像の各画素値から該各画素値の平均値を減算した第2DRR画像を生成し、前記第1透視画像と前記第2DRR画像とについて、前記正規化相関係数を計算するか、
前記第1DRR画像の各画素値を2~4のべき指数でべき乗した第3DRR画像を生成し、前記第1透視画像と前記第3DRR画像とについて、前記正規化相関係数を計算するか、
又は、前記第3DRR画像の各画素値から該各画素値の平均値を減算した第4DRR画像を生成し、前記第1透視画像と前記第4DRR画像とについて、前記正規化相関係数を計算する、照射制御装置。
【請求項6】
請求項5記載の照射制御装置において、
前記位置ずれ量計算部は、
前記第1DRR画像上で前記被検体の画像領域を頭方向に所定の間隔だけシフトするか、シフト後の前記第1DRR画像の各画素値から該各画素値の平均値を減算するか、シフト後の前記第1DRR画像の各画素値を2~4のべき指数でべき乗するか、又は、べき乗後の前記第1DRR画像の各画素値から該各画素値の平均値を減算することで、第5DRR画像を生成し、
前記第1DRR画像上で前記被検体の画像領域を足方向に所定の間隔だけシフトするか、シフト後の前記第1DRR画像の各画素値から該各画素値の平均値を減算するか、シフト後の前記第1DRR画像の各画素値を2~4のべき指数でべき乗するか、又は、べき乗後の前記第1DRR画像の各画素値から該各画素値の平均値を減算することで、第6DRR画像を生成し、
前記第1透視画像と、前記第1透視画像と同一の前記回転角度の前記第1~第4DRR画像のうち、いずれかのDRR画像、前記第5DRR画像及び前記第6DRR画像との間で、前記正規化相関係数をそれぞれ計算し、
前記照射許可判定部は、前記第1透視画像と前記いずれかのDRR画像との正規化相関係数の値が、前記第1透視画像と前記第5DRR画像との正規化相関係数、及び、前記第1透視画像と前記第6DRR画像との正規化相関係数のそれぞれの値以上である場合、前記放射線ビーム源から前記被検体への前記放射線ビームの照射を許可する、照射制御装置。
【請求項7】
請求項3又は4記載の照射制御装置において、
前記位置ずれ量計算部は、
前記第1受信部が受信した前記透視画像を第1透視画像とし、前記DRR画像計算部が計算した前記DRR画像を第1DRR画像とした場合に、前記第1透視画像の各画素値から該各画素値の平均値を減算した第2透視画像を生成し、
前記第2透視画像と、前記第2透視画像と同一の前記回転角度の前記第1DRR画像とについて、前記正規化相関係数を計算するか、
前記第1DRR画像の各画素値から該各画素値の平均値を減算した第2DRR画像を生成し、前記第2透視画像と前記第2DRR画像とについて、前記正規化相関係数を計算するか、
前記第1DRR画像の各画素値を2~4のべき指数でべき乗した第3DRR画像を生成し、前記第2透視画像と前記第3DRR画像とについて、前記正規化相関係数を計算するか、
又は、前記第3DRR画像の各画素値から該各画素値の平均値を減算した第4DRR画像を生成し、前記第2透視画像と前記第4DRR画像とについて、前記正規化相関係数を計算する、照射制御装置。
【請求項8】
請求項7記載の照射制御装置において、
前記位置ずれ量計算部は、
前記第1DRR画像上で前記被検体の画像領域を頭方向に所定の間隔だけシフトするか、シフト後の前記第1DRR画像の各画素値から該各画素値の平均値を減算するか、シフト後の前記第1DRR画像の各画素値を2~4のべき指数でべき乗するか、又は、べき乗後の前記第1DRR画像の各画素値から該各画素値の平均値を減算することで、第5DRR画像を生成し、
前記第1DRR画像上で前記被検体の画像領域を足方向に所定の間隔だけシフトするか、シフト後の前記第1DRR画像の各画素値から該各画素値の平均値を減算するか、シフト後の前記第1DRR画像の各画素値を2~4のべき指数でべき乗するか、又は、べき乗後の前記第1DRR画像の各画素値から該各画素値の平均値を減算することで、第6DRR画像を生成し、
前記第2透視画像と、前記第2透視画像と同一の前記回転角度の前記第1~第4DRR画像のうち、いずれかのDRR画像、前記第5DRR画像及び前記第6DRR画像との間で、前記正規化相関係数をそれぞれ計算し、
前記照射許可判定部は、前記第2透視画像と前記いずれかのDRR画像との正規化相関係数の値が、前記第2透視画像と前記第5DRR画像との正規化相関係数、及び、前記第2透視画像と前記第6DRR画像との正規化相関係数のそれぞれの値以上である場合、前記放射線ビーム源から前記被検体への前記放射線ビームの照射を許可する、照射制御装置。
【請求項9】
請求項3又は4記載の照射制御装置において、
前記位置ずれ量計算部は、
前記第1受信部が受信した前記透視画像を第1透視画像とし、前記DRR画像計算部が計算した前記DRR画像を第1DRR画像とした場合に、前記第1透視画像の各画素値を2~4のべき指数でべき乗した第3透視画像を生成し、
前記第3透視画像と、前記第3透視画像と同一の前記回転角度の前記第1DRR画像とについて、前記正規化相関係数を計算するか、
前記第1DRR画像の各画素値から該各画素値の平均値を減算した第2DRR画像を生成し、前記第3透視画像と前記第2DRR画像とについて、前記正規化相関係数を計算するか、
前記第1DRR画像の各画素値を2~4のべき指数でべき乗した第3DRR画像を生成し、前記第3透視画像と前記第3DRR画像とについて、前記正規化相関係数を計算するか、
又は、前記第3DRR画像の各画素値から該各画素値の平均値を減算した第4DRR画像を生成し、前記第3透視画像と前記第4DRR画像とについて、前記正規化相関係数を計算する、照射制御装置。
【請求項10】
請求項9記載の照射制御装置において、
前記位置ずれ量計算部は、
前記第1DRR画像上で前記被検体の画像領域を頭方向に所定の間隔だけシフトするか、シフト後の前記第1DRR画像の各画素値から該各画素値の平均値を減算するか、シフト後の前記第1DRR画像の各画素値を2~4のべき指数でべき乗するか、又は、べき乗後の前記第1DRR画像の各画素値から該各画素値の平均値を減算することで、第5DRR画像を生成し、
前記第1DRR画像上で前記被検体の画像領域を足方向に所定の間隔だけシフトするか、シフト後の前記第1DRR画像の各画素値から該各画素値の平均値を減算するか、シフト後の前記第1DRR画像の各画素値を2~4のべき指数でべき乗するか、又は、べき乗後の前記第1DRR画像の各画素値から該各画素値の平均値を減算することで、第6DRR画像を生成し、
前記第3透視画像と、前記第3透視画像と同一の前記回転角度の前記第1~第4DRR画像のうち、いずれかのDRR画像、前記第5DRR画像及び前記第6DRR画像との間で、前記正規化相関係数をそれぞれ計算し、
前記照射許可判定部は、前記第3透視画像と前記いずれかのDRR画像との正規化相関係数の値が、前記第3透視画像と前記第5DRR画像との正規化相関係数、及び、前記第3透視画像と前記第6DRR画像との正規化相関係数のそれぞれの値以上である場合、前記放射線ビーム源から前記被検体への前記放射線ビームの照射を許可する、照射制御装置。
【請求項11】
請求項3又は4記載の照射制御装置において、
前記位置ずれ量計算部は、
前記第1受信部が受信した前記透視画像を第1透視画像とし、前記DRR画像計算部が計算した前記DRR画像を第1DRR画像とした場合に、前記第1透視画像の各画素値を2~4のべき指数でべき乗した第3透視画像を生成し、前記第3透視画像の各画素値から該各画素値の平均値を減算した第4透視画像を生成し、
前記第4透視画像と、前記第4透視画像と同一の前記回転角度の前記第1DRR画像とについて、前記正規化相関係数を計算するか、
前記第1DRR画像の各画素値から該各画素値の平均値を減算した第2DRR画像を生成し、前記第4透視画像と前記第2DRR画像とについて、前記正規化相関係数を計算するか、
前記第1DRR画像の各画素値を2~4のべき指数でべき乗した第3DRR画像を生成し、前記第4透視画像と前記第3DRR画像とについて、前記正規化相関係数を計算するか、
又は、前記第3DRR画像の各画素値から該各画素値の平均値を減算した第4DRR画像を生成し、前記第4透視画像と前記第4DRR画像とについて、前記正規化相関係数を計算する、照射制御装置。
【請求項12】
請求項11記載の照射制御装置において、
前記位置ずれ量計算部は、
前記第1DRR画像上で前記被検体の画像領域を頭方向に所定の間隔だけシフトするか、シフト後の前記第1DRR画像の各画素値から該各画素値の平均値を減算するか、シフト後の前記第1DRR画像の各画素値を2~4のべき指数でべき乗するか、又は、べき乗後の前記第1DRR画像の各画素値から該各画素値の平均値を減算することで、第5DRR画像を生成し、
前記第1DRR画像上で前記被検体の画像領域を足方向に所定の間隔だけシフトするか、シフト後の前記第1DRR画像の各画素値から該各画素値の平均値を減算するか、シフト後の前記第1DRR画像の各画素値を2~4のべき指数でべき乗するか、又は、べき乗後の前記第1DRR画像の各画素値から該各画素値の平均値を減算することで、第6DRR画像を生成し、
前記第4透視画像と、前記第4透視画像と同一の前記回転角度の前記第1~第4DRR画像のうち、いずれかのDRR画像、前記第5DRR画像及び前記第6DRR画像との間で、前記正規化相関係数をそれぞれ計算し、
前記照射許可判定部は、前記第4透視画像と前記いずれかのDRR画像との正規化相関係数の値が、前記第4透視画像と前記第5DRR画像との正規化相関係数、及び、前記第4透視画像と前記第6DRR画像との正規化相関係数のそれぞれの値以上である場合、前記放射線ビーム源から前記被検体への前記放射線ビームの照射を許可する、照射制御装置。
【請求項13】
請求項6、8、10、12のいずれか1項に記載の照射制御装置において、
前記所定の間隔は、アイソセンタ面における前記被検体の解剖形状に対応して、5mm~20mmに設定される、照射制御装置。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載の照射制御装置において、
前記透視画像生成装置は、前記透視画像、前記回転角度、及び、前記透視画像生成装置の重力による撓みを補正するための撓み補正量をストリーミング出力により前記第1受信部に送信し、
前記第1受信部は、前記透視画像、前記回転角度及び前記撓み補正量を受信し、
