(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022024457
(43)【公開日】2022-02-09
(54)【発明の名称】移動端末試験装置、及び移動端末試験方法
(51)【国際特許分類】
H04B 17/29 20150101AFI20220202BHJP
H04L 25/02 20060101ALI20220202BHJP
【FI】
H04B17/29
H04L25/02 302
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020127072
(22)【出願日】2020-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000572
【氏名又は名称】アンリツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140501
【弁理士】
【氏名又は名称】有我 栄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100072604
【弁理士】
【氏名又は名称】有我 軍一郎
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 秀之
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 博紀
(72)【発明者】
【氏名】中村 拓海
(72)【発明者】
【氏名】吉田 侑以
【テーマコード(参考)】
5K029
【Fターム(参考)】
5K029AA01
(57)【要約】
【課題】EIS-CDF測定のように複数の測定ポジションごとで行われる受信感度試験の進捗状況を確認でき、測定の進行に関する不明さを解消し、異常がある場合の原因解明や再試験を行うか否かが見極められ、試験時間の見積もりが可能となる移動端末試験装置及び移動端末試験方法を提供する。
【解決手段】測定装置1は、被測定信号のスループットを測定し、該測定を試験信号の出力レベルを変更しながら繰り返す受信感度試験を、複数の方位に対応する各測定ポジションで実施させるように制御する。当該制御を行う統合制御装置10は、受信感度試験が終了した測定ポジションまでの受信感度試験の結果を表示する第1の表示領域と、受信感度試験を開始した測定ポジションでの受信感度試験の測定の進捗状況を表示する第2の表示領域と、を有する測定進捗表示画面を表示する測定状況表示制御部18dを有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波暗箱(50)の内部空間(51)内に設けられ、被試験対象を球座標系の予め設定された複数の方位を順次向くように回転させるポジショナ(56)と、
前記内部空間内の試験用アンテナ(5)に接続される模擬測定装置(20)と、
前記ポジショナの回転に合わせて、前記試験用アンテナから前記被試験対象である移動端末(100)に試験信号を送信し、該試験信号を受信した前記移動端末から送信される被測定信号を前記試験用アンテナで受信させて該被測定信号に基づきスループットを測定し、前記試験信号の出力レベルを変更しながら前記スループットの測定を繰り返す受信感度試験を、前記複数の方位に対応する各測定ポジションで実施させるように前記模擬測定装置を制御する測定制御手段(10)と、
前記各測定ポジションごとの前記受信感度試験の進行に合わせて、前記受信感度試験が終了した前記測定ポジションまでの前記受信感度試験の結果を表示する第1の表示領域(13c)と、前記受信感度試験を開始した前記測定ポジションでの前記受信感度試験の測定の進捗状況を表示する第2の表示領域(13d)と、を有する測定進捗表示画面(13a)を表示する表示制御手段(18d)と、
を有することを特徴とする移動端末試験装置。
【請求項2】
前記第2の表示領域は、前記試験信号の出力レベル、前記スループットの測定値、及び前記測定値が閾値を超えているか否かの判定結果の各項目(136、138、139)を表示項目として含み、
前記表示制御手段は、前記第2の表示領域の前記各項目の値を前記受信感度試験の進行に合わせて更新して表示することを特徴とする請求項1に記載の移動端末試験装置。
【請求項3】
前記第1の表示領域は、前記複数の前記測定ポジションに対応する前記ポジショナの回転角度、及び当該測定ポジションにおける前記受信感度試験の結果を表示項目(131、132、133)として含み、
前記表示制御手段は、前記受信感度試験の結果として、前記第2の表示領域に表示されている、前記スループットの測定値が前記閾値を超えていると判定された前記試験信号の出力レベルの直前の前記試験信号の出力レベルを表示することを特徴とする請求項1または2に記載の移動端末試験装置。
【請求項4】
前記試験信号は、互いに直交する直線偏波のいずれかであり、
前記複数の方位は、前記移動端末の等価等方感度(EIS)の累積分布関数(CDF)を算出するために必要な全ての方位であり、
前記第1の表示領域は、前記累積分布測定の測定対象の前記測定ポジションに対応する前記ポジショナの回転角度、及び当該測定ポジションにおける前記等価等方感度を表示項目(131、132、133)として含み、前記第1の表示領域に前記受信感度試験の結果として前記等価等方感度が表示されることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の移動端末試験装置。
【請求項5】
前記第2の表示領域は、前記試験信号が、前記互いに直交する直線偏波のどちらかを示す項目をさらに表示することを特徴とする請求項4に記載の移動端末試験装置。
【請求項6】
電波暗箱(50)の内部空間(51)内に設けられ、被試験対象を球座標系の予め設定された複数の方位を順次向くように回転させるポジショナ(56)と、
前記内部空間内の試験用アンテナ(5)に接続される模擬測定装置(20)と、
前記ポジショナの回転に合わせて、前記試験用アンテナから前記被試験対象である移動端末(100)に試験信号を送信し、該試験信号を受信した前記移動端末から送信される被測定信号を前記試験用アンテナで受信させて該被測定信号に基づきスループットを測定し、前記試験信号の出力レベルを変更しながら前記スループットの測定を繰り返す受信感度試験を、前記複数の方位に対応する各測定ポジションで実施させるように前記模擬測定装置を制御する測定制御手段(10)と、
を有する移動端末試験装置における移動端末試験方法であって、
前記各測定ポジションごとの前記受信感度試験の開始に合わせて、前記受信感度試験が終了した前記測定ポジションまでの前記受信感度試験の結果を表示する第1の表示領域(13c)と、前記受信感度試験を開始した前記測定ポジションでの前記受信感度試験の測定の進捗状況を表示する第2の表示領域(13d)と、を有する測定進捗表示画面(13a)の初期画面を表示する初期画面表示制御ステップ(S3)と、
前記各測定ポジションごとの受信感度試験の進行に合わせて、前記受信感度試験が終了した前記測定ポジションまでの前記受信感度試験の結果を前記第1の表示領域に表示する測定ポジション状況表示ステップ(S48)と、
前記受信感度試験を開始した前記測定ポジションでの前記受信感度試験の測定の進捗状況を前記第2の表示領域に表示する受信感度試験状況表示ステップ(S43、S45、S46、S47)と、
を有することを特徴とする移動端末試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試験用信号を被試験対象で受信させて受信感度を測定する受信感度試験を複数回実行し、被試験対象である移動端末を試験する移動端末試験装置、及び移動端末試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年開発が進んでいる、ミリ波帯の広帯域な信号を使用するIEEE802.11adや5Gセルラ等に対応した無線信号を送受信する無線端末については、無線端末が備えている無線通信用のアンテナに対して、通信規格ごとに定められた送信電波の出力レベルや受信感度を測定し、所定の基準を満たすか否かを判定する性能試験が行われる。
【0003】
例えば、5G NRシステム(New Radio System)用の無線端末(以下、5G無線端末)を被試験対象(Device Under Test:DUT)とする性能試験においては、周囲の電波環境に影響されないコンパクト・アンテナ・テスト・レンジ(Compact Antenna Test Range:以下、CATR)と称する電波暗箱(OTAチャンバ)を用いたOTA試験が実施される。
【0004】
