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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022024611
(43)【公開日】2022-02-09
(54)【発明の名称】船舶用電力供給システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/38 20060101AFI20220202BHJP
   B63J 99/00 20090101ALI20220202BHJP
   B63H 21/20 20060101ALI20220202BHJP
   B63H 21/14 20060101ALI20220202BHJP
   B63H 21/17 20060101ALI20220202BHJP
   H02H 3/08 20060101ALI20220202BHJP
   H02J 3/01 20060101ALI20220202BHJP
【FI】
H02J3/38 110
B63J99/00 A
B63H21/20
B63H21/14
B63H21/17
H02H3/08 P
H02J3/01
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020127305
(22)【出願日】2020-07-28
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】000195959
【氏名又は名称】西芝電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】末長 良輔
(72)【発明者】
【氏名】黒田 弘人
(72)【発明者】
【氏名】藤本 正
【テーマコード(参考)】
5G004
5G066
【Fターム(参考)】
5G004AA02
5G004BA03
5G066EA01
5G066HA13
5G066HB01
5G066HB09
5G066JB03
(57)【要約】
【課題】機器の設置スペースの削減、重量の軽減が可能な船舶用電力供給システムを提供すること。
【解決手段】船舶用電力供給システムは、ギアと連結され、回転による機械エネルギーを電気エネルギーに変換し交流電力を供給する、回転子及び固定子により構成される巻線型誘導機と、固定子からの交流電力を船内母線に供給する交流リアクトルと、巻線型誘導機と交流リアクトルの間に接続され交流電力の波形を正弦波状に改善する第1のフィルタ回路と、第1のフィルタ回路と接続され交流電力を直流電力に変換する第1の電力変換器と、第1の電力変換器と並列に接続され直流電力を平滑する平滑コンデンサと、平滑コンデンサと並列に接続され直流電力を交流電力に変換する第2の電力変換器と、第2の電力変換器と接続され交流電力の波形を正弦波状に改善する、巻線型誘導機の回転子と接続された第2のフィルタ回路を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船を推進させる推進プロペラにエンジンの回転数を適切な回転数に変換して伝達するギアと連結され、回転による機械エネルギーを電気エネルギーに変換し交流電力を供給する、回転子及び固定子により構成される巻線型誘導機と、
前記固定子と第1の遮断器を介し接続され、前記固定子からの交流電力の高調波成分を除去し波形を正弦波状に改善して、第2の遮断器を介して船内母線に交流電力を供給する交流リアクトルと、
前記第1の遮断器と前記交流リアクトルの間に第3の遮断器を介し接続され交流電力の高調波成分を除去し波形を正弦波状に改善する第1のフィルタ回路と、
前記第1のフィルタ回路と接続され交流電力を直流電力に変換する第1の電力変換器と、
前記第1の電力変換器と並列に接続され直流電力を平滑する平滑コンデンサと、
前記平滑コンデンサと並列に接続され直流電力を交流電力に変換する第2の電力変換器と、
前記第2の電力変換器と接続され交流電力の高調波成分を除去し波形を正弦波状に改善する、前記巻線型誘導機の前記回転子と接続された第2のフィルタ回路とを有したことを特徴とする船舶用電力供給システム。
【請求項2】
請求項1の船舶用電力供給システムにおいて、
前記平滑コンデンサと、第4の遮断器を介して並列に接続され直流電力を蓄える蓄電装置を設け、
