(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022024752
(43)【公開日】2022-02-09
(54)【発明の名称】列車制御システム
(51)【国際特許分類】
B60L 15/40 20060101AFI20220202BHJP
B60L 15/20 20060101ALI20220202BHJP
B61L 23/14 20060101ALI20220202BHJP
B60L 3/08 20060101ALI20220202BHJP
【FI】
B60L15/40 A
B60L15/20 A
B61L23/14 Z
B60L3/08 A
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020127525
(22)【出願日】2020-07-28
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000004651
【氏名又は名称】日本信号株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100087505
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 春之
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(72)【発明者】
【氏名】森田 隼史
(72)【発明者】
【氏名】内田 敏博
(72)【発明者】
【氏名】細川 公孝
【テーマコード(参考)】
5H125
5H161
【Fターム(参考)】
5H125AA05
5H125CA05
5H125CA06
5H125CB09
5H125CB10
5H125DD11
5H125EE52
5H125EE61
5H161AA01
5H161BB02
5H161BB06
5H161CC03
5H161CC04
5H161CC07
5H161CC13
5H161DD23
5H161EE05
5H161EE07
5H161FF01
5H161FF07
(57)【要約】
【課題】列車の自動運転を可能とし且つ従来に比べて導入コストを大幅に低減することのできる列車制御システムを提供する。
【解決手段】列車制御システム10は、列車Tの速度がブレーキパターンを超過すると非常ブレーキを作動させるATS装置14と、前記ブレーキパターンを超過しない速度で前記列車を走行させるための運転速度パターン及び前記列車を力行状態から惰行状態に切り替えるための切替パターンを発生させ、前記運転速度パターン及び前記切替パターンに基づき列車Tの走行を制御するATO装置15と、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
列車の速度がブレーキパターンを超過すると非常ブレーキを作動させる自動列車停止装置と、
前記ブレーキパターンを超過しない速度で前記列車を走行させるための運転速度パターン及び前記列車を力行状態から惰行状態に切り替えるための切替パターンを発生させ、前記運転速度パターン及び前記切替パターンに基づき前記列車の走行を制御する自動列車運転装置と、
を含む、列車制御システム。
【請求項2】
前記自動列車運転装置は、前記列車の速度が前記切替パターンを超過すると前記列車を力行状態から惰行状態に切り替え、その後、前記列車の速度が前記運転速度パターンを超過すると又は超過することが予測されると常用ブレーキを作動させる、請求項1に記載の列車制御システム。
【請求項3】
前記運転速度パターン上の各速度は、前記ブレーキパターン上の対応速度よりも低く設定され、前記切替パターン上の各速度は、前記運転速度パターン上の対応速度よりも低く設定されている、請求項1又は2に記載の列車制御システム。
【請求項4】
前記自動列車停止装置は、前記列車の走行路の最高速度に基づき、前記走行路における列車停止位置までの距離に基づき、又は、前記走行路における速度制限区間までの距離及び前記速度制限区間の制限速度に基づき前記ブレーキパターンを作成し、
前記自動列車運転装置は、前記最高速度に基づき、前記列車停止位置までの距離に基づき、前記速度制限区間までの距離及び前記速度制限区間の制限速度に基づき、又は、前記ブレーキパターンに基づき前記運転速度パターンを作成するとともに、作成された前記運転速度パターンに基づき前記切替パターンを作成する、
請求項1又は2に記載の列車制御システム。
【請求項5】
前記ブレーキパターンは、前記列車の走行路における最高速度が示された最高速度パターンを含み、
前記運転速度パターンは、前記最高速度よりも低い目標速度が示された目標速度パターンを含み、
前記自動列車運転装置は、所定時間後の前記列車の速度が前記目標速度パターンを超過しないように前記列車の駆動装置の出力を調整する、
請求項1~4のいずれか一つに記載の列車制御システム。
【請求項6】
前記ブレーキパターンは、前記列車の走行路における列車停止位置までに前記列車を停止させるための第1速度照査パターンを含み、
前記運転速度パターンは、パターン上の各速度が前記第1速度照査パターン上の対応速度よりも低く設定された停止用速度パターンを含み、
前記切替パターンは、パターン上の各速度が前記停止用速度パターン上の対応速度よりも低く設定された停止用切替パターンを含み、
前記自動列車運転装置は、前記停止用速度パターン及び前記停止用切替パターンの発生後に前記列車を加速させる場合、所定時間後の前記列車の速度が前記停止用切替パターンを超過しないように前記列車の駆動装置の出力を調整する、
請求項1~5のいずれか一つに記載の列車制御システム。
【請求項7】
前記ブレーキパターンは、前記列車の走行路における速度制限区間の開始位置までに前記列車の速度を制限速度以下に減速させるための第2速度照査パターンを含み、
前記運転速度パターンは、パターン上の各速度が前記第2速度照査パターン上の対応速度よりも低く設定された減速用速度パターンを含み、
前記切替パターンは、パターン上の各速度が前記減速用速度パターン上の対応速度よりも低く設定された減速用切替パターンを含み、
前記自動列車運転装置は、前記減速用速度パターン及び前記減速用切替パターンの発生後に前記列車を加速させる場合、所定時間後の前記列車の速度が前記減速用切替パターンを超過しないように前記列車の駆動装置の出力を調整する、
請求項1~6のいずれか一つに記載の列車制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、列車の自動運転を可能とする列車制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、列車の自動運転は、自動列車制御装置(以下「ATC装置」という)と自動列車運転装置(以下「ATO装置」という)との組み合わせによって実現されている(特許文献1等参照)。ATC装置は、列車の速度が先行列車との間隔や進路の条件などに応じて決定される制限速度を超えると自動的にブレーキを作動させるとともに、制限速度を下回ると自動的にブレーキを緩める装置であり、ATO装置は、あらかじめ設定されている運転パターンに従って列車の加速制御やブレーキ制御などを行う装置である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
列車の自動運転は、これまで主に人が容易に線路内に立ち入ることのできない路線を中心に行われてきたが、近年、それ以外の一般的な路線への導入も検討され始めている。しかし、上述のように、従来の列車の自動運転は、ATC装置とATO装置との組み合わせによって実現されているところ、既存の路線の中にはATC装置が設備されていない路線が多数存在する。そのため、列車の自動運転を導入するためには導入対象となる路線に前記ATC装置を設備する必要があり、多大な導入コストがかかるという課題がある。