5G無線端末などを対象とするOTA環境下での各種試験については、例えば、3GPP(3rd Generation Partnership Project)の仕様書(非特許文献1)に記載された規格に則った試験を行うことが義務付けられているものがある。
【0005】
例えば、OTA環境下で球座標系の全ての方位を順次向くように回転されるDUTの等方等価感度(Equivalent Isotropic Sensitivity:EIS)測定について、3GPPの章38521-2K.1.4には、「受信信号のビームピーク方向の探索、EISにおける球面カバレッジ(Spherical Coverage)」の定義に関する記載がある。また、3GPPの章38521-2K.1.6には、EIS-CDF(Cumulative Distribution Function:累積分布)測定についての記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献1】3GPP 技術仕様書 章38521-2k.1.4/章38521-2k.1.6
【発明の概要】
【0007】
3GPP NRの規格で定義される「受信信号のビームピーク方向の探索、EIS球面カバレッジ(所要放射電力に到達している部分の面積比率)については、測定結果として球面上の各測定ポジション(θ、φ)のaveraged EIS(EISの累積分布)が必要である。
【0008】
EISの累積分布(EIS-CDF)を求めるためには、測定ポジションごとに、θ偏波、φ偏波それぞれで試験用信号の出力レベルを変更しながら、何度もデータ転送レートを示すスループットを測定するようになっている。
【0009】
EIS-CDF測定に対応する従来の移動端末試験装置では、測定の進捗状況を表示する機能に関して、測定ポジションごとに、その測定ポジションでのEIS測定が終了するタイミングでその測定結果(EIS(Total))を測定の順番を示すインデックス番号に関連付けて表示する構成を有するものがあった。一方で、この種の従来の移動端末試験装置は、各測定ポジションでのEIS測定の進捗状況を表示する機能を有していなかった。
【0010】
すなわち、かかる従来の移動端末試験装置では、測定進捗状況を表示する表示画面上で、インデックス番号をたよりに、EIS測定がどの測定ポジションまで進んでいるかを把握できるものの、各測定ポジションでのEIS測定に係る進捗状況は一切把握できなかった。
【0011】
EIS測定は、DUTが試験用信号のどの出力レベルまで正常に受信できるかを探索するものであり、受信感度試験で行われる測定の一種であり、試験用信号を、出力レベルを変更しながら複数回送信することが不可欠であるため、測定に長い時間がかかることになる。EIS-CDF測定中にEIS測定の進捗状況の表示機能を有しない従来の移動端末試験装置では、EIS測定の進捗状況が分からないまま、基本的には測定動作が行われているかどうかの判断がつかないため、試験が正常に進捗しているかが不明となり、進捗が異常の場合には原因解明や再試験を行うか否かの見極めができず、また試験時間の見積もりが困難になる問題があった。
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであって、EIS-CDF測定のように複数の測定ポジションごとで行われる受信感度試験の進捗状況を確認でき、測定の進行に関する不明さを解消し、異常がある場合の原因解明や再試験を行うか否かが見極められ、試験時間の見積もりが可能となる移動端末試験装置及び移動端末試験方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1に係る移動端末試験装置は、電波暗箱(50)の内部空間(51)内に設けられ、被試験対象を球座標系の予め設定された複数の方位を順次向くように回転させるポジショナ(56)と、前記内部空間内の試験用アンテナ(5)に接続される模擬測定装置(20)と、前記ポジショナの回転に合わせて、前記試験用アンテナから前記被試験対象である移動端末(100)に試験信号を送信し、該試験信号を受信した前記移動端末から送信される被測定信号を前記試験用アンテナで受信させて該被測定信号に基づきスループットを測定し、前記試験信号の出力レベルを変更しながら前記スループットの測定を繰り返す受信感度試験を、前記複数の方位に対応する各測定ポジションで実施させるように前記模擬測定装置を制御する測定制御手段(10)と、前記各測定ポジションごとの前記受信感度試験の進行に合わせて、前記受信感度試験が終了した前記測定ポジションまでの前記受信感度試験の結果を表示する第1の表示領域(13c)と、前記受信感度試験を開始した前記測定ポジションでの前記受信感度試験の測定の進捗状況を表示する第2の表示領域(13d)と、を有する測定進捗表示画面(13a)を表示する表示制御手段(18d)と、を有することを特徴とする。
【0014】
この構成により、本発明の請求項1に係る移動端末試験装置は、各測定ポジションでの受信感度試験中に、被試験対象がどの信号レベルまで正常に受信し得るかの受信感度試験の進捗状況を第2の表示領域の表示内容から把握可能となる。これにより、EIS-CDF測定のような複数の測定ポジションごとの受信感度試験における測定の進捗状況を確認でき、測定の進行に関する不明さを解消することができる。さらには、異常がある場合の原因解明や再試験を行うか否かが見極められ、試験時間の見積もりが可能となる。
【0015】
また、本発明の請求項2に係る移動端末試験装置において、前記第2の表示領域は、前記試験信号の出力レベル、前記スループットの測定値、及び前記測定値が閾値を超えているか否かの判定結果の各項目(136、138、139)を表示項目として含み、前記表示制御手段は、前記第2の表示領域の前記各項目の値を前記受信感度試験の進行に合わせて更新して表示する構成であってもよい。
【0016】
この構成により、本発明の請求項2に係る移動端末試験装置は、各測定ポジションでの等価等方感度測定に係る受信感度試験中に、第2の表示領域に表示される試験信号の出力レベル、スループットの測定値、スループットの測定値が閾値を超えているか否かの判定結果を容易に確認できる。
【0017】
また、本発明の請求項3に係る移動端末試験装置において、前記第1の表示領域は、前記複数の前記測定ポジションに対応する前記ポジショナの回転角度、及び当該測定ポジションにおける前記受信感度試験の結果を表示項目(131、132、133)として含み、前記表示制御手段は、前記受信感度試験の結果として、前記第2の表示領域に表示されている、前記スループットの測定値が前記閾値を超えていると判定された前記試験信号の出力レベルの直前の前記試験信号の出力レベルを表示する構成としてもよい。
【0018】
この構成により、本発明の請求項3に係る移動端末試験装置は、各測定ポジションでの等価等方感度測定に係る受信感度試験中、移動端末がそれ以上低い出力レベルの試験信号を受信できなくなるまで、第2の表示領域での各項目の表示内容から、測定進行状況を継続的に確認することができる。
【0019】
また、本発明の請求項4に係る移動端末試験装置において、前記試験信号は、互いに直交する直線偏波のいずれかであり、前記複数の方位は、前記移動端末の等価等方感度(EIS)の累積分布関数(CDF)を算出するために必要な全ての方位であり、前記第1の表示領域は、前記累積分布測定の測定対象の前記測定ポジションに対応する前記ポジショナの回転角度、及び当該測定ポジションにおける前記等価等方感度を表示項目(131、132、133)として含み、前記第1の表示領域に前記受信感度試験の結果として前記等価等方感度が表示される構成であってもよい。
【0020】
この構成により、本発明の請求項4に係る移動端末試験装置は、EIS測定における測定ポジションごとのCDF測定の進捗状況を確認できる。
【0021】
また、本発明の請求項5に係る移動端末試験装置において、前記第2の表示領域は、前記試験信号が、前記互いに直交する直線偏波のどちらかを示す項目をさらに表示する構成であってもよい。
【0022】
この構成により、本発明の請求項5に係る移動端末試験装置は、互いに直交する直線偏波として、例えば、θ偏波とφ偏波のいずれについても、EIS測定における測定ポジションごとのCDF測定の進捗状況を確認できるようになる。
【0023】
