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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022024570
(43)【公開日】2022-02-09
(54)【発明の名称】ギヤの加工方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   B23F 19/05 20060101AFI20220202BHJP
   B24B 33/05 20060101ALI20220202BHJP
   B23P 15/14 20060101ALI20220202BHJP
【FI】
B23F19/05
B24B33/05
B23P15/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020127240
(22)【出願日】2020-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】501343259
【氏名又は名称】清和鉄工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081673
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100141483
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 生吾
(74)【代理人】
【識別番号】100166659
【弁理士】
【氏名又は名称】楠 和也
(72)【発明者】
【氏名】河本 憲二
(72)【発明者】
【氏名】石飛 晃
(72)【発明者】
【氏名】三木 慎也
(72)【発明者】
【氏名】石原 卓
【テーマコード(参考)】
3C158
【Fターム(参考)】
3C158AA03
3C158AA16
3C158AB06
3C158AC02
3C158BA02
3C158BA07
3C158BA09
3C158CA01
3C158CB01
3C158CB03
(57)【要約】
【課題】ホーニング砥石の歯面によって被加工ギヤの歯面のホーニング加工を行うギヤの加工方法及び装置であって、ホーニング加工の精度及び効率を所定以上に向上させることが容易なギヤの加工方法及び装置を提供することを課題とする。
【解決手段】ホーニング砥石及び被加工ギヤの軸間距離が短くすることによって、ホーニング砥石の歯と被加工ギヤの歯とを噛み合わせるアプローチ工程と、互いの歯が噛み合った状態のホーニング砥石及び被加工ギヤを回転させることによって被加工ギヤのホーニング加工を行う加工工程とを有し、加工工程では、ホーニング砥石及び被加工ギヤの噛み合った歯同士における砥石歯面とギヤ歯面との相対姿勢が、基本姿勢から傾いた姿勢である傾斜姿勢になっている状態で、ホーニング加工を開始し、ホーニング加工が終了するまでに、相対姿勢を基本姿勢に戻す。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホーニング砥石の歯面である砥石歯面によって被加工ギヤの歯面であるギヤ歯面のホーニング加工を行うギヤの加工方法であって、
前記ホーニング砥石の回転軸である砥石軸と、前記被加工ギヤの回転軸であるギヤ軸との距離である軸間距離が短くなるように、前記ホーニング砥石及び前記被加工ギヤの少なくとも一方を変位させることによって、前記ホーニング砥石の歯と前記被加工ギヤの歯とを噛み合わせるアプローチ工程と、
互いの歯が噛み合った状態の前記ホーニング砥石及び前記被加工ギヤを連れ回り回転又は同期回転させることによって前記被加工ギヤのホーニング加工を行う加工工程と、を有し、
前記加工工程では、前記ホーニング砥石及び前記被加工ギヤの噛み合った歯同士における前記砥石歯面と前記ギヤ歯面との相対姿勢が、ホーニング加工を行うために予め定められた姿勢である基本姿勢から所定量だけ傾いた姿勢である傾斜姿勢になっている状態で、前記ホーニング加工を開始し、該ホーニング加工が終了するまでに、前記相対姿勢が基本姿勢になっている状態とする
ことを特徴とするギヤの加工方法。