【0005】
そこで、本発明は、列車の自動運転を可能とし且つ従来に比べて導入コストを大幅に低減することのできる列車制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面によると、列車制御システムが提供される。この列車制御システムは、列車の速度がブレーキパターンを超過すると非常ブレーキを作動させる自動列車停止装置と、前記ブレーキパターンを超過しない速度で前記列車を走行させるための運転速度パターン及び前記列車を力行状態から惰行状態に切り替えるための切替パターンを発生させ、前記運転速度パターン及び前記切替パターンに基づき前記列車の走行を制御する自動列車運転装置と、含む。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、列車の自動運転を可能とし且つ従来に比べて導入コストを大幅に低減することのできる列車制御システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る列車制御システムの概略構成を示す図である。
【
図2】ブレーキパターンとしての最高速度パターン及び第1速度照査パターンの一例を示す図である。
【
図3】ブレーキパターンとしての最高速度パターン及び第2速度照査パターンの一例を示す図である。
【
図4】運転速度パターンとしての目標速度パターン及び停止用速度パターンと、切替パターンとしての停止用切替パターンとの一例を示す図である。
【
図5】運転速度パターンとしての目標速度パターン及び減速用速度パターンと、切替パターンとしての減速用切替パターンの一例を示す図である。
【
図6】前記列車制御システムを構成するATO装置が行う駅間走行制御の一例を示すフローチャートである。
【
図7】前記列車制御システムを構成するATO装置が行う駅間走行制御の一例を示すフローチャートである。
【
図8】前記列車制御システムを構成するATO装置が行う駅間走行制御の一例を示すフローチャートである。
【
図9】前記列車制御システムを構成するATO装置が行う駅間走行制御の一例を示すフローチャートである。
【
図10】前記列車制御システムを構成するATO装置が行う駅間走行制御の一例を示すフローチャートである。
【
図11】速度制限情報が与えられた場合における列車の走行状態を模式的に示す図であり、(a)は列車が対応目標速度に近い速度で走行していた場合を示す図であり、(b)は列車が対応目標速度に比べて大幅に低い速度で走行していた場合を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
まず、本発明の概要を説明する。
【0010】
既述のように、従来の列車の自動運転は、自動列車制御装置(ATC装置)と自動列車運転装置(ATO装置)との組み合わせによって実現されている。また、既存の路線の中にはATC装置が設備されていない路線が多数存在する。このため、既存の路線に列車の自動運転を導入するためには導入対象となる路線にATC装置を設備しなければならず、多大な導入コストがかかる。
【0011】
他方、ATC装置が設備されていない既存の路線には、自動列車停止装置(以下「ATS装置」という)がすでに設備されている場合が多い。ATS装置は、ATC装置と同様に、列車保安装置の一つであり、列車の運転士が運転操作を誤ったときなどに列車の非常ブレーキ(常用最大ブレーキが非常ブレーキとして機能する場合には常用最大ブレーキを含む。以下同じ。)を作動させる装置である。
【0012】
したがって、ATC装置とATO装置との組み合わせではなく、ATS装置とATO装置との組み合わせによって列車の自動運転のためのシステムを構築できれば、既存の路線に列車の自動運転を導入する際のコスト(すなわち、導入コスト)を従来に比べて大幅に低減することが可能である。
【0013】
本発明は、このような事情を鑑みてなされたものである。すなわち、本発明は、ATS装置を利用しつつ列車の自動運転を行うように構成された列車制御システムを提供する。
【0014】
ここで、本発明による列車制御システムは、ATS装置を利用していればよく、ATS装置に加えてさらなる列車保安装置等を利用することを妨げるものではない。また、本発明における「列車」とは、あらかじめ定められた走行路を走行する各種の車両のことをいい、レール上を鉄輪で走行する車両(鉄道車両)はもちろん、専用軌道上をゴムタイヤ等で走行する車両をも含む。また、「走行路」には、複数の「列車」の停車駅(以下単に「駅」という)が設けられているものとする。
【0015】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態に係る列車制御システムについて説明する。
【0016】
図1は、実施形態に係る列車制御システム10の概略構成を示す図である。
図1に示されるように、実施形態に係る列車制御システム10において、走行路Rを走行する列車Tには、車上設備として、ATS車上子11、ATO車上子12、速度発電機13、ATS装置14及びATO装置15が設けられている。また、走行路Rには、地上設備としてATS地上子21及びATO地上子22などが設けられている。
【0017】
ATS車上子11は、列車Tが走行路Rの所定位置に設置されたATS地上子21の上方を通過する際に当該ATS地上子21が発信するATS情報を受信可能に構成されている。ATS車上子11によって受信されたATS情報は、ATS装置14に送られる。
【0018】
ここで、
図1にはATS地上子21が1つしか示されていないが、実際には、信号機と連動するATS地上子及び分岐や曲線などによる速度制限区間に対して設けられたATS地上子を含む複数のATS地上子21が走行路Rに設置されている。そして、複数のATS地上子21のそれぞれは、主に停止位置情報又は速度制限情報をATS情報として発信するように構成されている。前記停止位置情報は、列車Tが停止しなければならない列車停止位置までの距離を含む。また、前記速度制限情報は、走行路Rにおける速度制限が適用される速度制限区間(の開始位置)までの距離、速度制限区間の長さ(又は速度制限区間の終了位置までの距離)及び速度制限区間における制限速度を含む。
【0019】
例えば、ATS地上子21が信号機と連動する場合、ATS地上子21は、列車Tから見て対応する信号機の手前に設置され、対応する信号機が停止現示であるとき、自身の設置位置から対応する信号機の手前に設定された列車停止位置までの距離を含む停止位置情報をATS情報として発信する。なお、ATS地上子21がいわゆる消去用地上子である場合、ATS地上子21は、対応する信号機と停止位置情報をATS情報として発進するATS地上子21との間に設置され、対応する信号機が停止現示から進行現示に現示アップすると、そのことを示す現示アップ情報をATS情報として発信する。
【0020】
また、ATS地上子21が分岐や曲線などによる速度制限区間に対して設けられている場合、ATS地上子21は、列車Tから見て分岐や曲線などによる速度制限区間の手前に設置され、自身の設置位置から対応する速度制限区間の開始位置までの距離、対応する速度制限区間の終了位置までの距離及び対応する速度制限区間の制限速度を含む速度制限情報をATS情報として発信する。
【0021】
ATO車上子12は、列車Tが走行路Rの所定位置に設置されたATO地上子22の上方を通過する際に当該ATO地上子22が発信するATO情報を受信可能に構成されている。ATO車上子12によって受信されたATO情報は、ATO装置15に送られる。
