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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022024411
(43)【公開日】2022-02-09
(54)【発明の名称】衝撃緩衝装置
(51)【国際特許分類】
   E01F 15/00 20060101AFI20220202BHJP
【FI】
E01F15/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020126991
(22)【出願日】2020-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】000161817
【氏名又は名称】ケイコン株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】505398952
【氏名又は名称】中日本高速道路株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100102255
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 誠次
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100198074
【弁理士】
【氏名又は名称】山村 昭裕
(74)【代理人】
【識別番号】100096013
【氏名又は名称】富田 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(72)【発明者】
【氏名】村上 国夫
(72)【発明者】
【氏名】山口 力
(72)【発明者】
【氏名】所司原 悟郎
(72)【発明者】
【氏名】細野 泰生
(72)【発明者】
【氏名】志村 泰広
(72)【発明者】
【氏名】吉野 友希
【テーマコード(参考)】
2D101
【Fターム(参考)】
2D101CA04
2D101CA06
2D101DA01
2D101DA04
2D101DA05
2D101DA06
2D101FA02
2D101FA13
2D101FB02
2D101GA11
(57)【要約】      (修正有)
【課題】車両が衝突したときの衝撃を低減できる衝撃緩衝装置を提供する。
【解決手段】車両の衝突時に屈曲することにより衝撃を吸収する衝撃吸収体13が、路面又はコンクリート製若しくは金属製の土台に、衝突車両の進行方向に並ぶように複数配置された衝撃緩衝装置1。衝突された衝撃吸収体は折れ曲がるので、衝突車両は、折れ曲がった衝撃吸収体を乗り越えて進み、衝突車両の進行方向に並ぶように複数配置された衝撃吸収体に次々と衝突して徐々に減速し停止するので、衝突車両及び運転者への衝撃を低減できる。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の衝突によって屈曲することにより衝撃を吸収する衝撃吸収体が、路面又はコンクリート製若しくは金属製の土台に、衝突車両の進行方向に並ぶように複数配置された衝撃緩衝装置。
【請求項2】
衝撃吸収体の形状がU字形状、棒形状、パイプ形状又は板形状であることを特徴とする請求項1記載の衝撃緩衝装置。
【請求項3】
衝撃吸収体の形状がU字形状であり、前記衝撃吸収体はU字形状の両端が下になり、前記両端を結ぶ線が衝撃緩衝装置の長手方向と傾きを有するように配置されたことを特徴とする請求項1又は2記載の衝撃緩衝装置。
【請求項4】
U字形状の両端の間隔が異なる複数のU字形状の衝撃吸収体が配置され、前記衝撃吸収体が配置された配列中に前方の衝撃吸収体の両端の間隔よりも後方の衝撃吸収体の両端の間隔の方が広い部分を含むことを特徴とする請求項3記載の衝撃緩衝装置。
【請求項5】
配列中に衝撃吸収体の両端の間隔が徐々に広がるように配列された部分を含むことを特徴とする請求項4記載の衝撃緩衝装置。
【請求項6】
平行な光を水平に衝撃緩衝装置の側面側から前記衝撃緩衝装置に照射したときの投影面積において、衝撃吸収体の投影面積の合計が、前記衝撃吸収体と衝撃吸収体との間隔の面積の合計以下である、通風構造を有することを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の衝撃緩衝装置。
【請求項7】
衝撃吸収体が、鋼製の棒から構成されていることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の衝撃緩衝装置。
【請求項8】
衝撃吸収体が、コンクリート製又は金属製の土台に、前記土台の長手方向に並ぶように複数固定され又は着脱自在に取り付けられ、防護柵の端部に設置又は連結されることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の衝撃緩衝装置。
【請求項9】
防護柵が、コンクリート製防護柵、ガードレール又はガードパイプであることを特徴とする請求項8記載の衝撃緩衝装置。
【請求項10】
衝撃吸収部、最終停止部及び連結端部を有し、
前記衝撃吸収部は、高さが前記連結端部より低く、前記衝撃吸収部の上方に延びるように配置された衝撃吸収体を長手方向に並ぶように複数備え、衝突車両が進行しながら前記衝撃吸収体と衝突する部分であり、
前記最終停止部は、前記衝撃吸収部の連結側の端部から前記防護柵の連結端部に向かって上方に傾斜し、前記衝撃吸収部で停止しない車両を停止させる部分であることを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載の衝撃緩衝装置。
【請求項11】
車両が衝撃緩衝装置に対して斜め又は横方向から衝突する場合に生じる前記衝撃緩衝装置を滑動させようとする力と転倒モーメントに抵抗する、隣接する防護柵との連結部を備えることを特徴とする請求項1~10のいずれか1項に記載の衝撃緩衝装置。
【請求項12】
衝撃吸収体の取付け部を有する衝撃吸収部、最終停止部及び連結端部を有する防護柵であって、
前記衝撃吸収体は、車両の衝突によって屈曲することにより衝撃を吸収する衝撃吸収体であり、
前記衝撃吸収部は、高さが前記連結端部より低く、前記衝撃吸収体を前記衝撃吸収部の上方に延びるように取り付けることができる前記取付け部を複数備え、前記衝撃吸収体を取り付けた後、衝突車両が進行しながら前記衝撃吸収体と衝突する部分であり、