【請求項2】
前記相対姿勢を前記基本姿勢から前記傾斜姿勢又は前記傾斜姿勢から前記基本姿勢に切り換えるにあたり、前記ホーニング砥石及び前記被加工ギヤの一方又は両方の姿勢を変更する
請求項1に記載のギヤの加工方法。
【請求項3】
前記砥石軸と前記ギヤ軸の軸交差角の変更によって前記ホーニング砥石及び前記被加工ギヤの一方又は両方の姿勢切換を行う
請求項2に記載のギヤの加工方法。
【請求項4】
前記加工工程として、プランジ加工を行うプランジ加工工程と、該プランジ加工工程の後にトラバース加工を行うトラバース加工工程と、を有し、
前記プランジ加工は、前記ギヤ歯面への切込量を増加させる動作を含み、
前記トラバース加工は、前記ギヤ歯面への切込量を増加させる動作と、前記ホーニング砥石と前記被加工ギヤとの相対位置を前記砥石軸又は前記ギヤ軸の歯幅方向に沿って変更する動作とを含む
請求項2又は3の何れかに記載のギヤの加工方法。
【請求項5】
前記トラバース加工工程の開始前に前記相対姿勢を前記基本姿勢に切り換える
請求項4に記載のギヤの加工方法。
【請求項6】
前記傾斜姿勢への切換を、前記アプローチ工程を行っている最中、或いはその前に行う
請求項1乃至5の何れかに記載のギヤの加工方法。
【請求項7】
前記相対姿勢を傾斜姿勢とするにあたり、前記ギヤ歯面を、前記ホーニング加工前における本来の角度に対して前記所定量だけ傾いた形状に予め成形しておく
請求項1に記載のギヤの加工方法。
【請求項8】
ホーニング砥石の歯面である砥石歯面によって被加工ギヤの歯面であるギヤ歯面のホーニング加工を行うギヤの加工装置であって、
前記ホーニング砥石の回転軸である砥石軸と、前記被加工ギヤの回転軸であるギヤ軸との距離である軸間距離が短くなるように、前記ホーニング砥石及び前記被加工ギヤの少なくとも一方を変位させる軸間距離変更アクチュエータと、
前記ホーニング砥石及び前記被加工ギヤの少なくとも一方を回転駆動させる回転アクチュエータと、
前記ホーニング砥石及び前記被加工ギヤの噛み合った歯同士における前記砥石歯面と前記ギヤ歯面との相対姿勢を変更する姿勢変更アクチュエータと、
前記軸間距離を検出する軸間距離検出手段と、
前記相対姿勢を検出する相対姿勢検出手段と、
前記軸間距離検出手段及び相対姿勢検出手段の検出結果に基づいて前記軸間距離変更アクチュエータ、前記回転アクチュエータ及び前記姿勢変更アクチュエータの作動を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記軸間距離変更アクチュエータによって前記ホーニング砥石の歯と前記被加工ギヤの歯とを噛み合わせるアプローチ動作と、互いの歯が噛み合った状態の前記ホーニング砥石及び前記被加工ギヤを連れ回り回転又は同期回転させることによって前記被加工ギヤのホーニング加工を行う加工動作とを行うように構成され、
前記加工動作では、噛み合った歯同士における前記砥石歯面と前記ギヤ歯面との相対姿勢が、ホーニング加工を行うために予め定められた姿勢である基本姿勢から所定量だけ傾いた状態である傾斜姿勢になっている状態で、前記ホーニング加工を開始し、該ホーニング加工が終了するまでに、前記相対姿勢が基本姿勢になっている状態とする
ことを特徴とするギヤの加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホーニング砥石の歯面である砥石歯面によって被加工ギヤの歯面であるギヤ歯面のホーニング加工を行うギヤの加工方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ホーニング砥石の回転軸である砥石軸と、被加工ギヤの回転軸であるギヤ軸との距離が短くなるように、ホーニング砥石及び被加工ギヤの少なくとも一方を変位させることによって、ホーニング砥石の歯と被加工ギヤの歯とを噛み合わせ、このようにして互いの歯が噛み合った状態のホーニング砥石及び被加工ギヤを連れ回り回転又は同期回転させることによって被加工ギヤのホーニング加工を行うギヤの加工方法及び装置が従来公知である。
【0003】
