(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022024539
(43)【公開日】2022-02-09
(54)【発明の名称】リールシート
(51)【国際特許分類】
A01K 87/06 20060101AFI20220202BHJP
A01K 87/08 20060101ALI20220202BHJP
【FI】
A01K87/06 B
A01K87/08 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020127191
(22)【出願日】2020-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002495
【氏名又は名称】グローブライド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097559
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 浩司
(74)【代理人】
【識別番号】100123674
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 亮
(72)【発明者】
【氏名】秋葉 勝
【テーマコード(参考)】
2B019
【Fターム(参考)】
2B019AA06
2B019CB03
2B019CB10
(57)【要約】 (修正有)
【課題】魚釣用リールと共に釣竿を握持、保持した際の操作性や握り心地が良く、更には、効率的に軽量化が図れるリールシートを提供する。
【解決手段】リールシート1のシート本体2は、リール脚載置部3、固定フード5及び移動フード7が配設される部分を備え、釣竿の外周面に固着される筒状に形成された第1本体10と、第1本体10に対して同等以下の強度の材料で形成されると共に、第1本体10の表面に被着、固定される第2本体30の分割構造で構成されている。第2本体30は、リール脚載置部3を露出させるように第1本体10に重合する半筒部31と、固定フード5を覆うように第1本体10に重合する筒部32とを備えたグリップ部を構成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
魚釣用リールのリール脚を載置するリール脚載置部を備え、リール脚載置部の軸方向一端側に固定フードが形成されると共に、リール脚載置部の軸方向他端側に移動フードが軸方向に沿って移動可能に配設されるシート本体を有するリールシートにおいて、
前記シート本体は、前記リール脚載置部、固定フード及び前記移動フードが配設される部分を備え、釣竿の外周面に固着される筒状に形成された第1本体と、第1本体に対して同等以下の強度の材料で形成されると共に、第1本体の表面に被着、固定される第2本体の分割構造で構成され、
前記第2本体は、前記リール脚載置部を露出させるように第1本体に重合する半筒部と、前記固定フードを覆うように第1本体に重合する筒部とを備えたグリップ部を構成することを特徴とするリールシート。
【請求項2】
前記第1本体と第2本体は、一体化した状態で周方向への回転を規制する係止構造を備えており、
前記係止構造は、前記半筒部の先端部分と前記円筒部の固定フードを覆う部分において、それぞれ軸方向に直交する両サイドに設けられていることを特徴とする請求項1に記載のリールシート。
【請求項3】
前記係止構造は、前記第1本体に対して第2本体を軸方向にスライドさせることで固定可能な凹凸部を有することを特徴とする請求項2に記載のリールシート。
【請求項4】
前記第2本体の筒部には、固定フードと反対側にトリガーが形成されており、
前記係止構造は、前記トリガーの近傍に設けられていることを特徴とする請求項2又は3に記載のリールシート。
【請求項5】
前記第2本体の半筒部及び筒部の少なくとも一方は、前記第1本体との間で隙間を有するように重合されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のリールシート。
【請求項6】
前記第1本体の軸心と、前記第2本体の筒部における軸心は、オフセットしていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のリールシート。
【請求項7】
前記第2本体は、透明性のある樹脂材料で形成されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のリールシート。
【請求項8】
前記第2本体の内面には、模様が形成されていることを特徴とする請求項7に記載のリールシート。
【請求項9】