前記最終停止部は、前記衝撃吸収部の連結側の端部から前記防護柵の連結端部に向かって上方に傾斜し、前記衝撃吸収部で停止しない車両を停止させる部分であり、
前記連結端部は、他の防護柵と連結される連結部を有する前記衝撃吸収体の取り付け可能な防護柵。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の衝突による衝撃を低減する衝撃緩衝装置及び防護柵に関する。
【背景技術】
【0002】
通行車両が事故やハンドル操作を誤って路外逸脱をすると、通行人や対面通行車両を巻き込んでの大事故に繋がる。これを防止するため、道路には側壁や防護柵が設けられているが、道路の分岐部や防護柵端部に通行車両が衝突すると車両が大破し大事故になることがあった(図1、2)。
【0003】
上記の事故を防ぐために、これまでは次に示す衝突車両の衝撃を和らげるための緩衝装置などが用いられてきた。緩衝装置は衝突車両の乗員に対する急激な衝撃を低減する機能が必要であり、例えば、特許文献1のように多数のパイプを収納したガード部材を設置し、車両の衝突によりこれが、アコーディオン状に圧縮されるものが使われているが、構造が複雑で高価であり、長手方向からの衝突には効果があるが側面からの衝突には弱く効果を発揮しない。また、図3に示すクッションドラムと呼ばれているものは、樹脂製で軽量なため円筒状の容器内に水を入れることにより風荷重対策を図っており、安価であるが衝撃に弱く安全性より視認性重視の商品である。
【0004】
図4は現在用いられている道路に恒久設置されているコンクリート製防護柵の断面図であり、現場打ちやプレキャストコンクリートのものがあり、舗装に100mmの根入れがある。図5は舗装上に置き式で設置されているプレキャストの防護柵である。図6はそれを横から見た側面図であり、ブロック長手方向に連続的強度を持たせるために防護柵上部にPC鋼より線を配しPC緊張により一体化している。一般の道路ではこの防護柵を隔てて左右を通行車両がそれぞれの走行方向に向き合って走行する。コンクリート製の防護柵は強度が高くいずれかを走行している車両がハンドル操作を誤ったりして反対側の車線に飛び出そうとしても、防護柵にさえぎられて、走行している路外に逸脱することはない。車線の分離帯でなく路側防護柵に衝突した場合にも、それ以上路外逸脱することはない。ところが道路の分岐部や工事中エリアを囲う仮設防護柵の端部では、車両が防護柵の両側を通行することとなるために防護柵端部が生じることとなり、そこへの車両の衝突が生じると大事故に繋がることになる(図1及び2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000-170131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、車両が衝突したときの衝撃を低減できる衝撃緩衝装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、道路の分岐部や車両用防護柵の端部に設置して、衝突車両への衝撃を低減できる衝撃緩衝装置の検討を開始した。検討を進めたところ、車両の衝突により屈曲する衝撃吸収体を衝突車両の進行方向に並べることにより、衝突車両への衝撃を低減しながら車両を停止させることができ、これを簡易な構造で実現できることを見いだした。また、この知見は、車両用防護柵の場合、端部に連結する防護柵の構造を変えることによっても適用できることを見いだした。本発明は、こうして完成したものである。本発明において、防護柵とは、ガードレール、ガードパイプ、ボックスビーム等のビーム型防護柵、ガードケーブル等のケーブル型防護柵、橋梁用ビーム型防護柵、コンクリート製防護柵、金属製防護柵などを含み、常設の防護柵及び仮設防護柵を含む。
【0008】
すなわち、本発明は以下に示す事項により特定されるものである。
(1)車両の衝突によって屈曲することにより衝撃を吸収する衝撃吸収体が、路面又はコンクリート製若しくは金属製の土台に、衝突車両の進行方向に並ぶように複数配置された衝撃緩衝装置。
(2)衝撃吸収体の形状がU字形状、棒形状、パイプ形状又は板形状であることを特徴とする上記(1)記載の衝撃緩衝装置。
(3)衝撃吸収体の形状がU字形状であり、前記衝撃吸収体はU字形状の両端が下になり、前記両端を結ぶ線が衝撃緩衝装置の長手方向と傾きを有するように配置されたことを特徴とする上記(1)又は(2)記載の衝撃緩衝装置。
(4)U字形状の両端の間隔が異なる複数のU字形状の衝撃吸収体が配置され、前記衝撃吸収体が配置された配列中に前方の衝撃吸収体の両端の間隔よりも後方の衝撃吸収体の両端の間隔の方が広い部分を含むことを特徴とする上記(3)記載の衝撃緩衝装置。
(5)配列中に衝撃吸収体の両端の間隔が徐々に広がるように配列された部分を含むことを特徴とする上記(4)記載の衝撃緩衝装置。
(6)平行な光を水平に衝撃緩衝装置の側面側から前記衝撃緩衝装置に照射したときの投影面積において、衝撃吸収体の投影面積の合計が、前記衝撃吸収体と衝撃吸収体との間隔の面積の合計以下である、通風構造を有することを特徴とする上記(1)~(5)のいずれか1つに記載の衝撃緩衝装置。
(7)衝撃吸収体が、鋼製の棒から構成されていることを特徴とする上記(1)~(6)のいずれか1つ項に記載の衝撃緩衝装置。
(8)衝撃吸収体が、コンクリート製又は金属製の土台に、前記土台の長手方向に並ぶように複数固定され又は着脱自在に取り付けられ、防護柵の端部に設置又は連結されることを特徴とする上記(1)~(7)のいずれか1つに記載の衝撃緩衝装置。
(9)防護柵が、コンクリート製防護柵、ガードレール又はガードパイプであることを特徴とする上記(8)記載の衝撃緩衝装置。
(10)衝撃吸収部、最終停止部及び連結端部を有し、前記衝撃吸収部は、高さが前記連結端部より低く、前記衝撃吸収部の上方に延びるように配置された衝撃吸収体を長手方向に並ぶように複数備え、衝突車両が進行しながら前記衝撃吸収体と衝突する部分であり、前記最終停止部は、前記衝撃吸収部の連結側の端部から前記防護柵の連結端部に向かって上方に傾斜し、前記衝撃吸収部で停止しない車両を停止させる部分であることを特徴とする上記(1)~(9)のいずれか1つに記載の衝撃緩衝装置。
(11)車両が衝撃緩衝装置に対して斜め又は横方向から衝突する場合に生じる前記衝撃緩衝装置を滑動させようとする力と転倒モーメントに抵抗する、隣接する防護柵との連結部を備えることを特徴とする上記(1)~(10)のいずれか1つに記載の衝撃緩衝装置。
