(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022024859
(43)【公開日】2022-02-09
(54)【発明の名称】姿勢補助部材、及びクッション
(51)【国際特許分類】
A47C 27/00 20060101AFI20220202BHJP
A47C 7/62 20060101ALI20220202BHJP
A47C 16/00 20060101ALI20220202BHJP
【FI】
A47C27/00 Z
A47C7/62 Z
A47C16/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020127680
(22)【出願日】2020-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】591172733
【氏名又は名称】株式会社コジット
(74)【代理人】
【識別番号】100141586
【弁理士】
【氏名又は名称】沖中 仁
(72)【発明者】
【氏名】森本 剛弘
【テーマコード(参考)】
3B084
3B095
3B096
【Fターム(参考)】
3B084JC15
3B095GA03
3B096AA00
3B096AB05
3B096AB11
3B096AD04
3B096AD07
(57)【要約】
【課題】楽な姿勢であっても猫背とならないように上体の姿勢を保つことができる姿勢補助部材、及びクッションを提供する。
【解決手段】袋状の被覆材の内部にクッション材が詰められてなるクッション1Aであって、着座姿勢の人の上体を前側から支持する姿勢補助部材30がクッション材3の内部に配設されており、姿勢補助部材30は、上体の前側に対し、当該姿勢補助部材30の後側を向かい合わせた第一状態のときに、上体の腹部に対応する第一腹部対応部41と、第一状態のときに、上体の胸部に対応する第一胸部対応部51とを有し、第一腹部対応部41に対し第一胸部対応部51が前方に配されるような形状に形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着座姿勢の人の上体を前側から支持する姿勢補助部材であって、
前記上体の前側に対し、当該姿勢補助部材の後側を向かい合わせた第一状態のときに、前記上体の腹部に対応する第一腹部対応部と、
前記第一状態のときに、前記上体の胸部に対応する第一胸部対応部と、
を有し、
前記第一腹部対応部に対し前記第一胸部対応部が前方に配されるような形状に形成されている姿勢補助部材。
【請求項2】
前記第一状態のときの前後の向きを反転させて、前記上体の前側に対し、当該姿勢補助部材の前側を向かい合わせた第二状態のときに、前記上体の腹部に対応する第二腹部対応部と、
前記第二状態のときに、前記上体の胸部に対応する第二胸部対応部と、
を有し、
前記第二腹部対応部に対し前記第二胸部対応部が後方に配されるような形状に形成されている請求項1に記載の姿勢補助部材。
【請求項3】
前記第一状態のときの前後の向きを反転させて、前記上体の前側に対し、当該姿勢補助部材の前側を向かい合わせた第二状態のときに、前記上体の腹部に対応する第二腹部対応部と、
前記第二状態のときに、前記上体の胸部に対応する第二胸部対応部と、
を有し、
前記第二腹部対応部と前記第二胸部対応部との前後方向の相対位置が一致されるような形状に形成されている請求項1に記載の姿勢補助部材。
【請求項4】
前記上体からの荷重により弾性変形可能に構成されている請求項1~3の何れか一項に記載の姿勢補助部材。
【請求項5】
下部が末広がり形状に形成されている請求項1~4の何れか一項に記載の姿勢補助部材。
【請求項6】
前記第一状態のときの後面部が、上方に向かって前方に湾曲した形状であり、前記後面部の湾曲の大きさは、前記後面部の上端と下端との水平方向の距離で規定され、前記距離が10~160mmである請求項1に記載の姿勢補助部材。
【請求項7】
袋状の被覆材の内部にクッション材が詰められてなるクッションであって、
着座姿勢の人の上体を前側から支持する姿勢補助部材が前記クッション材の内部に配設されており、
前記姿勢補助部材は、
前記上体の前側に対し、当該姿勢補助部材の後側を向かい合わせた第一状態のときに、前記上体の腹部に対応する第一腹部対応部と、
前記第一状態のときに、前記上体の胸部に対応する第一胸部対応部と、
を有し、
前記第一腹部対応部に対し前記第一胸部対応部が前方に配されるような形状に形成されているクッション。
【請求項8】
前記姿勢補助部材は、
前記第一状態のときの前後の向きを反転させて、前記上体の前側に対し、当該姿勢補助部材の前側を向かい合わせた第二状態のときに、前記上体の腹部に対応する第二腹部対応部と、
前記第二状態のときに、前記上体の胸部に対応する第二胸部対応部と、
を有し、
前記第二腹部対応部に対し前記第二胸部対応部が後方に配されるような形状に形成されている請求項7に記載のクッション。
【請求項9】
前記姿勢補助部材は、
前記第一状態のときの前後の向きを反転させて、前記上体の前側に対し、当該姿勢補助部材の前側を向かい合わせた第二状態のときに、前記上体の腹部に対応する第二腹部対応部と、
前記第二状態のときに、前記上体の胸部に対応する第二胸部対応部と、
を有し、
前記第二腹部対応部と前記第二胸部対応部との前後方向の相対位置が一致されるような形状に形成されている請求項7に記載のクッション。
【請求項10】
前記姿勢補助部材を内包するクッション本体部と、
前記クッション本体部の両側に設けられる一対の腕部と、
を有する請求項7~9の何れか一項に記載のクッション。
【請求項11】
前記腕部の先端部同士を着脱可能に連結する連結手段を備える請求項10に記載のクッション。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着座姿勢の人の上体を前側から支持する姿勢補助部材、及び当該姿勢補助部材を芯材として備えたクッションに関する。
【背景技術】
【0002】
着座姿勢の人が前のめりの悪い姿勢、いわゆる猫背になるのを防ぐようにした、姿勢保持器や、上体支持クッションが提案されている(特許文献1,2を参照)。
【0003】
