(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022024862
(43)【公開日】2022-02-09
(54)【発明の名称】処理装置及び処理袋
(51)【国際特許分類】
C02F 1/52 20060101AFI20220202BHJP
【FI】
C02F1/52 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020127684
(22)【出願日】2020-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】320006771
【氏名又は名称】樋口 進也
(74)【代理人】
【識別番号】100101340
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 英一
(74)【代理人】
【識別番号】100205730
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 重輝
(74)【代理人】
【識別番号】100213551
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 智貴
(72)【発明者】
【氏名】伊澤 義信
【テーマコード(参考)】
4D015
【Fターム(参考)】
4D015BA21
4D015BA28
4D015CA14
4D015CA20
4D015DA04
4D015DC08
4D015EA01
4D015EA14
4D015FA22
(57)【要約】 (修正有)
【課題】水処理や反応、混合、加温、保温等の各種処理が安定して迅速に行える処理装置及びそれに用いる処理袋の提供。
【解決手段】不透水性で可撓性を有するシートによって密閉状に形成され満液状態となったときに横型円筒形状であり水槽2内に貯留された漲水300に浸漬される処理袋本体10と、処理袋本体内に配置され処理対象液及び処理液の供給排出路となる中空シャフト11と、中空シャフトに支持されて回転操作及び撹拌が可能な形状保持枠13とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
不透水性で可撓性を有するシートによって密閉状に形成され、常時水位が保たれる漲水が貯留された水槽内に浸漬される横長形状の処理袋本体と、
前記処理袋本体の内部に配置され、前記処理袋本体の内部へ供給される処理対象液及び前記処理袋本体から外部へ排出される処理液の供給排出路となる中空シャフトと、
前記中空シャフトに支持されて前記処理袋本体の内部に配置され、撹拌及び回転操作可能である形状保持枠とを備え、
前記処理袋本体は、満液状態となったときに横型円筒形状であり、
且つ前記水槽内は、前記処理袋本体の内側空間と前記漲水が貯留される外側空間とに区画されていることを特徴とする処理装置。
【請求項2】
前記処理袋本体内から前記処理液を排出した際の液体減少分に相当する漲水を前記水槽内に供給する漲水供給手段を有することを特徴とする請求項1記載の処理装置。
【請求項3】
前記水槽に、前記処理袋本体内に処理対象液を供給した際の液体増加分に相当する漲水を排出するオーバーフロー口を有することを特徴とする請求項1又は2記載の処理装置。
【請求項4】
前記中空シャフトの一端部に、前記処理袋本体内の処理液を排出する処理液流出管及び汚泥流出管が接続されていることを特徴とする請求項1~3の何れかに記載の処理装置。
【請求項5】
不透水性で可撓性を有するシートによって密閉状に形成され満液状態となったときに円筒形状である処理袋本体と、
前記処理袋本体の内部に配置され、前記処理袋本体の内部へ供給される処理対象液及び前記処理袋本体から外部へ排出される処理液の供給排出路となる中空シャフトと、
前記中空シャフトに支持されて前記処理袋本体の内部に配置され、4枚の撹拌板を有し、回転操作可能である形状保持枠とを有し、
常時水位が保たれる漲水に横長にさせて浸漬させて用いる処理袋。
【請求項6】
前記中空シャフトは、両端部が前記処理袋本体の外側に突出しており、一端部が供給排出口となっていることを特徴とする請求項5記載の処理袋。
【請求項7】
前記処理袋本体内が満液状態となったことを検出する検出手段を有することを特徴とする請求項6記載の処理袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は安定した迅速な処理が可能な処理装置及び処理袋に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水処理などの各種の処理を行うには、大掛かりな処理施設及びそれに関連する施設を設置する必要があり、広大な設備用地を必要としていた。
