(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022024936
(43)【公開日】2022-02-09
(54)【発明の名称】口腔内ヒト角化上皮細胞バリア機能向上用の口腔用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/9789 20170101AFI20220202BHJP
A61K 36/254 20060101ALI20220202BHJP
A61P 1/02 20060101ALI20220202BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20220202BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20220202BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20220202BHJP
A61Q 11/00 20060101ALI20220202BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20220202BHJP
A23L 33/105 20160101ALI20220202BHJP
【FI】
A61K8/9789
A61K36/254
A61P1/02
A61P1/04
A61P3/00
A61P31/04
A61Q11/00
A61Q19/00
A23L33/105
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020127802
(22)【出願日】2020-07-28
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-07-14
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)集会名:クロレラ・機能性植物研究会 第2回研究集会,開催場所:同志社公友会 新島会館本館(京都市上京区寺町通り丸太町上ル松蔭町140-4),開催日:令和1年9月7日 (2)刊行物:クロレラ・機能性植物研究会 第2回研究集会 講演要旨集,発行者:クロレラ・機能性植物研究会,発行日:令和1年8月8日
(71)【出願人】
【識別番号】596120326
【氏名又は名称】株式会社サン・クロレラ
(74)【代理人】
【識別番号】100095522
【弁理士】
【氏名又は名称】高良 尚志
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 正人
(72)【発明者】
【氏名】田中 真樹
(72)【発明者】
【氏名】倉重 圭史
(72)【発明者】
【氏名】竹腰 英夫
(72)【発明者】
【氏名】藤島 雅基
【テーマコード(参考)】
4B018
4C083
4C088
【Fターム(参考)】
4B018MD61
4B018ME14
4B018MF01
4C083AA111
4C083AA112
4C083CC03
4C083CC04
4C083CC41
4C083EE07
4C083EE12
4C083EE13
4C083EE32
4C083EE33
4C083FF01
4C088AB16
4C088AC11
4C088BA09
4C088BA21
4C088CA05
4C088MA52
4C088MA57
4C088MA63
4C088NA14
4C088ZA66
4C088ZA67
4C088ZB21
4C088ZC21
(57)【要約】
【課題】 上皮細胞バリア機能の向上に有効でありヒトにとって安全な剤、口腔用組成物及び方法、並びに食品組成物及び飲料組成物の提供。
【解決手段】 エゾウコギ根の熱水抽出物を有効成分とする上皮細胞バリア機能向上剤、上皮細胞バリア機能向上剤を含有する含嗽用、塗布用、歯磨用又はその他の口腔用の組成物、エゾウコギ根熱水抽出物を有効成分とする機能性食品、栄養補助食品、サプリメント、各種加工食品、調味料、チューインガム等の上皮細胞バリア機能向上用食品組成物及び清涼飲料を始めとする上皮細胞バリア機能向上用飲料組成物、エゾウコギ根の熱水抽出物を用いて上皮細胞バリア機能を向上させる方法。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エゾウコギ根の抽出物を有効成分とする上皮細胞バリア機能向上剤。
【請求項2】
上皮細胞バリア機能が角化上皮細胞バリア機能である請求項1記載の剤。
