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▶ 株式会社リム精工の特許一覧

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  • 特開-眼鏡用フレーム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022024429
(43)【公開日】2022-02-09
(54)【発明の名称】眼鏡用フレーム
(51)【国際特許分類】
   G02C 1/00 20060101AFI20220202BHJP
【FI】
G02C1/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020127024
(22)【出願日】2020-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】592198378
【氏名又は名称】株式会社リム精工
(74)【代理人】
【識別番号】100087169
【弁理士】
【氏名又は名称】平崎 彦治
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 克彦
(57)【要約】      (修正有)
【課題】眼鏡用フレームを構成するリム、又はツルの表面に凹凸模様を設けて外観を装飾すると共に、リムに嵌るレンズに過度な負荷をかけることがない眼鏡用フレームを提供する。
【解決手段】金属製の眼鏡用フレームにおいて、レンズが嵌るリム2又はツルの表面に漆を塗布して漆層を形成したことを特徴とする眼鏡用フレームであって、外周面8に形成する凹凸はリム線を対を成す圧延ロールによって挟み込んで加工し、一定間隔をおいて細長いスリット溝11aを設けている。あるいはさらに凹凸模様として、外周面に凸条ラセンと凹状ラセンを交互に配列してラセン状を形成した。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の眼鏡用フレームにおいて、レンズが嵌るリム又はツルの表面に漆を塗布して漆層を形成したことを特徴とする眼鏡用フレーム。
【請求項2】
フレームの表面に凹凸模様を設け、該凹凸は線材を対を成す圧延ロールによって挟み込んで加工した請求項1記載の眼鏡用フレーム。
【請求項3】
上記凹凸模様として、所定の間隔をおいて形成される細長いスリット溝とした請求項2記載の眼鏡用フレーム。
【請求項4】
上記凹凸模様として、外周面に凸条ラセンと凹状ラセンを交互に配列してラセン状を形成した請求項2記載の眼鏡用フレーム。
【請求項5】
上記リム又はツルの表面に漆を塗布して漆層を形成し、上記凹凸による漆層の厚みによって異なる色彩を呈するようにした請求項1、請求項2、請求項3、又は請求項4記載の眼鏡用フレーム。
【請求項6】
上記リムの内周面に漆を塗布して漆層を形成し、レンズを凹溝に嵌めた場合にレンズ外周との間に漆層を介在するようにした請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、又は請求項5記載の眼鏡用フレーム。













【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は細い金属線材を用いて構成し、レンズに過度な応力をかけることなく、また、外観の向上を目的とする眼鏡用リム及びツルなどで構成する眼鏡用フレームに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一口にメガネ(眼鏡)と言ってもその形態は色々ある。図7は最も一般的なメガネフレ-ムであって、フロント部(イ)の両側には蝶番(ハ)、(ハ)を介してツル(ロ)、(ロ)が折畳み出来るように取付けられている。そして、上記フロント部(イ)は両リム(ニ)、(ニ)が連結部材(ホ)によって左右対称に連結され、またフロント部(イ)の両側にはツル(ロ)、(ロ)を連結するヨロイ(ヘ)、(ヘ)がロウ付けされている。
【0003】