特に、砥石軸とギヤ軸とのなす角度である軸交差角を適切に設定することによって、ホーニング砥石及び被加工ギヤの噛み合った歯同士における砥石歯面と被加工歯面との相対姿勢を、ホーニング加工を行うために予め定められた所定の姿勢である基本姿勢に切り換えた状態で、ホーニング加工を行うギヤの加工方法及び装置が公知になっている(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
上記文献のギヤの加工方法及び装置は、基本姿勢を適切に定めれば、所望のギヤ歯面を得ることができる一方で、ホーニング加工時、切込量が変化する以外は、砥石歯面とギヤ歯面との接触状態が常の一様であるため、加工の精度や効率をある一定以上に向上させることが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-134387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ホーニング砥石の歯面によって被加工ギヤの歯面のホーニング加工を行うギヤの加工方法及び装置であって、ホーニング加工の精度及び効率を向上させることが容易なギヤの加工方法及び装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明のギヤの加工方法は、ホーニング砥石の歯面である砥石歯面によって被加工ギヤの歯面であるギヤ歯面のホーニング加工を行うギヤの加工方法であって、前記ホーニング砥石の回転軸である砥石軸と、前記被加工ギヤの回転軸であるギヤ軸との距離である軸間距離が短くなるように、前記ホーニング砥石及び前記被加工ギヤの少なくとも一方を変位させることによって、前記ホーニング砥石の歯と前記被加工ギヤの歯とを噛み合わせるアプローチ工程と、互いの歯が噛み合った状態の前記ホーニング砥石及び前記被加工ギヤを連れ回り回転又は同期回転させることによって前記被加工ギヤのホーニング加工を行う加工工程と、を有し、前記加工工程では、前記ホーニング砥石及び前記被加工ギヤの噛み合った歯同士における前記砥石歯面と前記ギヤ歯面との相対姿勢が、ホーニング加工を行うために予め定められた姿勢である基本姿勢から所定量だけ傾いた姿勢である傾斜姿勢になっている状態で、前記ホーニング加工を開始し、該ホーニング加工が終了するまでに、前記相対姿勢が基本姿勢になっている状態とすることを特徴とする
【0008】
前記相対姿勢を前記基本姿勢から前記傾斜姿勢又は前記傾斜姿勢から前記基本姿勢に切り換えるにあたり、前記ホーニング砥石及び前記被加工ギヤの一方又は両方の姿勢を変更するものとしてもよい。
【0009】
前記砥石軸と前記ギヤ軸の軸交差角の変更によって前記ホーニング砥石及び前記被加工ギヤの一方又は両方の姿勢切換を行うものとしてもよい。
【0010】
前記加工工程として、プランジ加工を行うプランジ加工工程と、該プランジ加工工程の後にトラバース加工を行うトラバース加工工程と、を有し、前記プランジ加工は、前記ギヤ歯面への切込量を増加させる動作を含み、前記トラバース加工は、前記ギヤ歯面への切込量を増加させる動作と、前記ホーニング砥石と前記被加工ギヤとの相対位置を前記砥石軸又は前記ギヤ軸の歯幅方向に沿って変更する動作とを含むものとしてもよい。
【0011】
前記トラバース加工工程の開始前に前記相対姿勢を前記基本姿勢に切り換えるものとしてもよい。
【0012】
前記傾斜姿勢への切換を、前記アプローチ工程を行っている最中、或いはその前に行うものとしてもよい。
【0013】
前記相対姿勢を傾斜姿勢とするにあたり、前記ギヤ歯面を、前記ホーニング加工前における本来の角度に対して前記所定量だけ傾いた形状に予め成形しておくものとしてもよい。
【0014】