特許文献1で提案されている姿勢保持器は、顎のせパイプと、胸部接触面を有する本体部分と、パーソナルコンピュータ(以下、「PC」と称する。)のキーボードの据置台も兼ねる肘掛板とを備えている。この姿勢保持器においては、顎のせパイプが頭部を支え、本体部分が胸部を支え、肘掛板が前腕を支えるように構成されている。これにより、前のめりの悪い姿勢を防ぎ、正しい姿勢に保つことができる。
【0004】
特許文献2で提案されている上体支持クッションは、大腿部に載置される第一の面と、第一の面を大腿部に載せたときに上面となる第二の面と、第一の面と第二の面との間に形成される、腹部の形状に沿った円弧状の第三の面とを有している。この上体支持クッションにおいては、第一の面を大腿部上に載置し、第三の面を腹部に当接したときに、第三の面が腹部を面で支持するように構成されている。これにより、上体が第三の面によって積極的に起立されるので、前傾姿勢となるのを防ぐことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-13142号公報
【特許文献2】実用新案登録第3219048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の姿勢保持器では、顎のせパイプが頭部を支え、胸部接触面を有する本体部分が胸部を支え、肘掛板が前腕を支えるように構成されているので、前のめりの悪い姿勢を防ぐことができるものの、拘束感が強く、PC画面との微妙な距離の調整も行い難い。このため、使用者にストレスがかかるという問題点がある。
【0007】
特許文献2の上体支持クッションでは、第三の面が腹部を面で支持するように構成されているので、上体が第三の面によって積極的に起立されて、前傾姿勢となるのを防ぐことができるものの、楽な姿勢をとることができない。このため、楽な姿勢で使用者を支えるというクッション本来の機能が損なわれるという問題点がある。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、楽な姿勢であっても猫背とならないように上体の姿勢を保つことができる姿勢補助部材、及び当該姿勢補助部材を芯材として備えたクッションを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明に係る姿勢補助部材の特徴構成は、
着座姿勢の人の上体を前側から支持する姿勢補助部材であって、
前記上体の前側に対し、当該姿勢補助部材の後側を向かい合わせた第一状態のときに、前記上体の腹部に対応する第一腹部対応部と、
前記第一状態のときに、前記上体の胸部に対応する第一胸部対応部と、
を有し、
前記第一腹部対応部に対し前記第一胸部対応部が前方に配されるような形状に形成されていることにある。
【0010】
本構成の姿勢補助部材によれば、上体の前側に対し、当該姿勢補助部材の後側を向かい合わせた第一状態のときに、上体の腹部に対応する第一腹部対応部と、第一状態のときに、上体の胸部に対応する第一胸部対応部とを有している。そして、本構成の姿勢補助部材は、第一腹部対応部に対し第一胸部対応部が前方に配されるような形状に形成されている。これにより、着座姿勢の人が上体を前方に傾けると、上体がある程度前傾した状態で第一胸部対応部に支持されることになる。従って、ある程度の前傾姿勢が許容されることで楽な姿勢をとることができるとともに、第一胸部対応部に上体が支持されることで猫背とならないように上体の姿勢を保つことができる。
【0011】
本発明に係る姿勢補助部材において、
前記第一状態のときの前後の向きを反転させて、前記上体の前側に対し、当該姿勢補助部材の前側を向かい合わせた第二状態のときに、前記上体の腹部に対応する第二腹部対応部と、
前記第二状態のときに、前記上体の胸部に対応する第二胸部対応部と、
を有し、
前記第二腹部対応部に対し前記第二胸部対応部が後方に配されるような形状に形成されていることが好ましい。
【0012】
本構成の姿勢補助部材によれば、第一状態のときの前後の向きを反転させて、上体の前側に対し、当該姿勢補助部材の前側を向かい合わせた第二状態のときに、上体の腹部に対応する第二腹部対応部と、第二状態のときに、上体の胸部に対応する第二胸部対応部とを有している。そして、本構成の姿勢補助部材は、第二腹部対応部に対し第二胸部対応部が後方に配されるような形状に形成されている。これにより、着座姿勢の人が上体を前方に傾けると、上体が僅かに前傾したところで第二胸部対応部に支持されることになる。こうして、姿勢補助部材の前後の向きを変えて第一状態と第二状態とを切り換えることにより、上体の前傾姿勢の許容範囲を二段階で調節することができる。
【0013】
本発明に係る姿勢補助部材において、
前記第一状態のときの前後の向きを反転させて、前記上体の前側に対し、当該姿勢補助部材の前側を向かい合わせた第二状態のときに、前記上体の腹部に対応する第二腹部対応部と、
前記第二状態のときに、前記上体の胸部に対応する第二胸部対応部と、
を有し、
前記第二腹部対応部と前記第二胸部対応部との前後方向の相対位置が一致されるような形状に形成されていることが好ましい。
【0014】
本構成の姿勢補助部材によれば、第一状態のときの前後の向きを反転させて、上体の前側に対し、当該姿勢補助部材の前側を向かい合わせた第二状態のときに、上体の腹部に対応する第二腹部対応部と、第二状態のときに、上体の胸部に対応する第二胸部対応部とを有している。そして、本構成の姿勢補助部材は、第二腹部対応部と第二胸部対応部との前後方向の相対位置が一致されるような形状に形成されている。これにより、着座姿勢の人が上体を前方に傾けると、上体が僅かに前傾したところで第二胸部対応部に支持されることになる。こうして、姿勢補助部材の前後の向きを変えて第一状態と第二状態とを切り換えることにより、上体の前傾姿勢の許容範囲を二段階で調節することができる。
【0015】
本発明に係る姿勢補助部材において、
前記上体からの荷重により弾性変形可能に構成されていることが好ましい。
【0016】
本構成の姿勢補助部材によれば、着座姿勢の人の上体からの荷重により弾性変形可能に構成されている。これにより、姿勢補助部材に上体が押し付けられる際の衝撃を緩和することができる。
【0017】
本発明に係る姿勢補助部材において、
下部が末広がり形状に形成されていることが好ましい。