また、上記課題を解決するために、本発明の請求項6に係る移動端末試験方法は、電波暗箱(50)の内部空間(51)内に設けられ、被試験対象を球座標系の予め設定された複数の方位を順次向くように回転させるポジショナ(56)と、前記内部空間内の試験用アンテナ(5)に接続される模擬測定装置(20)と、前記ポジショナの回転に合わせて、前記試験用アンテナから前記被試験対象である移動端末(100)に試験信号を送信し、該試験信号を受信した前記移動端末から送信される被測定信号を前記試験用アンテナで受信させて該被測定信号に基づきスループットを測定し、前記試験信号の出力レベルを変更しながら前記スループットの測定を繰り返す受信感度試験を、前記複数の方位に対応する各測定ポジションで実施させるように前記模擬測定装置を制御する測定制御手段(10)と、を有する移動端末試験装置における移動端末試験方法であって、前記各測定ポジションごとの前記受信感度試験の開始に合わせて、前記受信感度試験が終了した前記測定ポジションまでの前記受信感度試験の結果を表示する第1の表示領域(13c)と、前記受信感度試験を開始した前記測定ポジションでの前記受信感度試験の測定の進捗状況を表示する第2の表示領域(13d)と、を有する測定進捗表示画面(13a)の初期画面を表示する初期画面表示制御ステップ(S3)と、前記各測定ポジションごとの前記受信感度試験の進行に合わせて、前記受信感度試験が終了した前記測定ポジションまでの前記受信感度試験の結果を前記第1の表示領域に表示する測定ポジション状況表示ステップ(S48)と、前記受信感度試験を開始した前記測定ポジションでの前記受信感度試験の測定の進捗状況を前記第2の表示領域に表示する受信感度試験状況表示ステップ(S43、S45、S46、S47)と、を有することを特徴とする。
【0024】
この構成により、本発明の請求項6に係る移動端末試験方法は、各測定ポジションでの受信感度試験中に、被試験対象がどの信号レベルまで正常に受信し得るかの受信感度試験の進捗状況を第2の表示領域の表示内容から把握可能となる。これにより、EIS-CDF測定のような複数の測定ポジションごとの受信感度試験における測定の進捗状況を確認でき、測定の進行に関する不明さを解消することができる。さらには、異常がある場合の原因解明や再試験を行うか否かが見極められ、試験時間の見積もりが可能となる。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、複数の測定ポジションごとの受信感度測定の進捗状況を確認でき、測定の進行に関する不明さを解消し、異常がある場合の原因解明や再試験を行うか否かが見極められ、試験時間の見積もりが可能となる移動端末試験装置及び移動端末試験方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の一実施形態に係る測定装置全体の概略構成を示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る測定装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る測定装置の統合制御装置とその被制御要素の機能構成を示すブロック図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る測定装置におけるNRシステムシミュレータの機能構成を示すブロック図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る測定装置のOTAチャンバ内におけるDUTの全球面走査イメージを示す図であり、(a)は球座標系の中心に対するDUTの配置態様を示し、(b)は球座標系における角度標本点PSの分布態様を示している。
【
図6】本発明の一実施形態に係る測定装置のOTAチャンバ内での試験用アンテナ5の配置態様を
図5に示す球座標系(r,θ,φ)系を用いて説明するための図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る測定装置におけるDUTの全球面走査に係る2軸ポジショナのアジマス軸及びロール軸周りの回転駆動イメージを示す図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る測定装置の統合制御装置によるDUTのEIS-CDF測定制御動作を示すフローチャートである。
【
図9】本発明の一実施形態に係る測定装置の統合制御装置によるEIS-CDF測定時おける測定状況表示処理動作を示すフローチャートである。
【
図10】本発明の一実施形態に係る測定装置の統合制御装置によるEIS-CDF測定時における測定進捗状況表示画面の表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係る移動端末試験装置及びこれを用いた移動端末試験方法の実施形態について図面を用いて説明する。
【0028】
まず、本発明の一実施形態に係る測定装置1の構成について、
図1~
図4を参照して説明する。測定装置1は、本発明の移動端末試験装置を構成する。本実施形態に係る測定装置1は、全体として
図1に示すような外観構造を有し、かつ、
図2に示すような機能ブロックにより構成されている。
図1、
図2において、OTAチャンバ50についてはその側面から透視した状態における各構成要素の配置態様を示している。
【0029】
測定装置1は、例えば、
図1に示す構造を有するラック構造体90の各ラック90aに前述したそれぞれの構成要素を載置した態様で運用される。
図1においては、ラック構造体90の各ラック90aに、それぞれ、統合制御装置10、NRシステムシミュレータ20、OTAチャンバ50を載置した例を示している。
【0030】
図2に示すように、測定装置1は、統合制御装置10、NRシステムシミュレータ20、信号処理部23、OTAチャンバ50を有している。
【0031】
OTAチャンバ50の構成から先に説明する。
図1、
図2に示すように、OTAチャンバ50は、例えば、長方体形状の内部空間51を有する金属製の筐体本体部52により構成され、内部空間51に、アンテナ110を有するDUT100、試験用アンテナ5、リフレクタ7、DUT走査機構56を収容している。
【0032】
OTAチャンバ50の内面全域、つまり、筐体本体部52の底面52a、側面52b及び上面52c全面には、電波吸収体55が貼り付けられている。これにより、OTAチャンバ50は、内部空間51内に配置される各要素(DUT100、試験用アンテナ5、リフレクタ7、DUT走査機構56)が外部からの電波の侵入及び外部への電波の放射を抑止する機能が強化されている。このように、OTAチャンバ50は、周囲の電波環境に影響されない内部空間51を有する電波暗箱を実現している。本実施形態で用いる電波暗箱は、例えば、Anechoic型のものである。
【0033】
OTAチャンバ50の内部空間51に収容されるもののうち、DUT100は、例えばスマートフォンなどの無線端末である。DUT100の通信規格としては、例えば、セルラ(LTE、LTE-A、W-CDMA(登録商標)、GSM(登録商標)、CDMA2000、1xEV-DO、TD-SCDMA等)、無線LAN(IEEE802.11b/g/a/n/ac/ad等)、Bluetooth(登録商標)、GNSS(GPS、Galileo、GLONASS、BeiDou等)、FM、及びデジタル放送(DVB-H、ISDB-T等)が挙げられる。また、DUT100は、IEEE802.11adや5Gセルラ等に対応したミリ波帯の無線信号を送受信する無線端末であってもよい。
【0034】
本実施形態において、DUT100のアンテナ110は、例えば、LTE、あるいは5G NRの通信規格に準拠したそれぞれの規定の周波数帯の無線信号に対応するものである。DUT100は、本発明における被試験対象、移動端末を構成する。
【0035】
OTAチャンバ50の内部空間51において、DUT100は、DUT走査機構56の一部機構により保持されている。DUT走査機構56は、OTAチャンバ50の内部空間51における筐体本体部52の底面52aに、鉛直方向に延在して設けられている。DUT走査機構56は、性能試験を行うDUT100を保持しつつ、該DUT100に対する後述の全球面走査(
図5~
図6参照)を実施するものである。
【0036】
DUT走査機構56は、
図1に示すように、ターンテーブル56a、支柱部材56b、DUT載置部56c、駆動部56eを有している。ターンテーブル56aは、円盤形状を有する板部材で構成され、アジマス軸(鉛直方向の回転軸)を中心に回転する構成(
図3、
図7参照)を有する。支柱部材56bは、ターンテーブル56aの板面上に垂直方向に延びるように配置される柱状部材により構成されている。
【0037】
DUT載置部56cは、支柱部材56bの上端近傍にターンテーブル56aと平行に配置され、DUT100を載置する載置トレイ56dを有している。DUT載置部56cは、ロール軸(水平方向の回転軸)を中心に回転可能な構成(
図3、
図7参照)を有している。
【0038】
駆動部56eは、例えば、
