(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022024442
(43)【公開日】2022-02-09
(54)【発明の名称】可撓性ホース
(51)【国際特許分類】
B32B 1/08 20060101AFI20220202BHJP
F16L 11/10 20060101ALI20220202BHJP
B32B 27/40 20060101ALI20220202BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20220202BHJP
【FI】
B32B1/08
F16L11/10 B
B32B27/40
B32B27/30 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020127047
(22)【出願日】2020-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】000104906
【氏名又は名称】クラレプラスチックス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】木村 直也
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 秀和
【テーマコード(参考)】
3H111
4F100
【Fターム(参考)】
3H111AA02
3H111BA15
3H111BA25
3H111BA34
3H111CB03
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3H111DB11
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3H111DB15
3H111DB18
3H111EA04
4F100AK15B
4F100AK15D
4F100AK41A
4F100AK43C
4F100AK45A
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4F100DG01C
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4F100JK13D
4F100JL11
4F100YY00A
(57)【要約】 (修正有)
【課題】熱可塑性ポリウレタン組成物と硬質樹脂製の補強芯材や補強繊維との接着性に優れ、圧縮時の耐傷付き性に優れた産業用可撓性ホースの提供。
【解決手段】高分子ジオール単位、有機ジイソシアネート単位および鎖伸長剤単位からなる熱可塑性ポリウレタン組成物(A)を軟質管肉層とし、該管肉層上に硬質塩化ビニル樹脂からなる補強硬質芯材(B)を螺旋状に一体化した、以下(1)~(3)の要件を満たす可撓性ホース。(1)数平均分子量1,000~5,000のポリエステルジオール、および/またはポリカーボネートジオールと、数平均分子量500~4,000のポリエーテルジオールとのモル比90/10~10/90の範囲内の混合単位、(2)対数粘度(a)が0.5~1.5dl/gの範囲内である熱可塑性ポリウレタン組成物、(3)対数粘度(b)が0.4~1.4dl/gの範囲内である熱可塑性ポリウレタン組成物。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子ジオール単位、有機ジイソシアネート単位および鎖伸長剤単位からなり、JIS-A硬度が30~90の熱可塑性ポリウレタン組成物(A)を軟質管肉層とし、該管肉層上に硬質塩化ビニル樹脂からなる補強硬質芯材(B)を螺旋状に一体化した可撓性ホースであって、以下(1)~(3)の要件を満たす可撓性ホース。
(1)前記高分子ジオール単位が、数平均分子量1,000~5,000のポリエステルジオールおよび/またはポリカーボネートジオール、と数平均分子量500~4,000のポリエーテルジオールとのモル比90/10~10/90の範囲内の混合単位、
(2)N,N-ジメチルホルムアミド中に0.5g/dlの濃度となるように溶解させ室温下で24時間放置することによって得られた溶液についてウベローデ粘度管を用いて測定された対数粘度(a)が0.5~1.5dl/gの範囲内である熱可塑性ポリウレタン組成物、
(3)n-ブチルアミンを1重量%含むN,N-ジメチルホルムアミド溶液中に0.5g/dlの濃度となるように溶解させ室温下で24時間放置することによって得られた溶液についてウベローデ粘度管を用いて測定された対数粘度(b)が0.4~1.4dl/gの範囲内であり、且つ対数粘度(a)に対する対数粘度(b)の比率が0.80≦対数粘度(b)/対数粘度(a)≦0.95の範囲内である熱可塑性ポリウレタン組成物
【請求項2】
ホースを長さ方向に展開した際、内側の凸部頂点の繰り返し単位をX(mm)とした時、5mm≦X≦25mmであること、且つホース内側の凸部間の窪みの深度をZ(mm)とし、ホース内径をID(mm)とした時、0.003≦Z/ID≦0.05である請求項1に記載の可撓性ホース。
【請求項3】
内周面から順に熱可塑性ポリウレタン組成物(A)からなる軟質管肉層、繊維補強層(C)、熱可塑性ポリウレタン組成物(A)からなる軟質管肉層、または内周面から順に熱可塑性ポリウレタン組成物(A)からなる軟質管肉層、繊維補強層(C)、軟質塩化ビニル樹脂層(D)からなる積層構造体を含む請求項1~2のいずれか記載の可撓性ホース。
【請求項4】
熱可塑性ポリウレタン組成物(A)からなる軟質管肉層と、補強硬質芯材(B)または軟質塩化ビニル樹脂層(D)との180°剥離強度における最小値が25N/25mm以上である請求項1~3に記載の可撓性ホース。
【請求項5】
補強硬質芯材(B)間の長さをY(mm)とした時、上記した内側の凸部頂点の繰り返し単位X(mm)との関係が0.90≦X/Y≦1.10を満足する上記の可撓性ホース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟質管肉材にアロファネート結合で架橋された熱可塑性ポリウレタン組成物を使用した産業用可撓性ホースに関する。
本発明の産業用可撓性ホースは、従来の熱可塑性ポリウレタンを使用した柔軟性(可撓性)を有するホースと比較して、耐摩耗性、耐屈曲性、耐油性、耐加水分解性などの耐久性に優れる利点がある。また、本発明の産業用可撓性ホースは、ホースの端末に金具などの接続用部材につなげて使用した時、圧縮時の耐傷付き性に優れているので、亀裂などの不具合を生じ難い特徴も有する。
【背景技術】
【0002】
木くずや塵などの軽量の産業廃棄物を搬送する産業用可撓性ホースは、柔軟性(可撓性)、耐久性、そして、吸引時にホースが変形しない耐負圧性に優れるため、土木工事や農業分野などの集塵機に接続されて広く使用されている。一般的な当該ホースは、軟質管肉材にポリ塩化ビニルや合成ゴム、螺旋状の補強芯材に硬質樹脂や硬鋼線が使用されており、ホースの性能を更に向上させる技術が検討されている。
【0003】
特に土木工事や農業などの分野では、作業者の高齢化に伴う業務効率化や現場までのホースの搬送効率向上のため、柔軟で軽量なホースが要望されると同時に、ホースの交換頻度を少なくするため、優れた耐摩耗性や耐屈曲性などの耐久性が求められる。また、ホース敷設時やホース交換時は、作業者が任意の長さにホースを切断する必要があるため、ホースの補強芯材は硬鋼線でなく硬質樹脂であることが望まれる。
【0004】
例えば、特許文献1は、管肉材料に線状構造である熱可塑性ポリウレタンを使用した一般家庭用の電気掃除機ホース(クリーナーホース)に関する。当該ホースは保形性、取り扱い性、軽量性、耐摩耗性、ホース表面の非ベタツキ性に優れる特長を有している。一方、ホースの補強芯材にはポリウレタン樹脂で被覆された硬鋼線が使用されているため、前述のように作業者が任意の長さにホースを切断する際は、カッターナイフなどで軟質管肉材を切断した後、プライヤーやニッパーなどの所謂金属ワイヤーカッターで硬鋼線を切断する必要があり産業用途では適していない。
【0005】
特許文献2は、最内層をポリエーテル系熱可塑性ポリウレタン樹脂で形成し、ポリエステル系熱可塑性ポリウレタン樹脂からなる接着性中間樹脂層を介して、軟質塩化ビニル樹脂製の外層に接着一体化させた合成樹脂可撓管に関する。