【0003】
本発明者は、先に、水処理装置に関して、設置面積を大幅に削減できる画期的な技術を提案している(特許文献1)。
【0004】
特許文献1は、水槽を上下2室に区画し、下室に水位調整用水を供給・排出して、仕切り壁を上下動させて、上室内で、処理対象水を出し入れして処理する技術を開示する。
【0005】
この技術は画期的な技術であるが、仕切り壁等の可動部材の耐久性をより向上させる点で、解決すべき課題が残されていた。
【0006】
なお、特許文献2には、非透水性で可撓性を有する処理袋が開示されているが、その処理袋をどのように使用するかについて開示がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3492300号公報
【特許文献2】特許第2625590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、設置面積を大幅に削減できるだけでなく、可動部材の耐久性をより向上させ、迅速な処理が行える処理装置及びそれに用いる処理袋を提供することを課題とする。
【0009】
また、本発明は、水処理や反応、混合、加温、保温等の各種処理に適用できる処理装置及びそれに用いる処理袋を提供することを課題とする。
【0010】
本発明の他の課題は、以下の記載により明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題は、以下の各発明によって解決される。
【0012】
請求項1記載の発明は、
不透水性で可撓性を有するシートによって密閉状に形成され、常時水位が保たれる漲水が貯留された水槽内に浸漬される横長形状の処理袋本体と、
前記処理袋本体の内部に配置され、前記処理袋本体の内部へ供給される処理対象液及び前記処理袋本体から外部へ排出される処理液の供給排出路となる中空シャフトと、
前記中空シャフトに支持されて前記処理袋本体の内部に配置され、撹拌及び回転操作可能である形状保持枠とを備え、
前記処理袋本体は、満液状態となったときに横型円筒形状であり、
且つ前記水槽内は、前記処理袋本体の内側空間と前記漲水が貯留される外側空間とに区画されていることを特徴とする処理装置である。
請求項2記載の発明は、
前記処理袋本体内から前記処理液を排出した際の液体減少分に相当する漲水を前記水槽内に供給する漲水供給手段を有することを特徴とする請求項1記載の処理装置である。
請求項3記載の発明は、
前記水槽に、前記処理袋本体内に処理対象液を供給した際の液体増加分に相当する漲水を排出するオーバーフロー口を有することを特徴とする請求項1又は2記載の処理装置である。
請求項4記載の発明は、
前記中空シャフトの一端部に、前記処理袋本体内の処理液を排出する処理液流出管及び汚泥流出管が接続されていることを特徴とする請求項1~3の何れかに記載の処理装置である。
請求項5記載の発明は、
不透水性で可撓性を有するシートによって密閉状に形成され満液状態となったときに円筒形状である処理袋本体と、
前記処理袋本体の内部に配置され、前記処理袋本体の内部へ供給される処理対象液及び前記処理袋本体から外部へ排出される処理液の供給排出路となる中空シャフトと、
前記中空シャフトに支持されて前記処理袋本体の内部に配置され、4枚の撹拌板を有し、回転操作可能である形状保持枠とを有し、
常時水位が保たれる漲水に横長にさせて浸漬させて用いる処理袋。
請求項6記載の発明は、
前記中空シャフトは、両端部が前記処理袋本体の外側に突出しており、一端部が供給排出口となっていることを特徴とする請求項5記載の処理袋である。
請求項7記載の発明は、
前記処理袋本体内が満液状態となったことを検出する検出手段を有することを特徴とする請求項6記載の処理袋である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、設置面積を大幅に削減できるだけでなく、可動部材の耐久性をより向上させることができ、迅速な処理が行える処理装置及びそれに用いる処理袋を提供することができる。
【0014】
また、本発明によれば、水処理や反応、混合、加温、保温等の各種処理に適用できる処理装置及びそれに用いる処理袋を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】水処理装置の第1の実施形態を示す概略構成図
