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特開2022-24920検査装置、その制御装置、制御方法および制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022024920
(43)【公開日】2022-02-09
(54)【発明の名称】検査装置、その制御装置、制御方法および制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/04 20180101AFI20220202BHJP
【FI】
G01N23/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020127769
(22)【出願日】2020-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】000250339
【氏名又は名称】株式会社リガク
(74)【代理人】
【識別番号】100114258
【弁理士】
【氏名又は名称】福地 武雄
(74)【代理人】
【識別番号】100125391
【弁理士】
【氏名又は名称】白川 洋一
(74)【代理人】
【識別番号】100208605
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 龍一
(72)【発明者】
【氏名】島本 憲太
【テーマコード(参考)】
2G001
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001AA10
2G001BA11
2G001CA01
2G001DA02
2G001DA06
2G001DA09
2G001HA13
2G001JA08
2G001KA05
2G001MA10
2G001PA11
(57)【要約】
【課題】中心軸方向に大きい巻回体であっても正確かつ容易に巻回体内部の異常を検査することができる検査装置、その制御装置、制御方法および制御プログラムを提供する。
【解決手段】筒状または柱状の巻回体R10の内部の異常を検査する検査装置100であって、電磁波を照射する電磁波源110と、電磁波が照射される位置に巻回体R10を保持する保持部120と、電磁波源110に対向する位置に撮像面131を有し、巻回体R10を透過した電磁波を検出して透過像を取得する撮像部130と、を備え、保持部120は、撮像時において電磁波源110の焦点Fと撮像面とを結んだ特定の直線が電磁波の照射方向に巻回体の中心軸方向に延びる外周面を外から内へ横切る位置に巻回体R10を保持し、撮像部130は、巻回体R10を通過した電磁波を巻回体R10の外周面の外で検出する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状または柱状の巻回体の内部の異常を検査する検査装置であって、
電磁波を照射する電磁波源と、
前記電磁波が照射される位置に巻回体を保持する保持部と、
前記電磁波源に対向する位置に撮像面を有し、前記巻回体を透過した電磁波を検出して透過像を取得する撮像部と、を備え、
前記保持部は、撮像時において前記電磁波源の焦点と前記撮像面とを結んだ特定の直線が前記電磁波の照射方向に前記巻回体の中心軸方向に延びる外周面を外から内へ横切る位置に前記巻回体を保持し、前記撮像部は、前記巻回体を通過した電磁波を前記巻回体の外周面の外で検出することを特徴とする検査装置。
【請求項2】
前記保持部は、撮像時において、前記電磁波源から電磁波が照射される照射領域および前記電磁波源から照射される電磁波を検出して前記撮像部により撮像できる撮像可能領域のいずれにも少なくとも前記巻回体の内周面の一部が位置するよう前記巻回体を保持することを特徴とする請求項1記載の検査装置。
【請求項3】
前記電磁波源は、放射状のX線を照射することを特徴とする請求項1または請求項2記載の検査装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の検査装置を制御する制御装置であって、
入力された条件に基づき、前記電磁波源、前記撮像部および前記巻回体の配置を撮像開始前に調整する配置調整制御部と、
前記巻回体の撮像を制御する撮像制御部と、
撮像開始後に前記電磁波源および撮像部に対し前記巻回体を相対的に移動させる移動制御部と、を備えることを特徴とする制御装置。
【請求項5】
連続する前記撮像により生じる前記巻回体の検査完了領域にギャップが生じない移動ステップ幅で前記巻回体を相対的に移動させることを特徴とする請求項4記載の制御装置。
【請求項6】
前記配置調整制御部は、前記巻回体の中心軸を通る面で二分される巻回体の一方側の内周から外周までを透過する前記電磁波を前記撮像面で受光できる位置に前記電磁波源、前記撮像部および前記保持部により保持される巻回体を配置することを特徴とする請求項4または請求項5記載の制御装置。
【請求項7】
前記移動制御部は、前記巻回体の撮像の間に、前記電磁波源および撮像部に対し前記巻回体を前記巻回体の中心軸を中心に回転させることを特徴とする請求項4から請求項6のいずれかに記載の制御装置。
【請求項8】
前記巻回体は前記電磁波を遮蔽する芯上に巻かれており、
前記芯の外側に生じる検査不可領域が許容範囲内に収まる回転ステップ幅で前記巻回体を前記電磁波源および撮像部に対し回転させることを特徴とする請求項7記載の制御装置。
【請求項9】
前記移動制御部は、前記巻回体の撮像の間に、前記電磁波源および撮像部に対し前記巻回体を前記巻回体の中心軸に対して平行な方向に移動させることを特徴とする請求項4から請求項8のいずれかに記載の制御装置。
【請求項10】
前記配置調整制御部は、前記巻回体の内部における前記電磁波の透過距離に応じた前記透過像の強度の不均一を小さくする方向に撮像面を傾斜させることを特徴とする請求項4から請求項9のいずれかに記載の制御装置。
【請求項11】
前記配置調整制御部は、前記特定の直線が前記巻回体の内周面に接し、かつ前記撮像面を傾斜させる傾斜軸を通るように、前記電磁波源、前記撮像部および前記巻回体の配置を調整することを特徴とする請求項10記載の制御装置。
【請求項12】
前記電磁波源および撮像部は、複数の対で構成され、
前記電磁波源および撮像部の対は、前記巻回体の中心軸に対して互いに回転対称の位置に配置されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の検査装置。
【請求項13】
前記電磁波源および撮像部は、複数の対で構成され、
前記電磁波源および撮像部の対は、前記巻回体の中心軸に対して平行な直線上の位置に配置されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の検査装置。
【請求項14】
請求項1または請求項2記載の検査装置の制御方法であって、
入力された条件に基づき、前記電磁波源、前記撮像部および前記保持部の配置を事前に調整するステップと、
前記巻回体に対し、電磁波を電磁波源から放射させるステップと、
前記電磁波源および撮像部に対し前記巻回体を相対的に移動させつつ、前記巻回体を撮像するステップと、
前記巻回体の透過像を表示させるステップと、を含むことを特徴とする制御方法。
【請求項15】
請求項1または請求項2記載の検査装置の制御プログラムであって、
入力された条件に基づき、前記電磁波源、前記撮像部および前記保持部の配置を事前に調整する処理と、
前記巻回体に対し、電磁波を前期電磁波源から放射させる処理と、
前記電磁波源および撮像部に対し前記巻回体を相対的に移動させつつ、前記巻回体を撮像する処理と、
前記巻回体の透過像を表示させる処理と、をコンピュータに実行させることを特徴とする制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒状または柱状の巻回体の内部の異常を検査する検査装置、その制御装置、制御方法および制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
フィルム状またはシート状の製品は、製品を筒状または柱状に巻いた巻回体の状態で、運搬、管理および取引される。このような製品は、それ自体に欠陥が生じたり、製品を巻き取る際に金属片などの異物を巻き込んだりして、異常が発生する場合がある。異常を含む製品は出荷前の検査で発見され、取り除かれる。
【0003】