一般的に、産業用可撓性ホースを土木工事や農業分野などで使用する場合、例えば、ホースの端末に金具などの接続用部材を金属製外筒部材で加締めたり、金属製バンドで止めたりして使用される。一般的に、ホースが金具などの接続用部材から脱離し難くするため、金具などのホース接続部には突起物が設けられており、その突起物はホース内面樹脂に食い込んでいる。しかし、金属接続部材の突起物がある部位は、金属製外筒部材の加締めや金属製バンドによりホース内面と外面から圧縮されており、多少なりとも傷が付く(クラックが入る)。この場合、ポリエーテル系熱可塑性ポリウレタン樹脂からなる最内層とポリエステル系熱可塑性ポリウレタン樹脂からなる接着性中間樹脂層を有する二層構造では、圧縮時の傷付き部より水が浸入することでポリエステル系熱可塑性ポリウレタン層の加水分解が促進されホースの耐久性が劣る。
【0006】
また、エーテル系熱可塑性ポリウレタンは塩化ビニル樹脂やポリエステル樹脂との熱融着性に乏しい。そのため、前述のようにホースを積層構造とする場合や、耐負圧性能の確保のために補強芯材や補強繊維をホースに設ける場合には、エステル系熱可塑性ポリウレタンなどの接着層が必要となり、耐久性の面で十分に満足である産業用可撓性ホースが得られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002-005347号公報
【特許文献2】特許第5031688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、水酸基とイソシアネート基とを反応させて得られる線状の熱可塑性ポリウレタンのウレタン結合に、更にイソシアネート基を反応させて得られるアロファネート結合で三次元網目を形成させることで、熱可塑性を失うことなく、成形加工性を保持しつつ、且つ柔軟性(可撓性)、および耐摩耗性、耐屈曲性、耐油性、耐加水分解性などの耐久性の双方に優れた熱可塑性ポリウレタン組成物を軟質管肉材に用いた産業用可撓性ホースを提供することにある。
さらに、本発明の目的は、上記した熱可塑性ポリウレタン組成物と硬質樹脂製の補強芯材や補強繊維との接着性に優れ、しかもホースの端末に金具などの接続用部材をつなげて使用しても亀裂などの不具合を生じ難い、圧縮時の耐傷付き性に優れた産業用可撓性ホースを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記の目的を達成すべく鋭意検討した結果、ホースの軟質管肉材にエーテル系熱可塑性ポリウレタンと、エステル系および/またはカーボネート系熱可塑性ポリウレタンとを特定の比率で混合し、さらにイソシアネート化合物を用いてアロファネート結合で高次元化させることで、柔軟性(可撓性)と耐久性の双方が著しく改善された産業用可撓性ホースを効率よく製造できることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明は、高分子ジオール単位、有機ジイソシアネート単位および鎖伸長剤単位からなり、JIS-A硬度が30~90の熱可塑性ポリウレタン組成物(A)を軟質管肉層とし、該管肉層上に硬質塩化ビニル樹脂からなる補強硬質芯材(B)を螺旋状に一体化した可撓性ホースであって、以下(1)~(3)の要件を満たす可撓性ホースである。
(1)前記高分子ジオール単位が、数平均分子量1,000~5,000のポリエステルジオールおよび/またはポリカーボネートジオール、と数平均分子量500~4,000のポリエーテルジオールとのモル比90/10~10/90の範囲内の混合単位、
(2)N,N-ジメチルホルムアミド中に0.5g/dlの濃度となるように溶解させ室温下で24時間放置することによって得られた溶液についてウベローデ粘度管を用いて測定された対数粘度(a)が0.5~1.5dl/gの範囲内である熱可塑性ポリウレタン組成物、
(3)n-ブチルアミンを1重量%含むN,N-ジメチルホルムアミド溶液中に0.5g/dlの濃度となるように溶解させ室温下で24時間放置することによって得られた溶液についてウベローデ粘度管を用いて測定された対数粘度(b)が0.4~1.4dl/gの範囲内であり、かつ対数粘度(a)に対する対数粘度(b)の比率が0.80≦対数粘度(b)/対数粘度(a)≦0.95の範囲内である熱可塑性ポリウレタン組成物。
【0011】
そして、本発明は、好ましくは、ホースを長さ方向に展開した際、内側の凸部頂点の繰り返し単位をX(mm)とした時、5mm≦X≦25mmであること、且つホース内側の凸部間の窪みの深度をZ(mm)とし、ホース内径をID(mm)とした時、0.003≦Z/ID≦0.05であることを特徴とする上記の可撓性ホースである。
【0012】
さらに、本発明は、内周面から順に熱可塑性ポリウレタン組成物(A)からなる軟質管肉層、繊維補強層(C)、熱可塑性ポリウレタン組成物(A)からなる軟質管肉層、補強硬質芯材(B)、または内周面から順に熱可塑性ポリウレタン組成物(A)からなる軟質管肉層、繊維補強層(C)、軟質塩化ビニル樹脂層(D)、補強硬質芯材(B)からなる積層構造体を含む上記の可撓性ホースを好ましい形態として含む。
【0013】
また、本発明は、より好ましくは、熱可塑性ポリウレタン組成物(A)からなる軟質管肉層と、補強硬質芯材(B)または軟質塩化ビニル樹脂層(D)との180°剥離強度における最小値が25N/25mm以上であることを満足する上記の可撓性ホースである。
【0014】
さらに好ましくは、補強硬質芯材(B)間の長さをY(mm)とした時、上記した内側の凸部頂点の繰り返し単位X(mm)との関係が0.90≦X/Y≦1.10を満足する上記の可撓性ホースである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の可撓性ホースは、柔軟性(可撓性)、および、耐摩耗性、耐屈曲性、耐油性、耐加水分解性などの耐久性の両立が著しく改善され、吸引時にホースが変形しない耐負圧性能にも優れている。さらに、本発明の可撓性ホースを用いれば、ホースの端末に金具などの接続用部材をつなげて使用しても亀裂などの不具合を生じ難く、圧縮時の耐傷付き性にも優れる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1に本発明の一実施態様例を表す可撓性ホースの全体図と一部断面模式図を示す。本発明の可撓性ホースは、
図1(
図2;
図1の拡大断面)に示す軟質管肉層が熱可塑性ポリウレタン組成物(A)の単一構造、または
図3に示す、内周面から順に熱可塑性ポリウレタン組成物(A)、繊維補強層(C)、熱可塑性ポリウレタン組成物(A)または軟質塩化ビニル樹脂層(D)からなる積層成形体である。以下に熱可塑性ポリウレタン組成物(A)、補強硬質芯材(B)、繊維補強層(C)、軟質塩化ビニル樹脂層(D)について詳細に説明する。
【0017】
[熱可塑性ポリウレタン組成物(A)]
本発明の熱可塑性ポリウレタン組成物(A)は、高分子ジオール単位、有機ジイソシアネート単位、および鎖伸長剤単位から構成される。熱可塑性ポリウレタン組成物(A)を構成する高分子ジオール単位は、ポリエステルジオールおよび/またはポリカーボネートジオール、とポリエーテルジオールから構成される。
【0018】
上記のポリエステルジオールは、例えば、常法に従い、ジオールとジカルボン酸またはそのエステル、酸無水物などのエステル形成誘導体とを直接エステル化反応、もしくはエステル交換反応に付すか、またはジオールなどを開始剤としてラクトンを開環重合することにより製造することができる。
【0019】
ポリエステルジオールを構成するジオールとしては、ポリエステルの製造において一般的に使用されているものを用いることができ、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2-メチル-1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、2-メチル-1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオールなどの炭素数2~10の脂肪族ジオール;1,4-シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ジメチルシクロオクタンジメタノールなどの脂環式ジオール;1,4-ビス(β-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンなどの芳香族二価アルコールなどが挙げられる。これらのジオールは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、2-メチル-1,4-ブタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオールなどのメチル基を側鎖として有する炭素数5~10の脂肪族ジオールを用いるのが好ましい。
