(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022024717
(43)【公開日】2022-02-09
(54)【発明の名称】画像処理装置及び工作機械
(51)【国際特許分類】
B23Q 17/09 20060101AFI20220202BHJP
B23Q 17/24 20060101ALI20220202BHJP
【FI】
B23Q17/09 A
B23Q17/24 A
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020127467
(22)【出願日】2020-07-28
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】000146847
【氏名又は名称】DMG森精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【弁理士】
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】神藤 建太
【テーマコード(参考)】
3C029
【Fターム(参考)】
3C029CC10
(57)【要約】 (修正有)
【課題】工具の状態を適切なタイミングで把握する。
【解決手段】画像処理装置は、ワークを加工する工具を保持する保持部2と、保持部に保持された工具を撮像するための撮像部3と、を備える工作機械の撮像部から送信される画像データを処理する画像処理装置10であって、撮像部から送信された画像データを受信する受信部101と、撮像部で撮像された工具の画像データと予めデータ化された工具のデータとを比較する比較部102と、比較部での比較結果を送信する送信部104と、を備え、比較部は、ワークの加工跡の状態を判断した後の入力信号に応じて、データの比較を行う。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを加工する工具を保持する保持部と、前記保持部に保持された工具を撮像するための撮像部と、を備える工作機械の前記撮像部から送信される画像データを処理する画像処理装置であって、
前記撮像部から送信された画像データを受信する受信部と、
前記撮像部で撮像された工具の画像データと予めデータ化された前記工具のデータとを比較する比較部と、
前記比較部での比較結果を送信する送信部と、を備え、
前記比較部は、前記ワークの加工跡の状態を判断した後の入力信号に応じて、データの比較を行う、画像処理装置。
【請求項2】
前記工具の使用時間を記憶する記憶部と、前記使用時間が所定時間を超えた場合に、前記撮像部に前記工具を撮像する指示を行う指示部と、を備える、請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
請求項1又は2のいずれか1項に記載の画像処理装置と、
ワークの加工を制御するための制御装置と、を備える工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、画像処理装置及び工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械を使用してワークを加工する際、工具の形状や状態を把握することが必要である。工具の状態の把握により、精度良い加工が実現できる。ところが、工具の形状や状態の把握は、特別な作業や時間を要するのが現状である。
【0003】
特許文献1では、研削加工装置の工具を、画像を用いて管理する技術が開示される。特許文献2では、工作機械の工具の変化に対し、工具の先端を撮影視野に捉えるための技術が開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-269844号公報
【特許文献2】特開平9-323240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献のいずれによっても、工具の状態を適切なタイミングで把握することは困難である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、特許請求の範囲に記載の装置等を提供するものである。
【0007】
本開示において、画像処理装置の他に、工作機械などを提供するものである。
【0008】