【請求項3】
バリア機能がタイトジャンクションによるバリア機能である請求項1又は2記載の剤。
【請求項4】
上皮細胞バリア機能向上に伴い上皮細胞の経上皮電気抵抗が上昇する請求項3記載の剤。
【請求項5】
上皮細胞のCLDN-4の発現が上昇すると共に上皮細胞バリア機能が向上する請求項3記載の剤。
【請求項6】
上皮細胞バリア機能がヒト上皮細胞バリア機能である請求項1乃至5の何れか1項に記載の剤。
【請求項7】
請求項6記載の上皮細胞バリア機能向上剤を含有する、含嗽用、塗布用、歯磨用又はその他の口腔用の組成物。
【請求項8】
エゾウコギ根の抽出物を有効成分とする上皮細胞バリア機能向上用食品組成物。
【請求項9】
エゾウコギ根の抽出物を有効成分とする上皮細胞バリア機能向上用飲料組成物。
【請求項10】
エゾウコギ根の抽出物を用いて上皮細胞バリア機能を向上させる方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上皮細胞バリア機能の向上に有効な剤、口腔用組成物及び方法、並びに上皮細胞バリア機能向上用食品組成物及び飲料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
歯周病を含めた口腔感染症の予防は、現代人にとって、特に、高齢者の健康を守るために、重要な課題である。
【0003】
その予防手段の一つとして、細菌感染に対して物理的バリアとして機能する口腔粘膜上皮のバリア機能を高めることが考えられる。
【0004】
粘膜上皮には、細胞間結台装置であるタイトジャンクションタンパクが存在し、細菌感染に対して物理的バリアとして機能している。
【0005】
特開2014-136692号公報には、酵母(サッカロマイセス・セレビシエ)またはその抽出物を含有する上皮バリア機能増強剤が開示されているが、口腔粘膜上皮細胞等の上皮細胞バリア機能の向上に有効であり且つヒトにとって安全な剤、組成物及び方法に対する更なる要望は少なくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上皮細胞バリア機能の向上に有効でありヒトにとって安全な剤、口腔用組成物、食品組成物、飲料組成物及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、例えば次のように表すことができる。
【0009】
(1) エゾウコギ根の抽出物を有効成分とする上皮細胞バリア機能向上剤。
【0010】
(2) 上皮細胞バリア機能が角化上皮細胞バリア機能である上記(1)記載の剤。
【0011】
(3) バリア機能がタイトジャンクションによるバリア機能である上記(1)又は(2)記載の剤。
【0012】
(4) 上皮細胞バリア機能向上に伴い上皮細胞の経上皮電気抵抗が上昇する上記(3)記載の剤。
【0013】
(5) 上皮細胞のCLDN-4の発現が上昇すると共に上皮細胞バリア機能が向上する上記(3)記載の剤。
【0014】
(6) 上皮細胞バリア機能がヒト上皮細胞バリア機能である上記(1)乃至(5)の何れか1項に記載の剤。
【0015】
(7) 上記(6)記載の上皮細胞バリア機能向上剤を含有する、含嗽用、塗布用、歯磨用又はその他の口腔用の組成物。
【0016】
(8) エゾウコギ根の抽出物を有効成分とする上皮細胞バリア機能向上用食品組成物。
【0017】
(9) エゾウコギ根の抽出物を有効成分とする上皮細胞バリア機能向上用飲料組成物。
【0018】
(10) エゾウコギ根の抽出物を用いて上皮細胞バリア機能を向上させる方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明の上皮細胞バリア機能向上剤、口腔用組成物及び方法、並びに上皮細胞バリア機能向上用の食品組成物及び飲料組成物は、上皮細胞バリア機能の向上に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】経上皮電気抵抗(TER)の測定結果を示す。
【
図2】CLDN-4の定量的RT-PCR法による測定結果を示す。
【
図3】免疫蛍光組織染色によりCLDN-4を示す撮影画像である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施の形態を説明する。
【0022】