【0018】
本構成の姿勢補助部材によれば、下部が末広がり形状に形成されているので、末広がり形状の下部を大腿部に載せる際の据わりがよくなる。これにより、姿勢補助部材の使用時の安定感を増すことができる。
【0019】
本発明に係る姿勢補助部材において、
前記第一状態のときの後面部が、上方に向かって前方に湾曲した形状であり、前記後面部の湾曲の大きさは、前記後面部の上端と下端との水平方向の距離で規定され、前記距離が10~160mmであることが好ましい。
【0020】
本構成の姿勢補助部材によれば、第一状態のときの後面部が、上方に向かって前方に湾曲した形状とされている。後面部の湾曲の大きさは、後面部の上端と下端との水平方向の距離で規定され、当該距離が10~160mmの範囲とされる。これにより、姿勢補助部材が第一状態のときにおける前傾姿勢が許容される範囲が適正となり、楽な姿勢であっても猫背とならないように上体の姿勢を確実に保つことができる。
【0021】
次に、上記課題を解決するための本発明に係るクッションの特徴構成は、
袋状の被覆材の内部にクッション材が詰められてなるクッションであって、
着座姿勢の人の上体を前側から支持する姿勢補助部材が前記クッション材の内部に配設されており、
前記姿勢補助部材は、
前記上体の前側に対し、当該姿勢補助部材の後側を向かい合わせた第一状態のときに、前記上体の腹部に対応する第一腹部対応部と、
前記第一状態のときに、前記上体の胸部に対応する第一胸部対応部と、
を有し、
前記第一腹部対応部に対し前記第一胸部対応部が前方に配されるような形状に形成されていることにある。
【0022】
本構成のクッションによれば、着座姿勢の人の上体を前側から支持する姿勢補助部材がクッション材の内部に配設されている。クッション材の内部に配設された姿勢補助部材は、上体の前側に対し、当該姿勢補助部材の後側を向かい合わせた第一状態のときに、上体の腹部に対応する第一腹部対応部と、第一状態のときに、上体の胸部に対応する第一胸部対応部とを有している。そして、本構成の姿勢補助部材は、第一腹部対応部に対し第一胸部対応部が前方に配されるような形状に形成されている。これにより、着座姿勢の人が上体を前方に傾けると、上体がある程度前傾した状態で第一胸部対応部に被覆材及びクッション材を介して上体が支持されることになる。従って、ある程度の前傾姿勢が許容されることで楽な姿勢をとることができるとともに、第一胸部対応部に上体が支持されることで猫背とならないように上体の姿勢を保つことができる。さらに、前傾姿勢で上体が姿勢補助部材の第一胸部対応部に支持される際には、第一胸部対応部と上体との間に被覆材及びクッション材が介在されるので、第一胸部対応部に上体が直接的に支持される場合よりも、ソフトな感触で上体が第一胸部対応部に支持されることになり、心地の良い使用感を得ることができる。
【0023】
本発明に係るクッションにおいて、
前記姿勢補助部材は、
前記第一状態のときの前後の向きを反転させて、前記上体の前側に対し、当該姿勢補助部材の前側を向かい合わせた第二状態のときに、前記上体の腹部に対応する第二腹部対応部と、
前記第二状態のときに、前記上体の胸部に対応する第二胸部対応部と、
を有し、
前記第二腹部対応部に対し前記第二胸部対応部が後方に配されるような形状に形成されていることが好ましい。
【0024】
本構成のクッションによれば、姿勢補助部材は、第一状態のときの前後の向きを反転させて、上体の前側に対し、当該姿勢補助部材の前側を向かい合わせた第二状態のときに、上体の腹部に対応する第二腹部対応部と、第二状態のときに、上体の胸部に対応する第二胸部対応部とを有している。そして、姿勢補助部材は、第二腹部対応部に対し第二胸部対応部が後方に配されるような形状に形成されている。これにより、着座姿勢の人が上体を前方に傾けると、上体が僅かに前傾したところで第二胸部対応部に被覆材及びクッション材を介して上体が支持されることになる。こうして、姿勢補助部材の前後の向きを変えて、言い換えればクッションの前後の向きを変えて、姿勢補助部材の第一状態と第二状態とを切り換えることにより、上体の前傾姿勢の許容範囲を二段階で調節することができる。
【0025】
本発明に係るクッションにおいて、
前記姿勢補助部材は、
前記第一状態のときの前後の向きを反転させて、前記上体の前側に対し、当該姿勢補助部材の前側を向かい合わせた第二状態のときに、前記上体の腹部に対応する第二腹部対応部と、
前記第二状態のときに、前記上体の胸部に対応する第二胸部対応部と、
を有し、
前記第二腹部対応部と前記第二胸部対応部との前後方向の相対位置が一致されるような形状に形成されていることが好ましい。
【0026】
本構成のクッションによれば、姿勢補助部材は、第一状態のときの前後の向きを反転させて、上体の前側に対し、当該姿勢補助部材の前側を向かい合わせた第二状態のときに、上体の腹部に対応する第二腹部対応部と、第二状態のときに、上体の胸部に対応する第二胸部対応部とを有している。そして、姿勢補助部材は、第二腹部対応部と第二胸部対応部との前後方向の相対位置が一致されるような形状に形成されている。これにより、着座姿勢の人が上体を前方に傾けると、上体が僅かに前傾したところで第二胸部対応部に被覆材及びクッション材を介して上体が支持されることになる。こうして、姿勢補助部材の前後の向きを変えて、言い換えればクッションの前後の向きを変えて、姿勢補助部材の第一状態と第二状態とを切り換えることにより、上体の前傾姿勢の許容範囲を二段階で調節することができる。
【0027】
本発明に係るクッションにおいて、
前記姿勢補助部材を内包するクッション本体部と、
前記クッション本体部の両側に設けられる一対の腕部と、
を有することが好ましい。
【0028】
本構成のクッションによれば、姿勢補助部材を内包するクッション本体部と、クッション本体部の両側に設けられる一対の腕部とを有する。これにより、着座姿勢の人が上体を前方に傾けると、クッション本体部に内包された姿勢補助部材に、被覆材及びクッション材を介して上体が支持される。従って、楽な姿勢であっても猫背とならないように上体の姿勢をクッション本体部によって保つことができる。また、例えば、机上に設置されたPCのキーボード操作を行う際に、クッションの一対の腕部を机上に載せ、机上に載せた一対の腕部の上に、クッションを使用している人の両腕の前腕や手首、肘等を載せれば、両肩や両腕の緊張を緩和することができ、長時間のキーボード操作に伴う疲労を軽減することができる。