これらの概括的かつ特定の態様は、システム、方法、及びコンピュータプログラム、並びに、それらの組み合わせにより、実現されてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、工作機械での工具の状態を適切なタイミングで把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】実施形態に係る工作機械及び画像処理装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】実施形態に係る工作機械の構成を説明する構成図である。
【
図4A】実施形態に係る画像処理装置で利用される工具データの一例である。
【
図5】加工跡のないワークと、加工跡の生じたワークとを比較する図である。
【
図6】撮像した工具の画像データを表示する表示画面の一例である。
【
図7】工作機械における処理を説明するフローチャートである。
【
図8】画像処理装置における処理を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、図面を参照して各実施形態に係る画像処理装置及び工作機械について説明する。以下の説明では、同一の構成について、同一の符号を付して説明を省略する。
【0012】
以下で説明する「工作機械」は、工具を用いて加工対象である金属等のワークに対し、切削、研削等により所望の形状に加工するものである。
【0013】
本実施形態の「画像処理装置」は、工作機械内で撮像される画像を処理する装置である。また、「画像処理装置」は、工作機械においてワークの加工に使用する工具の状態の検出や計測等を実行する。
【0014】
〈工作機械〉
本開示の実施形態に係る工作機械1は、例えば、
図1に示すような外形であり、加工領域70内に配置されるワークを加工することができる。工作機械の構成について、
図1乃至
図3を用いて説明する。工作機械1は、
図2に示すように、保持部2、撮像部3、数値制御部4等を有する。また、工作機械1は、
図2に示すように、計測部5を有してもよい。さらに、工作機械1は、後述する画像処理装置10と接続される。
【0015】
保持部2は、ワークを加工する工具を保持するための部分である。例えば、保持部2は、ワークを加工する工具Tを取り付ける工具主軸21、刃物台のステーション、マガジンのポット、工具交換アームである。
【0016】
工具主軸21は、
図3に示すように、工具Tを保持した状態で、制御機構(図示せず)により、回転及び移動等することが可能である。工具Tは、制御機構による回転や移動の動作がされ、ワークを所望の形状に加工する。工具Tは、ワークの加工に利用される部位である刃部T1と、工具主軸21のホルダ211に保持される部位であるシャンク部T2とがある。
【0017】
工作機械1は、
図1に示す収納部であるマガジン61に複数種の工具Tを収納する。そして、工作機械1は、工具交換アームを利用して複数の中から選択した工具Tを工具主軸21に保持させることで、異なる複数種類の方法でワークを加工することができる。
【0018】
撮像部3は、保持部2に保持された工具Tを撮像する。撮像部3は、例えば、CCDやCMOS等の撮像素子を備えたカメラである。この撮像部3は、所定のタイミングで、工具主軸21に取り付けられた工具Tを撮像することができる。例えば、撮像部3は、1本の工具Tを利用して所定数のワークを加工したタイミングで、この工具Tを撮像する。
【0019】
撮像部3は、
図3に示すように、工具主軸21に取り付けられた工具Tを複数の異なる方向から撮像する。具体的には、工具主軸21が、保持する工具Tを所定のピッチで回転させ、撮像部3が、工具Tの回転を止めた状態で撮像を行う。このように所定ピッチ間隔で、工具Tを撮像することで、撮像部3が固定されている場合であっても、工具Tを異なる複数の方向から撮像することができる。また、撮像部3は、得られた画像データを、画像処理装置10に出力する。なお、一枚の画像に工具Tが収まらない場合、工具主軸21は、回転軸に沿って工具Tを移動させてもよい。
【0020】
上述のように、工作機械1は、撮像部3により、工作機械1の工具主軸21に取り付けられ、所定のピッチで回転された工具Tを撮像することで、複数の方向からの工具Tの画像データを得ることができる。例えば、撮像部3は、工具主軸21の回転軸を基準として工具Tが18°回転される毎に画像データを撮像することにより、各工具Tについて、工具Tの回転軸に対して垂直方向のうちの異なる方向からの複数の画像を得ることができる。18°回転であれば、工具を1回転させたときに20個の方向から撮像した画像を取得することができる。このとき、工作機械1は、工具Tの回転角度に関する情報を画像データと共に画像処理装置10に提供する。
【0021】
また、撮像部3は、ワーク保持部62に保持されるワークを撮像することもできる。