このような巻回体の検査の方法として、従来、電磁波を用いた方法が知られている。例えば、巻回体の表面に電磁波を照射して反射像で検査する方法(特許文献1参照)や、巻回体を一つの芯から他方に移し替える最中にシート状の製品に電磁波を照射する方法(特許文献2参照)が挙げられる。
【0004】
しかしながら、特許文献1記載の方法では、被検体内部の異常を検出できない。また、特許文献2記載の方法では、製品を巻き直す際に混入する異物を検出できない。これに対し、巻回体の軸方向に電磁波を照射して、透過像により巻回体を展開することなくその内部まで検査する方法(特許文献3、4参照)が提案されている。また、検出面を電磁波の強度が最も高い方向に対して傾けて異物の検出漏れを低減させる方法(特許文献5参照)も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-186193号公報
【特許文献2】特開2014-20910号公報
【特許文献3】特開2018-91825号公報
【特許文献4】特開2018-92890号公報
【特許文献5】特開2019-174413号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の特許文献3、4記載の方法では、電磁波を巻回体の軸方向へ照射し、透過した電磁波をセンサで検出することで、巻回体の形状のままでその内部を検査している。しかしながら、中心軸方向に大きい巻回体を検査する場合には、電磁波が巻回体を透過せず、異常の像と背景の像のコントラスト差を得にくくなり、透過像から異常の有無を判断することは難しい。また、背景像に巻回体の巻き筋由来の像が伴いやすく、異常の虚報をもたらす虞もある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、中心軸方向に大きい巻回体であっても正確かつ容易に巻回体内部の異常を検査することができる検査装置、その制御装置、制御方法および制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上記の目的を達成するため、本発明の検査装置は、筒状または柱状の巻回体の内部の異常を検査する検査装置であって、電磁波を照射する電磁波源と、前記電磁波が照射される位置に巻回体を保持する保持部と、前記電磁波源に対向する位置に撮像面を有し、前記巻回体を透過した電磁波を検出して透過像を取得する撮像部と、を備え、前記保持部は、撮像時において前記電磁波源の焦点と前記撮像面とを結んだ特定の直線が前記電磁波の照射方向に前記巻回体の中心軸方向に延びる外周面を外から内へ横切る位置に前記巻回体を保持し、前記撮像部は、前記巻回体を通過した電磁波を前記巻回体の外周面の外で検出することを特徴としている。
【0009】
このように、巻回体の外周面を電磁波が照射する配置で透過像を取得し巻回体の内部の異常を検査するため、中心軸方向に大きい巻回体であっても正確かつ容易に巻回体内部の異常を検査することができる。
【0010】
(2)また、本発明の検査装置は、前記保持部が、撮像時において、前記電磁波源から電磁波が照射される照射領域および前記電磁波源から照射される電磁波を検出して前記撮像部により撮像できる撮像可能領域のいずれにも少なくとも前記巻回体の内周面の一部が位置するよう前記巻回体を保持することを特徴としている。これにより、巻回体を回転させることで正確かつ容易に巻回体全体の異常を検査することができる。
【0011】
(3)また、本発明の検査装置は、前記電磁波源が、放射状のX線を照射することを特徴としている。これにより、巻回体の内部の広い範囲に対し一度に電磁波を照射でき、効率的に検査を行うことができる。また、拡大光学系となり、より小さな異常を検出できるようになる。
【0012】
(4)また、本発明の制御装置は、上記(1)~(3)のいずれかに記載の検査装置を制御する制御装置であって、入力された条件に基づき、前記電磁波源、前記撮像部および前記巻回体の配置を撮像開始前に調整する配置調整制御部と、前記巻回体の撮像を制御する撮像制御部と、撮像開始後に前記電磁波源および撮像部に対し前記巻回体を相対的に移動させる移動制御部と、を備えることを特徴としている。
【0013】
これにより、電磁波源、撮像部および保持部を配置し、電磁波源および撮像部に対し巻回体を相対的に移動させながら巻回体を撮像できる。その結果、効率的かつ確実に巻回体の内部を検査できる。
【0014】
(5)また、本発明の制御装置は、連続する前記撮像により生じる前記巻回体の検査完了領域にギャップが生じない移動ステップ幅で前記巻回体を相対的に移動させることを特徴としている。これにより、巻回体全体を検査することができる。
【0015】
(6)また、本発明の制御装置は、前記配置調整制御部が、前記巻回体の中心軸を通る面で二分される巻回体の一方側の内周から外周までを透過する前記電磁波を前記撮像面で受光できる位置に前記電磁波源、前記撮像部および前記保持部により保持される巻回体を配置することを特徴としている。これにより、巻回体を回転させて効率的に巻回体全体を検査できる。
【0016】
(7)また、本発明の制御装置は、前記移動制御部が、前記巻回体の撮像の間に、前記電磁波源および撮像部に対し前記巻回体を前記巻回体の中心軸を中心に回転させることを特徴としている。これにより、電磁波源および撮像部に対し巻回体を相対的に回転させながら撮像し、巻回体全体を検査できる。
【0017】
(8)また、本発明の制御装置は、前記巻回体は前記電磁波を遮蔽する芯上に巻かれており、前記芯の外側に生じる検査不可領域が許容範囲内に収まる回転ステップ幅で前記巻回体を前記電磁波源および撮像部に対し回転させることを特徴としている。これにより、検査不可領域を許容範囲に収めつつ巻回体全体を検査することができる。
【0018】
(9)また、本発明の制御装置は、前記移動制御部が、前記巻回体の撮像の間に、前記電磁波源および撮像部に対し前記巻回体を前記巻回体の中心軸に対して平行な方向に移動させることを特徴としている。これにより、電磁波源および撮像部に対し巻回体を相対的に中心軸に沿って移動させながら撮像し、巻回体全体を検査できる。
【0019】
(10)また、本発明の制御装置は、前記配置調整制御部が、前記巻回体の内部における前記電磁波の透過距離に応じた前記透過像の強度の不均一を小さくする方向に撮像面を傾斜させることを特徴としている。これにより、透過像のうち電磁波強度の強い部分が検出の限度を超えて検査不能になることを防止できる。
【0020】
(11)また、本発明の制御装置は、前記配置調整制御部が、前記特定の直線が前記巻回体の内周面に接し、かつ前記撮像面を傾斜させる回転軸を通るように、前記電磁波源、前記撮像部および前記巻回体の配置を調整することを特徴としている。これにより、巻回体の芯から遠い側の撮像面の端部を電磁波源の方向に傾斜させることで容易に透過像の強度の不均一を小さくする方向に撮像面を傾斜させることができる。
【0021】
(12)また、本発明の検査装置は、前記電磁波源および撮像部が、複数の対で構成され、前記電磁波源および撮像部の対は、前記巻回体の中心軸に対して互いに回転対称の位置に配置されていることを特徴としている。これにより、電磁波源および撮像部の複数の対を用い、回転と撮像の繰り返しにより効率的に検査できる。
【0022】
(13)また、本発明の検査装置は、前記電磁波源および撮像部が、複数の対で構成され、前記電磁波源および撮像部の対は、前記巻回体の中心軸に対して平行な直線上の位置に配置されていることを特徴としている。これにより、電磁波源および撮像部の複数の対を用い、中心軸に平行な移動と撮像の繰り返しにより効率的に検査できる。
【0023】
(14)また、本発明の制御方法は、(1)または(2)記載の検査装置の制御方法であって、入力された条件に基づき、前記電磁波源、前記撮像部および前記保持部の配置を事前に調整するステップと、前記巻回体に対し、電磁波を電磁波源から放射させるステップと、前記電磁波源および撮像部に対し前記巻回体を相対的に移動させつつ、前記巻回体を撮像するステップと、前記巻回体の透過像を表示させるステップと、を含むことを特徴としている。
【0024】
これにより、電磁波源、撮像部および保持部を配置し、電磁波源および撮像部に対し巻回体を相対的に移動させながら巻回体を撮像できる。その結果、効率的かつ確実に巻回体の内部を検査できる。
【0025】
