(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022024581
(43)【公開日】2022-02-09
(54)【発明の名称】竪型粉砕機
(51)【国際特許分類】
B02C 15/04 20060101AFI20220202BHJP
【FI】
B02C15/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020127252
(22)【出願日】2020-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】300041192
【氏名又は名称】宇部興産機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091306
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 友一
(74)【代理人】
【識別番号】100174609
【弁理士】
【氏名又は名称】関 博
(72)【発明者】
【氏名】日名内 竜也
(72)【発明者】
【氏名】三隅 高寛
【テーマコード(参考)】
4D063
【Fターム(参考)】
4D063EE03
4D063EE12
4D063EE25
4D063EE26
4D063GA06
4D063GA07
4D063GA08
4D063GA10
4D063GC19
4D063GC40
4D063GD03
4D063GD13
(57)【要約】
【課題】ローラ加圧力を任意に調整できる緊張装置を備えた竪型粉砕機を提供することにある。
【解決手段】本発明の竪型粉砕機10は、回転テーブル12の上面で原料を介して従動する2つの粉砕ローラ13と、前記粉砕ローラ13のアーム15端部を連結してシリンダーケースからシリンダーロッドが水平方向に伸縮する緊張装置20を備えた竪型粉砕機10において、
前記緊張装置20は、一方を第1のシリンダーロッド21が縮小する方向に付勢するスプリングバネ23を有するスプリングバネ構造24とし、他方を第2のシリンダーロッド26を有する油圧シリンダー構造28とし、前記スプリングバネ構造24と前記油圧シリンダー構造28の第1及び第2のシリンダーケース22、27側を直列接続し、
前記油圧シリンダー構造28の第2のシリンダーロッド26を縮小させて前記粉砕ローラ13のローラ加圧力を制御する油圧制御部30を備えたことを特徴としている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転テーブルの上面で原料を介して従動する2つの粉砕ローラと、前記粉砕ローラのアーム端部を連結してシリンダーケースからシリンダーロッドが水平方向に伸縮する緊張装置を備えた竪型粉砕機において、
前記緊張装置は、一方を第1のシリンダーロッドが縮小する方向に付勢するスプリングバネを有するスプリングバネ構造とし、他方を第2のシリンダーロッドを有する油圧シリンダー構造とし、前記スプリングバネ構造と前記油圧シリンダー構造の第1及び第2のシリンダーケース側を直列接続し、
前記油圧シリンダー構造の第2のシリンダーロッドを縮小させて前記粉砕ローラのローラ加圧力を制御する油圧制御部を備えたことを特徴とする竪型粉砕機。
【請求項2】
請求項1に記載の竪型粉砕機において、
前記スプリングバネ構造は、前記スプリングバネの反力を調整できるバネ反力調整部を備えたことを特徴とする竪型粉砕機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に、石炭、オイルコークス、石灰石、スラグ、クリンカ、セメント原料、その他の無機原料、又は化学品、バイオマス等の有機原料を回転テーブル上で従動する複数の粉砕ローラで粉体に粉砕する竪型粉砕機に関し、特に粉砕ローラに緊張装置を取り付けた竪型粉砕機に関する。
【背景技術】
【0002】
高炉スラグ、セメント、石炭、バイオマス等の原料を粉砕する粉砕機として、竪型粉砕機が広く用いられている。従来の竪型粉砕機は、粉砕機の外郭を形成するケーシング内に、回転テーブルと、回転テーブルの上面外周部を円周方向に等分する位置に配置した複数個の粉砕ローラを備えている。
このような竪型粉砕機は、回転テーブルの中央に粉砕原料が供給されると回転テーブルの回転により、粉砕原料が回転テーブルの外周部へと移動する。外周部では粉砕ローラが圧接して回転しているので、粉砕原料は、粉砕ローラと回転テーブルの間へ侵入して粉砕される。そして、回転テーブルの外周面とケーシングの内周面との間の環状通路から吹き上がる熱空気によって、熱空気とともに粉粒体が乾燥されながらケーシング内を上昇する。粉粒体は、ケーシング内の上部に設けた分級手段によって振り分けられて所定粒度の製品が外部へ排出される。分級手段を通過できない粗粉は再度回転テーブル上に落下して粉砕される。
【0003】
従来、小型、中型の竪型粉砕機の緊張装置は、2つの粉砕ローラのスイングレバーを連結するようにケーシングに取り付けている(例えば特許文献1に開示有り)。このときロッドの伸縮方向が水平となるように取り付けている。このような構成の竪型粉砕機は、一方の粉砕ローラの噛み込む原料の層厚が厚すぎると上方へ持ち上げられる。そうすると他方の粉砕ローラが回転テーブル側に押し付けられて押圧力を調整できる。
図4は従来の緊張装置の説明