(12)衝撃吸収体の取付け部を有する衝撃吸収部、最終停止部及び連結端部を有する防護柵であって、前記衝撃吸収体は、車両の衝突によって屈曲することにより衝撃を吸収する衝撃吸収体であり、前記衝撃吸収部は、高さが前記連結端部より低く、前記衝撃吸収体を前記衝撃吸収部の上方に延びるように取り付けることができる前記取付け部を複数備え、前記衝撃吸収体を取り付けた後、衝突車両が進行しながら前記衝撃吸収体と衝突する部分であり、前記最終停止部は、前記衝撃吸収部の連結側の端部から前記防護柵の連結端部に向かって上方に傾斜し、前記衝撃吸収部で停止しない車両を停止させる部分であり、前記連結端部は、他の防護柵と連結される連結部を有する前記衝撃吸収体取り付け可能な防護柵。
【発明の効果】
【0009】
本発明の衝撃緩衝装置は、車両が衝突したときの衝撃を低減でき、衝突車両の損壊及び運転者への傷害の程度を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、車両が道路の分岐部や車両用防護柵の端部へ衝突する状態を示す模式図である。
図2図2は、車両が車両用仮設防護柵の端部へ衝突する状態を示す模式図である。
図3図3は、従来の緩衝装置を示す図である。
図4図4は、従来の車両用防護柵(一部を路面に埋め込んで設置:根入れ式)の短手方向の断面を示す図である。
図5図5は、従来の車両用防護柵(路面に置いて設置:置き式)の短手方向の断面を示す図である。
図6図6は、従来の車両用防護柵の長手方向の面を見た図である。
図7図7(a)及び(b)は、本発明の衝撃緩衝装置の一実施形態を示す図である。
図8図8(a)は、図7の衝撃緩衝装置の短手方向断面を示す図であり、図8(b)は、衝撃緩衝装置に衝撃吸収体取付け部を設けるための部材の一例を裏返し方向から見た形状を示す図である。
図9図9は、本発明の防護柵である衝撃緩衝装置を車両用防護柵の端部に連結した状態を示す図である。
図10図10は、本発明における衝撃吸収体の一実施形態を示す模式図である。
図11図11は、本発明における衝撃吸収部の形状の一実施形態を示す模式図である。
図12図12は、本発明における衝撃吸収部の形状の一実施形態を示す模式図である。
図13図13は、本発明における衝撃吸収部の形状の一実施形態を示す模式図である。
図14図14(a)及び(b)は、従来の金属製の置き式車両用防護柵を示す図である。
図15図15は、本発明の衝撃緩衝装置の一実施形態を示す図である。
図16図16は、本発明の衝撃緩衝装置の一実施形態を示す図である。
図17図17は、図15及び16に示す衝撃緩衝装置を取り付けた例を示す図である。
図18図18(a)及び(b)は、従来の土台がコンクリート製である置き式車両用防護柵を示す図である。
図19図19は、本発明の衝撃緩衝装置の一実施形態を示す図である。
図20図20は、図19に示す衝撃緩衝装置を取り付けた例を示す図である。
図21図21は、本発明の衝撃緩衝装置の一実施形態を示す模式図である。
図22図22は、本発明の衝撃緩衝装置の一実施形態を示す図である。
図23図23は、本発明の衝撃緩衝装置の一実施形態を示す模式図である。
図24図24は、衝撃緩衝装置を設置した例を示す図であり、右側の図は図21、22又は23の衝撃緩衝装置を設置した例である。
図25図25は、本発明における投影面積の測定方法を示す図である。
図26図26は、本発明における投影像の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の衝撃緩衝装置は、車両の衝突によって屈曲することにより衝撃を吸収する衝撃吸収体が、路面又はコンクリート製若しくは金属製の土台に、衝突車両の進行方向に並ぶように複数配置される。衝撃吸収体の材質や形状は、車両の衝突によって屈曲することにより衝撃を吸収できるものであれば特に制限されないが、材質としては、例えば、金属、ゴム、樹脂等を挙げることができ、金属としては、例えば、鉄、鋼、鉄と他の金属元素との合金等を挙げることができる。形状としては、例えば、棒形状、パイプ形状、板形状、U字形状等を挙げることができる。棒形状の場合、その断面の形状は特に制限されず、例えば、円形、三角形、四角形、五角形等の多角形などを挙げることができる。本発明の衝撃緩衝装置では、衝突車両が衝撃吸収体と衝突して衝撃吸収体を屈曲させる。このとき、衝突車両の進行エネルギーの一部が消費される。衝突された衝撃吸収体は折れ曲がるので、衝突車両は、折れ曲がった衝撃吸収体を乗り越えて進み、衝突車両の進行方向に並ぶように複数配置された衝撃吸収体に次々と衝突して徐々に減速し停止する。このため、衝突車両及び運転者への衝撃を低減できる。ここで、屈曲及び折れ曲がるとは、衝撃吸収体が衝撃により曲がるが、破断しないことを意味する。衝撃吸収体が破断すると、断ち切れた部分が周囲に飛んで他の被害を引き起こすおそれがある。配置される衝撃吸収体の個数や並び方は特に制限されず、想定される衝突車両の速度、重量等と衝撃吸収体の強度等から適宜設定することができる。例えば、衝撃吸収体を1列に並べて配置する、衝撃吸収体を2列、3列等の複数列で並べて配置する、途中で列を増減させる等の配置の仕方を挙げることができる。本発明においては、衝撃緩衝装置を設置したときに、道路の分岐部や防護柵の端部等の衝撃緩衝装置がなければ車両が衝突してしまう対象と向き合う側の面を、衝撃緩衝装置の裏面といい、前記裏面と反対側の面を正面といい、前記正面から衝撃緩衝装置を見たときの左右の面を側面という。本発明における「衝突車両の進行方向に並ぶ」とは、車両は、衝撃吸収体の列の長手方向の端部に衝突して衝撃吸収体を屈曲させながら進行する場合だけでなく、衝撃吸収体の列の長手方向の端部から見て側面に斜め又は横方向から衝突して、衝撃吸収体を屈曲させながら進行する場合もあるため、衝撃吸収体の列の長手方向の端部が衝突車両に対して向かい合うように並ぶ場合だけでなく、衝撃吸収体の列の側面が衝突車両に対して向かい合うように並ぶ場合を含み、衝突車両が複数の衝撃吸収体に衝突するように並ぶ状態をいう。衝撃吸収体の高さは、衝突車両の前面に接触して衝突車両の運動エネルギーが十分に衝撃吸収体に伝わる高さであればよい。棒形状やU字形状の衝撃吸収体は、例えば、鋼製の棒を適宜切断する、又は円弧部ができるように曲げることにより簡易に作製できる。