前記船内母線側において短絡事故が発生した時に前記第4の遮断器をオンし、前記蓄電装置から、前記第2の電力変換器、前記第2のフィルタ回路、前記巻線型誘導機、前記第1の遮断器、前記交流リアクトルを通じて、前記船内母線と短絡が発生した箇所との間に設けられた第5の遮断器を動作させるための短絡電流を供給する構成としたことを特徴とする船舶用電力供給システム。
【請求項3】
船を推進させる推進プロペラにエンジンの回転数を適切な回転数に変換して伝達するギアと連結され、回転による機械エネルギーを電気エネルギーに変換し交流電力を供給する、回転子及び固定子により構成される巻線型誘導機と、
前記固定子と第1の遮断器を介し接続され、船内母線と第2の遮断器を介して接続され、第3の遮断器と接続され、第2の遮断器を介して船内母線に交流電力を供給する3巻線変圧器と、
前記3巻線変圧器と前記第3の遮断器を介し接続され交流電力の高調波成分を除去し波形を正弦波状に改善する第1のフィルタ回路と、
前記第1のフィルタ回路と接続され交流電力を直流電力に変換する第1の電力変換器と、
前記第1の電力変換器と並列に接続され直流電力を平滑する平滑コンデンサと、
前記平滑コンデンサと並列に接続され直流電力を交流電力に変換する第2の電力変換器と、
前記第2の電力変換器と接続され交流電力の高調波成分を除去し波形を正弦波状に改善する、前記巻線型誘導機の前記回転子と接続された第2のフィルタ回路とを有したことを特徴とする船舶用電力供給システム。
【請求項4】
請求項3の船舶用電力供給システムにおいて、
前記平滑コンデンサと、第4の遮断器を介して並列に接続され直流電力を蓄える蓄電装置を設け、
前記船内母線側において短絡事故が発生した時に前記第4の遮断器をオンし、前記蓄電装置から、前記第2の電力変換器、前記第2のフィルタ回路、前記巻線型誘導機、前記第1の遮断器、前記3巻線変圧器を通じて、前記船内母線と短絡が発生した箇所との間に設けられた第5の遮断器を動作させるための短絡電流を供給する構成としたことを特徴とする船舶用電力供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶用電力供給システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の船舶用電力供給システムについて図面を参照して説明する。図3は、従来の船舶用電力供給システムを示すブロック図である。
【0003】
エンジン1は、ギア2と連結され、さらに、ギア2は、推進プロペラ3と連結される。エンジン1は、ギア2を介し、推進プロペラ3を回転させ、船舶を推進させる。ギア2は、エンジン1の回転数が、推進プロペラ3に必要な回転数となるよう適切なギア比が設定されている。さらに、ギア2には、同期回転機4が連結される。同期回転機4は、ギア2を介し、エンジン1により回転させられることで、回転の機械エネルギーを電気エネルギーに変換し、交流電力を出力する。
【0004】
同期回転機4の交流電力は、フィルタ回路5、電力変換器6、平滑コンデンサ7、電力変換器8、フィルタ回路9、遮断器10を介して電路である船内母線11に供給される。
【0005】
推進プロペラ3の回転数は航行状態により変化し、それに伴って同期回転機4の交流電力の周波数が変化する。そのため、船内母線11に供給される交流電力を定格の周波数に変換する必要がある。電力変換器6は、同期回転機4の交流電力を、フィルタ回路5を介して受電し、直流電力に変換する。平滑コンデンサ7はその直流電力を平滑する。電力変換器8は、平滑された直流電力を船舶に所望される周波数の交流電力に変換する。フィルタ回路9は、交流電力に含まれる高調波成分を除去し波形を正弦波状に改善する。
【0006】
電力変換器6や電力変換器8は、複数(例えば6個)のスイッチング素子を備えて構成される。スイッチング素子としては、MOSFET(metal oxide semiconductor field effect transistor)やIGBT(insulated gate bipolar transistor)等の種々の構造のパワートランジスタを採用することができる。また、フィルタ回路5及びフィルタ回路9は、インダクタンスとコンデンサから構成される。
【0007】
船内母線11には、それぞれ遮断器12a、12b、12cを介し、複数の負荷13a、13b、13cが接続されており、交流電力を消費する。
【0008】
また、船内母線11には、それぞれ遮断器14a、14b、14cを介し、複数の発電機15a、15b、15cが接続されおり、船内母線に交流電力を供給している。交流電力が余剰な場合は、発電機15a、15b、15cの交流電力を、船内母線11を介し、同期回転機4に供給することで、同期回転機4をモータとして駆動させ、推進プロペラ3を回転させ船を推進加勢及び非常航走させることも可能である。また、同期回転機4を、エンジン1を始動させるためのセルモータとして使用することも可能である。