ここで、上記リム(ニ)にはレンズ(ト)が嵌っているが、該リム(ニ)の内周には凹溝が連続して形成され、この凹溝にレンズ外周に形成している概略三角形断面の凸部が係合している。上記リム(ニ)の線材(リム線)は比較的太く成っていて、その為にフロント部(イ)の外観を損なう要素と成っている場合も少なくない。
【0004】
図8はナイロールフレームと称されるメガネフレームであって、レンズ(チ)の上側には金属製のハーフリム(リ)が用いられ、下側には水糸などで構成する高張力糸(ヌ)が設けられ、レンズ(チ)は該ハーフリム(リ)と高張力糸(ヌ)の組み合わせで保持される。概略半円弧状のハーフリム(リ)は前記図7で示したリム(ニ)と同じような太さのリム線であるが、レンズ下側は細い高張力糸(ヌ)にて保持され、該高張力糸(ヌ)はレンズ外周に設けた凹溝に嵌っていることで、スッキリして比較的好ましい外観とすることが出来る。フロント部(イ)の両側にはヨロイ(ル)がロウ付けされ、このヨロイ(ル)に継手を介してツルが折畳み出来るように取付けられている。
【0005】
さらに、図9は縁なしメガネと称されるもので、金属製のリムや高張力糸を用いないで構成している。すなわち、両レンズ(オ)、(オ)は中央の連結部材(ワ)に直接ネジ止めされて連結し、またレンズ外側にはヨロイ(カ)をネジ止めし、このヨロイ(カ)に継手を介してツルが折畳み出来るように取付けられている。
上記図7図8図9に示すメガネは一般的な形態であり、その為に実際には色々なデザインが施されている。
【0006】
メガネ(眼鏡)は顔に掛けるものであり、その為に外観が重要視されて従来から色々な装飾が施されてきている。
最も一般的な装飾手段としては、表面を塗装したり、印刷したり、又はフレームに宝石などの装飾部品を取付ける場合など色々知られている。
一方、メガネの外観を向上させるために、フレーム全体のデザインを工夫したり、またチタン合金から成る極めて細い線材を用いて構成することで外観の向上をもたらすことも可能である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、メガネフレームの外観を向上させる手段として従来から色々な方法が知られている。本発明は従来では知られていない方法にて外観を装飾すると共に、リムに嵌るレンズに過度な負荷をかけることがないように構成した眼鏡用リムやツルなどの金属部材で構成する眼鏡用フレームを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る眼鏡用フレームと成るリムは、その表面である正面、背面、又は外周面の少なくとも1面に模様を形成している。ただし、この模様は圧延加工で成形される凹凸模様であり、印刷や塗装で形成される平面的な模様ではない。本発明では具体的な加工方法に関しては限定しないが、一般的には外周面に凹凸を設けている圧延ロールにリム線材を挟み込むことでロール外周面の凹凸をリム線材に転写することで成形される。
【0009】
また、本発明の眼鏡用リム又はツルの表面には漆が塗布されて漆層が形成される。該漆層はリムやツル表面に形成される凹凸面に塗布されて、研ぎ出しにて形成される凹凸模様としての外観を呈することが出来る。すなわち、漆器に多用されている研ぎ出し模様に似かよった外観が形成される。
一方、レンズが嵌る内周面に塗布された漆層はレンズ外周との間に介在し、リムの締め付け力に基づいてレンズに働く応力が緩和される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の眼鏡用リム及びツルは細い金属製の線材を用いて曲げ成形したものであるが、表面には凹凸模様が形成され、従来の印刷などで形成される平面的な模様とは異なる装飾効果を得ることが出来る。そして、該凹凸模様は圧延ロールに挟み込んで加工されることで、簡単にしかも安く加工される。
そして、圧延ロールに挟み込んで成形される凹凸模様は削り出しではなく、一種の鍛造加工であってリム線及びツル線の強度は向上する。
また、リム及びツル表面に形成される凹凸模様と塗布される漆層が結合することで、独特の外観が形成され、眼鏡の外観・デザインの向上に大きな効果が得られる。
【0011】