【
図4】第1の実施形態に係る水処理装置による処理対象液の処理方法を説明する図
【
図5】第1の実施形態に係る水処理装置による処理対象液の処理方法を説明する図
【
図6】第1の実施形態に係る水処理装置による処理対象液の処理方法を説明する図
【
図7】第1の実施形態に係る水処理装置による処理対象液の処理方法を説明する図
【
図8】水処理装置の第2の実施形態を示す概略構成図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0017】
図1は、水処理装置の第1の実施形態を示す概略構成図である。
【0018】
水処理装置T1は、
図1に示すように、処理袋1と、この処理袋1を内部に収容する水槽2とによって構成されている。
【0019】
処理袋1は、漲水300が貯留された水槽2内に保持され、処理袋本体10の全体が水面WLよりも下位となるように漲水300中に浸漬されている。このため、水槽2の内部は、処理袋本体10の内側空間10bと漲水300が貯留される外側空間2aとに区画されている。
【0020】
水槽2は、例えばステンレス、FRP等によって、処理袋本体10の容積よりも大きな内容積を有する箱状、タンク状等に形成されている。水槽2の上面は開放されている。
【0021】
水処理装置T1は、可撓性を有する処理袋1を水槽2の漲水300中に浸漬させているため、処理袋1を自立させるための枠体や筐体等は不要であり、設置スペースを取らず、後述するように安価で構造簡単な処理袋1を用いて設備コストを大幅に低減できる利点を生かすことができる。
【0022】
次に、処理袋1の一例について
図2を用いて説明する。
図2は、処理袋を示す概略構成図である。
【0023】
処理袋1は、
図2に示すように、処理袋本体10の内部で各種の液体の処理を行うために膨張・収縮する可動部材としての袋状容器である。ここで、本発明における処理とは、液体の混合、攪拌、凝集、反応、加熱、冷却、保温の少なくともいずれかを行うことである。
【0024】
本実施形態に示す処理袋1は、内部で処理対象液を凝集剤によって凝集攪拌、沈降分離して清明な処理水を取り出す水処理に好適に使用することのできる攪拌機能付きの処理袋1を例示している。
【0025】
この処理袋1は、処理袋本体10内に、中空シャフト11及び形状保持枠13を有して構成されている。
【0026】
処理袋本体10は、不透水性で可撓性を有するシートによって密閉状に形成され、満液状態となったときに横長形状となるように形成されている。
前記処理袋本体は、前述のように、横長形状を成しており、処理袋本体内部が満液状態となったときに横型円筒形状であることを特徴とする。後述するが、竪型の処理袋と比較すると、横型円筒形状の方が、凝集フロックの沈降速度がかなり上昇することが本発明者によって確認されている。
【0027】
横型円筒形状というのは、漲水に浸漬している状態で、水平方向に長く延びている状態にあり、断面形状は円形になるものである。円筒の径よりも円筒の長手方向の長さが、1.2倍~2.5倍程度が好ましい。
【0028】
処理袋本体10の円筒形状の両端面は閉塞されている。不透水性で可撓性を有するシートとしては、例えば塩化ビニル、ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、ウレタン等の軟質合成樹脂シートやゴムシート等のいずれか1種を使用した単層シート又は2種以上を積層した積層シート、合成樹脂シートやゴムシートと布帛とを積層した複合シート等を用いることができる。
【0029】
中空シャフト11は、好ましくは、例えばステンレス管、FRP管等の剛性を有する管材によって構成される。中空シャフト11の断面視形状は特に問わず、円形状、方形状、その他、六角形等の多角形状等とすることができる。この中空シャフト11は、処理袋本体10の中心軸上に、水平に配置されている。中空シャフト11は、両端部分を処理袋本体10の両端面部10c、10dの中央部を貫通させて外方に臨ませている。処理袋本体10は、両端面部10c、10dの中央部において中空シャフト11の外面部に固着されており、中空シャフト11により保持されている。処理袋本体10の内部は、密閉されている。
【0030】
本発明において、前記処理袋本体10の内部には、撹拌及び回転操作可能である形状保持枠を備える。形状保持枠は、撹拌及び回転操作可能な機能を有するものであるが、かかる機能を発揮するには、形状保持枠の外縁を延出させてそれ自体に撹拌機能を担保させてもよいし、あるいは撹拌板を形状保持枠に固着して撹拌機能を担保させてもよい。