【0009】
船舶の仕様において、短絡事故時に遮断器への短絡電流の供給を求められる場合がある。例えば、遮断器12aと、負荷13aの中間で短絡16が発生した場合、そのまま放置すると船内母線11の電圧が低下したままになり、短絡が発生した箇所とは別の負荷13b、13cも停止するので、すみやかに短絡点を切り離すことが望まれる。短絡点を切り離すためには、遮断器12aが反応するに足りる十分な短絡電流を流さなければならない。遮断器12aが反応するに足りる十分な短絡電流を遮断器12aに設定された時間だけ継続して流すと、遮断器12aは遮断されるので、短絡点が切り離され、負荷13b、13cは通常の運転に戻ることができる。
【0010】
短絡事故発生時、遮断器12aを動作させるための短絡電流は、同期回転機4から、電力変換器6、電力変換器8を介し、流さなければならないが、電力変換器6、電力変換器8は予め短絡電流を考慮した容量にする必要がある。短絡電流の大きさは、船舶において顕著であり、定格の3倍もの大きさが必要となる場合もある。そのため、大容量の電力変換器6と電力変換器8が必要となり、その結果、寸法が大きく、重量が重く、コストが高くなるという問題がある。
【0011】
そのため、船舶の仕様において、短絡事故時に遮断器への短絡電流の供給を求められる場合は、図4の構成としている。図3の船舶用電力供給システムと異なる点は、フィルタ回路9と遮断器10の間に、交流リアクトル17を介し、同期調相機18を設けたことである。同期調相機18は、短絡事故時に交流リアクトル17、遮断器10、船内母線11を介し遮断器12aに短絡電流を供給する。また、交流リアクトル17は交流電力の高調波成分を除去し波形を正弦波状に改善する。
【0012】
船舶用電力供給システムに関する発明としては、例えば以下に示す特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2009-044836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
このような船舶用電力供給システムにおいて、機器の設置スペースの削減、重量の軽減が求められている。
【0015】
本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、機器の設置スペースの削減、重量の軽減ができる船舶用電力供給システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために、請求項1に対応する発明による船舶用電力供給システムは、船を推進させる推進プロペラにエンジンの回転数を適切な回転数に変換して伝達するギアと連結され、回転による機械エネルギーを電気エネルギーに変換し交流電力を供給する、回転子及び固定子により構成される巻線型誘導機と、前記固定子と第1の遮断器を介し接続され、前記固定子からの交流電力の高調波成分を除去し波形を正弦波状に改善して、第2の遮断器を介して船内母線に交流電力を供給する交流リアクトルと、前記第1の遮断器と前記交流リアクトルの間に第3の遮断器を介し接続され交流電力の高調波成分を除去し波形を正弦波状に改善する第1のフィルタ回路と、前記第1のフィルタ回路と接続され交流電力を直流電力に変換する第1の電力変換器と、前記第1の電力変換器と並列に接続され直流電力を平滑する平滑コンデンサと、前記平滑コンデンサと並列に接続され直流電力を交流電力に変換する第2の電力変換器と、前記第2の電力変換器と接続され交流電力の高調波成分を除去し波形を正弦波状に改善する、前記巻線型誘導機の前記回転子と接続された第2のフィルタ回路を有する。
【0017】
請求項2に対応する発明による船舶用電力供給システムは、請求項1の船舶用電力供給システムにおいて、前記平滑コンデンサと、第4の遮断器を介して並列に接続され直流電力を蓄える蓄電装置を設け、前記船内母線側において短絡事故が発生した時に前記第4の遮断器をオンし、前記蓄電装置から、前記第2の電力変換器、前記第2のフィルタ回路、前記巻線型誘導機、前記第1の遮断器、前記交流リアクトルを通じて、前記船内母線と短絡が発生した箇所との間に設けられた第5の遮断器を動作させるための短絡電流を供給する構成とする。
【0018】
