(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022024585
(43)【公開日】2022-02-09
(54)【発明の名称】ロールスクリーンユニット
(51)【国際特許分類】
E06B 9/58 20060101AFI20220202BHJP
E06B 9/42 20060101ALI20220202BHJP
【FI】
E06B9/58 A
E06B9/42 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020127257
(22)【出願日】2020-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】相澤 雅也
(72)【発明者】
【氏名】相馬 剛
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 圭亮
【テーマコード(参考)】
2E042
【Fターム(参考)】
2E042AA06
2E042BA01
2E042BA02
2E042CA02
2E042DA01
2E042DB14
(57)【要約】
【課題】より優れた通気性、採光性および日射遮蔽性を備えたロールスクリーンユニットを提供する。
【解決手段】建物の開口の上方に設けられ、第1回転軸に巻き付けられ、繰り出されて下端部が所定位置に保持される第1スクリーンと、前記第1スクリーンの前記下端部に設けられており、第2回転軸に巻き付けられ、任意の長さ繰り出されて保持される第2スクリーンと、を有し、前記第1スクリーンは前記第2スクリーンよりも通気性が高く且つ遮光性が低い。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の開口の上方に設けられ、
第1回転軸に巻き付けられ、繰り出されて下端部が所定位置に保持される第1スクリーンと、
前記第1スクリーンの前記下端部に設けられており、第2回転軸に巻き付けられ、任意の長さ繰り出されて保持される第2スクリーンと、
を有し、
前記第1スクリーンは前記第2スクリーンよりも通気性が高く且つ遮光性が低いことを特徴とするロールスクリーンユニット。
【請求項2】
請求項1に記載のロールスクリーンユニットであって、
前記建物に設けられ、前記第1スクリーンの前記下端部が係止されて前記所定位置に保持される係止部を有していることを特徴とするロールスクリーンユニット。
【請求項3】
請求項2に記載のロールスクリーンユニットであって、
前記係止部は、上下方向の位置を変更可能であることを特徴とするロールスクリーンユニット。
【請求項4】
請求項2に記載のロールスクリーンユニットであって、
前記係止部は、上下方向における複数箇所に設けられていることを特徴とするロールスクリーンユニット。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のロールスクリーンユニットであって、
前記第2回転軸は、前記第2スクリーンを巻き取る方向への回転の規制および前記回転の許容を切り替え可能なクラッチ機構を有しており、
前記第2スクリーンは、前記クラッチ機構により前記任意の長さ繰り出されて保持されることを特徴とするロールスクリーンユニット。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のロールスクリーンユニットであって、
前記開口の上方に設けられ、日射により前記開口に日陰となる領域を生じさせる構造物より下に設けられていることを特徴とするロールスクリーンユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリーンが引出可能に巻き取られて収容されているロールスクリーンユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
