(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022024771
(43)【公開日】2022-02-09
(54)【発明の名称】森林計測システム、コンピュータプログラムおよび幹直径推定モデルの生成方法
(51)【国際特許分類】
G01B 11/08 20060101AFI20220202BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20220202BHJP
G01C 15/00 20060101ALI20220202BHJP
【FI】
G01B11/08 Z
G06T7/00 350B
G01C15/00 104Z
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020127550
(22)【出願日】2020-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101683
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100139930
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 亮司
(74)【代理人】
【識別番号】100180529
【弁理士】
【氏名又は名称】梶谷 美道
(72)【発明者】
【氏名】加藤 薫
(72)【発明者】
【氏名】原田 丈也
(72)【発明者】
【氏名】矢嶋 準
(72)【発明者】
【氏名】ザン ペイイー
【テーマコード(参考)】
2F065
5L096
【Fターム(参考)】
2F065AA04
2F065AA06
2F065AA24
2F065AA26
2F065AA53
2F065AA59
2F065BB15
2F065CC16
2F065DD02
2F065DD03
2F065FF11
2F065GG04
2F065HH04
2F065JJ01
2F065LL62
2F065MM06
2F065MM16
2F065PP22
2F065QQ03
2F065QQ17
2F065QQ21
2F065QQ28
2F065QQ29
2F065QQ41
2F065UU05
5L096AA09
5L096EA39
5L096FA02
5L096FA59
5L096FA64
5L096KA04
5L096KA15
(57)【要約】
【課題】森林内の樹木の樹冠および幹を、より簡便に精度良く計測し得る技術を提供する。
【解決手段】森林計測システム(100)は、森林計測により得られた3次元点群データを取得するデータ取得部(10)と、3次元点群データに含まれる樹冠点群、幹点群および地表面点群に基づいて樹高および所定高さにおける幹の直径を算出する算出部(30)と、各樹木について算出された樹高および所定高さにおける幹の直径をデータセットとして記憶する記憶部(40)と、記憶部に記憶された複数のデータセットを教師データとして用い、入力を少なくとも樹高、出力を所定高さにおける幹の直径とする推定モデルを機械学習により生成するモデル生成部(50)と、入力された少なくとも樹高から前記推定モデルを用いて所定高さにおける幹の直径を推定する幹直径推定部(60)とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
森林計測により得られた3次元点群データを取得するデータ取得部と、
前記3次元点群データに含まれる樹冠点群、幹点群および地表面点群に基づいて樹高および所定高さにおける幹の直径を算出する算出部と、
各樹木について算出された樹高および所定高さにおける幹の直径をデータセットとして記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された複数のデータセットを教師データとして用い、入力を少なくとも樹高、出力を所定高さにおける幹の直径とする推定モデルを機械学習により生成するモデル生成部と、
入力された少なくとも樹高から前記推定モデルを用いて所定高さにおける幹の直径を推定する幹直径推定部と、
を備える森林計測システム。
【請求項2】
前記3次元点群データに含まれる点群を樹木ごとにセグメント化する立木抽出部をさらに備える、請求項1に記載の森林計測システム。
【請求項3】
算出された樹高と、算出または推定された所定高さにおける幹の直径とに基づいて材積を算出する材積算出部をさらに備える請求項1または2に記載の森林計測システム。
【請求項4】
前記モデル生成部は、前記推定モデルを生成する際、前記複数のデータセットに対し、所定高さにおける幹の直径の算出に用いられた幹点群の品質に応じた重み付けを行う、請求項1から3のいずれかに記載の森林計測システム。
【請求項5】
前記モデル生成部は、前記複数のデータセットに対する重み付けを、幹点群の密度の高さに応じて行う、請求項4に記載の森林計測システム。
【請求項6】
前記3次元点群データは、ライダー(LiDAR)センサを搭載した無人航空機を飛行させて行う森林計測により得られた3次元点群データである、請求項1から5のいずれかに記載の森林計測システム。
【請求項7】
森林計測により得られた3次元点群データを取得するデータ取得ステップと、
前記3次元点群データに含まれる樹冠点群、幹点群および地表面点群に基づいて樹高および所定高さにおける幹の直径を算出する算出ステップと、
各樹木について算出された樹高および所定高さにおける幹の直径をデータセットとして記憶装置に記憶させる記憶ステップと、
前記記憶装置に記憶された複数のデータセットを教師データとして用い、入力を少なくとも樹高、出力を所定高さにおける幹の直径とする推定モデルを機械学習により生成するモデル生成ステップと、
入力された少なくとも樹高から前記推定モデルを用いて所定高さにおける幹の直径を推定する幹直径推定ステップと、
をコンピュータに実行させるコンピュータプログラム。
【請求項8】