図2に示す例では、工作機械1は、1台の撮像部3のみを備える。この場合、1台の撮像部3で工具T及びワークを撮像することができる。また、工具T撮像用の撮像部と、ワーク撮像用の撮像部との複数台の撮像部を設け、工具とワークとを別々の撮像部で撮像する構成でもよい。
【0022】
照明部33は、
図3に示すように、発光面34が撮像部3の受光面31と対向するように配置され、発光面34から出射された光のうち工具の周囲を通過した光が受光面31に入射する。したがって、この照明部33は、透過照明である。透過照明である照明部33の使用により、工具Tの輪郭の詳細を把握可能な投影画像を得ることができる。なお、
図3に示す撮像部3、受光面31、照明部33及び発光面34の構成は、
図1中の破線部分に位置するものである。
【0023】
数値制御部4は、工具Tは、加工を行うために工具主軸21の駆動制御等の制御を行う。
【0024】
計測部5は、工具Tで加工されたワークを、計測器具を用いて計測する。具体的には、計測部5は、計測を要求するリクエストを受信すると、ワークを計測する。また、計測部5は、計測結果を画像処理装置10に送信する。
【0025】
計測部5、計測器具として、例えば、所定の位置でワークと接触させるように動作させる『タッチプローブ』を利用する。このとき、計測部5であるタッチプローブは、ワークの複数の点と接触するが、複数の点の接触で得られた電気信号を一の計測結果として画像処理装置に送信してもよい。または、各点の接触で得られた電気信号毎に計測結果として画像処理装置に送信してもよい。このように得られた複数点の情報から、画像処理装置10は、ワークの形状を計測することができる。なお、計測部5は、ワークの計測方法は、上述した『タッチプローブ』を利用した接触計測に限定されず、例えば、レーザー変位計を利用した非接触計測でもよい。
【0026】
また、工作機械1は、
図1に示すように、ワーク保持部62、照明部63を備える。ワーク保持部62は、加工対象のワークを保持することが可能であり、駆動機構に駆動されることによりワークを回転や移動させることができる。照明部63は、撮像部3による撮像の際に発光可能である。さらに、工作機械1は、加工領域70と工作機械1の外部を遮断するカバー71を備え、カバー71には、加工対象のワークを、加工領域70から工作機械1の外部に取り出すための開口72を開閉可能なドア73を備える。その他、工作機械1の加工等の種々の操作に用いる操作盤8を備える。
【0027】
〈画像処理装置〉
図2を用いて、実施形態に係る画像処理装置10の一例を説明する。画像処理装置10は、工作機械1の撮像部3から送信される画像データD2を処理するものであり、演算部100と、記憶部110と、入力部120と、表示部130と、通信部140とを備える。この画像処理装置10は、例えば、パーソナルコンピュータやタブレット端末等の情報処理装置である。この画像処理装置10は、いわゆる『ツールプロファイラ』として、工作機械においてワークの加工に使用する工具の状態の検出や計測等を実行することができる。
【0028】
演算部100は、画像処理装置10全体の制御を司るコントローラである。例えば、演算部100は、記憶部110に記憶される制御プログラムPを読み出して実行することにより、受信部101、比較部102、操作部103、送信部104及び指示部105としての処理を実行する。また、演算部100は、ハードウェアとソフトウェアの協働により所定の機能を実現するものに限定されず、所定の機能を実現する専用に設計されたハードウェア回路でもよい。すなわち、演算部100は、CPU、MPU、GPU、FPGA、DSP、ASIC等、種々のプロセッサで実現することができる。
【0029】
記憶部110は種々の情報を記録する記録媒体である。記憶部110は、例えば、RAM、ROM、フラッシュメモリ、SSD(Solid State Device)、ハードディスク、その他の記憶デバイスまたはそれらを適宜組み合わせて実現される。記憶部110には、演算部100が実行する制御プログラムPの他、工作機械1で使用する種々のデータ等が格納される。例えば、記憶部110は、工具データD1、画像データD2及び時間データD3を記憶する。
【0030】
工具データD1は、工作機械1で利用する複数の工具Tに関して予めデータ化されたものである。
図4Aに示す例では、工具データD1は、工具を識別する『工具ID』と、工具IDで識別される工具の『画像データ』と、当該工具に関する『工具形状』、『工具長』等の情報とを関連付けるデータである。
図4Bに示す画像データIm001は、
図4Aの工具データD1と関連付けられる画像データである。