前記位置ずれ量計算部は、前記撓み補正量を用いて前記透視画像中の前記被検体の横隔膜の位置を補正し、同一の前記回転角度の前記DRR画像と補正後の前記透視画像とを用いて、前記DRR画像中の前記被検体の横隔膜の位置を基準としたときの補正後の前記透視画像中の前記被検体の横隔膜の呼吸性の位置ずれ量を計算する、照射制御装置。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1項に記載の照射制御装置において、
前記第2受信部は、前記第1受信部が前記透視画像及び前記回転角度を受信する前に、前記CT画像及び前記アイソセンタ座標を受信するか、又は、前記第1受信部が前記透視画像及び前記回転角度を受信した後に、前記CT画像及び前記アイソセンタ座標を受信する、照射制御装置。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか1項に記載の照射制御装置において、
前記第1受信部は、前記透視画像生成装置からギガビットイーサネットの回線を介して、前記透視画像及び前記回転角度を受信する、照射制御装置。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか1項に記載の照射制御装置において、
前記第2受信部は、前記治療計画装置からDICOM-RT規格の前記CT画像及び前記アイソセンタ座標のデータを受信する、照射制御装置。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか1項に記載の照射制御装置において、
前記DRR画像計算部は、0.5°~5°の前記回転角度毎に、前記DRR画像を計算する、照射制御装置。
【請求項19】
被検体に対する放射線治療の治療計画を立案する治療計画装置と、
ガントリと、該ガントリに設けられた放射線ビーム源とを備え、回転軸を中心に前記ガントリを回転させながら、前記回転軸上に位置する前記被検体に対して前記放射線ビーム源から放射線ビームを照射可能な放射線治療装置と、
前記回転軸と略同軸に配置され、前記被検体の透視画像を生成する透視画像生成装置と、
前記治療計画及び前記透視画像に基づいて、前記放射線ビーム源から前記被検体への前記放射線ビームの照射を制御する照射制御装置と、
を有する放射線治療システムにおいて、
前記透視画像生成装置は、少なくとも、前記透視画像と、前記透視画像を生成した際の前記ガントリの回転角度とを前記照射制御装置にストリーミング出力で送信し、
前記治療計画装置は、前記被検体の特定の呼吸位相における前記治療計画用のCT画像及びアイソセンタ座標を前記照射制御装置に送信し、
前記照射制御装置は、
前記透視画像及び前記回転角度を受信する第1受信部と、
前記CT画像及び前記アイソセンタ座標を受信する第2受信部と、
前記CT画像及び前記アイソセンタ座標から前記被検体の前記回転角度毎のDRR画像を計算するDRR画像計算部と、
同一の前記回転角度の前記透視画像及び前記DRR画像を用いて、前記DRR画像中の前記被検体の横隔膜の位置を基準としたときの前記透視画像中の前記被検体の横隔膜の呼吸性の位置ずれ量を計算する位置ずれ量計算部と、
前記位置ずれ量が所定値以下であるときに、前記放射線ビーム源から前記被検体への前記放射線ビームの照射を許可する照射許可判定部と、
を備える、放射線治療システム。
【請求項20】
被検体に対する放射線治療の治療計画を治療計画装置で立案し、
放射線治療装置のガントリの回転軸と略同軸に配置された透視画像生成装置で前記被検体の透視画像を生成し、
前記治療計画及び前記透視画像に基づいて、前記放射線治療装置の放射線ビーム源から前記被検体への放射線ビームの照射を照射制御装置で制御し、
放射線治療装置が、前記回転軸を中心に前記ガントリを回転させながら、前記回転軸上に位置する前記被検体に対して前記ガントリに設けられた前記放射線ビーム源から前記放射線ビームを照射する照射制御方法において、
前記透視画像生成装置からストリーミング出力された前記透視画像と、前記透視画像を生成した際の前記ガントリの回転角度とを前記照射制御装置の第1受信部が少なくとも受信する第1ステップと、
前記治療計画装置から送信された前記被検体の特定の呼吸位相における前記治療計画用のCT画像とアイソセンタ座標とを前記照射制御装置の第2受信部が受信する第2ステップと、
前記CT画像及び前記アイソセンタ座標から前記被検体の前記回転角度毎のDRR画像を前記照射制御装置のDRR画像計算部が計算する第3ステップと、
同一の前記回転角度の前記透視画像及び前記DRR画像を用いて、前記DRR画像中の前記被検体の横隔膜の位置を基準としたときの前記透視画像中の前記被検体の横隔膜の呼吸性の位置ずれ量を前記照射制御装置の位置ずれ量計算部が計算する第4ステップと、
前記位置ずれ量が所定値以下であるときに、前記放射線ビーム源から前記被検体への前記放射線ビームの照射を前記照射制御装置の照射許可判定部が許可する第5ステップと、
を有する、照射制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線ビームの照射を制御する照射制御装置及び照射制御方法と、放射線ビームを被検体に照射して放射線治療を行う放射線治療システムとに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、人体等の被検体内の治療対象部分、例えば、腫瘍に放射線ビームを照射することで、該腫瘍の放射線治療を行う放射線治療システムが種々知られている(例えば、特許文献1参照)。腫瘍の位置は、人体の呼吸に伴って、周期的に変動することが多い。例えば、肺腫瘍は、人体の呼吸に伴い、2cm~3cmを超える周期的な位置変動が生ずる場合がある。このため、腫瘍に放射線ビームを照射して放射線治療を行う場合には、人体の呼吸に伴う腫瘍の周期的な位置変動を考慮する必要がある。
【0003】
このような人体の呼吸に伴う腫瘍の周期的な位置変動に対応するため、呼吸を一時的に止めさせ、その間に放射線ビームを腫瘍に照射させるか、又は、呼吸に伴う人体の皮膚表面の変動を検出し、該変動に応じて放射線ビームの照射をオン又はオフさせる呼吸同期照射法を行うことが知られている。従来の呼吸同期照射法では、人体の呼吸位相を検出するため、歪みゲージ等を人体の皮膚表面に貼着し、呼吸による皮膚表面の変動を該歪みゲージで圧力変化として検出し、検出した圧力変化から呼吸位相を検知している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、人体の呼吸を一時的に止め、その間に放射線ビームを腫瘍に照射する手法では、被検体の個人差によって、腫瘍の位置が安定的に静止しない場合がある。また、呼吸同期照射法で歪みゲージを用いる場合は、人体の皮膚表面への歪みゲージの貼着状態によって、皮膚表面の変動に対応する圧力の検出特性が変化し、安定的な呼吸位相の検出が困難という問題がある。
【0006】
本発明は、このような課題を考慮してなされたものであり、被検体の呼吸によって腫瘍等の治療対象部分の位置が周期的に変動する場合でも、該治療対象部分に対して放射線ビームを精度良く照射させることができる照射制御装置、放射線治療システム及び照射制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の態様は、被検体に対する放射線治療の治療計画を治療計画装置が立案し、放射線治療装置が、回転軸を中心にガントリを回転させながら、前記回転軸上に位置する前記被検体に対して前記ガントリに設けられた放射線ビーム源から放射線ビームを照射可能であり、前記回転軸と略同軸に配置された透視画像生成装置が前記被検体の透視画像を生成し、前記治療計画及び前記透視画像に基づいて、前記放射線ビーム源から前記被検体への前記放射線ビームの照射を制御する照射制御装置及び照射制御方法と、放射線治療システムとに関する。
【0008】
この場合、前記照射制御装置は、第1受信部、第2受信部、DRR画像計算部、位置ずれ量計算部及び照射許可判定部を備える。前記第1受信部は、前記透視画像生成装置からストリーミング出力された前記透視画像と、前記透視画像を生成した際の前記ガントリの回転角度とを少なくとも受信する。前記第2受信部は、前記治療計画装置から送信された前記被検体の特定の呼吸位相における前記治療計画用のCT画像とアイソセンタ座標とを受信する。前記DRR画像計算部は、前記CT画像及び前記アイソセンタ座標から前記被検体の前記回転角度毎のDRR画像を計算する。前記位置ずれ量計算部は、同一の前記回転角度の前記透視画像及び前記DRR画像を用いて、前記DRR画像中の前記被検体の横隔膜の位置を基準としたときの前記透視画像中の前記被検体の横隔膜の呼吸性の位置ずれ量を計算する。前記照射許可判定部は、前記位置ずれ量が所定値以下であるときに、前記放射線ビーム源から前記被検体への前記放射線ビームの照射を許可する。
【0009】
前記放射線治療システムは、上記の照射制御装置を有する。
【0010】
前記照射制御方法は、第1~第5ステップを有する。前記第1ステップでは、前記透視画像生成装置からストリーミング出力された前記透視画像と、前記透視画像を生成した際の前記ガントリの回転角度とを前記照射制御装置の第1受信部が少なくとも受信する。前記第2ステップでは、前記治療計画装置から送信された前記被検体の特定の呼吸位相における前記治療計画用のCT画像とアイソセンタ座標とを前記照射制御装置の第2受信部が受信する。前記第3ステップでは、前記CT画像及び前記アイソセンタ座標から前記被検体の前記回転角度毎のDRR画像を前記照射制御装置のDRR画像計算部が計算する。前記第4ステップでは、同一の前記回転角度の前記透視画像及び前記DRR画像を用いて、前記DRR画像中の前記被検体の横隔膜の位置を基準としたときの前記透視画像中の前記被検体の横隔膜の呼吸性の位置ずれ量を前記照射制御装置の位置ずれ量計算部が計算する。前記第5ステップでは、前記位置ずれ量が所定値以下であるときに、前記放射線ビーム源から前記被検体への前記放射線ビームの照射を前記照射制御装置の照射許可判定部が許可する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、同一のガントリの回転角度の透視画像及びDRR画像を用いて、DRR画像中の被検体の横隔膜の位置に対する透視画像中の横隔膜の呼吸性の位置ずれ量を計算し、位置ずれ量が所定値以下であれば、放射線ビーム源から被検体への放射線ビームの照射が許可される。これにより、人体の呼吸によって、腫瘍等の治療対象部分の位置が周期的に変動する場合でも、該治療対象部分に対して、放射線ビームを精度良く照射することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態に係る放射線治療システムの概略構成図である。