ライダー(LiDAR)センサを搭載した無人航空機を飛行させて行う森林計測により得られた3次元点群データを取得するデータ取得ステップと、
前記3次元点群データに含まれる樹冠点群、幹点群および地表面点群に基づいて樹高および所定高さにおける幹の直径を算出する算出ステップと、
各樹木について算出された樹高および所定高さにおける幹の直径をデータセットとして記憶装置に記憶させる記憶ステップと、
前記記憶装置に記憶された複数のデータセットを教師データとして用い、入力を少なくとも樹高、出力を所定高さにおける幹の直径とする推定モデルを機械学習により生成するモデル生成ステップと、
を包含する幹直径推定モデルの生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、森林計測システム、コンピュータプログラムおよび幹直径推定モデルの生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
森林計測を行うための方法として、種々の方法が知られている。例えば特許文献1は、上空からカメラで森林を撮影し、得られた画像から画像処理によって樹冠円を抽出する方法を開示する。特許文献2は、上空から波長の異なるレーダ波をそれぞれ森林に送信して、樹木の最上部からの反射波および地面からの反射波から算出されるそれぞれの高さの差分から樹木の高さを求める方法を開示する。特許文献3は、航空機にレーザ測距装置を搭載し、レーザ測距装置を用いて、樹木等を含めた地上の三次元データを取得する方法を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-66050号公報
【特許文献2】特開平9-184880号公報
【特許文献3】特開2016-70708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上空からレーザ測距装置を用いて森林計測を行うと、森林上部表面(樹冠上面)のデータである点群データは得られる。しかしながら、樹木の葉等によってレーザ光が遮られるため、幹のデータを取得することは困難である。
【0005】
特許文献3は、人間が森林内にレーザ測距装置等の装置を持ち込み、3次元の点群データをさらに取得し、上空からの計測によって得られた点群データと、地上での計測によって得られた点群データとを融合させることに言及する。しかしながら、2種類の点群データを取得することは大きな手間がかかる。
【0006】
森林内の樹木の樹冠および幹を、より簡便に精度良く計測することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書は、以下の項目に記載の森林計測システム、コンピュータプログラムおよび幹直径推定モデルの生成方法を開示している。
【0008】
[項目1]
森林計測により得られた3次元点群データを取得するデータ取得部と、
前記3次元点群データに含まれる樹冠点群、幹点群および地表面点群に基づいて樹高および所定高さにおける幹の直径を算出する算出部と、
各樹木について算出された樹高および所定高さにおける幹の直径をデータセットとして記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された複数のデータセットを教師データとして用い、入力を少なくとも樹高、出力を所定高さにおける幹の直径とする推定モデルを機械学習により生成するモデル生成部と、
入力された少なくとも樹高から前記推定モデルを用いて所定高さにおける幹の直径を推定する幹直径推定部と、
を備える森林計測システム。
【0009】
本発明の実施形態による森林計測システムは、樹高および所定高さにおける幹の直径のデータセットを教師データとして用い、入力を少なくとも樹高、出力を所定高さにおける幹の直径とする推定モデルを機械学習により生成するモデル生成部と、入力された少なくとも樹高から推定モデルを用いて所定高さにおける幹の直径を推定する幹直径推定部とを備える。従って、樹高を算出できるが幹の直径を算出できない樹木については、推定モデルを用いて幹の直径を推定することができる。そのため、幹点群の品質が低い(例えば幹点群の密度が低い)樹木についても精度良く幹の直径を得ることができる。
【0010】
[項目2]
前記3次元点群データに含まれる点群を樹木ごとにセグメント化する立木抽出部をさらに備える、項目1に記載の森林計測システム。
【0011】
森林計測システムは、3次元点群データに含まれる点群を樹木ごとにセグメント化する立木抽出部をさらに備えてもよい。算出部による樹高および幹の直径の算出の前段階として、立木抽出部によるセグメント化を行うことにより、算出部による算出をより好適に行うことができる。
【0012】
[項目3]
算出された樹高と、算出または推定された所定高さにおける幹の直径とに基づいて材積を算出する材積算出部をさらに備える項目1または2に記載の森林計測システム。
【0013】
森林計測システムが、算出された樹高と、算出または推定された所定高さにおける幹の直径とに基づいて材積を算出する材積算出部をさらに備えていると、樹木の材積を算出することが可能となる。本発明の実施形態による森林計測システムは、幹点群の品質が低い樹木についても精度良く幹の直径を得ることができるので、幹点群の品質が低い樹木についての材積も精度良く得ることができる。
【0014】
[項目4]
前記モデル生成部は、前記推定モデルを生成する際、前記複数のデータセットに対し、所定高さにおける幹の直径の算出に用いられた幹点群の品質に応じた重み付けを行う、項目1から3のいずれかに記載の森林計測システム。
【0015】
モデル生成部が、推定モデルを生成する際、複数のデータセットに対し、幹の直径の算出に用いられた幹点群の品質に応じた重み付けを行うことにより、幹の直径の推定精度をいっそう高くすることができる。
【0016】
[項目5]
前記モデル生成部は、前記複数のデータセットに対する重み付けを、幹点群の密度の高さに応じて行う、項目4に記載の森林計測システム。