一方、本発明のギヤの加工装置は、ホーニング砥石の歯面である砥石歯面によって被加工ギヤの歯面であるギヤ歯面のホーニング加工を行うギヤの加工装置であって、前記ホーニング砥石の回転軸である砥石軸と、前記被加工ギヤの回転軸であるギヤ軸との距離である軸間距離が短くなるように、前記ホーニング砥石及び前記被加工ギヤの少なくとも一方を変位させる軸間距離変更アクチュエータと、前記ホーニング砥石及び前記被加工ギヤの少なくとも一方を回転駆動させる回転アクチュエータと、前記ホーニング砥石及び前記被加工ギヤの噛み合った歯同士における前記砥石歯面と前記ギヤ歯面との相対姿勢を変更する姿勢変更アクチュエータと、前記軸間距離を検出する軸間距離検出手段と、前記相対姿勢を検出する相対姿勢検出手段と、前記軸間距離検出手段及び相対姿勢検出手段の検出結果に基づいて前記軸間距離変更アクチュエータ、前記回転アクチュエータ及び前記姿勢変更アクチュエータの作動を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記軸間距離変更アクチュエータによって前記ホーニング砥石の歯と前記被加工ギヤの歯とを噛み合わせるアプローチ動作と、互いの歯が噛み合った状態の前記ホーニング砥石及び前記被加工ギヤを連れ回り回転又は同期回転させることによって前記被加工ギヤのホーニング加工を行う加工動作とを行うように構成され、前記加工動作では、噛み合った歯同士における前記砥石歯面と前記ギヤ歯面との相対姿勢が、ホーニング加工を行うために予め定められた姿勢である基本姿勢から所定量だけ傾いた状態である傾斜姿勢になっている状態で、前記ホーニング加工を開始し、該ホーニング加工が終了するまでに、前記相対姿勢が基本姿勢になっている状態とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
ホーニング加工を開始する時点では、相対姿勢が傾斜姿勢になっている状態で砥石歯面とギヤ歯面とが部分的に接触し、接触部分の研磨量が大きくなる一方で、ホーニング加工を終了する時点では、相対姿勢が基本姿勢に戻され、所望のギヤ歯面を得ることが可能になるため、一様にギヤ歯面を研磨する場合と比較して、その精度及び効率を向上させることが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明のギヤの加工装置を適用したホーニング盤の構成を一部破断して示す要部正面図である。
図2】本発明のギヤの加工装置を適用したホーニング盤の構成を一部破断して示す要部側面図である。
図3図1及び図2に示すホーニング盤において軸交差角を0°に設定した状態を、その構成を簡略して示す正面図である。
図4図1及び図2に示すホーニング盤において軸交差角を0°に設定した状態を、その構成を簡略して示す平面図である。
図5図1及び図2に示すホーニング盤において軸交差角を0°に設定した状態を、その構成を簡略して示す側面図である。
図6】本ホーニング盤に搭載された制御部の構成を示すブロック図である。
図7】ホーニング砥石及び被加工ギヤの噛合っている歯同士の歯面相対姿勢を基本姿勢に切り換えた状態を示す拡大図である。
図8】ホーニング砥石及び被加工ギヤの噛合っている歯同士の歯面相対姿勢を傾斜姿勢に切り換えた状態を示す拡大図である。
図9】ホーニグ加工時において歯面相対位置及び歯面相対姿勢の時間経過に伴う変化の状態を示す説明図である。
図10】ホーニグ加工を含むギヤの加工方法の手順を示すフロー図である。
図11】本発明の他の実施形態について歯面相対姿勢への切換手段を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1及び図2は、本発明のギヤの加工装置を適用したホーニング盤の構成を一部破断して示す要部正面図及び要部側面図であり、図3乃至図5は、図1及び図2に示すホーニング盤において軸交差角を0°に設定した状態を、その構成を簡略して示す正面図、平面図及び側面図である。
【0018】
ホーニング盤は、内歯(歯)11を有し且つリング状に成形されたホーニング砥石10と、外歯(歯)21を有し且つ円筒状に形成された被加工ギヤ20と、前記ホーニング砥石10をリング形状の垂直に貫き仮想的な回転軸(砥石軸)Z´を支点として回転可能に支持する砥石支持機構(図示しない)と、前記被加工ギヤ20が一体回転可能に外装され且つ該被加工ギヤ20の円筒形状と同一軸心となる支持軸41を有するとともに該支持軸41を支点として該被加工ギヤ20を回転可能に支持するギヤ支持機構40と、を備えている。
【0019】