【0022】
なお、ATS地上子21と同様、
図1にはATO地上子22が1つしか示されていないが、実際には、複数のATO地上子22が列車Tから見て各駅の手前に設置されている。そして、複数のATO地上子22のそれぞれは、主に定位置停止情報をATO情報として発信するように構成されている。前記定位置停止情報は、自身の設置位置から対応する駅における列車Tの目標停止位置(定位置)までの距離を含む。
【0023】
速度発電機13は、列車Tの車軸に取り付けられている。速度発電機13は、車軸の回転数に応じた信号を出力する。速度発電機13の出力信号は、ATS装置14及びATO装置15に与えられる。
【0024】
ATS装置14は、列車Tの走行中、速度発電機13の出力信号に基づき列車Tの速度(km/h)及び列車Tの走行距離(走行路Rにおける列車Tの位置)を検出するように構成されている。また、ATS装置14は、列車Tの速度が許容速度を超過すると列車Tの非常ブレーキを作動させるように構成されている。以下、本実施形態において、ATS装置14が行う各種の処理動作について具体的に説明する。
【0025】
ATS装置14は、走行路Rにおける各駅間の最高速度(各駅間最高速度)が示された最高速度パターンを発生させる。
【0026】
具体的には、本実施形態において、列車Tには、走行路Rに関する各種の情報が保存された車上データベースDBが設けられている。そして、ATS装置14は、車上データベースDBから走行路Rにおける各駅間最高速度を読み出し、読み出された各駅間最高速度に基づき前記最高速度パターンを作成する。
【0027】
但し、これに限られるものではない。ATS装置14は、あらかじめ作成されて車上データベースDBに保存されている前記最高速度パターンを前記データベースから読み出して保持するようにしてもよい。
【0028】
ATS装置14は、ATS車上子11からATS情報が送られてくると、換言すれば、ATS車上子11を介してATS地上子21からATS情報を取得すると、取得されたATS情報をATO装置15に与えるとともに、取得されたATS情報に応じた速度照査パターンを発生させる。
【0029】
具体的には、本実施形態において、ATS装置14は、取得されたATS情報が前記停止位置情報である場合、列車Tのブレーキ性能と、取得された停止位置情報に含まれた前記列車停止位置までの距離とに基づき、列車Tを前記列車停止位置までに停止させるための第1速度照査パターンを作成する。
【0030】
また、ATS装置14は、取得されたATS情報が前記速度制限情報である場合、列車Tのブレーキ性能と、取得された速度制限情報に含まれた前記速度制限区間の開始位置までの距離及び前記速度制限区間における制限速度とに基づき、列車Tの速度を前記速度制限区間の開始位置までに制限速度以下に減速させるための第2速度照査パターンを作成する。
【0031】
但し、これらに限られるものではない。ATS装置14は、車上データベースDBから勾配などの走行路Rの条件を読み出し、読み出された走行路Rの条件をさらに加味して前記第1速度照査パターン及び/又は前記第2速度照査パターンを作成してもよい。また、ATS装置14は、あらかじめ作成されて車上データベースDBに保存されている前記第1速度照査パターン及び/又は第2速度照査パターンを車上データベースDBから読み出して保持するようにしてもよい。
【0032】
なお、ATS装置14は、ATS車上子11を介してATS地上子21から取得されたATS情報が前記現示アップ情報である場合には前記第1速度照査パターンを消去し、また、列車Tが前記速度制限区間の終了位置まで移動した場合には前記第2速度照査パターンを消去する。
【0033】
図2は、前記最高速度パターン及び前記第1速度照査パターンの一例を示す図であり、
図3は、前記最高速度パターン及び前記第2速度照査パターンの一例を示す図である。
図2、
図3に示されるように、列車Tの走行距離(位置)をX軸(横軸)、列車Tの速度をY軸(縦軸)とするグラフにおいて、前記最高速度パターンは、各駅間最高速度を示す直線状又は段状のパターンであり、前記第1速度照査パターン及び前記第2速度照査パターンは、列車Tの走行距離(位置)に対して許容される列車Tの上限速度を示す曲線状のパターンである。
【0034】
ATS装置14は、列車Tが駅間を走行している間、列車Tの走行距離(位置)及び列車Tの速度を監視する。そして、ATS装置14は、列車Tの速度が前記最高速度パターンを超過すると、すなわち、列車Tの速度が対応する駅間最高速度(そのときの列車Tの位置に適用される駅間最高速度)を上回ると、列車Tの非常ブレーキを作動させる。
【0035】
また、ATS装置14は、前記第1速度照査パターンを発生させた場合、列車Tの速度が前記第1速度照査パターンを超過すると、すなわち、列車Tの速度が前記第1速度照査パターンにおける対応速度(同じ列車位置での前記第1速度照査パターン上の速度)を上回ると、列車Tの非常ブレーキを作動させる。
【0036】
さらに、ATS装置14は、前記第2速度照査パターンが発生させた場合、列車Tの速度が前記第2速度照査パターンを超過すると、すなわち、列車Tの速度が前記第2速度照査パターンにおける対応速度(同じ列車位置での前記第2速度照査パターン上の速度)を上回ると、列車Tの非常ブレーキを作動させる。
【0037】
したがって、本実施形態においては、前記最高速度パターン、前記第1速度照査パターン若しくは前記第2速度照査パターン又はこれらの任意の組み合せが本発明の「ブレーキパターン」に相当する。
【0038】
ATO装置15は、列車Tの走行中、速度発電機13の出力信号に基づき列車Tの速度及び列車Tの走行距離(位置)を検出するように構成されている。また、ATO装置15は、駅出発から次駅停車までの列車Tの一連の運転操作を列車Tの乗務員の操作に基づき又は自動的に行うように構成されている。換言すれば、ATO装置15は、駅出発、再発進、駅間走行制御及び定位置停止制御などを行うように構成されている。以下、本実施形態において、ATO装置15が行う各種の処理動作について具体的に説明する。
【0039】
(駅出発及び再発進)
ATO装置15は、列車Tが駅に停止しているときに列車Tの乗務員が所定の走行開始操作を行うと、列車Tの常用ブレーキを解除するとともに列車Tの駆動装置(例えば、電動機)を作動させて列車Tを駅から出発させる(駅出発)。また、ATO装置15は、列車Tが駅間で停止しているときに列車Tの乗務員が前記走行開始操作を行うと、列車Tの常用ブレーキを解除するとともに列車Tの駆動装置を作動させて列車Tを発進させる(再発進)。なお、列車Tが非常ブレーキによって停止した場合には、非常ブレーキが解除(緩解)された後に列車Tの乗務員が前記走行開始操作を行うことによって又は列車Tの乗務員が前記走行開始操作を行った後に非常ブレーキが解除(緩解)されることによって、つまり、非常ブレーキの解除(緩解)及び乗務員による前記走行開始操作を条件に、ATO装置15は、列車Tの駆動装置を作動させて列車Tを発進させることができる。
【0040】
(駅間走行制御)
ATO装置15は、ATS装置14が発生させる前記最高速度パターン、前記第1速度照査パターン及び前記第2速度照査パターンを超過しない速度で列車Tを走行させるための運転速度パターンを発生させる。
【0041】
非常ブレーキが作動すると列車Tの乗り心地が著しく低下する。また、非常ブレーキの解除には手間がかかるので再発進までに時間を要する。このため、不必要な又は不用意な非常ブレーキの作動はできる限り避けるのが好ましく、このような観点から、前記運転速度パターンが設けられている。以下、前記運転速度パターンについて説明する。