本発明の衝撃緩衝装置は、U字形状の衝撃吸収体のU字形状の両端が下になり、両端を結ぶ線が衝撃緩衝装置の長手方向と傾きを有するように配置されてもよい。両端を結ぶ線と衝撃緩衝装置の長手方向との傾きの角度は特に制限されないが、例えば、90°±45°、90°±30°、90°±10°、90°等を好適な例として挙げることができる。U字形状の衝撃吸収体の場合、U字形状の両端を結ぶ線に対して直角方向又は斜め方向から車両が衝突することにより、またU字形状の両端を結ぶ線の延長線方向から車両が衝突することにより、U字形状の衝撃吸収体が、車両の衝突側と反対側に折れ曲がり、衝突時の衝撃を吸収する。U字形状の両端を結ぶ線と直交する一方の側をU字形状の正面、他方の側を裏面、両端を結ぶ線の延長線側を側面という。U字形状の衝撃吸収体をU字形状の両端が下になるように取り付けることにより、衝撃吸収体の上側が円弧状となり、衝撃吸収体の端部の角が上側を向かなくなる。そのため、車両衝突時に運転者や同乗者が車外に放り出された場合でも、衝撃吸収体が刺さる等の衝撃吸収体と人との接触による怪我を防ぐことができる。本発明におけるU字形状とは、U字形状の両端間の幅(両端の間隔)が円弧部の幅と同じ形状、広い形状、狭い形状を含む。本発明の衝撃緩衝装置は、衝撃吸収体の取付け、取外しが可能な取付け部を備えていてもよい。
【0012】
本発明の衝撃緩衝装置では、全て同じ形状及び材質の衝撃吸収体を配置してもよく、異なる形状又は材質の衝撃吸収体を組み合わせて配置してもよい。衝撃吸収体を並べる距離や隣り合う衝撃吸収体の間隔も適宜設定することができる。衝撃吸収体の強度を高くするほど、また隣り合う衝撃吸収体と衝撃吸収体との間の間隔を狭くするほど、高速及び/又は高重量の衝突車両を停止させる効果が高くなる。ただし、この場合、低速及び/又は軽重量の衝突車両に対しては衝突による衝撃が強くなるので、例えば、前方に配置する衝撃吸収体、すなわち衝突車両が初期に衝突する衝撃吸収体については、強度を低くする及び/又は衝撃吸収体と衝撃吸収体との間の間隔を広くして、低速及び/又は軽重量の衝突車両への衝撃を低減しながら車両を停止させるようにし、その後方の衝撃吸収体については、強度を高くする及び/又は衝撃吸収体と衝撃吸収体との間の間隔を狭くして、前方に配置した衝撃吸収体で停止しない高速及び/又は高重量の衝突車両を停止させるようにしてもよい。
【0013】
本発明の衝撃緩衝装置の一実施形態として、衝撃吸収部、最終停止部及び連結端部を有し、前記衝撃吸収部は、高さが前記連結端部より低く、前記衝撃吸収部の上方に延びるように配置された衝撃吸収体を長手方向に並ぶように複数備え、衝突車両が進行しながら前記衝撃吸収体と衝突する部分であり、前記最終停止部は、前記衝撃吸収部の連結側の端部から前記衝撃緩衝装置の連結端部に向かって上方に傾斜し、前記衝撃吸収部で停止しない車両を停止させる部分である衝撃緩衝装置を挙げることができる。上記衝撃吸収体は、本発明における車両の衝突によって屈曲することにより衝撃を吸収する衝撃吸収体であり、衝撃吸収部の本体が、本発明におけるコンクリート製又は金属製の土台に相当する。上記衝撃緩衝装置は、防護柵と連結して使用され、複数が連結された防護柵において、その端部に使用される。上記衝撃緩衝装置自体を防護柵(端部に使用する防護柵)ということもできる。
【0014】
本発明の衝撃緩衝装置(防護柵)の一実施形態を図7に示す。図7に示す衝撃緩衝装置1は、本体部分をコンクリートで作製した例である。衝撃緩衝装置1は、衝撃吸収部10と最終停止部11を有し、衝撃吸収部10の高さh2は、他の防護柵と連結する側の衝撃緩衝装置1の端部である連結端部12の高さh1より低く、衝撃吸収部10は衝撃吸収体13を衝撃緩衝装置1の長手方向に並ぶように複数備え、衝撃吸収体13は、衝撃吸収部10の本体の上面に上方に延びるように取り付けられている。衝撃吸収部10の高さとは、取り付けられた衝撃吸収体13を含めた高さでなく、衝撃吸収部10の本体の高さである。衝撃吸収部10の本体の高さは、衝突した車両が衝撃吸収部10の上面に乗り上がる高さであれば特に制限されない。最終停止部11は、衝撃吸収部10の連結側の端部から連結端部12に向かって上方に傾斜している。防護柵1では、最終停止部11と連結端部12の間に平坦な部分があるが、最終停止部11は、連結端部12の位置まで傾斜していてもよい。衝撃吸収部10の連結側の端部と反対側の端部(以下、衝突側端部Eともいう。)又は衝突側端部Eから見て側面から衝突する衝突車両は、衝撃吸収部10の上面を衝撃吸収体13と衝突しながら進行し、徐々に速度を落として停止する。また、衝突車両が衝撃吸収部10で停止しない場合、衝突車両は最終停止部11の斜面に誘導されて上方に跳ね上がって停止する。斜面に誘導されて上方に跳ね上がることにより衝撃が吸収されるので、衝突車両や運転者に対する衝撃が低減される。衝撃緩衝装置1は、アンカー15の取付け部を有し、アンカー15で路面に固定されている。また、衝撃吸収部10の衝突側端部E付近には、表示板14のように注意を喚起する表示を設置してもよい。表示板14の支柱は、当然車両の衝突により屈曲するものである。衝撃緩衝装置1における衝撃吸収部10の上面は、衝撃吸収部10の下面と並行であるが、衝突車両の進行方向に向かって、すなわち連結側の端部に向かって傾斜していてもよい。衝撃吸収部10の衝突側端部Eの面は鉛直面でもよいが、衝突車両下部のバンパーが直接堅固なコンクリートに衝突するのを防止するために、最終停止部11の斜面と同様に傾斜面ESとしておくこともできる。また、衝撃吸収部10の側面Sに斜め方向又は横方向(側面に正対する方向)から衝突してくる衝突車両下部のバンパーが直接堅固なコンクリートに衝突するのを防止するために、衝撃吸収部10の側面Sを衝突側端部Eと同様に傾斜面としておくこともできる。
【0015】