例えば、表面に形成した凹凸面に塗布した漆は漆器で観られる研ぎ出し模様のごとき外観を呈することが出来る。特に、塗布したリム及びツルの外表面をバフ研磨することで、凸部が浮上して一種の研ぎ出し模様が出来上がる。
一方、リムの内周面に漆を塗布して漆層を設けるならば、リムとレンズとの間に漆層が介在し、この漆層はリムの締め付けでレンズに働く応力を緩和することが出来、レンズの割れや欠けを防止する効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】具体的なフロント部を示す正面図。
図2】リム(リム線)の拡大図。
図3】圧延ロールを示す具体例。
図4】リムの外周面に漆を塗布して漆層を形成した断面拡大図。
図5】リムの内周面に漆層を形成した断面拡大図。
図6】外周面をラセン状としたリムの正面図と断面図。
図7】リング体のリムを備えた従来の一般的なメガネフレーム。
図8】ナイロールメガネフレームを示す従来例。
図9】リムを用いない縁なしメガネ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は本発明の眼鏡用フレームを構成するフロント部を表している実施例である。同図の1はフロント部、2,2はリム、3は連結部材、4,4はヨロイを表しており、レンズ5が嵌る両リム2,2の外側にはツルが折畳み出来るように連結するヨロイ4,4をロウ付けしている。
この構造はメガネのフロント部形態として一般的なものであるが、外観を重視する眼鏡では上記リム2、連結部材3、及びヨロイ4の形状は一般にデザイン化されている。また、色々な装飾が施されている。
【0014】
上記リム2の場合、その表面に凹凸化した模様が形成され、また漆が塗布される。図2は上記リム2の一部拡大図を表している具体例であり、リム2は所定の断面を有す線材で、レンズ5が嵌るようにリング状に曲げ加工される。リム2は概略長方形断面を有し、レンズ5が嵌る内周面6には凹溝7が設けられ、また、外周面8、前面9、及び背面10には細長いスリット溝11a,11a・・・、11b,11b・・・が一定間隔で形成されている。
【0015】
図2のリム2の場合、外周面8、前面9、及び背面10にスリット溝11a,11a・・・、11b,11b・・・を形成しているが、必ずしも3面全てに設ける場合に限らず、少なくとも1面に形成する場合もある。そして、溝の形態はスリット溝でなくてもよく、円形溝、三角形溝、その他の形態であってもかまわない。
【0016】
ところで、上記リム2となる線材は圧延加工にて製作することが出来、該線材は対を成す複数のロール間を通過して薄くなる。この場合、幅寸法Mは殆ど変化しないが、厚さ寸法Tが減少し、その分は長さ方向に材料が流れて長くなる。
その為に、ロールを直接回転駆動する場合には薄くなる先端側の帯状線材の圧延速度が速くなることから、帯状線材の圧延速度を検出し、それに合ったロールの回転速度となるように制御される。
【0017】
また、帯状線材が薄くなる先端側では、一般的に外径の小さいロールが使用される為に、このロールの外径も考慮したロールの回転速度に設定されている。
図3は上記帯状線材を圧延する為に用いるロール12を示す具体例である。該ロール12は所定の外径を有し、中央部には凹溝13が全周にわたって形成され、この凹溝底14には複数の突条15,15・・・を一定間隔で突出して設けている。
そして、該ロール12と対を成す他のロールには突条15,15・・・がなく、リム2の内周面6の凹溝7を成形する為の山形をした凸部を凹溝底に設けている。
【0018】
上記凹溝13の幅は帯状線材(リム2)の巾寸法Mと同じとし、凹溝13の深さtは帯状線材(リム2)の厚さ寸法Tの1/2と成っている。該帯状線材を圧延する為に、2個のロールが対を成して配置し、帯状線材を上下で挟み込んで圧延すると共にスリット溝11a,11a・・・を加工する。この場合、図2に示す帯状線材の外周面8を加工するロール12は図3に示す突条15,15・・・が設けられ、内周面6に当たるロールには突条15,15・・・は有していない。
【0019】