【0042】
ATO装置15は、走行路Rにおける各駅間の目標速度(各駅間目標速度)が示された目標速度パターンを前記運転速度パターンとして発生させる。
【0043】
具体的には、本実施形態において、ATO装置15は、車上データベースDBから各駅間最高速度を読み出し、読み出された各駅間最高速度よりも低い速度を各駅間目標速度として設定し、設定された各駅間目標速度に基づき前記目標速度パターンを作成する。
【0044】
但し、これに限られるものではない。ATO装置15は、あらかじめ作成されて車上データベースDBに保存されている前記目標速度パターンを車上データベースDBから読み出して保持するようにしてもよい。あるいは、ATS装置14が前記最高速度パターンをATO装置15に与えるように構成されている場合、ATO装置15は、ATS装置14から与えられた前記最高速度パターンに基づき前記目標速度パターンを作成するようにしてもよい。
【0045】
ATO装置15は、ATS装置14からATS情報が与えられると、与えられたATS情報に応じた速度パターンを前記運転速度パターンとして発生させる。
【0046】
具体的には、本実施形態において、ATO装置15は、与えられたATS情報が前記停止位置情報である場合、列車Tのブレーキ性能と、与えられた停止位置情報に含まれた前記列車停止位置までの距離とに基づき停止用速度パターンを作成する。この停止用速度パターンは、パターン上の各速度が前記第1速度照査パターン上の対応速度よりも低く設定された速度パターン、換言すれば、列車Tの速度を対応する駅間目標速度から減速させる速度パターンであって、列車Tを前記列車停止位置よりも手前の第1所定位置で停止させることが可能な速度パターンである。
【0047】
また、ATO装置15は、与えられたATS情報が前記速度制限情報である場合、列車Tのブレーキ性能と、与えられた速度制限情報に含まれた前記速度制限区間の開始位置までの距離及び前記速度制限区間における制限速度とに基づき減速用速度パターンを作成する。この減速用速度パターンは、パターン上の各速度が前記第2速度照査パターン上の対応速度よりも低く設定された速度パターン、換言すれば、列車Tの速度を対応する駅間目標速度から減速させる速度パターンであって、列車Tの速度を前記速度制限区間の開始位置よりも手前の第2所定位置までに制限速度以下に減速させることが可能な速度パターンである。
【0048】
但し、これらに限られるものではない。ATO装置15は、車上データベースDBから読み出された走行路Rの条件(勾配等)をさらに加味して前記停止用速度パターン及び/又は前記減速用速度パターンを作成してもよい。また、ATO装置15は、あらかじめ作成されて車上データベースDBに保存されている前記停止用速度パターン及び/又は前記減速用速度パターンを車上データベースDBから読み出して保持するようにしてもよい。さらに、ATS装置14が、ATS情報に加えて又は代えて、前記第1速度照査パターン及び前記第2速度照査パターンをATO装置15に与えるように構成されている場合、ATO装置15は、ATS装置14から与えられた第1速度照査パターンに基づき前記停止用速度パターンを作成し及びATS装置14から与えられた第2速度照査パターンに基づき前記減速用速度パターンを作成するようにしてもよい。
【0049】
図4は、
図2に対応する図であり、前記目標速度パターン及び前記停止用速度パターンの一例を示している。
図5は、
図3に対応する図であり、前記目標速度パターン及び前記減速用速度パターンの一例を示している。
図4、
図5に示されるように、前記目標速度パターンは、各駅間目標速度を示す直線状又は段状のパターンであり、前記停止用速度パターン及び前記減速用速度パターンは、列車Tの走行距離(位置)に対して設定された列車Tの目標速度を示す曲線状のパターンである。
【0050】
本実施形態において、前記目標速度パターン上の各速度は、前記最高速度パターン上の対応速度よりも所定速度Vs(例えば、10km/h)だけ低く設定され、前記停止用速度パターン上の各速度は、前記第1速度照査パターン上の対応速度よりも所定速度Vsだけ低く設定され、前記減速用速度パターン上の各速度は、前記第2速度照査パターン上の対応速度よりも所定速度Vsだけ低く設定されている。
【0051】
ATO装置15は、前記停止用速度パターン又は前記減速用速度パターンを発生させると、列車Tを力行状態から惰行状態に切り替えるための切替パターンを発生させる。この切替パターンは、主に列車Tが力行状態(加速状態)からいきなり減速状態に切り替わることで列車Tの乗り心地が低下することを防止するために設けられる。さらに言えば、前記切替パターンは、列車Tの前方に前記列車停止位置又は前記速度制限区間が存在する場合に、力行状態にある列車Tが惰行状態を経てから減速状態へと切り替わるようにするために設けられている。
【0052】
具体的には、本実施形態において、ATO装置15は、前記停止用速度パターンを発生させた場合、発生させた停止用速度パターンに基づく停止用切替パターンを前記切替パターンとして発生させる。この停止用切替パターン上の各速度は、前記停止用速度パターン上の対応速度よりも低く設定される。好ましくは、ATO装置15は、発生させた停止用速度パターン上の各速度を当該停止用速度パターンにおける列車Tの走行距離(位置)よりも列車Tから見て第1所定距離D1だけ手前の位置に対する列車Tの速度として設定することによって前記停止用切替パターンを作成する(
図4参照)。
【0053】
なお、第1所定距離D1は、列車Tに応じて任意に設定可能である。一例として、列車Tが力行をやめてから列車Tの加速度が0になるまでの時間を第1時間、常用ブレーキを作動させてから列車Tの減速度が発生するまでの時間を第2時間としたとき、ATO装置15は、列車Tが前記停止用速度パターン上の各速度で前記第1時間と前記第2時間との合計時間だけ走行した場合の列車Tの走行距離を第1所定距離D1として用いることができる。この場合、前記停止用切替パターンは、ATO装置15に与えられたATS情報(前記停止位置情報)を発信したATS地上子が実際の設置位置よりも列車Tから見て第1所定距離D1だけ手前の位置に設置されていた場合にATO装置15が発生させる停止用速度パターンであり得る。但し、これに限られるものではない。前記停止用切替パターン上の各速度が前記停止用速度パターン上の対応速度よりも低く設定されていればよく、その限りにおいて、前記停止用切替パターンは任意に作成され得る。
【0054】
また、ATO装置15は、前記減速用速度パターンを発生させた場合、発生させた減速用速度パターンに基づく減速用切替パターンを前記切替パターンとして発生させる。この減速用切替パターン上の各速度は、前記減速用速度パターン上の対応速度よりも低く設定される。好ましくは、ATO装置15は、発生させた減速用速度パターン上の各速度を当該減速用速度パターンにおける列車Tの走行距離(位置)よりも列車Tから見て第2所定距離D2だけ手前の位置に対する列車Tの速度として設定することによって前記減速用切替パターンを作成する(
図5参照)。
【0055】
なお、第1所定距離D1と同様に、第2所定距離D2は、列車Tに応じて任意に設定可能である。例えば、ATO装置15は、列車Tが前記減速用速度パターン上の各速度で前記第1時間と前記第2時間との合計時間だけ走行した場合の列車Tの走行距離を第2所定距離D2として用いることができる。この場合、前記減速用切替パターンは、ATO装置15に与えられたATS情報(前記速度制限情報)を発信したATS地上子が実際の設置位置よりも列車Tから見て第2所定距離D2だけ手前の位置に設置されていた場合にATO装置15が発生させる減速用速度パターンであり得る。但し、これに限られるものではない。前記減速用切替パターン上の各速度が前記減速用速度パターン上の対応速度よりも低く設定されていればよく、その限りにおいて、前記減速切替パターンは任意に作成され得る。