【
図2】
図1の放射線治療システムを構成する照射制御装置の動作(照射制御方法)を示すフローチャートである。
【
図3】
図2のステップS5、S6の具体的処理を示すフローチャートである。
【
図4】透視画像(第1透視画像)の一例を示す図である。
【
図5】DRR画像(第1DRR画像)の一例を示す図である。
【
図6】
図4の第1透視画像の各画素値を4乗した透視画像(第3透視画像)を示す図である。
【
図7】
図6の第3透視画像中、横隔膜を含む部分画像領域を抽出した図である。
【
図8】
図5の第1DRR画像中、横隔膜を含む部分画像領域を抽出した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る照射制御装置、放射線治療システム及び照射制御方法について、好適な実施形態を例示し、添付の図面を参照しながら説明する。
【0014】
[1.本実施形態の構成]
図1に示すように、本実施形態に係る放射線治療システム10は、例えば、医療機関に設けられ、患者の人体等の被検体内の治療対象部分、例えば、腫瘍に放射線ビームを照射することで、該腫瘍に対する放射線治療を行う。放射線治療システム10は、治療計画装置12、放射線治療用リニアック14(放射線治療装置)、透視画像生成装置16及び照射制御装置18を有する。照射制御装置18と、治療計画装置12及び放射線治療用リニアック14(透視画像生成装置16)とは、双方向の通信が可能に構成されている。
【0015】
治療計画装置12は、被検体に対する放射線治療の治療計画を立案する。具体的に、治療計画装置12は、被検体である患者毎に、患者内部の特定の呼吸位相におけるCT画像を生成し、生成したCT画像に基づき、被検体の任意の呼吸動作での腫瘍の位置を特定する。これにより、治療計画装置12は、CT画像と、放射線ビームの照射対象箇所(腫瘍)を特定するためのアイソセンタ座標とを含む治療計画を立案する。
【0016】
なお、特定の呼吸位相とは、被検体の最大呼気又は最大吸気である。これらの呼吸位相では、治療対象部分が一時的に停止する。そのため、このような呼吸位相において、治療対象部分に放射線ビームを照射すれば、放射線治療を精度良く行うことが可能である。そこで、治療計画装置12は、例えば、呼吸センサを備えた治療計画用のCT装置を用いて、特定の呼吸位相(例えば、被検体の息止め下)での被検体のCT画像を撮影すればよい。治療計画装置12は、立案した治療計画(CT画像、アイソセンタ座標)をDICOM-RT規格のデータとして、照射制御装置18に送信する。
【0017】
放射線治療用リニアック14は、ガントリと、該ガントリに設けられた放射線ビーム源とを有する。放射線治療の際、被検体は、ガントリの回転軸上に位置する。具体的には、特許文献1に開示されているように、回転軸に沿って寝台が配置され、被検体は、寝台の上に横臥する。寝台は、回転軸の方向に移動可能である。放射線治療の際、寝台は、被検体が放射線ビーム源と向かい合う位置にまで移動する。放射線ビーム源は、該放射線ビーム源が被検体と向かい合い、且つ、ガントリが回転軸を中心に回転している状態で、ガントリの任意の回転角度から被検体に向けて放射線ビームを照射する。
【0018】
透視画像生成装置16は、回転軸と略同軸に配置されるように、放射線治療用リニアック14に併設されている。透視画像生成装置16は、放射線撮影装置であり、回転軸を挟んで配置された放射線源及び放射線検出器を備える。例えば、特許文献1に開示されているように、寝台が回転軸の方向に移動し、放射線源と放射線検出器とが被検体を挟んで向かい合っている状態で、放射線源から被検体に向けてX線等の放射線を照射すればよい。放射線検出器は、被検体を透過した放射線を電気信号(画像信号)に変換することにより、被検体の透視画像(第1透視画像)を生成する。透視画像生成装置16は、生成した透視画像と、透視画像を生成した際のガントリの回転角度と、放射線検出器の重力による撓みに起因する透視画像の歪みを補正するための撓み補正量とをストリーミング出力し、ギガビットイーサネットの回線を介して、照射制御装置18に送信する。なお、本実施形態において、ストリーミング出力は、200ms~300ms程度の遅延時間を有する略実時間での出力である。
【0019】
なお、透視画像生成装置16がガントリに設けられる場合、放射線源及び放射線検出器は、放射線ビーム源に対して±90°の位相差でガントリ内に配置される。つまり、ガントリが回転する場合、放射線源及び放射線検出器は、放射線ビーム源と共に回転する。この場合、撓み補正量は、ガントリの回転角度に依存する放射線検出器の重力による撓みに起因した撓み補正量となる。以下の説明では、撓み補正量は、ガントリの回転角度に依存する補正量として説明する。
【0020】
照射制御装置18は、各種のコンピュータであって、非一過性の記録媒体である不図示のメモリに格納されたプログラムを読み出して起動することにより、放射線ビーム源から被検体への放射線ビームの照射を制御するための制御装置として機能する。照射制御装置18は、該プログラムの動作によって、第1受信部18a、第2受信部18b、DRR(Digitally Reconstructed Radiography)画像計算部18c、位置ずれ量計算部18d、照射許可判定部18e、及び、照射許可信号出力部18fの機能を実現する。
【0021】
第1受信部18aは、透視画像生成装置16からストリーミング出力された透視画像、回転角度及び撓み補正量を受信する。第2受信部18bは、治療計画装置12から送信された治療計画のデータ(CT画像、アイソセンタ座標)を受信する。なお、第2受信部18bは、第1受信部18aによる透視画像、回転角度及び撓み補正量の受信に先立ち、治療計画のデータを受信してもよい。あるいは、第2受信部18bは、第1受信部18aが透視画像、回転角度及び撓み補正量を受信した後に、治療計画のデータを受信してもよい。
【0022】
DRR画像計算部18cは、治療計画に含まれるCT画像及びアイソセンタ座標から、被検体の回転角度毎のDRR画像(第1DRR画像)を計算する。なお、DRR画像とは、治療計画用のCT画像から透視画像をシミュレーション計算した被検体の人体内部の画像である。すなわち、DRR画像計算部18cは、息止め下のCT画像を含む、被検体の異なる呼吸位相に対する複数のCT画像を一挙に取得し、取得した各CT画像を用いてDRR画像を生成すればよい。
【0023】
ところで、被検体内の腫瘍の位置は、該被検体の呼吸動作によって、被検体の頭尾方向に数cm程度動くことがある。また、透視画像は、被検体を通過した放射線の強度分布として与えられる2次元画像である。そのため、透視画像では、相対的に小さい腫瘍を確認することが難しい場合が多い。一方、横隔膜も被検体の呼吸動作によって変位する。但し、横隔膜は、腫瘍と比較して、相対的に大きく、低密度の肺と隣接しているので、透視画像上は視認しやすい。
【0024】
そこで、位置ずれ量計算部18dは、ガントリの同一の回転角度における透視画像及びDRR画像を用いて、DRR画像中の被検体の横隔膜の位置を基準としたときに、該基準となる横隔膜の位置に対する透視画像中の被検体の横隔膜の呼吸性の位置ずれ量を計算する。すなわち、同一の回転角度での透視画像とDRR画像との横隔膜の位置を比べ、その位置ずれ量を計算することにより、治療計画で予め決めた放射線ビームの照射位置(アイソセンタ座標)に腫瘍が実際に存在するか否かを判定することが可能となる。
【0025】
また、放射線検出器には、ガントリの回転角度に依存する重力による撓みが発生しており、透視画像は、該撓みの影響を受けている場合がある。そこで、位置ずれ量計算部18dは、撓み補正量を用いて透視画像中の被検体の横隔膜の位置を補正し、補正後の透視画像とDRR画像とを用いて、呼吸性の位置ずれ量を計算する。
【0026】
さらに、位置ずれ量計算部18dは、同一の回転角度において、呼吸性の位置ずれ量に応じた透視画像とDRR画像との正規化相関係数を計算してもよい。正規化相関係数の具体的な算出手法については、後述する。
【0027】
照射許可判定部18eは、位置ずれ量が所定の許容限界値(以後、「第1所定値」と呼称する。)以下であるとき、放射線ビーム源から被検体への放射線ビームの照射を許可する。この場合、治療計画に含まれるCT画像に応じたDRR画像中の腫瘍の位置と、回転軸上の被検体の内部を撮影した透視画像中の腫瘍の位置とが概ね一致する。このような状態で、放射線ビーム源から被検体に向けて放射線ビームを照射すれば、該腫瘍に対する放射線治療を精度良く行うことが可能となる。
【0028】
照射許可信号出力部18fは、照射許可判定部18eが放射線ビームの照射の許可を判定した場合、放射線ビームの照射の許可を指示する照射許可信号を放射線治療用リニアック14に送信する。この場合、照射許可信号出力部18fは、例えば、USB端子を用いて、ソフトウェアで通信することにより、照射許可信号を確実に放射線治療用リニアック14に送信することができる。従って、放射線治療用リニアック14は、照射許可信号を受信した場合のみ、放射線ビーム源から被検体に向けて放射線ビームを照射することができる。
【0029】
[2.本実施形態の動作]
以上のように構成される本実施形態に係る照射制御装置18及び放射線治療システム10の動作(照射制御方法)について、
図2~
図8を参照しながら説明する。この動作説明では、必要に応じて、
図1の構成図も参照しながら説明する。ここでは、放射線治療システム10を採用している医療機関において、被検体の腫瘍に対する放射線治療を行う場合について説明する。
【0030】
<2.1 本実施形態の動作の概要>