上記した請求項1から8のいずれか1項に記載のリールシートを固着したことを特徴とする釣竿。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ルアーロッドや船竿等、各種の釣竿に取り付けられ、リールを装着、固定するのに用いられるリールシートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、リールを使用する釣竿には、リールを装着するリールシートが固定されており、例えば、特許文献1に開示されているように、元竿杆の外周面に装着、固定される筒状のリールシートが知られている。特許文献1には、両軸受け型リールを用いるのに適した筒状のリールシートが開示されており、筒状に形成された本体には、基端側の上面側に固定フードが、基端側の下面側にトリガーが形成されている。また、先端側には、雄螺子部が形成されており、その部分にナットによって前後動される移動フードが配設され、本体の上面に形成されたリール脚載置部にリール脚を載置して、移動フードを固定フード側に移動させることで、リールを固定することが可能となっている。このようなリールシートが装着された釣竿では、片手でリール本体とリールシート部分を握り込みつつ、キャスティング操作や釣糸巻き取り操作が行なわれることから、グリップ性が良く、軽量であることが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常、上記したリールシートの本体は、樹脂を射出成型することで一体形成されている。この場合、グリップ性を向上するためには、ある程度、肉厚化(ボリューム感を持たせる)する必要があるが、あまり肉厚化すると、重量が増えて軽量化を図ることができなると共に、偏肉による成形不良が発生し易くなる。また、逆に軽量化が図れるように、外形状の肉を削ったり肉抜き部を形成すると、グリップしたときに、細くて握り込み難く、更には、掌や指とリールシートとの間に隙間が多く発生する等、グリップ性が損なわれてしまう。特に、軽量化を追求して肉抜き部分を増やしたり細径化し過ぎると、十分な強度を確保することができなくなってしまう。
【0005】
本発明は、上記した問題に着目してなされたものであり、魚釣用リールと共に釣竿を握持、保持した際の操作性や握り心地が良く、更には、効率的に軽量化が図れるリールシートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した目的を達成するために、本発明に係るリールシートは、魚釣用リールのリール脚を載置するリール脚載置部を備え、リール脚載置部の軸方向一端側に固定フードが形成されると共に、リール脚載置部の軸方向他端側に移動フードが軸方向に沿って移動可能に配設されるシート本体を有しており、前記シート本体は、前記リール脚載置部、固定フード及び前記移動フードが配設される部分を備え、釣竿の外周面に固着される筒状に形成された第1本体と、第1本体に対して同等以下の強度の材料で形成されると共に、第1本体の表面に被着、固定される第2本体の分割構造で構成され、前記第2本体は、前記リール脚載置部を露出させるように第1本体に重合する半筒部と、前記固定フードを覆うように第1本体に重合する筒部とを備えたグリップ部を構成することを特徴とする。
【0007】
リールシートに魚釣用リールを装着、固定して釣りをするにあたり、釣人は、釣竿(リールシート)と共にリール本体を握持、保持した状態で、釣竿の操作及びハンドルの巻き取り操作を行なう。この場合、リールシートに大きな負荷がかかる部分は、魚釣用リールのリール脚を載置するリール脚載置部、リール脚を固定する固定フード、及び移動フードが配設される部分であることから、本発明では、シート本体を、強度が必要となるこれらの部分を有する第1本体と、実釣時に主に握持、保持される領域(グリップ部)を有する第2本体の分割構造としている。これにより、シート本体をグリップ性の良い形状にしても、効率的に肉抜きすることができ、リールシート(元竿杆)として軽量化を図ることが容易になる。特に、強度が必要となる第1本体は、例えば、ガラス繊維やカーボン繊維によって補強されたプラスチック複合材料(FRP)で形成し、第2本体については、強度がそれ以下の材料、具体的には、握持した際の感触、グリップ性や外観の向上、及び、軽量化が図れるような材料、例えば、ABS、ナイロン等の樹脂、或いは、エラストマーやゴム等で形成することにより、高強度で軽量化されたリールシートを構成することが可能となる。
なお、上記したリールシートは、両軸受け型リールを装着、固定するもの、スピニングリールを装着、固定するものに適用することが可能である。
【発明の効果】
【0008】
本発明のリールシートによれば、魚釣用リールと共に釣竿を握持、保持した際の操作性や握り心地が良く、更には、効率的に軽量化が図れるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係るリールシートの第1の実施形態を示す側面図。