【0056】
ATO装置15は、ATS装置14から与えられたATS情報が前記現示アップ情報である場合には前記停止用速度パターン及び前記停止用切替パターンを消去し、また、列車Tが前記速度制限区間の終了位置まで移動した場合には前記減速用速度パターン及び前記減速用切替パターンを消去する。
【0057】
ATO装置15は、列車Tが駅を出発した後及び列車Tが再発進した後においては、前記運転速度パターン(前記目標速度パターン、前記停止用速度パターン、前記減速用速度パターン)及び前記切替パターン(前記停止用切替パターン、前記減速用切替パターン)に基づき列車Tの走行を制御する。かかるATO装置15による列車Tの走行制御(駅間走行制御)については後に詳述する。
【0058】
(定位置停止制御)
ATO装置15は、ATO車上子12からATO情報が送られてくると、換言すれば、駅を出発した列車Tが次駅に接近してATO装置15がATO車上子12を介してATO地上子22からATO情報を取得すると、列車Tの速度と、取得されたATO情報に含まれた目標停止位置(定位置)までの距離とに基づき、列車Tを目標停止位置(定位置)に停止させるため速度パターン(以下「定位置停止パターン」という)を発生させる。そして、ATO装置15は、列車Tの速度が前記定位置停止パターンに追随するように主に列車Tの常用ブレーキを制御して列車Tを目標停止位置(定位置)に停止させる。
【0059】
次に、ATO装置15が行う駅間走行制御、すなわち、前記運転速度パターン及び前記切替パターンに基づく列車Tの走行制御の一例を説明する。
【0060】
図6~
図10は、ATO装置15が行う駅間走行制御の一例を示すフローチャートである。このフローチャートは、列車Tが駅を出発すると又は駅間で停止した列車Tが再出発すると開始される。なお、ATO装置15は、事前に(例えば、列車Tが走行路R上に配置されたときに)前記運転速度パターンとして前記目標運転パターンを発生させている。
【0061】
図6において、ステップS1では、ATS情報として停止位置情報が与えられたか否かを判定する。停止位置情報が与えられていない場合にはステップS2に進む。一方、停止位置情報が与えられた場合にはステップS9に進む(
図7)。
【0062】
ステップS2では、ATS情報として速度制限情報が与えられたか否かを判定する。速度制限情報が与えられていない場合にはステップS3に進む。一方、速度制限情報が与えられた場合にはステップS23に進む(
図9)。
【0063】
ステップS3では、列車Tの速度及び列車Tの走行距離(位置)を検出する。
【0064】
ステップS4では、列車Tの速度が前記目標速度パターンを超過しているか否かを判定する。列車Tの速度が前記目標速度パターンを超過している場合、すなわち、列車Tの速度が前記目標速度パターンにおける対応目標速度を上回っていればステップS5に進む。一方、列車Tの速度が前記目標速度パターンを超過していない場合、すなわち、列車Tの速度が前記目標速度パターンにおける対応目標速度以下であればステップS6に進む。
【0065】
ステップS5では、常用ブレーキを作動させて列車Tを減速させる。換言すれば、所定の制動ノッチを選択して列車Tの減速度を発生させる。そして、常用ブレーキを作動させるとステップS7に進む。
【0066】
ステップS6では、列車Tの駆動装置の出力を調整する。そして、列車Tの駆動装置の出力を調整するとステップS7に進む。ここで、ステップS6における列車Tの駆動装置の出力の調整は、具体的には次のようにして行われる。
【0067】
本実施形態において、ATO装置15は、列車Tの駆動装置の出力を互いに異なる出力に設定する複数の力行ノッチのいずれかを選択することによって列車Tの駆動装置の出力を調整可能に構成されている。そして、ATO装置15は、列車Tの速度が前記目標速度パターンを超過していない場合、前記複数の力行ノッチのそれぞれが選択された場合における所定時間後の列車Tの速度及び走行距離(位置)を予測(算出)し、予測(算出)された前記所定時間後の列車Tの速度が前記目標速度パターンを超過せず、且つ、列車Tの加速度の変化が閾値以下となるような力行ノッチを選択する。ここで、特に制限されるものではないが、複数の力行ノッチが選択可能な場合、ATO装置15は、選択可能な複数の力行ノッチのうち列車Tの駆動装置の出力を最も高い出力に設定する力行ノッチを選択することができる。
【0068】
なお、前記所定時間は、列車Tの走行安定性などの面からノッチの切り替えが実質的に禁止されるノッチ切替禁止時間よりも長い時間に設定される。特に制限されるものではないが、例えば前記ノッチ切替禁止時間の1.5~2.5倍の時間、好ましくは前記ノッチ切替禁止時間の2倍の時間に設定される。また、前記閾値は、列車Tの乗り心地などの面から任意に設定可能であるが、例えば5km/h/s以下、好ましくは3km/h/s以下、さらに好ましくは2.5km/h/s以下に設定される。
【0069】
ステップS7では、ATO情報が取得されたか否かを判定する。ATO情報が取得された場合にはステップS8に進み、上述の定位置停止制御を行って、すなわち、列車Tを駅における目標停止位置(定位置)に停止させて本フローを終了する。一方、ATO情報が取得されていない場合にはステップS1に戻る。
【0070】
ステップS9(
図7)では、前記運転速度パターンとして停止用速度パターンを発生させ、ステップS10では、前記切替パターンとして停止用切替パターンを発生させる。上述のように、前記停止用速度パターンは、列車Tを前記列車停止位置よりも手前の第1所定位置で停止させることが可能な速度パターンである。また、前記停止用切替パターン上の各速度は、前記停止用速度パターン上の対応速度よりも低く設定されている。
【0071】
ステップS11では、列車Tの速度及び列車Tの走行距離(位置)を検出する。
【0072】
ステップS12では、列車Tが前記第1所定位置まで移動したか否かを判定する。列車Tが前記第1所定位置まで移動した場合には列車Tの速度が十分に低下している(後述するステップS15~S20の処理を参照)。そのため、列車Tが前記第1所定位置まで移動した場合にはステップS13に進み、ステップS9で発生させた停止用速度パターン及びステップS10で発生させた停止用切替パターンを消去する。そして、その後、ステップS14に進み、列車Tを停止させて本フローを終了する。但し、これに限られるものではない。列車Tを前記第1所定位置から前記列車停止位置まで移動させた後に列車Tを停止させてもよい。一方、列車Tが前記第1所定位置まで移動していない場合はステップS15に進む(
図8)。
【0073】
なお、ステップS14の処理で停止した列車Tは、列車Tの乗務員が前記走行開始操作を行うことで列車Tを発進させることができる。
【0074】
ステップS15(
図8)では、列車Tの速度が前記停止用切替パターンを超過しているか否かを判定する。列車Tの速度が前記停止用切替パターンを超過していない場合、すなわち、列車Tの速度が前記停止用切替パターンにおける対応速度以下であればステップS16に進む。一方、列車Tの速度が前記停止用切替パターンを超過している場合、すなわち、列車Tの速度が前記停止用切替パターンにおける対応速度を上回っていればステップS17に進む。
【0075】