請求項3に対応する発明による船舶用電力供給システムは、船を推進させる推進プロペラにエンジンの回転数を適切な回転数に変換して伝達するギアと連結され、回転による機械エネルギーを電気エネルギーに変換し交流電力を供給する、回転子及び固定子により構成される巻線型誘導機と、前記固定子と第1の遮断器を介し接続され、船内母線と第2の遮断器を介して接続され、第3の遮断器と接続され、第2の遮断器を介して船内母線に交流電力を供給する3巻線変圧器と、前記3巻線変圧器と前記第3の遮断器を介し接続され交流電力の高調波成分を除去し波形を正弦波状に改善する第1のフィルタ回路と、前記第1のフィルタ回路と接続され交流電力を直流電力に変換する第1の電力変換器と、前記第1の電力変換器と並列に接続され直流電力を平滑する平滑コンデンサと、前記平滑コンデンサと並列に接続され直流電力を交流電力に変換する第2の電力変換器と、前記第2の電力変換器と接続され交流電力の高調波成分を除去し波形を正弦波状に改善する、前記巻線型誘導機の前記回転子と接続された第2のフィルタ回路を有する。
【0019】
請求項4に対応する発明による船舶用電力供給システムは、請求項3の船舶用電力供給システムにおいて、前記平滑コンデンサと、第4の遮断器を介して並列に接続され直流電力を蓄える蓄電装置を設け、前記船内母線側において短絡事故が発生した時に前記第4の遮断器をオンし、前記蓄電装置から、前記第2の電力変換器、前記第2のフィルタ回路、前記巻線型誘導機、前記第1の遮断器、前記3巻線変圧器を通じて、前記船内母線と短絡が発生した箇所との間に設けられた第5の遮断器を動作させるための短絡電流を供給する構成とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明では、機器の設置スペースの削減、重量の軽減が可能な船舶用電力供給システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第1の実施の形態の船舶用電力供給システムを示すブロック図。
図2】本発明の第2の実施の形態の船舶用電力供給システムを示すブロック図。
図3】従来の船舶用電力供給システムを示すブロック図。
図4】短絡事故時に遮断器へ短絡電流を供給する場合の従来の船舶用電力供給システムを示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
【0023】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態の船舶用電力供給システムを示すブロック図である。図1において、図3に示した従来の船舶用電力供給システムを示すブロック図と異なる点は、同期回転機4の代わりに、巻線型誘導機21を設けたことである。 巻線型誘導機21は、回転子21aと固定子21bを有して構成される。回転子21aは、図示しない回転子コイル、回転子鉄心、シャフト、スリップリングなどで構成され、固定子21bは、図示しない固定子コイル、固定子鉄心などで構成される。
【0024】
巻線型誘導機21は、運航状況により回転子21aの回転数が変動した場合でも、回転子21aに供給される交流電力の周波数を調整することで、固定子21bが供給する交流電力を所望の周波数に保つことができる。
【0025】
固定子21bは、図3に示すフィルタ回路5、電力変換器6、平滑コンデンサ7、電力変換器8、フィルタ回路9の代わりに、遮断器22、交流リアクトル23を介し、遮断器10に接続され、船内母線11に交流電力を供給する。交流リアクトル23は、交流電力の高調波成分を除去し波形を正弦波状に改善する。
【0026】
また、遮断器22と交流リアクトル23の間には、遮断器24、フィルタ回路25、電力変換器26、平滑コンデンサ27、遮断器41と接続された蓄電装置42、電力変換器28、フィルタ回路29、回転子21aが接続される。平滑コンデンサ27は、電力変換器26と電力変換器28との間に、電力変換器26と並列に接続される。遮断器41と接続された蓄電装置42は、電力変換器28に平滑コンデンサ27と並列に接続される。蓄電装置42は、例えば、鉛蓄電池もしくはリチウムイオン電池などで構成される。電力変換器28は、平滑コンデンサ27と並列に接続される。
【0027】
遮断器22からの交流電力は、遮断器24、フィルタ25を介し、電力変換器26にて交流電力が直流電力に変換される。直流電力は、遮断器41を介して蓄電装置42に蓄積される。また、直流電力は、平滑コンデンサ27にて平滑され、電力変換器28にて直流電力が交流電力に変換される。交流電力は、フィルタ回路29にて高調波成分を除去され波形を正弦波状に改善され、回転子21aに供給される。
