(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022024864
(43)【公開日】2022-02-09
(54)【発明の名称】手押し運搬車の制動装置
(51)【国際特許分類】
B62B 5/04 20060101AFI20220202BHJP
B60T 1/06 20060101ALI20220202BHJP
B60T 11/04 20060101ALI20220202BHJP
B60T 7/10 20060101ALI20220202BHJP
F16D 65/28 20060101ALI20220202BHJP
F16D 121/16 20120101ALN20220202BHJP
F16D 125/68 20120101ALN20220202BHJP
F16D 125/70 20120101ALN20220202BHJP
F16D 125/64 20120101ALN20220202BHJP
F16D 127/04 20120101ALN20220202BHJP
F16D 127/06 20120101ALN20220202BHJP
【FI】
B62B5/04 A
B60T1/06 A
B60T11/04
B60T7/10 P
F16D65/28
F16D121:16
F16D125:68
F16D125:70
F16D125:64
F16D127:04
F16D127:06
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020127686
(22)【出願日】2020-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】593087248
【氏名又は名称】株式会社アサヒ
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】特許業務法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中島 義明
【テーマコード(参考)】
3D047
3D050
3D124
3J058
【Fターム(参考)】
3D047BB34
3D047CC05
3D047FF23
3D050AA01
3D050BB02
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3D124AA12
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3D124CC54
3D124DD06
3J058AA06
3J058AA13
3J058AA17
3J058AA23
3J058AA30
3J058AA38
3J058BA65
3J058CC66
3J058FA19
(57)【要約】
【課題】手押し運搬車に対して容易に組み付けることのできる制動装置を提供すること。
【解決手段】運搬車の台座に取り付けるストッパー機構30と、運搬車のハンドルに取り付ける操作機構60と、ストッパー機構30及び操作機構60を連結するリンク部材21とを含む。ストッパー機構30は、取付板31及び作動部材41を含む。取付板31の第1ばね掛け部35と作動部材41の第2ばね掛け部51との間に引張ばね52が架設されている。操作機構60は、定支点Fを中止に回動する操作部材65を備え、操作バーによって操作部材65を回動させることでストッパー機構30を解除できる。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
運搬車の台座に取り付けるストッパー機構と、運搬車のハンドルに取り付ける操作機構と、前記ストッパー機構及び操作機構を連結するリンク部材とを含み、
前記ストッパー機構は、
第1のばね掛け部及び軸受部を備え、運搬車の台座に取り付ける取付板と、所定の長さを有し、長さ方向途中部に支軸を備え、当該支軸が前記軸受部に保持されて前記取付板に対して揺動可能に設けられた作動部材とを含み、
前記作動部材は、長さ方向一端側にキャスター車輪の外周面に圧接し得るストッパー突部、長さ方向他端側に連結部、及び、長さ方向他端寄りに第2のばね掛け部が設けられており、
前記第1のばね掛け部及び第2のばね掛け部の間に引張ばねが初張力状態で掛け渡されていて、
前記操作機構は、
支点受部を備え、運搬車のハンドルに取り付けて前記支点受部をハンドルに対して所定の位置に配置する取付部材と、
一端に力点、他端に作用点、中間位置に支点が設定され、当該支点が前記支点受部に回動自在に保持される操作部材と、前記操作部材の前記力点から側方へ延び出た操作バーとを含み、
前記リンク部材は、前記操作部材の前記作用点に一端が連結され、他端は前記ストッパー機構の前記作動部材の前記連結部に連結された連結棒を含むことを特徴とする、手押し運搬車の制動装置。