スクリーンが引出可能に巻き取られて収容されているロールスクリーンユニットとしては、例えば、窓が設けられている建物の外壁の上部に庇が設けられており、外壁と庇との入隅に、窓の上縁に沿って取り付けられているスクリーン巻取装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。このスクリーン巻取装置には、網目生地製の日除けシートが巻取可能且つ下方に繰り出し可能に装着されている。日除けシートは、縦糸と横糸から網目状に形成されており、上側の範囲の方が下側の範囲よりも横糸の間隔を広く設定している。このように日除けシートの網目を設定することにより、夏場に太陽が所定の高度となったときに、庇で日射が遮られている上側部分に網目の広い範囲が設定され、日射を庇で防げない下側部分に網目が狭い範囲が設定される。これにより、上側の範囲では、通気性と採光性が良好となり、下側の範囲では日射遮蔽性が良好となるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記スクリーン巻取装置は、1枚の日除けシートにおける上側の範囲が下側の範囲よりも網目が広く設定されているので、上側の範囲と下側の範囲との境界部は常に定位置である。しかしながら、太陽の高度は日々変化するので、上側の範囲と下側の範囲とが予め設定されている日除けシートでは、庇で日射が遮られている上側部分に網目の広い範囲で覆い、日射を庇で防げない下側部分に網目が狭い範囲で覆うことができない虞がある。例えば1枚の日除けシートの上側の領域と下側の領域とが半分で分かれていたとしたときに、太陽の高度が高く、庇で日射が遮られる部分が半分より広い場合には、庇で日射が遮られている部分の一部を下側の領域で覆ってしまうため、その部分においては通気性と採光性が損なわれてしまう。また、太陽の高度が低く、日射を庇で防げない部分が半分より広い場合には、日射差し込む部分の一部を上側の領域で覆ってしまうため、その部分においては日射遮蔽性が損なわれてしまう。このため、スクリーン巻取装置により得られる通気性、採光性および日射遮蔽性が十分に得られないという課題がある。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、より優れた通気性、採光性および日射遮蔽性を備えたロールスクリーンユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するための主たる発明は、建物の開口の上方に設けられ、第1回転軸に巻き付けられ、繰り出されて下端部が所定位置に保持される第1スクリーンと、前記第1スクリーンの前記下端部に設けられており、第2回転軸に巻き付けられ、任意の長さ繰り出されて保持される第2スクリーンと、を有し、前記第1スクリーンは前記第2スクリーンよりも通気性が高く且つ遮光性が低いことを特徴とするロールスクリーンユニットである。
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、より優れた通気性、採光性および日射遮蔽性を備えたロールスクリーンユニットを提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態に係るロールスクリーンユニットが建物に取り付けられている状態を示す縦断面図である。
【
図2】スクリーン本体とボトムスクリーンユニットとを示す縦断面図である。
【
図3】係止部材が取り付けられている状態を示す斜視図である。
【
図5】係止部材の取付方法を説明する平面図である。
【
図6】高度が異なる太陽に対するロールスクリーンユニットの効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態に係るロールスクリーンユニットについて図面を参照して説明する。
【0010】
本実施形態のロールスクリーンユニット5は、
図1に示すように、例えば、建物1の屋内外の境界に位置する開口1bの上方であって、外壁1aから屋外側に突出する構造物である庇2よりも下側に取り付けられている。建物1の開口1bは、引き違い障子3aを備える建具3の枠体4により形成されており、建具3には、引き違い障子3aの屋外側に網戸3bが備えられている。枠体4は、上下の横枠41と、左右の縦枠42とが矩形状に枠組みされている。以下の説明においては、矩形状をなす枠体4に囲まれた内側を内周側、枠体4の外側を外周側として説明する。
【0011】
上下の横枠41の最も屋外側には、枠体4の内周側に延出されて網戸3bを案内する網戸レール41aが建物1の外壁1aよりも屋外側に張り出して設けられている。左右の縦枠42は、
図3に示すように、見込み方向に沿う見込壁部42aと、見込壁部42aの屋外側の縁から内周側に延出され、網戸3bを閉じた際に網戸3bの縦框(不図示)の戸先側が開放された溝部(不図示)に挿入される挿入片42bと、見込壁部42aの屋外側の縁から外周側に延出された外周延出片42cと、を有している。挿入片42b及び外周延出片42cは、建物1の外壁1aよりも屋外側に張り出した位置にて、見込み方向において、上下の横枠41に設けられた網戸レール41aと同じ位置に設けられている。
