IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 宇部興産機械株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-除塵装置 図1
  • 特開-除塵装置 図2
  • 特開-除塵装置 図3
  • 特開-除塵装置 図4
  • 特開-除塵装置 図5
  • 特開-除塵装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022024596
(43)【公開日】2022-02-09
(54)【発明の名称】除塵装置
(51)【国際特許分類】
   E02B 5/08 20060101AFI20220202BHJP
【FI】
E02B5/08 101A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020127277
(22)【出願日】2020-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】300041192
【氏名又は名称】宇部興産機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091306
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 友一
(74)【代理人】
【識別番号】100174609
【弁理士】
【氏名又は名称】関 博
(72)【発明者】
【氏名】兼重 友典
(72)【発明者】
【氏名】松永 隆昌
(57)【要約】
【課題】バースクリーンの塵芥絡みつきを防止できる除塵装置を提供することにある。また塵芥の捕捉時にバースクリーンの通水能力を確保できる除塵装置を提供することにある。
【解決手段】本発明の除塵装置は、取水路への浸漬と引き上げが繰り返されるバースクリーン6aを備えた除塵装置であって、
前記バースクリーン6aは、フラットバー7を取水路の幅方向に所定間隔で並べて上端及び下端をバー枠8で支持し、前記フラットバー7と直交し、かつ前記バー枠8間に長手方向が前記取水路の幅方向に沿った捕捉バー20aを前記フラットバー7の上流面から突出させて取り付けたことを特徴とする。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
取水路への浸漬と引き上げが繰り返されるバースクリーンを備えた除塵装置であって、
前記バースクリーンは、フラットバーを取水路の幅方向に所定間隔で並べて上端及び下端をバー枠で支持し、前記フラットバーと直交し、かつ前記バー枠間に長手方向が前記取水路の幅方向に沿った捕捉バーを前記フラットバーの上流面から突出させて取り付けたことを特徴とする除塵装置。
【請求項2】
請求項1に記載の除塵装置において、
前記バースクリーンは、前記上流面から所定間隔を開けて配置した前記捕捉バーの両端を支持する支持体を前記フラットバーの上流面に設けたことを特徴とする除塵装置。
【請求項3】
請求項1に記載の除塵装置において、
前記バースクリーンは、前記上流面に取り付けた前記捕捉バーを水流方向から見て重ならない位置の裏面となる前記フラットバーの下流面にも前記捕捉バーを設けたことを特徴とする除塵装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海や河川より取水する際や水の浄化処理の際に、水中の塵芥等の異物を除去する除塵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
火力発電所などの発電プラントにおいては、河川や海などから冷却水として使用するための取水場が配置されている。しかし、取水した水の中には塵芥や水生生物が含まれていることがあり、そのまま使用することができない。そのため取水場では水中の塵芥や水生生物などを捕捉する働きをする除塵装置が設置されている。
除塵装置は、取水路を幅方向に横切るように水流に対して垂直もしくは傾斜を付けて設置されており、取水量の多い発電所等では、金網が取り付けられたスクリーンを周回転させて連続的に塵芥等の異物を捕捉して水上に引き上げる連続回転式のロータリースクリーンが採用されている。
【0003】
図5は除塵装置の説明図である。図示のように除塵装置10は、駆動装置から上下左右のスプロケットホイールを介して左右一対の無端状のキャリングチェーン2を周回転させており、このキャリングチェーン2に金網が接合したスクリーン4が取水路を横切るようにして取り付けられている。また、上部スプロケットホイール(不図示)は地上のハウジング5内に、下部スプロケットホイール3Bは水路底に設置されている。これら左右一対の上下部スプロケットホイールにおいて、取水路を挟み込むようにして左右のスプロケットホイールが設置されており、左右のスプロケットホイール間に水路を横切るように回転軸(頭軸と尾軸)が備えられている。
通常は、ロータリースクリーンを上流側と下流側に2基設置して、上流側のロータリースクリーンはバースクリーンを用いて粗い塵芥を捕捉し、下流側のロータリースクリーンは漉し網を用いたスクリーンで細かい塵芥を捕捉している。
【0004】
図6は従来のバースクリーンの斜視図である。図6に示すようにバースクリーン6は、長方形のフラットバー7をバー枠8内に等間隔で離間して複数本並べてスクリーン状に構成されており、取水路を横切るようにキャリングチェーン2に取り付けている。駆動装置から上下左右のスプロケットホイールを介して、左右一対の無端状のキャリングチェーンを周回転させており、バースクリーン6を周回転させて連続的に塵芥を捕捉して水上に引き上げる。