(1) 本発明の上皮細胞バリア機能向上剤は、ヒトにとって安全性の高いエゾウコギ根の抽出物を有効成分とする。また本発明の口腔用組成物は、本発明の上皮細胞バリア機能向上剤を含有する。また本発明の方法は、エゾウコギ根の抽出物を用いて上皮細胞バリア機能を向上させるものである。更に、本発明の上皮細胞バリア機能向上用の食品組成物及び飲料組成物は、エゾウコギ根の抽出物を有効成分とする。
【0023】
(2) エゾウコギ(学名:Acanthopanax senticosus)の根の抽出物は、例えば、エゾウコギの根を破砕して細片状とし、その細片状物に対し熱水抽出を行い、抽出液を減圧濃縮し、更にエタノール不溶物を除去し、得られた濃縮抽出液をスプレードライヤーにより噴霧乾燥させることにより、熱水抽出物の乾燥粉末として得ることができる。このようにして得られるエゾウコギ根の熱水抽出物の乾燥粉末は、イソフラキシジン、エレウテロサイドB、B1及びE、並びにクロロゲン酸等を主要な成分として含有する。
【0024】
(3) バリア機能を向上させる対象である上皮細胞の例としては、ヒトの上皮細胞、角化上皮細胞、粘膜上皮細胞、角化粘膜上皮細胞、口腔粘膜上皮細胞、角化口腔粘膜上皮細胞等を挙げることができるが、これらに限らない。
【0025】
(4) 上皮細胞のバリア機能としては、タイトジャンクションによるものを挙げることができるが、これに限るものではない。
【0026】
タイトジャンクションによる上皮細胞のバリア機能の向上の評価は種々の手段により行い得る。
【0027】
例えば、タイトジャンクションによる上皮細胞のバリア機能の向上により、一般に、上皮細胞の上層側と基底膜側との間でイオンの透過が制限されて経上皮電気抵抗(TER)の上昇が認められる。このTERの測定は、タイトジャンクションによるバリア機能を評価する方法として広く用いられている。
【0028】
また例えば、接着分子Claudin ("CLDN"ともいう)は、タイトジャンクションの基本構造にかかわるものであり、隣り合う細胞同士を密着させ、物理的バリア機能を担っている。タイトジャンクションによる上皮細胞バリア機能向上の評価は、上皮細胞のClaudin (CLDN) 4の発現上昇を確認することにより行い得る。
【0029】
(5) エゾウコギ根の抽出物(好ましくは熱水抽出物)は、上皮細胞バリア機能向上剤、上皮細胞バリア機能向上用食品組成物若しくは上皮細胞バリア機能向上用飲料組成物の有効成分として用いること、又は、上皮細胞バリア機能を向上させる方法に用いることができる。上皮細胞バリア機能向上剤は、例えば、外用剤として、又は、口腔用の組成物を含む外用組成物中に含有させて用いることができる。
【0030】
(5-1) 上皮細胞バリア機能向上剤を外用剤又は外用組成物としてヒトに適用する場合、有効成分としてのエゾウコギの根の熱水抽出物の乾燥粉末の含有量は、例えば10乃至500μg/mlとすることができる。好ましくは、50乃至500μg/mlである。
【0031】
上皮細胞バリア機能向上剤の外用剤又は外用組成物としてのヒト適用量は、有効成分としてのエゾウコギの根の熱水抽出物の乾燥粉末の含有量において例えば1日に10回以下の適用として1回当たり10乃至2000μgとすることができる。好ましくは、1回当たり50乃至2000μgである。上皮細胞バリア機能向上用食品組成物若しくは上皮細胞バリア機能向上用飲料組成物については、外用剤又は外用組成物としてのヒト適用量に概ね準じた用量とすることができる。
【0032】
(5-2) 外用剤又は外用組成物(口腔用剤又は組成物を含む)の例としては、含嗽用の液剤、軟膏剤若しくはその他の塗布用組成物、貼付用剤、トローチ剤、口腔内崩壊錠、チュアブル錠、ペースト状、ジェル状若しくは液状の歯磨用組成物・化粧品・薬用クリーム・その他の皮膚用剤若しくは組成物等を挙げることができる。
【0033】
食品組成物の例としては、機能性食品、栄養補助食品、サプリメント、各種加工食品、調味料、チューインガム、その他の各種食品を挙げることができ、飲料組成物の例としては、清涼飲料を始めとする各種飲料を挙げることができる。
【0034】
(5-3) また前記のような外用剤若しくは外用組成物並びに食品組成物及び飲料組成物は、それぞれの必要に応じ、各種賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、コーティング剤、着色剤、矯味剤、矯臭剤、可塑剤等を適宜用いることができる。
【0035】
賦形剤の例としては、糖類(乳糖,白糖,ブドウ糖,マンニトール),デンプン(バレイショ,コムギ,トウモロコシ),無機物(炭酸カルシウム,硫酸カルシウム,炭酸水素ナトリウム,塩化ナトリウム),結晶セルロース,植物末(カンゾウ末,ゲンチアナ末)等を挙げることができる。