【0017】
複数のデータセットに対する重み付けは、例えば、幹点群の密度の高さに応じて行うことができる。幹点群の密度が高いほど重みを大きくする(つまり幹点群の密度が低いほど重みを小さくする)ことにより、幹の直径の推定精度をいっそう高くすることができる。
【0018】
[項目6]
前記3次元点群データは、ライダー(LiDAR)センサを搭載した無人航空機を飛行させて行う森林計測により得られた3次元点群データである、項目1から5のいずれかに記載の森林計測システム。
【0019】
データ取得部によって取得される3次元点群データは、例えば、ライダー(LiDAR)センサを搭載した無人航空機を飛行させて行う森林計測により得られた3次元点群データである。ライダーセンサを搭載した無人航空機を飛行させて行う森林計測によれば、樹冠点群だけでなく幹点群を含む3次元点群データを好適に得ることができる。
【0020】
[項目7]
森林計測により得られた3次元点群データを取得するデータ取得ステップと、
前記3次元点群データに含まれる樹冠点群、幹点群および地表面点群に基づいて樹高および所定高さにおける幹の直径を算出する算出ステップと、
各樹木について算出された樹高および所定高さにおける幹の直径をデータセットとして記憶装置に記憶させる記憶ステップと、
前記記憶装置に記憶された複数のデータセットを教師データとして用い、入力を少なくとも樹高、出力を所定高さにおける幹の直径とする推定モデルを機械学習により生成するモデル生成ステップと、
入力された少なくとも樹高から前記推定モデルを用いて所定高さにおける幹の直径を推定する幹直径推定ステップと、
をコンピュータに実行させるコンピュータプログラム。
【0021】
項目7に記載のコンピュータプログラムは、上述のコンピュータプログラムを記憶する、コンピュータ読み取り可能な非一時的な記憶媒体として提供されてもよい。
【0022】
[項目8]
ライダー(LiDAR)センサを搭載した無人航空機を飛行させて行う森林計測により得られた3次元点群データを取得するデータ取得ステップと、
前記3次元点群データに含まれる樹冠点群、幹点群および地表面点群に基づいて樹高および所定高さにおける幹の直径を算出する算出ステップと、
各樹木について算出された樹高および所定高さにおける幹の直径をデータセットとして記憶装置に記憶させる記憶ステップと、
前記記憶装置に記憶された複数のデータセットを教師データとして用い、入力を少なくとも樹高、出力を所定高さにおける幹の直径とする推定モデルを機械学習により生成するモデル生成ステップと、
を包含する幹直径推定モデルの生成方法。
【発明の効果】
【0023】
本発明の実施形態によれば、幹点群の品質が低い樹木についても精度良く幹の直径を得ることができる森林計測システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の実施形態による森林計測システム100を機能ブロック単位で示す機能ブロック図である。
【
図2】森林計測システム100のハードウェア構成例を示すブロック図である。
【
図3】森林計測システム100による処理手順の例を示すフローチャートである。
【
図4】森林計測システム100のハードウェア構成の他の例を示すブロック図である。
【
図5】森林計測システム100を機能ブロック単位で示す機能ブロック図である。
【
図6A】幹点群の密度が比較的高い点群の例を示す図である。
【
図6B】幹点群の密度が平均的な点群の例を示す図である。
【
図6C】幹点群の密度が比較的低い点群の例を示す図である。
【
図7】ライダーセンサ220を搭載した無人ヘリコプター200の外観側面図である。
【
図8】飛行制御ボックス215のハードウェア構成例を示すブロック図である。
【
図9】ライダーセンサ220を利用して森林計測を行う無人ヘリコプター200を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本願出願人は、ライダー(LiDAR)センサを搭載した無人航空機を比較的低い高度で飛行させて森林計測を行うことにより、樹冠点群および地表面点群だけでなく幹点群も含む3次元点群データが得られることを見出した。3次元点群データに含まれる樹冠点群、幹点群および地表面点群から、例えば、各樹木についての樹高および所定の高さにおける幹の直径を算出することができると考えられる。ただし、すべての樹木について品質の高い幹点群が得られるとは限らないので、幹点群の品質の低い(例えば幹点群の密度が低い)樹木については、幹の直径の算出ができない(または困難である)おそれがある。本願発明の実施形態による森林計測システムによれば、後述するように、幹点群の品質が低い樹木についても精度良く幹の直径を得ることができる。
【0026】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。ただし、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明および実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。また、以下の実施形態は例示であり、本発明は以下の実施形態に限定されない。
【0027】
図1を参照しながら、本発明の実施形態による森林計測システム100を説明する。
図1は、森林計測システム100を機能ブロック単位で示す機能ブロック図である。森林計測システム100は、
図1に示すように、データ取得部10、立木抽出部20、算出部30、記憶部40、モデル生成部50および幹直径推定部60を備える。
【0028】
データ取得部10は、森林計測により得られた3次元点群データを取得する。3次元点群データは、樹木の樹冠に対応する点群(以下「樹冠点群」と呼ぶ)と、樹木の幹に対応する点群(以下「幹点群」と呼ぶ)と、地表面に対応する点群(以下「地表面点群」と呼ぶ)とを含む。3次元点群データは、例えば、ライダー(LiDAR)センサを搭載した無人航空機を飛行させて行う森林計測により得られた3次元点群データである。