ステップS16では、列車Tの駆動装置の出力を調整する。このステップS16の処理は、ステップS6の処理と基本的に同じである。すなわち、複数の力行ノッチのそれぞれが選択された場合における前記所定時間後の列車Tの速度及び走行距離(位置)を予測(算出)し、予測(算出)された前記所定時間後の列車Tの速度が前記停止用切替パターンを超過せず、且つ、列車Tの加速度の変化が前記閾値以下となるような力行ノッチを選択する。そして、列車Tの駆動装置の出力を調整するとステップS21に進む。
【0076】
ステップS17では、列車Tが惰行状態であるか否かを判定する。列車Tが惰行状態でない場合、すなわち、列車Tが力行状態であればステップS18に進む。一方、列車Tが惰行状態である場合にはステップS19に進む。
【0077】
ステップS18では、力行ノッチをOFFして列車Tを力行状態から惰行状態に切り替える。そして、列車Tを力行状態から惰行状態に切り替えるとステップS21に進む。
【0078】
ステップS19では、列車Tの速度が前記停止用速度パターンを超過しているか否かを判定する。列車Tの速度が前記停止用速度パターンを超過している場合、すなわち、列車Tの速度が前記停止用速度パターンにおける対応速度を上回っていればステップS20に進む。一方、列車Tの速度が前記停止用速度パターンを超過していない場合、すなわち、列車Tの速度が前記停止用速度パターンにおける対応速度以下であればステップS21に進む。
【0079】
ステップS20では、ステップS5と同様に、常用ブレーキを作動させて列車Tを減速させる。そして、常用ブレーキを作動させるとステップS21に進む。
【0080】
ステップS21では、ATS情報としての現示アップ情報が与えられたか否かを判定する。前記現示アップ情報が与えられた場合にはステップS22に進み、ステップS9で発生させた停止用速度パターン及びステップS10で発生させた停止用切替パターンを消去した後にステップS1に戻る(
図6)。一方、前記現示アップ情報が与えられていない場合にはステップS11(
図7)に戻る。
【0081】
ステップS23(
図9)では、前記運転速度パターンとして減速用速度パターンを発生させ、ステップS24では、前記切替パターンとして減速用切替パターンを発生させる。上述のように、前記減速用速度パターンは、列車Tの速度を速度制限区間の開始位置よりも手前の第2所定位置までに制限速度以下に減速させることが可能な速度パターンであり、前記減速用切替パターン上の各速度は、前記減速用速度パターン上の対応速度よりも低く設定されている。
【0082】
ステップS25では、列車Tの速度及び列車Tの走行距離(位置)を検出する。
【0083】
ステップS26では、列車Tが前記第2所定位置まで移動したか否かを判定する。列車Tが前記第2所定位置まで移動している場合にはステップS27に進み、列車Tが前記第2所定位置まで移動していない場合にはステップS29(
図10)に進む。
【0084】
ステップS27では、列車Tが前記速度制限区間の終了位置まで移動したか否かを判定する。列車Tが前記速度制限区間の終了位置まで移動している場合にはステップS28に進み、ステップS23で発生させた減速用速度パターン及びステップS24で発生させた減速用切替パターンを消去した後にステップS1に戻る(
図6)。一方、列車Tが前記速度制限区間の終了位置まで移動していない場合にはステップS25に戻る。
【0085】
ステップS29(
図10)では、列車Tの速度が前記減速用切替パターンを超過しているか否かを判定する。列車Tの速度が前記減速用切替パターンを超過していない場合、すなわち、列車Tの速度が前記減速用切替パターンにおける対応速度以下であればステップS30に進む。一方、列車Tの速度が前記減速用切替パターンを超過している場合、すなわち、列車Tの速度が前記減速用切替パターンにおける対応速度を上回っていればステップS31に進む。
【0086】
ステップS30では、列車Tの駆動装置の出力を調整する。このステップS30の処理は、ステップS6及びS16の処理と基本的に同じである。すなわち、複数の力行ノッチのそれぞれが選択された場合における前記所定時間後の列車Tの速度及び走行距離(位置)を予測(算出)し、予測(算出)された前記所定時間後の列車Tの速度が前記減速用切替パターンを超過せず、且つ、列車Tの加速度の変化が前記閾値以下となるような力行ノッチを選択する。そして、列車Tの駆動装置の出力を調整するとステップS25に戻る。
【0087】
ステップS31では、列車Tが惰行状態であるか否かを判定する。列車Tが惰行状態でない場合、すなわち、列車Tが力行状態であればステップS32に進む。一方、列車Tが惰行状態である場合にはステップS33に進む。
【0088】
ステップS32では、力行ノッチをOFFして列車Tを力行状態から惰行状態に切り替える。そして、列車Tを力行状態から惰行状態に切り替えるとステップS25に戻る。
【0089】
ステップS33では、列車Tの速度が前記減速用速度パターンを超過しているか否かを判定する。列車Tの速度が前記減速用速度パターンを超過している場合、すなわち、列車Tの速度が前記減速用速度パターンにおける対応速度を上回っていればステップS34に進む。一方、列車Tの速度が前記減速用速度パターンを超過していない場合、すなわち、列車Tの速度が前記減速用速度パターンにおける対応速度以下であればステップS25に戻る。
【0090】
ステップS34では、ステップS5及びS20と同様に、常用ブレーキを作動させて列車Tを減速させる。そして、常用ブレーキを作動させるとステップS25に戻る。
【0091】
図11は、
図6のステップS2で速度制限情報が与えられた場合の列車Tの走行状態の一例を模式的に示す図である。
【0092】
列車Tが前記対応目標速度に近い速度で走行していた場合には、ATO装置15が前記減速用切替パターンを発生させた時点で列車Tの速度が前記減速用切替パターンにおける対応速度に近い状態にある。そのため、
図11(a)に示されるように、列車Tは、力行状態(定速走行)から速やかに惰行状態に切り替わり、惰行状態を経た後に減速状態となって前記減速用速度パターンに追随するように走行する。
【0093】
一方、列車Tが駅を出発した直後や列車Tが再発進した直後の場合、すなわち、列車Tが前記対応目標速度に比べて大幅に低い速度で走行していた場合には、ATO装置15が前記減速用切替パターンを発生させた時点で列車Tの速度が前記減速用切替パターンにおける対応速度よりも大幅に低い状態にある。そのため、
図11(b)に示されるように、列車Tは速度制限区間に向かって加速し、その後、列車Tの速度が前記減速用切替パターンを超過すると列車Tは力行状態から惰行状態に切り替わる。ここで、本実施形態においては、列車Tの速度が前記減速用切替パターンを超過していない場合、前記所定時間後の列車Tの速度が前記減速用切替パターンを超過せず、且つ、列車Tの加速度の変化が前記閾値以下となるような力行ノッチが選択される(
図10のステップS30)。つまり、前記減速用速度パターン及び前記減速用切替パターンの発生後に列車Tを加速させる場合、ATO装置15は、前記所定時間後の列車Tの速度が前記減速用切替パターンを超過しないように列車Tの駆動装置の出力を調整する。このため、列車Tが急激に加速されることはなく、また、列車Tの速度が前記減速用切替パターンにおける対応速度を大幅に超えることもない。そして、列車Tの速度が前記減速用切替パターンを超過すると、列車Tは、力行状態から惰行状態に切り替わり、惰行状態を経た後に減速状態となって前記減速用速度パターンに追随するように走行する。
【0094】
なお、