【0031】
図3は、形状保持枠を示す概略斜視図である。
形状保持枠13は、ポリカーボネート板、ステンレス板、FRP板等の剛性を有する板材によって構成される。形状保持枠13は、
図2及び
図3に示すように、処理袋本体10の一端面部10cの近傍から他端面部10dの近傍に亘る枠形状に構成されている。形状保持枠13は、中空シャフト11の両端側部分に固定された略長方形の一対の側板13b、13cと、これら側板13b、13cの両端部同士を繋いで枠形状を構成する一対の梁板13d、13eとによって構成されている。一対の側板13b、13cは、中央部において中空シャフト11を貫通させており、この中空シャフト11の外面部に固定されている。一対の梁板13d、13eは、側板13b、13cよりも幅広となっている。
【0032】
形状保持枠13の一対の梁板13d、13eには、計4枚の攪拌板13aが設けられている。各撹拌板13aは、平板状の部材であって、各梁板13d、13eの両側縁部より、処理袋本体10の中心軸に向けて、すなわち、中空シャフト11に向けて、立設されている。各撹拌板13aは、一対の側板13b、13c間に亘る長さ、すなわち、一対の梁板13d、13eに略等しい長さを有している。各撹拌板13aは、各梁板13d、13eと中空シャフト11との略中間位置に至る幅を有している。各撹拌板13aは、各梁板13d、13eに一体的に曲げ加工により形成してもよいし、各梁板13d、13eとは別体に形成して各梁板13d、13eに取り付けてもよい。
【0033】
中空シャフト11の一端部は、
図1及び
図2に示すように、液体の供給排出口12となっている。この中空シャフト11の一端部は、スイベルジョイント12aを介して、水槽2の外方に突出された供給排出管14に回転可能に接続されている。中空シャフト11は、供給排出管14に対して軸回りに回転可能であって、供給排出管14内との間で液体の供給及び排出が可能である。
【0034】
中空シャフト11の他端側は、水槽2の外壁部に設けられたロータリージョイント12bによって回転可能に支持され、水槽2の外方に突出されている。水槽2の外面部には、
図1に示すように、中空シャフト11の他端側に位置して、モータ19が設置されている。このモータ19は、中空シャフト11と共に、形状保持枠13及び攪拌板13aを軸回りに回転させる。なお、ロータリージョイント12bは、スイベルジョイントとしてもよい。
【0035】
なお、中空シャフト11の回転は、モータ19ではなく、その他種々の回転駆動動力(燃焼エンジンや、水力、風力などの自然力も含む)によって行ってもよく、動物(牛馬など)や手動(人力)によって行ってもよい。
【0036】
中空シャフト11内は、
図2に示すように、中央部付近がフランジ11aによって閉蓋されている。中空シャフト11内は、供給排出口12からフランジ11aまでが供給排出路11bとなっている。この供給排出路11bは、フランジ11aの近傍において、供給排出ノズル11cに連通されている。供給排出ノズル11cは、中空シャフト11に対して略垂直に立設され、形状保持枠13の梁板13eに向けて延在されている。供給排出ノズル11cの先端部分は、梁板13eの近傍において、T字型に分岐され、2方向の吐出吸入口11d、11dを有している。
【0037】
供給排出ノズル11cは、形状保持枠13の梁板13eに向けて延在されているので、処理袋本体10が収縮して萎むときに、処理袋本体10の内面に接触することがなく、処理袋本体10の収縮を阻害することがない。
【0038】
供給排出管14から供給された液体は、供給排出路11b及び供給排出ノズル11cを経て、吐出吸入口11d、11dから処理袋本体10内に吐出される。また、処理袋本体10内の液体は、吐出吸入口11d、11dから吸入され、供給排出ノズル11c及び供給排出路11bを経て、供給排出管14に排出される。
【0039】
供給排出管14は、供給管14A及び排出管14Bに分岐されている。供給管14Aは、不図示の制御手段によって開閉制御される供給弁15Aによって開閉可能とされている。排出管14Bは、制御手段によって開閉制御される排出弁15Bによって開閉可能とされている。
【0040】
排出管14Bからは、
図1に示すように、排出弁15Bが開放されているときに、排出ポンプ18により、処理袋本体10内の液体が排出される。排出管14Bには、排出管14B内を流れる液体の濁度を計測する濁度センサ17が設けられている。