【0029】
立木抽出部20は、3次元点群データに含まれる点群を樹木ごとにセグメント化する。セグメント化の手法としては、例えばCHM Segmentationを用いることができる。
【0030】
算出部30は、3次元点群データに含まれる樹冠点群、幹点群および地表面点群に基づいて樹高および所定高さにおける幹の直径を算出する。ここで、所定高さにおける幹の直径(以下では単に「幹の直径」とも呼ぶ)は、例えば、胸高直径(成人の胸の高さにおける幹の直径)であるが、これに限定されるものではない。樹高の算出は、例えば、CHM(Canopy Height Model:樹冠高モデル)の生成により行うことができる。CHMは、3次元点群データからDSM(Digital Surface Model:数値表層モデル)およびDTM(Digital Terrain Model:数値地形モデル)を生成し、DSMからDTMを減算することにより得られる。幹の直径の算出は、例えば、円フィッティングにより行うことができる。円フィッティングとは、最小二乗法により近似的に円を求めたり、内接円を求めたりすることである。
【0031】
記憶部40は、各樹木について算出された樹高および幹の直径をデータセットとして記憶する。記憶部40は、樹高および幹の直径のデータセットの他にも、森林計測システム100による処理に必要な情報を記憶し得る。
【0032】
モデル生成部50は、記憶部40に記憶された複数のデータセットを教師データとして用い、「幹直径推定モデル」を機械学習により生成する。「幹直径推定モデル」は、入力を少なくとも樹高、出力を所定高さにおける幹の直径とする推定モデルである。幹直径推定モデルを生成する手法としては、公知の教師あり学習の手法(例えば線形回帰)を用いることができる。幹直径推定モデルには、樹高に加え、樹冠面積、樹冠体積、樹冠長率(樹冠部高さ/樹高)、地形(地面の傾斜や、傾斜の方角、山頂か中腹か谷かなど)、樹種、相対幹距比(樹木の密集度合い)などが入力されてもよい。
【0033】
幹直径推定部60は、入力された少なくとも樹高から幹直径推定モデルを用いて所定高さにおける幹の直径を推定する。より具体的には、幹直径推定部60は、樹高を算出できるが幹の直径を実用に足る精度で算出できない樹木について、幹の直径を推定する。
【0034】
森林計測システム100は、例えば、パーソナルコンピュータであり得る。あるいは、森林計測システム100は、森林計測を支援する支援ツールとして機能する専用の装置であり得る。
【0035】
図2は、森林計測システム100のハードウェア構成例を示すブロック図である。森林計測システム100は、入力装置110、表示装置120、通信I/F130、記憶装置140、プロセッサ150、ROM(Read Only Memory)160およびRAM(Random Access Memory)170を備える。これらの構成要素は、バス180を介して相互に接続される。
【0036】
入力装置110は、ユーザからの指示をデータに変換してコンピュータに入力するための装置である。入力装置110は、例えば、キーボード、マウス、タッチパネルまたはマイクである。
【0037】
表示装置120は、例えば液晶ディスプレイまたは有機ELディスプレイである。表示装置120は、森林計測の結果等を表示する。
【0038】
通信I/F130は、森林計測システム100と外部との間でデータ通信を行うためのインタフェースであり、その形態、プロトコルは限定されない。例えば、通信I/F130は、USB、IEEE1394(登録商標)、またはイーサネット(登録商標)などに準拠した有線通信を行うことができる。また、通信I/F130は、Bluetooth(登録商標)規格および/またはWi-Fi(登録商標)規格に準拠した無線通信を行うことができる。いずれの規格も、2.4GHz帯の周波数を利用した無線通信規格を含む。
【0039】
記憶装置140は、例えば磁気記憶装置、光学記憶装置またはそれらの組み合わせである。光学記憶装置の例は、光ディスクドライブまたは光磁気ディスク(MD)ドライブなどである。磁気記憶装置の例は、ハードディスクドライブ(HDD)、フロッピーディスク(FD)ドライブまたは磁気テープレコーダである。
【0040】
プロセッサ150は、半導体集積回路であり、中央演算処理装置(CPU)またはマイクロプロセッサとも称される。プロセッサ150は、ROM160に格納されたコンピュータプログラムを逐次実行し、所望の処理を実現する。プロセッサ150は、CPUを搭載したFPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)またはASSP(Application Specific Standard Product)を含む用語として広く解釈される。
【0041】
ROM160は、例えば、書き込み可能なメモリ(例えばPROM)、書き換え可能なメモリ(例えばフラッシュメモリ)、または読み出し専用のメモリである。ROM160は、プロセッサの動作を制御するプログラムを記憶している。ROM160は、単一の記録媒体である必要はなく、複数の記録媒体の集合であり得る。その場合、集合の一部は取り外し可能なメモリであってもよい。
【0042】
RAM170は、ROM160に格納された制御プログラムをブート時に一旦展開するための作業領域を提供する。RAM170は、単一の記録媒体である必要はなく、複数の記録媒体の集合であり得る。
【0043】
図1中のそれぞれの部に相当する機能ブロックの処理(またはタスク)は、ソフトウェアのモジュール単位でコンピュータプログラムに記述される。ただし、FPGAなどを用いる場合、これらの機能ブロックの全部または一部は、ハードウェア・アクセラレータとして実装され得る。
【0044】