先ず、被検体に対する放射線治療の実行に先立ち、治療計画装置12を用いて、被検体に対する治療計画を立案する。具体的には、不図示の放射線画像撮影装置を用いて、特定の呼吸位相(被検体の最大呼気又は最大吸気)における被検体のCT画像を取得する。なお、透視画像生成装置16を用いて被検体のCT画像を取得してもよい。次に、取得したCT画像中の腫瘍の位置を、放射線ビームの照射対象箇所として、当該腫瘍の位置(照射対象箇所)の座標であるアイソセンタ座標を特定する。これにより、CT画像及びアイソセンタ座標を含む治療計画が立案される。
【0031】
次に、放射線治療を実行するため、ガントリの回転軸上に被検体を位置させる。具体的には、ガントリの回転軸と平行に配置された寝台上に、被検体を回転軸に沿って横臥させる。次に、放射線ビーム源、放射線源及び放射線検出器と被検体とが向かい合う位置にまで、寝台を回転軸に沿って移動させる。寝台の移動完了後、透視画像生成装置16の放射線源から被検体に向けて放射線を照射する。放射線検出器は、照射された放射線を画像信号に変換する。これにより、被検体を透過した放射線に応じた画像信号が透視画像として生成される。透視画像生成装置16は、被検体の透視画像、ガントリの回転角度、及び、撓み補正量をストリーミング出力する。
【0032】
そして、
図2のステップS1(第1ステップ)において、照射制御装置18の第1受信部18a(
図1参照)は、透視画像生成装置16からストリーミング出力された透視画像、回転角度及び撓み補正量を受信し、位置ずれ量計算部18dに出力する。
図4は、第1受信部18aが受信した透視画像の一例を示す。
図4は、被検体の胸部の透視画像を示しており、
図4中、上下方向が頭尾方向(上方向:頭方向、下方向:足方向)である。
【0033】
次のステップS2において、位置ずれ量計算部18d(
図1参照)は、撓み補正量を用いて、透視画像中の被検体の横隔膜の位置を補正する。具体的に、撓み補正量は、透視画像上、頭尾方向成分と左右方向成分とに分けることができる。そこで、位置ずれ量計算部18dは、ストリーミング出力された透視画像について、該透視画像を頭尾方向成分だけ頭尾方向に平行移動させると共に、該透視画像を左右方向成分だけ左右方向に平行移動させる。
【0034】
次のステップS3(第2ステップ)において、第2受信部18bは、治療計画装置12から転送された被検体の治療計画(特定の呼吸位相におけるCT画像及びアイソセンタ座標)を受信し、DRR画像計算部18cに出力する。
【0035】
なお、ステップS1、S3の各受信処理は、第1受信部18a及び第2受信部18bがそれぞれ独立して行う。そのため、ステップS1、S3の各受信処理は、
図2に示す順に行ってもよいし、又は、順番を入れ替えて、ステップS3、ステップS1の順に行ってもよい。
【0036】
次のステップS4(第3ステップ)において、DRR画像計算部18cは、治療計画に含まれるCT画像及びアイソセンタ座標から、ガントリの回転角度毎のDRR画像を計算し、計算したDRR画像を位置ずれ量計算部18dに出力する。この場合、DRR画像計算部18cは、0.5°~5°の回転角度毎、より好ましくは、1°の回転角度毎のDRR画像を計算する。実際には、第1受信部18aが透視画像、回転角度及び撓み補正量を受信した際、DRR画像計算部18cは、受信された回転角度の小数第一位を四捨五入し、四捨五入後の回転角度でのDRR画像を計算する。
図5は、DRR画像計算部18cが計算したDRR画像の一例を示す。
図5は、
図4の透視画像と同一の回転角度におけるDRR画像であり、
図5中、上下方向が頭尾方向(上方向:頭方向、下方向:足方向)である。
【0037】
ステップS4について、より詳しく説明すると、透視画像生成装置16の機械パラメータ(放射線の焦点からアイソセンタまでの距離、該焦点から放射線検出器までの距離、放射線検出器の大きさ及びピクセルサイズ)を用いて、CT画像からDRR画像をシミュレーション計算する。この場合、放射線の焦点から発散する放射線(X線)の束に対して、1本ずつレイトレーシングし、その直線上のCT値を加算することで、透視画像に相当するDRR画像をシミュレーション計算することができる。
【0038】
次のステップS5(第4ステップ)において、位置ずれ量計算部18d(
図1参照)は、ガントリの同一の回転角度の透視画像とDRR画像とを用い、DRR画像中の被検体の横隔膜(例えば、
図5中の横隔膜20)の位置を基準として、該基準とした横隔膜の位置に対する透視画像中の被検体の横隔膜(例えば、
図4中の横隔膜22)の呼吸性の位置ずれ量を計算する。
【0039】
すなわち、DRR画像と透視画像とは、同一の回転角度で撮像した場合には、略同一の画像となるはずである。しかしながら、被検体の呼吸動作に起因して、基準となるDRR画像中の横隔膜の位置(特定の呼吸位相での位置)に対して、透視画像中の実際の横隔膜の位置(実際の呼吸位相での位置)がずれる場合がある。そこで、位置ずれ量計算部18dは、同一の回転角度におけるDRR画像と透視画像との間での横隔膜の位置ずれ量を計算する。この場合、位置ずれ量計算部18dは、例えば、
図5のDRR画像(横隔膜20の画像)と、
図4の透視画像(横隔膜22の画像)とを用いて、位置ずれ量を計算すればよい。
【0040】
次のステップS6(第5ステップ)において、照射許可判定部18eは、位置ずれ量計算部18dが算出した位置ずれ量が第1所定値以下であるかを判定する。位置ずれ量が第1所定値以下である場合(ステップS6:YES)、照射許可判定部18eは、位置ずれ量が第1所定値以内に収まっているため、腫瘍に放射線ビームを精度良く照射することが可能と判定し、放射線ビームの照射を許可する。照射許可判定部18eは、照射の許可を示す判定結果を照射許可信号出力部18fに出力する。
【0041】
次のステップS7において、照射許可信号出力部18fは、照射許可判定部18eからの照射許可の判定結果に基づき、照射許可信号を放射線治療用リニアック14に送信する。これにより、放射線治療用リニアック14は、受信した照射許可信号に基づき、放射線ビーム源から被検体に向けて放射線ビームを照射する。
【0042】
一方、ステップS6において、位置ずれ量が第1所定値を超える場合(ステップS6:NO)、照射許可判定部18eは、腫瘍に対して放射線ビームを精度良く照射することができないと判定し、照射の不許可の判定結果を照射許可信号出力部18fに出力する。照射許可信号出力部18fは、入力された判定結果に基づき、照射許可信号の出力を行わない。従って、放射線治療用リニアック14は、放射線ビーム源からの放射線ビームの照射を停止する。
【0043】
<2.2 本実施形態の動作の具体例>
本実施形態の動作の概要は以上の通りである。次に、
図3のステップS5、S6の具体例について、
図3及び
図6~
図8を参照しながら説明する。この具体例では、下記の(1)~(5)の手法を用いて、放射線ビームの照射の許可を判定する。
【0044】
(1)同一の回転角度の透視画像とDRR画像との正規化相関係数に基づき、放射線ビーム源から被検体への放射線ビームの照射の許可判定を行う。(2)同一の回転角度の透視画像及びDRR画像に対して、横隔膜を含む単一の部分画像領域をそれぞれ選択し、選択した透視画像の部分画像領域とDRR画像の部分画像領域とを用いて正規化相関係数を計算する。(3)同一の回転角度の透視画像及びDRR画像のうち、少なくとも一方の画像の各画素値をべき乗して新たな画像を生成し、生成した新たな画像等を用いて正規化相関係数を計算する。(4)同一の回転角度の透視画像及びDRR画像のうち、少なくとも一方の画像について、各画素値から該各画素値の平均値を減算することで新たな画像を生成し、生成した新たな画像等を用いて正規化相関係数を計算する。(5)DRR画像上の被検体の画像領域を頭尾方向に所定の間隔だけシフトすることで、2つの新たなDRR画像を生成し、元のDRR画像及びシフトした2つの新たなDRR画像と透視画像との間で3つの正規化相関係数をそれぞれ計算する。
【0045】
すなわち、
図3のステップS8、S9(第4ステップ)は、
図2のステップS5の具体的処理である。また、
図3のステップS10(第5ステップ)は、
図2のステップS6の具体的処理である。従って、ステップS8~S10では、(1)~(5)のいずれかの手法で処理を実行するか、又は、(1)~(5)のうち、いくつかの手法を組み合わせた処理を実行する。ここで、具体的な処理動作(第1~第5具体例)について、以下に説明する。
【0046】
(2.2.1 第1具体例)
第1具体例は、以下に説明する各処理動作(第2~第5具体例)に対する基本的な動作である。すなわち、
図2のステップS4後、
図3のステップS8に進む。ステップS8において、位置ずれ量計算部18d(
図1参照)は、同一の回転角度の透視画像及びDRR画像について、正規化相関係数を計算する。
【0047】
この場合、第1受信部18aが受信した透視画像(
図4参照)は、散乱線の混入によってコントラストが良好でない場合がある。そこで、透視画像の各画素値を2~4のべき指数でべき乗することで、透視画像のコントラストを改善する。
図6は、
図4の透視画像の各画素値を4乗して、横隔膜22のエッジのコントラストを改善した透視画像の一例を示す。各画素値を4乗することにより、画素値が相対的に小さな画素は、信号レベルが一層小さくなると共に、画素値が相対的に大きな画素は、信号レベルが一層大きくなる。これにより、
図6の透視画像は、
図4の透視画像よりもコントラストが改善される。
【0048】
また、透視画像上、横隔膜22(
図4及び
図6参照)の位置は、腫瘍の位置よりも視認しやすい。そこで、透視画像の全体とDRR画像の全体との間で横隔膜20、22の位置ずれ量を計算するのではなく、同一の回転角度の透視画像及びDRR画像に対して、横隔膜20、22を含む単一の部分画像領域をそれぞれ抽出(選択)し、抽出した透視画像の部分画像領域とDRR画像の部分画像領域とについて、横隔膜20、22の位置ずれ量を計算する。これにより、横隔膜20、22の位置ずれ量を正確に且つ効率よく計算することができる。
図7は、
図6の透視画像から、横隔膜22を含む部分画像領域を抽出した図である。また、
図8は、
図5のDRR画像から、横隔膜20を含む部分画像領域を抽出した図である。そこで、位置ずれ量計算部18dは、同一の回転角度における
図7に示す透視画像の部分画像領域と、
図8に示すDRR画像の部分画像領域とを用いて、横隔膜20、22の位置ずれ量を計算する。
【0049】