【0041】
濁度センサ17及び排出ポンプ18を経た排出管14Bは、水槽2の上面まで延在された処理液流出管14Cに、開閉弁15Cを介して接続されている。したがって、処理袋本体10の内側空間10bは、排出管14B及び処理液流出管14Cによって、水槽2内の処理袋本体10の外側空間2aに処理水を供給できる。また、排出管14Bは、汚泥排出管14Dに、開閉弁16を介して接続されている。開閉弁15C、16、排出ポンプ18は、いずれも不図示の制御手段によって制御される。濁度センサ17の検出値は、排出弁15B及び開閉弁15C、16の制御のために制御手段に送られる。
【0042】
処理袋1には、処理袋本体10内が満液状態となったことを検出する検出手段を有することが好ましい。検出手段としては、処理袋本体10内の圧力を検出する圧力センサを用いることができる。処理袋本体10内に液体が供給されると、処理袋本体10が次第に膨張して内部の圧力が上昇する。圧力センサは、この処理袋本体10内の圧力を検出して制御手段に送り、制御手段が予め設定された所定圧力となったことを検出した時に、供給弁15Aを閉じることで、処理袋本体10の破裂、損傷を未然に防ぐことができる。
【0043】
また、検出手段としては、処理袋本体10自体の膨らみ具合を直接検出するものであってもよい。例えば処理袋本体10の周囲に紐又はベルトを巻き付け、処理袋本体10内に液体が供給されて膨張し、外径が伸張した時の紐又はベルトの張り具合を張力センサ等の検出手段を用いて検出することで、処理袋本体10内が満液状態となったことを検出することができる。この場合も、上記と同様に、張力センサの検出値に基づいて、制御手段によって供給弁15Aを閉じることで、処理袋本体10の破裂、損傷を未然に防ぐことができる。
【0044】
なお、処理袋本体10の過度の膨張を防止するため、処理袋本体10の周囲には、適宜本数の膨れ防止用のテープ又はロープを架け渡して固定し、満液状態で膨張した処理袋本体10の形状を維持させるようにすることも好ましい。
【0045】
処理袋1には、脱気管20を設けて、満液状態に至る過程で処理袋本体10内に空気がある場合に、この空気を抜くようにしてもよい。脱気管20は、供給排出ノズル11cの先端部に形成した脱気口20aから、供給排出路11b内及び供給排出管14内を経て、処理袋1の外方まで延在させる。脱気口20aは、形状保持枠13の梁板13eとの間に空気の通る間隔を維持させる。脱気管20の外方への出口近傍には、脱気バルブ20bを設ける。
【0046】
このように脱気管20を設けた場合には、処理袋本体10内の液体と空気とをセンサによって検知し、脱気バルブ20bを開放することによって脱気を行うことができる。脱気が完了したときには、脱気バルブ20bを閉じる。
【0047】
図4は、第1の実施形態に係る水処理装置による処理対象液の処理方法を説明する図である。
【0048】
また、水処理装置T1は、
図4に示すように、水槽2内に漲水300を供給するための漲水貯留槽3を備えることが好ましい。漲水貯留槽3は、水槽2に並置される。この場合には、水槽2の上部側面には、漲水300の水面WLの位置に対応してオーバーフロー口21を設ける。漲水貯留槽3の内部は、オーバーフロー管21Aによって、水槽2のオーバーフロー口21と接続される。
【0049】
漲水貯留槽3には、供給ポンプ31が設けられている。供給ポンプ31は、内部の漲水を漲水供給管32によって水槽2の外側空間2aに供給する。漲水供給管32は開閉弁33を有している。この供給ポンプ31の駆動は、不図示の制御手段によって制御される。
【0050】
次に、この水処理装置T1を用いて処理対象液の処理を行う方法について、
図4~
図7を用いて説明する。
図4~
図7は、第1の実施形態に係る水処理装置による処理対象液の処理方法を説明する図である。
【0051】
最初に、
図4に示すように、供給弁15Aを開放し、排出弁15Bを閉じた状態とし、供給管14A及び供給排出管14(
図1参照)を通して処理袋本体10内に処理対象液200を供給して内部を処理対象液で満たす。水槽2内は漲水300で満たされている。処理袋1は漲水300中に浸漬されているため、処理袋本体10内を処理対象液で満液にしてもバランスが崩れる心配はない。
【0052】