【0012】
ロールスクリーンユニット5は、
図1、
図2に示すように、第1スクリーン60が引き出し可能に収容されているスクリーン本体6と、第1スクリーン60の下端に設けられて所謂ボトムバーをなすとともに第2スクリーン70が引出可能に収容されているボトムスクリーンユニット7と、第1スクリーン60が引き出された状態を維持すべくボトムスクリーンユニット7を係止する係止部材8と、係止部材8を枠体4に取り付ける取付ユニット9と、を有している。
【0013】
第1スクリーン60は、例えば網材のような通気性が高く遮光性が低い素材で形成されており、第2スクリーン70は、例えば、アウターシェードや、オーニング等に使用するような、目が細かく日射遮蔽に適した生地が用いられる。より具体的には、アウターシェードに用いられるような、織り組織が密で充填率が高い生地や、オーニングに用いられるような、基礎組織を塩化ビニル等でコーティングして隙間をなくした生地などが挙げられる。このように、第1スクリーン60が少なくとも第2スクリーン70よりも通気性が高く遮光性が低い素材で形成されている。第2スクリーン70の下端には、たとえば塩化ビニル製パイプでなるボトムバー70aが全幅にわたって設けられている。
【0014】
スクリーン本体6は、水平方向に沿って設けられた第1回転軸となる第1軸体61と、第1軸体61に巻き付けられた第1スクリーン60と、第1軸体61を収容するとともに第1軸体61の両端部を回動自在に支持する第1ケーシング62と、を有している。第1軸体61は、第1スクリーン60が巻き取られる方向に付勢されて支持されており、第1スクリーン60は、付勢力に抗して繰り出し可能である。
【0015】
第1スクリーン60の、第1ケーシング62から引き出される側の端(下端)に設けられているボトムスクリーンユニット7は、第1スクリーン60の下端に設けられている第2ケーシング71と、第2ケーシング71内に収容されて第1スクリーン60の幅方向に沿って設けられ第2回転軸となる第2軸体72と、第2軸体72に巻き付けられた第2スクリーン70と、を有している。
【0016】
第2ケーシング71は、押し出し成形により製造された部材であり、第1スクリーン60の幅方向に沿って、第1スクリーン60の幅より長く当該第1スクリーン60の両側に突出している。第2ケーシング71は、第2スクリーン70が巻き付けられた第2軸体72を収容し下方に開放されたスクリーン収容部71aの上に、全長に亘って第1スクリーン60の下端が挿入される第1スクリーン挿入口71bと、第1スクリーン60を第2ケーシング71に固定する第1スクリーン固定部71cと、が設けられている。
【0017】
第1スクリーン60は、第2ケーシング71の両端部にて第1スクリーン挿入口71bに係止部材8が係合して、第2ケーシング71が係止されることにより、引き出された状態で保持される。本実施形態の係止部材8は、上下方向の位置を変更可能に取り付けられているので、係止部材8の位置を変更することにより、第2ケーシング71が係止される位置(所定位置)、すなわち、第1スクリーン60により開口1bが覆われる領域を変更することが可能である。係止部材8及び係止部材8の取り付け方法については後述する。
【0018】
第2軸体72は、第2スクリーン70が巻き取られる方向に付勢されて支持されており、クラッチ機構73を備えている。クラッチ機構73は、第2スクリーン70を巻き取る方向への回転の規制および当該回転の許容を切り替えが可能である。このため、第2スクリーン70は、巻き取る方向への回転が規制された状態で、巻取る方向への付勢力に抗して引き下げることにより繰り出され、引き下げることを止めた位置にて引き出された状態で保持される。また、例えば、引き出された状態から僅かに引き下げるとクラッチ機構73により巻き取る方向への回転の規制が解除されて付勢力により巻き上げられるように構成されている。
【0019】
係止部材8は、取付ユニット9に固定される係止部材固定部8aと、係止部材固定部8aから屋外側に突出し先端が下方に屈曲している係止部としてのフック部8bと、を有している。係止部材8は、枠体4が有する左右の縦枠42にそれぞれ、取付ユニット9を介して取り付けられており、フック部8bに第2ケーシング71の両端側で第1スクリーン挿入口71bが係合されて第2ケーシング71が係止される。
【0020】