図6のステップS1で停止位置情報が与えられた場合の列車Tの走行状態も基本的には上記と同様である。すなわち、列車Tが前記対応目標速度に近い速度で走行していた場合、列車Tは、力行状態(定速走行)から速やかに惰行状態に切り替わり、惰行状態を経た後に減速状態となって前記停止用速度パターンに追随するように走行する。一方、列車Tが前記対応目標速度に比べて大幅に低い速度で走行していた場合、前記停止用速度パターン及び前記停止用切替パターンの発生後に列車Tを加速させることになる。この場合、ATO装置15は、前記所定時間後の列車Tの速度が前記停止用切替パターンを超過しないように列車Tの駆動装置の出力を調整する(
図8のステップS16)。そして、列車Tの速度が前記停止用切替パターンを超過すると、列車Tは、力行状態から惰行状態に切り替わり、惰行状態を経た後に減速状態となって前記停止用速度パターンに追随するように走行する。
【0095】
以上説明したように、本実施形態に係る列車制御システムは、ATS装置14及びATO装置15を含む。ATS装置14は、ブレーキパターン(前記最高速度パターン、前記第1速度照査パターン、前記第2速度照査パターン)を発生させ、列車Tの速度が前記ブレーキパターンを超過すると列車Tの非常ブレーキをさせるように構成されている。ATO装置15は、前記ブレーキパターンを超過しない速度で列車Tを走行させるための運転速度パターン(前記目標速度パターン、停止用速度パターン、減速用速度パターン)と、列車Tを力行状態から惰行状態に切り替えるための切替パターン(停止用切替パターン、減速用切替パターン)を発生させ、これら運転速度パターン及び切替パターンに基づき列車Tの走行を制御するように構成されている。
【0096】
本実施形態に係る列車制御システムによれば、ATS装置14によって列車Tの速度超過を防止して列車Tの保安を確保した上で、ATO装置15によって駅出発から次駅停車までの列車Tの一連の運転操作が行われる。つまり、本実施形態に係る列車制御システムは、ATC装置を利用することなく、列車Tの自動運転が可能である。ここで、ATS装置14としては既存のATS装置を利用することができるので、既存の路線に対して列車の自動運転を導入する際にATC装置を列車保安装置として設備する必要がない。このため、従来に比べて列車の自動運転の導入コストを大幅に低減することができる。
【0097】
特に、本実施形態に係る列車制御システムにおいて、ATO装置15は、前記運転速度パターン及び前記切替パターンに基づき列車Tの走行を制御しており、列車Tの速度が前記ブレーキパターンを超過してしまうこと及び列車Tが力行状態からいきなり減速状態に切り替わることが防止される。このため、不必要な又は不用意な非常ブレーキの作動が回避されるとともに、列車Tの乗り心地が低下することも防止される。
【0098】
なお、上述の実施形態において、ATS地上子21は、前記停止位置情報、前記速度制限情報又は前記現示アップ情報をATS情報として発信している。しかし、これに限られるものではない。ATS地上子21が自身の識別情報を発信し、ATS装置14が取得されたATS地上子21の識別情報に基づき、対応するATS情報を車上データベースDBから読み出すように構成されてもよい。なお、ATO地上子22及びATO装置15についても同様である。
【0099】
また、上述の実施形態において、ATS装置14及びATO装置15は、速度発電機13の出力信号に基づき列車Tの速度及び走行距離(位置)を検出している。しかし、これに限られるものではない。ATS装置14及びATO装置15は、速度発電機13以外の速度検出器等などを利用して列車Tの速度及び走行距離(位置)を検出してもよい。
【0100】
また、上述の実施形態において、ATO装置15は、列車Tの速度が前記運転速度パターン(前記目標速度パターン、前記停止用速度パターン、前記減速用速度パターン)を超過すると常用ブレーキを作動させている(
図6のステップS4→S5、
図8のステップS19→S20、
図10のステップS33→S34)。しかし、これに限られるものではない。ATO装置15は、列車Tの速度が前記運転速度パターンを超過することが予測されると常用ブレーキを作動させるようにしてもよい。例えば、ATO装置15は、前記第2時間後の列車Tの速度及び走行距離(位置)を予測し、予測(算出)された前記第2時間後の列車Tの速度が前記運転速度パターンを超過する場合に常用ブレーキを作動させるように構成され得る。
【0101】
また、上述の実施形態において、信号機と連動するATS地上子21は、対応する信号機が停止現示であるときに前記停止位置情報をATS情報として発信している。しかし、これに限られるものではない。信号機と連動するATS地上子21は、対応する信号機が注意現示であるとき、前記停止位置情報に代えて、自身の設置位置から対応する信号機の手前の所定位置及び前記注意現示の制限速度を含む速度制限情報をATS情報として発信してもよい。この場合、ATS装置14は、列車Tの速度を前記所定位置までに制限速度以下に減速させるための第2速度照査パターンを発生させ、ATO装置15は、パターン上の各速度が前記第2速度照査パターン上の対応速度よりも低く設定された減速用速度パターンと、パターン上の各速度が前記減速用速度パターン上の対応速度よりも低く設定された減速用切替パターンとを発生させる。また、ATS装置14は、消去用地上子であるATS地上子21から対応する信号機が注意現示から進行現示に現示アップしたことを示す現示アップ情報を取得すると、発生させた第2速度照査パターンを消去し、ATO装置15は、ATS装置14から前記現示アップ情報が与えられると、発生させた減速用速度パターン及び減速用切替パターンを消去する。
【0102】
また、上述の実施形態において、列車TにはATS車上子11及びATO車上子12が設けられ、ATS車上子11がATS地上子21からのATS情報を受信し及びATO車上子12がATO地上子22からのATO情報を受信している。しかし、これに限られるものではない。列車Tに設けられた一つの車上子がATS地上子21からのATS情報とATO地上子22からのATO情報とを受信するように構成されてもよい。例えば、上述の実施形態において、ATO車上子12が省略され、ATS車上子11がATS地上子21からのATS情報とATO地上子22からのATO情報とを受信可能に構成される。そして、ATS車上子11によって受信されたATS情報はATS装置14に送られ、ATS車上子11によって受信されたATO情報はATS装置14を介して又は直接的にATO装置15に送られる。このようにすれば、上述の実施形態と同様の効果が得られることに加えて、上述の実施形態に比べて車上設備の簡素化を図ることもできる。
【0103】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に制限されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて変形及び変更が可能であることはもちろんである。
【符号の説明】
【0104】
10…列車制御システム、11…ATS車上子、12…ATO車上子、13…速度発電機、14…ATS装置(自動列車停止装置)、15…ATO装置(自動列車運転装置)、21…ATS地上子、22…ATO地上子、DB…車上データベース、R…走行路、T…列車
【手続補正書】
【提出日】2020-12-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
列車の速度がブレーキパターンを超過すると非常ブレーキを作動させる自動列車停止装置と、
前記ブレーキパターンを超過しない速度で前記列車を走行させるための運転速度パターンと、前記列車を力行状態から惰行状態に切り替えるための、走行距離に応じて対応速度が漸減する切替パターンとを発生させ、前記運転速度パターン及び前記切替パターンに基づき前記列車の走行を制御する自動列車運転装置と、