【0036】
結合剤の例としては、デンプンのり液,アラビアゴム,ゼラチン,アルギン酸ナトリウム,メチ/レセルロース(MC),エチルセルロース(EC),ポリビニルピロリドン(PVP),ポリビニルアルコール(PVA),ヒドロキシプロピルセルロース(HPC),カルポキシメチルセルロース(CMC)等を挙げることができる。
【0037】
崩壊剤の例としては、デンプン,寒天,ゼラチン末,結晶セルロース,CMC・Na,CMC・Ca,炭酸カルシウム,炭酸水素ナトリウム,アルギン酸ナトリウム等を挙げることができる。
【0038】
滑沢剤の例としては、ステアリン酸マグネシウム,タルク,水素添加植物油,マクロゴール,シリコーン油等を挙げることができる。
【0039】
コーティング剤の例としては、糖衣(白糖,HPC,セラック),膠衣(ゼラチン,グリセリン,ソルビトール),フイルムコーティング〔ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC),EC,HPC,PVP〕,腸溶性コーティング〔ヒドロキシプロビルメチルセルロースフタレート(HPMCP),セルロースアセテートフタレート(CAP)〕等を挙げることができる。
【0040】
着色剤の例としては、水溶性食用色素,レーキ色素)等を挙げることができる。矯味剤の例としては、乳糖,白糖,ブドウ糖,マンニトール)等を挙げることができる。矯臭剤の例としては、芳香性精油類),光線遮断剤(酸化チタン)等を挙げることができる。可塑剤の例としては、フタル酸エステル類,植物油,ポリエチレングリコール)等を挙げることができる。
【実施例0041】
1.被験物質の製造
【0042】
エゾウコギ(Acanthopanax senticosus)の根の熱水抽出物の乾燥粉末を次のように製造した。
【0043】
エゾウコギ根部19.9重量部から、熱水抽出、減圧濃縮、エタノール不溶物の除去によって、濃縮抽出液7.1重量部を得た。この濃縮抽出液をスプレードライヤーにより噴霧乾燥し、含水率4重量%以下のエゾウコギの根の熱水抽出物の乾燥粉末(以下、単に「エゾウコギ根エキス」とも言う。)1重量部を得た。
【0044】
2.経上皮電気抵抗(TER)の測定
【0045】
(1) 細胞培養培地の作成
【0046】
ダルベッコ変法Eagle培地(DMEM:SlGMA社製)に対し、1%ペニシリン-ストレプトマイシン(EmbryoMax PEN./STREP. 100×:Millipore社製)及び10%ウシ胎児血清(FBS: Gibco社製)を添加して得られた培養培地を使用した。
【0047】
(2) 培養細胞
【0048】
ヒト角化上皮細胞株(HaCaT)[Cell line service社製]を使用した。
【0049】
(3) TERの測定
【0050】
培養器としてセルカルチャーインサート(BD Falcon社製)を用い、HaCaTがコンフルエントになるまで37℃、5%CO2インキュベーターにて培養した後、エゾウコギ根エキスを添加する前(0hr)にMillicell ERS-2(Millipore社製、Millicellは登録商標)にてTER(Ω/cm2)の測定を行った。
【0051】
その後、コントロールの培養培地には溶媒のDMSO(ジメチルスルホキシド)を、6種のサンプルの培養培地には、それぞれ、エゾウコギ根エキスの最終濃度が1、10、50、100、250、500(μg/mL)となるように、DMSOに溶解させたエゾウコギ根エキスを添加し、それぞれ、24時間後(24hrs)、48時間後(48hrs)及び72時間後(72hrs)にTERの測定を行なった。測定結果を
図1に示す。
【0052】
(4) 結果
【0053】
エゾウコギ根エキスを添加する前(0hr)には、コントロール及び各サンプルにおいて測定されたTERに有意な差は認められなかったが、エゾウコギ根エキス添加より24時間後においては添加エゾウコギ根エキス濃度が50、100、250、及び500(μg/mL)のものにおいてTERの有意な上昇が認められた。エゾウコギ根エキス添加から48時間後においては、添加エゾウコギ根エキス濃度が100μg/mLのもの、添加から72時間後においては、添加エゾウコギ根エキス濃度が10、50、100、250及び500(μg/mL)のものにおいてTERの有意な上昇が認められた。統計解析は、一元配置分散分析後、多重比較検定を行い、危険率0.05以下を有意差ありとした(以下においても同様)。
【0054】