処理袋本体10内に処理対象液を注入する際、処理袋本体10の破裂を防止するため、前述した処理袋本体10内が満液状態となったことを検出する検出手段が処理袋本体10の満液状態を検出し、制御手段によって供給弁15Aが閉制御される。また、このような検出手段に代えて、水槽2の内側面等に、処理袋本体10が膨らんで満液状態となった時に接触して感知する検出センサを設け、この検出センサの検出信号に基づいて制御手段が供給弁15Aを閉制御するようにしてもよい。
【0053】
処理袋本体10内が処理対象液で満たされた後、処理対象液中に凝集剤を混入させ、処理袋本体10及び形状保持枠13を回転させて攪拌板13aを回転させることで凝集剤と処理対象液とを反応させ、所定時間に亘って凝集攪拌処理を行う。凝集剤は、供給管14Aを通して混入させてもよいし、中空シャフト11に凝集剤投入用の蓋付きの開口を設けておき、凝集剤の投入時のみ蓋をあけて投入してもよい。
【0054】
凝集攪拌処理の後、
図5に示すように、処理袋本体10及び形状保持枠13を停止させて静止状態とする。このとき、中空シャフト11は、供給排出ノズル11c(
図1参照)が中空シャフト11から上方に延在される位置で停止される。この静止状態においては、処理袋本体10内の汚泥201が沈降して上澄みの処理水202と分離される。
【0055】
沈降分離の後、
図6に示すように、排出弁15B及び開閉弁15Cを開放し、排出ポンプ18を駆動させて、処理袋本体10内の清明な上澄みの処理水202を排出管14Bから外部に排出する。これにより処理袋本体10は徐々に収縮して萎んでゆく。
【0056】
処理水202は、排出管14Bから処理液流出管14Cを通って水槽2内の外側空間2aに流入し、新たに漲水300となる。すなわち、水槽2内の水は、処理袋本体10内の処理水202が排出されて減少するが、その排出された処理水202がそのまま水槽2内に戻され、水槽2内の外側空間2aに移動しただけであるため、水槽2内の漲水300の水位は常時一定に保たれ、水槽2自体の自重バランスに変化は生じない。
【0057】
また、排出ポンプ18は、漲水300の水面WL以下の供給排出管14から水槽2の外側空間2aに処理水202を移動させるだけでよいため、強力なポンプは必要なく、コストを大幅に低減できる。
【0058】
処理水202の排出時、濁度センサ17は排出管14B内を流れる液体の濁度を監視している。処理袋本体10内の処理水202が排出し終わるころになると、汚泥201が混入するようになって濁度が変化する。このとき、
図7に示すように、制御手段によって処理液流出管14Cへの開閉弁15Cを閉じ、汚泥排出管14Dへの開閉弁16を開いて、汚泥排出管14Dから沈降した汚泥201を外部に排出する。したがって、水槽2内の外側空間2aには、清明な処理水202のみを漲水300として貯留させることができる。また、汚泥排出管14Dは、排出管14Bから分岐されているので、汚泥201の排出も供給排出口12から行うことができ、処理袋本体10に汚泥排出用の開口を別途設けなくても済む。
【0059】
このとき、汚泥201を排出した分の漲水300の不足分を補うため、漲水貯留槽3から漲水供給管32を介して水槽2内に漲水300が補給される。これにより水槽2内の水位は一定に保たれる。
【0060】
次の処理対象液を処理するため、
図4に示すように、再び供給弁15Aを開放して処理袋本体10内に処理対象液200を供給すると、それまで収縮状態にあった処理袋本体10は徐々に膨張する。このとき、供給された処理対象液200による液体増加分の水槽2内の漲水300が、オーバーフロー口21からオーバーフロー管21Aを通って漲水貯留槽3側に流出する。漲水貯留槽3内の余剰の漲水300は、漲水排出口34から外部に設けられた不図示の処理水タンク等に供給される。
【0061】
処理対象液を供給する際には、処理袋本体10内に、先に処理した際に沈降した汚泥201を若干残留させておくと、凝集剤の投入量を低減することができ、ランニングコストの低減化を図ることができるために好ましい。
【0062】
この水処理装置T1は、処理袋1を水槽2内に浸漬させるだけで処理対象液を処理するための処理室を構成できる。このため、処理室を形成するために水槽2内に可撓性シート等によって仕切り壁を構築する必要がない。したがって、水槽2は単なる容器を使用することができ、構造簡単で安価な水処理装置を構築することができる。
【0063】
しかも、水槽2内の水位を一定に保つためのポンプを設ける必要がないので、それだけ構造を簡素化でき、コストも低減することができる。
【0064】