【0028】
巻線型誘導機21の動作について説明する。巻線型誘導機21は、回転子21aの回転数が変動しても、回転子21aに供給される交流電力の周波数を調整することで、固定子21bの交流電力の周波数を一定に保つことが可能な回転機である。
【0029】
例として、巻線型誘導機21の極数Pが6の場合について説明する。なお、船内母線11の周波数は60Hzとする。
【0030】
回転子21aの回転数Nが1200min^-1の場合、回転による周波数fは、f=P×N÷120=6×1200/120=60Hzとなる。この時、回転子21aに0Hzの交流電力(=直流)を供給することで、固定子21bから60+0=60Hzの交流電力が出力される。
【0031】
回転子21aの回転数Nが900min^-1の場合、回転による周波数fは、f=P×N÷120=6×900/120=45Hzとなる。この時、回転子21aに15Hzの交流電力を供給することで、固定子21bから45+15=60Hzの交流電力が出力される。
【0032】
回転子21aの回転数Nが1500min^-1の場合、回転による周波数fは、f=P×N÷120=6×1500/120=75Hzとなる。この時、回転子21aに‐15Hzの交流電力を供給することで、固定子21bから75-15=60Hzの交流電力が出力される。
【0033】
なお、上記の説明において、回転子21aに供給する交流電力の周波数の符号については、プラスが回転方向と同一方向に回転磁界を発生させ、マイナスが回転方向と反対方向に回転磁界を発生させるものとする。
【0034】
この例の場合に、必要となる電力変換器26、電力変換器28の容量の概算値について説明する。巻線型誘導機21の定格容量をP、電力変換器の容量をP2、変動周波数の最大値をfmax、定格周波数をfとすると、P2=P×fmax/f=P×15/60=0.25Pとなる。つまり、この場合、必要な電力変換器の容量は、巻線型誘導機21の容量の25%となる。さらに、この数値に電力変換器の使用上の裕度分を加味し、最終的な電力変換器の容量は巻線型誘導機21の容量の30~40%となる。よって、従来よりも電力変換器を小容量化し、設置スペースを縮小し、軽量化することができるようになる。
【0035】
次に、船舶用電力供給システムの初期起動時の動作について説明する。
【0036】
遮断器41をオンし、蓄電装置42から出力された直流電力を、電力変換器28、フィルタ回路29を介し波形改善された交流電力に変換し、回転子21aを界磁させるための電力として供給する。その後、遮断器22と遮断器24をオンし、固定子21bから出力された交流電力を、フィルタ回路25、電力変換器26、電力変換器28、フィルタ回路29の順に流し、回転子21aを界磁させるための電力として供給する。その後、固定子21bの交流電力が、船内母線11の交流電力と同期がとれる状態になった際に、遮断器10がオンされ、船内母線11へ交流電力が供給されるようになる。その後、蓄電装置42は、放電した電力を蓄電した後、遮断器41をオフし、次回の使用時まで待機する。
【0037】
次に、短絡事故時の動作について説明する。
【0038】
短絡16が発生した時、遮断器24をオフする。その後は、遮断器41をオンし、蓄電装置42から出力された直流電力を、電力変換器28、フィルタ回路29を介し波形改善された交流電力に変換し、回転子21aを界磁させるための電力として供給する。固定子21bから出力された交流電力は、遮断器22、交流リアクトル23、遮断器10、船内母線11を介し、遮断器12aを遮断動作させるための短絡電流として供給される。
【0039】
このように、遮断器12aを遮断させるための短絡電流は、巻線型誘導機21より供給できるため、従来必要であった大容量の電力変換器や同期調相機を不要とし、設置面積の縮小化、軽量化、メンテナンスの削減を可能とする。
【0040】
なお、従来と同様に、船内の交流電力が余剰な場合は、発電機15a、15b、15cの交流電力を、船内母線11を介し、巻線型誘導機21に供給することで、巻線型誘導機21をモータとして駆動させ、推進プロペラ3を回転させ船を推進加勢及び非常航走させることも可能である。また、巻線型誘導機21を、エンジン1を始動させるためのセルモータとして使用することも可能である。
【0041】
(第2の実施の形態)