【請求項2】
前記ストッパー突部は、前記作動部材の前記長さ方向一端側に螺合されたボルト頭部を含むことを特徴とする、請求項1に記載の手押し運搬車の制動装置。
【請求項3】
前記作動部材には、前記支軸と前記第2のばね掛け部との間に、前記作動部材の前記長さ方向一端側が所定の位置迄揺れて止まるように、揺れ止め部材が設けられていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の手押し運搬車の制動装置。
【請求項4】
前記ストッパー機構の前記取付板は、運搬車の台座の下面に取り付ける主板と、主板の後辺から上方へ折れ曲がり、台座の後ろ側面に沿って立ち上がる副板とを含み、
前記第1のばね掛け部は前記副板に設けられていることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の手押し運搬車の制動装置。
【請求項5】
前記ストッパー機構の前記取付板には、前記主板の下面(台座の下面に対向する面と反対の面)に前記軸受部が突設されており、
前記軸受部は、前記主面の下面から下方へ延び出た一対の軸受板を含むことを特徴とする、請求項4に記載の手押し運搬車の制動装置。
【請求項6】
前記ストッパー機構は、運搬車の台座の後方左右両側に備えられた左右のキャスター車輪に対応付けられた左右一対のストッパー機構を含むことを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の手押し運搬車の制動装置。
【請求項7】
前記操作機構の前記取付部材は、運搬車のハンドルの左右方向中央部に取り付けるものを含み、
前記操作部材の前記作用点には左右両側方へ延び出た左右作用バーが備えられ、
前記リンク部材は、左作用バーと左側の前記ストッパー機構とを連結する左連結棒及び右作用バーと右側の前記ストッパー機構とを連結する右連結棒を含み、
前記操作部材の操作により、前記左右の連結棒を介して、前記一対のストッパー機構が同時に作動されることを特徴とする、請求項6に記載の手押し運搬車の制動装置。
【請求項8】
前記操作機構の前記操作バーは、前記力点から左右両側へ延び出し、運搬車のハンドルに平行な操作ハンドルバーを含むことを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の手押し運搬車の制動装置。
【請求項9】
台座の下面に取り付けられる取付板と、
前記取付板の下面に突設された軸受部と、
所定の長さを有し、長さ方向の途中部が前記軸受部によって揺動可能に軸支された作動部材と、
前記作動部材の一端に設けられ、前記取付板から離れる方向へ揺動することによりキャスター車輪の外周面に圧接し得るストッパー突部と、
前記取付板と前記作動部材の他端側との間に掛け渡され、前記作動部材の一端側が前記取付板から離れる方向へ揺動するように弾力付勢する引張ばねと、
前記作動部材の前記軸支された位置と前記他端側との間に設けられ、前記作動部材の一端に設けられた前記ストッパー突部がキャスター車輪の外周面に接する状態で前記作動部材の揺動が止まるように、前記作動部材の揺れを制限するブレーキ位置設定部材と、を含むことを特徴とする、手押し運搬車の制動装置。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の制動装置が組み込まれていることを特徴とする、ブレーキ付台車。
【請求項11】
請求項1~9のいずれか一項に記載の制動装置が組み込まれていることを特徴とする、ブレーキ付ワゴン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手押し運搬車に装着可能な制動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ブレーキを備えた手押し運搬車や台車が公知である。
例えば、特許文献1には、圧縮コイルスプリングを備え、圧縮コイルスプリングでブレーキシュー部を制動解除方向に付勢する台車の制動構造が開示されている。特許文献1に開示された台車の制動構造は、ブレーキシュー部を固定するための軸部、ブレーキシュー部に弾性付勢力を付与する圧縮コイルスプリングの受け金具等を台車に固定するものであり、これら部材を固定するために、台車は専用の構造に加工されている。
【0003】
また、特許文献2に開示されたブレーキキャスター付運搬車は、キャスター車輪に同軸に車輪と一体に回転するロック部材を設け、このロック部材にロックレバーを係合させてブレーキをかける構造である。よって、特許文献2に開示されたブレーキキャスター付運搬車は、専用のブレーキキャスターを備えたものでなければならず、一般的なキャスターを備えた運搬車や台車に適用することは困難である。
【0004】