本発明の防護柵では、衝撃吸収体の材質、形状、強度、個数、配列、間隔、並べる距離等は、想定される衝突車両の種類、速度、防護柵設置場所の広さ等の状態などに応じて適宜選択することができるが、衝撃緩衝装置1では、衝撃吸収体13として衝突側端部付近から直径32mmの鋼製の棒をU字形状に曲げたものを200mm間隔で6本、その後直径32mmの鋼製の棒をU字形状に曲げたものを200mm間隔で9本取り付けている。図7ではU字形状の鋼製の棒を用いており、直径32mmの鋼製の直線状の棒を、二本ずつ横に並べて200mm間隔で6列(12本)、さらに200mm間隔で9列(18本)配置する場合と同様の衝撃吸収力を有する。衝撃吸収体13の衝撃吸収部10の上面から上に出ている部分の長さは500mmである。衝突側端部側から6本(又は6列12本)の部分で時速65km/hで衝突してきた1t車までの車両を停止させ、次の9本(又は9列18本)の棒の部分で時速65km/hで衝突してきた2.5t車までの車両を停止させることが可能となる。使用する衝撃吸収体の強度や個数は、以下のように選択することができる。衝突車両の衝突直前のエネルギー(衝突エネルギー又は衝撃度)は、0.5×車両重量×衝突速度の2乗で表すことができる。あらかじめ、衝撃吸収体を並べて衝突実験を行い、前記衝突エネルギーを倒れた衝撃吸収体の数で除して、衝撃吸収体の1個当たりの耐力を算出する。上記で使用した直径32mmの鋼製の棒の場合(直線状の棒の場合)、13.8kJ/本であった。時速65km/hで衝突する1t車の衝突エネルギーは163kJであるので、これを1本当たりの耐力で除すと12本となる。また、時速65km/hで衝突する2.5t車の衝突エネルギーは408kJであるので、これを1本当たりの耐力で除すと30本(12本+18本)になる。したがって、直線状の棒を二本ずつ並べた場合は、6列+9列となり、U字形状の棒を用いた場合は、6本+9本となる。このように、衝撃吸収体の強度、個数等を調整することにより、異なる重量の車両を衝撃吸収部上で停止させることができる。また、前方に配置する衝撃吸収体、すなわち衝突車両が初期に衝突する衝撃吸収体については、後方に配置する衝撃吸収体よりも強度を低くし、又は衝撃吸収体間の間隔を広くして、低速及び/又は軽重量の衝突車両への衝撃を低減しながら車両を停止させるようにし、後方の衝撃吸収体については、前方に配置する衝撃吸収体よりも強度を高くし、又は衝撃吸収体間の間隔を狭くして、前方に配置した衝撃吸収体で停止しない高速及び/又は高重量の衝突車両を停止させるようにしてもよく、例えば、4t~10t車を停止させることができる。本発明の衝撃緩衝装置においては、衝撃吸収体の配列中で衝撃吸収体の種類及び/又は衝撃吸収体間の間隔を変えることにより、衝突車両の速度及び/又は重量にかかわらず衝突車両への衝撃を低減しながら衝突車両を停止させることができる。衝撃緩衝装置1では、衝撃吸収体13は衝撃吸収部10の本体の上面に取り付けられているが、側面に取り付けて、側面から衝撃吸収部10の上方に延びるようにしてもよい。本発明の衝撃緩衝装置の長さ(長手方向)、幅(短手方向)及び高さは特に制限されないが、防護柵の端部に使用する場合、一般的に使用される防護柵と大きさを合わせる観点から、例えば、衝撃緩衝装置1では、長さが4000mm、幅が550mm、連結端部12の高さh1が920mm、衝撃吸収部10の高さh2が230mmとなっている。衝撃吸収体として鋼製の棒を使用する場合、棒の直径は、例えば、10~50mmを挙げることができる。衝撃吸収部の長手方向の長さとしては、例えば、2~10mとすることができ、最終停止部の斜面の水平面に対する角度は、例えば、30~80°とすることができる。一般の防護柵では、衝撃吸収体を取り付ける位置や広さが限られるため、衝撃吸収体の構造を複雑にできないが、本発明における衝撃吸収体を使用した衝撃緩衝方法によると、限られた位置や広さでも多様な車種の衝撃を低減する効果に優れる。車両衝突時の乗員の安全性の基準として、防護柵の設置基準では車両の受ける加速度が規定されている。これは、乗員が衝突時に大きな加速度を受けて傷害を受けたり死亡したりしないためである。その値は、例えばSB種(強度280kJ以上、路側用の車両用防護柵)の剛性防護柵の場合は、200m/s/10ms(0.01秒間の平均加速度)未満である。これは、質量1tの車両が衝突速度100km/h、衝突角度20度で防護柵に衝突した場合の値である。簡易な試験方法として、重量の重い車両を低速で衝突角度90度で衝突させることにより同様の衝撃度を再現することができるが、29.8tのフォークリフトの先端に剛性の箱(車両の先端に相当)をとりつけ、衝突直前の速度12km/hで、直径32mmの鋼製の棒をU字形状に曲げたもの(衝撃吸収体)を200mm間隔で並べた衝撃緩衝装置に衝突させたところ、停止するのにかかった時間は1.9秒であった。これから平均加速度を求めると1.75m/sとなり、一般的な高速道路の防護柵で規定されている200m/sの114分の1であり、衝撃吸収体により乗員への衝撃が十分に緩衝され、衝突時の安全性が高いことがわかる。図7(b)は、図7(a)と同様の衝撃緩衝装置(ただし、衝撃吸収体が衝撃吸収部の上面から上に出ている部分の長さは690mm)を他の防護柵と連結した状態を示す模式図である。衝撃吸収体及び表示板の支柱については、衝撃吸収部の内部の様子が分かるように記載している。本発明の衝撃緩衝装置は、防護柵の端部に使用する場合、連結鋼材で防護柵本体と連結することにより、衝撃吸収部に斜め又は横方向から衝突されたときの転倒や滑動に対して、接続する防護柵本体の全体重量、アンカーの引き抜き抵抗力及びアンカーの剪断力、並びに根入れ部の滑動抵抗が利用できるので、転倒や滑動を低減又は防止できる。本発明の衝撃緩衝装置の一実施形態は、車両が衝撃緩衝装置に対して斜め又は横方向から衝突する場合に生じる衝撃緩衝装置を滑動させようとする力と転倒モーメントに抵抗する、隣接する防護柵との連結部を備える。
【0016】
図8(a)は、衝撃緩衝装置1の短手方向断面を示す図である。本発明の衝撃緩衝装置では、衝撃吸収体の取付け方法は特に制限されないが、衝撃緩衝装置1では、衝撃吸収部10に衝撃吸収体13を挿入するための挿入管17が埋め込まれている。挿入管17の上部は挿入管17の内径と同じ径の穴のあいた保護鋼板16と溶接され、保護鋼板16は衝撃吸収部10の上面に接するように設置されている。図8(a)の中央の図は、車両が衝撃緩衝装置1に対して斜め又は横方向から衝突した場合に、衝撃緩衝装置1が滑動しようとする状態を示す図であり、図8(a)の右側の図は、車両が衝撃緩衝装置1に対して斜め又は横方向から衝突した場合に、衝撃緩衝装置1が転倒しようとする状態を示す図である。本発明では連結鋼材で防護柵本体と連結することにより、接続する防護柵本体の全体重量、アンカーの引き抜き抵抗力及びアンカーの剪断力、並びに根入れ部の滑動抵抗が利用できるので、転倒や滑動を低減又は防止できる。