(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022024985
(43)【公開日】2022-02-09
(54)【発明の名称】気泡の発生を回避するための慎重な不可逆電気穿孔(IRE)プロトコル
(51)【国際特許分類】
A61B 18/12 20060101AFI20220202BHJP
【FI】
A61B18/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021056893
(22)【出願日】2021-03-30
(31)【優先権主張番号】16/940,831
(32)【優先日】2020-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】アサフ・ゴバリ
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160KK03
4C160KK23
4C160KK25
4C160KK37
4C160KK63
4C160MM38
(57)【要約】
【課題】心臓組織の不可逆電気穿孔(IRE)を行うこと。
【解決手段】不可逆電気穿孔(IRE)は、器官内の組織と接触して配置されたカテーテルの電極によってIREパルスを印加するための初期IREプロトコルを設定することを含む。初期IREプロトコルが血液中の気泡を引き起こすことが予期されると判定すると、ユーザに通知が発行される。通知に応じて、初期IREプロトコルと、気泡を引き起こすことが予期されない代替プロトコルとのいずれかを選択するユーザ入力をユーザから受信する。ユーザ入力に応じて、初期IREプロトコル又は代替IREプロトコルに従ってIREパルスが与えられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
不可逆電気穿孔(IRE)システムであって、
器官内の組織と接触して配置されたカテーテルの電極によってIREパルスを与えるためのIREプロトコルを設定するように構成されたユーザインタフェースと、
プロセッサと、を備え、前記プロセッサは、
初期IREプロトコルが血液中の気泡を引き起こすことが予期されると判定すると、ユーザに通知を発行し、
前記通知に応じて、前記初期IREプロトコルと、前記気泡を引き起こすことが予期されない代替プロトコルとのいずれかを選択するユーザ入力を、前記ユーザインタフェースを介して受信し、
前記ユーザ入力に応じて、前記初期IREプロトコル又は前記代替IREプロトコルに従って前記IREパルスを与える
ように構成されている、システム。
【請求項2】
前記プロセッサが、前記ユーザ入力において、パルス列間のそれぞれの所与の休止を伴う所与の数の前記パルス列への、一連の前記IREパルスの分割を受信するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記初期IREプロトコル及び前記代替IREプロトコルが、同じ合計数の前記IREパルスを有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記代替IREプロトコルが、前記初期IREプロトコルよりも少数のパルスを有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
不可逆電気穿孔(IRE)方法であって、
器官内の組織と接触して配置されたカテーテルの電極によってIREパルスを与えるための初期IREプロトコルを設定することと、
前記初期IREプロトコルが血液中の気泡を引き起こすことが予期されると判定すると、ユーザに通知を発行することと、
前記通知に応じて、前記初期IREプロトコルと、前記気泡を引き起こすことが予期されない代替プロトコルとのいずれかを選択するユーザ入力を前記ユーザから受信することと、
前記ユーザ入力に応じて、前記初期IREプロトコル又は前記代替IREプロトコルに従って前記IREパルスを与えることと、
を含む、方法。
【請求項6】
前記ユーザ入力を受信することが、パルス列間のそれぞれの所与の休止を伴う所与の数の前記パルス列への、前記初期IREプロトコルの一連の前記IREパルスの分割を受信することを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記初期IREプロトコル及び前記代替IREプロトコルが、同じ合計数の前記IREパルスを有する、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記代替IREプロトコルが、前記初期IREプロトコルよりも少数の前記IREパルスを有する、請求項5に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、侵襲的アブレーションに関し、特に心臓組織の不可逆電気穿孔(IRE)に関する。
【背景技術】
【0002】