【0020】
ポリエステルジオールを構成するジカルボン酸としては、ポリエステルの製造において一般的に使用されているものを用いることができ、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、メチルコハク酸、2-メチルグルタル酸、3-メチルグルタル酸、2-メチルオクタン二酸などの炭素数4~12の脂肪族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸などが挙げられる。これらのジカルボン酸は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、炭素数6~12の脂肪族ジカルボン酸を使用するのが好ましく、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸を使用するのがより好ましい。
【0021】
前記のラクトンとしては、例えば、ε-カプロラクトン、β-メチル-δ―バレロラクトンなどを挙げることができる。
【0022】
ポリカーボネートジオールとしては、例えば、ジオールとジアルキルカーボネート、アルキレンカーボネート、ジアリールカーボネートなどのカーボネート化合物との反応により得られるものを使用できる。ポリカーボネートジオールを構成するジオールとしては、ポリエステルジオールの構成成分として先に例示したジオールを用いることができる。また、ジアルキルカーボネートとしてはジメチルカーボネート、ジエチレンカーボネートなどが挙げられる。さらに、アルキレンカーボネートとしてはエチレンカーボネートなどが挙げられ、ジアリールカーボネートとしてはジフェニルカーボネートなどが挙げられる。
【0023】
ポリエステルジオールおよびポリカーボネートジオールとしては、ポリエステルジオールとポリカーボネートジオールとを併用してもよいし、ポリエステルポリカーボネートジオールとして使用してもよい。
このポリエステルポリカーボネートジオールは、例えば、ジオール、ジカルボン酸およびカーボネート化合物を同時に反応させることにより得られる。あるいは、予め上記した方法によりポリエステルジオールおよびポリカーボネートジオールをそれぞれ合成し、次いでそれらをカーボネート化合物と反応させるか、またはジオールおよびジカルボン酸と反応させることによって得られる。
【0024】
ポリエステルジオールおよび/またはポリカーボネートジオールの数平均分子量は1,000~5,000であり、1,200~4,500であるのが好ましく、1,500~4,000であるのがさらに好ましい。この範囲内の数平均分子量を有する高分子ジオール単位を用いることにより、ホースを効率よく製造するための熱可塑性ポリウレタン組成物の溶融成形性とホースの柔軟性(可撓性)がより優れたものとなる。なお、本明細書でいう高分子ジオールの数平均分子量は、JIS K-1577に準拠して測定した水酸基価に基づいて算出した数平均分子量である。
【0025】
上記のポリエーテルジオールの例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリ(メチルテトラメチレングリコール)などを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。これらの中でも、ポリテトラメチレングリコールが好ましく用いられる。
【0026】
ポリエーテルジオールの数平均分子量は500~4,000であり、750~3,500であるのが好ましく、1,000~3,000であるのがさらに好ましい。この範囲内の数平均分子量を有する高分子ジオール単位を用いることにより、ホースを効率よく製造するための熱可塑性ポリウレタン組成物の溶融成形性とホースの柔軟性(可撓性)がより優れたものとなる。なお、本明細書でいう高分子ジオールの数平均分子量は、JIS K-1577に準拠して測定した水酸基価に基づいて算出した数平均分子量である。
【0027】
高分子ジオール単位を構成する(ポリエステルジオールおよび/またはポリカーボネートジオール)とポリエーテルジオールの混合割合はモル比90/10~10/90の範囲内であることが必要であり、モル比85/15~15/85であるのが好ましく、モル比80/20~20/80であるのがより好ましい。ポリエステルジオールおよび/またはポリカーボネートジオールの割合が90モル%を超える場合は耐加水分解性などの耐久性に劣り、ポリエーテルジオールの割合が90モル%を超える場合は硬質塩化ビニル樹脂からなる補強硬質芯材や軟質塩化ビニル樹脂層との接着性に劣る。
【0028】
熱可塑性ポリウレタン組成物(A)の製造に用いられる有機ジイソシアネート単位を構成する有機ジイソシアネートとしては特に制限はなく、通常の熱可塑性ポリウレタンの製造に従来から使用されている有機ジイソシアネートのいずれを使用してもよく、例えば、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、1,3-または1,4-ビス(イソシアネートメチル)ベンゼン、1,3-または1,4-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの芳香族、脂環族または脂肪族ジイソシアネートが挙げられる。これらの有機ジイソシアネートは単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。好適には4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートが用いられる。
【0029】
熱可塑性ポリウレタン組成物(A)の製造に用いられる鎖延長剤単位を構成する鎖伸長剤としては特に制限はなく、通常の熱可塑性ポリウレタンの製造に従来から使用されている鎖伸長剤のいずれを使用してもよく、イソシアネート基と反応し得る活性水素原子を分子内に2個有する分子量300以下の低分子化合物を用いるのが好ましい。例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、ジエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-ビス(β-ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4-シクロヘキサンジオール、ビス(β-ヒドロキシエチル)テレフタレート、キシリレングリコールなどのジオール類;ヒドラジン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、イソホロンジアミン、フェニレンジアミン、トリレンジアミンなどのジアミン類;アミノエチルアルコールなどのアミノアルコール類などが挙げられる。これらの低分子化合物は単独で使用してもよいし、2種以上を併用することができる。これらの中でも炭素数2~10の脂肪族ジオールを用いるのが好ましく、1.4-ブタンジオールを用いるのがより好ましい。
【0030】
前記の高分子ポリオール、有機ジイソシアネートおよび鎖伸長剤とを反応させて熱可塑性ポリウレタン組成物(A)を製造するに当たり、各成分の混合比率は、目的とする熱可塑性ポリウレタン組成物に付与すべき硬度や対数粘度などを考慮して適宜決定されるが、高分子ジオールと鎖伸長剤とが有している活性水素原子1モルに対して、有機ジイソシアネートに含まれるイソシアネート基が0.9~1.2モルとなるような割合で各成分を使用することが好ましい。上記の割合で各成分を使用することにより、ホースを効率よく製造するための熱可塑性ポリウレタン組成物の溶融成形性、ホースの柔軟性(可撓性)、耐久性、耐負圧性などにより優れた可撓性ホースが得られるので好ましい。
【0031】