ここで、透視画像の部分画像領域の各画素値をT(i、j)、該各画素値の平均値をT0、DRR画像の部分画像領域の各画素値をD(i、j)、該各画素値の平均値をD0とすれば、透視画像及びDRR画像の各部分画像領域の正規化相関係数R1、R2は、下記の(1)式、(2)式でそれぞれ表わされる。(1)式は、各画素値から該各画素値の平均値を減算した値を用いた正規化相関係数の数式を示す。(2)式は、各画素値の平均値を用いない正規化相関係数の数式を示す。なお、iは、各部分画像領域の横方向(左右方向)の座標値であり、jは、各部分画像領域の縦方向(頭尾方向)の座標値を示す。また、Σは、(i、j)の座標の各画素についての画素値等の総和を示す数学記号である。
【0050】
【0051】
【0052】
2つの正規化相関係数について、数値シミュレーションで比較した結果、R1の方が、R2と比較して、呼吸性の位置ずれ量に対する正規化相関係数の変化率が大きいことが分かった。すなわち、R1の方が、R2よりも、位置ずれ量の検出感度が高く、有用である。
【0053】
また、(1)式及び(2)式において、T(i、j)は、第1受信部18aが受信した透視画像の各画素値、又は、各画素値をべき乗した画素値のいずれでもよい。さらに、上記の説明では、2つの部分画像領域の間での正規化相関係数の計算について説明しているが、透視画像の全体とDRR画像の全体とについて正規化相関係数の計算を行ってもよい。
【0054】
次のステップS9において、位置ずれ量計算部18dは、DRR画像上、被検体の画像領域を頭方向及び足方向に所定の間隔だけそれぞれシフトさせることで、2つの新たなDRR画像(頭方向にシフトさせた画像、足方向にシフトさせた画像)を生成する。そして、位置ずれ量計算部18dは、元のDRR画像と同一の回転角度の透視画像と、シフトさせた2つの新たなDRR画像との間で、正規化相関係数をそれぞれ計算する。
【0055】
すなわち、位置ずれ量計算部18dは、該透視画像と頭方向にシフトさせた新たなDRR画像との正規化相関係数と、該透視画像と足方向にシフトさせた新たなDRR画像との正規化相関係数とを、それぞれ計算する。従って、以下の説明では、これらの正規化相関係数を、「透視画像と2つの新たなDRR画像との2つの正規化相関係数」、又は、「2つの正規化相関係数」と呼称する場合がある。この場合も、位置ずれ量計算部18dは、透視画像の部分画像領域と、2つの新たなDRR画像の部分画像領域との間で、2つの正規化相関係数を計算すればよい。
【0056】
なお、上記の所定の間隔としては、アイソセンタ座標を含むアイソセンタ面(放射線源とアイソセンタ座標とを結ぶ放射線の中心軸に垂直な面)において、被検体の解剖形状上、5mm~20mmを選ぶことができ、より好ましくは、10mmである。また、DRR画像と透視画像とは、いずれも、アイソセンタ面への投影画像として、その寸法が決められている。そのため、呼吸性の位置ずれ量についても、アイソセンタ面上での位置ずれ量として議論される。
【0057】
次のステップS10において、照射許可判定部18eは、透視画像と元のDRR画像との正規化相関係数の値が、透視画像と2つの新たなDRR画像との2つの正規化相関係数のそれぞれの値以上であるか否かを判定する。この場合、透視画像と2つの新たなDRR画像との2つの正規化相関係数の値を「第2所定値」とすることで、照射許可判定部18eは、透視画像と元のDRR画像との正規化相関係数の値が、第2所定値以上であるか否かを判定する。
【0058】
なお、透視画像と2つの新たなDRR画像との2つの正規化相関係数の値は、一般的には2つの異なる値になる。但し、以下の説明では、2つの異なる値をまとめて「第2所定値」と呼称する。すなわち、本明細書において、「第2所定値以上」とは、透視画像と2つの新たなDRR画像との2つの正規化相関係数のそれぞれの値以上という意味で用いる。
【0059】
透視画像と元のDRR画像との正規化相関係数の値が第2所定値以上である場合、すなわち、透視画像と元のDRR画像との正規化相関係数の値が、透視画像と2つの新たなDRR画像との2つの正規化相関係数のそれぞれの値以上である場合(ステップS10:YES)、照射許可判定部18eは、DRR画像中の腫瘍の位置と透視画像中の腫瘍の位置とが概ね一致するため、放射線ビーム源から被検体に向けて放射線ビームを照射すれば、該腫瘍に対する放射線治療を精度良く行うことが可能と判定する。その後、
図2のステップS7の処理が実行される。
【0060】
一方、ステップS10において、透視画像と元のDRR画像との正規化相関係数の値が、透視画像と2つの新たなDRR画像との2つの正規化相関係数の値のいずれかよりも小さい場合、すなわち、透視画像と元のDRR画像との正規化相関係数の値が、2つの第2所定値のいずれかの値未満である場合(ステップS10:NO)、照射許可判定部18eは、DRR画像中の腫瘍の位置と、透視画像中の腫瘍の位置とがずれており、被検体に放射線ビームを照射しても、放射線治療を精度良く行うことができないと判定し、放射線ビームの照射を不許可とする。
【0061】
ここで、具体的な数値を挙げて説明する。例えば、DRR画像を頭方向及び足方向に10mmシフトさせることで2つの新たなDRR画像を生成する。次に、元のDRR画像と、10mmシフトさせた2つの新たなDRR画像と、実際の透視画像との間で、例えば、(1)式を用いて、3つの正規化相関係数を求める。この場合、元のDRR画像と透視画像との間の正規化相関係数が、2つの新たなDRR画像と透視画像との間の2つの正規化相関係数のそれぞれの値以上である場合(ステップS10:YES)は、呼吸性の位置ずれ量は、5mm以下であると考えてよい。従って、5mm以下の照射誤差で放射線ビームを被検体に照射するためには、元のDRR画像と透視画像との間の正規化相関係数の値が、2つの新たなDRR画像と透視画像との間の2つの正規化相関係数のそれぞれの値以上である場合(ステップS10:YES)に、照射許可信号を出力すればよい。
【0062】
(2.2.2 第2具体例)
第2具体例は、第1受信部18aが受信した透視画像と、DRR画像計算部18cが計算したDRR画像、又は、位置ずれ量計算部18dが該DRR画像に対して所定の処理を行ったときの処理後のDRR画像との間で、正規化相関係数を計算するものである。以下の説明では、第1受信部18aが受信した透視画像を「第1透視画像」と呼称し、DRR画像計算部18cが計算したDRR画像を「第1DRR画像」と呼称する。
【0063】
この場合、ステップS8では、位置ずれ量計算部18dは、下記の4つのいずれかの手法で正規化相関係数を計算する。(1)同一の回転角度の第1透視画像と第1DRR画像とについて、正規化相関係数を計算する。(2)第1透視画像と同一の回転角度の第1DRR画像の各画素値から、該各画素値の平均値を減算した第2DRR画像を生成し、該第1透視画像と第2DRR画像とについて、正規化相関係数を計算する。(3)第1透視画像と同一の回転角度の第1DRR画像について、該第1DRR画像の各画素値を2~4のべき指数でべき乗した第3DRR画像を生成し、該第1透視画像と第3DRR画像とについて、正規化相関係数を計算する。(4)上記(3)で説明した第3DRR画像の各画素値から該各画素値の平均値を減算した第4DRR画像を生成し、該第1透視画像と第4DRR画像とについて、正規化相関係数を計算する。
【0064】
従って、ステップS8において、位置ずれ量計算部18dは、(1)~(4)のいずれかの手法を用いた場合でも、上記(1)式又は(2)式を利用して、正規化相関係数を計算することができる。
【0065】
次のステップS9において、位置ずれ量計算部18dは、ステップS8で用いた第1DRR画像上で、被検体の画像領域を頭方向に所定の間隔だけシフトするか、シフト後の第1DRR画像の各画素値から該各画素値の平均値を減算するか、シフト後の第1DRR画像の各画素値を2~4のべき指数でべき乗するか、又は、べき乗後の第1DRR画像の各画素値から該各画素値の平均値を減算することで、第5DRR画像を生成する。
【0066】
次に、位置ずれ量計算部18dは、第1DRR画像上で、被検体の画像領域を足方向に所定の間隔だけシフトするか、シフト後の第1DRR画像の各画素値から該各画素値の平均値を減算するか、シフト後の第1DRR画像の各画素値を2~4のべき指数でべき乗するか、又は、べき乗後の第1DRR画像の各画素値から該各画素値の平均値を減算することで、第6DRR画像を生成する。
【0067】
さらに、位置ずれ量計算部18dは、第1透視画像と、該第1透視画像と同一の回転角度である第1~第4DRR画像のうち、いずれかのDRR画像、第5DRR画像及び第6DRR画像との間で、正規化相関係数をそれぞれ計算する。この場合も、位置ずれ量計算部18dは、上記(1)式又は(2)式を利用して、正規化相関係数を計算することができる。以後、本明細書では、「第1~第4DRR画像のうち、いずれかのDRR画像」を、「いずれかのDRR画像」と略記する。
【0068】
次のステップS10において、照射許可判定部18eは、第1透視画像といずれかのDRR画像との正規化相関係数の値が、第1透視画像と第5DRR画像との正規化相関係数、及び、第1透視画像と第6DRR画像との正規化相関係数のそれぞれの値(第2所定値)以上であるか否かを判定する。すなわち、第1透視画像と第5DRR画像との正規化相関係数、及び、第1透視画像と第6DRR画像との正規化相関係数のそれぞれの値が、第1透視画像といずれかのDRR画像との正規化相関係数の値よりも大きくないかどうかを判定する。
【0069】
第1透視画像といずれかのDRR画像との正規化相関係数の値が2つの第2所定値のそれぞれの値以上である場合(ステップS10:YES)、照射許可判定部18eは、いずれかのDRR画像中の腫瘍の位置と第1透視画像中の腫瘍の位置とが概ね一致するため、放射線ビーム源から被検体に向けて放射線ビームを照射すれば、該腫瘍に対する放射線治療を精度良く行うことが可能と判定する。その後、
図2のステップS7の処理が実行される。
【0070】