図3を参照しながら、森林計測システム100の処理手順(アルゴリズム)の例を説明する。アルゴリズムを記述した命令群を含むコンピュータプログラムは、例えば、インターネットを介して配信され、または、パッケージソフトウェアとして販売され得る。
図3は、処理手順の例を示すフローチャートである。
【0045】
図3に示す処理フローは、データ取得ステップS1、立木抽出ステップS2、算出ステップS3、記憶ステップS4、モデル生成ステップS5および幹直径推定ステップS6を含む。本明細書では、森林計測システム100のプロセッサ150を、各処理を実行する主体として説明を行う。
【0046】
(データ取得ステップS1)
プロセッサ150は、森林計測により得られた3次元点群データを外部から取得する。
【0047】
(立木抽出ステップS2)
プロセッサ150は、3次元点群データに含まれる点群を樹木ごとにセグメント化する。
【0048】
(算出ステップS3)
プロセッサ150は、3次元点群データに含まれる樹冠点群、幹点群および地表面点群に基づいて樹高および所定高さにおける幹の直径を算出する。
【0049】
(記憶ステップS4)
プロセッサ150は、各樹木について算出された樹高および所定高さにおける幹の直径をデータセットとして記憶装置140に記憶させる。
【0050】
(モデル生成ステップS5)
プロセッサ150は、記憶装置140に記憶された複数のデータセットを教師データとして用い、幹直径推定モデルを機械学習により生成する。
【0051】
(幹直径推定ステップS6)
プロセッサ150は、入力された少なくとも樹高から幹直径推定モデルを用いて所定高さにおける幹の直径を推定する。
【0052】
例示したデータ取得ステップS1、算出ステップS3、記憶ステップS4およびモデル生成ステップS5は、幹直径推定モデルの生成方法を規定しているということもできる。幹直径推定モデルの生成方法は、立木抽出ステップS2を含んでもよい。
【0053】
図4は、森林計測システム100のハードウェア構成の他の例を示す。
図4に示す例において、森林計測システム100は、少なくとも1つのパーソナルコンピュータ101およびクラウドサーバー190を備える。クラウドサーバー190は、プロセッサ191、メモリ192、通信I/F193および記憶装置194を有する。パーソナルコンピュータ101は、例えば
図2に示したハードウェア構成を有する。例えば、複数のパーソナルコンピュータ101が、社内に構築されたローカルエリアネットワーク(LAN)300を介して接続され得る。ローカルエリアネットワーク300は、インターネットプロバイダサービス(IPS)を介してインターネット400に接続される。個々のパーソナルコンピュータ101は、インターネット400を経由してクラウドサーバー190の記憶装置194にアクセス可能となる。
【0054】
図4に示す例において、パーソナルコンピュータ101が備えるプロセッサ150に代えて、あるいはプロセッサ150と協働して、クラウドサーバー190のプロセッサ191は、森林計測システム100のアルゴリズムを記述した命令群を含むコンピュータプログラムを逐次実行する。あるいは、同一のLAN300に接続された複数のパーソナルコンピュータ101が、アルゴリズムを記述したコンピュータプログラムを協働して実行してもよい。
【0055】
上述したように、本発明の実施形態による森林計測システム100は、樹高および所定高さにおける幹の直径のデータセットを教師データとして用い、幹直径推定モデルを機械学習により生成するモデル生成部と、入力された少なくとも樹高から幹直径推定モデルを用いて所定高さにおける幹の直径を推定する幹直径推定部とを備える。従って、樹高を算出できるが幹の直径を算出できない樹木については、幹直径推定モデルを用いて幹の直径を推定することができる。そのため、幹点群の品質が低い(例えば幹点群の密度が低い)樹木についても精度良く幹の直径を得ることができる。
【0056】
森林計測システム100は、例示したように、3次元点群データに含まれる点群を樹木ごとにセグメント化する立木抽出部20を備えてもよい。算出部30による樹高および幹の直径の算出の前段階として、立木抽出部20によるセグメント化を行うことにより、算出部による算出をより好適に(つまりいっそう容易に)行うことができる。
【0057】
また、森林計測システム100は、
図5に示すように、材積算出部70をさらに備えてもよい。材積算出部70は、算出された樹高と、算出または推定された所定高さにおける幹の直径とに基づいて材積を算出する。材積算出部70は、算出または推定された所定高さにおける幹の直径を胸高直径に換算した後に、材積を算出してもよい。
【0058】
森林計測システム100が、このような材積算出部70をさらに備えていると、樹木の材積を算出することが可能となる。本発明の実施形態による森林計測システム100は、幹点群の品質が低い樹木についても精度良く幹の直径を得ることができるので、幹点群の品質が低い樹木についての材積も精度良く得ることができる。
【0059】
モデル生成部50は、幹直径推定モデルを生成する際、複数のデータセットに対し、幹の直径の算出に用いられた幹点群の品質に応じた重み付けを行ってもよい。モデル生成部50がこのような重み付けを行うことにより、幹の直径の推定精度をいっそう高くすることができる。
【0060】
複数のデータセットに対する重み付けは、例えば、幹点群の密度の高さに応じて行うことができる。幹点群の密度が高いほど重みを大きくする(つまり幹点群の密度が低いほど重みを小さくする)ことにより、幹の直径の推定精度をいっそう高くすることができる。
【0061】
図6Aに、幹点群の密度が比較的高い点群の例を示し、
図6Bに、幹点群の密度が平均的な点群の例を示し、
図6Cに、幹点群の密度が比較的低い点群の例を示す。なお、
図6A、
図6B、
図6Cでは、わかりやすさのために樹冠点群および地表面点群を除いている。
【0062】
図6Aに示す例では、幹点群が明瞭に見えている。高さ3m~8mにおける点密度は100点/m