以上の結果より、エゾウコギ根エキスによって上皮細胞の物理的バリア機能が亢進すると認められた。
【0055】
3.CLDN-4の発現変化
【0056】
(1) 上記経上皮電気抵抗(TER)の測定において用いたのと同様の培養培地のうち、エゾウコギ根エキス濃度として上皮細胞のバリア機能上至適濃度と認められた100μg/mLの培養培地を用いて、ヒト角化上皮細胞(HaCaT)[Cell line service社製]におけるCLDN-4の発現変化をreal-time PCR法及び免疫組織蛍光染色にて解析した。
【0057】
(2) real-time PCR法
【0058】
(2-1) 前記培養培地で培養したHaCaTからTRIzol(Ambion社製)によりRNAを抽出し、Oligo(dt)12-18(Invitrogen社製)及びSuperScript II(Invitrogen社製)を使用して逆転写反応によりcDNAを作製した。
【0059】
また、コントロールとしてエゾウコギ根エキスに代えてDMSOを添加した培養培地を用いて同様にcDNAを作製した。
【0060】
それぞれのcDNAにCLDN-4特異的プライマーと同種のTaqMan probe(Applied Biosystems社製、TaqManは登録商標)を使用し、TaqMan Universal PCR Master Mix(Applied Biosystems社製)を加え、Gene Amp 7500 Real-Time PCR System(Applied Biosystems社製)を用いて95℃15秒、60℃1分で40サイクルの反応を行わせることにより、定量的RT-PCR法を実施した。その測定結果を
図2に示す。
【0061】
なお、用いたプライマー及びTaqMan probeは、CLDN-4:HsOO533616_s1、GAPDH:Hs99999905_m1である。
【0062】
(2-2) エゾウコギ根エキス濃度100μg/mLの培養培地を用いることにより、
図2に示されるように、CLDN-4の有意な発現の上昇が認められ、エゾウコギ根エキスによって上皮細胞の物理的バリア機能が向上すると認められた。
【0063】
(3) 免疫蛍光組織染色
【0064】
(3-1) 上記経上皮電気抵抗(TER)の測定において用いたのと同様の培養培地(エゾウコギ根エキス添加前のもの)を使用し、Lab-Tek II Chamber Slide(Nalge Nunc社製)を用いて、ヒト角化上皮細胞(HaCaT)[Cell line service社製]を、100%コンフルエントになるまで37℃、5%CO2インキュベーターにて培養した後、DMSOに溶解させたエゾウコギ根エキスを100μg/mL濃度となるように培養培地に添加して24時間培養を行った。コントロールには、エゾウコギ根エキスの溶媒として用いたDMSOを添加して24時間培養を行った。
【0065】
それらの培養細胞をそれぞれPBSにて洗浄した後、70%エタノールにより固定し、一次抗体としてマウスモノクローナル抗CLDN-4抗体(32-9400、Invitrogen社製)を1%BSA含有PBSで200倍希釈し、4℃にて16時間反応させた。
【0066】
次いで、それらの細胞を0.1%BSA含有PBSで3回洗浄した後、1%BSA含有PBSにて200倍希釈したAlexa Fluor 488 goat anti-mouse IgG(Invitrogen社製、Alexa Fluorは登録商標)と、遮光下にて室温で1時間反応させた後、0.1%Tween 20含有PBSで3回洗浄し、Dapi-Fluoromount-G組織標本封入剤(SouthernBiotech社製)にて封入乾燥後、共焦点レーザー顕微鏡DIGITAL ECLIPSE C1(Nikon社製)を用いて観察撮影を行った。
【0067】
【0068】
(3-2) CLDN-4は、DMSOが添加されたコントロールでは明瞭な染色像は認められなかったが、エゾウコギ根エキス100μg/mL濃度の培養培地で培養されたものにおいては細胞間隙に線状の陽性像が多く認められた。
【0069】
エゾウコギ根エキスによって上皮細胞の物理的バリア機能が向上すると認められた。
【0070】
4.以上の結果より、エゾウコギ根エキスを有効成分とする剤、その剤を含有する口腔用組成物、エゾウコギ根エキスを用いる上皮細胞バリア機能向上方法、並びにエゾウコギ根エキスを有効成分とする上皮細胞バリア機能向上用の食品組成物及び飲料組成物の、上皮細胞バリア機能の向上についの有効性が認められた。