熱可塑性ポリウレタン組成物(A)の製造方法は特に制限されず、前記の高分子ジオール、有機ジイソシアネートおよび鎖伸長剤とを使用して、公知のウレタン化反応技術を利用して、プレポリマー法およびワンショット法のいずれで製造してもよい。これらの中でも、実質的に溶剤の不存在下に溶融重合することが好ましく、特に多軸スクリュー型押出機を用いる連続溶融重合法を採用するのがより好ましく、また、ウレタン化反応がある程度進行した後に有機ジイソシアネートを加えて反応させるプレポリマー法を採用するのがさらに好ましい。
【0032】
熱可塑性ポリウレタン組成物(A)を製造する場合、必要に応じて高分子ジオールと鎖伸長剤とが有している活性水素原子と有機ジイソシアネートに含まれるイソシアネート基との反応を促進する適当な触媒を用いてもよい。
【0033】
熱可塑性ポリウレタン組成物(A)には、目的に応じて、着色剤、充填剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの各種添加剤を本発明の効果が阻害されない範囲で添加してもよい。
【0034】
熱可塑性ポリウレタン組成物(A)のJIS A硬度は、ホースの操作性の観点から30~90の範囲であり、45~80の範囲であることがより好ましく、55~65の範囲であることがさらに好ましい。JIS A硬度が30未満であると、ホースを効率よく製造するための熱可塑性ポリウレタン組成物の溶融成形性が低下すると共に、得られたホースの使用に際して十分な耐摩耗性が発現できないことなどの問題があり、一方、90より大きいとホースの柔軟性が損なわれ、操作性が低下するため不適である。なお、本明細書でいう熱可塑性ポリウレタン組成物(A)のJIS A硬度は、JIS K-6301に準拠して測定した値である。
【0035】
本発明者らは、本発明を完成させる過程において、軟質管内層を形成する熱可塑ポリウレタン組成物自体の分子量、即ち、対数粘度(a)と軟質管内層を形成する熱可塑性ポリウレタン組成物からアロファネート結合による架橋点のみをアミン分解(参考文献;日本レオロジー学会誌 Vol.17(1989年)77項~85項)して得られた線状の熱可塑性ポリウレタン組成物の分子量、即ち、対数粘度(b)、並びに、対数粘度(a)に対する対数粘度(b)の比率の3つの因子が、本発明にとって重要な因子であることを見出し、本発明を完成させた。
【0036】
熱可塑性ポリウレタン組成物(A)の対数粘度(a)は、N,N-ジメチルホルムアミドに、熱可塑性ポリウレタン組成物(A)を0.5g/dlの濃度となるように溶解し、室温下で24時間放置することによって得られた溶液についてウベローデ粘度管を用いて測定した時に、0.5~1.5dl/gであり、0.6~1.3dl/gであるのがより好ましく、0.7~1.1dl/gであるのがさらに好ましい。また、熱可塑性ポリウレタン組成物(A)の対数粘度(b)は、n-ブチルアミンを1重量%含むN,N-ジメチルホルムアミド溶液に、熱可塑性ポリウレタン組成物(A)を0.5g/dlの濃度となるように溶解し、室温下で24時間放置することによって得られた溶液についてウベローデ粘度管を用いて測定した時に、0.4~1.4dl/gであり、0.5~1.2dl/gであるのがより好ましく、0.6~1.0dl/gであるのがさらに好ましい。
【0037】
熱可塑性ポリウレタン組成物(A)の対数粘度(a)に対する対数粘度(b)の比率(対数粘度(b)/対数粘度(a))は、0.80~0.95の範囲内であることが必要であり、0.80~0.93の範囲内であることが好ましい。上記の範囲の対数粘度(a)、対数粘度(b)および対数粘度比率(対数粘度(b)/対数粘度(a))を有する熱可塑性ポリウレタン組成物(A)を用いると、ホースを効率よく製造するための熱可塑性ポリウレタン組成物の溶融成形性、ホースの柔軟性(可撓性)、耐久性、耐負圧性などにより優れた可撓性ホースが得られる。
【0038】
本発明の可撓性ホースは、熱可塑性ポリウレタン組成物(A)からなる軟質管肉層と補強樹脂芯材(B)の複合構造である。本発明の可撓性ホースは、好ましい構造として、内周面から順に、熱可塑性ポリウレタン組成物(A)からなる軟質管肉層、繊維補強層(C)、熱可塑性ポリウレタン組成物(A)からなる軟質管肉層で構成される積層構造体と補強樹脂芯材(B)の複合構造、あるいは、内周面から順に、熱可塑性ポリウレタン組成物(A)からなる軟質管肉層、繊維補強層(C)、軟質塩化ビニル樹脂層(D)からなる積層構造体と補強樹脂芯材(B)の複合構造を包含する。
【0039】
熱可塑性ポリウレタン組成物(A)からなる軟質管肉層と、補強硬質芯材(B)または、軟質塩化ビニル樹脂層(D)との180°剥離強度における最小値が25N/25mm以上であることが好ましい。当該剥離強度が25N/25mm未満である場合、ホースが熱可塑性ポリウレタン組成物(A)からなる軟質管肉層と補強樹脂芯材(B)の単一構造、あるいは、内周面から順に、熱可塑性ポリウレタン組成物(A)からなる軟質管肉層、繊維補強層(C)、熱可塑性ポリウレタン組成物(A)からなる軟質管肉層で構成される積層構造体と補強樹脂芯材(B)の複合構造ならばホースが耐屈曲性能に劣り、内周面から順に、熱可塑性ポリウレタン組成物(A)からなる軟質管肉層、繊維補強層(C)、軟質塩化ビニル樹脂層(D)からなる積層構造体と補強樹脂芯材(B)の複合構造ならばホースの耐久性が劣るため適切でない。
【0040】
[ホース内周面の凹凸形状]
本発明の可撓性ホースは、長さ方向に展開した際、以下の(1)および(2)の条件を満たすものが流体搬送時の圧力損失を低減できる観点から好適である。
(1)ホースの長さ方向に展開した際、内周面の凸部頂点の繰り返し単位をX(mm)とした時、5mm≦X≦25mmである。
(2)ホース内周面の凸部間の窪みの深度をZ(mm)とし、ホース内径をID(mm)とした時、0.003≦Z/ID≦0.05である。
【0041】
内周面の凸部頂点の繰り返し単位X(mm)は、5mm≦X≦25mmの等間隔で構成されていることが好ましい。そして、内周面の凸部頂点の繰り返し単位X(mm)は、ホース内径ID(mm)の大きさによって上記した範囲で適切な値をとることができる。例えば、ホース内径ID(mm)が25mmの時には繰り返し単位X(mm)は5~8mmの範囲が好適であり、50mmの時には繰り返し単位X(mm)は9~12mmの範囲が好適であり、75mmならば繰り返し単位X(mm)は11~14mmの範囲が好適であり、100mmならば繰り返し単位X(mm)は14~18mmが好適であり、200mmならば繰り返し単位X(mm)は22~25mmが好適である。
また、内周面の凸部頂点の繰り返し単位X(mm)が5mm未満であるか、または、25mmを超える場合は、流体の圧力損失が大きくなる。
【0042】
内周面の凸部頂点の繰り返し単位X(mm)は、長さ方向に展開したホースの断面形状を拡大倍率が8倍以上のマイクロスコープまたは目盛付きルーペで観察し、その凸部頂点間の距離を測定する方法で求めることができる。
【0043】
次に、ホース内周面の凸部間の窪みの深度Z(mm)は、ホース内径をID(mm)とした時、0.003≦Z/ID≦0.05の範囲にあることが好ましい。
ホース内周面の凸部間の窪みの深度Z(mm)がこの範囲にある可撓性ホースは、流体の圧力損失が小さくなるため、より好適である。
しかし、窪みの深度Z(mm)とホース内径ID(mm)との関係Z/IDが0.003未満となる場合は、管内を指先で触れて観察しても内周面がほぼフラットで、凹凸状態が殆ど存在していないことが分かると共に、流体の圧力損失が大きくなり、流体を流す際の抵抗が増えるため適切でない。また、窪みの深度Z(mm)とホース内径ID(mm)との関係Z/IDが0.05を超える場合には、流体の圧力損失が大きくなり、流体を流す際の抵抗が増えるため適切でない。
窪みの深度Z(mm)とホース内径ID(mm)との関係Z/IDは、0.003から0.03の範囲であることが好適であり、さらに、0.005から0.03にあることがより好適である。
【0044】
ホース内周面の凸部間の窪みの深度Z(mm)は、長さ方向に展開したホースの断面形状を拡大倍率が10倍のマイクロスコープで観察し、3つ以上の凸部の頂点を結んだ線と2つ以上の凹部の最も深い点を結んだ線との間の距離を測定する方法で求めることができる。