2以上である。
【0063】
図6Bに示す例では、幹点群が見えているものの、枝に対応する点やブッシュに対応する点も含まれている。そのため、幹点群の密度は、
図6Aに示す例よりも低い。
【0064】
図6Cに示す例では、幹点群がほとんど見えない。従って、
図6Cに示す例に基づいて幹の直径を算出することは困難である。そのため、
図6Cに示す例に対応する樹木については、
図6Aおよび
図6Bに示す例に基づいて生成された幹直径推定モデルにより幹の直径が推定される。幹直径推定モデルの生成の際、
図6Bに示す例に基づくデータセットの重みよりも
図6Aに示す例に基づくデータセットの重みの方が大きくなるように重み付けが行われることが好ましい。
【0065】
なお、ここでは、幹点群の品質を評価する指標として幹点群の密度を用いる例を示したが、幹点群の品質を評価する指標はこれに限定されない。例えば、円フィッティングの精度に応じて重み付けを行ってもよい。具体的には、円フィッティングの精度が高いほど重みを大きく(つまり円フィッティングの精度が低いほど重みを小さく)してもよい。あるいは、幹点群の連続性に応じて重み付けを行ってもよい。具体的には、幹点群の連続性が高いほど重みを大きく(つまり幹点群の連続性が低いほど重みを小さく)してもよい。
【0066】
既に説明したように、データ取得部10によって取得される3次元点群データは、例えば、ライダーセンサを搭載した無人航空機を飛行させて行う森林計測により得られた3次元点群データである。ライダーセンサを搭載した無人航空機を飛行させて行う森林計測によれば、樹冠点群だけでなく幹点群を含む3次元点群データを好適に得ることができる。以下、この点をより具体的に説明する。
【0067】
本明細書では、「森林計測」は、ライダーセンサを用いて上空から森林をスキャンし、スキャンデータを取得すること自体を含む。スキャンデータは、典型的には、スキャンごとに取得される点群を構成する各点の位置座標によって表現され得る。スキャンごとに取得される点の位置座標は、無人航空機とともに移動するローカル座標系によって規定される。このようなローカル座標系は、移動体座標系またはセンサ座標系と呼ばれ得る。一般的には、「森林計測」は、ローカル座標系で表現された各反射点の位置を地理座標系に変換することを含む。「森林計測」はさらに、地理座標系への変換後に、森林の構造を解析すること、森林および/または樹木の形を視覚的に表示すること、森林内の樹木の種類ごとの存在比率を求めること、森林の容積密度を求めること等を含み得る。
【0068】
「無人航空機」(UAV;Unmanned aerial vehicle)とは、操縦者としての人が搭乗しない航空機であり、ドローンと呼ばれることもある。航空機は回転翼機および固定翼機を含み得る。回転翼を有する無人航空機の一例は、無人ヘリコプターまたは無人マルチコプターである。回転翼はエンジンによって回転してもよいし、電動モータによって回転してもよい。無人航空機の飛行は、コンピュータプログラムによる自律飛行、一部を自動化する半自律飛行、無線を用いた人による遠隔操作による飛行のいずれかを行い得る。無人航空機は、グローバル・ポジショニング・システム(GPS)を援用して、現在位置を三次元的に測定、修正しながら飛行することが可能である。「無人」の用語は、航空機の操縦のために人が搭乗する必要がないことを意味しており、無人航空機が操縦者でない人を運搬することは除外しない。
【0069】
図7に、ライダーセンサ220を搭載した無人ヘリコプター200を示す。ライダーセンサ220は、レーザビームのパルス(以下「レーザパルス」と略記する。)222を、出射方向を変えながら次々と出射し、出射時刻と各レーザパルスの反射パルスを取得した時刻との時間差から各反射点の位置までの距離を計測することができる。「反射点」は、森林を構成する各樹木の樹冠および幹、地表面等であり得る。
【0070】
ライダーセンサ220には、レーザパルスを出射する方法の違いに応じて複数の方式が存在する。複数の方式とは、例えば機械回転方式、MEMS方式、フェーズドアレイ方式である。機械回転方式のライダーセンサは筒状であり、レーザおよびレーザパルスの反射光を検出する検出器を回転させて、回転軸の周囲360度全方位の計測対象物をスキャンする。MEMS方式のライダーセンサは、MEMSミラーを用いてレーザパルスの出射方向を揺動させ、揺動軸を中心とした所定の角度範囲内の計測対象物をスキャンする。フェーズドアレイ方式のライダーセンサは、光の位相を制御して光の出射方向を揺動させ、揺動軸を中心とした所定の角度範囲内の計測対象物をスキャンする。ライダーセンサ220の回転軸または揺動軸は、無人ヘリコプター200の機体進行方向を向くように搭載されている。
【0071】
無人ヘリコプター220が平坦な地面に静止しているとき、図示されるようにX軸、Y軸およびZ軸を取る。X軸の正の方向は紙面手前から奥に向かう方向であるとする。+Y方向は飛行時の機体204の進行方向であり、+Z方向は鉛直上向き、-Z方向は鉛直下向きである。
【0072】
無人ヘリコプター200は、メインボディ202およびテールボディ203を有する機体204を備えている。機体204の前方(+Y方向)で、かつ機体204の下方(-Z方向)にはライダーセンサ220が取り付けられている。メインボディ202の上方(+Z方向)にはメインロータ205が設けられ、テールボディ203の後部にテールロータ206が設けられる。メインボディ202の前部にはラジエータ207が設けられている。メインボディ202内には、いずれも図示しないエンジン、吸気系、メインロータ軸、燃料タンクが収容されている。
【0073】
メインボディ202の後部上側にはコントロールパネル210が設けられ、後部下側に表示灯211が設けられる。コントロールパネル210は、飛行前のチェックポイントやセルフチェック結果等を表示する。コントロールパネル210の表示は地上局でも確認できる。表示灯211は、GPS制御の状態や機体の異常警告等の表示を行う。メインボディ202の中央部下側には、着陸時に機体204を支える脚であるスキッド216が設けられている。