(15)また、本発明の制御プログラムは、(1)または(2)記載の検査装置の制御プログラムであって、入力された条件に基づき、前記電磁波源、前記撮像部および前記保持部の配置を事前に調整する処理と、前記巻回体に対し、電磁波を前記電磁波源から放射させる処理と、前記電磁波源および撮像部に対し前記巻回体を相対的に移動させつつ、前記巻回体を撮像する処理と、前記巻回体の透過像を表示させる処理と、をコンピュータに実行させることを特徴としている。
【0026】
これにより、電磁波源、撮像部および保持部を配置し、電磁波源および撮像部に対し巻回体を相対的に移動させながら巻回体を撮像できる。その結果、効率的かつ確実に巻回体の内部を検査できる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、中心軸方向に大きい巻回体であっても正確かつ容易に巻回体内部の異常を検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】第1実施形態の検査システムの装置構成を示す概略図である。
図2】第1実施形態の検査システムの機能的構成を示すブロック図である。
図3】第1実施形態の検査装置の制御方法を示すフローチャートである。
図4】(a)~(c)それぞれ各部の配置、巻回体の配置制御および撮像部の配置制御を示す平面図である。
図5】(a)、(b)それぞれ巻回体の配置調整前の各部の配置例を示す平面図である。
図6】各部の配置制御を示すフローチャートである。
図7】巻回体の位置の決定制御を示すフローチャートである。
図8】(a)、(b)それぞれ傾斜前および傾斜後の光路を示す平面図である。
図9】撮像部の傾斜角度の決定制御を示すフローチャートである。
図10】(a)、(b)それぞれ撮像部の傾斜時の並進ステップの決め方を求める計算に用いる条件およびパラメータを示す平面図および側面図である。
図11】(a)、(b)それぞれ撮像時の巻回体の回転移動を示す平面図および並進移動を示す側面図である。
図12】(a)、(b)それぞれ検査不可領域の発生原因および1ステップ前後の検査可能領域を示す平面図である。
図13】第2実施形態の検査方法を示すフローチャートである。
図14】第3実施形態におけるフィルタを用いた場合の各部の構成を示す平面図である。
図15】(a)、(b)それぞれ第4実施形態における電磁波源と撮像部とを回転対称位置に2対有する検査装置を示す斜視図および平面図である。
図16】(a)、(b)それぞれ第4実施形態における電磁波源と撮像部とを回転対称位置に2対有する検査装置の各部の配置および移動機構を示す平面図である。
図17】(a)、(b)それぞれ第5実施形態における電磁波源と撮像部とを並進対称位置に2対有する検査装置を示す斜視図および平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
次に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。また、以下の説明において、「垂直」、「一致」、「均一」等の表現は、厳密な意味を表さず、効果が得られる限度においてその意味に幅を有する。また、各実施形態は、排他的な関係に無い限り組み合わせることが可能である。
【0030】
[第1実施形態]
(検査システム)
図1は、検査システム10の装置構成を示す概略図である。図2は、検査システム10の機能的構成を示すブロック図である。図1および図2に示すように、検査システム10は、検査装置100および制御装置200により構成されている。
【0031】
検査装置100は、被検体に電磁波を照射し、被検体の透過像により、その内部の異常を検査する。制御装置200は、検査装置100と通信可能に接続されており、検査装置100の各部の動作を制御するとともに透過像のデータを取得し、異常の有無を判定する。
【0032】
被検体は、薄膜、フィルムまたは紙等の薄い物体が一様に巻かれて筒状または柱状に形成された巻回体R10である。巻回体R10は、取り扱いの観点から円柱状であることが好ましいが、N角柱のような形状であってもよい。巻回体R10は、巻かれる薄い物体が多重に巻かれたものでも、一重に巻かれたものでもよい。また、巻回体R10は、芯R11に巻かれた状態であっても、そうでなくてもよい。芯R11が無い場合の詳細は後述する。なお、芯R11は、検査の対象外である。検査の目的は、巻回体R10内に巻き込まれた異物や異常を検出することである。例えば、0.05mm(50μm)以上で元素周期表の第4周期以降の元素を主成分とする小片が巻回体R10内に巻き込まれた場合には、電磁波の透過像で検出しやすい。
【0033】
巻回体R10の例として、円筒状の芯R11に巻かれたポリプロピレンフィルム、ポリイミド等の有機物を主成分としたフィルムまたは密度が均一な紙のシートが挙げられる。薄い無機物の巻回体R10であっても、異物よりも電磁波を透過しやすければ十分に被検体となりうる。
【0034】
(検査装置)
図1に示すように、検査装置100は、電磁波源110、保持部120および撮像部130を備えている。
【0035】
電磁波源110は、巻回体R10に向けて電磁波を照射する。電磁波は、X線であることが好ましい。X線は透過力の強い電磁波であるため、多様な材質や巻き長の巻回体R10に対して透過像を取得することができる。X線以外では、電磁波がテラヘルツ波である場合も好ましい。
【0036】
電磁波源110は、放射状の電磁波を照射することが好ましい。これにより、巻回体R10の内部の広い範囲に対し一度に電磁波を照射でき、効率的に検査を行うことができる。また、拡大光学系となり、より小さな異常を検出できるようになる。なお、電磁波源110は、収束光や平行光を照射してもよい。
【0037】
保持部120は、平面部により巻回体R10を設置可能にする設置台を有し、電磁波が照射される位置に巻回体R10を保持する。保持部120は、回転機構126、水平移動機構127および昇降機構128を有している。回転機構126は、制御に応じて巻回体R10を回転軸に対して回転させる。巻回体R10は、その中心軸を回転機構126の回転軸に一致させて設置する。水平移動機構127は、制御に応じて巻回体R10を水平面上で並進移動させる。昇降機構128は、制御に応じて巻回体R10を水平面に対し垂直な方向に並進移動させる。これらの移動機構は、ステッピングモータおよびガイドを用いることで実現できる。そして、移動距離を認識し巻回体R10の全体を網羅して検査することが可能になる。
【0038】
保持部120は、これらの移動機構に対し巻回体R10を係止する係止機構を有していることが好ましい。係止機構には、例えば回転機構126上で芯R11をつかむクランプまたは芯R11を鉛直上下で挟む機構が挙げられる。係止機構は、巻回体R10の底面を真空等によりチャックする機構であってもよい。保持部120により、巻回体R10は、電磁波源110と撮像部130との間において電磁波源110の焦点Fと撮像面131とを結んだ特定の直線(基準線)が、電磁波の照射方向に外周面を外から内へ横切る位置に巻回体R10を保持する。なお、撮像面131は、撮像部130が被検体を透過した電磁波を検出する面である。
【0039】
このような配置で巻回体R10の透過像を取得するため、中心軸方向に大きい巻回体R10であっても正確かつ容易に巻回体R10内部の異常を検査することができる。また、このように保持された巻回体R10では、巻きが成す曲面による擬直線が電磁波の光路と一致することがないため、巻き由来のコントラストによる虚報を防ぐことができる。巻回体R10の中心軸が、電磁波源110と撮像部130とを結ぶ直線に対し垂直となる配置が、特に好ましい。
【0040】
保持部120は、特に芯R11を有する巻回体R10に対して、撮像時において、次のような配置で巻回体R10を保持することが好ましい。その配置では、電磁波源110から電磁波が照射される照射領域および電磁波源110から照射される電磁波を検出して撮像部130により撮像できる撮像可能領域のいずれにも少なくとも巻回体R10の内周面の一部が位置する。
【0041】
撮像部130は、電磁波源110に対向する位置に撮像面131を有し、巻回体R10を透過した電磁波を検出して透過像を撮像する。撮像時において、撮像部130は巻回体R10を通過した電磁波を巻回体R10の外周面の外で検出する。撮像部130は、例えばラインセンサ、TDIセンサ、CCDやCMOS等の2次元イメージセンサであり、撮像面に入射する電磁波を検出できる。検出された電磁波は電気信号としてカウントされ、透過像データとして制御装置200へ送信される。