また、ホース内径ID(mm)は、最小目盛り0.1mmのテーパーゲージをホース内部に挿入して測定した値(ホース内面で向かい合う凸部間の距離)に、上記で求めた窪みの深度Z(mm)の2倍の値を加えることで求めることができる。
【0045】
[補強硬質芯材(B)]
本発明における補強硬質芯材(B)を構成する樹脂は、前記した、熱可塑性ポリウレタン樹脂層(A)との接着性に優れる点または、軟質塩化ビニル樹脂層(D)との共押出成形性に優れ、かつ、接着性または熱融着性に優れる点から、硬質塩化ビニル樹脂が好適である。補強硬質芯材(B)は、熱可塑性ポリウレタン樹脂(A)または軟質塩化ビニル樹脂層(D)に内蔵(
図4に示す)または、外側に露出させるように螺旋状に捲回して成形するが、ホースの滑り性(操作性)と柔軟性(可撓性)の点から、外側に露出していることが好ましい。
【0046】
内周面の凸部頂点の繰り返し単位X(mm)と補強硬質芯材(B)間の長さY(mm)の関係は、0.90≦X/Y≦1.10の範囲にあることが好ましい。このX/Yの値は、ホースの可撓性、径方向の強度、耐圧性能などの観点から0.93~1.07の範囲であることがより好ましく、0.95~1.05の範囲であることが最も好ましい。そして、このX/Yの値が0.90未満である場合、または1.10を超える場合には、流体の圧力損失が大きくなり、流体を流す際の抵抗が増えるため適切でない。 補強硬質芯材(B)間の長さY(mm)は、連続する補強硬質芯材(B)または、ホースを長さ方向に展開したときの補強硬質芯材(B)の断面10個分の長さを最小目盛り0.05mmのノギスで測定し、その値を芯材の個数10で除することで求めることができる。
【0047】
[繊維補強層(C)]
本発明品は、ホース構造体としての耐圧性が求められる場合に、必要により繊維補強層(C)を設けることができる。この繊維補強層(C)は、熱可塑性ポリウレタン組成物(A)と熱可塑性ポリウレタン組成物(A)、または熱可塑性ポリウレタン組成物(A)と軟質塩化ビニル樹脂層(D)の間に任意に編組することができる。
【0048】
この繊維補強層(C)に用いる繊維は、モノフィラメントまたはマルチフィラメントを網状に編組した繊維と、モノフィラメントまたはマルチフィラメントを補強硬質芯材(B)の下部、またはホースの繰り返し単位X(mm)で任意の管肉材部に沿って螺旋状に捲回した繊維の2種類からなることが好ましいがこれに限られるものではなく、どちらか一方のみを用いてもよい。当該繊維としては、例えば全芳香族ポリエステルなどの熱可塑性液晶ポリマーからなるポリアリレート繊維やポリアラミド繊維のモノフィラメントまたはマルチフィラメント、あるいはポリエステル繊維のモノフィラメントまたはマルチフィラメント、ポリビニルアルコール繊維のモノフィラメントまたはマルチフィラメントなどが挙げられる。熱可塑性ポリウレタン組成物(A)との接着性の観点から、網状に編組した補強繊維および、螺旋状に捲回した補強繊維はポリエステル繊維が好適である。更に耐圧性を求めるならば、螺旋状に捲回した補強繊維はポリアリレート繊維やポリアラミド繊維が高強度、低伸度の点で好適である。
【0049】
網状に編組された補強繊維は編み角度(ホースの長さ方向に引いた水平線と補強繊維とがなす角度)が25~80度であることが望ましく、耐圧性能の点からは30~60度であることがより好ましい。
【0050】
網状に編組された補強繊維は、8~96本編むことが望ましいが、ホースに要求される耐圧性能や内径の大きさによって編み数を適宜設定すればよく、例えば、内径ID(mm)が38mmの編み数は48本が好適である。
補強硬質芯材(B)に沿って螺旋状に編み組んだ補強繊維は、1本の糸をホースの補強硬質芯材(B)に沿うように、5~40mmの範囲の中で一定間隔に捲回されるが、補強硬質芯材(B)間の長さによって補強繊維の間隔を適宜設定すればよく、例えば内径ID(mm)が38mmの可撓性ホースの間隔は9~10mm程度が好適である。
【0051】
[軟質塩化ビニル樹脂層(D)]
前述のように、繊維補強層(C)を設けるなどの理由からホースを積層構造とする場合、熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物(A)または、繊維補強層(C)の管外周面に位置するように、軟質塩化ビニル樹脂層(D)を積層させることが好ましい。
【0052】
軟質塩化ビニル樹脂層(D)は、ホースの操作性の点から、JIS A硬度が40~75の範囲であることが好ましい。JIS A硬度が40未満であると、ホースのキンク(折れ・潰れ)などの問題があり、一方、75より大きいとホースの柔軟性(可撓性)が低下する。より好ましくはJIS A硬度が55~65の範囲である。
【0053】
[可撓性ホースの製造方法]
本発明の可撓性ホースの製造方法としては、例えば円筒状の管と当該管表面に沿って当該管長方向に対して傾斜して位置するスプリング状の回転棒からなる製管機上で行う下記成形方法が挙げられるが、特に限定されるものではない。
(ア):軟質管肉層が、熱可塑性ポリウレタン組成物(A)の単一構造をとる場合。
工程(アー1):熱可塑性ポリウレタン組成物(A)と、補強硬質芯材(B)を形成する硬質樹脂を熱可塑性ポリウレタン組成物(A)から露出または、被覆するようにテープ状に共押出し、製管機上に螺旋状に捲回したうえで、その隣接する側縁同士を融着することでホース状成形体を形成する。
【0054】
(イ):ホース構造体としての耐圧性が求められる場合に、必要により繊維補強層(C)を設ける場合。
工程(イー1):熱可塑性ポリウレタン組成物(A)を薄いテープ状に押出成形し、製管機上に螺旋状に捲回し、その隣接する側縁同士を融着することで熱可塑性ポリウレタン組成物(A)の管状成形物を形成する。
工程(イー2):工程(イー1)と同じ製管機上において、補強繊維を熱可塑性ポリウレタン組成物(A)上に網状に編組し、さらに必要に応じて、工程(イ-1)で形成した管状成形物の繰り返し単位長とほぼ等しい一定の間隔で補強繊維を螺旋状に捲回し、繊維補強層(C)を形成する。
工程(イー3):形成した管状成形物上に、熱可塑性ポリウレタン組成物(A)または軟質塩化ビニル樹脂層(D)を形成する軟質樹脂と、補強硬質芯材(B)を形成する硬質樹脂を熱可塑性ポリウレタン組成物(A)または軟質塩化ビニル樹脂層(D)から露出または、被覆するようにテープ状に共押出し、繊維補強層(C)を被覆するように捲回することで、繊維補強層(C)を有する管状成形体を形成する。
【0055】
これらの工程で、押出機から押し出されて製管機上で冷却される熱可塑性ポリウレタン組成物(A)、軟質塩化ビニル樹脂層(D)および、補強硬質芯材(B)の冷却速度を制御することによって、ホース状成形体の内面の凹凸形状を制御し、形成することができる。例えば、上記の工程(イー3)における熱可塑性ポリウレタン組成物(A)または軟質塩化ビニル樹脂層(D)および、補強硬質芯材(B)を製管機に捲回する際、ホース状成形体を冷却するための外部からの冷却水の温度、流量、冷却時間等の因子で、前記したホース内周面の凸部間の窪みの深度Z(mm)とホース内径ID(mm)の関係を表すZ/IDの値を好ましい範囲に制御することができる。具体的には、熱可塑性ポリウレタン組成物(A)または軟質塩化ビニル樹脂層(D)および、補強硬質芯材(B)が捲回された後のホース状成形品の冷却後の温度が、製管機上で70~100℃の範囲にあることが好ましい。
【0056】
本発明の可撓性ホースは、耐摩耗性や耐屈曲性、耐油性の全ての要求性能を満たしながら、樹脂の低硬度化による作業性に優れた柔軟性(可撓性)を両立しているため、例えば、土木工事、建築工事、産廃回収工事、農業などの分野で、切削力の強い粉体・流体を搬送することに使用できる。特に、機械油などの混じった流体を搬送する場合でも、油によるホースの膨潤や耐摩耗性の低下、柔軟性の低下なく使用することができる。
【0057】
以下に、本発明について実施例などを挙げてより具体的に説明するが、本発明はそれらの記載によって何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例および比較例において、各種物性の測定および評価は次のようにして行った。
【0058】
<耐摩耗性;サンドブラスター組込式連続摩耗試験>
(1)ホースを連続摩耗試験装置((株)不二製作所製「ニューマブラスターSDO-F1-F」)にホースの曲げ半径が400mmとなるように取り付け、ホース内部に研削材((株)不二製作所製「フジランダムA36」)を0.45MPaの圧力で循環させる。