【0029】
本発明に係るクッションにおいて、
前記腕部の先端部同士を着脱可能に連結する連結手段を備えることが好ましい。
【0030】
本構成のクッションによれば、クッション本体部の両側に設けられる一対の腕部の先端部同士を着脱可能に連結する連結手段を備える。このような構成により、使用者の大腿部上に載置したクッション本体部を使用者の腹部に当接させ、一対の腕部を使用者の腰部に巻き掛けて連結手段により一対の腕部の先端部同士を連結すれば、クッション本体部と、連結された一対の腕部とによって画定される空間に使用者の腰腹部が入るようにクッションを使用者に装着することができる。これにより、使用者からクッションが不意に外れたりしないため、使用者の上体をクッション本体部で確実に支持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】
図1は、本発明の第一実施形態に係るクッションを一部破断して示す全体斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の第一実施形態に係る姿勢補助部材を示し、(a)は前方から見た全体斜視図、(b)は後方から見た全体斜視図である。
【
図3】
図3は、本発明の第一実施形態に係る姿勢補助部材を示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は底面図、(d)は右側面図、(e)は左側面図、(f)は背面図である。
【
図4】
図4は、本発明の第一実施形態に係るクッションにおける一対の腕部の先端部同士が連結された状態を示し、(a)は後方から見た全体斜視図、(b)は平面図である。
【
図5】
図5は、本発明の第一実施形態に係るクッションの使用例(1)を示し、(a)は上体の起立状態図、(b)は上体の前傾状態図である。
【
図6】
図6は、本発明の第一実施形態に係るクッションの使用例(2)を示し、(a)は上体の起立状態図、(b)は上体の前傾状態図である。
【
図7】
図7は、本発明の第一実施形態に係るクッションの使用例(3)を示し、(a)は上体の起立状態図、(b)は上体の前傾状態図である。
【
図8】
図8は、本発明の第一実施形態に係るクッションの使用例(4)を示し、(a)は上体の起立状態図、(b)は上体の前傾状態図である。
【
図9】
図9は、本発明の第二実施形態に係るクッションを一部破断して示す全体斜視図である。
【
図10】
図10は、本発明の第二実施形態に係る姿勢補助部材を示し、(a)は前方から見た全体斜視図、(b)は後方から見た全体斜視図である。
【
図11】
図11は、本発明の第二実施形態に係る姿勢補助部材を示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は底面図、(d)は右側面図、(e)は左側面図、(f)は背面図である。
【
図12】
図12は、本発明の第二実施形態に係るクッションの使用例(1)を示し、(a)は上体の起立状態図、(b)は上体の前傾状態図である。
【
図13】
図13は、本発明の第二実施形態に係るクッションの使用例(2)を示し、(a)は上体の起立状態図、(b)は上体の前傾状態図である。
【
図14】
図14は、本発明の第二実施形態に係るクッションの使用例(3)を示し、(a)は上体の起立状態図、(b)は上体の前傾状態図である。
【
図15】
図15は、本発明の第二実施形態に係るクッションの使用例(4)を示し、(a)は上体の起立状態図、(b)は上体の前傾状態図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明について、
図1~
図15を参照しながら説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施形態や図面に記載される構成に限定されることは意図しない。
【0033】
〔第一実施形態〕
<全体構成>
図1は、本発明の第一実施形態に係るクッションを一部破断して示す全体斜視図である。
図1に示すクッション1Aは、例えばポリエステルやポリウレタン等の樹脂材料で構成された、人肌に触れて優しい生地からなる袋状の被覆材2の内部に、例えばポリエステル綿等のクッション材3が詰められてなるものである。クッション1Aは、クッション本体部10と、クッション本体部10の両側に設けられる一対の腕部20とを有している。
【0034】
<クッション本体部>
クッション本体部10は、着座姿勢の人(使用者)の上体の前側で使用者の両脚の大腿部上に置いたときに、使用者の腹部から胸部に亘って接触可能な大きさの正面視略角丸四角形状に形成されている。また、クッション本体部10は、一定の抱き心地感を有するように前後方向に所定の厚みを有し、抱きしめ易くなるように、中央部が前後方向にやや膨出した丸みのある形状に形成されている。クッション本体部10は、姿勢補助部材30を内包しており、姿勢補助部材30は、クッション材3の内部に配設されている。
【0035】
<姿勢補助部材>
図2は、本発明の第一実施形態に係る姿勢補助部材を示し、(a)は前方から見た全体斜視図、(b)は後方から見た全体斜視図である。
図2(a)及び(b)に示すように、姿勢補助部材30は、上方に向かって前方に屈曲した屈曲柱状に形成されており、着座姿勢の人の上体を前側から支持する機能を有している。姿勢補助部材30の上部は、上方に進むに従って左右方向に次第に広がるような末広がり形状に形成されている。姿勢補助部材30の下部は、下方に進むに従って左右方向に次第に広がるような、上部よりも左右方向の広がり幅が大きい末広がり形状に形成されている。姿勢補助部材30の上下方向中間部は、括れた形状に形成されている。
【0036】
図3は、本発明の第一実施形態に係る姿勢補助部材を示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は底面図、(d)は右側面図、(e)は左側面図、(f)は背面図である。
図3(a)~(f)に示すように、姿勢補助部材30は、前後方向に配される前面部31及び後面部32と、左右方向に配される一対の側面部33,34と、上下方向に配される上面部35及び下面部36とを有している。