図4Aに示す工具データD1で示す『画像番号』は、工具の画像データの識別情報であり、例えば、工具ID『A01』の画像データは、
図4Bに示す画像番号『Im001』で識別される画像データである。
図4Bで示す例では、工具の画像データの形式は、
図3を用いて上述したような工具Tの輪郭を把握可能な『投影画像』である。
【0031】
なお、
図4Aに示す工具データD1に関連付けられる画像データは、
図4Bに例示する1枚のみではなく、複数枚であってもよい。例えば、工具データD1は、1本の工具Tについて、異なる複数の方向から撮像した画像データを関連付けることができる。また、工具データD1と関連付けられる異なる方向から撮像した複数の画像データから、工具Tの立体的な形状を特定することができる。
【0032】
図4Bでは、図示を省略するが、工具データD1が含む工具Tの画像データは、複数のインサートの刃が取り付けられた状態が確認可能なものであってもよい。この場合も、複数の異なる方向から撮像された画像データにより、工具に取り付けられた各インサートの刃を確認可能なものであってよい。
【0033】
画像データD2は、撮像部3で撮像された工具Tや工具Tで加工されたワークのデータである。
【0034】
時間データD3は、工具Tの使用時間に関するデータである。具体的には、時間データD3は、工具T毎の累計時間に関するデータである。
【0035】
入力部120は、データや操作信号の入力に利用するキーボード、マウス及びタッチパネル等の入力手段である。表示部130は、データの出力に利用するディスプレイ等の出力手段である。
【0036】
通信部140は、外部の装置(図示せず)とのデータ通信を可能とするためのインタフェース回路(モジュール)である。例えば、通信部140は、工作機械1とデータ通信を実行することができる。
【0037】
受信部101は、工作機械1の撮像部3から送信された画像データD2を、通信部140を介して受信する。例えば、受信部101は、回転して異なる角度から撮像された工具Tの複数の投影画像の画像データD2を、その回転角度に関する情報とともに受信する。また、受信部101は、受信した複数の工具Tの画像データD2及び工具Tの回転角度に関する情報を、工具Tの識別情報と関連付けて記憶部110に記憶させる。
【0038】
受信部101は、撮像部3から、加工後のワークを撮像した画像データD2を受信することができる。また、受信部101は、ワークの画像データD2も、記憶部110に記憶させる。
【0039】
比較部102は、撮像部3で撮像された工具の画像データと予めデータ化された前記工具のデータとを比較する。具体的には、比較部102は、操作部103から比較をするための操作信号が入力され、比較するタイミングとなった場合、受信部101が受信した工具Tの画像データD2と、記憶部110に予め記憶される工具データD1で関連付けられる工具Tの画像データとを比較する。比較部102は、工具の画像データD2と、工具データで関連付けられる画像データとを比較して、工具の状態の検知することができる。したがって比較部102は、例えば、工具のメンテナンスの必要の有無の判断に利用する工具の形状の差異を求めることができる。具体的には、画像データD2における工具Tの摩耗の程度を特定するものであり、工具がすり減るような摩耗が大きい程、工具径は小さな値となる。この例に限られず、この差異を数値化したことにより、工具Tの劣化の程度や、工具Tへの切り屑の巻き付きの有無を特定することもできる。すなわち、この比較部102が、ツールプロファイラとしての機能を有する。
【0040】
なお、比較部102における比較方法としては、工具Tの画像データD2から『エッジ検出』を利用することができる。『エッジ』は、画像内に生じる明るい部分と暗い部分の境界である。したがって、このエッジを特定することは、工具Tの形状を特定することである。具体的には、画像データD2のエッジの位置と、工具データD1に関連付けられる画像データのエッジの位置・幅・領域等を比較することで、工具Tや工具Tのインサートの刃の劣化の程度を特定することができる。また、例えば、画像データD2から、破線部に示すような工具Tへの切り屑巻き付きを検出することができる。
【0041】
なお、上述したように、工具データD1が複数の方向から撮像された画像データを含む場合、比較部102は、受信部101で異なる方向から撮像された複数の画像データD2を利用して、比較してもよい。
【0042】