また、処理を行う処理袋本体10は、水槽2内の漲水300に浸漬されるため、従来の可撓性シートによる仕切り壁のように膨張・収縮の際に応力が集中してしまうような水槽2の内壁との固着部位を持たず、膨張・収縮の際には処理袋本体10の全体が不規則且つ自由に膨張・収縮することができる。しかも、漲水300の水圧が処理袋本体10の全体に掛かり、処理袋本体10の特定の部位に摩耗、消耗、屈折、屈曲が集中することが避けられるため、処理袋本体10の耐久性がより向上して寿命が延び、経済性に優れる効果が得られる。
【0065】
さらに、処理を行う処理袋本体10は、例えば円筒形状等の袋状で横長形状に形成されているので、円筒形状の縦長の袋に比べれば沈降分離を迅速化する効果を奏する。このことを立証するために、以下に実験例を挙げる。
【0066】
<実験例>
円筒形状の袋を縦長にして用いた処理袋および処理装置は、本発明者が特許第5498942号、第5705296として特許を取得している。本発明者は、同じ水量(容積)で、当該特許技術の沈降分離の完了時間と、本発明の円筒形状の袋を横長形状にした円筒横型処理袋の沈降分離の完了時間に明らかな差があることを発見した。
【0067】
この事実の発見に基づいて、ラボ実験を行って、(ア)沈降分離における進行速度の比較、(イ)沈降が終わった状態で、上澄みの清澄度に両者の差が無いかの確認を行った。
すなわち、このラボ実験は、沈降分離の円筒型処理槽を「縦に置いた状態のタンク」と「横に置いた状態のタンク」で沈降分離の処理速度と処理結果の成果を目視で計測して両者を比較検証するラボによる実験である。
【0068】
(実験方法及び結果)
内部に突起物の無いシンプルな円筒型タンクに相当する1リットルのビーカーを2個用意した。
沈降分離に必要な同じ条件の薬剤、下記(ア)、(イ)、(ウ)、(エ)を投入して均一攪拌した実験の原水を用意した。
(ア)市販PAC(ポリ塩化アルミニウム)10%液は、300ppm投入
(イ)市販NaOH 10%液は、pH7.0になるよう調整用として投入
(ウ)大阪ガス社の水分含有率50%の水処理用粉末活性炭は、2gを投入
(エ)三菱ケミカル社のアニオン系ポリマー凝集剤1000倍希釈液は2ppm投入
上記で作成した原水を2個のビーカーに満水近くまで同等に満たし、縦に置く大気開放型1リットルのビーカーと、横に置くビーカーは上部に蓋をして漏水の無い状態に加工し、双方とも中の様子がよく見える状態で本実験セットを用意した。
【0069】
大気開放のビーカーを縦に置き、密閉したビーカーは、水平に横に寝かせたまま双方を各々同時に沈降分離に適した攪拌を1分間行って停止した。
攪拌停止から沈降分離完了までを各々同時に複数人で観察した。
その結果、双方の沈降完結時間は、横に寝かせた方が明らかに早いことが解った。具体的に、この実験では縦のビーカーが30秒で完成するのに対して、横にしたビーカーが5秒から6秒で終了したことを確認した。
【0070】
両者の清澄度スラッジのフロック状態に目立った相違が無く、沈降分離効果に問題ないことを確認した。
結論は、横にしたビーカーは縦のビーカーよりおおよそ約5倍早い時間で沈降分離できる事を確認した。
以上の実験例から、本発明の円筒横型処理袋の場合には、円筒形状の袋を縦長にして用いた処理袋と比較し、処理時間を大幅に短縮できる効果を発揮する。
【0071】
図8は、水処理装置の第2の実施形態を示す概略構成図である。
図1~
図7と同一符号は同一構成を示しているため説明は省略する。
【0072】
この水処理装置T2では、排出管14Bの終端に、汚泥排出管14Dと同様に処理水排出管14Eが下向きに分岐している。この処理水排出管14Eからは、処理水202は、水槽2内には戻らずに外部に排出される。
【0073】
この水処理装置T2では、処理水202及び汚泥201の汚泥排出管14D及び処理水排出管14Eからの出口が、水槽2内の漲水300の水面WLよりも下方にあるので、処理水202及び汚泥201を、サイフォン効果によって容易に排出することができる。そのため、この水処理装置T2では、排出ポンプ18は必須ではない。
【0074】
この水処理装置T2では、処理袋本体10内の処理水202が水槽2内に戻されないので、水槽2内の漲水300の水位を一定に維持するために、処理水202の排出時に、漲水貯留槽3内から供給ポンプ31の駆動によって漲水供給管32を介して漲水300が水槽2内に補給される。水槽2内の漲水300の水量は、不図示の液面計によって検出され、制御手段によって供給ポンプ31の駆動及び漲水供給管32に設けられた開閉弁33の開閉が制御されるようになっている。このため、水槽2内の漲水300の水位は常時一定に保たれる。
【0075】