一方、ステップS10において、第1透視画像といずれかのDRR画像との正規化相関係数の値が、第1透視画像と第5DRR画像又は第6DRR画像との正規化相関係数の値よりも小さい場合、すなわち、第1透視画像といずれかのDRR画像との正規化相関係数の値が、2つの第2所定値のいずれかの値未満である場合(ステップS10:NO)、照射許可判定部18eは、いずれかのDRR画像中の腫瘍の位置と、第1透視画像中の腫瘍の位置とがずれており、被検体に放射線ビームを照射しても、放射線治療を精度良く行うことができないと判定し、放射線ビームの照射を不許可とする。
【0071】
(2.2.3 第3具体例)
第3具体例は、第1透視画像の各画素値から該各画素値の平均値を減算して生成される透視画像(以下、「第2透視画像」と呼称する場合がある。)と、DRR画像計算部18cが計算したDRR画像、又は、位置ずれ量計算部18dが該DRR画像に対して所定の処理を行ったときの処理後のDRR画像との間で、正規化相関係数を計算するものである。
【0072】
この場合、ステップS8では、位置ずれ量計算部18dは、下記の4つのいずれかの手法で正規化相関係数を計算する。(1)第2透視画像と、第2透視画像と同一の回転角度の第1DRR画像とについて、正規化相関係数を計算する。(2)第1DRR画像の各画素値から、該各画素値の平均値を減算した第2DRR画像を生成し、第2透視画像と、該第2透視画像と同一の回転角度の第2DRR画像とについて、正規化相関係数を計算する。(3)第1DRR画像の各画素値を2~4のべき指数でべき乗した第3DRR画像を生成し、第2透視画像と、該第2透視画像と同一の回転角度の第3DRR画像とについて、正規化相関係数を計算する。(4)第3DRR画像の各画素値から該各画素値の平均値を減算した第4DRR画像を生成し、第2透視画像と、該第2透視画像と同一の回転角度の第4DRR画像とについて、正規化相関係数を計算する。
【0073】
この場合も、ステップS8において、位置ずれ量計算部18dは、(1)~(4)のいずれかの手法を用い、上記(1)式又は(2)式を利用して、正規化相関係数を計算することができる。
【0074】
次のステップS9において、位置ずれ量計算部18dは、ステップS8で用いた第1DRR画像上で、被検体の画像領域を頭方向に所定の間隔だけシフトするか、シフト後の第1DRR画像の各画素値から該各画素値の平均値を減算するか、シフト後の第1DRR画像の各画素値を2~4のべき指数でべき乗するか、又は、べき乗後の第1DRR画像の各画素値から該各画素値の平均値を減算することで、第5DRR画像を生成する。
【0075】
次に、位置ずれ量計算部18dは、第1DRR画像上で、被検体の画像領域を足方向に所定の間隔だけシフトするか、シフト後の第1DRR画像の各画素値から該各画素値の平均値を減算するか、シフト後の第1DRR画像の各画素値を2~4のべき指数でべき乗するか、又は、べき乗後の第1DRR画像の各画素値から該各画素値の平均値を減算することで、第6DRR画像を生成する。
【0076】
次に、位置ずれ量計算部18dは、第2透視画像と、第2透視画像と同一の回転角度における第1~第4DRR画像のうち、いずれかのDRR画像、第5DRR画像及び第6DRR画像との間で、正規化相関係数をそれぞれ計算する。この場合も、位置ずれ量計算部18dは、上記(1)式又は(2)式を利用して、正規化相関係数を計算することができる。
【0077】
次のステップS10において、照射許可判定部18eは、第2透視画像といずれかのDRR画像との正規化相関係数の値が、第2透視画像と第5DRR画像との正規化相関係数、及び、第2透視画像と第6DRR画像との正規化相関係数のそれぞれの値(第2所定値)以上であるか否かを判定する。すなわち、第2透視画像と第5DRR画像との正規化相関係数、及び、第2透視画像と第6DRR画像との正規化相関係数のそれぞれの値が、第2透視画像といずれかのDRR画像との正規化相関係数の値よりも大きくないかどうかを判定する。
【0078】
第2透視画像といずれかのDRR画像との正規化相関係数の値が、2つの第2所定値のそれぞれの値以上である場合(ステップS10:YES)、照射許可判定部18eは、いずれかのDRR画像中の腫瘍の位置と第2透視画像中の腫瘍の位置とが概ね一致するため、放射線ビーム源から被検体に向けて放射線ビームを照射すれば、該腫瘍に対する放射線治療を精度良く行うことが可能と判定する。その後、
図2のステップS7の処理が実行される。
【0079】
一方、ステップS10において、第2透視画像といずれかのDRR画像との正規化相関係数の値が、第2透視画像と第5DRR画像又は第6DRR画像との正規化相関係数の値よりも小さい場合、すなわち、第2透視画像といずれかのDRR画像との正規化相関係数の値が、2つの第2所定値のいずれかの値未満である場合(ステップS10:NO)、照射許可判定部18eは、いずれかのDRR画像中の腫瘍の位置と、第2透視画像中の腫瘍の位置とがずれており、被検体に放射線ビームを照射しても、放射線治療を精度良く行うことができないと判定し、放射線ビームの照射を不許可とする。
【0080】
(2.2.4 第4具体例)
第4具体例は、第1透視画像の各画素値を2~4のべき指数でべき乗して生成される透視画像(以下、「第3透視画像」と呼称する場合がある。)と、DRR画像計算部18cが計算したDRR画像、又は、位置ずれ量計算部18dが該DRR画像に対して所定の処理を行ったときの処理後のDRR画像との間で、正規化相関係数を計算するものである。
【0081】
この場合も、ステップS8では、位置ずれ量計算部18dは、下記の4つのいずれかの手法で正規化相関係数を計算する。(1)第3透視画像と、第3透視画像と同一の回転角度の第1DRR画像とについて、正規化相関係数を計算する。(2)第1DRR画像の各画素値から、該各画素値の平均値を減算した第2DRR画像を生成し、第3透視画像と、該第3透視画像と同一の回転角度の第2DRR画像とについて、正規化相関係数を計算する。(3)第1DRR画像の各画素値を2~4のべき指数でべき乗した第3DRR画像を生成し、第3透視画像と、該第3透視画像と同一の回転角度の第3DRR画像とについて、正規化相関係数を計算する。(4)第3DRR画像の各画素値から、該各画素値の平均値を減算した第4DRR画像を生成し、第3透視画像と、該第3透視画像と同一の回転角度の第4DRR画像とについて、正規化相関係数を計算する。
【0082】
この場合も、ステップS8において、位置ずれ量計算部18dは、(1)~(4)のいずれかの手法を用い、上記(1)式又は(2)式を利用して、正規化相関係数を計算することができる。
【0083】
次のステップS9において、位置ずれ量計算部18dは、ステップS8で用いた第1DRR画像上で、被検体の画像領域を頭方向に所定の間隔だけシフトするか、シフト後の第1DRR画像の各画素値から該各画素値の平均値を減算するか、シフト後の第1DRR画像の各画素値を2~4のべき指数でべき乗するか、又は、べき乗後の第1DRR画像の各画素値から該各画素値の平均値を減算することで、第5DRR画像を生成する。
【0084】
次に、位置ずれ量計算部18dは、第1DRR画像上で、被検体の画像領域を足方向に所定の間隔だけシフトするか、シフト後の第1DRR画像の各画素値から該各画素値の平均値を減算するか、シフト後の第1DRR画像の各画素値を2~4のべき指数でべき乗するか、又は、べき乗後の第1DRR画像の各画素値から該各画素値の平均値を減算することで、第6DRR画像を生成する。
【0085】
次に、位置ずれ量計算部18dは、第3透視画像と、第3透視画像と同一の回転角度における第1~第4DRR画像のうち、いずれかのDRR画像、第5DRR画像及び第6DRR画像との間で、正規化相関係数をそれぞれ計算する。この場合も、位置ずれ量計算部18dは、上記(1)式又は(2)式を利用して、正規化相関係数を計算することができる。
【0086】
次のステップS10において、照射許可判定部18eは、第3透視画像といずれかのDRR画像との正規化相関係数の値が、第3透視画像と第5DRR画像との正規化相関係数、及び、第3透視画像と第6DRR画像との正規化相関係数のそれぞれの値(第2所定値)以上であるか否かを判定する。すなわち、第3透視画像と第5DRR画像との正規化相関係数、及び、第3透視画像と第6DRR画像との正規化相関係数のそれぞれの値が、第3透視画像といずれかのDRR画像との正規化相関係数の値よりも大きくないかどうかを判定する。
【0087】
第3透視画像といずれかのDRR画像との正規化相関係数の値が、2つの第2所定値のそれぞれの値以上である場合(ステップS10:YES)、照射許可判定部18eは、いずれかのDRR画像中の腫瘍の位置と第3透視画像中の腫瘍の位置とが概ね一致するため、放射線ビーム源から被検体に向けて放射線ビームを照射すれば、該腫瘍に対する放射線治療を精度良く行うことが可能と判定する。その後、
図2のステップS7の処理が実行される。
【0088】
一方、ステップS10において、第3透視画像といずれかのDRR画像との正規化相関係数の値が、第3透視画像と第5DRR画像又は第6DRR画像との正規化相関係数の値よりも小さい場合、すなわち、第3透視画像といずれかのDRR画像との正規化相関係数の値が、2つの第2所定値のいずれかの値未満である場合(ステップS10:NO)、照射許可判定部18eは、いずれかのDRR画像中の腫瘍の位置と、第3透視画像中の腫瘍の位置とがずれており、被検体に放射線ビームを照射しても、放射線治療を精度良く行うことができないと判定し、放射線ビームの照射を不許可とする。
【0089】
(2.2.5 第5具体例)
第5具体例は、第3透視画像の各画素値から該各画素値の平均値を減算して生成される透視画像(以下、「第4透視画像」と呼称する場合がある。)と、DRR画像計算部18cが計算したDRR画像、又は、位置ずれ量計算部18dが該DRR画像に対して所定の処理を行ったときの処理後のDRR画像との間で、正規化相関係数を計算するものである。
【0090】
この場合、ステップS8では、位置ずれ量計算部18dは、下記の4つのいずれかの手法で正規化相関係数を計算する。(1)第4透視画像と、第4透視画像と同一の回転角度の第1DRR画像とについて、正規化相関係数を計算する。(2)第1DRR画像の各画素値から該各画素値の平均値を減算した第2DRR画像を生成し、第4透視画像と、該第4透視画像と同一の回転角度の第2DRR画像とについて、正規化相関係数を計算する。(3)第1DRR画像の各画素値を2~4のべき指数でべき乗した第3DRR画像を生成し、第4透視画像と、該第4透視画像と同一の回転角度の第3DRR画像とについて、正規化相関係数を計算する。(4)第3DRR画像の各画素値から該各画素値の平均値を減算した第4DRR画像を生成し、第4透視画像と、該第4透視画像と同一の回転角度の第4DRR画像とについて、正規化相関係数を計算する。