(2)10分毎のホースの重量減量Δm(g/10分)を連続して6回測定する。
(3)Δm(g/10分)の平均値を耐摩耗性の指標とし、以下の判定基準にて評価した。
〇:Δmが0.10以下である。
×:Δmが0.10を超える。
【0059】
<耐屈曲性;90度連続屈曲試験>(1)90度連続屈曲試験装置(当社製)に、試験ホースの屈曲角度が90度となるように取り付ける。
(2)[0度(直管状態)⇔90度]の繰返し屈曲速度を1秒/回に設定し、10万回の連続屈曲を行う。
(3)ホース軟質管肉材料の破断、硬質樹脂芯材の剥離などの異常を定期的に目視観察し以下の判定基準にて評価した。
〇:10万回の連続屈曲にて異常なし。
×:10万回未満で異常発生。
【0060】
<耐加水分解性:耐熱水クリープ試験>
(1)ホース構造体を長さ方向に幅15mm、長さ50mmで短冊状に切り出す。
(2)短冊状試料の長さ方向における中央部に、幅方向に向かって、最内周面樹脂のみを切除して疑似クラックを設ける。(ホースが単層構造である場合は(2)の工程を踏まない。)
(3)引張永久歪み試験用定伸長治具((株)ダンベル製など)に短冊状試料を取り付け、試料の伸び率が10%となるように伸長させる。
(4)80℃の熱水中に伸長治具ごと試料を沈め、破断、ひび割れなどの異常の有無を定期的に目視観察する。以下の判断基準にて評価した。
〇:2ヵ月経過後に異常無し。
×:2ヵ月未満で異常発生。
【0061】
<ホース柔軟性(可撓性);荷重垂下長試験>
50cm長のホースの先端に荷重を取り付け、ホースが垂れ下がる長さ(垂下長)を測定する。荷重は50g、200g、500gとする。同等のホース内径と構造で比較した際の荷重毎の垂下長をホース柔軟性(可撓性)の指標とした。
【0062】
<塩化ビニル樹脂との接着性;180°剥離強度測定試験> 当試験は、JIS Z0237(「粘着テープの180°剥離試験」)を参考とし、具体的には、以下の工程で剥離強度を測定する。
(1)ホース構造体とした時、熱可塑性ポリウレタン(A)と接着する補強硬質芯材(B)または、軟質塩化ビニル樹脂層(D)を形成する塩化ビニル樹脂の2mm厚サンプル板を用意する。
(2)180℃に熱した各樹脂材料を気泡が混入しないように貼り合わせ、500gローラーで1往復圧着させた後、直ちに流水で水冷する。
(3)貼り合わせたサンプルシートを約25mm幅の短冊状にカットする。短冊サンプルの幅はノギスを用いて3点以上測定し、中央値をサンプルの幅(mm)とする。
(4)温度23℃、湿度50%の環境下で1日静置し、引張試験機(株式会社島津製作所製「AUTOGRAPH AG-Xplus」)を用い、300mm/minの速度で接着した2樹脂を180°剥離させる。
(5)剥離荷重が安定した変位から200mm以上を剥離させる。この200mmの測定変位内において最小剥離荷重(N)を読み取る。
(6)最小剥離荷重(N)をサンプルの幅(mm)で除し、25(mm)を積算することで、180°剥離強度の最小値(N/25mm)を算出する。
塩化ビニル樹脂との接着性は以下の判定基準にて評価した。
〇:180°剥離強度の最小値が25(N/25mm)以上である。
×:180°剥離強度の最小値が25(N/25mm)より小さい。
【0063】
<ホースカット容易性>
ホースを任意である長さに切断する際、軟質管肉樹脂をカッターナイフ[オルファ(株)社製「スピードハイパーL型」]を用いて1ピッチ長分切断し、補強硬質芯材を産業分野では一般的な樹脂カッター[室本鉄工(株)社製「SX10メリーカッタ」]を用い切断する。 ホースカット容易性は以下の判定基準にて評価した。
〇:上記2種の工具のみで切断可能である。
×:上記2種の工具の他、金属ワイヤーカッターなどの別工具を必要とする。
【0064】
<圧力損失;直管時摩擦損失係数(λ)の測定>
(1)長さ3mのホースを直管状に設置し、その片方の端末に送排風機((株)スイデン製「SJF-250-2」)を取り付けると共に、ホースの両端部から0.5m内側の箇所にφ8mmの穴をあけて差圧計を取り付ける。次に、送排風機から発生する風量を段階的に変化させ、その際の圧力差△P(Pa)と相当流速V(m/秒)を測定する。
(2)上記(1)の方法で測定した相当流速V(m/秒)とホースの断面積A(m2)の値を用いて通気量Q(m3/時間)の値を式(1)に従って算出する。
式(1) 通気量Q=3,600×V×A
(3)上記(2)で算出された通気量Q(m3/時間)の値と圧力差△P(Pa)の値から通気率a(m3/時間/Pa1/2)の値を式(2)に従って算出する。
式(2) 通気率a=△P1/2/Q
(4)上記(3)で算出された通気率a(m3/時間/Pa1/2)の値を用いて圧力損失係数ζを式(3)に従って算出する。
式(3) 圧力損失係数ζ=2/[ρ(a/3,600)2]
なお、ρは空気密度(kg/m3)を表す。
(5)上記(4)で算出された圧力損失係数ζを用いて直管時の摩擦損失係数λを式(4)に従って算出する。
式(4) 摩擦損失係数λ=(ID×ζ)/L
なお、IDはホース内径(m)で、Lはホース長(m)を表す。
(6)直管時の摩擦損失係数λは、以下の基準によって評価した。
○:λ≦0.060(流体と内管面との摩擦が小さく、ホースを使用する際に流体の圧力損失は問題ない)
×:0.060<λ(流体と内管面との摩擦があり、ホースを使用する際に流体の圧力損失による流量低下が認められる)
【0065】
実施例および比較例で使用した熱可塑性樹脂等の材料に関する略号および内容を以下に示す。
≪熱可塑性ポリウレタン組成物(A)に用いた樹脂≫〇A-1:1,4-ブタンジオールと1,6-ヘキサンジオール(1,4-ブタンジオールと1,6-ヘキサンジオールの混合比は1:1(モル比))とアジピン酸からなるポリエステルジオール(数平均分子量2,000)とポリテトラメチレングリコール(数平均分子量2,000)の混合物(モル比が30/70)/4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート/1,4-ブタンジオール系熱可塑性ポリウレタン組成物[窒素原子含有量が1.9重量%、対数粘度(a)が0.88dl/g、対数粘度(b)が0.82dl/g、対数粘度(b)/対数粘度(a)の比率が0.93、JIS A硬度が65]
〇A-2:3-メチル-1,5-ペンタンジオールとアジピン酸からなるポリエステルジオール(数平均分子量3,500)とポリテトラメチレングリコール(数平均分子量2,000)の混合物(モル比が30/70)/4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート/1,4-ブタンジオール系熱可塑性ポリウレタン組成物[窒素原子含有量が1.9重量%、対数粘度(a)が0.95dl/g、対数粘度(b)が0.84dl/g、対数粘度(b)/対数粘度(a)の比率が0.88、JIS A硬度が65]
〇A-3:3-メチル-1,5-ペンタンジオールとアジピン酸からなるポリエステルジオール(数平均分子量3,500)とポリテトラメチレングリコール(数平均分子量2,000)の混合物(モル比が50/50)/4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート/1,4-ブタンジオール系熱可塑性ポリウレタン組成物[窒素原子含有量が2.1重量%、対数粘度(a)が1.00dl/g、対数粘度(b)が0.85dl/g、対数粘度(b)/対数粘度(a)の比率が0.85、JIS A硬度が70]
〇A-4:1,4-ブタンジオールと1,6-ヘキサンジオール(1,4-ブタンジオールと1,6-ヘキサンジオールの混合比は1:1(モル比))とアジピン酸からなるポリエステルジオール(数平均分子量2,000)/4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート/1,4-ブタンジオール系熱可塑性ポリウレタン組成物[窒素原子含有量が2.1重量%、対数粘度(a)が0.95dl/g、対数粘度(b)が0.87dl/g、対数粘度(b)/対数粘度(a)の比率が0.92、JIS A硬度が70]