【0042】
撮像支持部140は、回転機構146、左右移動機構147および前後移動機構148を有し、撮像部130を支持しつつその配置を変更する。回転機構146は、制御に応じて撮像部130を回転軸に対して回転させる。回転軸は、巻回体R10の中心軸と同じ方向の軸であることが好ましく、例えばそれらの方向は鉛直方向である。巻回体R10の中心軸の方向が撮像面と平行であり、電磁波の照射に対し撮像面に巻回体R10が投影される配置が好ましい。
【0043】
左右移動機構147は、制御に応じて撮像部130を水平面上で電磁波源110側から見て左右に並進移動させる。撮像部130の移動を電磁波の進行方向に対して垂直な方向に制御できる移動機構を有することで巻回体R10の半径方向の大きさに対して、検査に最適な位置に撮像部130を移動できる。電磁波の進行方向は、例えば、コーン状の電磁波である場合、照射領域の中心軸の方向である。前後移動機構148は、制御に応じて撮像部130を水平面上で電磁波源110側から見て前後に並進移動させる。これにより、電磁波源110の焦点Fと回転機構146の回転軸dvまでの距離Diを調整できる。
【0044】
(制御装置)
図2に示すように、制御装置200は、入力部210、記憶部220、パラメータ算出部230、配置調整制御部250、撮像制御部260、移動制御部270および異常判定部280を備え、検査装置100を制御する。制御装置200は、例えばPCであり、各部の機能を実現するためのプロセッサおよびメモリを備えている。
【0045】
入力部210は、ユーザからの条件や決定操作の入力を受け付ける。条件には、電磁波源110と撮像部130との配置および巻回体R10の形状や構造を表すものが挙げられる。条件の詳細は、後述する。
【0046】
記憶部220は、プログラム、入力された条件、算出されたパラメータおよび撮像により取得された透過像データ等を格納する。パラメータ算出部230は、入力された条件を用いて、巻回体R10や撮像部130の移動制御に必要なパラメータを算出する。
【0047】
配置調整制御部250は、入力された条件および算出されたパラメータを用いて、電磁波源110、撮像部130および巻回体R10の配置を撮像開始前に調整する。配置調整制御部250は、巻回体R10の内部における電磁波の透過距離に応じた透過像の強度分布の不均一を小さくする方向に撮像面を傾斜させることが好ましい。これにより、透過像のうちX線強度の強い部分が検出の限度を超えて検査不能になることを防止できる。
【0048】
配置調整制御部250は、特定の直線が巻回体R10の内周面に接し、かつ撮像面131を傾斜させる回転軸を通るように、電磁波源110、撮像部130および巻回体R10の配置を調整することが好ましい。これにより、巻回体R10の芯から遠い側の撮像面131の端部を電磁波源110から遠ざける方向に傾斜させることで容易に透過像の強度の不均一を小さくする方向に撮像面131を傾斜させることができる。なお、用いるX線の強度が小さく計数強度が飽和するおそれの無い場合等では、撮像面131は必ずしも傾斜させる必要はない。撮像開始前の各部の配置調整の詳細は、後述する。
【0049】
撮像制御部260は、巻回体R10の撮像を制御する。具体的には、電磁波源110からの電磁波の照射および撮像部130からの透過像データの取得を制御する。
【0050】
移動制御部270は、入力された条件および算出されたパラメータを用いて、撮像開始後に電磁波源110および撮像部130に対し巻回体R10を相対的に移動させる。これにより、電磁波源110、保持部120および撮像部130の位置を制御し、電磁波源110および撮像部130に対し巻回体R10を相対的に移動させながら巻回体を撮像できる。その結果、効率的かつ確実に巻回体R10の内部を検査できる。
【0051】
移動制御部270は、巻回体R10の撮像の間に、電磁波源110および撮像部130に対し巻回体R10をその中心軸を中心に回転できる。これにより、電磁波源110および撮像部130に対し巻回体R10を相対的に回転させながら撮像し、巻回体R10の全体を検査できる。
【0052】
移動制御部270は、巻回体R10の撮像の間に、電磁波源110および撮像部130に対し巻回体R10をその中心軸に対して平行な方向に移動できる。これにより、電磁波源110および撮像部130に対し巻回体R10を相対的に中心軸に対してさせながら撮像し、巻回体R10の全体を検査できる。
【0053】
異常判定部280は、得られた透過像データに基づいて異常の有無を自動で判定する。異常判定部280は、例えば画像解析によりノイズと異物や欠陥とを区別し、異常があるか否かを判定することができる。
【0054】
(検査方法)
上記のように構成された検査システム10を用いた検査方法を説明する。検査方法のうち、検査装置100の制御はプログラムを制御装置200に実行させることで行われる。図3は、検査装置100の制御方法を示すフローチャートである。まず、ユーザが巻回体R10を保持部120に設置する。そして、ユーザは条件を入力し、制御装置200は、入力された条件を受け付ける(ステップS101)。
【0055】
次に、制御装置200は、必要なパラメータを算出し、撮像開始前に電磁波源110、保持部120および撮像部130の各部の配置を調整する(ステップS102)。各部の配置制御の詳細は後述する。配置制御が完了したら、撮像のプロセスに入り、必要なパラメータを算出し、巻回体R10を撮像する(ステップS103)。
【0056】
撮像は、巻回体R10に対し電磁波を電磁波源110から放射させ、撮像部130が巻回体R10の透過像を取得することで行われる。また、撮像ごとに取得された透過像から異常の有無を判定し、異常がある場合には直ちにユーザに報知することが好ましい。このような異常の報知は、一周にわたる撮像の完了後または全体の検査の完了後に行ってもよい。
【0057】
撮像後、巻回体R10の一周にわたる撮像が完了したか否かを判定する(ステップS104)。一周にわたる撮像が完了していない場合には、巻回体R10をさらに1ステップ分回転させ(ステップS105)、ステップS103に戻る。一周にわたる撮像が完了した場合には、巻回体R10の全体の検査が完了したか否かを判定する(ステップS106)。
【0058】
全体の検査が完了していない場合には、巻回体R10をその中心軸に平行な方向に並進移動させ(ステップS107)、ステップS103に戻る。全体の検査が完了した場合には、撮像のプロセスを終了し、検査を終了する。
【0059】
なお、上記の巻回体R10の回転および並進移動は、電磁波源110および撮像部130に対し巻回体R10を相対的に移動させることで行われる。巻回体R10が静止し、電磁波源110および撮像部130が、巻回体R10に対して回転および並進移動してもよい。このように撮像と移動を繰り返すことで、効率的かつ確実に巻回体R10の内部を検査できる。
【0060】
(入力条件)
上記の検査方法において、ユーザが入力すべき条件の一例としては、装置配置に係る条件および巻回体に係る条件が挙げられる。
【0061】
(1)装置配置に係る条件
装置配置に係る条件には、角度φの基準となる直線において、電磁波源110の焦点Fと撮像面131までの距離Di、電磁波源110の焦点Fと巻回体R10の中心軸結ぶ直線を、角度φの基準となる直線に射影したものの長さDo、および巻回体が保持されている環境(例えば大気)の線吸収係数μback、芯R11の外周に生じる検査不可領域の幅Δdおよび撮像面131上の芯R11の像から撮像面131の端までの距離wが挙げられる。なお、線吸収係数μbackのように、場合により入力が必要になるオプションの情報も含まれる。長さDoは、後述の図4(b)を用いて説明すると、焦点Fと中心軸sとを結ぶ直線の基準線RL1への投影に当たる。
【0062】
(2)巻回体に係る条件
巻回体R10に係る条件には、巻回体R10の外周半径R、芯R11の外周半径rおよび巻回体R10の電磁波の線吸収係数μmatが挙げられる。
(3)電磁波に係る条件
その他条件の例として、電磁波の出力に係る条件が挙げられる。電磁波の出力に係る条件には、強度および波長が挙げられ、特にX線の場合には管電圧および管電流が挙げられる。
【0063】
(配置調整)