図3に示すように、アジマス軸を回転駆動する駆動モータ56fと、ロール軸を回転駆動する駆動モータ56gと、を有する。駆動部56eは、駆動モータ56fと駆動モータ56gとによって、アジマス軸とロール軸とをそれぞれの軸中心に回転させる機構を備えた2軸ポジショナにより構成されている。このように、駆動部56eは、載置トレイ56dに載置されたDUT100を、載置トレイ56dごと2軸(アジマス軸とロール軸)方向に回転させることができるものである。以下、駆動部56eを含むDUT走査機構56全体を2軸ポジショナと称することもある(
図3参照)。
【0039】
DUT走査機構56は、載置トレイ56dに載置(保持)されているDUT100を、例えば、球体(
図5の球体B参照)の中心O1に配置したと仮定し、球体表面の全ての方位に対してアンテナ110が向く状態にDUT100の姿勢を順次変化させる全球面走査を行うものである。DUT走査機構56におけるDUT走査の制御は、後述するDUT走査制御部16よって行われる。DUT走査機構56は、本発明におけるポジショナを構成する。
【0040】
試験用アンテナ5は、OTAチャンバ50の筐体本体部52の底面52aの所要位置に、適宜な保持具(図示せず)を用いて取り付けられている。試験用アンテナ5の取り付け位置は、底面52aに設けられた開口67aを介してリフレクタ7からの見通しが確保できる位置となっている。試験用アンテナ5は、DUT100のアンテナ110と同じ規定(NR規格)の周波数帯の無線信号に対応するものである。
【0041】
試験用アンテナ5は、OTAチャンバ50内でのDUT100のNRに関連する測定に際し、NRシステムシミュレータ20からDUT100に対する試験信号の送信、及び該試験信号を受信したDUT100から送信される被測定信号の受信を行う。試験用アンテナ5は、その反射面がリフレクタ7の焦点位置Fとなるように配置されている。なお、試験用アンテナ5をその指向性パターンがDUT100に向き適切な送受信ができるように配置できる場合には、リフレクタ7は必ずしも必要とされない。
【0042】
リフレクタ7は、OTAチャンバ50の側面52bの所要位置にリフレクタ保持具58を用いて取り付けられている。リフレクタ7は、DUT100のアンテナ110により送受信される無線信号(試験信号、及び被測定信号)を、試験用アンテナ5の反射面へと折り返す電波経路を実現する。
【0043】
次に、統合制御装置10、NRシステムシミュレータ20の構成について説明する。
【0044】
図2に示すように、統合制御装置10は、NRシステムシミュレータ20に対して、例えばイーサネット(登録商標)等のネットワーク19を介して相互に通信可能に接続されている。また、統合制御装置10は、OTAチャンバ50における被制御系要素、例えば、DUT走査制御部16にもネットワーク19を介して接続されている。
【0045】
統合制御装置10は、ネットワーク19を介して、NRシステムシミュレータ20、及びDUT走査制御部16を統括的に制御するものであり、例えば、パーソナル・コンピュータ(PC)により構成される。なお、DUT走査制御部16は、OTAチャンバ50に付随して独立に設けられる(
図2参照)他、
図3に示すように、統合制御装置10に設けられていてもよい。以下では、統合制御装置10が
図3に示す構成を有するものとして説明する。統合制御装置10は、本発明の測定制御手段を構成している。
【0046】
図3に示すように、統合制御装置10は、制御部11、操作部12、表示部13を有している。制御部11は、例えば、コンピュータ装置によって構成される。このコンピュータ装置は、測定装置1の機能を実現するための所定の情報処理や、NRシステムシミュレータ20、及びDUT走査制御部16を対象とする統括的な制御を行うCPU(Central Processing Unit)11aと、CPU11aを立ち上げるためのOS(Operating System)やその他のプログラム及び制御用のパラメータ等を記憶するROM(Read Only Memory)11bと、CPU11aが動作に用いるOSやアプリケーションの実行コードやデータ等を記憶するRAM(Random Access Memory)11c、外部I/F部11d、入出力ポート(図示せず)等を有する。
【0047】
外部I/F部11dは、ネットワーク19を介して、NRシステムシミュレータ20、及びDUT走査機構(2軸ポジショナ)56の駆動部56eとそれぞれ通信可能に接続されている。入出力ポートには、操作部12、表示部13が接続されている。操作部12は、コマンドなど各種情報を入力するための機能部であり、表示部13は、上記各種情報の入力画面や測定結果など、各種情報を表示する機能部である。本実施形態において、表示部13は、EIS-CDF測定における測定進捗表示画面13a(
図10参照)を表示する機能を有している。
【0048】
上述したコンピュータ装置は、CPU11aがRAM11cを作業領域としてROM11bに格納されたプログラムを実行することにより制御部11として機能する。制御部11は、
図3に示すように、呼接続制御部14、信号送受信制御部15、DUT走査制御部16、信号解析制御部17、受信感度試験制御部18、測定状況表示制御部18dを有している。呼接続制御部14、信号送受信制御部15、DUT走査制御部16、信号解析制御部17、受信感度試験制御部18、測定状況表示制御部18dも、CPU11aがRAM11cの作業領域でROM11bに格納された所定のプログラムを実行することにより実現されるものである。
【0049】
呼接続制御部14は、NRシステムシミュレータ20、信号処理部23を介して試験用アンテナ5を駆動してDUT100との間で制御信号(無線信号)を送受信させることにより、NRシステムシミュレータ20とDUT100との間に呼(無線信号を送受信可能な状態)を確立する制御を行う。
【0050】
信号送受信制御部15は、操作部12におけるユーザ操作を監視し、ユーザによりDUT100の送信及び受信特性の測定に係る所定の測定開始操作が行われることを契機に、呼接続制御による呼の確立後のNRシステムシミュレータ20に対して信号送信指令を送信し、NRシステムシミュレータ20から試験用アンテナ5を介して試験信号を送信させる制御、及び信号受信指令を送信し、試験用アンテナ5を介して被測定信号を受信させる制御を行う。
【0051】
DUT走査制御部16は、DUT走査機構56の駆動モータ56f及び56gを駆動制御することにより、DUT載置部56cの載置トレイ56dに載置されているDUT100の全球面走査を行わせるものである。
【0052】
ここで、DUT100の全球面走査について
図5~
図7を参照して説明する。一般に、DUT100が放射する信号の電力測定(放射電力測定)に関しては、等価等方輻射電力(EIRP)を測定する方法と、全放射電力(TRP)を測定する方法が知られている。EIRPは、例えば、
図5(a)に示す球座標系(r,θ,φ)の各測定点(θ,φ)で測定した電力値である。これに対し、TRPは、上記球座標系(r,θ,φ)の全ての方位、すなわち、DUT100の全球面走査の中心O1(以下、基準点)から等距離にある球面上の予め規定した複数の角度標本点PS(
図5(b)参照)でのEIRPを測定し、その総和を求めたものである。
【0053】
DUT100の全球面走査とは、載置トレイ56dに載置されているDUT100を、例えば、球体B(
図5参照)の中心O1を基準(中心)に、球体Bの表面の全ての方位、つまり角度標本点PSに対してアンテナ110が向く状態にDUT100の姿勢を順次変化させる制御動作のことをいう。
【0054】
DUT100の全球面走査に合わせて各角度標本点PSでのEIRPを測定するため、
図6に示すように、上記球座標系(r,θ,φ)系における特定の角度標本点PS(1点)の位置には、
図6に示すように、DUT100が放射する信号を受信するための試験用アンテナ5が配置されている。
【0055】
全球面走査において、DUT100は、アンテナ110のアンテナ面が試験用アンテナ5の受光面に順次に向くように駆動(走査)される。これにより、試験用アンテナ5は、全球面走査が行われるDUT100のアンテナ110との間でTRP測定のための信号の送受信を行うことが可能となる。ここで送受信される信号は、NRシステムシミュレータ20から試験用アンテナ5を介して送信される試験信号と、該試験信号を受信したDUT100がアンテナ110より送信する信号であって、試験用アンテナ5を介して受信される被測定信号である。
【0056】
DUT100の全球面走査は、DUT走査機構56を構成する駆動モータ56f及び56gによりアジマス軸及びロール軸を回転駆動することにより実現される。測定装置1におけるDUT100の全球面走査に係るDUT走査機構(2軸ポジショナ)56のアジマス軸及びロール軸周りの回転駆動イメージを
図7に示している。