【
図3】
図1に示すリールシートを反対側から見た分解斜視図。
【
図4】
図1に示すリールシートにおいて、第1本体に第2本体をスライドして装着する状態を示す図。
【
図5】リールシートの第1本体を示す図であり、(a)は軸方向に沿った断面図、(b)はA-A線に沿った断面図。
【
図6】リールシートの第2本体を示す図であり、(a)は軸方向に沿った断面図、(b)はB-B線に沿った断面図。
【
図8】係止構造の変形例を示す図であり、(a)は第1本体に第2本体をスライドして装着する状態を示す図、(b)は第2本体の平面図。
【
図9】本発明に係るリールシートの第2の実施形態を示す図であり、(a)は側面図、(b)は平面図(下面図)。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係るリールシートの実施形態について、添付図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下の説明では、軸方向(前後方向)及び上下方向は、
図1で示した方向であり、左右方向(サイド方向)は、
図1の紙面と直交する方向を意味する。
【0011】
図1から
図7は、本発明に係るリールシートの第1の実施形態を示す図であり、
図1はリールシートの示す側面図、
図2は分解斜視図、
図3は反対側から見た分解斜視図、
図4は第1本体に第2本体をスライドして装着する状態を示す図、
図5は第1本体を示す図であり、(a)は軸方向に沿った断面図、(b)はA-A線に沿った断面図、
図6は第2本体を示す図であり、(a)は軸方向に沿った断面図、(b)はB-B線に沿った断面図、そして、
図7は第2本体の平面図である。
本発明に係るリールシート1は、釣竿を構成する竿杆(元竿杆)100の外周面に接着等によって固定され、本実施形態では、魚釣用リールとして、両軸受け型リールを装着、固定するものとして構成されている。このため、後述するリール脚載置部は、上方側に位置する。また、リールシートが固定される釣竿については、振出式、継合式、1本竿等、その構成については限定されることはなく、
図1では、釣竿の一部(元竿杆の一部)が示され、全体構成については省略されている。
【0012】
前記リールシート1は、上方側に魚釣用リールのリール脚を載置するリール脚載置部3を備え、リール脚載置部3の軸方向一端側(基端側)に、固定フード5が形成されると共に、リール脚載置部3の軸方向他端側(穂先側)に移動フード7が軸方向に沿って移動可能に配設されるシート本体2を有している。本発明では、シート本体2を分割構造としており、この分割構造は、前記リール脚載置部3、固定フード5及び移動フード7が配設される部分を備え、挿通した元竿杆の外周面に固着される筒状に形成された第1本体10と、第1本体10に対して同等以下の強度の材料で形成されると共に、第1本体10の表面に被着、固定される第2本体30とを有しており、これらを一体化することでシート本体2が構成されている。
【0013】
前記第1本体10は、例えば、ナイロン、ABS等の硬質の合成樹脂材、或いは、ガラス繊維や炭素繊維などの強化繊維を混入したプラスチック複合材(FRP)によって一体形成されており、後方側(基端側)及び前方側(穂先側)には、それぞれ同軸上に位置する円筒部11,12が形成されている。前記リール脚載置部3は、両円筒部11,12の中間に形成されている。また、第1本体10は、リール脚載置部3の下方に、軸方向に貫通する断面円形の貫通孔14aを有する中間円筒部14が形成されている。この貫通孔14aは、
図5(a)に示すように、前記円筒部11,12の貫通孔11a,12aと同軸で一体的に直線上に延在しており、この部分(貫通孔11a,14a,12a)に竿杆100が嵌入され、その外周面に対して接着剤等によって固定されるようになっている。
この場合、円筒部11,12及び中間円筒部14は、竿杆100が嵌入されるため、内周面は断面円形に形成されるが、外周面については、必ずしも断面円形に形成する必要はなく、部分的に湾曲面や傾斜面等によって膨出部や凹部が形成されていたり、更には、平坦面や開口が形成される等、適宜変形することが可能である。また、その肉厚についても限定されることはない。すなわち、第1本体10は、長手方向に亘って竿杆100が嵌入されるようになっていれば良く、外面が非円形状な構成であっても良い(筒状に構成されていれば良い)。
【0014】
リール脚載置部3の前後には、載置された魚釣用リールのリール脚を締め付け、固定するための一対のフード部が設けられている。本実施形態では、後方側に前記円筒部11と一体形成される固定フード5が設けられ、前方側に回転操作式の移動フード7が軸方向に移動可能に配設されている。