を含む、列車制御システム。
【請求項2】
前記自動列車運転装置は、前記列車の速度が前記切替パターンを超過すると前記列車を力行状態から惰行状態に切り替え、その後、前記列車の速度が前記運転速度パターンを超過すると又は超過することが予測されると常用ブレーキを作動させる、請求項1に記載の列車制御システム。
【請求項3】
前記運転速度パターン上の各速度は、前記ブレーキパターン上の対応速度よりも低く設定され、前記切替パターン上の各速度は、前記運転速度パターン上の対応速度よりも低く設定されている、請求項1又は2に記載の列車制御システム。
【請求項4】
前記切替パターンは、前記運転速度パターン上の各速度を前記運転速度パターンにおける走行距離よりも所定距離だけ少ない走行距離に対応する速度として設定することによって作成される、請求項1~3のいずれか一つの記載の列車制御システム。
【請求項5】
前記ブレーキパターンは、前記列車の走行路における最高速度が示された最高速度パターンを含み、
前記運転速度パターンは、前記最高速度よりも低い目標速度が示された目標速度パターンを含み、
前記自動列車運転装置は、所定時間後の前記列車の速度が前記目標速度パターンを超過しないように前記列車の駆動装置の出力を調整する、
請求項1~4のいずれか一つに記載の列車制御システム。
【請求項6】
前記ブレーキパターンは、前記列車の走行路における列車停止位置までに前記列車を停止させるための第1速度照査パターンを含み、
前記運転速度パターンは、パターン上の各速度が前記第1速度照査パターン上の対応速度よりも低く設定された停止用速度パターンを含み、
前記切替パターンは、パターン上の各速度が前記停止用速度パターン上の対応速度よりも低く設定された停止用切替パターンを含み、
前記自動列車運転装置は、前記停止用速度パターン及び前記停止用切替パターンの発生後に前記列車を加速させる場合、所定時間後の前記列車の速度が前記停止用切替パターンを超過しないように前記列車の駆動装置の出力を調整する、
請求項1~5のいずれか一つに記載の列車制御システム。
【請求項7】
前記ブレーキパターンは、前記列車の走行路における速度制限区間の開始位置までに前記列車の速度を制限速度以下に減速させるための第2速度照査パターンを含み、
前記運転速度パターンは、パターン上の各速度が前記第2速度照査パターン上の対応速度よりも低く設定された減速用速度パターンを含み、
前記切替パターンは、パターン上の各速度が前記減速用速度パターン上の対応速度よりも低く設定された減速用切替パターンを含み、
前記自動列車運転装置は、前記減速用速度パターン及び前記減速用切替パターンの発生後に前記列車を加速させる場合、所定時間後の前記列車の速度が前記減速用切替パターンを超過しないように前記列車の駆動装置の出力を調整する、
請求項1~6のいずれか一つに記載の列車制御システム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
本発明の一側面によると、列車制御システムが提供される。この列車制御システムは、列車の速度がブレーキパターンを超過すると非常ブレーキを作動させる自動列車停止装置と、前記ブレーキパターンを超過しない速度で前記列車を走行させるための運転速度パターンと、前記列車を力行状態から惰行状態に切り替えるための、走行距離に応じて対応速度が漸減する切替パターンとを発生させ、前記運転速度パターン及び前記切替パターンに基づき前記列車の走行を制御する自動列車運転装置と、含む。
【手続補正書】
【提出日】2021-04-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
列車の速度がブレーキパターンを超過すると非常ブレーキを作動させる自動列車停止装置と、
前記ブレーキパターンを超過しない速度で前記列車を走行させるための運転速度パターンと、前記列車を力行状態から惰行状態に切り替えるための、走行距離に応じて対応速度が漸減する切替パターンとを発生させ、前記列車の速度が前記切替パターン上の対応速度より低い場合に前記列車を加速させ、前記列車の速度が前記切替パターンを超過すると前記列車を力行状態から惰行状態に切り替え、その後、前記列車の速度が前記運転速度パターンを超過すると又は超過することが予測されると常用ブレーキを作動させる自動列車運転装置と、
を含む、列車制御システム。
【請求項2】
前記運転速度パターン上の各速度は、前記ブレーキパターン上の対応速度よりも低く設定され、前記切替パターン上の各速度は、前記運転速度パターン上の対応速度よりも低く設定されている、請求項1に記載の列車制御システム。
【請求項3】
前記切替パターンは、前記運転速度パターン上の各速度を前記運転速度パターンにおける走行距離よりも所定距離だけ少ない走行距離に対応する速度として設定することによって作成される、請求項1又は2に記載の列車制御システム。
【請求項4】
前記ブレーキパターンは、前記列車の走行路における最高速度が示された最高速度パターンを含み、
前記運転速度パターンは、前記最高速度よりも低い目標速度が示された目標速度パターンを含み、
前記自動列車運転装置は、所定時間後の前記列車の速度が前記目標速度パターンを超過しないように前記列車の駆動装置の出力を調整する、
請求項1~3のいずれか一つに記載の列車制御システム。
【請求項5】
前記ブレーキパターンは、前記列車の走行路における列車停止位置までに前記列車を停止させるための第1速度照査パターンを含み、
前記運転速度パターンは、パターン上の各速度が前記第1速度照査パターン上の対応速度よりも低く設定された停止用速度パターンを含み、
前記切替パターンは、パターン上の各速度が前記停止用速度パターン上の対応速度よりも低く設定された停止用切替パターンを含み、
前記自動列車運転装置は、前記停止用速度パターン及び前記停止用切替パターンの発生後に前記列車を加速させる場合、所定時間後の前記列車の速度が前記停止用切替パターンを超過しないように前記列車の駆動装置の出力を調整する、
請求項1~4のいずれか一つに記載の列車制御システム。
【請求項6】
前記ブレーキパターンは、前記列車の走行路における速度制限区間の開始位置までに前記列車の速度を制限速度以下に減速させるための第2速度照査パターンを含み、
前記運転速度パターンは、パターン上の各速度が前記第2速度照査パターン上の対応速度よりも低く設定された減速用速度パターンを含み、
前記切替パターンは、パターン上の各速度が前記減速用速度パターン上の対応速度よりも低く設定された減速用切替パターンを含み、
前記自動列車運転装置は、前記減速用速度パターン及び前記減速用切替パターンの発生後に前記列車を加速させる場合、所定時間後の前記列車の速度が前記減速用切替パターンを超過しないように前記列車の駆動装置の出力を調整する、
請求項1~5のいずれか一つに記載の列車制御システム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
本発明の一側面によると、列車制御システムが提供される。この列車制御システムは、列車の速度がブレーキパターンを超過すると非常ブレーキを作動させる自動列車停止装置と、前記ブレーキパターンを超過しない速度で前記列車を走行させるための運転速度パターンと、前記列車を力行状態から惰行状態に切り替えるための、走行距離に応じて対応速度が漸減する切替パターンとを発生させ、前記列車の速度が前記切替パターン上の対応速度より低い場合に前記列車を加速させ、前記列車の速度が前記切替パターンを超過すると前記列車を力行状態から惰行状態に切り替え、その後、前記列車の速度が前記運転速度パターンを超過すると又は超過することが予測されると常用ブレーキを作動させる自動列車運転装置と、を含む。