図7に示すように、本実施形態に係る測定装置1のDUT走査機構56では、アジマス軸をその軸中心にφの角度方向に例えば180度の範囲内で移動させる一方で、ロール軸をその軸中心にθの角度方向に例えば360度の範囲内で移動させることによって、DUT100をその中心O1を基準に全方位向けに回転させる全球面走査(
図5、
図6参照)を行うことができる。
【0057】
図7において、φ0は、アジマス軸の回転方向(φの角度方向)の全移動角度(180度)中の単位移動角度を示し、θ0は、ロール軸の回転方向(θの角度方向)の全移動角度(360度)中の単位移動角度(以下、ステップ角度)を示している。φ0、θ0は、例えば、予め規定された複数の異なる値のステップ角度のうちから所望の値のステップ角度を選択的に設定できるようになっている。設定されたφ0、θ0は、
図5(b)に示す隣り合う角度標本点PS間の角度を規定し、結果として角度標本点PS、つまり測定ポジションの数を規定するものとなる。
【0058】
DUT走査制御部16によるDUT100の全球面走査の制御を実現するために、例えば、ROM11bには、予め、DUT走査制御テーブル16aが用意されている。DUT走査制御テーブル16aは、例えば、DUT100の全球面走査に係る球座標系(
図5(a)参照)における各角度標本点PS(
図5(b)参照)の座標、各角度標本点PSの座標に対応付けられた駆動モータ56f及び56gの駆動データ、及び各角度標本点PSでの停止時間(測定時間)などが関係付けられた制御データを格納している。駆動モータ56f及び56gが例えばステッピングモータの場合には、上記駆動データとして例えば駆動パルス数が格納される。
【0059】
DUT走査制御部16は、DUT走査制御テーブル16aをRAM11cの作業領域に展開し、該DUT走査制御テーブル16aに記憶されている制御データに基づき、DUT走査機構56の駆動モータ56f及び56gを駆動制御する。これにより、DUT載置部56cに載置されるDUT100の全球面走査が行われる。全球面走査では、球座標系における角度標本点PSごとにDUT100のアンテナ110のアンテナ面が該角度標本点PSに向いて規定の時間(上記停止時間)だけ停止し、その後、次の角度標本点PSに移動する動作(DUT100の走査)が、全ての角度標本点PSを対象にして順次実施される。
【0060】
信号解析制御部17は、DUT100の全球面走査時に、試験用アンテナ5が受信したNRに関連する無線信号を、NRシステムシミュレータ20を介して取り込み、EIS-CDF測定に係る信号として解析処理(測定処理)するものである。
【0061】
上述したDUT100の全球面走査に合わせて、測定装置1では、球座標系(r,θ,φ)の各測定ポジションでEIS(等価等方感度)の測定を行うことも可能である。EISの測定は、NRシステムシミュレータ20から試験用アンテナ5を介して試験信号を送信し、該試験信号を受信したDUT100がアンテナ110より送信する信号(被測定信号を受信してDUT100の受信感度を評価するものである。
【0062】
各測定ポジションでのEISの測定においては、試験信号の出力レベルを変更しながら送信し、その試験信号を受信したDUT100が送信する信号(被測定信号)のスループットを測定し、該スループットの測定結果に応じてEISの累積分布関数(CDF)を算出する受信感度試験が複数回実施される。
図6において、試験用アンテナ5とDUT100との間に介在する複数の楕円形状は、EIS測定に係る受信感度試験における試験信号の出力レベルの変更設定イメージを示している。
【0063】
受信感度試験制御部18は、EISの測定に際し、NRシステムシミュレータ20の信号発生部21aから送信した試験用信号をDUT100で受信させて被測定信号を応答送信させ、該被測定信号をNRシステムシミュレータ20の信号測定部21bに入力させる受信感度試験に係る制御を行うものである。
【0064】
受信感度試験制御部18は、EIS測定に係る受信感度試験を実現するために、試験条件設定部18a、スループット測定部18b、出力レベル可変設定部18cを有している。
【0065】
試験条件設定部18aは、受信感度試験の試験条件(ステップ角度等)を設定する機能部である。スループット測定部18bは、受信感度試験ごとにDUT100から応答送信される被測定信号のスループットを測定する機能部である。出力レベル可変設定部18cは、スループット測定部18bによるスループットの測定結果と予め設定された所定の閾値(スループット閾値)との比較結果に応じて、次回の受信感度試験における試験用信号の出力レベルを可変設定する(例えば、順次レベルダウンさせる)機能部である。
【0066】
測定状況表示制御部18dは、EIS測定に係る受信感度試験における測定の進捗状況を示す測定進捗表示画面13a(
図10参照)を表示部13に表示させる表示制御機能を担っている。測定状況表示制御部18dは、本発明における表示制御手段を構成している。
【0067】
NRシステムシミュレータ20は、
図4に示すように、信号発生部21a、信号測定部21b、送受信部21c、制御部21d、操作部21e、表示部22fを有している。NRシステムシミュレータ20は、本発明の模擬測定装置を構成する。
【0068】
信号発生部21aは、試験信号の元となる信号(ベースバンド信号)を発生する。送受信部21cは、信号発生部21aが発生した信号から各通信規格の周波数に対応した試験信号を生成して信号処理部23に送出するとともに、信号処理部23から送られてくる被測定信号からベースバンド信号を復元するRF部の機能を果たす。信号測定部21bは、送受信部21cで復元されたベースバンド信号に基づいて被測定信号の測定処理を行う。
【0069】
制御部21dは、信号発生部21a、信号測定部21b、送受信部21c、操作部21e、表示部22fの各機能部を統括的に制御する。操作部21eは、コマンドなど各種情報を入力するための機能部であり、表示部22fは、各種情報の入力画面や測定結果など、各種情報を表示する機能部である。
【0070】
上述した構成を有する測定装置1では、OTAチャンバ50の内部空間51内で、DUT走査機構(2軸ポジショナ)56の載置トレイ56dにDUT100を載置し、該DUT100を、載置トレイ56dごと2軸(アジマス軸とロール軸)方向に予め設定されたステップ角度ずつ移動(回転)させながら、各測定ポジションでのEIRPの測定、全ての測定ポジションに亘るTRPの測定の他、各測定ポジションでのEISの測定、全ての測定ポジションに亘るEIS-CDFの測定を行うことができる。
【0071】
次に、本実施形態に係る測定装置1の統合制御装置10によるEIS-CDF測定制御動作について
図8に示すフローチャートを参照して説明する。EIS-CDF測定制御動作においては、例えば
図5(b)にイメージで示すように、測定ポジション(丸で囲まれた角度標本点PS)ごとにEIS測定を実施し、各測定ポジションでのESI測定の結果を用いて累積分布関数(CDF)を求める(丸で囲まれた角度標本点PS間の矢印)処理が行われる。
【0072】
測定装置1において、EIS-CDF測定を行うためには、まず、OTAチャンバ50のDUT走査機構(2軸ポジショナ)56のDUT載置部56cに試験対象となるDUT100をセットしたうえで、操作部12より測定パラメータの設定を行う(ステップS1)。ここで統合制御装置10の制御部11における試験条件設定部18aは、操作部12での操作入力を受け付けて、測定項目をEIS-CDF測定とする設定を行い、さらには測定ポジション間のステップ角度を設定する。
【0073】
測定パラメータの設定終了後、統合制御装置10は、操作部12において測定開始操作が行われたか否かを監視する(ステップS2)。ここで測定開始操作が行われると(ステップS2でYES)、測定状況表示制御部18dは、インデックス番号を「1」インクリメントし、測定進捗表示画面13aのEIS測定状況表示領域13c(第1の表示領域)にインデックス番号「1」(
図10の例では、(0,1))に対応する上記各項目131、132、133のリスト表示領域を確保する(ステップS3)。
【0074】
次いで、DUT走査制御部16は、ステップS1で設定されたステップ角度に基づき、2軸ポジショナを、
図5(a)に示す球座標系(r,θ,φ)における初期測定ポジションに対応する(θ,φ)の角度位置まで回転(移動)させるように駆動モータ56f、56gを回転駆動する(ステップS4)。
【0075】
引き続き、受信感度試験制御部18は、NRシステムシミュレータ20を駆動制御し、ステップS4における2軸ポジショナの角度位置に対応する測定ポジション(初回の測定は、初期測定ポジション)でのEIS測定を行わせるように制御する(ステップS5)。
【0076】