【0015】
前記固定フード5は、リール脚載置部3の後方側で、上方に膨出するように前記円筒部11と一体形成されており、リール脚を受け入れる開口5aを備えている。
また、リール脚載置部3の前方側の移動フード7は、前記円筒部12を覆った状態で軸方向に移動可能に配設されている。本実施形態では、円筒部12の外周面に雄螺子部12bが形成されると共に、雄螺子部12bとリール脚載置部3との間に移動フード7の移動を規制する係止段部12Aが形成されており、移動フード7は、雄螺子部12a上で軸方向に移動可能に配設されている。
【0016】
前記移動フード7には、雄螺子部12bと螺合するナット部材7Aが係止されており、移動フード7は、ナット部材7Aを回転操作することで軸方向に移動するようになっている。この場合、雄螺子部12bには、軸線方向に直線状に延出するガイド溝12cが1カ所以上(本実施形態では、180°間隔で2か所)形成されており、ナット部材7Aを回転操作した際、移動フード7は回転することなく、軸方向のみに摺動するようになっている。このため、リール脚をリール脚載置部3に載置した状態で後方の脚部を固定フード5の開口5aに嵌入し、この状態でナット部材7Aを回転操作して移動フード7を固定フード側に摺動させると、リール脚の前方の脚部が移動フード7の開口7aに嵌入し、リール脚は、両フード5,7間で締め付け固定される。そして、ナット部材7Aを反対方向に回転操作することで、フード5,7間に装着、固定された魚釣用リールを取り外すことが可能となる。
【0017】
前記第2本体30は、前記リール脚載置部3を露出させるように、第1本体10の中間円筒部14に重合する半筒部31と、前記固定フード5を覆うように重合する筒部32とを備えており、これらは、実釣時にリール本体と共に握持(掌、指の腹部や付け根部分を当接させる)するグリップ部としての機能を備えている。すなわち、第2本体30の半筒部31、及び、筒部32は、リールが固定された状態、及び、操作時において、大きな負荷が作用する第1本体10のリール脚載置部3が形成された中間円筒部14、及び、固定フード5が形成された円筒部11部分を覆うように構成されている。
この場合、半筒部31及び筒部32は、前記第1本体10を覆うような形状に形成されていれば良く、その内周面及び外周面は、必ずしも断面円形に形成する必要はない。例えば、部分的に湾曲面や傾斜面等によって膨出部や凹部(湾曲部)が形成されていたり、更には、平坦面や開口が形成される等、適宜変形することが可能である。また、その肉厚や覆う領域についても限定されることはなく、部分的に第1本体10が露出していたり、第2本体30が第1本体10に対して大きめに形成されていても良い。
【0018】
本実施形態では、前記第2本体30に、リール本体と共にシート本体を握持、保持した際、その手の指を掛けることが可能なトリガー35が形成されている。トリガー35は、前記第2本体の筒部32に形成されており、固定フード5が配設される側とは反対側(下側)に突出するように形成されている。
【0019】
前記第2本体30は、主に掌や指の腹部が当て付く部分であり、第1本体10のように大きな負荷が作用しない部分であることから、第1本体10の強度以下の材料で形成することが可能となる。具体的には、握持した際の感触、グリップ性や外観の向上、更には、軽量化が図れるような材料で形成するのが好ましく、例えば、ABS、ナイロン、ウレタン等の樹脂、或いは、熱可塑性エラストマー、ゴム等で形成することが可能である(勿論、第1本体10と同種の材料で薄肉厚化したもので形成しても良い)。すなわち、シート本体2を、強度が必要とされる部分である第1本体10、及び、グリップ性や軽量化を考慮した第2本体30の分割構造とすることで、リールシートとして、効率的に高強度で軽量化された構成にすることが可能となる。
【0020】
前記第1本体10と第2本体30は、夫々別体として形成しておき、接着、圧入構造等によって一体化される。本実施形態では、
図3に示すように、第1本体10と第2本体30を軸方向に沿わせながら近接移動して両者を一体化すると共に、一体化した状態で周方向への回転を規制する係止構造を備えている。この場合、係止構造の配設位置については特に限定されないが、軸方向両端側、及び、両サイドに設けておくことで、両本体10,30を一体化した際、安定した固着状態を得ることが可能である。
【0021】
具体的に、本実施形態の係止構造は、前記半筒部31の先端部分と、前記筒部32の固定フード5を覆う部分のそれぞれにおいて、軸方向に直交する両サイドに設けられている。第2本体30の半筒部31の先端部分の係止構造は、半筒部31の先端部の内面に、先端縁31aから軸方向に所定の長さ形成された凹溝31bで構成されている。また、第1本体10の中間円筒部14の先端側の係止構造は、中間円筒部の外面に、前記凹溝31bが嵌まり込むように軸方向に形成された凸部14bで構成されている(