図8(b)は、保護鋼板16と挿入管17を設置するための部材の一例を示す図であり、挿入管17の内径と同じ径の穴のあいた保護鋼板16に互いの穴部を合わせるように挿入管17を溶接し、挿入管17が傾かないようにベルト18で挿入管17の周囲を巻いた部材を、解かり易くするために反転させた図である。型枠に生コンクリートを流し込んで衝撃吸収部10を作成するときに、図8(b)の部材を挿入管17が下になるように生コンクリート中に設置して硬化させると、図8(a)の構造の衝撃吸収部10を作製することができる。挿入管17の内径は、衝撃吸収体13を挿入して固定できる大きさであれば特に制限されず、衝撃吸収体13が挿入管17の内側にほぼ接して固定される大きさでもよく、衝撃吸収体13と挿入管17の内側との間に隙間があり、必要に応じて隙間を砂、モルタル、ポリウレタン等の樹脂などで埋めて固定できる大きさでもよい。また、衝撃吸収体13と挿入管17の内側との間に隙間があっても、衝撃吸収体13が少しぐらつく程度であれば、必ずしも隙間を埋めなくてもよい。車両衝突時の衝撃吸収体13に対する衝撃は横方向であり、上方向にはほとんど作用しないため、衝突により衝撃吸収体13が抜ける可能性は少ない。また、保護鋼板16を挿入管17の上部に設置することにより、車両が衝撃吸収体13に衝突して衝撃吸収体13に横方向の力が加わったとき、挿入管17の周りのコンクリートが破損するのを防ぐことができる。衝撃吸収体の取付け及び取外しが容易な取付け部を衝撃吸収部に設けておくことにより、車両が衝突した場合、衝突により屈曲した衝撃吸収体を取り外して新たな衝撃吸収体を取り付けることにより、防護柵本体を交換することなく引き続き使用できる。
【0017】
本発明の一実施形態として、衝撃吸収体の着脱可能な防護柵であってもよい。前記防護柵は、衝撃吸収体の取付け部を有する衝撃吸収部、最終停止部及び連結端部を有する防護柵であって、前記衝撃吸収体は、車両の衝突によって屈曲することにより衝撃を吸収する衝撃吸収体であり、前記衝撃吸収部は、高さが前記連結端部より低く、前記衝撃吸収体を前記衝撃吸収部の上方に延びるように取り付けることができる前記取付け部を複数備え、前記衝撃吸収体を取り付けた後、衝突車両が進行しながら前記衝撃吸収体と衝突する部分であり、前記最終停止部は、前記衝撃吸収部の連結側の端部から前記防護柵の連結端部に向かって上方に傾斜し、前記衝撃吸収部で停止しない車両を停止させる部分である前記衝撃吸収体取り付け可能な防護柵である。このような防護柵は、現場での設置時に衝撃吸収体を取り付けることができ、また設置場所により取り付ける衝撃吸収体の種類を変えることができる。さらに、衝撃吸収体が屈曲しても新たな衝撃吸収体に交換して引き続き衝撃緩衝機能を有する防護柵として使用できる。
【0018】
図9は、衝撃緩衝装置1を設置した例を示す図である。通常の防護柵が連結され、その端部に衝撃緩衝装置1が連結端部12付近で連結板により連結されている。図9では、衝撃緩衝装置1の衝突側端部を低くして衝突車両が衝突側端部へ衝突するときの衝撃を低減し、衝撃吸収部10の上に誘導されやすくするために、衝撃緩衝装置1の下部を道路に埋設している。バンパー下面の高さは軽乗用車では約170mm、普通乗用車では約300mm、大型トラックでは約400mm程度であるため、防護柵を設置した状態での衝突側端部の路面からの高さを200mm以下、又は170mm以下とすれば、軽乗用車に対しても衝突側端部への衝突時の衝撃を低減できる。衝撃緩衝装置1では、衝撃吸収体13がU字形状をしているが、衝撃吸収体13の形状は特に制限されず、例えば、棒形状、パイプ形状、板形状等を挙げることができる。また、衝突時の衝撃吸収体の飛散を防止するために衝撃吸収体を紐、ワイヤー等で防護柵本体に固定してもよい。図9では、衝撃吸収体と衝撃吸収体の間をワイヤーでつなぎ、そのワイヤーを最終停止部の斜面に固定している。
【0019】
図10は衝撃吸収体の形状及び配列の他の実施形態を示す図である。図10の左側は衝撃緩衝装置2-1の短手方向の断面を示す図であり、棒形状又はパイプ形状の衝撃吸収体23-1が1本ずつ長手方向に並べられている。図10の右側は衝撃緩衝装置2-2の短手方向の断面を示す図であり、棒形状又はパイプ形状の衝撃吸収体23-2が2本ずつ長手方向に並べられている。図11~13は、衝撃吸収部の形状の他の実施形態を示す図である。図11の衝撃緩衝装置3では、衝撃吸収部10は2段の階段状になっている。図12の衝撃緩衝装置4では、衝撃吸収部10と最終停止部11とが階段状になっており、この場合、衝撃吸収体13が設置されている部分を衝撃吸収部10といい、それ以外の階段状の部分を最終停止部11という。本発明において、最終停止部11の傾斜とは階段状も含む。図13の衝撃緩衝装置5では、衝撃吸収部10と最終停止部11とが一連でスロープ状(連結端部に向かって上方に傾斜)になっており、この場合、衝撃吸収体13が設置されている部分を衝撃吸収部10といい、それ以外の部分を最終停止部11という。本発明の衝撃緩衝装置は工場で作製し(プレキャスト)、設置場所に搬入して設置してもよく、設置場所で現場打により型枠にコンクリートを流し込んで作製してもよい。
【0020】
本発明の衝撃緩衝装置の一実施形態は、U字形状の複数の衝撃吸収体が、コンクリート製又は金属製の土台に衝突車両の進行方向に並ぶように配置される。図14は、従来の上部がガードレール等で下部がH鋼の置き式金属製の防護柵を示す図であり、図14(a)は片面ビームタイプのガードレールを取り付けた例であり、図14(b)は両面ビームタイプのガードレールを取り付けた例である。図15はその端部に設置する本発明の衝撃緩衝装置の一実施形態を示す短手方向の断面図である。金属製の土台60、例えばH型鋼の上側内面にU字形状の衝撃吸収体63が溶接等により取り付けられ、衝撃吸収体63は長手方向に並ぶように取り付けられている。また、土台60はアンカー65で路面に固定されている。最終停止部は設けられていないが、それ以外の衝突車両を停止させる仕組みはコンクリート製の土台の場合と同様である。図16は、図15に示した衝撃緩衝装置の変形例を示す図である。図16(a)は、U字形状の衝撃吸収体63がH型鋼の外側に溶接等により取り付けられた例であり、図16(b)は、H型鋼の上側内面にさや管を溶接等で固定し、ここに衝撃吸収体63を挿入して取り付けることにより、衝突して折れ曲がっても取換え可能としたものである。図16(c)は、図16(b)のさや管の周囲にコンクリートを打設することにより、さや管周囲を更に堅固にすると共に、滑動や転倒への耐力を増加させるために重量も大きくしている。