〇A-5:ポリテトラメチレングリコール(数平均分子量2,000)/4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート/1,4-ブタンジオール系熱可塑性ポリウレタン組成物[窒素原子含有量が2.4重量%、対数粘度(a)が0.99dl/g、対数粘度(b)が0.87dl/g、対数粘度(b)/対数粘度(a)の比率が0.88、JIS A硬度が75]
〇A-6:3-メチル-1,5-ペンタンジオールとアジピン酸からなるポリエステルジオール(数平均分子量3,500)とポリテトラメチレングリコール(数平均分子量2,000)の混合物(モル比が50/50)/4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート/1,4-ブタンジオール系熱可塑性ポリウレタン組成物[窒素原子含有量が1.9重量%、対数粘度(a)が0.92dl/g、対数粘度(b)が0.90dl/g、対数粘度(b)/対数粘度(a)の比率が0.98、JIS A硬度が65]
〇A-7:3-メチル-1,5-ペンタンジオールとアジピン酸からなるポリエステルジオール(数平均分子量3,500)とポリテトラメチレングリコール(数平均分子量2,000)の混合物(モル比が50/50)/4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート/1,4-ブタンジオール系熱可塑性ポリウレタン組成物[窒素原子含有量が2.0重量%、対数粘度(a)が0.95dl/g、対数粘度(b)が0.65dl/g、対数粘度(b)/対数粘度(a)の比率が0.68、JIS A硬度が68]
≪補強硬質芯材(B)に用いた硬質樹脂≫
〇B-1:硬質塩化ビニル樹脂[プラス・テク(株)製「GB439 Y-1」(Rスケール硬度=90)]
≪繊維補強層(C)に用いた補強繊維≫
〇C-1:ポリアリレート繊維のマルチフィラメント[(株)クラレ製「ベクトランHT」(繊維繊度=1,670dtex)]
〇C-2: ポリエステル繊維のマルチフィラメント[東レ(株)製「ポリエステル1,670T/2 20T」(繊維繊度=3,340dtex)]
≪軟質塩化ビニル樹脂層(D)に用いた軟質樹脂≫
〇D-1:軟質塩化ビニル樹脂[昭和化成工業(株)製「TC2190-4」(JIS A硬度=66)]
【0066】
<実施例1>
(1)断面形状が直径3mmの円である補強硬質芯材「B-1」が熱可塑性ポリウレタン組成物「A-1」から露出するように、クロスダイで接合された2つの単軸押出機(熱可塑性ポリウレタン組成物「A-1」用;65mmφ、シリンダー温度=160~180℃、ダイス温度=190℃、補強硬質芯材「B-1」用;65mmφ、シリンダー温度=160~180℃、ダイス温度=190℃)を用いて12mm幅のテープ状に共押出成形し、外径が38mmの製管機上に螺旋状に捲回し、その隣接する側縁同士を180℃の温度で熱融着することで、内径IDが38mm、補強硬質芯材「B-1」間の長さYが9.3mm、軟質部の総肉厚が0.8mmの寸法を有するホース状成形品を得た。(2)当該ホース状成形品を得る工程において、製管機外部から7℃のチラー水を当てて製管機上のホース状成形品を80℃にした後に、製管機から外して更に冷却することで、ホース状成形品は内側の凸部頂点の繰り返し単位X(mm)が9.3mmで、ホース内側の凸部間の窪み深度Z(mm)とホース内径ID(mm)との関係Z/IDが0.026であった。
性能評価を表1に示す。
【0067】
<実施例2>
(1)熱可塑性ポリウレタン組成物「A-2」を単軸押出機(40mmφ、シリンダー温度=160~180℃、ダイス温度=190℃)を用いて、16mm幅のテープ状に押出成形し、外径が75mmの製管機上に捲回することで、厚み2.0mmの管状成形物を形成した。
(2)続けて、上記(1)と同じ製管機上において、補強繊維「C-2」の64本を管状成形物上に網状に編組装置(共立(株)製横型ヤーンスパイラルワインダー)を用いて編組し、さらにその上面より15mmの間隔で補強繊維「C-1」の1本を螺旋状に捲回し、繊維補強層を形成した。
(3)そして、繊維補強層を編み込んだ直後に、上面より、断面形状が直径6mmの円である補強硬質芯材「B-1」が熱可塑性ポリウレタン組成物「A-2」から露出するように、クロスダイで接合された2つの単軸押出機(<実施例1>に記載)を用いてテープ状に共押出し、繊維補強層を被覆するように捲回することで、内径IDが75mm、補強硬質芯材「B-1」間の長さYが15mm、軟質部の総肉厚が3.0mmの寸法を有するホース状成形品を得た。
(4)このホース状成形品を得る工程において、熱可塑性ポリウレタン組成物「A-2」からなる管状成形物に補強繊維を編組する直前の熱可塑性ポリウレタン組成物の温度が115℃になるように製管機内部から12℃の冷風を当てた。また、製管機外部から7℃のチラー水を当てて製管機上のホース状成形品を80℃にした後に、製管機から外して更に冷却することで、内側の凸部頂点の繰り返し単位X(mm)が15mmで、ホース内側の凸部間の窪み深度Z(mm)とホース内径ID(mm)との関係Z/IDが0.020であった。性能評価を表1に示す。
【0068】
<実施例3>
(1)<実施例2>と同様の工程を経て熱可塑性ポリウレタン組成物「A-3」からなる管状成形物を形成した。なお、外径が65mmの製管機を用い、熱可塑性ポリウレタン組成物「A-3」は15mm幅のテープ状に押出成形し、厚みは1.1mmとした。また、続く繊維補強層(C)は補強繊維「C-2」の64本および、補強繊維「C-1」の1本を螺旋状に捲回することで形成した。
(2)続く、繊維補強層を編み込んだ直後に、上面より、断面形状が直径5.5mmの円である補強硬質芯材「B-1」が軟質塩化ビニル樹脂層「D-1」から露出するように、<実施例1>で用いた単軸押出機(軟質塩化ビニル樹脂層「D-1」用;65mmφ、シリンダー温度=150~170℃、ダイス温度=190℃、)を用いてテープ状に共押出し、繊維補強層を被覆するように捲回することで、内径IDが65mm、補強硬質芯材「B-1」間の長さYが14mm、軟質部の総肉厚が2.8mmの寸法を有するホース状成形品を得た。
(3)このホース状成形品を得る工程において、熱可塑性ポリウレタン組成物「A-3」からなる管状成形物に補強繊維を編組する直前の熱可塑性ポリウレタン組成物の温度が120℃になるように製管機内部から12℃の冷風を当てた。また、製管機外部から23℃の水を当てて製管機上のホース状成形品を100℃にした後に、製管機から外して更に冷却することで、内側の凸部頂点の繰り返し単位X(mm)が14mmで、ホース内側の凸部間の窪み深度Z(mm)とホース内径ID(mm)との関係Z/IDが0.008であった。性能評価を表1に示す。
【0069】
<実施例4>
(1)<実施例2>と同様の工程を経て熱可塑性ポリウレタン組成物「A-1」からなる管状成形物を形成した。なお、外径が50mmの製管機を用い、熱可塑性ポリウレタン組成物「A-1」は12mm幅のテープ状に押出成形し、厚みは2.0mmとした。また、続く繊維補強層(C)は補強繊維「C-2」の64本および、補強繊維「C-1」の1本を螺旋状に捲回することで形成した。
(2)続く、繊維補強層を編み込んだ直後に、上面より、断面形状が横長辺6.0mm、縦短辺4.0mmの楕円状である補強硬質芯材「B-1」が軟質塩化ビニル樹脂層「D-1」に内蔵被覆されるように、クロスダイで接合された2つの単軸押出機を用いてテープ状に共押出し、繊維補強層を被覆するように捲回することで、内径IDが50mm、補強硬質芯材「B-1」間の長さYが10.4mm、軟質部の総肉厚が7.3mmの寸法を有するホース状成形品を得た。
(3)このホース状成形品を得る工程において、熱可塑性ポリウレタン組成物「A-1」からなる管状成形物に補強繊維を編組する直前の熱可塑性ポリウレタン組成物の温度が115℃になるように製管機内部から12℃の冷風を当てた。また、製管機外部から23℃の水を当てて製管機上のホース状成形品を100℃に徐冷した後に、製管機から外して更に冷却することで、内側の凸部頂点の繰り返し単位X(mm)が10.4mmで、ホース内側の凸部間の窪み深度Z(mm)とホース内径ID(mm)との関係Z/IDが0.003であった。性能評価を表1に示す。
【0070】
<比較例1>