初期測定ポジションでのEIS測定において、受信感度試験制御部18は、NRシステムシミュレータ20の信号発生部21aから発生させた信号を信号処理部23に入力して試験信号を生成し、該試験信号を試験用アンテナ5によりDUT100に送信させる。引き続き、受信感度試験制御部18は、上記試験信号を受信したDUT100が送信する被測定信号を試験用アンテナ5で受信させ、さらに信号処理部23、送受信部21cを介して信号測定部21bで被測定信号のスループットを測定させ、試験信号の出力レベルを変更しながらスループットの測定を複数回繰り返す受信感度試験を行わせるようにスループット測定部18b、出力レベル可変設定部18cを制御する。
【0077】
受信感度試験を複数回実施させる間にスループットの測定値が閾値以下となった場合、受信感度試験制御部18は、閾値以下となる直前のスループットの測定値を保持(記憶)したうえで、次の回のスループット測定を行わないように制御する。
【0078】
上述した受信感度試験は、互いに直交する直線偏波であるθ偏波とφ偏波の試験信号ついてそれぞれ1回ずつ実施される(
図9のステップS41~S46、S47参照)。合計2回の受信感度試験が終了すると、受信感度試験制御部18は、それぞれの回の受信感度試験の終了時に保持しておいた、閾値以下となる直前のスループットの測定値(θ偏波に対応する測定値とφ偏波に対応する測定値)から両者の平均値をEIS値として算出する(
図9のステップS48参照)。
【0079】
ステップS5における初期測定ポジションでのEIS測定(EIS値=EIS(Totalの算出)が終了すると、次いで、DUT走査制御部16は、残りの測定ポジションが存在するか否かを判定する(ステップS6)。
【0080】
ここで残りの測定ポジションが存在すると判定された場合(ステップS6でYES)、インデックス番号をさらに「1」インクリメントして、測定進捗表示画面13aのEIS測定状況表示領域13cに当該インデックス番号(0,2)に対応するリスト表示領域を確保(ステップS3)したうえで、DUT走査制御部16は、2軸ポジショナを、球座標系(r,θ,φ)における次の測定ポジションに対応する(θ,φ)の角度位置まで移動させるように駆動モータ56f、56gを回転駆動する(ステップS4)。ここで2軸ポジショナを移動させる角度(前回の測定ポジションから次の測定ポジションまでの角度)は、ステップS1で設定を受け付けたステップ角度に相当する。
【0081】
2軸ポジショナのステップ角度の移動が終了して次の測定ポジションで停止すると、受信感度試験制御部18は、ステップS4における2軸ポジショナの角度位置に対応する次(2回目)の測定ポジションでのEIS測定を実施させるようにNRシステムシミュレータ20を駆動制御する(ステップS5)。
【0082】
その後、ステップS6で残りの測定ポジションが存在すると判定されている(ステップS6でYES)間、DUT走査制御部16、信号解析制御部17は、ステップS3からステップS6の処理繰り返し実施することで、残りの測定ポジションでのEIS測定を実施させる。
【0083】
測定ポジションを更新させつつその更新された測定ポジションでのEIS測定を行う制御を繰り返している間、ステップS6において残りの測定ポジションが存在しないと判定されると(ステップS6でNO)、受信感度試験制御部18は、設定した全ての測定ポジションでのEI測定結果(EIS(Total))を集計し、記憶部に保持(ステップS7)したうえで、一連のEIS-CDF測定制御動作を終了する。
【0084】
このように、測定装置1では、
図8に示すEIS-CDF測定に際し、統合制御装置10が、2軸ポジショナの回転に合わせて、試験用アンテナ5からDUT100に試験信号を送信し、該試験信号を受信したDUT100から送信される被測定信号を試験用アンテナ5で受信させて該被測定信号に基づきスループットを測定し、試験信号の出力レベルを変更しながらスループットの測定を繰り返す受信感度試験を、複数の方位に対応する各測定ポジションで実施させるようにNRシステムシミュレータ20を制御する。
【0085】
また、EIS-CDF測定において、測定状況表示制御部18dは、
図8のステップS4、S5に括弧書きで示すように、測定ポジションごとのEIS測定処理に合わせて測定進捗表示画面13aの表示処理を示している。すわなち、測定状況表示制御部18dは、ステップS4で2軸ポジショナの初期測定ポジションへの移動制御が行われるのに合わせて測定進捗表示画面13aの初期画面を表示し、さらに、ステップS5でのEIS測定の進行に合わせて測定進捗表示画面13aの各項目の値を更新表示させる制御を行う。
【0086】
測定進捗表示画面13aは、
図10に示すように、項目選択ツール表示領域13b、EIS-CDF測定状況表示領域13c、EIS測定状況表示領域13dを有して構成されている。項目選択ツール表示領域13bは、測定進捗表示画面13a上に表示する表示項目(以下、項目)を選択するために用いる各種の項目選択ツールを表示する領域である。EIS-CDF測定状況表示領域13cは、上述したEIS測定が終了した測定ポジションまでのEIS-CDFの測定結果を表示する表示領域である。EIS測定状況表示領域13dは、EIS測定におけるスループット測定を開始した測定ポジションでのEIS測定の進捗状況を表示する表示領域である。EIS-CDF測定状況表示領域13c、EIS測定状況表示領域13dは、それぞれ、本発明の第1の表示領域、第2の表示領域を構成している。
【0087】
EIS-CDF測定状況表示領域13cは、測定の順番を示すインデックス番号の項目130の他、EISの測定対象の測定ポジションに対応する2軸ポジショナのロール軸周りの回転角度θ、同アジマス軸周りの回転角度φ、当該測定ポジションにおけるEISの測定結果(単位:dBm)の各項目131、132、133を有している。測定状況表示制御部18dは、EIS-CDF測定状況表示領域13cの各項目130、131、132、133について、累積分布測定の進行に合わせて、それぞれの値(インデックス番号、回転角度θ、回転角度φ、EISの測定結果)を更新して表示する表示制御を行う。
【0088】
EIS測定状況表示領域13dは、累積分布測定に係る試験回数(Test Counts:テストカウント)を示す項目134の他、試験信号の偏波(Polarization)、試験信号の出力レベル(Output Level:単位:dBm)、試験信号の伝送レート(Rate:単位:%)、試験信号を受信したDUT100が送信する被測定信号のスループット(Throughput)の測定値(単位:Mbps)、スループットの測定値が予め設定し閾値を超えているか否かの判定結果(Judge:成功(Pass)、または失敗(Fail))の各項目135、136、137、138、139を有している。測定状況表示制御部18dは、EIS測定状況表示領域13dの各項目134、135、136、137、138、139について、EIS測定の進行に合わせて、それぞれの値(テストカウント、試験信号の偏波、試験信号の出力レベル、試験信号の伝送レート、スループットの測定値、判定結果の値)を更新して表示する。
【0089】
なお、測定進捗表示画面13aの初期画面(
図8のステップS4参照)は、例えば、EIS-CDF測定状況表示領域13cにインデックス番号(0,1)に対応する上記各項目131、132、133の表示領域が確保され、EIS測定状況表示領域13dにテストカウント「12」に対応する上記各項目135、136、137、138、139の表示領域が確保される表示形態を有している。
【0090】
次に、本実施形態に係る測定装置1の統合制御装置10によるEIS-CDF測定時おける測定状況表示処理動作について
図9に示すフローチャートを参照して説明する。この測定状況表示処理は、
図8におけるステップS5でのEISの測定に合わせて実施され、同ステップS4で表示された測定進捗表示画面13a(初期画面)の各項目について、EIS-CDF測定の進行に合わせて当該各項目の値を更新する表示制御形態をとる。
【0091】
この測定状況表示処理を実行するにあたり、受信感度試験制御部18は、当該測定ポジションでのEIS測定のための受信感度試験の最初の処理として、まず受信感度試験対象をθ偏波に切り替え、出力レベル可変設定部18cにより試験用信号の出力レベルを当初の出力レベルから1段階レベルダウンさせたうえで(但し、初回の出力レベルは規定値)、当該θ偏波の試験信号を試験用アンテナ5から送信させる(ステップS41)。
【0092】
引き続き、受信感度試験制御部18は、上記試験信号を受信したDUT100が送出する被測定信号を試験用アンテナ5によりを受信させ、当該受信された被測定信号のスループットをスループット測定部18bで測定させる制御を行う(ステップS42)。
【0093】