取付ユニット9は、係止部材8が固定される第一固定部材91と、第一固定部材91と接合される第二固定部材92と、を有している。取付ユニット9は、左右の縦枠42に各々取り付けられる。左右の縦枠42に各々取り付けられる取付ユニット9は、互いに左右が反転した対称形状をなしている。取付ユニット9の説明においては、枠体4に取り付けられた状態にて、上下となる方向を上下方向、屋内外方向である奥行き方向を見込み方向、左右となり見込み方向と交差する方向を交差方向、として示す。
【0021】
第一固定部材91は、
図3、
図4に示すように、見込壁部42aの外周側の面に当接される見込壁部当接部91aと、見込壁部当接部91aの屋内側の縁から外周側に延出された屋内延出壁部91bと、屋内延出壁部91bの外周側の縁から屋外側に延出された外周壁部91cと、外周壁部91cの上部及び下部からそれぞれ内周側に延出されて係止部材8が固定される取付ユニット固定部91dと、を有している。
【0022】
第二固定部材92は、第一固定部材91の外周壁部91cに当接されてビス止めされる接合部材93と、接合部材93の屋外側に重ねられ枠体4の内周側にて屋内側に繋がっている内外部材94と、を有している。
【0023】
接合部材は93、挿入片42b及び外周延出片42cの屋外側の面に当接され外周延出片42cよりも外周側に延出される平板状の接合部材延出部93aと、接合部材延出部93aの外周側の端部から屋外側に延出され外周壁部91cに固定される接合部93bと、接合部材延出部93aの一部が切り起こされて接合部93bと繋がった平面をなして屋内側に延びる屋内延出片93cと、を有している。接合部材延出部93aと接合部93bとは、平面視L字状をなしており、屋内延出片93cは接合部93bの上下方向における中央部分が屋内側に延長されるように設けられている。
【0024】
接合部材延出部93aには、屋内延出片93cを切り起こすことにより加工孔93dが形成されており、加工孔93dの上下にはそれぞれ、第一固定部材91の屋内延出壁部91bに螺合されるボルト10が貫通される長孔93eが設けられている。
【0025】
接合部93bには、上下方向における中央部に屋外側が開放されて屋内側に入り込む、U字を横にした形状の中央凹部93fが設けられている。中央凹部93fには、内周側から進入し、第一固定部材91の外周壁部91cに螺合される接合具としてのビス11が挿通される。
【0026】
内外部材94は、接合部材延出部93aの屋外側に重なりスポット溶接される平板状の接合部材固定部94bと、接合部材固定部94bの屋内側に間隔を隔てて対向する屋内部位94aと、接合部材固定部94bと屋内部位94aとを内周側にて繋ぐ内周壁部94cと、を有している。接合部材固定部94bには、接合部材延出部93aの長孔93eと重なる位置に、外周側が開放されて内周側に入り込む、U字を横にした形状の外周凹部94dが設けられている。
【0027】
接合部材93と内外部材94とがスポット溶接された第二固定部材92は、第一固定部材91の見込壁部当接部91a、屋内延出壁部91b、外周壁部91c、取付ユニット固定部91dにより囲まれる空間内に接合部93b及び屋内延出片93c側が挿入され、接合部93bの中央凹部93fに挿通されたビス11が、第一固定部材91の外周壁部91cに十分に緩く螺合された状態で、枠体4に取り付けられる。このとき、第一固定部材91の屋内延出壁部91bには、接合部材93の長孔93e及び内外部材94の外周凹部94dを挿通する2本のボルト10が、十分に緩めた状態で螺合されている。また、第一固定部材91の取付ユニット固定部91dには、係止部材8がビス止めされている。
【0028】
係止部材8の縦枠42への取り付けは、
図5に示すように、予め第一固定部材91に係止部材8を固定し、第二固定部材92を固定するビス11と2本のボルト10を緩めた状態で、第一固定部材91と第二固定部材92とを組み合わせておく。
【0029】
まず、第一固定部材91と第二固定部材92とを組み合わせた取付ユニット9を、第二固定部材92の接合部材延出部93aが、縦枠42の上下方向における所望の位置で、挿入片42b及び外周延出片42cと対面するように配置した状態で、第一固定部材91を、その屋内側の部位が屋外側の部位より外周側に位置するように傾けて取付ユニット9を枠体4に近づける。
【0030】
次に、第一固定部材91が傾いている状態で、枠体4の挿入片42bを接合部材延出部93aの屋内側の面と屋内部位94aの屋外側の面との間に挿入し、挿入片42bの先端を内周壁部94cに当接させる。
【0031】