<実施例1>と同様の工程を経て成形する。なお、熱可塑性ポリウレタン組成物(A)には「A-4」を使用する。得られたホース状成形品の内側の凸部頂点の繰り返し単位X(mm)は9.3mmで、ホース内側の凸部間の窪み深度Z(mm)とホース内径ID(mm)との関係Z/IDは0.028であった。性能評価を表2に示す。
【0071】
<比較例2>
<実施例1>と同様の工程を経て成形する。なお、熱可塑性ポリウレタン組成物(A)には「A-5」を使用する。得られたホース状成形品の内側の凸部頂点の繰り返し単位X(mm)は9.3mmで、ホース内側の凸部間の窪み深度Z(mm)とホース内径ID(mm)との関係Z/IDは0.021であった。性能評価を表2に示す。
【0072】
<比較例3>
<実施例2>と同様の工程を経て成形する。なお、熱可塑性ポリウレタン組成物(A)には「A-6」を使用する。得られたホース状成形品の内側の凸部頂点の繰り返し単位X(mm)は15mmで、ホース内側の凸部間の窪み深度Z(mm)とホース内径ID(mm)との関係Z/IDは0.022であった。性能評価を表2に示す。
【0073】
<比較例4>
<実施例3>と同様の工程を経て成形する。なお、比較例4は熱可塑性ポリウレタン組成物(A)に「A-7」を使用したが、熱可塑性ポリウレタン組成物の溶融時の成形性が低く、管状成形物を得るに至らなかった。
【0074】
<比較例5>
<実施例4>と同様の工程を経て成形する。なお、熱可塑性ポリウレタン組成物(A)には「A-5」を使用した。得られたホース状成形品の内側の凸部頂点の繰り返し単位X(mm)は10.4mmで、ホース内側の凸部間の窪み深度Z(mm)とホース内径ID(mm)との関係Z/IDは0.007であった。性能評価を表2に示す。
【0075】
<比較例6>
(1)熱可塑性ポリウレタン組成物「A-2」を<実施例2>で用いたものと同様の単軸押出機を用いて、16mm幅のテープ状に押出成形し、外径が75mmの製管機上に捲回することで、厚み2.0mmの管状成形物を形成した。
(2)続けて、上記(1)と同じ製管機上において、15mmの間隔で硬鋼線[ジェイ・ワイテックス(株)製「1.2φ×60C」]の1本を(1)の管状成形物の外径と等しい径となるよう癖付けしながら螺旋状に捲回し、硬鋼線からなる補強層を形成した。
(3)前述補強層を形成した直後に、上面より熱可塑性ポリウレタン組成物「A-2」および補強硬質芯材「B-1」を、断面形状が直径6mmの円状で熱可塑性ポリウレタン組成物「A-2」から露出するように<実施例1>で用いた単軸押出機を用いてテープ状に共押出し、補強層を被覆するように捲回することで、内径IDが75mm、補強硬質芯材「B-1」間の長さYが15mm、軟質部の総肉厚が3.0mmの寸法を有するホース状成形品を得た。(4)当該ホース状成形品を得る工程において、製管機外部から7℃のチラー水を当てて製管機上のホース状成形品を80℃にした後に、製管機から外して更に冷却することで、ホース状成形品は内側の凸部頂点の繰り返し単位X(mm)が15mmで、ホース内側の凸部間の窪み深度Z(mm)とホース内径ID(mm)との関係Z/IDが0.022であった。
性能評価を表2に示す。
【0076】
<比較例7>
(1)熱可塑性ポリウレタン組成物「A-5」を<実施例2>と同様の単軸押出機を用いて、16mm幅のテープ状に押出成形し、外径が75mmの製管機上に捲回することで、厚み0.5mmの管状成形物を形成した。
(2)上記(1)の管状成形物を成形した直後に熱可塑性ポリウレタン組成物「A-4」を、単軸押出機(40mmφ、シリンダー温度=160~180℃、ダイス温度=190℃)を用いて16mm幅のテープ状に押出成形し、(1)の管状成形物を被覆するように捲回することで、トータル厚み2.0mmの管状成形物を形成した。
(3)(2)の管状成形物を成形した直後に、<実施例4>と同様の工程で軟質塩化ビニル樹脂層「D-1」および補強硬質芯材「B-1」を共押出し、内径IDが50mm、補強硬質芯材「B-1」間の長さYが10.4mm、軟質部の総肉厚が7.3mmの寸法を有するホース状成形品を得た。(4)このホース状成形品を得る工程において、(2)の管状成形物の製管機内部からの冷却を中断し、かつ製管機外部から7℃のチラー水を当てて製管機上のホース状成形品を70℃にした後に、製管機から外して更に冷却することで、内側の凸部頂点の繰り返し単位X(mm)が10.4mmで、ホース内側の凸部間の窪み深度Z(mm)とホース内径ID(mm)との関係Z/IDが0.070であった。性能評価を表2に示す。
【0077】
【0078】
【0079】
[比較例1]:ポリエステルジオール、および/またはポリカーボネートジオールと、ポリエーテルジオールとのモル比が100/0である熱可塑性ポリウレタン組成物(A)を用いているため、ホース構造体として、耐摩耗性と耐加水分解性に劣り不可となる。
[比較例2]:ポリエステルジオール、および/またはポリカーボネートジオールと、ポリエーテルジオールとのモル比が0/100である熱可塑性ポリウレタン組成物(A)を用いているため、塩化ビニル樹脂との接着性が低く不適である。また、ホース構造体として、耐屈曲性が低く、不可である。
[比較例3]:対数粘度(b)/対数粘度(a)が0.95より大きい熱可塑性ポリウレタン組成物(A)(即ち、アロファネート結合により高次元化されていない。)を用いているため、ホース構造体として、耐摩耗性と耐屈曲性に劣り不可である。
[比較例4]:対数粘度(b)/対数粘度(a)が0.80より小さい熱可塑性ポリウレタン組成物(A)を用いているため、溶融時の粘度が高く押出成形性が低いため、所望のホース状成形品を得るに至らず、不適である。
[比較例5]:発明実施形態の1つである補強芯材が内蔵被覆された形状のホース構造体であるが、前述の比較例と同様の結果となる。例えば、当該比較例5のように、ポリエステルジオール、および/またはポリカーボネートジオールと、ポリエーテルジオールとのモル比が0/100である熱可塑性ポリウレタン組成物(A)を用いたホース構造体は、塩化ビニル樹脂との接着性が低く、ホース構造体として、耐屈曲性に劣り、不可である。
[比較例6]:補強芯材に硬鋼線を用いたホース構造体であるが、ホースカットの容易性で劣るため不可である。
[比較例7]:ホースの内周面から順に、ポリエステルジオール、および/またはポリカーボネートジオールと、ポリエーテルジオールとのモル比が0/100である熱可塑性ポリウレタン組成物(A)からなる軟質管肉層、次いで、ポリエステルジオール、および/またはポリカーボネートジオールと、ポリエーテルジオールとのモル比が100/0である熱可塑性ポリウレタン組成物(A)からなる接着性中間樹脂層、軟質塩化ビニル樹脂層(D)、補強硬質芯材(B)であるホース構造体であるが、耐加水分解性に劣り、かつ同様のホース構造体である[実施例4]と比較するとホース柔軟性に劣るため、不可である。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明の熱可塑性ポリウレタン組成物からなる可撓性ホースは、柔軟性(可撓性)、および、耐摩耗性、耐屈曲性、耐油性、耐加水分解性などの耐久性の両立が著しく改善され、吸引時にホースが変形しない耐負圧性能にも優れ、実施形態の1つである繊維補強されたホースでは耐圧性に優れているため、例えば土木工事、建築工事、農業、漁業、工業などのあらゆる分野で圧送用ポンプや吸引用集塵機に接続でき、水のみならず粉体または粉体の混合した水の加圧搬送用あるいは吸引搬送用として有益に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【
図1】本発明の可撓性ホースの一例を表す、軟質管肉層が熱可塑性ポリウレタン組成物(A)の単一構造であり、補強硬質芯材(B)が熱可塑性ポリウレタン組成物(A)から露出している構造の全体図と一部断面の模式図。
【
図3】本発明の可撓性ホースが、内周面から順に熱可塑性ポリウレタン組成物(A)、繊維補強層(C)、熱可塑性ポリウレタン組成物(A)または、軟質塩化ビニル樹脂層(D)からなる積層成形体である全体図と一部断面の模式図。
【
図4】本発明の可撓性ホースの一例を表す、内周面から順に熱可塑性ポリウレタン組成物(A)、繊維補強層(C)、熱可塑性ポリウレタン組成物(A)または、軟質塩化ビニル樹脂層(D)からなる積層成形体であり、補強硬質芯材(B)が熱可塑性ポリウレタン組成物(A)または、軟質塩化ビニル樹脂層(D)に埋め込まれている構造の全体図と一部断面の模式図。