凹溝13の深さは帯状線材の厚さTの約1/2と成っていて、対を成す両ロール間の隙間を通過することで、厚さTの帯状線材が圧延加工され、しかも帯状線材の外周面8にはスリット溝11a,11a・・・が成形される。ロール12の凹溝底14に設けている突条15,15・・・は帯状線材の外周面8に食い込んでスリット溝11a,11a・・・となる。すなわち、対を成す両ロール12,12の間を通過することで突条15.15・・・は帯状線材の外周面8に転写される。
【0020】
圧延装置の全体構造は、一段ロール、二段ロール、三段ロール、さらに必要な場合には他の複数ロールから成り、帯状線材は各ロールを通過することで、厚さは順次薄くなる。そして、帯状線材の外周面8に形成されるスリット溝11a,11a・・・は最後のロールを通過する際に加工することが出来る。
また、前面9、及び背面10に設けられるスリット溝11b,11b・・・は垂直に起立して配置される両ロールに挟み込んで加工することが出来る。
そして、細長いスリット溝でなく、他の形状を有す溝の場合も圧延ロールで挟み込んで加工することが可能である。
【0021】
スリット溝11a,11a・・・を加工したあとで帯状線材が薄くなる圧延加工を行うと、形成されたスリット溝11a,11a・・・が消える虞がある為に、スリット溝11a,11a・・・の加工は最後のロールにて行うことが好ましい。
ところで、本発明のリムは外周面8、前面9、背面10にスリット溝11a,11a・・・、11b,11b・・・を形成することで、リム2の表面に凹凸模様を簡単に形成することが出来る。そして、必要に応じて表面に漆を塗布して漆層を形成する。
【0022】
図4は前記図2に示すリム2の外周部を示す断面拡大図である。外周面8に塗布した漆16は漆層17を形成し、スリット溝11a,11a・・・における漆層17は厚く、外周面8での漆層17は薄く形成される。
このように形成される漆層17の深さの違いは色彩を異にして表現され、その為に鮮やかな模様として表現される。この色彩の違いに基づく模様は、漆器で多用される研ぎ出しにて形成される模様に相当する。勿論、外周面8の漆層をより薄くして色彩の違いを強調する為にバフ研磨することも好ましい。
【0023】
図5はリム2の内周面6に漆を塗布して漆層18を形成した場合の断面拡大図である。漆層18が形成されることで、リム内周面6とレンズ5との間には適度な厚さの漆層18が介在し、リム2の締め付けによって負荷する応力によってレンズ5が欠けたり、破損するといった事態を極力抑えることが出来る。
漆層18は塗料を塗布して形成される塗膜に比較して厚く形成することが出来、また漆層18は剥がれる虞もすくない安定して形成される。
ここで、内周面6に形成される漆層18はリング状リム2の全周ではなく、部分的に設けることでレンズ5の負担を抑制できる。
【0024】
図6はリム19を示す他の実施例であり、(a)は平面図、(b)は断面図を表している。該リム19はその外周面20がラセン状を成し、その為に凸条ラセン21と凹状ラセン22とが交互に配列し、内周面23にはレンズ5の外周が嵌るように凹溝24を有している。
該リム19は外周面20がラセン状を成しているが、2本の細い線材を撚ったものではなく、1本の線材を圧延加工でラセンを成形し、凸条ラセン21と凹状ラセン22とが交互に形成される。
【0025】
ところで、外周面20にラセン状を形成したリム19は、前記図1に示す眼鏡用リムとして使われる。リム19の外周面20に形成したラセンは1つのデザインとして眼鏡のフロント部1を装飾することが出来る。特に、外周面20に漆を塗布して漆層を設けるならば、漆層の厚みの変化に基づく色彩の濃淡が出来、装飾効果は大きく向上するようになる。
【符号の説明】
【0026】
1 フロント部
2 リム
3 連結部材
4 ヨロイ
5 レンズ
6 内周面
7 凹溝
8 外周面
9 前面
10 背面
11 スリット溝
12 ロール
13 凹溝
14 凹溝底
15 突条
16 漆
17 漆層
18 漆層
19 リム
20 外周面
21 凸条ラセン
22 凹状ラセン
23 内周面
24 凹溝



図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9