操作部103は、所定のタイミングで、比較するための操作信号を生成し、比較部102に出力する。すなわち、操作信号は、ツールプロファイラでの確認をするタイミングを決定するための信号であり、ワークの加工跡の状態を判断した場合に生成される信号である。この操作信号は、ワークの加工跡に応じて生成される。例えば、加工後のワークの撮像画像から、ワークに生じたツールマーク等のワークの加工跡が、許容の程度を越えるタイミングで、この操作信号を生成する。具体的には、撮像部3が撮像したワークの画像データD2から、加工後のワークが予め定められる許容の程度を越える場合、操作信号を生成し、比較部102に出力する。
【0043】
図5(a)は、加工による加工跡であるツールマークの生じていないワークの歯面Fの一部斜視図である。
図5(a)に示す歯面Fは、凹凸や起伏のない滑面であって、理想的な加工ができた例である。一方、
図5(b)は、ツールマークの生じたワークの歯面の一部斜視図である。
図5(b)に示す例にあるように、加工により、ワーク表面に本来の加工目的ではない微少な渦Gが生じる場合がある。この渦Gがワークとして問題ない場合もある。しかし、工具Tに劣化が生じた場合には、凹凸や起伏が大きくなり好ましくない程度の渦Gのツールマークが発生する場合もある。このような場合、工具Tの状態の確認を行う必要があるため、操作部103は、操作信号を生成する。すなわち、画像処理装置10では、ツールマーク等のワークの加工跡に応じて、ツールプロファイラで工具Tの状態を確認するタイミングを調整することができる。例えば、この操作信号を生成するタイミングを調整することで、画像処理装置10におけるツールプロファイラによる工具Tの状態を確認するタイミングの間隔を短くしたり長くしたりすることができる。
【0044】
また、操作部103は、ワークに生じた付加加工の加工跡が許容の程度を越える場合にも、操作信号を生成してもよい。付加加工で生じた加工跡である凹凸や起伏が大きい場合、工具Tの摩耗や破損が促進されるためである。
【0045】
なお、操作部103は、画像データD2を用いて判定したタイミングだけでなく、オペレータによって、入力部120や等を介して操作されたタイミングで操作信号を生成してもよい。これにより、例えば、オペレータが目視によってワークの加工跡を発見した場合、入力部を介して操作することで、操作部103は、操作信号を生成することができる。
【0046】
送信部104は、比較部102での比較結果を、通信部140を介して外部の装置に送信する。例えば、送信部104は、比較結果を、操作盤8に送信する。または、送信部104は、比較結果として得られた数値を、オペレータの端末に送信し、工具Tの状態をオペレータに通知してもよい。ここで、送信部104は、工具Tの状態が、現在のところメンテナンスは必要でないと判断できる比較結果である場合、その比較結果を送信しないようにしてもよい。すなわち、工具Tのメンテナンスが必要と判断される比較結果のみを、外部の装置に送信してもよい。
【0047】
指示部105は、所定のタイミングで場合、通信部140を介して工具Tの撮像を要求するリクエストを工作機械1に送信する。このタイミングは、工具Tの使用の累計時間により定められるものであってもよい。例えば、指示部105は、工具T毎に、加工に使用された累計時間を記憶部110に記憶させる。この使用の累計時間は、工具データD1に含めてもよいし、
図2に示すように、時間データD3として、工具データD1とは別に記憶部110に記憶させてもよい。そして、指示部105は、時間データD3として記憶される使用の累計時間が、予め閾値として定められる時間を超えた場合、工具Tの撮像を要求するリクエストを工作機械1に送信する。ここで閾値として利用する所定時間は、工具Tの劣化の進行度合い等に応じて工具Tの種別毎に予め定め、工具データD1に含めることができる。例えば、劣化しやすい工具Tについては、劣化しにくい工具Tよりも短い時間を所定時間として設定することが好ましい。これにより、撮像部3は、工具Tの劣化が生じた可能性の高いタイミングで画像データD2の撮像をすることができる。
【0048】
例えば、撮像部3で撮像された画像データD2は、
図6(a)に示すような表示画面で確認可能としてもよい。
図6(a)に示す一例の表示画面Wでは、表示部B1に、工具Tの画像データD2を含む。表示画面Wは、
図6(a)に示すように、画像処理装置10において自動認識された工具Tの刃先を示す自動認識刃先接触線L1を含む。また、表示画面Wは、自動認識刃先接触線L1を補正するための補正用刃先接触線L2を含む。例えば、表示画面Wが接触により操作入力が可能なタッチパネル機能を有するとき、
図6(a)に示すように、ユーザは、補正用刃先接触線L2に接触して実際の工具Tの刃先までスライドする。これにより、
図6(b)に示すように、補正用刃先接触線L2は、工具Tの実際の刃先に移動される。