次に、第一固定部材91を、屋内側の部位を外周側から内周側に移動するように回転させ、見込壁部当接部91aを枠体4の見込壁部42aに当接させて、内周側からビス11を締め込む。このとき、見込壁部当接部91aの屋外側の端面を外周延出片42cの屋内側の面に、第二固定部材92の屋内延出片93cの屋内側の端面を第一固定部材91の屋内延出壁部91bの屋外側の面に、それぞれ当接させておく。
【0032】
次に、内周側からボルト10を締め込むことにより、枠体4の外周延出片42cは、見込壁部当接部91aと接合部材延出部93aとにより見込み方向に挟持され、見込壁部当接部91aと内周壁部94cとにより縦枠42が交差方向に挟持され、係止部材8が枠体4に上下方向の所望の位置にて固定される。また、固定された係止部材8は、ボルト10及びビス11を緩めることにより、縦枠42に沿って上下方向に移動可能となり、再びボルト10及びビス11を締めることにより、係止部材8を移動した位置に固定することが可能となる。
【0033】
このため、予め係止部材8を上下方向の所望の位置に配置しておき、第1スクリーンを引き出して第2ケーシング71の両端側で、第1スクリーン挿入口71bに係止部材8のフック部8bを係合されて第2ケーシング71が係止することで、第2ケーシングよりも上の領域を第1スクリーンで覆うことができる。また、係止部材8に係止された第2ケーシング71から第2スクリーンを所望の任意の長さ引き出して第2スクリーンを保持することで、第2ケーシングよりも下側の所望の領域を第2スクリーンで覆うことができる。ここで、予め固定された係止部材8により、引き出された第1スクリーン60の第2ケーシング71が係止される位置が所定位置に相当する。
【0034】
本実施形態のロールスクリーンユニット5は、建物1の外壁1aから屋外側に突出して設けられている庇2の下方であって、建物1において屋内外の境界に設けられている開口1bよりも上方に配置され、建具3に設けられて開口1bを形成する枠体4の上端部に取付金具5aを介して取り付けられている。
【0035】
本実施形態のように、枠体4が形成する開口1bの上方に庇2が設けられている場合には、日照により開口1bに庇2の影が差す領域(以下、日陰領域という)が生じる場合がある。この日陰領域は、日毎に変化する太陽の高度に伴って変化する。より具体的には、太陽の高度が高いときには、太陽の高度が低いときよりも、開口1bのより低い位置まで日陰領域が広がり、その下側は、直射日光が差し込む領域(以下、日向領域という)となる。
【0036】
従来から夏には、屋内の温度を下げるために、障子3aを開けて通風を確保し、開口1bの屋外側上部から遮光性を有する、例えば目が細かい布などでなるスクリーン(以下、遮光スクリーンという)を垂らして直射日光を遮ることが行われている。しかしながら遮光スクリーンは、当然のことながら光を通し難く、通風性が悪い。このため、遮光スクリーンで開口1b全体を覆ってしまうと、室内が暗くなるとともに、風通しが悪くなるため室内温度が下がりにくくなってしまう。
【0037】
また、上側が目の粗い網材、下側が目の細かい網材となるように、1枚のスクリーンの上下で目の粗さを異ならせたスクリーンも存在するが、目の粗さが異なる境界の位置が予め決められているので、太陽の高度により変化する日陰領域と日向領域の変化に合わせることができず、効率よく通風、採光を確保し、また日射を遮ることができなかった。
【0038】
本実施形態のロールスクリーンユニット5によれば、通気性が高く遮光性が低い素材の第1スクリーン60と、遮光性が高く通気性が低い素材の第2スクリーン70とを各々適宜所望の長さ繰り出した位置で保持させて使用することが可能である。このため、本実施形態の建物1のように、開口1bの上方に設けられた庇2により、開口1bの上側が日陰領域となり、その下側が日向領域となる場合には、
図6(a)、
図6(b)に示すように、日陰領域と日向領域との境界位置に第2ケーシング71が位置するように係止部材8を配置することにより、日陰領域を第1スクリーン60で覆い、日向領域を第2スクリーン70で覆うことが可能である。このように、第1スクリーン60と第2スクリーン70とにより開口1bを覆うことにより、日向領域を覆う第2スクリーン70により屋内に直接差し込む日射を遮る一方で、日陰領域を覆う第1スクリーン60により屋内の通風及び採光を確保することが可能である。
【0039】
また、ロールスクリーンユニット5は、第2ケーシング71を係止する係止部材8の取り付け位置を上下方向において変更可能なので、
図6(a)に示すように、夏などの太陽の高度が高いときと、