上記の検査方法における配置調整のプロセスには、巻回体R10の配置調整と撮像部130の傾斜調整が含まれる。なお、撮像部130の傾斜調整は、必要に応じて省いてもよい。巻回体R10の配置調整では、電磁波源110および撮像部130に対する巻回体R10の相対的な位置を調整する。
【0064】
図4(a)~(c)は、それぞれ各部の配置、巻回体R10の配置制御および撮像部130の配置制御を示す平面図である。図4(a)~(c)では、巻回体R10の設置台の表面を含む平面に各部が射影されている。図4(a)に示すように、電磁波源110の焦点Fを通り、撮像基準面RP1に垂直な直線を基準線RL1とする。この場合の基準線RL1は、取り扱い易さの面でコーン状の電磁波の照射領域の中心軸と一致することが好ましいが、必ずしも一致していなくてもよい。焦点Fと、基準線RL1と撮像基準面RP1との交点Aとは、距離Diだけ離れている。図4(a)に示す構成において、撮像基準面RP1は、傾斜していない状態の撮像面131を含む平面である。
【0065】
図4(b)に示すように、焦点Fと、保持部120の回転軸sから基準線RL1に引いた垂線と基準線RL1との交点Bとは、距離Doだけ離れている。回転軸sは、設置台の表面と直交する。保持部120は、回転軸sの回りを回転できる。保持部120は、基準線RL1に平行な方向に回転軸sを並進移動可能にする移動機構s1および基準線RL1に垂直かつ巻回体R10の設置台の表面に平行な方向に回転軸sを並進移動可能にする移動機構s2を有する。なお、回転軸sと平行な移動機構s3があってもよい。
【0066】
図4(c)に示すように、撮像部130は、回転軸dvの回りを回転できる。回転軸dvは、交点Aを通り、かつ巻回体R10の中心軸に平行となる。設置台の表面と直交する。撮像支持部140は、基準線RL1に平行な方向に回転軸dvを並進移動可能にする移動機構d1および撮像面131に平行かつ巻回体R10の設置台の表面に平行な方向に撮像面を並進移動可能にする移動機構d2を有する。
【0067】
なお、配置調整の計算では、上記のDoおよびDiを含め以下の条件を用いる。
Di:電磁波源110の焦点Fから基準線RL1と撮像面131との交点Aまでの距離
Do:電磁波源110の焦点Fから巻回体R10の中心軸を通り基準線RL1に垂直な平面までの距離
R :巻回体R10の外周半径
r :芯R11の外周半径
w :撮像面131上の芯R11の像から撮像面131の端までの距離
Δd:芯R11の外周に生じる検査不可領域U1の幅
【0068】
(Do、Diに関する確認事項)
パラメータに関して、以下の事項は条件の入力の際に考慮すべき事項である。
【0069】
(1)必要な空間分解能
撮像部130の空間分解能より撮像面131における異常(欠陥または異物)の像の大きさの方が小さいと、異常の有無を検査できない。その要請からDo/Diへ制限が課されるべきである。
【0070】
(2)機械的な干渉の回避
電磁波源110、巻回体R10および撮像部130が機械的に干渉しないことが必要である。したがって、各部のサイズに基づき、距離Doの最小値Dominおよび距離Diの最小値Diminへ制限が課されるべきである。
【0071】
(3)計数飽和の回避
電磁波が照射される巻回体R10の領域を撮像する撮像部130の領域が計数飽和を起こさないことが必要とされる。これは、Diの最小値Diminへの制限となる。
【0072】
(4)ユーザが望む検査能力
Do/Diに応じて一回の撮像による視野が決まる。視野は、大きい方が有利であるが、検査を行う上で単位時間当たりに撮像部130に到達する電磁波の強度は大きい方が有利である。この電磁波の強度が距離Diに基づいて決まり、それに応じて適切な距離Doが決まる。これらの関係は、ユーザが望む検査能力に応じて変わる。
【0073】
(wに関する確認事項)
距離wを設定するにあたっては、異常(欠陥または異物)を検出できることが大前提である。したがって、重要度順に以下の事項が確認されるべきである。
【0074】
(1)基準線RL1と撮像面131との交差
基準線RL1に沿って照射された電磁波が撮像面131で検出されなければ、芯R11付近の検査が不十分となる。そのため、基準線RL1と撮像面131との交差が必要になり、これは距離wの最大値wmaxへの制限となる。
【0075】
(2)視野の確保
視野を稼ぐため、上記の最大値wmaxへの制限を満たす範囲で距離wはなるべく大きく取ることが好ましい。なお、視野とは、撮像可能領域を指す。
【0076】
(3)直接入射の回避
撮像部130を保護するため、電磁波源110からの電磁波が撮像部130に直接入らないことが好ましい。これは、距離wの最大値wmaxへの制限となる。ただし、この制限は、電磁波および撮像部130の種類によっては無視することもできるため、状況またはユーザからの要望に依存する。
【0077】
(各部の配置調整)
図5(a)、(b)は、それぞれ巻回体R10の配置調整前の各部の配置例を示す平面図である。図5(a)に示す配置では、撮像部130は、基準線RL1を中心に対称となる位置に配置され、電磁波源110からの電磁波が直接に撮像部130に入射する。この状態で、撮像部130の感度調整のための補正データを取得できる。
【0078】
補正時には撮像面131上に電磁波を均一に照射したいため、撮像部130は電磁波源110から遠くに配置することが好ましい。電磁波源110に対し、巻回体R10の撮像時に計数される強度近傍の強度が得られる距離を置いて撮像部130を配置することが好ましい。
【0079】
図5(a)に示す配置では、巻回体R10が退避しているが、巻回体R10を設置しなければ退避と同等に補正データの取得は可能である。
【0080】
補正データの取得後、巻回体R10は撮像に向けて配置調整される。電磁波源110から照射された電磁波のうち、巻回体R10の内部にある芯R11との境界を透過し、撮像部130に入射するものが存在するよう巻回体R10を配置することが好ましい。特に巻回体R10に芯R11があり、以下の2つの条件のうち、1つでも満たす場合に、このような配置が効果的である。
(1)巻回体R10全体を一回で撮像できない程度に巻回体R10の半径が大きい。
(2)芯R11による電磁波の吸収が巻回体R10に対して大きい、または芯R11の材質が不均一で透過像にコントラストが生じる要因がある。
【0081】
具体的には、巻回体R10および撮像部130の相対位置を、次の2つの条件を満たすように保持する。なお、巻回体R10の配置は、回転機構126、水平移動機構127、昇降機構128を用いて行うことができる。
(1)撮像部130が検出する電磁波の大半が芯R11を通過したものでない。
(2)芯R11と巻回体R10との境界が、撮像部130によって検出される像に含まれる。
【0082】
このようにして、巻回体R10の中心軸を通る面で二分される巻回体R10の一方側の巻回体R10の内周から外周までを透過する電磁波を撮像面131で受光できる位置に電磁波源110、撮像部130および保持部120により保持される巻回体R10を配置することができる。これにより、一方側の巻回体R10に電磁波を集中でき、巻回体R10を回転させて効率的に巻回体R10の全体の検査を行うことができる。なお、電磁波が「内周から外周まで通過する」とは、例えば後述の図10(a)の巻回体R10の点QAから点QBまでを電磁波が通過することを指す。「内周から外周まで通過する」ことに方向性は関係なく、内周と外周を含んで透過していればよい」
【0083】
また、透過像において画像解析の対象外となる芯R11が占める割合を減らすことで、一つの透過像当たりの検査対象範囲を広くできる。また、芯R11と巻回体R10との境界を含む像を撮像することで、巻回体R10の内部を限界まで検査できる。
【0084】
図6は、各部の配置制御を示すフローチャートである。まず、撮像部130の補正データを取得する(ステップS111)。補正データの取得後、制御装置200は、巻回体R10の設置を確認し、巻回体R10が存在しない場合はユーザに設置を要請する(ステップS112)。次に、巻回体R10の位置を決定する(ステップS113)。巻回体R10の位置の決定制御の詳細は後述する。巻回体R10の移動は、保持部120を移動制御して行う。
【0085】
次に、電磁波源110および撮像部130の相対的な配置を調整する(ステップS114)。この際には、ユーザ指定の距離Do,距離Di,距離wが確保されるように、電磁波源110、巻回体R10および撮像部130の各部を移動する。最後に、検査に適した撮像部130の傾斜角度を決定して(ステップS115)、配置制御を終了する。撮像部130の傾斜角度の決定制御の詳細は後述する。