図17は、図15及び16の衝撃緩衝装置を図14の仮設防護柵に取り付けた状態を示す模式図である。図14の仮設防護柵下部のH鋼と図15及び16の衝撃緩衝装置の土台60とが連結鋼材で連結されている。図18は、上部がガードレール等で下部がコンクリート製のブロック等を基礎(土台)とした防護柵を示す図であり、図18(a)は片面ビームタイプのガードレールを取り付けた例であり、図18(b)は両面ビームタイプのガードレールを取り付けた例である。図19は、コンクリート製の土台にU字形状の衝撃吸収体を取り付けた衝撃緩衝装置の例である。図19の衝撃緩衝装置は、コンクリート製の土台にさや管を取り付け、そこに挿入することにより衝撃吸収体を取り付けている。図20は、図19の衝撃緩衝装置を図18の仮設防護柵に取り付けた状態を示す模式図である。図18の仮設防護柵下部のコンクリートブロックと図19の衝撃緩衝装置の土台とが連結鋼材で連結されている。このように、本発明の衝撃緩衝装置は、衝撃吸収体が、コンクリート製又は金属製の土台に、前記土台の長手方向に並ぶように複数固定され又は着脱自在に取り付けられ、防護柵の端部に設置又は連結される衝撃緩衝装置を含む。この場合、衝撃緩衝装置の土台がコンクリート製であり、このコンクリート製の土台と連結される防護柵が、コンクリート製防護柵あるいはガードレールやガードパイプであって土台がコンクリート製である場合、衝撃緩衝装置の土台が金属製であり、この金属製の土台と連結される防護柵が、金属製防護柵あるいはガードレールやガードパイプであって土台が金属製である場合、及び前記組み合わせの対象を交換した場合を含む。
【0021】
本発明の衝撃緩衝装置の一実施形態は、U字形状でU字形状の両端の間隔が異なる複数の衝撃吸収体が、コンクリート製又は金属製の土台に配列され、前記配列中に前方の衝撃吸収体におけるU字形状の両端の間隔(幅)よりも後方の衝撃吸収体におけるU字形状の両端の間隔(幅)の方が広い部分を含む。ここで、後方とは衝撃緩衝装置を設置するときに、道路の分岐部や防護柵の端部側に向ける方向をいい、前方とはその反対方向をいう。前方の衝撃吸収体の両端の間隔よりも後方の衝撃吸収体の両端の間隔の方が広いとは、必ずしも隣り合う衝撃吸収体との間でこの関係にある必要はなく、配列されている衝撃吸収体のいずれかがこの関係にあればよい。また、配列中に衝撃吸収体におけるU字形状の両端の間隔が徐々に広がるように配列された部分を含むことが好ましい。両端の間隔が徐々に広がるとは、隣り合う衝撃吸収体において前方の衝撃吸収体の両端の間隔よりも後方の衝撃吸収体の両端の間隔の方が広いことを意味する。このように配列された部分を含むとは、衝撃吸収体の配列中にこのように配列された部分があることを意味する。したがって、両端の間隔が徐々に広がる部分と、両端の間隔が変化しない部分や狭くなる部分が含まれていてもよい。また、両端の間隔が徐々に広がる部分だけで配列が構成されていてもよい。また、隣り合う衝撃吸収体と衝撃吸収体との間の距離(間隔)は、衝撃吸収体の配列中で同じでもよく、異なっていてもよい。衝撃緩衝装置1の場合と同様に、前方に配置する衝撃吸収体、すなわち衝突車両が初期に衝突する衝撃吸収体については、強度を低くする及び/又は衝撃吸収体と衝撃吸収体との間の間隔を広くして、低速及び/又は軽重量の衝突車両への衝撃を低減しながら車両を停止させるようにし、その後方の衝撃吸収体については、強度を高くする及び/又は衝撃吸収体と衝撃吸収体との間の間隔を狭くして、前方に配置した衝撃吸収体で停止しない高速及び/又は高重量の衝突車両を停止させるようにしてもよい。
【0022】
本実施形態の衝撃緩衝装置を、図21及び22を用いて説明する。図21及び22は、両端の間隔が徐々に広がる部分だけで配列が構成された例である。図21の左側の衝撃緩衝装置7は、上面の幅が徐々に広くなっている上面が略台形のコンクリート製の土台70の上面に、U字形状で両端の間隔が異なる複数の衝撃吸収体73がU字形状の両端を下にして、両端の間隔が徐々に広がるように並んで取り付けられている。そして、土台70はアンカー75により路面に固定される。図21の右側は、車両の運転者に注意を喚起するための表示をした覆いを衝撃緩衝装置7にかぶせるための覆いの図である。表示の内容は運転者の注意を喚起するものであれば特に制限されないが、例として覆い79は黄色地に黒のラインが入っている。図22の左側の衝撃緩衝装置8は、上面の幅が徐々に広くなっている上面が略台形のコンクリート製の土台80の上面に、U字形状で両端の間隔が異なる複数の衝撃吸収体83がU字形状の両端を下にして、両端の間隔が徐々に広がるように並んで取り付けられている。衝撃緩衝装置8は、図22の右側の図に示すように土台80を路面に埋め込むことにより道路上に固定される。また、図22の右側の図は、車両の運転者の注意を喚起するための黄色地に黒のラインの入った覆い89を衝撃緩衝装置8にかぶせた図である。図21及び22は、本発明の特徴部を説明するための図であり、衝撃緩衝装置7及び8は、衝撃吸収体73及び83の両端の間隔が広がる方向に更に伸びて、更に多くの個数の衝撃吸収体73及び83が並んでいてもよい。衝撃緩衝装置7及び8は、衝撃吸収体73及び83の前方(両端の間隔が狭い方)を車両が衝突してくる方向に向けることにより、衝撃吸収体73及び83が衝突車両の進行方向に並ぶ。衝撃緩衝装置7又は8に衝突した車両は、土台70又は80の上を衝撃吸収体73又は83を屈曲させながら進行して停止する。本実施形態の場合、衝撃吸収体の配列中に前方の衝撃吸収体の両端の間隔よりも後方の衝撃吸収体の両端の間隔の方が広い部分を含むため、あるいは衝撃緩衝装置7及び8のように衝撃吸収体73又は83の両端の幅が徐々に広くなっているため、衝撃緩衝装置に衝突した車両が直進せずに、進行方向が左右にずれた場合でも衝撃吸収体に衝突することができる。また、車両が衝撃緩衝装置の側面から斜め方向に衝突した場合でも、U字形状の衝撃吸収体の側面ではなく、正面方向から衝撃吸収体に衝突することができる。そのため、衝突車両の衝撃を効率よく低減できる。図21及び22は土台がコンクリート製の場合の例であるが、土台が金属製であってもよい。図23は、図21に示す衝撃緩衝装置7と同じ土台を使用し、衝撃吸収体の配列の仕方を変えた例である衝撃緩衝装置9を示す。衝撃緩衝装置9は、衝撃緩衝装置7と同じ形状の土台90を有し、土台90はアンカー95により路面に固定される。