さらに、特許文献3には、手押し運搬車のブレーキ付きキャスター装置が開示されている。
特許文献3に開示されたブレーキ付きキャスター装置は、ブレーキ構造が組み込まれた専用のキャスター装置である。このため、一般的に使用されているキャスターを備えた手押し運搬車の場合、このブレーキ構造を適用したり、取り付けたりすることはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5557341号公報
【特許文献2】特許第4368101号公報
【特許文献3】特開2016-210256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、手押し運搬車に対して容易に組み付けることのできる制動装置を提供することである。
特に、本発明は、多品種の手押し運搬車に対して、運搬車自体を加工することなく、容易に組み込める汎用性のある制動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するためになされたものであり、請求項1記載の発明は、運搬車の台座に取り付けるストッパー機構と、運搬車のハンドルに取り付ける操作機構と、前記ストッパー機構及び操作機構を連結するリンク部材とを含み、前記ストッパー機構は、第1のばね掛け部及び軸受部を備え、運搬車の台座に取り付ける取付板と、所定の長さを有し、長さ方向途中部に支軸を備え、当該支軸が前記軸受部に保持されて前記取付板に対して揺動可能に設けられた作動部材とを含み、前記作動部材は、長さ方向一端側にキャスター車輪の外周面に圧接し得るストッパー突部、長さ方向他端側に連結部、及び、長さ方向他端寄りに第2のばね掛け部が設けられており、前記第1のばね掛け部及び第2のばね掛け部の間に引張ばねが初張力状態で掛け渡されていて、前記操作機構は、支点受部を備え、運搬車のハンドルに取り付けて前記支点受部をハンドルに対して所定の位置に配置する取付部材と、一端に力点、他端に作用点、中間位置に支点が設定され、当該支点が前記支点受部に回動自在に保持される操作部材と、前記操作部材の前記力点から側方へ延び出た操作バーとを含み、前記リンク部材は、前記操作部材の前記作用点に一端が連結され、他端は前記ストッパー機構の前記作動部材の前記連結部に連結された連結棒を含むことを特徴とする、手押し運搬車の制動装置である。
【0008】
請求項2記載の発明は、前記ストッパー突部は、前記作動部材の前記長さ方向一端側に螺合されたボルト頭部を含むことを特徴とする、請求項1に記載の手押し運搬車の制動装置である。
請求項3記載の発明は、前記作動部材には、前記支軸と前記第2のばね掛け部との間に、前記作動部材の前記長さ方向一端側が所定の位置迄揺れて止まるように、揺れ止め部材が設けられていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の手押し運搬車の制動装置である。
【0009】
請求項4記載の発明は、前記ストッパー機構の前記取付板は、運搬車の台座の下面に取り付ける主板と、主板の後辺から上方へ折れ曲がり、台座の後ろ側面に沿って立ち上がる副板とを含み、前記第1のばね掛け部は前記副板に設けられていることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の手押し運搬車の制動装置である。
請求項5記載の発明は、前記ストッパー機構の前記取付板には、前記主板の下面(台座の下面に対向する面と反対の面)に前記軸受部が突設されており、前記軸受部は、前記主面の下面から下方へ延び出た一対の軸受板を含むことを特徴とする、請求項4に記載の手押し運搬車の制動装置である。
【0010】
請求項6記載の発明は、前記ストッパー機構は、運搬車の台座の後方左右両側に備えられた左右のキャスター車輪に対応付けられた左右一対のストッパー機構を含むことを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の手押し運搬車の制動装置である。
請求項7記載の発明は、前記操作機構の前記取付部材は、運搬車のハンドルの左右方向中央部に取り付けるものを含み、前記操作部材の前記作用点には左右両側方へ延び出た左右作用バーが備えられ、前記リンク部材は、左作用バーと左側の前記ストッパー機構とを連結する左連結棒及び右作用バーと右側の前記ストッパー機構とを連結する右連結棒を含み、前記操作部材の操作により、前記左右の連結棒を介して、前記一対のストッパー機構が同時に作動されることを特徴とする、請求項6に記載の手押し運搬車の制動装置である。
【0011】
請求項8記載の発明は、前記操作機構の前記操作バーは、前記力点から左右両側へ延び出し、運搬車のハンドルに平行な操作ハンドルバーを含むことを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の手押し運搬車の制動装置である。