【0086】
(巻回体の位置の決定)
図7は、巻回体の位置の決定制御を示すフローチャートである。この処理において巻回体R10を透過する電磁波の強度が十分あれば、各部の位置が図4(b)に示すような距離Do、Diおよびwを有する配置である必要はない。芯R11と基準線RL1とを予め近づけておくことが好ましい。この処理の開始直後に撮像したときに芯R11と巻回体R10の境界が透過像に入る位置まで近づけることがさらに好ましい。
【0087】
まず、巻回体R10を位置決定時の初期位置へ移動する(ステップS121)。巻回体R10の透過像を取得する(ステップS122)。撮像により得られた透過像上で芯R11の境界が基準線RL1に一致するか否かを判定する(ステップS123)。巻回体R10と芯R11との境界の位置は自動検出することが好ましい。なお、この時点では、透過像上の基準線RL1の位置は、撮像部130の中心線である。一方、芯R11の境界が基準線RL1に一致しない場合には、基準線RL1に垂直な移動機構s2の方向(電磁波の進行方向に対して垂直な方向)に巻回体R10を微小移動させ(ステップS124)、ステップS122へ移動する。微小移動の距離は、境界位置から算出することが好ましい。
【0088】
一方、透過像に含まれる芯R11の境界が。基準線に一致する場合には、そこに巻回体R10の位置を決定する(ステップS125)。そして、巻回体R10の位置の決定制御を終了する。このようにして、撮像面131を、照射される電磁波の進行方向に対して正対させ、巻回体R10と芯R11の境界近傍を通過する電磁波が撮像面131の端に入射するように巻回体R10および撮像部130の相対位置を決定できる。
【0089】
(撮像部の傾斜角度の決定)
各部の配置調整が終了したら、撮像部130の傾斜調整を行う。照射される電磁波が放射状のX線で、かつ上記のような各部の配置で検査する場合、撮像部130を傾けて使用するのが好ましい。回転軸の方向は巻回体R10の中心軸の方向と一致させる。
【0090】
図8(a)、(b)は、それぞれ傾斜前および傾斜後の光路を示す平面図である。図8(a)に示す撮像部130の傾斜前の配置において、矢印IN0が示すように、芯R11に近いほど電磁波が巻回体R10内を通過する光路が長く、遠いほど電磁波が巻回体R10内を通過する光路が短くなる。このとき撮像面131に入る電磁波の強度は、矢印IN1が示すように、基準線RL1に近い位置ほど強度が小さく、基準線RL1に遠い位置ほど強度が大きい。これでは、撮像条件次第で計数が飽和する画素が生じる。
【0091】
そこで、図8(b)に示すように、撮像部130を傾斜させることで、矢印IN2が示すように回転軸から遠いほど線源の焦点からセンサまでの光路を長くすることができる。その結果、表示IN3に示すように、撮像面131の位置によらず入射電磁波の強度を均一にすることができる。
【0092】
回転軸dvによる傾斜方向は、撮像面上に投影される巻回体R10と芯R11との境界像を基準に巻回体R10の像が存在する側が電磁波源110から離れる方向である。
【0093】
上記のように、撮像部130の各画素に入射する電磁波の強度を粗調整することで、次の2つの効果を得ることができる。
【0094】
(1)計数値の飽和の回避
計数値が飽和する画素の発生を防ぎ、撮像部130全体を用いた効率の高い検査を行うことができる。
【0095】
(2)ノイズの均一化
電磁波がX線の場合、ノイズレベルに計数値依存性があり、傾斜なしでの撮像においてノイズに強い場所依存性が現れる。また、撮像面131の傾斜によってノイズレベルを均一化することにより、画像処理の簡略化に寄与することができる。
【0096】
図9は、撮像部130の傾斜角度の決定制御を示すフローチャートである。まず、回転軸dvを中心にユーザ指定の傾斜角として許容される最大限の傾斜まで撮像部130を傾斜させる(ステップS131)。
【0097】
次に、巻回体R10を撮像する(ステップS132)。撮像により得られた透過像の強度分布が均一か否かを判定する(ステップS133)。透過像の強度分布が均一である場合には、ステップS136へ進み、撮像部130の位置を決定して傾斜調整を終了する。透過像の強度分布が均一でない場合には、輝度勾配が改善したか否かを判定する(ステップS134)。なお、ループにおける前回のデータが無い場合には改善したと判定する。
【0098】
輝度勾配が改善した場合には、撮像部130を微小回転させ(ステップS135)、ステップS132に戻る。微小回転は、撮像面131と基準線RL1のなす角が垂直に近づく方向へ行う。一方、輝度勾配が改善していない場合には、撮像部130の位置を決定し(ステップS136)、撮像部130の傾斜調整が終了する。このようにして検査に用いる電磁波および巻回体R10の材質に応じて撮像部130を適切な傾斜角に調整できる。撮像部130の傾斜調整が終了したら、撮像プロセス前の配置調整が終了する。
【0099】
なお、上記のように撮像と微小回転とを繰り返す方法に代えて、計算で撮像部130の傾斜角θdを決定する方法も採りうる。図10(a)、(b)は、撮像部の傾斜時の並進ステップの決め方を求める計算に用いる条件およびパラメータを示した平面図および側面図である。なお、図10(a)に示す領域Q100は検査可能領域(後述)を示す。
【0100】
以下に傾斜角θdの計算方法を説明する。まず、撮像部130において一つの画素当たりに入射する電磁波の強度iをパラメータφ、ψ、およびθdの関数として表現する。
【0101】
なお、電磁波照射方向の緯度φおよび経度ψは、例えば検査装置100から制御装置200へ送信可能な情報であり、以下のように特定できる。照射される電磁波の焦点Fを通り、巻回体R10と芯R11との境界を通る直線のうち、撮像部130への入射位置Aと焦点Fの距離が最短となる直線を基準とする。この直線を含み、撮像部130の回転軸dvに垂直な平面を基準とした天球系を用い、電磁波の照射方向を緯度φと経度ψで表現できる。ラインセンサまたはTDIセンサを使用する場合の電磁波の照射方向の経度ψは、ほぼ0となる。
【0102】
また、電磁波に係る条件には、焦点Fにおける電磁波の、単位立体角あたりの強度I0が挙げられる。立体角は焦点Fを中心として定義することができる。電磁波源110の仕様によってはI0が緯度φまたは経度ψに依存する場合もある。
【0103】
電磁波の強度iをパラメータφ、ψ、およびθdの関数として表現したら、次に、検討するθd範囲を決定し、そのθd範囲内において、それぞれのθdの値に対して電磁波源の焦点Fから緯度φ、経度ψ方向に出射された電磁波によって生じる強度iを数値評価する。この際に検討する(φ、ψ)の組み合わせは電磁波が巻回体R10のみを透過し、検出器に入射する範囲全体で評価する。最後に、それぞれのθdに対し、強度iの最大値と最小値の差を求め、その値が最も小さくなるようなθdが最適な傾斜角となる。
【0104】
電磁波源の焦点Fから発生する電磁波の強度をI0とする。また、距離Dは、焦点Fと、焦点Fから緯度φ、経度ψ方向に出射された電磁波が撮像面上に当たる点PCとの距離である。距離dは、その電磁波が巻回体R10内を透過する距離である。傾斜角θdに対し、強度iは以下の式によって表現される。
【0105】
【数1】
【0106】
距離D(φ,ψ;θd)および距離d(φ,ψ)は以下の式にて表現される。
【数2】
【0107】
【数3】
【0108】
(巻回体の移動)
巻回体R10の検査では、電磁波源110および撮像部130に対し巻回体R10の撮像と移動とを繰り返すことでその全体の検査を行うことが効率的である。このとき、連続する撮像により生じる巻回体R10の検査完了領域にギャップが生じない移動ステップ幅で巻回体R10を相対的に移動させることが好ましい。これにより、漏れなく巻回体R10の全体を検査することができる。このように巻回体R10の移動は、漏れなくダブりなく行うことが好ましい。なお、芯R11が無い場合等、巻回体R11を回転または並進移動させずに検査することも可能である。
【0109】
また、特に芯R11に巻回体R10より電磁波を吸収しやすい材料が用いられている場合には、位置を変えた撮像で効率的に巻回体R10の全体を検査できる。巻回体R10の移動には、回転と並進移動がある。
【0110】