侵襲的アブレーションパラメータの推定及び推定に従ってアブレーションを制御することは、特許文献において以前に提案されている。例えば、米国特許出願公開第2013/0006228号は、エネルギーの局所送達のための装置、及びそのような装置を使用する方法、特に生体組織の治療処置について記載している。本開示の方法は、標的部位内にエネルギー送達部材を位置決め及び配置し、エネルギー送達部材を通してエネルギーを送達することを含み得る。一実施形態では、無線周波数(RF)デューティサイクル及び/又はパルス持続時間は、治療信号の周波数、治療信号の電力、又は治療信号への組織インピーダンスを含むことができる1つ又は複数の選択されたパラメータに応じて変化するように構成され得る。
【0003】
別の例として、米国特許出願公開第2016/0066977号は、電気穿孔治療処置中にリアルタイムモニタリングを用いて組織部位をアブレーションするための医療システムを記載している。パルス発生器は、治療処置の前に少なくとも1MHzの周波数を有する治療前試験信号と、治療処置中の治療中試験信号とを生成する。治療制御モジュールは、治療前試験信号及び治療中試験信号からインピーダンス値を決定し、処置が進行している間に、決定されたインピーダンス値に基づいて、リアルタイムでの電気穿孔及び処理の終了点を決定する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
以下に記載される本発明の一実施形態は、器官内の組織と接触して配置されたカテーテルの電極によってIREパルスを与えるための初期IREプロトコルを設定することを含む不可逆電気穿孔(IRE)プロセスを提供する。初期IREプロトコルが血液中の気泡を引き起こすことが予期されると判定すると、ユーザに通知が発行される。通知に応じて、初期IREプロトコルと、気泡を引き起こすことが予期されない代替プロトコルとのいずれかを選択するユーザ入力をユーザから受信する。ユーザ入力に応じて、初期IREプロトコル又は代替IREプロトコルに従ってIREパルスが与えられる。
【0005】
いくつかの実施形態では、ユーザ入力を受信することは、パルス列間のそれぞれの所与の休止を伴う所与の数のパルス列への、初期IREプロトコルの一連のIREパルスの分割を受信することを含む。
【0006】
いくつかの実施形態では、初期IREプロトコル及び代替IREプロトコルは、同じ合計数のIREパルスを有する。他の実施形態では、代替IREプロトコルは、初期IREプロトコルよりも少数のIREパルスを有する。
【0007】
本発明の別の一実施形態によれば、ユーザインタフェース及びプロセッサを含む不可逆電気穿孔(IRE)システムが追加的に提供される。ユーザインタフェースは、器官内の組織と接触して配置されたカテーテルの電極によってIREパルスを与えるためのIREプロトコルを設定するように構成されている。プロセッサは、(i)初期IREプロトコルが血液中の気泡を引き起こすことが予期されると判定すると、ユーザに通知を発行し、(ii)通知に応じて、初期IREプロトコルと、気泡を引き起こすことが予期されない代替プロトコルとのいずれかを選択するユーザ入力を、ユーザインタフェースを介して受信し、(iii)ユーザ入力に応じて、初期IREプロトコル又は代替IREプロトコルに従ってIREパルスを与えるように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本発明は、以下の「発明を実施するための形態」を図面と併せて考慮することで、より完全に理解されよう。
【
図1】本発明の例示的実施形態による、カテーテルに基づく不可逆電気穿孔(IRE)システムの概略描写図である。
【
図2】本発明の例示的実施形態による、
図1のシステムを使用する不可逆電気穿孔(IRE)パルスを与える方法を概略的に図示したフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
概論
パルスフィールドアブレーション(PFA)とも呼ばれる不可逆電気穿孔(IRE)は、高電圧パルスにさらすことによって組織細胞を死滅させるための侵襲性治療様式として使用され得る。具体的には、IREパルスは、心臓不整脈を治療するために心筋組織細胞を死滅させるための潜在的な使用を有する。細胞破壊は、膜貫通電位が閾値を超えて細胞死をもたらし、したがって組織病変の発達をもたらすときに生じる。したがって、具体的には、高電圧双極電気パルスを使用して(例えば、組織と接触している選択された一対の電極を使用して)高電界を発生させて、電極間の組織細胞を死滅させることに関する。
【0010】
しかしながら、組織をアブレーションするために使用されるIREパルスは、パルスが十分に強力であるとき、潜在的な臨床的危険性の意図しない及び/又は望ましくない影響を引き起こすことがある。例えば、100Ωの血中インピーダンス(両方の可能な値)にわたる1kVのパルス電圧は、10Aの局所ピーク電流、すなわち、血液中に10kWを瞬間的に生成する。この電圧は、電極間に印加されて一連の双極IREパルスを形成し、また十分なジュール加熱を発生させるのに十分に高いことがあり、このジュール加熱は、迅速に放散されない場合には血液中に気泡を発生させ得る。一部の医師は、いくつかの気泡形成のリスクを受容することを選んでもよいが、他の医師は、典型的には患者の状態、例えば最近の脳卒中により、受容しないことを好むことがある。