バースクリーン6のフラットバー7間におけるスリット9は水流方向に延びているが、台風や集中豪雨によって塵芥量が急激に増えた場合、バースクリーン6のスリット9を塞ぎ、水流抵抗が増加してしまう問題が生じていた。さらには前述のようにバースクリーン6のスリット9が塞がれてしまうと、発電所で使用する冷却用ポンプが水量不足によって運転できなくなり、最悪の場合には発電所の発電能力を低下させなければならない不都合が生じる。
【0005】
そこでこれらの問題を解決するためスクリーンの上流面が凹凸になるようにフラットバー7を配置してスクリーンの目詰まりを防止する方法が取られている(特許文献1に開示あり)。また粗目用バースクリーンと細目用バースクリーンを採用することにより捕捉効率を高めている。
しかしながらこのようなスクリーンを用いた除塵装置は、直線状に形成された水流がバースクリーン6の上流面において、紐状や平らな形状の塵芥がバースクリーン6に広がって捕捉された場合、スリット9が塞がれ流路を遮ってしまうことで流動抵抗が上昇して問題になる。
またバースクリーン6の上流面において、凸部が水圧によって変形して捕捉能力が低下するおそれがあった。
さらに細目用バースクリーンは目幅を小さくすると通水能力が低下してしまう。このため豪雨等で多量の下水が流入した場合、上流部で水が水路から溢れるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5586868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、上記従来技術の問題点に鑑み、バースクリーンの塵芥絡みつきを防止できる除塵装置を提供することにある。また塵芥の捕捉時にバースクリーンの通水能力を確保できる除塵装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するための第1の手段として、取水路への浸漬と引き上げが繰り返されるバースクリーンを備えた除塵装置であって、
前記バースクリーンは、フラットバーを取水路の幅方向に所定間隔で並べて上端及び下端をバー枠で支持し、前記フラットバーと直交し、かつ前記バー枠間に長手方向が前記取水路の幅方向に沿った捕捉バーを前記フラットバーの上流面から突出させて取り付けたことを特徴とする除塵装置を提供することにある。
上記第1の手段によれば、フラットバーの上流面に凸状に形成された捕捉バーにより、紐状や平らな面状の塵芥であってもフラットバーに絡みにくくなり、スリットから十分な通水量を確保できる。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するための第2の手段として、第1の手段において、 前記バースクリーンは、前記上流面から所定間隔を開けて配置した前記捕捉バーの両端を支持する支持体を前記フラットバーの上流面に設けたことを特徴とする除塵装置を提供することにある。
上記第2の手段によれば、塵芥がフラットバーに密着することなく捕捉バーで捕捉でき、スリットから十分な通水量を確保できる。また塵芥の捕捉中に流水圧で撓んだ捕捉バーが回動して水上に移動して流水圧が作用しなくなると撓みがもどるときの反力で容易に剥がれやすくなる。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するための第3の手段として、第1の手段において、前記バースクリーンは、前記上流面に取り付けた前記捕捉バーを水流方向から見て重ならない位置の裏面となる前記フラットバーの下流面にも前記捕捉バーを設けたことを特徴とする除塵装置を提供することにある。
上記第3の手段によれば、上流面の捕捉バーで捕捉できず上流面のフラットバー間のスリットを通過した塵芥を下流面の捕捉バーで捕捉することができる。また第1の手段のバースクリーンよりも小さいサイズの塵芥を回収することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、通水面積を広く確保して水切りが良い構造となり、塵芥の捕捉能力の低下を防止できる。またフラットバーの上流面に凸状に形成された捕捉バーにより、紐状や平らな面状の塵芥であってもフラットバーに絡みにくくなり、スリットから十分な通水量を確保できる。さらにフラットバーなどに流水圧の集中負荷がかからず損傷を低減してバースクリーンの長寿命化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例1のバースクリーンの斜視図である。
図2】実施例1のバースクリーンの側面図である。
図3】実施例2のバースクリーンの斜視図である。
図4】実施例2のバースクリーンの側面図である。
図5】除塵装置の説明図である。
図6】従来のバースクリーンの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の除塵装置の実施形態について、図面を参照しながら、以下詳細に説明する。
【0014】
[実施例1]
図1は実施例1のバースクリーンの斜視図である。図2は実施例1のバースクリーンの側面図である。図示のように実施例1のバースクリーン6aは、フラットバー7を取水路の幅方向に所定間隔で並べて上端及び下端をバー枠8で支持し、フラットバー7と直交し、かつバー枠8間に長手方向が取水路の幅方向(水平方向)に沿った捕捉バー20aをフラットバー7の上流面から突出させて取り付けている。