図2は、本発明の第2の実施の形態の船舶用電力供給システムを示すブロック図である。第1の実施の形態の船舶用電力供給システムを示すブロック図と異なる点は、図1に示す交流リアクトル23の代わりに、遮断器22と遮断器10と遮断器24の間に、3巻線変圧器31を設けたことである。
【0042】
3巻線変圧器31を設けたことで、巻線型誘導機21の設計時に、回転子21aの入力電圧と固定子21bの出力電圧を自由に決めることができる。それにより、設計の自由度が増し、第1の実施の形態に比べ、巻線型誘導機21の小型軽量化が可能となる。また、3巻線変圧器31にはインダクタンス成分が含まれているため、交流リアクトル23と同様の働きができ、交流リアクトル23を省くことができる。
【0043】
なお、本発明は上記各実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記各実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0044】
1…エンジン、2…ギア、3…推進プロペラ、4…同期回転機、5…フィルタ回路、6…電力変換器、7…平滑コンデンサ、8…電力変換器、9…フィルタ回路、10…遮断器、11…船内母線、12a、12b、12c…遮断器、13a、13b、13c…負荷、14a、14b、14c…遮断器、15a、15b、15c…発電機、16…短絡、17…交流リアクトル、18…同期調相機、21…巻線型誘導機、21a…回転子、21b…固定子、22…遮断器、23…交流リアクトル、24…遮断器、25…フィルタ回路、26…電力変換器、27…平滑コンデンサ、28…電力変換器、29…フィルタ回路、31…3巻線変圧器、41…遮断器、42…蓄電装置。
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2021-11-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船を推進させる推進プロペラにエンジンの回転数を適切な回転数に変換して伝達するギアと連結され、回転による機械エネルギーを電気エネルギーに変換し交流電力を供給する、回転子及び固定子により構成され、前記回転子に供給される交流電力を調整することで前記固定子が供給する交流電力の周波数が調整される巻線型誘導機と、
前記固定子と第1の遮断器を介し接続され、前記固定子から供給される交流電力の高調波成分を除去し波形を正弦波状に改善して、第2の遮断器を介して船内母線に交流電力を供給する交流リアクトルと、
前記第1の遮断器と前記交流リアクトルの間に第3の遮断器を介し接続され交流電力の高調波成分を除去し波形を正弦波状に改善する第1のフィルタ回路と、
前記第1のフィルタ回路と接続され交流電力を直流電力に変換する第1の電力変換器と、
前記第1の電力変換器と並列に接続され直流電力を平滑する平滑コンデンサと、
前記平滑コンデンサと並列に接続され直流電力を交流電力に変換する第2の電力変換器と、
前記第2の電力変換器と接続され交流電力の高調波成分を除去し波形を正弦波状に改善する、前記巻線型誘導機の前記回転子と接続された第2のフィルタ回路とを有し
前記回転子に供給する交流電力の周波数を、前記推進プロペラの回転数の変動に伴う前記回転子の回転数の変動に応じて、前記固定子から供給される交流電力の周波数が目的とする周波数を保つように調整することを特徴とする船舶用電力供給システム。
【請求項2】
請求項1の船舶用電力供給システムにおいて、
前記平滑コンデンサと、第4の遮断器を介して並列に接続され直流電力を蓄える蓄電装置を設け、
前記船内母線側において短絡事故が発生した時に前記第4の遮断器をオンし、前記蓄電装置から、前記第2の電力変換器、前記第2のフィルタ回路、前記巻線型誘導機、前記第1の遮断器、前記交流リアクトルを通じて、前記船内母線と短絡が発生した箇所との間に設けられた第5の遮断器を動作させるための短絡電流を供給する構成としたことを特徴とする船舶用電力供給システム。
【請求項3】
船を推進させる推進プロペラにエンジンの回転数を適切な回転数に変換して伝達するギアと連結され、回転による機械エネルギーを電気エネルギーに変換し交流電力を供給する、回転子及び固定子により構成され、前記回転子に供給される交流電力を調整することで前記固定子が供給する交流電力の周波数が調整される巻線型誘導機と、
前記固定子と第1の遮断器を介し接続され、船内母線と第2の遮断器を介して接続され、第3の遮断器と接続され、前記固定子から交流電力が供給され、第2の遮断器を介して船内母線に交流電力を供給する3巻線変圧器と、
前記3巻線変圧器と前記第3の遮断器を介し接続され交流電力の高調波成分を除去し波形を正弦波状に改善する第1のフィルタ回路と、