図6(b)に示す表示画面Wでは、自動認識刃先接触線L1と、補正用刃先接触線L2とは、40.8μmのずれがあることが分かる。これにより、工具Tの刃先の位置のずれを補正することができる。そして、このように補正された工具Tの刃先の位置を利用して、工具Tの位置を補正し、加工による不具合を防ぐことができる。なお、表示部B2~B4には、表示部B1に表示される画像データとは別のタイミングで取得された工具Tの画像データを表示する。
【0049】
このように、実施形態に係る画像処理装置10では、工具Tで加工されたワークの状態に応じて操作部103によって操作信号が生成されたタイミングでツールプロファイラを機能させ、工具のメンテナンスの判断に利用することができる。例えば、画像処理装置10により得られた、ワークの状態を利用し、工具Tの交換が必要であるか否かを判断することができる。工具Tは頻繁に交換やメンテナンスするよりも、ワークの状態が問題なければできだけ長い間交換やメンテナンスすることなく加工に利用することができることが好ましい。一方、ワークの加工状態に問題がある場合には、できるだけ早急に工具Tを交換したり、メンテナンスすることが好ましい。したがって、画像処理装置10は、撮像部3から受信する画像データD2によってワークの加工状態が想定される程度よりも悪い場合、工具Tの状態の確認をすることができる。これにより、画像処理装置10では、工作機械での工具の状態を適切なタイミングで把握することができる。
【0050】
〈工作機械における処理〉
図7に示すフローチャートを用いて、工作機械1における画像データの撮像に関する処理について説明する。工作機械1において、例えば、ワークの加工が終了したタイミングで(S01でYES)、撮像部3が、工具Tにより加工されたワークを撮像する(S02)。
【0051】
次に、撮像部3が、ステップS02で撮像したワークの画像データを、画像処理装置10に送信する(S03)。
【0052】
また、画像処理装置10から工具Tの画像データを要求する工具撮像指示を受信すると(S04でYES)、撮像部3は、工具Tの画像データを撮像する(S05)。
【0053】
続いて、撮像部3は、ステップS05で撮像した工具Tの画像データを画像処理装置10に送信する(S06)。
【0054】
例えば、工作機械1では、新たなワークの加工を継続する限り(S07でYES)、ステップS01~S06の処理を繰り返す。
【0055】
なお、
図7に示す処理の順序は一例であり、ワークの画像データと工具の画像データとを画像処理装置10に送信可能であれば、
図7に示す例に限られない。例えば、ステップS01~S03がワークの画像の撮像に関する一連の処理で、ステップS04~S06が工具Tの画像データの撮像に関する一連の処理であるが、必要に応じて、工具Tの画像データの撮像の後にワークの画像の撮像がされてもよい。
【0056】
〈画像処理装置における処理〉
図8に示すフローチャートを用いて、画像処理装置10における工具Tの確認とワークの計測の処理について説明する。
【0057】
受信部101は、撮像部3が撮像したワークの画像データD2を受信し、記憶部110に記憶させる(S21)。
【0058】
指示部105は、所定のタイミングで(S22でYES)、撮像部3に工具Tの画像データD2の撮像を要求する撮像指示を送信する(S23)。この所定のタイミングは、例えば、工具Tの使用の累計時間が予め定められる時間を超えたタイミングである。
【0059】
受信部101は、撮像部3が撮像した工具Tの画像データD2を受信し、記憶部110に記憶させる(S24)。
【0060】
操作部103により、操作信号が生成されると(S25でYES)、比較部102は、ステップS24で受信した工具Tの画像データを、記憶部110に記憶される工具データD1で関連付けられる画像データと比較する(S26)。
【0061】
送信部104は、ステップS26による比較結果を、外部の装置に送信する(S27)。例えば、操作盤、比較部102は、比較結果を操作盤8や他の出力装置に出力してもよい。
【0062】
工作機械1においてワークの加工が継続する間(S28でYES)、画像処理装置10において、ステップS21~S27の処理を繰り返す。
【0063】
なお、
図8に示す処理の順序は一例であり、ワークの画像データと工具Tの画像データと受信し、ワークの状態から工具Tの状態を確認可能であれば、
図8に示す例に限られない。例えば、ステップS21がワークの画像の取得に関する処理で、ステップS22~S24が工具Tの状態の確認に関する一連の処理であるが、必要に応じて、工具Tの画像データの取得の後にワークの画像の取得がされてもよい。
【0064】