ここで、支持軸41は上述の構成により被加工ギヤ40の回転軸であるギヤ軸となる。砥石軸20の回転軸Z´である砥石軸上に位置し且つ該砥石軸Z´に対して垂直な軸方向視でホーニング砥石10の歯幅方向中間に位置する砥石中心10aを通過するとともに、前記ギヤ軸41と平行な仮想的な直線を軸Zとする。一方、軸Zと砥石中心10aにおいて直交するとともにギヤ軸41とも交わる仮想的な直線を軸Xとする。これらの2つの軸Z,Xの両方に対して垂直であって且つ砥石中心10aを通過する直線を軸Yとする。
【0020】
砥石支持機構は、ホーニング砥石10を軸Xの軸方向に移動作動させることが可能なように構成されている。ホーニング砥石10の軸Xの軸方向への移動によって、該ホーニング砥石10と被加工ギヤ20との相対位置が軸Xの軸方向で変化し、砥石軸Z´とギヤ軸41との距離である軸間距離Dが変更される。
【0021】
この軸間距離Dの変更によって、ホーニング砥石10及び被加工ギヤ20の歯11,21同士が噛み合っていない状態から噛み合っている状態への切換である噛み合い切換と、噛み合っている状態から噛み合っていない状態への切換である噛み合い解除切換と、噛み合っている状態でのホーニング加工時における研磨深さである切込量の調整等とを行う。
【0022】
なお、被加工ギヤ20が軸Xの軸方向と平行な方向(すなわち、軸Xの軸方向)に移動作動可能なようにギヤ支持機構40を構成してもよい。被加工ギヤ20の軸Xの軸方向への移動によって軸間距離Dを変更することも可能である。
【0023】
また、ギヤ支持機構40は、被加工ギヤ20をギヤ軸41の軸方向に移動作動可能に構成されている。被加工ギヤ20をギヤ軸41の軸方向(すなわち、軸Zの軸方向)に移動させることによって、ホーニング砥石10及び被加工ギヤ20の軸Zの軸方向における相対位置が変更され、ホーニング砥石10及び被加工ギヤ20における互いに噛み合った歯11,21の接触する歯面11a,21a同士の相対位置である歯面相対位置を、該歯11,21の歯幅方向に変化させる。
【0024】
この歯面相対位置を被加工ギヤ20の歯21の歯幅方向の変位によって被加工ギヤ20の歯面21aであるギヤ歯面を、ホーニング砥石10の歯面11aである砥石歯面によって、その歯幅方向の全体に亘り満遍なく研磨(ホーニング加工)することが可能になる。
【0025】
なお、ホーニング砥石10を軸Zの軸方向に移動作動可能に砥石支持機構を構成し、ホーニング砥石10を軸Zの軸方向に移動させることによって、歯面相対位置を歯11,21の歯幅方向に変化させてもよい。
【0026】
また、砥石支持機構は、ホーニング砥石10を軸Xの軸回りに回動作動可能なように構成されている。ホーニング砥石10の軸Xを支点とした回動によって、該ホーニング砥石10の砥石軸Z´と、ギヤ軸41(軸Z)との相対的な傾きである軸交差角θが変更される。
【0027】
この軸交差角θによって、ホーニング加工時におけるホーニング砥石10と被加工ギヤ20との回転作動時に、噛合う歯面11a,21a同士に相対的な滑りを生じさせ、この滑りと、噛合いによる滑りとによって、加工を行うことが可能になる。この手法は、従来公知であるため、詳細は割愛する。
【0028】
また、軸交差角θの変更によって、ホーニング加工時に、ホーニング砥石10及び被加工ギヤ20における互いに噛み合った歯11,21の接触する歯面11a,21a同士の相対姿勢である歯面相対姿勢も変更される。
【0029】
なお、ギヤ軸41上に位置し且つ該ギヤ軸41に対して垂直な軸方向視で被加工ギヤ20の歯幅方向中間に位置するギヤ中心20aを通過するとともに軸Xと平行の直線を支点として被加工ギヤ20を回動可能なように、ギヤ支持機構40を構成することにより、軸交差角θを変更してもよい。
【0030】
さらに、砥石支持機構は、ホーニング砥石10を軸Yの軸回りに回動するように構成してもよい。このホーニング砥石10の軸Yを支点とした回動によって、ギヤ歯面21aに対してクラウニング加工を行うことが可能になる。
【0031】
上述した作動は、本ホーニング盤に搭載された制御部50(図6参照)によって制御される。
【0032】
図6は本ホーニング盤に搭載された制御部の構成を示すブロック図である。制御部50はマイコン又はPC等から構成されている。
【0033】