図6(b)に示すように、春秋などの太陽の高度が夏よりも低いときとで、係止部材8の取り付け位置を日陰領域に合わせて変更することにより、効率よく通風及び採光を確保することが可能である。
【0040】
このとき、係止部材8を縦枠42に取り付ける取付ユニット9は、第一固定部材91と第二固定部材92とが接合されて、縦枠42を見込み方向及び交差方向に挟持することで固定するので、縦枠42に孔等を空けることなく取付ユニット9を取り付けることが可能である。このため、意匠性を損なうことなく係止部材8の位置を容易に変更することが可能である。
【0041】
また、第2スクリーン70は、クラッチ機構73により所望の長さ繰り出した状態で保持可能なので、屋内に日射が直接差し込む日向領域だけを覆うように引き出した状態で保持することが可能である。このため、
図6(a)、
図6(b)に示すように、引き出した第2スクリーン70により日射を遮ることにより、開口1bを下端まで第2スクリーン70で覆う必要がない場合には、第2スクリーン70を開口1bの下端よりも高い位置で止めることにより、開口1bの下側からも通風及び採光を確保することが可能である。
【0042】
また、第2スクリーン70の下端は、建物側に係止されていないので、例えば、第2スクリーン70を下げたままで、第2スクリーン70の下を通って屋内外への移動が容易である。
【0043】
また、
図6(c)に示すように、冬など太陽の高度が低く、屋内を暖めたい場合には、第1スクリーン60を第1ケーシング62に、第2スクリーン70を第2ケーシング71にそれぞれ収納することにより、屋内により多くの日射を取り込むことが可能である。
また、第1スクリーン60の下端に設けられた第2ケーシング71が建物1に設けられた係止部材8に係止されて保持されるので、第1スクリーン60を安定した状態で使用することが可能である。
【0044】
特に、ロールスクリーンユニット5は第2スクリーン70が引き出される構造のため、第1スクリーン60の下端部分には、剛性が高い部材が使用される。このため、第1スクリーン60の下端を係止部材8に係止して安定させることにより、第1スクリーン60が風などに煽られるなどしてロールスクリーンユニット5や建物1を損傷することを防止することが可能である。
【0045】
上記実施形態においては、係止部材8が上下方向に移動可能な形態について説明したが、これに限らず、係止部材が複数箇所に設けられていても構わない。また、係止部材8の取り付け方法は、取付ユニット9に限るものではなく、例えば、直接ビス止めする、或いは接着するなど、着脱可能な形態であれば構わない。
【0046】
上記実施形態においては、建物1から屋外側に突出して日射により開口1bに日陰領域を生じさせる構造物として庇2を例に挙げて説明したが、これに限らず、建物から突出して設けられている構造物である軒、バルコニーや、建物と隣接して設けられる構造物である庇ユニットやパーゴラなどであっても構わない。すなわち、日射により開口に日陰となる領域を生じさせるものは、庇に限らず、また、建物から屋外側に突出している構造物であっても、建物と隣接し当該建物とは別体の構造物であっても構わない。
上記実施形態においては、引き違い窓用の建具を例に挙げて説明したが、建具はこれに限るものではない。
【0047】
上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。
【0048】
本実施形態には、少なくとも以下の発明が含まれる。
建物の開口の上方に設けられ、第1回転軸に巻き付けられ、繰り出されて下端部が所定位置に保持される第1スクリーンと、前記第1スクリーンの前記下端部に設けられており、第2回転軸に巻き付けられ、任意の長さ繰り出されて保持される第2スクリーンと、を有し、前記第1スクリーンは前記第2スクリーンよりも通気性が高く且つ遮光性が低いことを特徴とするロールスクリーンユニットである。
【0049】
このようなロールスクリーンユニットによれば、第1スクリーンを繰り出して下端部を所定位置に保持し、第2スクリーンを任意の長さ繰り出した状態で保持して使用することが可能である。すなわち、開口における上側を第1スクリーンで覆い、その下側を第2スクリーンで覆うことが可能である。
【0050】
また、第2スクリーンは、任意の長さ繰り出して保持可能なので、第2スクリーンを開口の下端まで下げることなく室内への日射を遮ることが可能な場合、或いは、近隣に設けられている物により開口の下端側の領域が日陰となる場合には、開口の下端側を覆わない状態で第2スクリーンを保持することが可能である。このような場合には、第2スクリーンの下の日陰の領域でも通風と採光を得ることが可能である。このように、より優れた通気性、採光性および日射遮蔽性を備えたロールスクリーンユニットを提供することが可能である。