また、土台90にはU字形状の衝撃吸収体93が取り付けられている。衝撃緩衝装置7及び8では、U字形状の衝撃吸収体73及び83の正面が衝撃緩衝装置の前方を向いているが、衝撃緩衝装置9では、U字形状の衝撃吸収体93の側面が衝撃緩衝装置の前方を向いている。さらに、衝撃緩衝装置9では、上面の幅が徐々に広くなっている上面が略台形のコンクリート製の土台90の上面の端に沿って、衝撃吸収体93がU字形状の両端を結ぶ線が土台90の上面の端と略平行になるように並べられているので、衝撃緩衝装置に衝突した車両が直進せずに、進行方向が左右にずれた場合でも衝撃吸収体に衝突することができる。また、車両が衝撃緩衝装置の側面から斜め方向に衝突した場合でも、U字形状の衝撃吸収体の正面方向から衝撃吸収体に衝突することができる。そのため、衝突車両の衝撃を効率よく低減できる。衝撃緩衝装置9においても、衝撃緩衝装置7及び8と同様に車両の運転者に注意を喚起するための表示をした覆いをかぶせてもよい。また、図24は衝撃緩衝装置7、8又は9を設置した例を示す図である。高架橋分岐部の壁高欄に設置した例であり、衝撃緩衝装置の幅が一定の場合、衝撃緩衝装置を逸れた車両が壁高欄に衝突することがあるが(図24左側の図)、衝撃緩衝装置7、8又は9の場合、衝撃吸収体の幅が壁高欄の方向に向かって広がっているため、衝突車両を確実に衝撃吸収体に衝突させ(図24右側の図)、衝突車両や運転者への衝撃を低減することができる。
【0023】
本発明の衝撃緩衝装置の一実施形態は、平行な光を水平に衝撃緩衝装置の側面側から衝撃緩衝装置に照射したときの投影面積において、衝撃吸収体の投影面積の合計が、前記衝撃吸収体と衝撃吸収体との間隔の面積の合計以下である、通風構造を有する衝撃緩衝装置である。ここで、水平とは衝撃緩衝装置を路面に設置したときに路面に水平という意味である。また、衝撃緩衝装置の側面側からとは、衝撃緩衝装置を正面から見たときに90°横からという意味である。図25及び26を用いて説明する。図25の上の図は、図21の衝撃緩衝装置の図である。この衝撃緩衝装置に対して矢印の側面側から平行な光を照射する。図25の下の図に示されるように、光を照射する方向は衝撃緩衝装置を正面から見たときに90°横の方向からである。衝撃緩衝装置を挟んで光源と反対側に、路面に垂直で照射光に対して直交する面Pを置く。図26は、面Pに投影された像を示す図である。衝撃吸収体73の像の面積の合計、すなわち衝撃吸収体の投影面積の合計(図26の点線に囲まれた中の黒塗り部分の合計)が、衝撃吸収体と衝撃吸収体との間隔76の面積の合計(図26の点線に囲まれた中の白塗り部分の合計)以下である。図26における点線は、両端の衝撃吸収体像の外側側面と、各衝撃吸収体像の上端を結んだ線と、両端の衝撃吸収体像の間の土台上面とで囲まれる面を表す。また、衝撃吸収体と衝撃吸収体との間隔の面積とは、例えば、図23に示す衝撃緩衝装置のようにU字形状の衝撃吸収体が側面方向以外から投影される場合は、投影図におけるU字の内側の空間の面積を含む。衝撃吸収体このような構造とすることにより、横風を受けたときに衝撃吸収体と衝撃吸収体の間を風が通り抜けて風の抵抗が小さくなる。そのため、風が強い場所に衝撃緩衝装置を設置する場合や、台風等の暴風雨の場合でも衝撃緩衝装置の転倒や滑動のおそれが少なくなる。そのため、通常であればアンカー固定や重量を重くする対策が必要である場合でも、これらの対策を行わなくてもすむ、あるいはこれらの対策を軽減することが可能となる。また、この通風構造は、風だけでなく水に対しても抵抗を少なくできる。そのため、台風が来て波が高くなったときに越波してきた波による影響を受ける場所や、台風等により河川や排水溝から水があふれだした場合にも転倒や滑動のおそれを少なくできる。したがって、本発明における通風構造は通水構造としても働き、この観点からも上記同様にアンカー固定や重量を重くする対策をせずにすます、又は軽減することが可能となる。また、通風作用や通水作用をより向上させる観点から、側面側からの投影面積に加えてさらに、平行な光を水平に衝撃緩衝装置の正面側から衝撃緩衝装置に照射したときの投影面積において、衝撃吸収体の投影面積の合計が、前記衝撃吸収体と衝撃吸収体との間隔の面積の合計以下であることが好ましく、平行な光を水平に衝撃緩衝装置の側面側から正面側までのいずれから照射したときでも、衝撃吸収体の投影面積の合計が、前記衝撃吸収体と衝撃吸収体との間隔の面積の合計以下であることがより好ましい。このような構造であれば、風や水がどの方向から吹いてきても又は流れてきても、より優れた通風及び/又は通水効果を奏することができる。また、風や水の影響に備えて、注意喚起の覆いを取り外しできるようにし、越波や暴風雨等が予想される場合には、注意喚起の覆いを事前に取り外すようにすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明の衝撃緩衝装置は、衝突する車両及び運転者への衝撃を低減できるので、高速道路、バイパス道路、これらへのアプローチ道路、一般道路等の分岐部や、これらに設置する防護柵の端部に好適に利用することができる。特に、道路の分岐部や工事中エリアを囲う仮設防護柵の端部等に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0025】
1 衝撃緩衝装置
10 衝撃吸収部
11 最終停止部
12 連結端部
13 衝撃吸収体
14 注意喚起表示板
15 アンカー
16 保護鋼板
17 衝撃吸収体挿入管
18 ベルト
2-1 衝撃緩衝装置
23-1 衝撃吸収体
2-2 衝撃緩衝装置
23-2 衝撃吸収体
3 衝撃緩衝装置
4 衝撃緩衝装置
5 衝撃緩衝装置
6 衝撃緩衝装置
60 土台
63 衝撃吸収体
65 アンカー
7 衝撃緩衝装置
70 土台
73 衝撃吸収体
75 アンカー
76 衝撃吸収体と衝撃吸収体との間隔
79 覆い
8 衝撃緩衝装置
80 土台
83 衝撃吸収体
89 覆い
9 衝撃緩衝装置
90 土台
93 衝撃吸収体
95 アンカー
E 衝突側端部
ES 衝突側端部傾斜面
S 衝撃吸収部の側面
P 投影される面

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7a
図7b
図8a
図8b
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26