この制御部50の出力側には、砥石支持機構によって支持されたホーニング砥石10を回転駆動させる電動モータ等の砥石回転アクチュエータ(回転アクチュエータ)61と、ギヤ支持機構40によって支持された被加工ギヤ20を回転駆動させる電動モータ等のギヤ回転アクチュエータ(回転アクチュエータ)62とが接続されている。
【0034】
また、制御部50の出力側には、ホーニング砥石10を軸Xの軸回りに回動させるか、或いは被加工ギヤ20を軸Xの平行であって且つギヤ中心20aを通過する直線を支点として回転させることにより(本例では、ホーニング砥石10を軸Xの軸回り方向に回動させることにより)、交差角θを変更する電動モータ等の軸交差角変更アクチュエータ(姿勢変更アクチュエータ)63と、ホーニング砥石10を軸Yの軸回りに回動させるか、或いは被加工ギヤ20を軸Yと平行であって且つギヤ中心20aを通過する直線を支点として回動させることにより(本例では、ホーニング砥石10を軸Yの軸回り方向に回動させることにより)、クラウニング加工を行うことを可能にする電動モータ等のクラウニング用アクチュエータ64と、が接続されている。
【0035】
さらに、この制御部50の出力側には、ホーニング砥石10又は被加工ギヤ20(本例ではホーニング砥石10)の少なくとも一方をその姿勢を保持した状態でZ軸の軸方向に移動させることにより、前記歯面相対位置を、歯11,21の歯幅方向に変位させる歯面相対位置変更アクチュエータ66と、ホーニング砥石10又は被加工ギヤ20(本例ではホーニング砥石10)の少なくとも一方をその姿勢を保持した状態でX軸の軸方向に移動させることにより、前記軸間距離Dを変化させる軸間距離変更アクチュエータ67と、が接続されている。
【0036】
一方、制御部50の入力側には、ホーニング砥石10の回転数を検出する回転センサ等の砥石回転数検出手段71と、被加工ギヤ20の回転数を検出する回転センサ等のギヤ回転数検出手段72と、軸交差角を検出するポテンショメータ等の軸交差角検出手段(相対姿勢検出手段)73と、ホーニング砥石10における軸Yの軸回り方向の回動位置又は被加工ギヤ20における軸Yと平行であって且つギヤ中心20aを通過する直線の軸回り方向の回動位置を検出することにより、クラウニング加工の状態を検出するポテンショメータ等のクラウニング加工状態検出手段74と、前記軸間距離Dを検出するポテンショメータ等の軸間距離検出手段76と、歯11,21同士の相対的な歯幅方向における相対位置である前記歯面相対位置を検出するポテンショメータ等の歯面相対位置検出手段77と、が接続されている。
【0037】
制御部50は、これらの検出手段71,72,73,74,76,77から入力されてくる検出結果の電気的信号に基づいて、その出力側に接続された各種のアクチュエータ61,62,63,64,66,67を電気的な出力信号によって制御し、これによって最適なホーニング加工を実行するように構成されている。すなわち、制御部50は、最適なホーニグ加工を行うギヤの加工方法を自動的に実行する。
【0038】
図7はホーニング砥石及び被加工ギヤの噛合っている歯同士の歯面相対姿勢を基本姿勢に切り換えた状態を示す拡大図である。制御部50は、軸交差角θの値を調整することによって歯面相対姿勢を制御することが可能である。
【0039】
具体的には、効率的にホーニグ加工を行うために予め定めた所定の歯面相対姿勢を基本姿勢とする。この基本姿勢への切換時、噛み合った歯11,21同士における砥石歯面11a及びギヤ歯面21aが、平行又は略平行に近接又は接触して対向した状態になる。制御部50は、ホーニング加工の少なくとも一部の期間では、歯面相対姿勢が基本姿勢に切り換えられるように、軸交差角θを軸交差角変更アクチュエータ63によって調整する。ここで、基本姿勢への切換時における軸交差角θを基本姿勢角度とする。
【0040】
前記基本姿勢への切換時には、砥石歯面11aがギヤ歯面21aに対して可能な限り均等に接触する状態になる。歯面相対姿勢を基本姿勢に常時切り換えた状態で、ホーニグ加工の全ての作業を実行した場合、常に砥石歯面11aがギヤ歯面21aに均等に接触した状態でホーニング加工が行われることになるが、これでは、所定以上の精度でホーニング加工を行うことが困難なことが発見された。