【0074】
メインボディ202には飛行制御ボックス215が搭載される。
【0075】
図8は、飛行制御ボックス215のハードウェア構成例を示している。飛行制御ボックス215は、GPSモジュール215a、加速度センサ215b、気圧センサ215c、地磁気センサ215d、超音波センサ215e、通信回路215f、信号処理回路215g、および、ROM215h、RAM215i等の記憶装置215jを収容する。各構成要素は、例えば配線または内部バス215kを介して相互にデータを送受信し得る。なお、GPSモジュール215aを初めとする各種のセンサを設ける位置は、常に飛行制御ボックス215内である必要はない。例えばGPS衛星からの信号を取得しやすくするため、GPSモジュール215aをテールボディ203上部に設けてもよい。
【0076】
GPSモジュール215aは、GPS(Global Positioning System)を用いて現在位置および飛行速度等の飛行データを取得する。GPSモジュール215aの数は1個であってもよいし、複数(例えば2個)であってもよい。
【0077】
加速度センサ215bは、X軸、Y軸およびZ軸の各方向の加速度を検出する三軸加速度センサである。加速度センサ215bが六軸加速度センサであれば、さらに無人ヘリコプター200のロール加速度、ピッチ角速度およびヨー加速度を検出可能である。気圧センサ215cは気圧を検出する。検出された気圧から現在の標高を知ることができる。なお気圧と標高との関係式は公知であるから、本明細書では説明は省略する。地磁気センサ215dは無人ヘリコプター200の現在の方位を検出する。加速度センサ215bおよび地磁気センサ215dの各々から出力されるデータ(機体データ)を利用することにより、無人ヘリコプター200の現在の姿勢を判断することができる。飛行データおよび機体データは、信号処理回路215gに提供される。
【0078】
通信回路215fは、Bluetooth(登録商標)および/またはWi-Fi(登録商標)規格に準拠した無線通信を行う通信回路を有する。通信回路215fはさらに、携帯電話回線または人工衛星を経由する回線を利用した無線通信を行ってもよい。通信回路215fは、飛行前においては飛行経路のデータを受信し、飛行時には無線によって地上と必要な通信を行う。
【0079】
信号処理回路215gは、記憶装置215jに記憶された制御プログラムを実行して無人ヘリコプター200を飛行させる。より具体的には信号処理回路215gは、上述した飛行データ、機体データ、エンジン回転数やスロットル開度などの運転状態データ等を監視しながら、予め用意された飛行経路に沿って無人ヘリコプター200を飛行させる。
【0080】
飛行制御ボックス215は、ライダーセンサ220と接続されている。飛行制御ボックス215は、例えば、GPSモジュール215aが取得した、無人ヘリコプター200の飛行位置を示す位置データをライダーセンサ220に提供してもよい。これにより、ライダーセンサ20は自らがGPSモジュール215aを搭載しなくても、スキャンを行った時刻における位置データとスキャン結果(時刻データ、方角データおよび距離データの組)とを用いて、例えば地理座標系で表現された位置を算出できる。
【0081】
なお、無人ヘリコプター200の飛行・運用を管理するオペレータは、飛行状態を目視しながら、予め用意した飛行経路に沿って無人ヘリコプター200を飛行させることもできる。テールボディ203の後端部には、リモコン操縦機からの指令信号を受信するリモコン受信アンテナ223が設けられている。
【0082】
ライダーセンサ220は、たとえば近赤外線のレーザパルス222を放射し、当該レーザパルス222の反射光を検出することにより、反射点までの距離を測定する光学機器である。
【0083】
例示的な実施形態ではライダーセンサ220は機械回転方式であり、レーザおよびレーザパルスの反射光を検出する検出器を回転させて、360度全方位をスキャンすることができる。ただし本実施形態では、ライダーセンサ220のスキャン可能範囲のうち無人ヘリコプター200の機体204に遮られる範囲、例えばライダーセンサ220の+Z方向を中心とした±60度(計120度)の範囲、は計測結果に反映しない。
【0084】
レーザパルス222は、ある角度方向について1回転ごとに1個ずつ出射されてもよいし、同時に複数個出射されてもよい。
図7では、同時にN個のレーザパルス222が出射される様子を表している。ただし記載の便宜上、パルス状ではなくビーム状で記載している。Nの一例は12である。Nが2以上の場合、ライダーセンサ220にはN個のレーザパルスの出射口が設けられる。
【0085】
図9は、ライダーセンサ220を利用してある森林4を対象とする森林計測を行う無人ヘリコプター200を示している。無人ヘリコプター200から放射状に伸びる各直線は、各レーザパルス222を模式的に表している。各レーザパルス222は各直線に沿ってライダーセンサ220と反射点との間を往復する。
【0086】
無人ヘリコプター200は、比較的低い高度(例えば絶対高度150m以下、好ましくは絶対高度80m以下)で飛行するよう、プログラミングされている。比較的低い高度で飛行することにより、ライダーセンサ220から出射されたレーザパルス222は、樹木6の樹冠6aだけでなく幹6bにも到達し、反射される。これにより、森林4の樹木6の樹冠6aおよび幹6bを計測することが可能になる。
【0087】
上述したように、本発明の実施形態による森林計測システム100は、森林計測により得られた3次元点群データを取得するデータ取得部10と、前記3次元点群データに含まれる樹冠点群、幹点群および地表面点群に基づいて樹高および所定高さにおける幹の直径を算出する算出部30と、各樹木について算出された樹高および所定高さにおける幹の直径をデータセットとして記憶する記憶部40と、前記記憶部40に記憶された複数のデータセットを教師データとして用い、入力を少なくとも樹高、出力を所定高さにおける幹の直径とする推定モデルを機械学習により生成するモデル生成部50と、入力された少なくとも樹高から前記推定モデルを用いて所定高さにおける幹の直径を推定する幹直径推定部60と、を備える。