図2,
図3参照)。この場合、両部材が一体化された際、回転方向に変動しないように、前記半筒部31の両サイドの先端縁31aを軸方向に向けて山形状にカットし、中間円筒部14の先端側14aを前記先端縁31aが嵌まり込むように谷形状にカットしておくことが好ましい。
また、固定フード5を覆う部分の係止構造は、固定フード5の外表面の下方側の両サイドにそれぞれ形成されており、第1本体10の円筒部11に形成され、軸方向に延出する凸部5bと、第2本体30の筒部32の対応位置に形成され、前記凸部5bの下面に沿って軸方向にスライドしながら接触できるように、軸方向に延出する凸部32bと、を備えた構成となっている。
【0022】
上記したような係止構造によれば、前記第1本体10に対して第2本体30を軸方向にスライドさせることで両部材を容易に一体化することができると共に、両部材を回転方向に規制した状態で固定することが可能となる。この場合、本実施形態では、固定フード側に設けられる係止構造は、第1本体10の凸部5bの下面に、第2本体30の凸部32bの上面が摺動する構成であるため、第2本体30を第1本体10に対して斜め上方側から近接させながら軸方向にスライドさせて両部材を一体化できるので、後述するように、半円筒部31の内面に凹凸による模様31dを形成しておいても、両者を一体化する際、その模様を傷付けることを防止することが可能となる。
【0023】
また、上記したように、本実施形態では、第2本体10の筒部32にトリガー35が形成されており、係止構造である凸部5bと凸部32bは、トリガー35の近傍に設けられた状態(トリガー35に周方向の回動力が作用した際、その回動面と交差するように凸部5b,32bが設けられた状態)となっているので、実釣時に大きな負荷が作用するトリガー35の回転方向の変動を効果的に防止することができ、分割構造であっても強度的に安定したリールシートとすることができる。
【0024】
なお、上記した第1本体10と第2本体30は、重合個所や係止構造部分に接着剤を塗布して両者を固定しても良いし、接着剤を用いることなく係止構造(凹凸部の嵌合構造等)によって一体化する構成であっても良い。
【0025】
上記した構成の第2本体30については、上述したように、様々な材料で形成することが可能であるが、透明性のある樹脂材料で形成しても良い。第2本体30は、第1本体10に対して覆うように被着されることから、透明性のある材料で形成することにより、第2本体30を介して第1本体10を視認させることができ、外観を向上することが可能となる。
【0026】
また、第2本体30を透明性のある材料で形成する場合、その内面に各種の模様を形成することも可能である。具体的には、
図2及び
図7等で示すように、半筒部31の内面に凹凸による模様、例えば、図に示すような亀甲模様31dを形成しておくことで、両部材の組み立て後に、その模様を視認することができ、外観を向上することが可能となる。この場合、模様については、凹凸状に形成された模様以外にも、文字や図形等で構成されていても良いし、単に、内面に印刷やシール等によって、模様、文字、図形等を付す等、適宜変形することが可能である。
【0027】
上記したリールシート1によれば、シート本体2を、大きな負荷がかかり強度が必要となる部分(魚釣用リールのリール脚を載置するリール脚載置部3、リール脚を固定する固定フード5、及び移動フード7が配設される部分)を具備した第1本体10と、実釣時に主に握持、保持される領域(グリップ部)を有する第2本体30との分割構造とし、材料の使い分けができるようにしたことで、全体としてグリップ性の良い形状にしつつ、効率的に肉抜き、切欠き、開口等を形成して軽量化を図ることが容易に行えるようになる。すなわち、第1本体10は、第2本体30によって覆われて手が触れないことから、必要に応じて薄肉厚化したり、肉抜きしたり、或いは、切欠き等を形成することができ、このような部分を形成しても、グリップ性に影響を与えることはなく、釣竿としても軽量で操作性の向上が図れるようになる。
【0028】
特に、強度が必要となる第1本体10は、例えば、ガラス繊維やカーボン繊維等の強化繊維によって補強されたプラスチック複合材(FRP)等、強度的に優れた材料で形成し、第2本体については、握持した際の感触、グリップ性や外観の向上、及び、軽量化が図れるような材料、例えば、ABS、ナイロン等の樹脂、或いは、エラストマーやゴム等で形成することで、高強度で軽量化されたリールシートを効率良く構成することが可能となる。また、従来の一体形成されたシート本体では、肉厚を均一化することによる成形不良が生じていたが、分割構造にして第2本体30を第1本体10に重合するように被着することで、そのような成形不良を削減することが可能となる。