次いで、測定状況表示制御部18dは、ステップS42で測定されたスループットの値(測定値)を、測定進捗表示画面13aのEIS測定状況表示領域13d(第2の表示領域)に確保したテストカウント「12」に対応するリスト表示領域の項目136として表示させるように制御する(ステップS43)。
【0094】
さらに、スループット測定部18bは、ステップS42で測定されたスループットの値が予め設定された閾値を超えているか否かを判定する(ステップS44)。ここで、測定されたスループットの値が閾値を超えている、つまり「Pass」であると判定されると(ステップS44でYES)、測定状況表示制御部18dは、EIS測定状況表示領域13dのテストカウント「12」に対応する表示領域の項目139の値として判定結果「Pass」を表示させるように制御する(ステップS45)。
【0095】
その後、制御部11は、ステップS41に戻り、2回目以降の受信感度試験のためのステップS41~S44の処理を継続させるように制御する。この制御の間に、例えばn回目の受信感度試験の際にステップS42で測定されたスループットの値が閾値以下である、つまり「Fail」であると判定されると(ステップS44でNO)、測定状況表示制御部18dは、EIS測定状況表示領域13dのテストカウント「n」に対応する表示領域の項目139の値として判定結果「Fail」を表示させるように制御する(ステップS46)。
【0096】
次に、受信感度試験制御部18は、受信感度試験対象をθ偏波からφ偏波に切り替え、当該φ偏波についての上記ステップS41~S46までの処理を実行するようにスループット測定部18b、出力レベル可変設定部18c、測定状況表示制御部18dを制御する(ステップS47)。
【0097】
これにより、ステップS47では、当該測定ポジションにおいて、φ偏波の試験用信号の出力レベルが当初の出力レベルから1段階レベルダウンされてその試験信号が試験用アンテナ5から送信され(ステップS41参照)、該試験信号を受信したDUT100が送出する被測定信号が試験用アンテナ5によりを受信され、当該被測定信号のスループット測定が行われる(ステップS42参照)。
【0098】
ここでスループットの値(測定値)は測定進捗表示画面13aのEIS測定状況表示領域13dのテストカウント「12」に対応するリスト表示領域の項目136として表示される。このとき、項目135のPolarizationはφ偏波を示すPhiという表示に切り替えられている。
【0099】
さらに、測定されたスループットの値が閾値を超えているか否かが判定される(ステップS44参照)。ここで、スループットの値が閾値を超えていることにより「Pass」であることが判定されると、EIS測定状況表示領域13dのテストカウント「12」に対応する表示領域の項目139の値として判定結果「Pass」を表示される。
【0100】
その後、2回目以降の受信感度試験のためのステップS41~S44と同等の処理が行われる。この間、例えばn回目の受信感度試験で測定されたスループットの値が閾値以下であることにより「Fail」であると判定されると、EIS測定状況表示領域13dのテストカウント「n」に対応する表示領域の項目139の値として判定結果「Fail」を表示させる。
【0101】
ここまでの処理において、ステップS41~S46でθ偏波の受信感度試験がスループットの測定値が「Fail」判定となるまで複数回実施され、次いでステップS47においてφ偏波の受信感度試験が複数回実施されて何回目かでスループットの測定値が「Fail」判定されることで当該φ偏波の受信感度試験が終了する。
【0102】
引き続き、測定状況表示制御部18dは、測定進捗表示画面13aのEIS-CDF測定状況表示領域13cのこのときのインデックス番号に対応する項目133の値(EIS(Total))を更新表示する(ステップS48)。
【0103】
ここで測定状況表示制御部18dは、更新するEIS(Total)の値を、下式(1)を用いて算出する。
EIS = 2*[1/ EIS(PolMes = θ,PolLink = θ)+1/ EIS(PolMes = φ,PolLink = φ)]
・・・ (1)
【0104】
式(1)において、[ ]内の+に対する左の項はθ偏波の受信感度試験(ステップS41~S46参照)で得られたEIS値を示し、右の項はφ偏波の受信感度試験(ステップS47参照)で得られたEIS値を示している。
【0105】
すなわち、測定状況表示制御部18dは、測定ポジションごとに、それぞれ、スループットの測定値が「Fail」判定される一つ前のθ偏波のEIS値とφ偏波のEIS値の平均値を(EIS(Total))として算出し表示する制御機能を有している。
【0106】
ステップS48でのEIS(Total)の更新表示の後、一連の測定状況表示処理動作を終了させる制御が行われる。測定状況表示処理動作の終了に際しては、EIS-CDF測定状況表示領域13cの項目133の値(EIS(Total)は、測定中であること示す「measuring」から、1つ前の回の受信感度試験でスループットの値が「Pass」であると判定されたときの試験信号の出力レベルの値(θ偏波とφ偏波のEIS値の平均値)に変更表示される。
【0107】
図10に示す測定進捗表示画面13aを例に挙げて、
図9の測定状況表示処理動作におけるEIS-CDF測定状況表示領域13c、及びEIS測定状況表示領域13dの更新表示の流れについてさらに詳しく説明する。
【0108】
図10に示す測定進捗表示画面13aは、EIS-CDF測定状況表示領域13cに表示されるインデックス番号(0,1)から(0,8)に対応する各測定ポジションのEISの測定が終了し、インデックス番号(0,9)に対応する測定ポジションでのθ偏波のEISの測定が実行されているときの表示形態を示している。
【0109】
このとき、EIS-CDF測定状況表示領域13cでは、項目133の値として、既に測定終了した各測定ポジションのインデックス番号(0,1)から(0,8)にそれぞれ対応してEISの測定結果(EIS(Total))が表示されている。これらの測定結果の値は、当該各測定ポジションにおける複数回のスループット測定の終了時に特定された試験信号の出力レベル(EIS測定状況表示領域13dの項目136に相当)の値(但し、θ偏波とφ偏波のEIS値の平均値)である。このとき、インデックス番号(0,9)に対応する項目133には、測定実行中であることを示す値(「measuring」)が表示されている。
【0110】
一方で、測定進捗表示画面13aのEIS測定状況表示領域13dについては、インデックス番号(0,9)に対応する測定ポジションでのEIS測定の進行に合わせて、項目134、135、136、137、138、139の値が順次更新されて表示されている。この例では、テストカウントが「12」から順に「15」まで進み、該テストカウントの値にそれぞれ対応する試験信号の偏波(
図10の例ではθ偏波)、試験信号の出力レベル、試験信号の伝送レート、スループットの測定値、判定結果の値が順次更新されて表示されている。ここで、テストカウント「12」より前の回に対応するリスト表示領域はスクロールにより隠れている表示形態としてもよい。
【0111】
ここで、項目139の判定結果(Judge)の値は、テストカウント「12」~「14」に対応する回の試験では「Pass」であり、テストカウント「15」に対応する回の試験では「Fail」となっている。これにより、当該測定ポジション(インデックス番号(0,9)に対応する)でのθ偏波のEIS測定のためのスループット測定は4回目で終了する。φ偏波のEIS測定の際にも、測定の進行に合わせて項目134、135、136、137、138、139の値が順次更新されて表示されこととなる。
【0112】
試験の終了(
図9のステップS48参照)に際して、測定状況表示制御部18dは、EIS-CDF測定状況表示領域13cの当該測定ポジションに対応するインデックス番号(0,9)に対応するEISの測定結果(EIS(Total))の項目133の欄に、EIS測定状況表示領域13dに項目136として表示されていた試験信号の出力レベルのうちの、スループットの測定値が閾値を下回った(「Fail」)と判定された試験信号の出力レベルの直前の試験信号の出力レベルに対応する値を表示するようになっている。具体的に表示される値は、上記(1)によって算出される値であり、閾値が95%である場合に、伝送レートが94.6%であるテストカウント「15」の1つ前のテストカウント「14」に対応するθ偏波の試験信号の出力レベル-86.5dBmと、同様に行ったφ偏波のテストカウント(例えば、同じ「14」)に対応する出力レベルを平均した値である。このようにして算出された、θ偏波とφ偏波の閾値を下回る直前の両出力レベルの平均値を、「measuring」の表示から変更して表示する。
【0113】