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、上記実施形態を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施形態にも適用可能である。
【0065】
本出願において開示する技術を用いることにより、工作機械での工具の状態を把握し、加工精度の向上を図ることが可能になる。
【0066】
本開示の全請求項に記載の画像処理装置、工作機械及び画像処理方法は、ハードウェア資源、例えば、プロセッサ、メモリ、及びプログラムとの協働などによって、実現される。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本開示の画像処理装置、工作機械及び画像処理方法は、例えば、工作機械の工具の状態把握に有用である。
【符号の説明】
【0068】
1 工作機械
2 保持部
3 撮像部
4 数値制御部
5 計測部
10 画像処理装置
101 受信部
102 比較部
103 操作部
104 送信部
105 指示部
【手続補正書】
【提出日】2020-11-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを加工する工具を保持する保持部と、前記保持部に保持された工具の投影画像を撮像するための撮像部と、を備える工作機械の前記撮像部から送信される画像データを処理する画像処理装置であって、
前記撮像部から送信された投影画像データを受信する受信部と、
前記撮像部で撮像された工具の投影画像データから投影画像のエッジを特定し、前記ワークの表面に特定の加工跡があると判断した後の入力信号に応じて、予めデータ化された前記工具のデータと比較する比較部と、
前記比較部での比較結果を送信する送信部と、
を備える画像処理装置。
【請求項2】
前記工具の使用時間を記憶する記憶部と、前記使用時間が所定時間を超えた場合に、前
記撮像部に前記工具を撮像する指示を行う指示部と、を備える、請求項1記載の画像処理
装置。
【請求項3】
前記撮像部で撮像された画像を表示する表示部を備え、
前記画像に表示される工具に対して刃先接触線を補正することができる、請求項1または2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
比較部は、異なる複数の方向から撮像された1つの工具の投影画像データからそれぞれ投影画像のエッジを特定し、工具の立体的な形状を特定する、請求項1から3のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像処理装置と、
ワークの加工を制御するための制御装置と、を備える工作機械。
【手続補正書】
【提出日】2021-03-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具を回転させながらワークを加工するための工具を保持する工具主軸と、前記工具主軸に保持された工具の投影画像を撮像するための撮像部と、を備える工作機械の前記撮像部から送信される画像データを処理する画像処理装置であって、
前記撮像部から送信された投影画像データを受信する受信部と、
前記撮像部で撮像された工具の投影画像データから投影画像のエッジを特定し、前記ワークの表面に前記撮像部で撮像された工具の投影画像データから投影画像のエッジを特定し、前記ワークの表面に工具の切削によりできるツールマークである加工跡があると判断した後の入力信号に応じて、予めデータ化された前記工具のデータと比較する比較部と、
前記比較部での比較結果を送信する送信部と、
前記工具の投影画像データの特定されたエッジから算出された自動認識刃先接触線と前記工具主軸に保持された工具の刃先の撮像画像とを表示部に表示制御し、補正用刃先接触線を表示部上で移動させる表示制御をし、前記自動認識刃先接触線と前記補正刃先接触線との距離の表示制御を行う表示制御部と、
を備える画像処理装置。
【請求項2】
前記工具の使用時間を記憶する記憶部と、前記使用時間が所定時間を超えた場合に、前記撮像部に前記工具を撮像する指示を行う指示部と、を備える、請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
比較部は、異なる複数の方向から撮像された1つの工具の投影画像データからそれぞれ投影画像のエッジを特定し、工具の立体的な形状を特定する、請求項1又は2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像処理装置と、
ワークの加工を制御するための制御装置と、を備える工作機械。