請求項9記載の発明は、台座の下面に取り付けられる取付板と、前記取付板の下面に突設された軸受部と、所定の長さを有し、長さ方向の途中部が前記軸受部によって揺動可能に軸支された作動部材と、前記作動部材の一端に設けられ、前記取付板から離れる方向へ揺動することによりキャスター車輪の外周面に圧接し得るストッパー突部と、前記取付板と前記作動部材の他端側との間に掛け渡され、前記作動部材の一端側が前記取付板から離れる方向へ揺動するように弾力付勢する引張ばねと、前記作動部材の前記軸支された位置と前記他端側との間に設けられ、前記作動部材の一端に設けられた前記ストッパー突部がキャスター車輪の外周面に接する状態で前記作動部材の揺動が止まるように、前記作動部材の揺れを制限するブレーキ位置設定部材と、を含むことを特徴とする、手押し運搬車の制動装置である。
【0012】
請求項10記載の発明は、請求項1~9のいずれか一項に記載の制動装置が組み込まれていることを特徴とする、ブレーキ付台車である。
請求項11記載の発明は、請求項1~9のいずれか一項に記載の制動装置が組み込まれていることを特徴とする、ブレーキ付ワゴンである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の制動装置は、手押し運搬車に特別の加工を施すことなく、手押し運搬車に対して容易に組み付けることができる。よって、多品種の手押し運搬車に対して装着可能な汎用性のある制動装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る制動装置20が装着されたブレーキ付台車1の斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態に係る制動装置20が装着されたブレーキ付台車1の側面図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態に係る制動装置20が装着されたブレーキ付台車1の背面図である。
【
図4】
図4は、ストッパー機構30を下側から見た斜視図である。
【
図5】
図5は、荷台2に取り付けられたストッパー機構30の側面図である。
【
図6】
図6は、操作機構60の構成を説明するために、後方から操作機構60を描いた斜視図である。
【
図7】
図7は、作用バー69の先端と、連結棒22の上端との連結構造の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、制動装置20の操作及び動作(機能)を説明するための図解的な図であり、(A)はストッパー機構30がONの状態、(B)はストッパー機構30がOFFの状態を示している。
【
図9】
図9は、この発明の一実施形態に係る制動装置20が装着されたブレーキ付ワゴン100の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下では、図面を参照して、本発明の実施形態について具体的に説明をする。
図1は、本発明の一実施形態に係る制動装置20が装着されたブレーキ付台車1の斜視図である。
図2は、ブレーキ付台車1の側面図であり、
図3は、ブレーキ付台車1の背面図である。
ブレーキ付台車1は、荷物を乗せる台座としての荷台2を有する。荷台2は、水平状に広がる平面視が四角形の台板3と、台板3の各辺から下向きに折り曲げられた側壁4(4F,4B,4L,4R)を含む。荷台2の後部の左右両側には、それぞれ、支柱5L、5Rが立設されている。
【0016】
左の支柱5Lは、2枚の側板5a,5bを有する横断面がL字状のアングル鋼で形成され、正面を向いた側板5aの下端部が、荷台2の後ろ側壁4Bの左端部にボルト6及びナット(図示せず)で固定されている。また、支柱5Lは、外側の側板5bの下方部と荷台2の左側壁4Lの後方部とが、L字状の固定金具7を用いて、ボルト8及びナット9によって連結されている。
【0017】
右の支柱5Rは、支柱5Lと左右対称の形状をなす横断面がL字状のアングル鋼で形成され、正面を向いた側板5aの下端部が、荷台2の後ろ側壁4Bの右端部に、ボルト6及びナット(図示せず)で固定されている。また、支柱5Rは、外側の側板5bの下方部と荷台2の右側壁4Rの後方部とが、L字状の固定金具7を用いて、ボルト8及びナット9によって連結されている。
【0018】
左右対称の形状をなす支柱5L,5Rは、荷台2の後ろ側壁4Bから上方へ垂直に立ち上り、その途中部がゆるく後方へ湾曲され、その上部は後方へ傾いている。支柱5L,5Rの上端間は、水平に延びる台車ハンドル10で繋がれている。台車ハンドル10の左端部及び支柱5Lの上端部は、カバー11で被われていてもよい。同様に、台車ハンドル10の右端部及び支柱5Rの上端部も、カバー11で被われていてもよい。