【0037】
[前面部及び後面部]
図3(d)に示すように、前面部31及び後面部32は何れも、上方に向かって前方に湾曲した形状に形成されている。ここで、後面部32の湾曲の大きさは、当該後面部32の上端と下端との水平方向の距離Dで規定されている。前記距離Dは、10~160mmであり、好ましくは、30~140mmであり、より好ましくは、50~120mmである。これにより、前傾姿勢が許容される範囲が適正となり、楽な姿勢であっても猫背とならないように上体の姿勢を確実に保つことができる。前記距離Dが10mm未満の場合、前傾姿勢の許容範囲が狭すぎて、使用者が窮屈となり、楽な姿勢をとることができない虞がある。前記距離Dが160mmを超える場合、前傾姿勢の許容範囲が広すぎて、使用者が前のめりになり過ぎ、猫背になる虞がある。
【0038】
[一対の側面部]
一対の側面部33,34は、上下方向の中間部が括れた形状に形成されている。一対の側面部33,34と上面部35との交わりの両角部には、丸みを持たせている。これにより、使用者の上体が被覆材2及びクッション材3を介して後述する第一胸部対応部51に押し付けられた前傾姿勢の際に、一対の側面部33,34と上面部35との交わりの両角部から使用者の上体に向って応力が集中しないようにされている。また、一対の側面部33,34と下面部36との交わりの両角部にも、丸みを持たせている。これにより、姿勢補助部材30に対し使用者の上体からの荷重が作用したときに、一対の側面部33,34と下面部36との交わりの両角部から使用者の大腿部に対し応力が集中しないようにされている。
【0039】
[上面部]
上面部35は、当該上面部35に対し垂直をなす方向から見た形状が前後方向の長さよりも左右方向の長さが大きい長方形状に形成されている。上面部35の長手方向(左右方向)の中間部は、下凸に窪んだ形状に形成されている。これにより、使用者の上体が被覆材2及びクッション材3を介して後述する第一胸部対応部51に押し付けられた前傾姿勢の際に、上面部35に対応する使用者の上体の部分へのクッション本体部10の接触の感触がよくなる。
【0040】
[下面部]
下面部36は、当該下面部36に対し垂直をなす方向から見た形状が前後方向の長さよりも左右方向の長さが大きい長方形状に形成されている。下面部36の長手方向(左右方向)の中間部は、上凸に窪んだ形状に形成されている。これにより、下面部36に対応する使用者の大腿部の部分へのクッション本体部10の据わりがよくなる。
【0041】
<第一腹部対応部、第一胸部対応部>
図3(d)に示すように、姿勢補助部材30は、使用者Mの上体の前側に対し、当該姿勢補助部材30の後側(後面部32)を向かい合わせた第一状態のときに、上体の腹部Maに対応する第一腹部対応部41と、第一状態のときに、上体の胸部Mbに対応する第一胸部対応部51とを有している。第一腹部対応部41は、後面部32の下部により構成されている。第一胸部対応部51は、後面部32の上部により構成されている。姿勢補助部材30においては、後面部32が上方に向かって前方に湾曲した形状に形成されることにより、第一腹部対応部41に対し第一胸部対応部51が前方に配される。
【0042】
<第二腹部対応部、第二胸部対応部>
また、
図3(e)に示すように、姿勢補助部材30は、第一状態(
図3(d)参照)のときの前後の向きを反転させて、使用者Mの上体の前側に対し、当該姿勢補助部材30の前側(前面部31)を向かい合わせた第二状態のときに、上体の腹部Maに対応する第二腹部対応部42と、第二状態のときに、上体の胸部Mbに対応する第二胸部対応部52とを有している。第二腹部対応部42は、前面部31の下部により構成されている。第二胸部対応部52は、上面部35と前面部31との交わりの角部により構成されている。姿勢補助部材30において、第二状態のときには、前面部31が上方に向かって後方に湾曲したような形状になる。これにより、第二腹部対応部42に対し第二胸部対応部52が後方に配される。
【0043】
姿勢補助部材30は、例えば、適度な硬さとクッション性を有するポリエチレン系樹脂から構成されており、前傾した上体からの荷重が作用する方向、すなわち後面部32の湾曲が大きくなる曲げ方向(
図3(d)中記号「R」矢印で示す曲げ方向)に弾性変形可能とされている。ここでは、姿勢補助部材30が、ポリエチレン系樹脂の一体成形で作製される態様を示したが、これに限定されるものではなく、ポリエチレン系樹脂からなる所定形状の板材を複数枚積層することで姿勢補助部材30を作製する態様もある。なお、姿勢補助部材30の構成材料として、ポリエチレン系樹脂等の樹脂に限定されるものではなく、軽量、且つ板状で弾性変形可能であれば、木材等であってもよい。
【0044】
<腕部>
図1に示すように、一対の腕部20は、細長く延在するようにクッション本体部10の両側に一体的に連設されている。クッション1Aにおいては、机と対をなす椅子に着席した使用者の腹部と机との間にクッション本体部10を挟み、且つ使用者の両脚の大腿部上にクッション本体部10を置いたときに、一対の腕部20を机上に載せることができるように、クッション本体部10に対する一対の腕部20の取付け高さ位置が設定されている。
【0045】
一対の腕部20のうち、一方の腕部20(20a)の先端部には、円形状の開口部60を有する円環状部61が形成され、他方の腕部20(20b)の先端部には、開口部60の開口面積よりも大きい断面積で弾性変形によりその開口部60に挿通可能な半球状部62が形成されている。
【0046】
<連結手段>
図4は、本発明の第一実施形態に係るクッションにおける一対の腕部の先端部同士が連結された状態を示し、(a)は後方から見た全体斜視図、(b)は平面図である。