図1である。従来の緊張装置は内部にスプリングバネ1を採用した構造がある。スプリングバネ1を用いた構造は簡易かつ安価であるが、運転中にローラ加圧力の変更ができない。従って、ローラ加圧力の遠隔操作ができない。またローラ加圧力の調整作業が人力による作業で煩わしいという問題がある。
【0004】
近年、作業人員の削減又は省力化や、一台の粉砕機で様々な原料又は製品生産、換言すると多品種生産のニーズがあり、従来のスプリング式の緊張装置をローラ加圧力の遠隔操作が実現できる油圧シリンダー式へ改造する需要が高まっている。
図5は従来の緊張装置の説明
図2である。図示のように緊張装置は油圧シリンダー2の構造を採用している。小型の粉砕機であれば、水平に配置されたスプリングバネを油圧シリンダー2に置き換えても支障なく稼働する。しかし、中型の粉砕機の場合、シリンダーロッド3から油漏れする問題が生じることがある。
粉砕時に粉砕ローラの細かな粉砕運動によって上下振動が短時間の間に繰り返されている。油圧シリンダー構造でローラ反力を受ける場合、油圧シリンダー2に軸力が繰り返し作用してシリンダーケース4のシール部5が繰り返し変形するので損傷し易い。
また、粉砕機の大型化に伴って油圧シリンダー2も大型化し、その重量の増加、長さの増大によってシリンダーロッド3が撓んでしまい、シリンダーロッド3とシリンダーケース4のシール部5に隙間が生じて油漏れが発生してしまう。このため、油圧シリンダー方式の緊張装置を水平配置する場合には粉砕機のサイズに制限があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、上記従来技術の問題点に鑑み、ローラ加圧力を任意に調整できる緊張装置を備えた竪型粉砕機を提供することにある。また粉砕機の大きさに係わらず油圧シリンダーを用いた緊張装置を適用できる竪型粉砕機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するための第1の手段として、回転テーブルの上面で原料を介して従動する2つの粉砕ローラと、前記粉砕ローラのアーム端部を連結してシリンダーケースからシリンダーロッドが水平方向に伸縮する緊張装置を備えた竪型粉砕機において、
前記緊張装置は、一方を第1のシリンダーロッドが縮小する方向に付勢するスプリングバネを有するスプリングバネ構造とし、他方を第2のシリンダーロッドを有する油圧シリンダー構造とし、前記スプリングバネ構造と前記油圧シリンダー構造の第1及び第2のシリンダーケース側を直列接続し、
前記油圧シリンダー構造の第2のシリンダーロッドを縮小させて前記粉砕ローラのローラ加圧力を制御する油圧制御部を備えたことを特徴とする竪型粉砕機を提供することにある。
上記第1の手段によれば、油圧制御部により粉砕ローラのローラ加圧力を容易に調整できる。従って、遠隔操作でも容易に制御することができる。また油圧シリンダーが受け持つ粉砕荷重をスプリングバネと分担することができ、負荷を低減してシール部分の摩耗を低減できる。さらに、小型、中型の竪型粉砕機に適用することができる。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するための第2の手段として、第1の手段において前記スプリングバネ構造は、前記スプリングバネの反力を調整できるバネ反力調整部を備えたことを特徴とする竪型粉砕機を提供することにある。
上記第2の手段によれば、経年劣化によってスプリングバネの反力が低下しても所望のスプリングバネの反力に容易に設定することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、油圧制御部により粉砕ローラのローラ加圧力を容易に調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の竪型粉砕機の実施形態について、図面を参照しながら、以下詳細に説明する。
【0012】
図2は本発明の竪型粉砕機の説明図である。図示のようにケーシング11内の回転テーブル12の上面には外周面が対向する2つ(1組)の粉砕ローラ13を配置している。粉砕ローラ13はローラ軸14により回転自在に軸支されている。ローラ軸14はアーム15に固着し、アーム15はケーシング11外の回転軸16により揺動自在に軸支されている。ケーシング11外の2つのアーム15の上端には後述する緊張装置20を取り付けて連結している。このような構成の竪型粉砕機10は、回転テーブル12の上面に供給された原料がテーブルの遠心力によって外周方向へ移動し、粉砕ローラ13と回転テーブル12の間の隙間に噛み込まれて粉砕される。
【0013】
[緊張装置]
図1は本発明の緊張装置の説明図である。図示のように緊張装置20は、一方を第1のシリンダーロッド21が縮小する方向に付勢するスプリングバネ23を有するスプリングバネ構造24とし、他方を第2のシリンダーロッド26を有する油圧シリンダー構造28とし、前記スプリングバネ構造24と前記油圧シリンダー構造28の第1及び第2のシリンダーケース22,27側(どうし)を直列接続している。第1及び第2のシリンダーロッド21,26は、夫々第1及び第2のシリンダーケース22,27から水平方向に伸縮する。
油圧制御部30は、油タンク32と、第2のシリンダーケース27のロッド側油室27rに接続するロッド側油圧回路34と、ヘッド側油室27hに接続するヘッド側油圧回路45を有している。