【0019】
支柱5L,5Rの上方へ垂直に立ち上る部分には、支柱5L,5Rの間を塞ぐように荷受け板12が設けられていてもよい。
荷台2の下面には、四隅にキャスターが取り付けられている。荷台2の下面の前方側の左右に取り付けられたキャスター13は、車輪の向きを自在に変えられる全方位回転可能なマルチキャスター13が用いられている。荷台2の下面の後方側の左右に取り付けられたキャスター14は、車輪の向きを変えられない固定キャスター14が用いられている。
【0020】
荷台2の前方側の左右の角(左側壁4Lと前側壁4Fとのコーナー部及び右側壁4Rと前側壁4Fとのコーナー部)には、それぞれ、バンパー部材15が取り付けられていてもよい。
ブレーキ付台車1には、本発明の一実施形態に係る制動装置20が組み込まれている。制動装置20は、固定キャスター14の車輪16を回らないようにロックすることにより、台車1にブレーキをかけるものである。制動装置20は、荷台2の下面の後方側に取り付けられた固定キャスター14に関連した位置に設けられたストッパー機構30と、台車ハンドル10に取り付けられた操作機構60と、ストッパー機構30及び操作機構60を連結するリンク部材21とを含んでいる。ストッパー機構30は、左右の固定キャスター14にそれぞれ対応付けて、2つのストッパー機構30が設けられていてもよい。
【0021】
図4は、ストッパー機構30を下側から見た斜視図である。
図5は、荷台2に取り付けられたストッパー機構30の側面図であり、説明の便宜上、一部は断面で示されている。
図4及び
図5を参照して、ストッパー機構30の構成について具体的に説明する。
ストッパー機構30は、荷台2の下面に取り付けられる取付板31と、作動部材41とを含んでいる。取付板31は、例えば平面視が四角形の鋼板で形成され、荷台2の下面にボルト等で取り付けるための複数の取付孔32を有している。取付板31の一側辺(例えば後辺)33は、荷台2の後ろ側壁4Bの下辺に沿うように取り付けられる。取付板31の後辺33には、上方へ折れ曲がり、取付板31の後辺から上方に向かって、立ち上った副板34が設けられている。副板34には、例えば小孔や切り起こした係止突起等によって、第1のばね掛け部35が形成されている。
【0022】
取付板31の下面、すなわち荷台2の下面に当接される上面と反対側の下面には、軸受部材36が突出するように固定されている。軸受部材36は、取付板31の下面に例えば溶接によって固定された基部37と、基部37の両側から下方へ突出するように折り曲げて形成された一対の支持側板38とを含んでいる。一対の支持側板38は、側面視がL字状をし、その先端部分に軸受部としての軸孔39が形成されている。軸孔39は、取付板31から下方へ所定間隔を空けた位置に設けられている。
【0023】
作動部材41は、所定の長さを有する長手の部材であり、長さ方向途中部が軸受部材36の支持側板38に形成された軸孔39によって支持され、揺動可能に設けられている。より詳しくは、作動部材41は、細長手の形状の底板42と、底板42の両側辺から上方へ直角に折り曲げられた細長手の左右一対の側板43を含んでいる。左右一対の側板43の長さ方向途中部には軸孔44が形成されている。作動部材41の長さ方向途中部は、軸受部材36の一対の支持側板38によって両側から挟まれるように配置され、支持側板38の軸孔39と作動部材41の側板43の軸孔44とが対向されて、支軸としての例えばリベット45が挿通されている。リベット45は、その頭部が支持側板38の外側面に溶接止めされていてもよい。作動部材41は、支軸であるリベット45を中心に、先方側が上下に揺れ、後方側が下上に揺れる。すなわち、支軸であるリベット45を中心に、揺動し得る。
【0024】
作動部材41の長さ方向一端側である先端側には、底板42の下面から突出するストッパー突部46が設けられている。本実施形態では、ストッパー突部46は、底板42に形成された螺子孔49に下面側から螺子結合されたボルト47のボルト頭48により実現されている。具体的には、底板42の先端側には、ボルト47が螺合される螺子孔49が形成されており、螺子孔49にボルト47が下面側から螺合されている。それゆえ、ボルト47の螺合深さを調整することにより、底板42の下面から突出するボルト頭48の突出量を変化させることができる。
【0025】
ボルト頭48は、キャスター車輪16の外周面に圧接してキャスター車輪16の回転を阻止するストッパー突部46であるから、その突出量を調整できれば、制動力を調整できるという利点がある。
底板42の上面から上方へ突出するボルト47には、ナット50が螺合されていてもよい。ボルト47にナット50を螺合することにより、振動その他により、底板42の螺子孔49に螺合されたボルト47が不用意に回転して突出量が変化することを防止できる。