図4(a)及び(b)に示すように、一方の腕部20(20a)の円環状部61と他方の腕部20(20b)の半球状部62とは、一対の腕部20の先端部同士を着脱可能に連結する連結手段65として機能する。すなわち、円環状部61の開口部60に半球状部62を押し込むように一対の腕部20を操作すると、半球状部62が弾性変形しながら開口部60を通り、開口部60を通過した半球状部62の部分が元の形状に戻り、当該部分と開口部60の周縁とが係合する。これにより、円環状部61に半球状部62が係止されて、一方の腕部20(20a)の先端部と他方の腕部20(20b)の先端部とが連結される。これとは逆に、円環状部61の開口部60に対し半球状部62を引き抜くように一対の腕部20を操作すると、円環状部61の開口部60に対し半球状部62が弾性変形しながら開口部60から抜き出る。これにより、円環状部61と半球状部62とが非係止状態とされて、一方の腕部20(20a)の先端部と他方の腕部20(20b)の先端部との連結が解除される。
【0047】
なお、本例では、円環状部61と半球状部62との係合によって連結する態様を示したが、これに限定されるものではなく、例えば、面ファスナーや、鍵ホックなどを用いて、一方の腕部20(20a)の先端部と他方の腕部20(20b)の先端部とを着脱可能に連結するようにしてもよい。
【0048】
<第一実施形態のクッションの使用例(1)>
図5は、本発明の第一実施形態に係るクッションの使用例(1)を示し、(a)は上体の起立状態図、(b)は上体の前傾状態図である。
図5(a)及び(b)において、使用者Mは、机70と対をなす椅子71に着席し、机70の上に設置されたPCのモニター72を見ながらキーボード73の操作を行っている。クッション1Aにおいて、クッション本体部10は、使用者Mと机70との間に挟まれるように、使用者Mの両脚の大腿部上に載置されている。また、
図5(a)及び(b)においては、使用者Mの上体の前側に対し、姿勢補助部材30の後側(後面部32)を向かい合わせた第一状態となるように、クッション本体部10の前後方向の向きが定められている。そして、一対の腕部20は、机70の上に載せられ、一対の腕部20の上に使用者Mの両腕の前腕が載せられている。
【0049】
図5(a)~(b)に示すように、上体を起立させた状態(
図5(a)参照)で着席していた使用者Mが、
図5(b)に示すように、上体を前方に傾けると、上体がある程度前傾した状態で第一胸部対応部51に被覆材2及びクッション材3(
図1参照)を介して上体が支持される。この際、後面部32の湾曲が大きくなる曲げ方向に姿勢補助部材30が弾性変形するため、上体が被覆材2及びクッション材3を介して第一胸部対応部51に押し付けられる際の衝撃を緩和することができる。
【0050】
図5(a)~(b)に示すように、ある程度の前傾姿勢が許容されることにより、楽な姿勢をとることができ、例えば、モニター72との微妙な距離の調整も行い易くなる。また、第一胸部対応部51に上体が支持されることにより、猫背とならないように上体の姿勢を保つことができる。さらに、前傾姿勢で上体が姿勢補助部材30の第一胸部対応部51に支持される際には、姿勢補助部材30の第一胸部対応部51と上体との間に被覆材2及びクッション材3(
図1参照)が介在されるので、第一胸部対応部51に上体が直接的に支持される場合よりも、ソフトな感触で上体が第一胸部対応部51に支持されることになり、心地の良い使用感を得ることができる。
【0051】
また、机70の上に設置されたPCのキーボード73の操作を行う際に、机70の上に載せた一対の腕部20の上に使用者Mの両腕の前腕や手首、肘等を載せることにより、両肩や両腕の緊張を緩和することができ、長時間のキーボード73の操作に伴う疲労を軽減することができる。
【0052】
<第一実施形態のクッションの使用例(2)>
図6は、本発明の第一実施形態に係るクッションの使用例(2)を示し、(a)は上体の起立状態図、(b)は上体の前傾状態図である。
図6(a)及び(b)においては、姿勢補助部材30が、第一状態(
図5(a)及び(b)参照)から、前後の向きを反転させて、使用者Mの上体の前側に対し、姿勢補助部材30の前側(前面部31)を向かい合わせた第二状態となるように、クッション本体部10の前後方向の向きが切り換えられている。それ以外については、上記の使用例(1)と同様である。
【0053】
図6(a)~(b)に示すように、上体を起立させた状態(
図6(a)参照)で着席していた使用者Mが、
図6(b)に示すように、上体を前方に傾けると、上体が僅かに前傾したところで第二胸部対応部52に被覆材2及びクッション材3(
図1参照)を介して上体が支持されることになる。
【0054】
図5(a)及び(b)に示すクッション1Aの使用例(1)、並びに
図6(a)及び(b)に示すクッション1Aの使用例(2)に示すように、姿勢補助部材30の前後の向きを変えて、言い換えればクッション1Aの前後の向きを変えて、姿勢補助部材30の第一状態と第二状態とを切り換えることにより、使用者Mの上体の前傾姿勢の許容範囲を二段階で調節することができる。
【0055】
<第一実施形態のクッションの使用例(3)>
図7は、本発明の第一実施形態に係るクッションの使用例(3)を示し、(a)は上体の起立状態図、(b)は上体の前傾状態図である。
図7(a)及び(b)に示すように、姿勢補助部材30が第一状態となるように、使用者Mの大腿部上に載置したクッション本体部10を使用者Mの腹部に当接させ、一対の腕部20を使用者Mの腰部に巻き掛けて連結手段65により一対の腕部20の先端部同士を連結すれば、クッション本体部10と、連結された一対の腕部20とによって画定される空間(
図4(b)中記号「S」で示す一点鎖線で囲まれる空間)に使用者Mの腰腹部が入るようにクッション1Aを使用者Mに装着することができる。これにより、使用者Mからクッション1Aが不意に外れたりしないため、使用者Mの上体をクッション本体部10で確実に支持することができる。
【0056】
<第一実施形態のクッションの使用例(4)>
図8は、本発明の第一実施形態に係るクッションの使用例(4)を示し、(a)は上体の起立状態図、(b)は上体の前傾状態図である。
図8(a)及び(b)に示すように、姿勢補助部材30が第二状態となるように、使用者Mの大腿部上に載置したクッション本体部10を使用者Mの腹部に当接させ、一対の腕部20を使用者Mの腰部に巻き掛けて連結手段65により一対の腕部20の先端部同士を連結すれば、クッション1Aの使用例(3)と同様に、使用者Mからクッション1Aが不意に外れたりしないため、使用者Mの上体をクッション本体部10で確実に支持することができる。
【0057】