【0029】
また、上記した構成では、第1本体10に肉抜きや切欠き等を形成して、軽量化を図ることができるが、第2本体30にも、そのような肉抜き、切欠き、凹凸等を形成しても良い。特に、そのような肉抜き、切欠き、凹凸等は、グリップ性に影響を与えない部分に形成しておくことが好ましい。或いは、第2本体30の半筒部31の外表面は、指の腹部と馴染みやすいように、軸方向に沿って部分的に膨出させても良い。
【0030】
なお、リールシート1には、握り込んで指が当たる部分に、別途、グリップ性の良い軟質部材(例えば、ウレタン、EVA、熱可塑性エラストマー、ゴム等)を設けておいても良い。例えば、ナット部材7Aをそのような材料で被着しても良いし、第1本体10の円筒部11を後方側に突出させ、その外表面に、上記した材料で形成されるグリップ部材を被着しても良い。
【0031】
また、第1本体10と第2本体30の重合部分は密着した状態であっても良いが、部分的に両者の間に隙間が形成されていても良い。すなわち、第2本体30の半筒部31及び筒部32の少なくとも一方と前記第1本体10との間で隙間を有するように両部材が重合される構成であっても良い。このような構成では、グリップ部を厚肉化することなく膨出させることができるので、より効率的に軽量化を図りつつ、グリップ性を向上することが可能となる。
【0032】
さらに、上記した第2本体30は、第1本体10に固定するに際して、その軸心X2が、第1本体10の軸心X1とオフセットするような形状にしても良い。このようにオフセットする形状にすることで、筒部32が上方にシフトした状態となり、グリップ性を高めることが可能となる。なお、オフセットさせる方向については任意である。
【0033】
図8は、係止構造の変形例を示す図であり、(a)は第1本体に第2本体をスライドして装着する状態を示す図、(b)は第2本体の平面図である。
この変形例の係止構造は、第2本体30の半筒部31の両サイドにおいて、軸方向に沿って略全域に亘って延出形成された凸部32b´と、第1本体10の中間円筒部14の両サイドにおいて、前記凸部32b´が嵌合するように、軸方向に沿って延出形成された凹溝14dとで構成されている。
【0034】
このような係止構造によれば、第2本体30を第1本体10に対して軸方向で略一致させ、そのまま軸方向にスライドさせることで両者を一体化することが可能となる。
【0035】
図9は、本発明の第2の実施形態を示しており、(a)は側面図、(b)は平面図(下面図)である。
この実施形態のリールシートは、スピニングリールが装着されるように構成されており、リール脚載置部が下向きになってスピニングリールが装着、固定されるようになっている。なお、
図9では、上記の第1の実施形態と同一の構成要素については、同一の参照符号が付されている。
【0036】
本実施形態のリールシート1Aのシート本体2Aは、上記した実施形態と同様、第1本体10と第2本体30を一体化することで構成されており、使用時には、第2本体30の半筒部31及び筒部32が下向きに配設されて、握持、保持される領域(グリップ部)を構成する。このため、第2本体30の半筒部31については、第1の実施形態とは異なって上側を向くことから、手の指の腹部側が当て付くのではなく、主に掌で上方から握り込まれる部分になることから、握持、保持し易いように、第1の実施形態よりも多少、大径に形成しておくことが好ましい。
このような構成のリールシート1Aであっても、上記した実施形態と同様な作用、効果が得られる。
【0037】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されることは無く種々変形することが可能である。
上記した分割構造のリールシート1は、図に示した形状に限定されることはなく、種々変形することが可能である。例えば、リール脚を固定するフード部5,7については、後方側を移動フードで構成しても良く、各フード部の構成については適宜変形することができる。また、第1本体10と第2本体30の係止構造は、凹部と凸部が逆であっても良く、両者の係止形状(嵌合形状、接触形状等)、及び、その形成位置は任意である。さらに、両部材の分割構造の形態、及び、係合の方法については、軸方向に沿ってスライドさせるのではなく、上下方向で嵌め込む構成にする等、適宜、変形することが可能である。
【符号の説明】
【0038】
1,1A リールシート
2,2A シート本体
3 リール脚載置部
5 固定フード
7 移動フード
10 第1本体
30 第2本体
31 半筒部
32 筒部