【0041】
この対策として、本願発明者らは、鋭意検討の結果、前記ギヤ軸41に垂直な方向から見て、歯面相対姿勢を前記基本姿勢に対して若干傾斜させた傾斜姿勢に切り換えた状態で、ホーニング加工を開始することによって、ホーニング加工の精度を向上させることが可能であること見出された。
【0042】
図8はホーニング砥石及び被加工ギヤの噛合っている歯同士の歯面相対姿勢を傾斜姿勢に切り換えた状態を示す拡大図である。基本姿勢の切換時における砥石歯面11aに対して、傾斜姿勢の切換時における砥石歯面11aが、前記ギヤ軸41に垂直な方向視で、所定の角度である傾斜角度αだけ傾いた状態になる。ちなみに、この傾斜姿勢への切換時における軸交差角θを傾斜姿勢角度とする。
【0043】
歯面相対姿勢を傾斜姿勢に切り換えた状態でホーニグ加工を開始した場合、砥石歯面11aがギヤ歯面21aの歯幅方向の端寄り部分に片寄って接触し、この接触部分から研磨が行われ、その後、ホーニング加工の途中の段階で、歯面相対姿勢を基本姿勢に切り換え、研磨作業を続行すると、砥石歯面11aとギヤ歯面21aとの片寄った接触が次第に解消され、最終的に所望のギヤ歯面21aを高い精度で得ることが可能になる。
【0044】
図9はホーニグ加工時において歯面相対位置及び歯面相対姿勢の時間経過に伴う変化の状態を示す説明図であり、図10はホーニグ加工を含むギヤの加工方法の手順を示すフロー図である。まず、ステップS1に進む。ステップS1では、作業者が、ギヤ支持機構40に被加工ギヤ20を取り付ける被加工ギヤ取付け工程(被加工ギヤ取付け動作)S1を実行する。
【0045】
続いて、制御部50は、軸間距離変更アクチュエータ66によって軸間距離Dを変更し、ホーニング砥石10及び被加工ギヤ20の歯11,21同士が噛み合う位置まで、両者を近づけるアプローチ工程(アプローチ動作)S2を実行する。すなわち、アプローチ工程によって噛み合い切換を行う。
【0046】
アプローチ工程における軸間距離Dの変化量は0.10mm程度に設定されている。ちなみに、このアプローチ工程S2の実行前又は実行中において、制御部50は軸交差角変更アクチュエータ63によって歯面相対姿勢が傾斜姿勢となるように軸交差角θを変更するとともに、砥石回転アクチュエータ61及びギヤ回転アクチュエータ62によってホーニング砥石10及び被加工ギヤ20の同期回転を開始する。
【0047】
続いて、制御部50はホーニング加工を行う加工工程を開始する。加工工程としては、プランジ加工(プランジ加工動作)を行うプランジ加工工程S3と、プランジ加工後にトラバース加工(トラバース加工動作)を行うトラバース加工工程S4とを設けている。
【0048】
プランジ加工工程S3では、歯面相対姿勢を傾斜姿勢とした状態で且つ歯11,21同士が噛み合ってホーニング砥石10及び被加工ギヤ20が同期回転している状態で、ホーニグ加工における切込量が増加するように軸間距離変更アクチュエータ66によって軸間距離Dを変更する。この際の増加させる切込量(軸間距離Dの変化量)は0.15~0.20mmに設定される。また、プランジ加工時における歯面相対位置が、噛み合った歯11,21の接触している歯面11a,21a同士の中間とギヤ歯面21aの中間とが一致する位置である中間位置で保持される。
【0049】
プランジ加工工程S3の終了後、軸交差角変更アクチュエータ63による軸交差角θの変更によって、歯面相対姿勢を傾斜姿勢から基本姿勢に切り換える。
【0050】
トラバース加工工程S4では、歯面相対姿勢を基本姿勢とした状態で且つ歯11,21同士が噛み合ってホーニング砥石10及び被加工ギヤ20が同期回転している状態で、前記切込量が増加するように軸間距離変更アクチュエータ66によって軸間距離Dを変更する切込動作と、歯面相対位置を、歯11,21が噛み合って接触している歯面11a,21a同士の一方が他方に対して歯幅方向の一方に片寄るように、歯面相対位置変更アクチュエータ67によって両歯面11a,21aの一方又は両方をスライドさせるスライド動作と、を交互に繰り返す。
【0051】