捕捉バー20aは、バー枠8とほぼ同じ長さで断面形状が円、楕円、多角形であり、材質にばね鋼鋼材を用いており、弾性変形に対して元に戻ろうとするしなやかさ、弾力を備えている。捕捉バー20aは、フラットバー7の上流面から所定間隔を開けるように、換言すると水流方向に対して凸状に取り付けている。すなわち、捕捉バー20aは両端をフラットバー7の上流面から上流側に突出した支持体22を用いて取り付けている。支持体22は、バースクリーン6aの幅方向の両端にあるフラットバー7の上流面から上流側に向けて突出するように取り付けている。支持体22の両主面を貫通する孔に捕捉バー20aを挿入して溶接などの固定手段で固定している。また捕捉バー20aは、バースクリーン6aの上下のバー枠8間で取水路の上下方向に渡って所定間隔で複数本(図1、2に示す捕捉バー20aは2本を等間隔)取り付けている。
【0015】
このような構成の実施例1のバースクリーン6aによれば、フラットバー7の上流面から突出した捕捉バー20aにより塵芥が上流面に密着せずに捕捉できる。従って、スリット9の流路が塞がれることなく、フラットバー7間のスリット9の通水能力を確保できる。また通水面積を広く確保して水切りが良い構造となり、塵芥の捕捉能力の低下を防止できる。
また捕捉バー20aに付着した塵芥に流水圧が作用しても捕捉バー20aとフラットバー7を離して設置したことにより、フラットバー7へ負荷が直接作用しないため、バースクリーン6aの損傷を防止できる。そしてバースクリーン6aが回動して水上に移動すると流水圧が作用しなくなり、捕捉バー20aの撓みの反力によって戻ろうとするときに塵芥が剥がれやすくなる。
なお捕捉バー20aの設置数は実施例のような2本に限らず、バースクリーン6aの大きさに応じて任意に変更することができ、1本以上取り付ける構成であると良い。
【0016】
[実施例2]
図3は実施例2のバースクリーンの斜視図である。図4は実施例2のバースクリーンの側面図である。図示のように実施例2のバースクリーン6bは、捕捉バー20bをフラットバー7の上流面に直に取り付けている。捕捉バー20bは支持体を用いずにフラットバー7の上流面に直に溶接等の固定手段によって取り付けている。このため、捕捉バー20bとフラットバーの上流面との間に隙間は形成されていないが、フラットバー7の上流面から水流方向に対して突出するように取り付けている。また捕捉バー20bは、バースクリーン6bの上下のバー枠8間で取水路の上下方向に渡って所定間隔で複数本(図3、4に示す捕捉バー20bは4本を等間隔)取り付けている。
このような構成の実施例2のバースクリーン6bによれば、フラットバー7の上流面から突出した捕捉バー20bにより塵芥が上流面に密着せずに捕捉できる。従って、スリット9の流路が塞がれることなく、フラットバー7間のスリット9の通水能力を確保できる。また流れてきた塵芥が紐状や平らな面状であってもフラットバー7に絡みつくことを防止でき、スリット9に十分な通水能力を確保できる。また通水面積を広く確保して水切りが良い構造となり、塵芥の捕捉能力の低下を防止できる。
【0017】
またバースクリーン6bは、上流面に取り付けた捕捉バー20bを水流方向から見て(正面視で)重ならない位置の裏面となるフラットバー7の下流面にも捕捉バー20cを設けている。下流面の捕捉バー20cは上流面の捕捉バー20bと同様にフラットバー7の下流面に直に取り付けている。また捕捉バー20cは、バースクリーン6bの上下のバー枠8間で取水路の上下方向に渡って、上流面の捕捉バー20bと水平方向に重ならないように捕捉バー20b間に所定間隔で複数本(図3、4に示す捕捉バー20cは4本を等間隔)取り付けている。なお実施例2の捕捉バー20b,20cは、バー枠8とほぼ同じ長さで断面形状が円、楕円、多角形であり、フラットバー7と同じ素材を用いている。
このような構成の実施例2のバースクリーン6bによれば、前述の実施例2の効果に加えて、フラットバー7の上流面に設けた捕捉バー20bで十分に捕捉できず、スリットを通過した塵芥を下流面の捕捉バー20cで捕捉することができる。また図3,4に示す実施例2のバースクリーン6bは、上流面の捕捉バー20bと重ならない位置の裏面となる下流面にも捕捉バー20cを設けているため、実施例1よりも小さいサイズの塵芥を回収するのに適している。換言すると実施例1のバースクリーン6aは実施例2のバースクリーン6bよりも大きいサイズの塵芥を回収する際に適用すると良い。
なお捕捉バー20b,20cの設置数は実施例のような4本に限らず、バースクリーン6bの大きさに応じて任意に変更することができ、1本以上取り付ける構成であると良い。
このような本発明の除塵装置によれば、通水面積を広く確保して水切りが良い構造となり、塵芥の捕捉能力の低下を防止できる。またフラットバーの上流面に凸状に形成された捕捉バーにより、紐状や平らな面状の塵芥であってもフラットバーに絡みにくくなり、スリットから十分な通水量を確保できる。さらにフラットバーなどに流水圧の集中負荷がかからず損傷を低減してバースクリーンの長寿命化が図れる。
【0018】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明した。しかしながら、本発明は、上記実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の変更が可能である。
また、本発明は、実施形態において示された組み合わせに限定されることなく、種々の組み合わせによって実施可能である。
【符号の説明】
【0019】
2 キャリングチェーン
3B 下部スプロケットホイール
4 スクリーン
5 ハウジング
6,6a、6b バースクリーン
7 フラットバー
8 バー枠
9 スリット
10 除塵装置
20a,20b,20c 捕捉バー
22 支持体
図1
図2
図3
図4
図5
図6