(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022024576
(43)【公開日】2022-02-09
(54)【発明の名称】直動アクチュエータおよびその制御方法
(51)【国際特許分類】
H02P 3/18 20060101AFI20220202BHJP
H02K 7/06 20060101ALI20220202BHJP
H02P 29/00 20160101ALI20220202BHJP
【FI】
H02P3/18
H02K7/06 A
H02P29/00
H02P3/18 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020127247
(22)【出願日】2020-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005197
【氏名又は名称】株式会社不二越
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(72)【発明者】
【氏名】東 真一
(72)【発明者】
【氏名】地崎 潤
【テーマコード(参考)】
5H501
5H530
5H607
【Fターム(参考)】
5H501DD04
5H501FF05
5H501LL22
5H501LL36
5H530AA07
5H530CC06
5H530CD13
5H530CD32
5H530CE04
5H530CF01
5H530EF01
5H530GG08
5H607AA14
5H607BB01
5H607BB07
5H607BB14
5H607BB26
5H607CC01
5H607DD03
5H607DD08
5H607DD19
5H607EE53
5H607GG01
5H607GG08
(57)【要約】
【課題】シャフトの減速制御を不要にし、移動距離が短い場合でも高速に動作させることが可能な直動アクチュエータおよびその制御方法を提供する。
【解決手段】本発明にかかる直動アクチュエータ100の代表的な構成は、ケーシングと、ケーシングの内部に設けられたステータと、内面に雌ネジを有する中空ロータと、中空ロータの内部に配置され雄ネジを有するシャフトと、シャフトの側面に形成された平面部と、平面部の外周に沿う形状の穴を有する回り止めと、モータのトルク電流を制御および監視する制御部とを備え、回り止めは、平面部の端部が当接することによってシャフトのストローク限界となるストッパーとして機能し、制御部は、モータを駆動するトルク電流が所定の閾値を超えた場合にモータの駆動を停止することを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングと、
前記ケーシングの内部に設けられたステータと、
内面に雌ネジを有する中空ロータと、
前記中空ロータの内部に配置され雄ネジを有するシャフトと、
前記シャフトの側面に形成された平面部と、
前記平面部の外周に沿う形状の穴を有する回り止めと、
前記モータのトルク電流を制御および監視する制御部とを備え、
前記回り止めは、前記平面部の端部が当接することによって前記シャフトのストローク限界となるストッパーとして機能し、
前記制御部は、前記モータを駆動するトルク電流が所定の閾値を超えた場合に前記モータの駆動を停止することを特徴とする直動アクチュエータ。
【請求項2】
ケーシングと、
前記ケーシングの内部に設けられたステータと、
内面に雌ネジを有する中空ロータと、
前記中空ロータの内部に配置され雄ネジを有するシャフトと、
前記シャフトの側面に形成された平面部と、
前記平面部の外周に沿う形状の穴を有する回り止めと、
前記モータのトルク電流を制御および監視する制御部とを備え、
前記回り止めは、前記平面部の端部が当接することによって前記シャフトのストローク限界となるストッパーとして機能する直動アクチュエータを用いて、
前記制御部が、前記モータを駆動するトルク電流が所定の閾値を超えた場合に前記モータの駆動を停止することを特徴とする直動アクチュエータの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動モータを使用した直動アクチュエータおよびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
直動アクチュエータ(リニアアクチュエータ)は、中空ロータの中にシャフト(ねじ軸)を配置して、中空ロータを回転させることによってシャフトを出し入れするアクチュエータである。特許文献1には、中空軸を有するロータ内部にねじ部を設け、ねじ部を介して出力軸を直動変換するアクチュエータにおいて、出力軸を非回転で直動させるためにケースに回り止め機構を設けた構成が開示されている。
【0003】
また特許文献2に示されるように、エンコーダやリニアスケールなどを使用した位置フィードバック制御を行うことにより、目標位置まで移動する構成も開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-350407号公報
【特許文献2】特開2012-034508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、「ストローク分(B-A)の直動のみが行われる」という記載がある(段落0009,
図3)。しかしながら特許文献1には、どのようにしてストロークの限界で停止させるかの記載はない。一般には特許文献1のように位置検出機構がない場合にはステッピングモータのステップ数で移動距離を制御するが、送りすぎを防ぐためにストローク限界の手前で減速制御を行う。このため、シャフトの移動の高速化は難しいという問題がある。
【0006】
また、特許文献2のようにエンコーダーなどを使用して位置制御を行ったとしても、ストローク限界(目標位置)に到達する前に減速制御を行うため、移動距離が短い場合、速度波形が三角波となる。このため、エンコーダーを備えている場合であってもシャフトの移動の高速化は難しい。
【0007】
本発明は、シャフトの減速制御を不要にし、移動距離が短い場合でも高速に動作させることが可能な直動アクチュエータおよびその制御方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明にかかる直動アクチュエータの代表的な構成は、ケーシングと、ケーシングの内部に設けられたステータと、内面に雌ネジを有する中空ロータと、中空ロータの内部に配置され雄ネジを有するシャフトと、シャフトの側面に形成された平面部と、平面部の外周に沿う形状の穴を有する回り止めと、モータのトルク電流を制御および監視する制御部とを備え、回り止めは、平面部の端部が当接することによってシャフトのストローク限界となるストッパーとして機能し、制御部は、モータを駆動するトルク電流が所定の閾値を超えた場合にモータの駆動を停止することを特徴とする。