【0026】
本実施形態では、作動部材41の先端側に設けたストッパー突部46は、ボルト47で構成した例を示したが、これに限らず、ストッパー突部46は作動部材41の先端側(の底板42の下面)から下方へ突出する突部であって、キャスター車輪16の外周面に圧接されてキャスター車輪16の回転を阻止できる突部であれば、どのような形態であってもよい。一例として、ストッパー突部46は、ボルト頭48によって構成せず、例えば、底板42の先端側下面に形成した押出突部や、底板42の先端側下面に接合した摩擦パッド等であってもよい。
【0027】
作動部材41の長さ方向他端側である後端側には、底板42に形成された小孔、または切り起こした係止突起等によって、第2のばね掛け部51が設けられている。そして、前述した取付板31の副板34に形成された第1のばね掛け部35と、作動部材41に設けられた第2のばね掛け部51との間には、引張ばね52が、例えば初張力状態で掛け渡されていて、引張ばね52により収縮方向の弾性力が付与されている。よって、支持側板38の軸孔39に通された支軸であるリベット45によって揺動可能に支持された作動部材41は、取付板31に対して、作動部材41の先端側が下がる方向に弾力付勢されている。換言すれば、作動部材41は、その先端側に設けられたストッパー突部46がキャスター車輪16の外周面に圧接する方向に、常に、引張ばね52によって弾力付勢されている。
【0028】
ストッパー機構30を荷台2の下面に取り付ける場合は、取付板31の下面側から取付孔32にボルトを通し、取付板31を荷台2の下面に取り付ける。その場合において、作動部材41は引張ばね52によって弾力付勢されているから、支軸であるリベット45を中心に作動部材41の先端側が下方へ揺れ、作動部材41の後端側が上方へ揺れた状態となる。
【0029】
ところで、ストッパー機構30を荷台2の下面に取り付けた場合において、作動部材41は、ストッパー突部46がキャスター車輪16の外周面に圧接した状態に揺れ止まっていることが望ましい。言い換えると、作動部材41がキャスター車輪16にブレーキをかけた状態に揺動して停止していることが望ましい。なぜならば、作動部材41の後端側には、後述するように、リンク部材21を介して操作部材65が連結されている。操作部材65は回動支点を中心に回動し、作動部材41を操作するものであるから、作動部材41がブレーキをかけた状態の揺動位置が決まれば、操作部材65の支点位置も自然に決まるからである。
【0030】
荷台2の下面に固定キャスター14が先に取り付けられている場合には、キャスター車輪16とストッパー突部46とが干渉するので、引張ばね52の付勢力に抗して作動部材41の先端側を上方へ持ち上げるように揺らし、ストッパー突部46をキャスター車輪16の外周面に圧接させた状態で取付板31を荷台2の下面に取り付けることも出来なくはない。しかし、その場合は、作動部材41の先端側に設けたストッパー突部46が下方へ揺れ下がっているので、ストッパー機構30の荷台2の下面への取り付けが煩雑になる。
【0031】
そこで、本実施形態では、ストッパー機構30を取り付ける際には、作動部材41をブレーキをかけた状態の揺動位置で止める為の揺れ止め部材が設けられている。
揺れ止め部材の具体的な構成は、次の通りである。ストッパー機構30を荷台2の下面に取り付ける場合において、
図4及び
図5に示すように、作動部材41における揺動中心である支軸としてのリベット45で保持された位置よりも後方寄りの底板42に螺子孔53が形成されている。そして、この螺子孔53にボルト54が螺合され、作動部材41の揺れ具合が所望の状態(つまり、作動部材41がブレーキをかけた状態の揺動位置)にされている。ボルト54の先端は取付板31の下面に当接するまで螺子込まれているから、作動部材41の揺動は、その位置で止められる。作動部材41には、引張ばね52によって支軸としてのリベット45を中心に、
図4及び
図5において反時計回りのモーメントが付与されている。このモーメントにより作動部材41はストッパー突部46が下方へ下がるように揺れようとするが、その揺れがボルト54により止められる。このように、取付板31に対する作動部材41の揺れが、ブレーキをかけた位置で止まるように、揺れ止め部材としての螺子孔53及びボルト54が設けられてもよい。
【0032】
このようにすれば、ストッパー機構30を荷台2の下面に取り付けると、ストッパー機構30を操作する操作部材65の支点位置が自然に決まり、操作機構60を容易に台車ハンドル10に取り付けることができるという利点がある。