【0011】
本明細書のこれ以降に記載されている本発明の実施形態は、IREのための方法及びシステムを提供する。いくつかの実施形態では、気泡を生成し得るかどうかを判定するために、様々なIREアブレーションプロトコル(「初期プロトコル」とも呼ばれる)は事前に評価される。ラボラトリで実行される評価はまた、ユーザに提案される1つ又は複数の代替プロトコルを判定してもよい。アブレーション処置中に、医師(又は他のユーザ)が最初に、気泡を発生し得るIREアブレーションプロトコルを設定する場合、システムは、「そのままの」すなわち適用されたプロトコルの使用の選択を与えられる(以下、「選択するユーザ入力を受信する」)医師に、気泡を生成しないより慎重なIREアブレーションプロトコルを通知する。
【0012】
いくつかの実施形態では、選択されたプロトコルが気泡を生成し得ると判定することは、所与の電極対の電極間のインピーダンスを推定又は測定し、そのインピーダンスを閾値と比較することを意味する。推定又は測定されたインピーダンスが閾値を下回る場合、プロセッサは、電極対間の血液中の放散された電力が気泡を発生し得ると判定する。
【0013】
いくつかの実施形態では、より慎重なIREアブレーションプロトコルは、選択されたプロトコルのIREパルスシーケンスを、間に休止を伴う複数のパルス列を含むパルスシーケンスに分割する。休止は、任意のパルスからジュール加熱を十分に放散させることを可能し、それにより、気泡が形成されない。
【0014】
いくつかの実施形態では、臨床効果を維持するために、より慎重なIREアブレーションプロトコルは、放散された全体的なエネルギーを変化させない。むしろ、プロトコルは、生成された熱のより多くの拡散を可能にし、加熱によって引き起こされる最高温度を低下させるように、パルス適用時間を広げる。更に、発生した電気穿孔場に影響を及ぼすため、パルスピーク電圧は、典型的には、慎重なIREアブレーションプロトコルでは低減されない。ピーク電圧がいくらか低下すると、臨床的に有効であるように、IREアブレーションに必要とされる既定の最小レベルを上回って維持する必要がある。
【0015】
他の実施形態では、医師(又は他のユーザ)は、ユーザインタフェースから、慎重なプロトコルの任意のパラメータ、特にパルス列の数、及び最小休止長さを修正することができる。例えば、医師は、選択されたプロトコルのIREパルスシーケンスを、それらの間に休止を伴う複数のパルス列を含むパルスシーケンスに分けることができる。休止は、任意のパルスからジュール加熱を十分に放散させることを可能し、それにより、気泡が形成されない。ユーザは、組織に送達される累積(すなわち全体)電力を更に低減するために、パルスの総数をより低くすることを更に決定してもよい。
【0016】
一実施形態において、システムは、例えば、組織の不応期間中に適用されるように、心臓の鼓動と同期して適用されるパルス列をゲート制御する。心室又は心房組織位置における心室及び心房電位図は、例えば、それぞれの心腔のそれぞれの壁組織部分の電気生理学的マッピング中に、通常、位置カテーテルにおける組織と接触する電極によって取得される。心室又は心房性不応期間は、(上記心腔のいずれかの組織において)活性化がそこで生じた後、組織の位置における神経活動の休止の持続時間である。不応期間は、典型的には、心室又はその位置で取られた心房電位図において示される心周期のQRST間隔部分とほぼ一致する。不応期間は、例えば、組織位置で組織をゆっくり移動するペーシングカテーテルを使用して、心臓の組織部分において意図的に誘導され得る。
【0017】
心臓IREアブレーションは、開示された技術に従って、アブレーションカテーテルの遠位端に取り付けられた拡張可能なフレーム(例えば、バルーン又はバスケット)を使用して実行されてもよい。例示的な処置では、アブレーション電極が配置された拡張可能なフレームは、心臓血管系を通ってナビゲートされ、例えば肺静脈(PV)の開口部をアブレーションするために心臓内に挿入される。
【0018】
初期IREプロトコルの代替として、より慎重なプロトコルを提供することにより、拡張可能なフレームカテーテルを使用して、例えばPVの開口部内において、IREアブレーション処置は、臨床的有効性を維持しながら安全に実行され得る。
【0019】
システムの説明
図1は、本発明の実施形態による、カテーテルに基づく不可逆電気穿孔(IRE)システム20の概略描写図である。システム20はカテーテル21を含み、カテーテルのシャフト22は、シース23を通って患者28の心臓30に挿入される。次いで、医師30は、挿入