〔第二実施形態〕
図9は、本発明の第二実施形態に係るクッションを一部破断して示す全体斜視図である。なお、第二実施形態において、第一実施形態と同一又は同様のものについては、図に同一符号を付すに留めてその詳細な説明を省略することとし、以下においては、第二実施形態に特有の部分を中心に説明することとする。
【0058】
図9に示す第二実施形態のクッション1Bにおいて、クッション本体部10は、第一実施形態における姿勢補助部材30とは形状が異なる姿勢補助部材80を内包しており、姿勢補助部材80は、クッション材3の内部に配設されている。
【0059】
<姿勢補助部材>
図10は、本発明の第二実施形態に係る姿勢補助部材を示し、(a)は前方から見た全体斜視図、(b)は後方から見た全体斜視図である。
図10(a)及び(b)に示すように、姿勢補助部材80は、上部の一部が斜めにカットされたような先細柱状に形成されており、着座姿勢の人の上体を前側から支持する機能を有している。姿勢補助部材80の上部は、上方に進むに従って左右方向に次第に広がるような末広がり形状に形成されている。姿勢補助部材80の下部は、下方に進むに従って左右方向に次第に広がるような、上部よりも左右方向の広がり幅が大きい末広がり形状に形成されている。姿勢補助部材80の上下方向中間部は、括れた形状に形成されている。
【0060】
図11は、本発明の第二実施形態に係る姿勢補助部材を示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は底面図、(d)は右側面図、(e)は左側面図、(f)は背面図である。
図11(a)~(f)に示すように、姿勢補助部材80は、前後方向に配される前面部81及び後面部82と、左右方向に配される一対の側面部83,84と、上下方向に配される上面部85及び下面部86とを有している。
【0061】
[前面部及び後面部]
図11(d)に示すように、前面部81は、鉛直方向に真っ直ぐに延びる平坦な形状に形成されている。また、後面部82は、鉛直方向に延びる鉛直面と、上方に向って前方に傾斜する傾斜面とが連設されてなり、上方に向かって前方に屈曲したような形状に形成されている。
【0062】
[一対の側面部]
一対の側面部83,84は、上下方向の中間部が括れた形状に形成されている。一対の側面部83,84と上面部35との交わりの両角部には、丸みを持たせている。これにより、使用者Mの上体が被覆材2及びクッション材3を介して後述する第一胸部対応部101に押し付けられた前傾姿勢の際に、一対の側面部83,84と上面部85との交わりの両角部から使用者の上体に対し応力が集中しないようにされている。また、一対の側面部83,84と下面部86との交わりの両角部にも、丸みを持たせている。これにより、上記前傾姿勢の際に、一対の側面部83,84と下面部86との交わりの両角部から使用者Mの大腿部に対し応力が集中しないようにされている。
【0063】
[上面部]
上面部85は、前面部81と後面部82とが上方で交わる角部に形成されており、丸みを持たせた形状に形成されている。上面部85の長手方向(左右方向)の中間部は、下凸に窪んだ形状に形成されている。これにより、使用者Mの上体が被覆材2及びクッション材3を介して後述する第一胸部対応部101に押し付けられた前傾姿勢の際に、上面部85に対応する使用者Mの上体の部分へのクッション本体部10の接触の感触がよくなる。
【0064】
[下面部]
下面部86は、当該下面部86に対し垂直をなす方向から見た形状が前後方向の長さよりも左右方向の長さが大きい長方形状に形成されている。下面部86の長手方向(左右方向)の中間部は、上凸に窪んだ形状に形成されている。これにより、下面部36に対応する使用者Mの大腿部の部分へのクッション本体部10の据わりがよくなる。
【0065】
<第一腹部対応部、第一胸部対応部>
図11(d)に示すように、姿勢補助部材80は、使用者Mの上体の前側に対し、当該姿勢補助部材80の後側(後面部82)を向かい合わせた第一状態のときに、上体の腹部Maに対応する第一腹部対応部91と、第一状態のときに、上体の胸部Mbに対応する第一胸部対応部101とを有している。第一腹部対応部91は、後面部82の下部の鉛直面により構成されている。第一胸部対応部101は、後面部82の上部の傾斜面により構成されている。姿勢補助部材80においては、後面部82が上方に向かって前方に屈曲した形状に形成されることにより、第一腹部対応部91に対し第一胸部対応部101が前方に配されることになる。
【0066】
<第二腹部対応部、第二胸部対応部>
また、
図11(e)に示すように、姿勢補助部材80は、第一状態(
図11(d)参照)のときの前後の向きを反転させて、使用者Mの上体の前側に対し、当該姿勢補助部材80の前側(前面部81)を向かい合わせた第二状態のときに、上体の腹部Maに対応する第二腹部対応部92と、第二状態のときに、上体の胸部Mbに対応する第二胸部対応部102とを有している。第二腹部対応部92は、前面部81の下部により構成されている。第二胸部対応部102は、前面部81の上部により構成されている。姿勢補助部材30においては、前面部32が鉛直方向に延びる平坦な形状に形成されることにより、第二腹部対応部92と第二胸部対応部102との前後方向の相対位置が一致される。
【0067】
<第二実施形態のクッションの使用例(1)>
図12は、本発明の第二実施形態に係るクッションの使用例(1)を示し、(a)は上体の起立状態図、(b)は上体の前傾状態図である。
図12(a)及び(b)において、使用者Mは、机70と対をなす椅子71に着席し、机70の上に設置されたPCのモニター72を見ながらキーボード73の操作を行っている。クッション1Bにおいて、クッション本体部10は、使用者Mと机70との間に挟まれるように、使用者Mの両脚の大腿部上に載置されている。また、
図12(a)及び(b)においては、使用者Mの上体の前側に対し、姿勢補助部材80の後側(後面部82)を向かい合わせた第一状態となるように、クッション本体部10の前後方向の向きが定められている。そして、一対の腕部20は、机70の上に載せられ、一対の腕部20の上に使用者Mの両腕の前腕が載せられている。
【0068】
図12(a)~(b)に示すように、上体を起立させた状態(