揺れ止め部材の機能は、制動装置20を組み付ける際に、ストッパー機構30がON状態であることを保持するものであると共に、制動装置20を組み付けた後に、ストッパー機構30のON状態を再現するものであるといえる。なお、制動装置20全体がブレーキ付台車1に組み込まれた後は、上記のボルト54は取り外されてもよい。
【0033】
作動部材41は、長さ方向他端側である後端側に連結部55が備えられている。連結部55は、一例として、作動部材41の底板42の後端よりも後方へ突出した左右一対の側板43の後端部56と、側板後端部56に形成された連結孔57を含んでいてもよい。そして、リンク部材21を構成する連結棒22の下端の連結体23が連結部55と前後方向に回動自在に連結される。具体的には、円筒状のカラー58の両端が連結孔57に係止され、側板後端部56に連結体23が外嵌される。そして、連結体23に形成された横孔24から連結孔57及びカラー58内に通されたボルト・ナット59により、連結部55と連結棒22の下端の連結体23とが回動自在に連結されている。
【0034】
図6は、操作機構60の構成を説明するために、後方から操作機構60を描いた斜視図である。操作機構60は、台車ハンドル10の横方向(左右方向)の例えば中央部に取り付ける取付部材61を有している。取付部材61により、操作機構60全体が、台車ハンドル10に対して所定の配置関係で固定される。
取付部材61は、先端側が台車ハンドル10に係合され、後端側が台車ハンドル10から後方斜め下方へ延びる支持アーム板62と、支持アーム板62の先端側を台車ハンドル10に固定するための押さえ金具63とを含む。支持アーム板62の先端側を台車ハンドル10に下方から係合し、押さえ金具63を台車ハンドル10の上から被せて、支持アーム板62の先端側と押さえ金具63とで台車ハンドル10を挟み、ボルト・ナット64で固定することにより、支持アーム板62は台車ハンドル10に対して所定の角度及び方向に固定される。
【0035】
より具体的に説明すると、支持アーム板62には、後述するように、操作部材65の回動支点Fが設定されている。そして、操作部材65の作用点には、作用バー69を介してリンク部材21としての連結棒22の上端が連結され、連結棒22の下端はブレーキをかけた状態に揺動して停止している作動部材41の後端が連結されている。
よって、取付部材61を台車ハンドル10に取り付ける際には、台車ハンドル10に対する支持アーム板62の角度及び方向を、支点Fの位置が作動部材41との関連において定まる位置になるように固定すればよい。
【0036】
本実施形態では、支持アーム板62は、左右方向に一定の間隔を空けた左右一対の板状体を含むが、係る構成に限定されるものではない。要は、取付部材61は、操作機構60全体を、台車ハンドル10に対して所定の配置関係で固定できる支持アーム板62を備えていればよい。
支持アーム板62の後端の下方側には、操作部材65が回動可能に取り付けられている。操作部材65は、対をなし、左右両端から支持アーム板62に取り付けられている。操作部材65は、側面視がL字状をした板カム様の部材であり、L字状に曲がった曲がり部分66が、操作部材65の回動支点となるように、支持アーム板62に回動自在に連結されている。そして、対をなす操作部材65は、連結板67によって、一体化して機能(回動操作)するように連結されている。
【0037】
操作部材65の一方端部(上端部)は、操作部材65において、力点として機能する部位である。この部位には、左右方向に延びる操作ハンドルバー68が設けられている。操作ハンドルバー68は、台車ハンドル10と平行に延び、台車ハンドル10を握った使用者の手指で台車ハンドル10に近づける方向へ変位できるものであってもよい。
操作部材65の他方端部(下先端部)は、操作部材65において、作用点として機能する部位である。この部位には、左右方向に延びる作用バー69が設けられている。そして、左右の作用バー69の各先端には、リンク部材21に含まれる連結棒22の上端が回動自在に連結されている。
【0038】
作用バー69の先端と、連結棒22の上端との連結構造の一例を
図7に示す。連結棒22の上端には、U字状の連結部材25が取り付けられている。U字状の連結部材25は、基部251と、基部251の両側から直角に折れ曲がった一対の支持部252を有し、支持部252には、連結用の孔253が形成されている。
連結棒22の上端は、連結部材25の基部251に例えば溶接により取り付けられている。なお、連結棒22の軸芯に対して連結部材25の基部251が回動自在に取り付けられていてもよい。
【0039】
作用バー69の先端外面には、フランジ70が設けられ、作用バー69の先端内面には内ねじ73が切られている。連結部材25の一対の支持部252の孔253間には円筒状のカラー71が装着され、支持部252の外側からボルト72がカラー71内へ挿入され、ボルト72の先端が作用バー69の先端内面の内ねじ73と螺合されている。