図11(a)、(b)は、それぞれ撮像時の巻回体R10の回転移動を示す平面図および並進移動を示す側面図である。図11(a)に示す配置で1回の撮像により検査できる領域(検査可能領域)は、撮像面131のサイズにより決まる撮像可能領域G1の内部に含まれ、異常によらず検査できる巻回体R10の領域Q104である。この領域の特定には、検出対象となる異常(異物または欠陥)次第では、一回の撮像で検査可能な領域が制限されることも考慮される。
【0111】
撮像および回転を繰り返すことで、巻回体R10内の検査された領域Q101~Q104が増加し、さらに巻回体R10が一周するに至ることでその配置での層内の回転による検査がし尽くされる。なお、図10(a)に示す領域Q100が本来の検査可能領域の形状を表しており、図11(a)および図12(a)、(b)に示す領域Q101~Q104、領域Q111~Q112および領域Q121~Q122は、説明を分かり易くするため検査領域の一部のみの形状を表している。
【0112】
回転による検査の後、図11(b)に示すように巻回体R10の並進移動により検査対象となる層LY1~LY3が変わる。各層LY1~LY3の高さは、検査可能領域の最小高さにより決まる。上記のように、回転による検査と並進移動とを繰り返すことで巻回体R10の全体を検査することができる。
【0113】
(巻回体の回転)
図12(a)、(b)は、それぞれ検査不可領域U1の発生原因および1ステップ前後の検査可能領域Q121、Q122を示す平面図である。巻回体R10が、電磁波を遮蔽する芯R11上に巻かれている場合、芯R11の外側に生じる検査不可領域U1が許容範囲内に収まる回転ステップ幅で巻回体R10を電磁波源110および撮像部130に対し回転させることが好ましい。これにより、検査不可領域U1を許容範囲に収めつつ巻回体R10の全体を検査することができる。
【0114】
巻回体R10または電磁波源110と撮像部130との対を回転機構126で一定の角度分回転させ、静止後に透過像を撮像することが好ましい。静止すれば検査に必要な電磁波の強度が得られやすい。ただし、巻回体R10の材料や構造または電磁波源の種類や強度により連続的に移動しながら撮像してもよい。巻回体R10の撮像と回転は、一周して、最初の撮像位置に戻るまで繰り返す。
【0115】
撮像間の回転角度は、2つの条件のいずれも満たす最大の角度とすることが好ましい。一つの条件は検査不可領域を許容範囲内にすることである。もう一つの条件は、各撮像で連続する検査可能領域にギャップを生じさせないことである。
【0116】
(1)検査不可領域を許容範囲内にするための計算
図12(a)に示すように、芯R11の近傍では、連続する検査可能領域Q111、Q112でカバーできていない領域ΔUが生じる。領域ΔUの半径方向の最大長さΔdを巻回体R10の一周にわたり確保すると、環状の検査不可領域U1を特定できる。
【0117】
許容できる検査不可領域U1の長さΔdに対して、一回のステップ分の回転角は以下の式(4)を満たすθよりも小さくなければならない。
【数4】
【0118】
したがって、検査不可領域U1を許容範囲内にするための1ステップの最大の回転角θは、以下の計算により求められる。
【0119】
巻回体R10の外周半径が小さく、以下の式(5)を満たす場合、巻回体R10の全体を網羅するための1ステップの最大の回転角θは検査不可領域U1によって定められる。
【数5】
【0120】
すなわち、θは式(6)で与えられる。
【数6】
【0121】
(2)連続する検査可能領域にギャップを生じさせないための計算
図12(b)に示すように、検査可能領域Q121、Q122の外周部縁にある頂点(円内の点)同士が接続する回転角θで回転させれば不足なく検査できる。この回転角θと上記の回転角θのうち小さい方が巻回体R10の全体を検査するために必要な最大の回転角である。
【0122】
撮像部130の幅が狭く、以下の式(7)を満たす場合、電磁波源110に近い視野の円弧によって決まる。
【数7】
【0123】
すなわち、次の式(8)で最大の回転角θが決まる。
【数8】
【0124】
(巻回体の並進移動)
巻回体R10の中心軸方向の長さが大きい場合、巻回体R10をその中心軸方向に相対並進移動させることで巻回体R10の全体の検査が可能になる。その場合、検査可能領域のうち、巻回体R10の中心軸の方向の最小の長さ分だけ並進移動するのが効率的である。これにより、中心軸方向に長い巻回体R10の全体に対して過不足ない検査を行うことができる。
【0125】
(巻回体の並進移動距離)
焦点から照射される電磁波のうち、巻回体R10を通過し芯R11は通過せず、かつ撮像部130に到達するもの全てが検査における考察対象となる。電磁波源の終点Fから緯度φ方向に出射された電磁波の光路と巻回体R10の外周の交点のうち、電磁波源の焦点Fに近い交点PA、および電磁波の光路が撮像面と成す交点PBを考える。
【0126】
撮像部130の高さhに対し、以下の式(9)により定義されるΔLを点PBが検出器の撮像面上存在するようなφ(但しφ>0)の関数として数値評価する。算出されたΔLのうち、最小値となるものが適切な並進移動距離となる。
【数9】
【0127】
ここで、焦点Fと交点PAの距離(FA)、および焦点Fと交点PBの距離(FB)は以下のように算出できる。まず、焦点から緯度φ方向に出射された電磁波の光路が撮像部と成す交点と、撮像部の回転軸が射影された点との間の距離βを式(10)により算出する。
【数10】
【0128】
距離(FB)、(FA)は、それぞれ式(11)、(12)により算出できる。
【数11】
【数12】
【0129】
[第2実施形態]
上記の実施形態では、撮像と回転を繰り返し巻回体R10の一周を検査した後、並進移動し、一周にわたる撮像と回転の繰り返しを行っている。これに対し、移動の順番を入れ替え、撮像と並進移動を繰り返して巻回体R10の中心軸方向の端まで検査した後、巻回体R10を回転させ、撮像と並進移動の繰り返しを行ってもよい。
【0130】
図13は、移動の順番を入れ替えた検査方法を示すフローチャートである。まず、ユーザが巻回体R10を保持部120に設置する(ステップT101)。そして、ユーザは条件を入力し、制御装置200は、入力された条件を受け付ける(ステップT102)。
【0131】
次に、制御装置200は、必要なパラメータを算出し、撮像開始前に電磁波源110、保持部120および撮像部130の各部の配置を調整する(ステップT103)。配置調整が完了したら、撮像のプロセスに入り、巻回体R10を撮像する(ステップT104)。
【0132】
撮像後、巻回体R10の端までの撮像が完了したか否かを判定する(ステップT105)。端までの撮像が完了していない場合には、巻回体R10を1ステップ分並進移動させ(ステップT106)、ステップT104に戻る。端までの撮像が完了した場合には、巻回体R10の全体の検査が完了したか否かを判定する(ステップT107)。
【0133】
全体の検査が完了していない場合には、巻回体R10をその中心軸回りに回転させ(ステップT108)、ステップT104に戻る。全体の検査が完了した場合には、撮像のプロセスを終了し、検査を終了する。
【0134】
[第3実施形態]
上記の実施形態では、撮像部130を傾斜させることで撮像面131に入射する電磁波の強度を均一化しているが、撮像部130の傾斜に代えて幅方向に偏りのあるフィルタを巻回体R10を透過した電磁波の照射範囲内に挿入してもよい。図14は、フィルタ150を用いた場合の各部の構成を示す平面図である。図14の表示IN4に示すように、フィルタ150によって撮像面131に入射する電磁波の強度が均一化される。
【0135】
フィルタ150は、幅方向の位置に応じて単調に電磁波の減衰が大きくなるものを用いる。フィルタ150の種類は、巻回体R10の化学種、密度、外周径および電磁波源110から撮像部130までの距離に応じて決めるのが好ましい。図14では、フィルタ150を便宜的に三角柱のフィルタで表しているが、必ずしもこのような形状に限定されない。
【0136】
[第4実施形態]
上記の実施形態の検査装置100は、一対の電磁波源110および撮像部130を備えているが、複数の対を備えていてもよい。図15(a)、(b)は、それぞれ電磁波源110a、110bと撮像部130a、130bとを回転対称位置に2対有する検査装置500を示す斜視図および平面図である。図16(a)、(b)は、それぞれ電磁波源110a、110bと撮像部130a、130bとを回転対称位置に2対有する検査装置500の各部の配置および移動機構を示す平面図である。