【0091】
この場合も、ステップS8において、位置ずれ量計算部18dは、(1)~(4)のいずれかの手法を用い、上記(1)式又は(2)式を利用して、正規化相関係数を計算することができる。
【0092】
次のステップS9において、位置ずれ量計算部18dは、ステップS8で用いた第1DRR画像上で、被検体の画像領域を頭方向に所定の間隔だけシフトするか、シフト後の第1DRR画像の各画素値から該各画素値の平均値を減算するか、シフト後の第1DRR画像の各画素値を2~4のべき指数でべき乗するか、又は、べき乗後の第1DRR画像の各画素値から該各画素値の平均値を減算することで、第5DRR画像を生成する。
【0093】
次に、位置ずれ量計算部18dは、第1DRR画像上で、被検体の画像領域を足方向に所定の間隔だけシフトするか、シフト後の第1DRR画像の各画素値から該各画素値の平均値を減算するか、シフト後の第1DRR画像の各画素値を2~4のべき指数でべき乗するか、又は、べき乗後の第1DRR画像の各画素値から該各画素値の平均値を減算することで、第6DRR画像を生成する。
【0094】
次に、位置ずれ量計算部18dは、第4透視画像と、第4透視画像と同一の回転角度における第1~第4DRR画像のうち、いずれかのDRR画像、第5DRR画像及び第6DRR画像との間で、正規化相関係数をそれぞれ計算する。この場合も、位置ずれ量計算部18dは、上記(1)式又は(2)式を利用して、正規化相関係数を計算することができる。
【0095】
次のステップS10において、照射許可判定部18eは、第4透視画像といずれかのDRR画像との正規化相関係数の値が、第4透視画像と第5DRR画像との正規化相関係数、及び、第4透視画像と第6DRR画像との正規化相関係数のそれぞれの値(第2所定値)以上であるか否かを判定する。すなわち、第4透視画像と第5DRR画像との正規化相関係数、及び、第4透視画像と第6DRR画像との正規化相関係数のそれぞれの値が、第4透視画像といずれかのDRR画像との正規化相関係数の値よりも大きくないかどうかを判定する。
【0096】
第4透視画像といずれかのDRR画像との正規化相関係数の値が、2つの第2所定値のそれぞれの値以上である場合(ステップS10:YES)、照射許可判定部18eは、いずれかのDRR画像中の腫瘍の位置と第4透視画像中の腫瘍の位置とが概ね一致するため、放射線ビーム源から被検体に向けて放射線ビームを照射すれば、該腫瘍に対する放射線治療を精度良く行うことが可能と判定する。その後、
図2のステップS7の処理が実行される。
【0097】
一方、ステップS10において、第4透視画像といずれかのDRR画像との正規化相関係数の値が、第4透視画像と第5DRR画像又は第6DRR画像との正規化相関係数の値よりも小さい場合、すなわち、第4透視画像といずれかのDRR画像との正規化相関係数の値が、2つの第2所定値のいずれかの値未満である場合(ステップS10:NO)、照射許可判定部18eは、いずれかのDRR画像中の腫瘍の位置と、第4透視画像中の腫瘍の位置とがずれており、被検体に放射線ビームを照射しても、放射線治療を精度良く行うことができないと判定し、放射線ビームの照射を不許可とする。
【0098】
[3.本実施形態の効果]
以上説明したように、本実施形態に係る照射制御装置18、照射制御方法及び放射線治療システム10では、被検体に対する放射線治療の治療計画を治療計画装置12が立案する。また、放射線治療用リニアック14(放射線治療装置)は、回転軸を中心にガントリを回転させながら、回転軸上に位置する被検体に対してガントリに設けられた放射線ビーム源から放射線ビームを照射可能である。さらに、回転軸と略同軸に配置された透視画像生成装置16が被検体の透視画像を生成し、照射制御装置18が、治療計画及び透視画像に基づいて、放射線ビーム源から被検体への放射線ビームの照射を制御する。
【0099】
この場合、照射制御装置18は、第1受信部18a、第2受信部18b、DRR画像計算部18c、位置ずれ量計算部18d及び照射許可判定部18eを備える。第1受信部18aは、透視画像生成装置16からストリーミング出力された透視画像と、透視画像を生成した際のガントリの回転角度とを少なくとも受信する。第2受信部18bは、治療計画装置12から送信された被検体の特定の呼吸位相における治療計画用のCT画像とアイソセンタ座標とを受信する。DRR画像計算部18cは、CT画像及びアイソセンタ座標から被検体の回転角度毎のDRR画像を計算する。位置ずれ量計算部18dは、同一の回転角度の透視画像及びDRR画像を用いて、DRR画像中の被検体の横隔膜(横隔膜20)の位置を基準としたときの透視画像中の被検体の横隔膜(横隔膜22)の呼吸性の位置ずれ量を計算する。照射許可判定部18eは、位置ずれ量が第1所定値(所定値)以下であるときに、放射線ビーム源から被検体への放射線ビームの照射を許可する。
【0100】
また、放射線治療システム10は、上述の照射制御装置18を有する。
【0101】
さらに、照射制御方法は、第1~第5ステップを有する。第1ステップ(ステップS1)では、透視画像生成装置16からストリーミング出力された透視画像と、透視画像を生成した際のガントリの回転角度とを照射制御装置18の第1受信部18aが少なくとも受信する。第2ステップ(ステップS3)では、治療計画装置12から送信された被検体の特定の呼吸位相における治療計画用のCT画像とアイソセンタ座標とを照射制御装置18の第2受信部18bが受信する。第3ステップ(ステップS4)では、CT画像及びアイソセンタ座標から被検体の回転角度毎のDRR画像を照射制御装置18のDRR画像計算部18cが計算する。第4ステップ(ステップS5、S8、S9)では、同一の回転角度の透視画像及びDRR画像を用いて、DRR画像中の被検体の横隔膜の位置を基準としたときの透視画像中の被検体の横隔膜の呼吸性の位置ずれ量を照射制御装置18の位置ずれ量計算部18dが計算する。第5ステップ(ステップS6、ステップS10)では、位置ずれ量が第1所定値以下であるときに、放射線ビーム源から被検体への放射線ビームの照射を照射制御装置18の照射許可判定部18eが許可する。
【0102】
このように、同一のガントリの回転角度の透視画像及びDRR画像を用いて、DRR画像中の被検体の横隔膜の位置に対する透視画像中の横隔膜の呼吸性の位置ずれ量が計算され、位置ずれ量が第1所定値以下であれば、放射線ビーム源から被検体への放射線ビームの照射が許可される。これにより、人体の呼吸によって、腫瘍等の治療対象部分の位置が周期的に変動する場合でも、該治療対象部分に対して、放射線ビームを精度良く照射することができる。
【0103】
この場合、特定の呼吸位相が被検体の最大呼気又は最大吸気であればよい。これらの呼吸位相では、治療対象部分が一時的に停止する。これにより、治療対象部分に対する放射線ビームの照射をより精度良く行うことができる。
【0104】
また、位置ずれ量計算部18dは、位置ずれ量に応じた透視画像とDRR画像との正規化相関係数(R1又はR2)を計算する。照射許可判定部18eは、正規化相関係数の値が第1所定値に応じた第2所定値以上である場合、放射線ビーム源から被検体への放射線ビームの照射を許可する。これにより、位置ずれ量計算部18dでの計算処理が高速化すると共に、照射の許可の判定処理を精度良く行うことが可能となる。
【0105】
さらに、位置ずれ量計算部18dは、同一の回転角度の透視画像及びDRR画像に対して、横隔膜を含む単一の部分画像領域をそれぞれ選択し、選択した透視画像の部分画像領域とDRR画像の部分画像領域とについて、正規化相関係数を計算する。これにより、位置ずれ量計算部18dでの計算時間を一層高速化すると共に、呼吸性の位置ずれ量に応じた正規化相関係数の変化率を大きくすることができる。この結果、照射の許可の判定処理を正確に且つ効率よく行うことができる。
【0106】
ここで、第2具体例のように、位置ずれ量計算部18dは、第1受信部18aが受信した透視画像を第1透視画像とし、DRR画像計算部18cが計算したDRR画像を第1DRR画像とした場合に、(1)同一の回転角度の第1透視画像と第1DRR画像とについて、正規化相関係数を計算するか、(2)第1透視画像と同一の回転角度の第1DRR画像の各画素値から該各画素値の平均値を減算した第2DRR画像を生成し、第1透視画像と第2DRR画像とについて、正規化相関係数を計算するか、(3)第1DRR画像の各画素値を2~4のべき指数でべき乗した第3DRR画像を生成し、第1透視画像と第3DRR画像とについて、正規化相関係数を計算するか、又は、(4)第3DRR画像の各画素値から該各画素値の平均値を減算した第4DRR画像を生成し、第1透視画像と第4DRR画像とについて、正規化相関係数を計算すればよい。
【0107】
第2具体例において、位置ずれ量計算部18dは、第1DRR画像上で被検体の画像領域を頭方向に所定の間隔だけシフトするか、シフト後の第1DRR画像の各画素値から該各画素値の平均値を減算するか、シフト後の第1DRR画像の各画素値を2~4のべき指数でべき乗するか、又は、べき乗後の第1DRR画像の各画素値から該各画素値の平均値を減算することで、第5DRR画像を生成する。次に、位置ずれ量計算部18dは、第1DRR画像上で被検体の画像領域を足方向に所定の間隔だけシフトするか、シフト後の第1DRR画像の各画素値から該各画素値の平均値を減算するか、シフト後の第1DRR画像の各画素値を2~4のべき指数でべき乗するか、又は、べき乗後の第1DRR画像の各画素値から該各画素値の平均値を減算することで、第6DRR画像を生成する。次に、位置ずれ量計算部18dは、第1透視画像と、第1透視画像と同一の回転角度の第1~第4DRR画像のうち、いずれかのDRR画像、第5DRR画像及び第6DRR画像との間で、正規化相関係数をそれぞれ計算する。そして、照射許可判定部18eは、第1透視画像といずれかのDRR画像との正規化相関係数の値が、第1透視画像と第5DRR画像との正規化相関係数、及び、第1透視画像と第6DRR画像との正規化相関係数のそれぞれの値以上である場合、放射線ビーム源から被検体への放射線ビームの照射を許可する。