図12(a)参照)で着席していた使用者Mが、
図12(b)に示すように、上体を前方に傾けると、上体がある程度前傾した状態で第一胸部対応部101に被覆材2及びクッション材3(
図1参照)を介して上体が支持される。この際、後面部82の屈曲が大きくなる曲げ方向に姿勢補助部材80が弾性変形するため、上体が被覆材2及びクッション材3を介して第一胸部対応部101に押し付けられる際の衝撃を緩和することができる。
【0069】
図12(a)~(b)に示すように、ある程度の前傾姿勢が許容されることにより、楽な姿勢をとることができ、例えば、モニター72との微妙な距離の調整も行い易くなる。また、第一胸部対応部101に上体が支持されることにより、猫背とならないように上体の姿勢を保つことができる。さらに、前傾姿勢で上体が姿勢補助部材80の第一胸部対応部101に支持される際には、姿勢補助部材80の第一胸部対応部101と上体との間に被覆材2及びクッション材3(
図1参照)が介在されるので、第一胸部対応部101に上体が直接的に支持される場合よりも、ソフトな感触で上体が第一胸部対応部101に支持されることになり、心地の良い使用感を得ることができる。
【0070】
また、机70の上に設置されたPCのキーボード73の操作を行う際に、机70の上に載せた一対の腕部20の上に使用者Mの両腕の前腕や手首、肘等を載せることにより、両肩や両腕の緊張を緩和することができ、長時間のキーボード73の操作に伴う疲労を軽減することができる。
【0071】
<第二実施形態のクッションの使用例(2)>
図13は、本発明の第二実施形態に係るクッションの使用例(2)を示し、(a)は上体の起立状態図、(b)は上体の前傾状態図である。
図13(a)及び(b)においては、姿勢補助部材80が、第一状態(
図12(a)及び(b)参照)から、前後の向きを反転させて、使用者Mの上体の前側に対し、姿勢補助部材80の前側(前面部81)を向かい合わせた第二状態となるように、クッション本体部10の前後方向の向きが切り換えられている。それ以外については、上記の使用例(1)と同様である。
【0072】
図13(a)~(b)に示すように、上体を起立させた状態(
図13(a)参照)で着席していた使用者Mが、
図13(b)に示すように、上体を前方に傾けると、上体が僅かに前傾したところで第二胸部対応部102に被覆材2及びクッション材3(
図1参照)を介して上体が支持されることになる。
【0073】
上記の
図12(a)及び(b)に示すクッション1Bの使用例(1)、並びに
図13(a)及び(b)に示すクッション1Bの使用例(2)に示すように、姿勢補助部材80の前後の向きを変えて、言い換えればクッション1Bの前後の向きを変えて、姿勢補助部材80の第一状態と第二状態とを切り換えることにより、使用者Mの上体の前傾姿勢の許容範囲を二段階で調節することができる。
【0074】
<第二実施形態のクッションの使用例(3)>
図14は、本発明の第二実施形態に係るクッションの使用例(3)を示し、(a)は上体の起立状態図、(b)は上体の前傾状態図である。
図14(a)及び(b)に示すように、姿勢補助部材80が第一状態となるように、使用者Mの大腿部上に載置したクッション本体部10を使用者Mの腹部に当接させ、一対の腕部20を使用者Mの腰部に巻き掛けて連結手段65により一対の腕部20の先端部同士を連結すれば、クッション本体部10と、連結された一対の腕部20とによって画定される空間(
図4(b)中記号「S」で示す一点鎖線で囲まれる空間)に使用者Mの腰腹部が入るようにクッション1Bを使用者Mに装着することができる。これにより、使用者Mからクッション1Bが不意に外れたりしないため、使用者Mの上体をクッション本体部10で確実に支持することができる。
【0075】
<第二実施形態のクッションの使用例(4)>
図15は、本発明の第二実施形態に係るクッションの使用例(4)を示し、(a)は上体の起立状態図、(b)は上体の前傾状態図である。
図15(a)及び(b)に示すように、姿勢補助部材80が第二状態となるように、使用者Mの大腿部上に載置したクッション本体部10を使用者Mの腹部に当接させ、一対の腕部20を使用者Mの腰部に巻き掛けて連結手段65により一対の腕部20の先端部同士を連結すれば、クッション1Bの使用例(3)と同様に、使用者Mからクッション1Bが不意に外れたりしないため、使用者Mの上体をクッション本体部10で確実に支持することができる。
【0076】
以上、本発明の姿勢補助部材、及びクッションについて、複数の実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【0077】
上記実施形態では、被覆材2の内部にクッション材3が詰められてなるクッション1A,1Bにおいて、姿勢補助部材30,80をクッション材3の内部に配設して使用する例を示したが、これに限定されるものではなく、姿勢補助部材30,80を単独で使用し、姿勢補助部材30,80を、使用者Mと机70との間に挟むように、使用者Mの両脚の大腿部上に載置して、使用者Mの上体を前側から直接的に支持する態様もあり得る。この態様では、姿勢補助部材30,80が第一状態において、使用者Mが上体を前方に傾けると、上体がある程度前傾したところで第一胸部対応部51,101に直接的に支持される。従って、楽な姿勢であっても猫背とならないように上体の姿勢を保つことができる。また、姿勢補助部材30,80が第二状態において、使用者Mが上体を前方に傾けると、上体が僅かに前傾したところで第二胸部対応部52,102に支持されることになり、ほぼ起立状態に上体の姿勢を保つことができる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明の姿勢補助部材、及びクッションは、楽な姿勢であっても猫背とならないように上体の姿勢を保つ用途において利用可能である。
【符号の説明】
【0079】
1A,1B クッション
2 被覆材
3 クッション材
10 クッション本体部
20 腕部
30 姿勢補助部材
41 第一腹部対応部
42 第二腹部対応部
51 第一胸部対応部
52 第二胸部対応部
65 連結手段
80 姿勢補助部材
91 第一腹部対応部
92 第二腹部対応部
101 第一胸部対応部
102 第二胸部対応部