このように、本実施形態に係る測定装置1は、各測定ポジションでのEIS-CDFの測定結果(EIS(Total))をEIS-CDF測定状況表示領域13cにリスト形式で表示するのに加えて、EISを取得するための現在までの測定状況を、試験信号の偏波(Polarization)、試験信号の出力レベル(Output Level)、被測定信号のスループット(Throughput)、スループットに関するPass/Fail判定結果(Judge)などの各項目を設けてEIS測定状況表示領域13dに表示する測定進捗状況表示制御機能を有している。
【0114】
上述したように、本実施形態に係る測定装置1は、OTAチャンバ50の内部空間51内に設けられ、DUT100を球座標系の予め設定された全ての方位を順次向くように回転させるポジショナ(DUT走査機構56)と、内部空間51内の試験用アンテナ5に接続されるNRシステムシミュレータ20と、ポジショナの回転に合わせて、試験用アンテナ5からDUT100に試験信号を送信し、該試験信号を受信したDUT100から送信される被測定信号を試験用アンテナ5で受信させて該被測定信号に基づきスループットを測定し、試験信号の出力レベルを変更しながらスループットの測定を繰り返す受信感度試験を、複数の方位に対応する各測定ポジションで実施させるようにNRシステムシミュレータ20を制御する統合制御装置10と、各測定ポジションごとの受信感度試験の進行に合わせて、受信感度試験が終了した測定ポジションまでの受信感度試験の結果を表示するEIS-CDF測定状況表示領域13cと、受信感度試験を開始した測定ポジションでの受信感度試験の測定の進捗状況を表示するEIS測定状況表示領域13dと、を有する測定進捗表示画面13aを表示する測定状況表示制御部18dと、を有する。
【0115】
この構成により、本実施形態に係る測定装置1は、各測定ポジションでの受信感度試験中に、DUT100がどの出力レベルまで正常に受信し得るかの受信感度試験の進捗状況をEIS測定状況表示領域13dの表示内容から把握可能となる。これにより、EIS-CDF測定のような複数の測定ポジションごとの受信感度試験における測定の進捗状況を確認でき、測定の進行に関する不明さを解消することができる。さらには、異常がある場合の原因解明や再試験を行うか否かが見極められ、試験時間の見積もりが可能となる。
【0116】
また、本実施形態に係る測定装置1において、EIS測定状況表示領域13dは、試験信号の出力レベル、スループットの測定値、及び該測定値が閾値を超えているか否かの判定結果の各項目136、138、139を表示項目として含み、測定状況表示制御部18dは、EIS測定状況表示領域13dの各項目136、138、139の値を受信感度試験の進行に合わせて更新して表示する構成を有する。
【0117】
この構成により、本実施形態に係る測定装置1は、各測定ポジションでのEIS測定に係る受信感度試験中に、EIS測定状況表示領域13dに表示される試験信号の出力レベル、スループットの測定値、スループットの測定値が閾値を超えているか否かの判定結果を容易に確認できる。
【0118】
また、本実施形態に係る測定装置1において、EIS-CDF測定状況表示領域13cは、複数の測定ポジションに対応するポジショナの回転角度、及び当該測定ポジションにおける受信感度試験の結果を表示項目131、132、133として含み、測定状況表示制御部18dは、受信感度試験の測定結果として、EIS測定状況表示領域13dの表示領域に表示されている、スループットの測定値が閾値を超えていると判定された試験信号の出力レベルの直前の試験信号の出力レベルを表示する構成を有する。
【0119】
この構成により、本実施形態に係る測定装置1は、各測定ポジションでの等価等方感度測定に係る受信感度試験中、DUT100がそれ以上低い出力レベルの試験信号を受信できなくなるまで、EIS-CDF測定状況表示領域13cの各項目131、132、133の表示内容から、測定進行状況を継続的に確認することができる。
【0120】
また、本実施形態に係る測定装置1において、試験信号は、互いに直交する直線偏波のいずれかであり、複数の方位は、DUT100の等価等方感度(EIS)の累積分布関数(CDF)を算出するために必要な全ての方位であり、EIS-CDF測定状況表示領域13cは、累積分布測定の測定対象の測定ポジションに対応するポジショナの回転角度、及び当該測定ポジションにおける等価等方感度を表示項目131、132、133として含み、EIS-CDF測定状況表示領域13cに受信感度試験の結果として等価等方感度が表示される構成を有している。
【0121】
この構成により、本実施形態に係る測定装置1は、EIS測定における測定ポジションごとのCDF測定の進捗状況を確認できる。
【0122】
また、本実施形態に係る測定装置1において、EIS測定状況表示領域13dは、試験信号が、互いに直交する直線偏波のどちらかを示す項目をさらに表示する構成を有する。この構成により、本実施形態に係る測定装置1は、互いに直交する直線偏波として、例えば、θ偏波とφ偏波のいずれについても、EIS測定における測定ポジションごとのCDF測定の進捗状況を確認できるようになる。
【0123】
また、本実施形態に係る移動端末試験方法は、OTAチャンバ50の内部空間51内に設けられ、DUT100を球座標系の予め設定された複数の方位を順次向くように回転させるポジショナ(DUT走査機構56)と、内部空間51内の試験用アンテナ5に接続されるNRシステムシミュレータ20と、ポジショナの回転に合わせて、試験用アンテナ5からDUT100に試験信号を送信し、該試験信号を受信したDUT100から送信される被測定信号を試験用アンテナ5で受信させて該被測定信号に基づきスループットを測定し、試験信号の出力レベルを変更しながらスループットの測定を繰り返す受信感度試験を、複数の方位に対応する各測定ポジションで実施させるようにNRシステムシミュレータ20を制御する統合制御装置10と、を有する測定装置1における移動端末試験方法であって、各測定ポジションごとの受信感度試験の開始に合わせて、受信感度試験が終了した測定ポジションまでの受信感度試験の結果を表示するEIS-CDF測定状況表示領域13cと、受信感度試験を開始した測定ポジションでの受信感度試験の測定の進捗状況を表示するEIS測定状況表示領域13dと、を有する測定進捗表示画面13aの初期画面を表示する初期画面表示制御ステップ(S3)と、各測定ポジションごとの受信感度試験の進行に合わせて、受信感度試験が終了した測定ポジションまでの受信感度試験の結果をEIS-CDF測定状況表示領域13cに表示する測定ポジション状況表示ステップ(S48)と、受信感度試験を開始した測定ポジションでの受信感度試験の測定の進捗状況をEIS測定状況表示領域13dに表示する受信感度試験状況表示ステップ(S43、S45、S46、S47)と、を有している。
【0124】
この構成により、本実施形態に係る移動端末試験方法は、各測定ポジションでの受信感度試験中に、DUT100がどの出力レベルまで正常に受信し得るかの受信感度試験の進捗状況をEIS測定状況表示領域13dの表示内容から把握可能となる。これにより、EIS-CDF測定のような複数の測定ポジションごとの受信感度試験における測定の進捗状況を確認でき、測定の進行に関する不明さを解消することができる。さらには、異常がある場合の原因解明や再試験を行うか否かが見極められ、試験時間の見積もりが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0125】
以上のように、本発明に係る移動端末試験装置及び移動端末試験方法は、EIS-CDF測定のように複数の測定ポジションごとで行われる受信感度試験の進捗状況を確認でき、測定の進行に関する不明さを解消し、異常がある場合の原因解明や再試験を行うか否かが見極められ、試験時間の見積もりが可能となるという効果を奏し、5G無線端末等の高速通信能力を有する移動端末のEIS-CDF測定に係る受信感度試験を行う移動端末試験装置及び移動端末試験方法全般に有用である。
【符号の説明】
【0126】
1 測定装置(移動端末試験装置)
5 試験用アンテナ
10 統合制御装置(測定制御手段)
13 表示部
13a 測定進捗表示画面
13c EIS-CDF測定状況表示領域(第1の表示領域)
13d EIS測定状況表示領域(第2の表示領域)
18 受信感度試験制御部
18d 測定状況表示制御部(表示制御手段)
20 NRシステムシミュレータ(模擬測定装置)
50 OTAチャンバ(電波暗箱)
51 内部空間
56 DUT走査機構(ポジショナ)
100 DUT(被試験対象、移動端末)
131、132、133 EIS-CDF測定状況表示領域の表示項目(項目)
136、138、139 EIS測定状況表示領域の表示項目(項目)