ロッド側油圧回路34は、ロッド側油室27rと油タンク32に接続する加圧回路35と、加圧回路35から分岐して油タンク32に接続する圧抜き回路36を有している。
【0014】
加圧回路35は回路上に油タンク32からロッド側油室27rに向けてポンプ40と、加圧切換え弁41と逆流防止弁42を有している。
圧抜き回路36は、ロッド側油室27rと逆流防止弁42の間と油タンク32に接続し、回路上に圧抜き切換え弁43を有している。
粉砕ローラの加圧力を増すときは、加圧回路35上の加圧切換え弁41を切り替えて(圧抜き切換え弁43は閉止状態)、ポンプ40で油タンク32からロッド側油室27rへ油を供給することにより第2のシリンダーロッド26が縮小して粉砕ローラ13が回転テーブル上面に圧接されて粉砕ローラ13の加圧力を増加できる。一方、ロッド側油室27rを圧抜きするときは、圧抜き回路36上の圧抜き切換え弁43を切り替えて(逆流防止弁42により加圧回路35を経由して油タンク32へ油は流れない)、ロッド側油室27rから油タンク32へ油を排出することにより第2のシリンダーロッド26が伸長して粉砕ローラ13の加圧力を減少できる。
ヘッド側油圧回路45は、ヘッド側油室27hと油タンク32に接続し、第2のシリンダーロッド26の伸長又は縮小移動に伴って油室から油を排出又は油室へ油を供給している。
【0015】
このような構成の緊張装置20は、第1のシリンダーロッド21をスプリングバネ構造24とし、第2のシリンダーロッド26を油圧シリンダー構造28として直列に連結して伸縮方向を水平方向に配置している。このとき粉砕ローラ13に必要なローラ加圧力をスプリングバネ構造24と油圧シリンダー構造28で分担している。ローラ加圧力の分担率は、一例として50:50の割合など任意に設定できる。粉砕時の粉砕ローラの細かな上下運動はスプリングバネ23で支えることができ、大きな振動は油圧シリンダーで受けることができる。このため油圧シリンダー構造28のシール部の負担が軽減される。
また均等割合の場合、油圧シリンダー構造28に係る必要なローラ加圧力は、従来構造と比べて半分に低減できる。
【0016】
ここで粉砕に必要な荷重F(N)、シリンダー受圧面積A(mm2)、油圧P(MPa)、シリンダー内径D(mm)、シリンダーロッド内径d(mm)とすると、粉砕に必要な荷重F(N)は、シリンダー受圧面積A(mm2)に比例している。すなわちF=P×A、さらにF=P×(π×(D2-d2)/4)と表すことができる。粉砕に必要な荷重Fが半分になれば、シリンダー受圧面積Aも半分にできるため、同じシリンダー内径Dであってもシリンダーロッド径dを太くすることができる。シリンダーロッド径dを太くした結果、ロッドの撓みが軽減でき、油漏れを防止できる。油圧シリンダーに比較して微小な繰り返し運動に追随し易くなり、スプリングバネ構造24は粉砕時のローラ微小運動を吸収できる。
なお、油圧制御部30は、加圧又は圧抜きの制御を有線又は無線回線を利用した遠隔操作を適用しても良い。
【0017】
図3はバネ反力調整部の説明図である。図示のようにスプリングバネ構造24の第1のシリンダーロッド21aは、ロッドの先端側にバネ反力調整部50を備えている。バネ反力調整部50は、第1のシリンダーロッド21aの長さを任意の長さに調整できる。バネ反力調整部50は、一例としてロッドを2分割しねじ切り加工を施し、同様にねじ切り加工したスリーブを備えたターンバックル構造を採用している。このようなバネ反力調整部50により、竪型粉砕機の所定時間稼働後に、スプリングバネ構造24のスプリングバネ23の経年劣化によりスプリング反力が低下しても、第1のシリンダーロッド21aのロッド長さを任意に変更できるバネ反力調整部50によってスプリング反力を維持(再設定)することができる。
【0018】
このような本発明によれば、油圧シリンダー構造を採用することができなかった小型、中型の竪型粉砕機に適用することができる。またローラ加圧力を制御する油圧制御部を遠隔操作することができる。
【0019】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明した。しかしながら、本発明は、上記実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の変更が可能である。
また、本発明は、実施形態において示された組み合わせに限定されることなく、種々の組み合わせによって実施可能である。
【符号の説明】
【0020】
1 スプリングバネ
2 油圧シリンダー
3 シリンダーロッド
4 シリンダーケース
5 シール部
10 竪型粉砕機
11 ケーシング
12 回転テーブル
13 粉砕ローラ
14 ローラ軸
15 アーム
16 回転軸
20 緊張装置
21,21a 第1のシリンダーロッド
22 第1のシリンダーケース
23 スプリングバネ
24 スプリングバネ構造
26 第2のシリンダーロッド
27 第2のシリンダーケース
27h ヘッド側油室
27r ロッド側油室
28 油圧シリンダー構造
30 油圧制御部
32 油タンク
34 ロッド側油圧回路
35 加圧回路
36 圧抜き回路
40 ポンプ
41 加圧切換え弁
42 逆流防止弁
43 圧抜き切換え弁
45 ヘッド側油圧回路
50 バネ反力調整部