これにより、作用バー69の先端に、連結棒22の上端が回動可能に連結されている。
【0040】
図8は、制動装置20の操作及び動作(機能)を説明するための図解的な図であり、(A)はストッパー機構30がONの状態(ブレーキがかかってキャスター車輪16が回転できない状態)であり、(B)はストッパー機構30がOFFの状態(ブレーキが解除されてキャスター車輪16が回転できる状態)を示している。
図8(A)に示すように、操作機構60の操作ハンドルバー68に力が加えられていない場合は、操作部材65の作用点は相対的に上方に位置し、作用バー69及び連結棒22によって作動部材41の後端につながっている。このとき、作動部材41は引張ばね52の収縮力によって、先端のストッパー突部46がキャスター車輪16の外周面に圧接され、ブレーキがかかった状態である。
【0041】
図8(B)に示すように、操作機構60の操作ハンドルバー68に手指をかけて操作ハンドルバー68を台車ハンドル10に近付けるように握ると(矢印A1)、操作部材65は、支点Fを中心に図において右回りに回動する。このため、操作部材65の回動により作用点は相対的に下方へ動き、作用点に連結された作用バー69が相対的に下方へ変位して、連結棒22の上端を押し下げる(矢印A2)。連結棒22が下がると、その下端は引張ばね52の収縮力に抗して作動部材41の後端を押し下げる。これにより、作動部材41は支軸45を中心に先端部が上方へ揺れ、ストッパー突部46がキャスター車輪16の外周面から離れて、ブレーキが解除される(矢印A3)。
【0042】
一方、操作ハンドルバー68から手指を離すと、引張ばね52の収縮力により作動部材41の後端が持ち上げられ、連結棒22を上方へ変位させるので、操作部材65は支点Fを中心に図において左回りに回動する。その結果、制動装置20(ストッパー機構30、操作機構60及びリンク部材21)は、
図8(A)の状態に戻り、ブレーキがかかった状態になる。
【0043】
本実施形態に係る制動装置20の特徴及び作用・効果を列挙すると、次の通りである。
まず、ストッパー機構30は、引張ばね52を備え、引張ばね52によって作動部材41に制動力を生じさせているが、引張ばね52は、ストッパー機構30内で掛け渡されていて、台車1の荷台2等には取り付けない構成である。よって、ストッパー機構30を台車1に組み付ける為に、台車1に対して、例えば、ばね受けを設ける等の特別な加工を施す必要がない。
【0044】
次に、操作機構60は、取付部材61を台車ハンドル10に取り付けることによって、所定の位置に配置できる。よって、操作機構60を台車1に組み付ける為に、台車1に対して特別な加工を施す必要がない。
このように、台車1に対して特別な加工を施すことなく、本実施形態に係る制動装置20は台車1に組み込むことができるから、既存の台車に対しても制動装置20を容易に取り付けることができる。
【0045】
また、ストッパー機構30、操作機構60及びリンク部材21の寸法を変更することにより、多品種の手押し運搬車に対しても装着できる制動装置20とすることができる。
図9は、本発明の一実施形態に係る制動装置20が装着されたブレーキ付ワゴン100の斜視図である。
図9に示すように、ワゴン100は、4本の支柱101と、4本の支柱に取り付けられた上棚板102、中間棚板103及び下棚板104を含んでいる。そして、下棚板104の下面の四隅(支柱101の近傍)には、キャスター13又はキャスター14が取り付けられている。さらに、ワゴン100は、後方の支柱101,101の上部に、ハンドルバー110が設けられている。ハンドルバー110は、両端の取付金具111によって、上棚板102の後壁105と隔間をあけて設けられている。
【0046】
そして、ワゴン100の台座としての下棚板104にストッパー機構30が取り付けられ、ワゴン100のハンドルバー110に操作機構60が取り付けられることにより、本実施形態に係る制動装置20がワゴン100に組み込まれ、ブレーキ付ワゴン100となっている。
本発明は、以上説明した実施形態の内容に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0047】
1 ブレーキ付台車
2 荷台
5、5L、5R 支柱
10 台車ハンドル
13、14 キャスター
16 車輪
20 制動装置
21 リンク部材
22 連結棒
30 ストッパー機構
31 取付板
34 副板
35 第1のばね掛け部
36 軸受部材
41 作動部材
45 リベット(支軸)
46 ストッパー突部
51 第2のばね掛け部
52 引張ばね
55 連結部
60 操作機構
61 取付部材
62 支持アーム板
65 操作部材
68 操作ハンドルバー
69 作用バー
100 ブレーキ付ワゴン
104 下棚板(台座)
110 ハンドルバー