【0088】
本発明の実施形態による森林計測システム100は、樹高および所定高さにおける幹の直径のデータセットを教師データとして用い、入力を少なくとも樹高、出力を所定高さにおける幹の直径とする推定モデルを機械学習により生成するモデル生成部50と、入力された少なくとも樹高から推定モデルを用いて所定高さにおける幹の直径を推定する幹直径推定部60とを備える。従って、樹高を算出できるが幹の直径を算出できない樹木については、推定モデルを用いて幹の直径を推定することができる。そのため、幹点群の品質が低い(例えば幹点群の密度が低い)樹木についても精度良く幹の直径を得ることができる。
【0089】
ある実施形態において、前記森林計測システム100は、前記3次元点群データに含まれる点群を樹木ごとにセグメント化する立木抽出部20をさらに備える。
【0090】
森林計測システム100は、3次元点群データに含まれる点群を樹木ごとにセグメント化する立木抽出部20をさらに備えてもよい。算出部30による樹高および幹の直径の算出の前段階として、立木抽出部20によるセグメント化を行うことにより、算出部30による算出をより好適に行うことができる。
【0091】
ある実施形態において、前記森林計測システム100は、算出された樹高と、算出または推定された所定高さにおける幹の直径とに基づいて材積を算出する材積算出部70をさらに備える。
【0092】
森林計測システム100が、算出された樹高と、算出または推定された所定高さにおける幹の直径とに基づいて材積を算出する材積算出部70をさらに備えていると、樹木の材積を算出することが可能となる。本発明の実施形態による森林計測システム100は、幹点群の品質が低い樹木についても精度良く幹の直径を得ることができるので、幹点群の品質が低い樹木についての材積も精度良く得ることができる。
【0093】
ある実施形態において、前記モデル生成部50は、前記推定モデルを生成する際、前記複数のデータセットに対し、所定高さにおける幹の直径の算出に用いられた幹点群の品質に応じた重み付けを行う。
【0094】
モデル生成部50が、推定モデルを生成する際、複数のデータセットに対し、幹の直径の算出に用いられた幹点群の品質に応じた重み付けを行うことにより、幹の直径の推定精度をいっそう高くすることができる。
【0095】
ある実施形態において、前記モデル生成部50は、前記複数のデータセットに対する重み付けを、幹点群の密度の高さに応じて行う。
【0096】
複数のデータセットに対する重み付けは、例えば、幹点群の密度の高さに応じて行うことができる。幹点群の密度が高いほど重みを大きくする(つまり幹点群の密度が低いほど重みを小さくする)ことにより、幹の直径の推定精度をいっそう高くすることができる。
【0097】
ある実施形態において、前記3次元点群データは、ライダー(LiDAR)センサ220を搭載した無人航空機200を飛行させて行う森林計測により得られた3次元点群データである。
【0098】
データ取得部10によって取得される3次元点群データは、例えば、ライダー(LiDAR)センサ220を搭載した無人航空機200を飛行させて行う森林計測により得られた3次元点群データである。ライダーセンサ220を搭載した無人航空機200を飛行させて行う森林計測によれば、樹冠点群だけでなく幹点群を含む3次元点群データを好適に得ることができる。
【0099】
本発明の実施形態によるコンピュータプログラムは、森林計測により得られた3次元点群データを取得するデータ取得ステップと、前記3次元点群データに含まれる樹冠点群、幹点群および地表面点群に基づいて樹高および所定高さにおける幹の直径を算出する算出ステップと、各樹木について算出された樹高および所定高さにおける幹の直径をデータセットとして記憶装置140に記憶させる記憶ステップと、前記記憶装置140に記憶された複数のデータセットを教師データとして用い、入力を少なくとも樹高、出力を所定高さにおける幹の直径とする推定モデルを機械学習により生成するモデル生成ステップと、入力された少なくとも樹高から前記推定モデルを用いて所定高さにおける幹の直径を推定する幹直径推定ステップと、をコンピュータに実行させる。
【0100】
本発明の実施形態によるコンピュータプログラムは、上述のコンピュータプログラムを記憶する、コンピュータ読み取り可能な非一時的な記憶媒体として提供されてもよい。
【0101】
本発明の実施形態による幹直径推定モデルの生成方法は、ライダー(LiDAR)センサ220を搭載した無人航空機200を飛行させて行う森林計測により得られた3次元点群データを取得するデータ取得ステップと、前記3次元点群データに含まれる樹冠点群、幹点群および地表面点群に基づいて樹高および所定高さにおける幹の直径を算出する算出ステップと、各樹木について算出された樹高および所定高さにおける幹の直径をデータセットとして記憶装置140に記憶させる記憶ステップと、前記記憶装置140に記憶された複数のデータセットを教師データとして用い、入力を少なくとも樹高、出力を所定高さにおける幹の直径とする推定モデルを機械学習により生成するモデル生成ステップと、を包含する。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明の実施形態によれば、森林内の樹木の樹冠および幹を、より簡便に精度良く計測し得る技術が提供される。
【符号の説明】
【0103】
10 データ取得部
20 立木抽出部
30 算出部
40 記憶部
50 モデル生成部
60 幹直径推定部
70 材積算出部
100 森林計測システム
200 無人ヘリコプター
220 ライダーセンサ