【0137】
図15(a)、(b)および図16(a)、(b)に示す例では、電磁波源110a、110bおよび撮像部130a、130bの対が巻回体R10の中心軸に対して互いに回転対称の位置に配置されている。これにより、電磁波源110a、110bおよび撮像部130a、130bの複数の対を用い、回転と撮像の繰り返しを効率的に行うことができる。
【0138】
この実施形態では、図16(a)、(b)に示すように、配置調整時に二つの基準線RL1a、RL1bは回転軸sを挟み、かつ回転軸sと常に等距離eになるような拘束をかけて配置を調整する。そして、電磁波源110a、110bを、焦点Fa、Fbが基準線RL1a、RL1b上に載るように配置する。電磁波源110a、110b、撮像部130a、130bおよびそれらに固有の移動機構は基準線に従属して移動する。
【0139】
回転軸sから基準線RL1a、RL1bへの垂線の交点(それぞれ点Ba、Bb)と電磁波源110a、110bの焦点Fa、Fbの距離Doを特定できる。そして、撮像部130a、130bをその撮像面が基準線RL1a、RL1bと直交するように配置する。撮像面131a、131bと基準線RL1a、RL1bの交点Ca、Cbと点Ba、Bbの距離Ddは距離Di、Doに対して、Di=Do+Ddを満たす。
【0140】
図16(b)に示すように、基準線RL1a、RL1bは、基準線RL1a、RL1bと直交する移動機構stにより移動可能になっている。また、電磁波源110a、110bは、それぞれ基準線RL1a、RL1bと平行な移動機構ga、gbにより、点Baと焦点Faの距離と点Bbと焦点Fbの距離が同じであるという拘束条件を満たして移動可能になっている。
【0141】
撮像部130a、130bは、基準線RL1a、RL1bに平行な移動機構d1a、d1bにより、点Baと点Ca、点Bbと点Cbの距離がが同じであるという拘束条件を満たして移動可能である。また、撮像部130a、130bは、点Ca、Cbを通り、かつ設置台表面が含まれる平面と直交する回転軸dva、dvbにより回転可能である。回転軸dva、dvbは、移動機構d1a、d1bに従属して移動する。
【0142】
また、撮像部130a、130bは、基準線RL1a、RL1bに垂直な移動機構d2a、d2bにより移動可能であり、移動機構d2a、d2bは、移動機構d1a、d1bと回転軸dva、dvbに従属している。
【0143】
保持部120は、回転軸sにより回転可能であり、回転軸sと平行な移動機構s1および基準線RL1a、RL1bに垂直な移動機構s2により移動可能である。巻回体R10を回転移動させる軸sを中心に2π/m(mは1より大きい自然数)で一周の検査を終了できる。
【0144】
上記のような構成をとることで、追加した電磁波源および撮像部の対の組み合わせの数に応じて検査所要時間を短縮し、回転の回数を1/mに低減できる。上記の例ではm=2であり、電磁波源110a、110bおよび撮像部130a、130bの対を巻回体R10の中心軸に対して2回回転対称となるように配置することで実現している。そして、回転移動の回数を1/2に低減できる。
【0145】
同様に、機械的な制限の許す範囲内で電磁波源および撮像部の対を保持部120の回転軸に対してm回回転対称となるように設置することで実現する。電磁波源―撮像部の対を回転させる機構で実現した場合、すべての電磁波源110および撮像部130の対を同一の回転機構で動かすことで本実施形態を実現できる。
【0146】
[第5実施形態]
第4実施形態では、複数対の電磁波源110および撮像部130が回転対称に配置されているが、並進対称に配置されていてもよい。図17(a)、(b)は、それぞれ電磁波源110c、110dと撮像部130c、130dとを並進対称の位置に2対有する検査装置600を示す斜視図および平面図である。
【0147】
検査装置600においては、電磁波源110c、110dおよび撮像部130c、130dの対が、巻回体R10の中心軸に対して平行な直線上の位置に配置されている。これにより、電磁波源110c、110dおよび撮像部130c、130dの複数の対を用い、巻回体R10の中心軸に平行な移動と撮像の繰り返しを効率的に行うことができる。その結果、追加した電磁波源および撮像部の組み合わせの数に応じて検査時間を短縮可能である。また、並進移動の回数を1/nに減らすことにもつながる。
【0148】
図17(a)に示すように、電磁波源110c、110dおよび撮像部130c、130dの対の間隔を調整可能に認識できるよう、電磁波源110c、110dおよび撮像部130c、130dの対を同一の並進移動ガイド610に取り付けることが好ましい。各部の移動は、駆動はモータ等を用いて自動化してもよい。
【0149】
図17(b)に示すように、巻回体R10の中心軸の方向長さをLとして、軸方向にn(=2)個の電磁波源110c、110dおよび撮像部130c、130dの対が配置される。本実施形態では、距離L/n(=L/2)ごとに対が配置される。図17(a)、(b)に示す例に対し、並進移動方向に、等間隔に電磁波源および撮像部の組み合わせを追加配置することも可能である。
【0150】
[第6実施形態]
上記の実施形態では、芯R11上に巻かれた巻回体R10を被検体としているが、芯R11上に巻かれていない巻回体R10に対して異常の有無を検査してもよい。芯R11上に巻かれていない巻回体R10としては、中心が空洞のもの、または中心まで巻回体R10で埋まっていているものが挙げられる。
【0151】
巻回体R10の中心に芯R11が無い場合、撮像前に巻回体R10の内周面または中心軸の透過線が撮像面131に入るように巻回体R10の位置を調整することが好ましい。内周面の透過像で調整する場合、透過像の輝度の保持部120の中心方向に向かうときの蛍光が変わる部位を基準線(回転軸dv)上に合わせることで調整できる。また、中心軸の透過像で調整する場合、透過像の輝度が最も低くなる部位を基準線(回転軸dv)上に合わせることで調整できる。ただし、内周面の透過像で調整する場合は、検査不可領域U1を考慮した補正を加えた位置に調整するとより効果的な検査が可能である。
【0152】
巻回体R10の中心に芯R11が無い場合、芯R11の外周半径rを巻回体R10の内周半径に置き換えることで検査の実施が可能である。すなわち、一回の回転移動分の回転角θをまず決定し、式(6)を用いてΔdを求める。そして、巻回体R10の中心を基準線方向へΔd近づけることで、巻回体R10の内部をくまなく検査できる。また、中心まで埋まっていている巻回体R10に対してはθ=180°で検査装置を制御することができる。
【0153】
[その他の実施形態]
なお、上記の実施形態では、巻回体の回転および並進移動は、電磁波源および撮像部に対し巻回体を相対的に移動させることで行われるが、巻回体が静止し、電磁波源および撮像部が、巻回体に対して回転および並進移動してもよい。また、上記の実施形態では、複数の装置からなる検査システムの構成を説明しているが、単一の装置や一部の構成をクラウド上に設けた装置構成としてもよい。
【符号の説明】
【0154】
10 検査システム
100、500、600 検査装置
110、110a、110b、110c、110d 電磁波源
120 保持部
126 回転機構
127 水平移動機構
128 昇降機構
130、130a、130b、130c、130d 撮像部
131、131a、131b 撮像面
140 撮像支持部
146 回転機構
147 左右移動機構
148 前後移動機構
150 フィルタ
200 制御装置
210 入力部
220 記憶部
230 パラメータ算出部
250 配置調整制御部
260 撮像制御部
270 移動制御部
280 異常判定部
610 並進移動ガイド
R10 巻回体
R11 芯
s 保持部の回転軸
dv、dva、dvb 撮像部の回転軸
G1 撮像可能領域
U1 検査不可領域
IN0~IN4 矢印または表示
LY1~LY3 層
Q101~Q104 検査された領域
Q111、Q112、Q121、Q122 検査可能領域
RL1、RL1a、RL1b 基準線
RP1 撮像基準面
θ 回転角
θ 回転角
θd 傾斜角
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17