前記第1のフィルタ回路と接続され交流電力を直流電力に変換する第1の電力変換器と、
前記第1の電力変換器と並列に接続され直流電力を平滑する平滑コンデンサと、
前記平滑コンデンサと並列に接続され直流電力を交流電力に変換する第2の電力変換器と、
前記第2の電力変換器と接続され交流電力の高調波成分を除去し波形を正弦波状に改善する、前記巻線型誘導機の前記回転子と接続された第2のフィルタ回路とを有し
前記回転子に供給する交流電力の周波数を、前記推進プロペラの回転数の変動に伴う前記回転子の回転数の変動に応じて、前記固定子から供給される交流電力の周波数が目的とする周波数を保つように調整することを特徴とする船舶用電力供給システム。
【請求項4】
請求項3の船舶用電力供給システムにおいて、
前記平滑コンデンサと、第4の遮断器を介して並列に接続され直流電力を蓄える蓄電装置を設け、
前記船内母線側において短絡事故が発生した時に前記第4の遮断器をオンし、前記蓄電装置から、前記第2の電力変換器、前記第2のフィルタ回路、前記巻線型誘導機、前記第1の遮断器、前記3巻線変圧器を通じて、前記船内母線と短絡が発生した箇所との間に設けられた第5の遮断器を動作させるための短絡電流を供給する構成としたことを特徴とする船舶用電力供給システム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0016】
上記課題を解決するために、請求項1に対応する発明による船舶用電力供給システムは、船を推進させる推進プロペラにエンジンの回転数を適切な回転数に変換して伝達するギアと連結され、回転による機械エネルギーを電気エネルギーに変換し交流電力を供給する、回転子及び固定子により構成され、前記回転子に供給される交流電力を調整することで前記固定子が供給する交流電力の周波数が調整される巻線型誘導機と、前記固定子と第1の遮断器を介し接続され、前記固定子から供給される交流電力の高調波成分を除去し波形を正弦波状に改善して、第2の遮断器を介して船内母線に交流電力を供給する交流リアクトルと、前記第1の遮断器と前記交流リアクトルの間に第3の遮断器を介し接続され交流電力の高調波成分を除去し波形を正弦波状に改善する第1のフィルタ回路と、前記第1のフィルタ回路と接続され交流電力を直流電力に変換する第1の電力変換器と、前記第1の電力変換器と並列に接続され直流電力を平滑する平滑コンデンサと、前記平滑コンデンサと並列に接続され直流電力を交流電力に変換する第2の電力変換器と、前記第2の電力変換器と接続され交流電力の高調波成分を除去し波形を正弦波状に改善する、前記巻線型誘導機の前記回転子と接続された第2のフィルタ回路を有し、前記回転子に供給する交流電力の周波数を、前記推進プロペラの回転数の変動に伴う前記回転子の回転数の変動に応じて、前記固定子から供給される交流電力の周波数が目的とする周波数を保つように調整する。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0018】
請求項3に対応する発明による船舶用電力供給システムは、船を推進させる推進プロペラにエンジンの回転数を適切な回転数に変換して伝達するギアと連結され、回転による機械エネルギーを電気エネルギーに変換し交流電力を供給する、回転子及び固定子により構成され、前記回転子に供給される交流電力を調整することで前記固定子が供給する交流電力の周波数が調整される巻線型誘導機と、前記固定子と第1の遮断器を介し接続され、船内母線と第2の遮断器を介して接続され、第3の遮断器と接続され、前記固定子から交流電力が供給され、第2の遮断器を介して船内母線に交流電力を供給する3巻線変圧器と、前記3巻線変圧器と前記第3の遮断器を介し接続され交流電力の高調波成分を除去し波形を正弦波状に改善する第1のフィルタ回路と、前記第1のフィルタ回路と接続され交流電力を直流電力に変換する第1の電力変換器と、前記第1の電力変換器と並列に接続され直流電力を平滑する平滑コンデンサと、前記平滑コンデンサと並列に接続され直流電力を交流電力に変換する第2の電力変換器と、前記第2の電力変換器と接続され交流電力の高調波成分を除去し波形を正弦波状に改善する、前記巻線型誘導機の前記回転子と接続された第2のフィルタ回路を有し、前記第2のフィルタ回路から前記回転子に供給する交流電力の周波数を、前記推進プロペラの回転数の変動に伴う前記回転子の回転数の変動に応じて、前記固定子から供給される交流電力の周波数が目的とする周波数を保つように調整する。