【0009】
また本発明にかかる直動アクチュエータの制御方法の代表的な構成は、ケーシングと、ケーシングの内部に設けられたステータと、内面に雌ネジを有する中空ロータと、中空ロータの内部に配置され雄ネジを有するシャフトと、シャフトの側面に形成された平面部と、平面部の外周に沿う形状の穴を有する回り止めと、モータのトルク電流を制御および監視する制御部とを備え、回り止めは、平面部の端部が当接することによってシャフトのストローク限界となるストッパーとして機能する直動アクチュエータを用いて、制御部が、モータを駆動するトルク電流が所定の閾値を超えた場合にモータの駆動を停止することを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、シャフトがストローク限界で機械的に当接したことを検知してモータの回転を停止するという、突き当て制御を行うことができる。これにより、ストローク限界(目標位置)の手前で減速制御をすることなく、目標位置まで最高速度で移動することが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、シャフトの減速制御を不要にし、移動距離が短い場合でも高速に動作させることが可能な直動アクチュエータおよびその制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態にかかる直動アクチュエータを説明する図である。
【
図2】シャフトが突出側のストローク限界に位置している状態を示す図である。
【
図3】モータの回転速度とトルク電流の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示または説明を省略する。
【0014】
図1は本実施形態にかかる直動アクチュエータ100を説明する図である。
図1に示す直動アクチュエータ100は、ケーシング110の内部にステータ112が固定されていて、その内側に中空ロータ120が配置されている。中空ロータ120はケーシング110に対してベアリング132を介して回転自在に取り付けられている。
【0015】
中空ロータ120の外周に配置されたマグネット122(ロータ)と、ケーシング110に取り付けられたステータ112によってモータ130が構成される。モータ130は、内蔵または外付けの制御部160によって駆動電流を制御される。特に本実施形態においては、後述するように、制御部160はトルク電流を監視してモータ130の突き当て制御を行う。
【0016】
中空ロータ120は内面に雌ネジ124が形成されている。中空ロータの内部にはシャフト140が挿入されていて、シャフト140の外面には雄ネジ142が形成されている。
【0017】
またシャフト140の側面には平面部144が形成されている。平面部144は棒状であるシャフト140の両側に対称に二面形成されている。一方、ケーシング110の先端に取り付けられた先端キャップ114の中に、シャフト140の回り止め150が備えられている。
図1(b)に示すように、回り止め150は平面部144の外周に沿う形状の穴152を有する。したがって中空ロータ120が回転するとき、シャフト140は回転できないので、雌ネジ124と雄ネジ142との螺合によってシャフト140が軸方向に移動する。
【0018】
ここで回り止め150は、平面部144の端部が当接することによってシャフト140のストローク限界となるストッパーとして機能する。
図1(a)はシャフト140が引込側のストローク限界に位置している状態を示していて、平面部144の突出側の端部144aが回り止め150に当接している。
図2はシャフト140が突出側のストローク限界に位置している状態を示して、平面部144の引込側の端部144bが回り止め150に当接している。
【0019】
次に、直動アクチュエータの制御方法について説明する。
図3はモータの回転速度とトルク電流の関係を示す図である。制御部160がモータ130に(ステータ112に)トルク電流を印加すると、モータ130の回転速度が上昇し、シャフト140の移動速度が上昇する。
【0020】
そしてシャフト140がストローク限界(目標位置)に到達すると、シャフト140が突出側に移動するときは平面部144の引込側の端部144bが回り止め150に当接し、シャフト140が引込側に移動するときは平面部144の突出側の端部144aが回り止め150に当接する。いずれの場合もシャフト140はそれ以上移動できなくなり、機械的に(強制的に)モータ130の回転が停止し、モータ130のトルク電流が急激に上昇する。
【0021】
そこで制御部160はモータ130を駆動するトルク電流を監視しておき、トルク電流が所定の閾値A1を超えた場合に、モータ130の駆動を停止する。すなわち、トルク電流が所定の閾値を超えたということは、平面部の端部144a、144bが回り止め150に当接したと判断できるためである。
【0022】
上記構成によれば、シャフト140がストローク限界で機械的に当接したことを検知してモータの回転を停止するという、突き当て制御を行うことができる。これにより、ストローク限界(目標位置)の手前で減速制御をすることなく、目標位置まで最高速度で移動することが可能となる。シャフト140の減速制御が不要になるため、移動距離が短い場合でも高速に動作させることが可能である。
【0023】
なお、中空ロータ120の雌ネジ124とシャフト140の雄ネジ142に多条ネジを使用することで、モータ130の1回転当たりのシャフト140の移動量を大きくすることができる。これによりさらなる高速移動を図ることができる。
【0024】
また、中空ロータ120の回転を検出するエンコーダを設けてもよい。
図1の例では中空ロータ120の後端にマグネット126を備え、ケーシング110の後端キャップ116にエンコーダ170を配置している。これによりシャフト140を中間位置で停止させたり、シャフト140の移動速度を精密に制御したりすることが可能となる。
【0025】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、電動モータを使用した直動アクチュエータおよびその制御方法として利用することができる。
【符号の説明】
【0027】
100…直動アクチュエータ、110…ケーシング、112…ステータ、114…先端キャップ、116…後端キャップ、120…中空ロータ、122…マグネット、124…雌ネジ、126…マグネット、130…モータ、132…ベアリング、140…シャフト、142…雄ネジ、144…平面部、144a…突出側の端部、144b…引込側の端部、150…回り止め、152…穴、160…制御部、170…エンコーダ