水処理装置T2において、漲水300として、処理対象液200を使用することができる。すなわち、処理袋本体10の全体が常に浸漬されるように処理対象液200を水槽2に供給し、この処理対象液200を図示しないポンプによって供給管14Aに供給することができる。
【0076】
なお、以上説明した水処理装置T1~T2において、漲水供給管32の終端を水槽2内の漲水300内に没入させておくことによって、漲水貯留槽3から水槽2への漲水300の補給は、サイフォン効果によって自然流下させることができる。この場合、水槽2への漲水供給のための供給ポンプ31を設ける必要はなく、また、漲水貯留槽3から水槽2への漲水300の補給停止は、漲水供給管32に設けた開閉弁33の閉制御だけで行うことができるため、それだけ設備コストを低減することができる。
【0077】
また、水処理装置T1~T2において、漲水300としては、処理水202及び処理対象液200以外の液体、例えば水道水、海水、河川水、湖水等を使用することができる。漲水貯留槽3内で不足した漲水300は、水槽2内の処理袋1での処理のタイミング(静止時)を利用して、水道水等を補充すればよい。このときの水量は、排出ポンプ18の単位水量に比べて少ない単位水量でよいため、大型のポンプを用いる必要がない。したがって、ポンプを用いてもコストは低く抑えられる。
【0078】
以上説明した水処理装置T1~T2は、
図2に示した処理袋1を用いたが、処理袋本体10は不透水性で可撓性を有し、密閉状に形成し得るものであればよく、何ら
図2に示す処理袋本体10に限定されない。また、処理袋本体10は、中空シャフト11に固着されるものに限定されず、水槽2の内壁に固着されるものであってもよい。
【0079】
また、本発明に係る処理装置は、以上説明したように、水を凝集攪拌処理して処理水と汚泥とに分離する水処理装置に限らず、その他、水槽2内の漲水300中に浸漬した処理袋1を用いて各種の処理対象液を処理し、処理後の処理液を排出する用途に広く適用することができる。
【0080】
本発明に係る処理装置は、処理袋1の全体を水槽2内の漲水300中に浸漬するので、漲水300を適宜の温度に加熱又は冷却することによって、処理袋1内を加熱、冷却又は保温することができる。例えば処理袋1内で反応処理を行う場合、水槽2の外側空間2a内の漲水300を、反応に必要な温度に加熱又は冷却しておくことによって、最適な温度雰囲気で反応処理を行うことができる。
【0081】
水槽2内の漲水300は処理袋1の全体を覆うため、水槽2外の環境温度に左右されることなく、最適な条件で効率良く加熱、冷却又は保温処理を行うことができる。この場合、漲水貯留槽3内又はその他の適宜の箇所に漲水300を加熱又は冷却するための加熱又は冷却手段を設けておくことはもちろんである。また、水槽2内と漲水貯留槽3内との間を漲水300が循環できるようにするための循環手段を設けることにより、水槽2内の処理袋の内部を長時間に亘って一定温度に維持できるようにすることも好ましい。
【0082】
本発明に係る処理袋は、
図2に示した処理袋1を単独で使用することもできる。例えば、形状保持枠13を取り付けた中空シャフト11が水面よりも下位となるように、コンクリート等の水槽、プール、容器等に貯留された漲水の水中に横長にさせて浸漬し、水面上に架設した支柱等に吊り下げて使用することができる。支柱は、不図示の浮き袋等によって水上に浮かべて設置してもよいし、両端部を水上の構築物や陸上等に固定して水面上に設置してもよい。
【0083】
また、本発明に係る処理袋は、常時水位が保たれる漲水中に浸漬されるものであればよく、
図2に示した処理袋1の形状保持枠13及び中空シャフト11を有しないものであってもよい。
【0084】
処理袋内の液体の排出は、ポンプによって行う他に、処理袋本体10の可撓性を利用して、処理袋本体10に対して外部から適宜の手段によって圧縮力を作用させることにより、処理袋本体10が収縮する際の力を利用して内部の液体を排出させることもできる。
【符号の説明】
【0085】
1:処理袋
10:処理袋本体
10b:内側空間
11:中空シャフト
12:供給排出口
12a:スイベルジョイント
12b:ロータリージョイント
13:形状保持枠
13a:撹拌板
14A:供給管
14B:排出管
15A:供給弁
15B:排出弁
19:モータ
20:脱気管
20a:脱気口
20b:脱気バルブ
2、2A~2C:水槽
2a:外側空間
3:漲水貯留槽
200:処理対象液
202:処理水
300:漲水
T1~T2:水処理装置
WL:漲水の水面