【0108】
また、第3具体例として、位置ずれ量計算部18dは、第1受信部18aが受信した透視画像を第1透視画像とし、DRR画像計算部18cが計算したDRR画像を第1DRR画像とした場合に、第1透視画像の各画素値から該各画素値の平均値を減算した第2透視画像を生成する。この場合、位置ずれ量計算部18dは、(1)第2透視画像と、第2透視画像と同一の回転角度の第1DRR画像とについて、正規化相関係数を計算するか、(2)第1DRR画像の各画素値から該各画素値の平均値を減算した第2DRR画像を生成し、第2透視画像と第2DRR画像とについて、正規化相関係数を計算するか、(3)第1DRR画像の各画素値を2~4のべき指数でべき乗した第3DRR画像を生成し、第2透視画像と第3DRR画像とについて、正規化相関係数を計算するか、又は、(4)第3DRR画像の各画素値から該各画素値の平均値を減算した第4DRR画像を生成し、第2透視画像と第4DRR画像とについて、正規化相関係数を計算する。
【0109】
第3具体例において、位置ずれ量計算部18dは、第1DRR画像上で被検体の画像領域を頭方向に所定の間隔だけシフトするか、シフト後の第1DRR画像の各画素値から該各画素値の平均値を減算するか、シフト後の第1DRR画像の各画素値を2~4のべき指数でべき乗するか、又は、べき乗後の第1DRR画像の各画素値から該各画素値の平均値を減算することで、第5DRR画像を生成する。次に、位置ずれ量計算部18dは、第1DRR画像上で被検体の画像領域を足方向に所定の間隔だけシフトするか、シフト後の第1DRR画像の各画素値から該各画素値の平均値を減算するか、シフト後の第1DRR画像の各画素値を2~4のべき指数でべき乗するか、又は、べき乗後の第1DRR画像の各画素値から該各画素値の平均値を減算することで、第6DRR画像を生成する。次に、位置ずれ量計算部18dは、第2透視画像と、第2透視画像と同一の回転角度の第1~第4DRR画像のうち、いずれかのDRR画像、第5DRR画像及び第6DRR画像との間で、正規化相関係数をそれぞれ計算する。そして、照射許可判定部18eは、第2透視画像といずれかのDRR画像との正規化相関係数の値が、第2透視画像と第5DRR画像との正規化相関係数、及び、第2透視画像と第6DRR画像との正規化相関係数のそれぞれの値以上である場合、放射線ビーム源から被検体への放射線ビームの照射を許可する。
【0110】
さらに、第4具体例として、位置ずれ量計算部18dは、第1受信部18aが受信した透視画像を第1透視画像とし、DRR画像計算部18cが計算したDRR画像を第1DRR画像とした場合に、第1透視画像の各画素値を2~4のべき指数でべき乗した第3透視画像を生成する。この場合、位置ずれ量計算部18dは、(1)第3透視画像と、第3透視画像と同一の回転角度の第1DRR画像とについて、正規化相関係数を計算するか、(2)第1DRR画像の各画素値から該各画素値の平均値を減算した第2DRR画像を生成し、第3透視画像と第2DRR画像とについて、正規化相関係数を計算するか、(3)第1DRR画像の各画素値を2~4のべき指数でべき乗した第3DRR画像を生成し、第3透視画像と第3DRR画像とについて、正規化相関係数を計算するか、又は、(4)第3DRR画像の各画素値から該各画素値の平均値を減算した第4DRR画像を生成し、第3透視画像と第4DRR画像とについて、正規化相関係数を計算する。
【0111】
第4具体例において、位置ずれ量計算部18dは、第1DRR画像上で被検体の画像領域を頭方向に所定の間隔だけシフトするか、シフト後の第1DRR画像の各画素値から該各画素値の平均値を減算するか、シフト後の第1DRR画像の各画素値を2~4のべき指数でべき乗するか、又は、べき乗後の第1DRR画像の各画素値から該各画素値の平均値を減算することで、第5DRR画像を生成する。次に、位置ずれ量計算部18dは、第1DRR画像上で被検体の画像領域を足方向に所定の間隔だけシフトするか、シフト後の第1DRR画像の各画素値から該各画素値の平均値を減算するか、シフト後の第1DRR画像の各画素値を2~4のべき指数でべき乗するか、又は、べき乗後の第1DRR画像の各画素値から該各画素値の平均値を減算することで、第6DRR画像を生成する。次に、位置ずれ量計算部18dは、第3透視画像と、第3透視画像と同一の回転角度の第1~第4DRR画像のうち、いずれかのDRR画像、第5DRR画像及び第6DRR画像との間で、正規化相関係数をそれぞれ計算する。そして、照射許可判定部18eは、第3透視画像といずれかのDRR画像との正規化相関係数の値が、第3透視画像と第5DRR画像との正規化相関係数、及び、第3透視画像と第6DRR画像との正規化相関係数のそれぞれの値以上である場合、放射線ビーム源から被検体への放射線ビームの照射を許可する。
【0112】
さらにまた、第5具体例として、位置ずれ量計算部18dは、第1受信部18aが受信した透視画像を第1透視画像とし、DRR画像計算部18cが計算したDRR画像を第1DRR画像とした場合に、第1透視画像の各画素値を2~4のべき指数でべき乗した第3透視画像を生成し、第3透視画像の各画素値から該各画素値の平均値を減算した第4透視画像を生成する。この場合、位置ずれ量計算部18dは、(1)第4透視画像と、第4透視画像と同一の回転角度の第1DRR画像とについて、正規化相関係数を計算するか、(2)第1DRR画像の各画素値から該各画素値の平均値を減算した第2DRR画像を生成し、第4透視画像と第2DRR画像とについて、正規化相関係数を計算するか、(3)第1DRR画像の各画素値を2~4のべき指数でべき乗した第3DRR画像を生成し、第4透視画像と第3DRR画像とについて、正規化相関係数を計算するか、又は、(4)第3DRR画像の各画素値から該各画素値の平均値を減算した第4DRR画像を生成し、第4透視画像と第4DRR画像とについて、正規化相関係数を計算する。
【0113】
第5具体例において、位置ずれ量計算部18dは、第1DRR画像上で被検体の画像領域を頭方向に所定の間隔だけシフトするか、シフト後の第1DRR画像の各画素値から該各画素値の平均値を減算するか、シフト後の第1DRR画像の各画素値を2~4のべき指数でべき乗するか、又は、べき乗後の第1DRR画像の各画素値から該各画素値の平均値を減算することで、第5DRR画像を生成する。次に、位置ずれ量計算部18dは、第1DRR画像上で被検体の画像領域を足方向に所定の間隔だけシフトするか、シフト後の第1DRR画像の各画素値から該各画素値の平均値を減算するか、シフト後の第1DRR画像の各画素値を2~4のべき指数でべき乗するか、又は、べき乗後の第1DRR画像の各画素値から該各画素値の平均値を減算することで、第6DRR画像を生成する。次に、位置ずれ量計算部18dは、第4透視画像と、第4透視画像と同一の回転角度の第1~第4DRR画像のうち、いずれかのDRR画像、第5DRR画像及び第6DRR画像との間で、正規化相関係数をそれぞれ計算する。そして、照射許可判定部18eは、第4透視画像といずれかのDRR画像との正規化相関係数の値が、第4透視画像と第5DRR画像との正規化相関係数、及び、第4透視画像と第6DRR画像との正規化相関係数のそれぞれの値以上である場合、放射線ビーム源から被検体への放射線ビームの照射を許可する。
【0114】
第2~第5具体例のいずれにおいても、変化率の大きな正規化相関係数を算出することが可能となる。これにより、照射の許可の判定処理を一層正確に且つ効率よく行うことができる。
【0115】
この場合、所定の間隔は、放射線ビームの照射マージンを考慮し、アイソセンタ面における被検体の解剖形状に対応して、5mm~20mmに設定すれば、被検体の腫瘍に対して放射線ビームを精度良く照射することが可能となる。
【0116】
また、透視画像生成装置16は、透視画像、回転角度、及び、透視画像生成装置16の重力による撓みを補正するための撓み補正量をストリーミング出力により第1受信部18aに送信する。第1受信部18aは、透視画像、回転角度及び撓み補正量を受信し、位置ずれ量計算部18dは、撓み補正量を用いて、透視画像中の被検体の横隔膜の位置を補正し、同一の回転角度のDRR画像と補正後の透視画像とを用いて、DRR画像中の被検体の横隔膜の位置を基準としたときの補正後の透視画像中の被検体の横隔膜の呼吸性の位置ずれ量を計算する。これにより、実際の透視画像と、該透視画像をシミュレーション計算したDRR画像とについて、横隔膜の位置を比較することが可能となる。
【0117】
また、第2受信部18bは、第1受信部18aが透視画像及び回転角度を受信する前に、CT画像及びアイソセンタ座標を受信するか、又は、第1受信部18aが透視画像及び回転角度を受信した後に、CT画像及びアイソセンタ座標を受信してもよい。いずれの場合でも、放射線ビームの照射を判定することが可能である。
【0118】
また、第1受信部18aは、透視画像生成装置16からギガビットイーサネットの回線を介して、透視画像及び回転角度を受信する。これにより、ストリーミング出力されるこれらの情報を略リアルタイムで受信することができる。
【0119】
また、第2受信部18bは、治療計画装置12からDICOM-RT規格のCT画像及びアイソセンタ座標のデータを受信する。これにより、既存の設備を利用して、CT画像及びアイソセンタ座標のデータを受信することができる。
【0120】
また、DRR画像計算部18cは、0.5°~5°の回転角度毎に、DRR画像を計算すればよい。これにより、ガントリの全ての角度に対して、例えば、1°間隔でDRR画像を生成し、これらのDRR画像を透視画像に対する参照画像として利用することができる。この結果、強度変調回転照射(VMAT)に適用した場合、反復息止め下であっても、放射線治療を精度よく実行することができる。
【0121】
なお、本発明は、上述の実施形態に限らず、この明細書の記載内容に基づき、種々の構成を採り得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0122】
10…放射線治療システム 12…治療計画装置
14…放射線治療用リニアック(放射線治療装置)
16…透視画像生成装置 18…照射制御装置
18a…第1受信部 18b…第2受信部
18c…DRR画像計算部 18d…位置ずれ量計算部
18e…照射許可判定部 20、22…横隔膜