【0051】
かかるロールスクリーンユニットであって、前記建物に設けられ、前記第1スクリーンの前記下端部が係止されて前記所定位置に保持される係止部を有していることを特徴とする。
このようなロールスクリーンユニットによれば、第1スクリーンの下端部が建物に設けられた係止部に係止されて保持されるので、第1スクリーンを安定した状態で使用することが可能である。ロールスクリーンユニットは第2スクリーンが繰り出される構造のため、第1スクリーンの下端部には、剛性が高い部材が使用される。このため、第1スクリーンの下端部を係止部に係止して安定させることにより、第1スクリーンが風などに煽られてロールスクリーンユニットや建物を損傷することを防止することが可能である。
【0052】
かかるロールスクリーンユニットであって、前記係止部は、上下方向の位置を変更可能であることを特徴とする。
このようなロールスクリーンユニットによれば、係止部の上下方向の位置を変更可能なので、第1スクリーンの下端部を容易に所望の位置に保持させて開口を覆うことが可能である。このため、季節により太陽の高度が変わることにより開口の日陰となる領域が変化したとしても、開口の日陰となる領域に合わせて係止部の位置を容易に変えることが可能である。
【0053】
かかるロールスクリーンユニットであって、前記係止部は、上下方向における複数箇所に設けられていることを特徴とする。
このようなロールスクリーンユニットによれば、係止部は上下方向における複数箇所に設けられているので、所望の係止部に第1スクリーンの下端部を係止させて開口の日陰となる領域を覆うことが可能である。
【0054】
かかるロールスクリーンユニットであって、前記第2回転軸は、前記第2スクリーンを巻き取る方向への回転の規制および前記回転の許容を切り替え可能なクラッチ機構を有しており、前記第2スクリーンは、前記クラッチ機構により前記任意の長さ繰り出されて保持されることを特徴とする。
【0055】
このようなロールスクリーンユニットによれば、第2スクリーンはクラッチ機構により任意の長さ繰り出されて保持されるので、第2スクリーンを繰り出すだけで容易に所望の長さ繰り出した状態で保持して使用することが可能である。
【0056】
かかるロールスクリーンユニットであって、前記開口の上方に設けられ、日射により前記開口に日陰となる領域を生じさせる構造物より下に設けられていることを特徴とする。
【0057】
このようなロールスクリーンユニットによれば、ロールスクリーンの下方に設けられている開口は、開口の上方に、日射により開口に日陰となる領域を生じさせる構造物が存在すると、日射により開口の上側の領域が日陰となりその下側に日向となる領域が生じる。このため、日陰の領域と日向の領域との境界位置を所定位置として日陰の領域を第1スクリーンで覆い、日向の領域を第2スクリーンで覆うことが可能である。このとき、第1スクリーンは第2スクリーンよりも通気性が高く且つ遮光性が低いので、日向の領域を覆う第2スクリーンにより屋内に差し込む日射を遮る一方で、日陰の領域を覆う第1スクリーンにより屋内の通風を確保することが可能である。また、第1スクリーンは第2スクリーンよりも遮光性が低いので、開口全体を第2スクリーンで覆う場合よりも屋内に光を取り込むことが可能である。
【0058】
また、開口の日陰となる領域は、太陽の高度により変化する。すなわち、太陽の高度が高い場合には、太陽の高度が低い場合よりも、日陰の領域が開口のより低い位置まで広がることになる。このため、第1スクリーンの下端部を保持する所定位置を、日陰の領域と日向の領域との境界位置に合わせて配置することにより、太陽の高度が変化しても、屋内に差し込む日射を遮りつつ、通風と採光を確保することが可能である。
【0059】
このように、第1スクリーン及び第2スクリーンにより開口を覆うことにより、例えば夏には、日向の領域を覆う第2スクリーンにより屋内に差し込む日射を遮り、日陰の領域を覆う第1スクリーンにより屋内の通風および採光を確保することが可能である。このため、屋内の温度を効率よく下げることが可能である。
【符号の説明】
【0060】
1 建物、1b 開口、5 ロールスクリーンユニット、8 係止部材、
60 第1スクリーン、61 第1軸体、70 第2スクリーン、72 第2軸体、
73 クラッチ機構、