スライド動作は、歯11,21の歯幅方向における向きが、その実行毎に反転される。例えば、一のスライド動作において歯面相対位置を歯11,21の歯幅方向の一方に摺動させた場合、次のスライド動作において歯面相対位置を歯11,21の歯幅方向の他方に摺動させる。ちなみに、トラバース加工におけるトータルの切込量は0.018~0.02mm程度に設定される。
【0052】
トラバース加工工程の終了後、軸間距離変更アクチュエータ66により軸間距離Dを変更することによって、ホーニング砥石10及び被加工ギヤ20の歯11,21同士の噛み合いを解除するように後退させる後退工程(後退動作)S5を実行する。すなわち、後退工程S5によって噛み合い解除切換が実行される。この後退工程S5が完了した段階で、砥石回転アクチュエータ61及びギヤ回転アクチュエータ62によってホーニング砥石10及び被加工ギヤ20の回転を停止させる。
【0053】
続いて、作業者がギヤ支持機構40から被加工ギヤ20を取り外す被加工ギヤ取外し工程(被加工ギヤ取外し動作)S6を行い、処理を終了させる。
【0054】
以上のように構成されるギヤの加工方法及び装置によって、被加工ギヤ20の歯面21aに対して、高い精度でホーニグ加工を行うことが可能になる。
【0055】
なお、ホーニング砥石10及び被加工ギヤ20を同期回転させる例につき説明したが、ホーニング砥石10又は被加工ギヤ20の何れか一方を回転駆動させて他方を連れ回り回転させてもよい。この場合、砥石回転アクチュエータ61又はギヤ回転アクチュエータ62の何れか一方を省略可能になる。この場合、前記噛み合い切換時及び前記噛み合い解除切換時において、ホーニング砥石10及び被加工ギヤ20の回転を停止させる必要がある。
【0056】
また、上述した例では、ホーニング砥石10を内歯式のリング状に成形するとともに被加工ギヤ20を外歯式としているが、被加工ギヤ20を内歯式のリング状に成形し且つホーニング砥石10を外歯式としてもよい。この他、ホーニング砥石10及び被加工ギヤ20を両方とも筒状に成形された外歯式としてもよい。
【0057】
さらに、歯面相対姿勢を傾斜姿勢から基本姿勢に切り換えるタイミングは、プランジ加工工程S3を実行している最中であってもよく、また、トラバース加工工程S4を実行している最中であってもよい。この他、ホーニング加工中、トラバース加工工程S4のみを行い、プランジ加工工程S32を行ってもよい。この場合、プランジ加工の全工程における少なくとも開始時点において歯面相対姿勢を傾斜姿勢に切り換え、その途中のタイミングや終了のタイミングで歯面相対姿勢を傾斜姿勢から基本姿勢に切り換えるようにする。
【0058】
次に、図11に基づき本発明の別実施形態について説明する。
【0059】
図11は本発明の他の実施形態につき、傾斜姿勢への切換手段を示す拡大図である。同図に仮想線で示すように、軸交差角θを基本姿勢角度としたホーニング砥石10及び被加工ギヤ20の噛み合う歯11,21の歯面11a,21aの一方である砥石歯面11aに対して、他方であるギヤ歯面21aが前記傾斜角度αだけ傾くように、ホーニング加工前に、ギヤ歯面21aを予め成形しておく。
【0060】
言い換えると、本実施形態のギヤ歯面21aは、本来の角度に比べて傾斜角度αだけ傾いた形状に成形されている。
【0061】
これによって、軸交差角θを、上述した形態のように適宜制御する必要が無くなり、制御内容が簡略化される。ちなみに、ギヤ歯面21aの傾斜角度α分の傾きは、ホーニング加工の終了時には0°になる。
【符号の説明】
【0062】
10 ホーニング砥石
11a 砥石歯面(歯面)
20 被加工ギヤ(ワーク)
21a ギヤ歯面(歯面)
41 ギヤ軸(回転軸)
50 制御部
66 軸間距離変更アクチュエータ
61 砥石回転アクチュエータ(回転アクチュエータ)
62 ギヤ回転アクチュエータ(回転アクチュエータ)
63 軸交差角変更アクチュエータ(姿勢変更アクチュエータ)
73 軸交差角検出手段(相対姿勢検出手段)
76 軸間距離検出手段
D 軸間距離
S2 アプローチ工程
S3 プランジ加工工程(加工工程)
S4 トラバース加工工程(加工工程)
Z´ 砥石軸(回転軸)
θ 軸交差角
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11