図25に示すように、シャフト22の遠位端22aを、患者の心臓26の内側の標的位置にナビゲートする。
【0020】
シャフト22の遠位端22aが標的位置に到達すると、医師30はシース23を後退させ、典型的には生理食塩水をバルーン40に圧送することによってバルーン40を拡張する。次いで、医師30は、バルーン40カテーテル上に配置された電極50がPV開口部51の内壁と係合して、電極50を介して高電圧IREパルスを開口部51組織に与えるように、シャフト22を操作する。
【0021】
挿入
図25及び挿入
図27に見られるように、遠位端22aには、複数の等距離の平滑縁部IRE電極50を備える膨張可能なバルーン40が取り付けられる。バルーン40の遠位部分の平坦な形状により、電極50が遠位部分を覆う場合であっても、隣接する電極50間の距離はほぼ一定のままである。したがって、バルーン40の構成は、電極50の平滑な縁部が望ましくない熱効果を最小限に抑えながら、隣接する電極50間のより効果的な(例えば、ほぼ均一な電界強度で)電気穿孔を可能にする。
【0022】
膨張可能なバルーンの特定の態様は、例えば、2019年9月12日に出願された「Balloon Catheter with Force Sensor」と題された米国仮特許出願第62/899,259号、及び2019年12月24日に出願された「Contact Force Spring with Mechanical Stops」と題された米国特許出願第16/726,605号に対処され、これらは両方とも本特許出願の譲受人に付与され、その開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0023】
本明細書に記載される実施形態では、カテーテル21は、心臓26の左心房45内のPV開口部51組織の電気生理学的感知及び/又は前述のIRE隔離などの任意の好適な診断及び/又は治療目的のために使用され得る。
【0024】
カテーテル21の近位端は、隣接する電極50間にIREパルスを与えるように構成されたIREパルス発生器38を備えるコンソール24に接続される。電極は、カテーテル21のシャフト22内を通る電気配線によってIREパルス発生器38に接続される。コンソール24のメモリ48は、ピーク双極電圧及びパルス幅などのIREパルスパラメータを含むIREプロトコルを記憶する。
【0025】
コンソール24は、典型的には汎用コンピュータであって、カテーテル21からと、典型的には患者26の胸部の周囲に配置される外部電極49からの信号を受信するための好適なフロントエンド及びインタフェース回路37とを備えるプロセッサ41を含む。この目的のために、プロセッサ41は、ケーブル39内を通る配線によって外部電極49に接続される。
【0026】
処置中、システム20は、Biosense-Webster(Irvine California)によって提供されるActive Current Location(ACL)法を使用して心臓26内の電極50のそれぞれの位置を追跡することができ、これは米国特許第8,456,182号に記載され、その開示が参照により本明細書に組み込まれる。
【0027】
いくつかの実施形態では、最初に設定されたIREプロトコルを使用して、医師30が気泡の危険性をプロセッサ41によって通知される場合、医師30は、選択されたプロトコルのIREパルス送達55を、挿入
図27に示すように、パルス列間の休止59を伴う複数のパルス列57に分ける(分割)する、より慎重なプロトコルを選択してもよい。休止は、任意のパルスからジュール加熱を十分に放散させることを可能し、それにより、気泡が形成されない。
【0028】
他の実施形態では、医師30は、ユーザインタフェース47から、慎重なプロトコルの任意のパラメータ、特にパルス列の数、及び最小休止長さを修正することができる。例えば、ユーザは、与えられるパルスの総数を低減するために、シーケンス内のパルスを除去することを決定することがある。ユーザインタフェース47は、任意の好適なタイプの入力デバイス、例えば、キーボード、マウス、トラックボールなどを含んでもよい。
【0029】
プロセッサ41は、通常、ソフトウェアにおいて本明細書に記載されている機能を実行するようにプログラムされている。ソフトウェアは、例えばネットワーク上で、コンピュータに電子形態でダウンロードすることができる、又は代替として若しくはこれに加えて、磁気メモリ、光学メモリ若しくは電子メモリなどの、非一時的実体的媒体上に提供及び/又は記憶することができる。
【0030】
具体的には、プロセッサ41は、
図2を含めて本明細書で開示されるような専用のアルゴリズムを実行し、このアルゴリズムは、以下で更に説明されるように、開示される工程をプロセッサ41が実施することを可能にするものである。特に、プロセッサ41は、プロセッサ41がメモリ48からアップロードする処理プロトコルに従ってIREパルスを出力するようにIREパルス発生器38に命令するように構成されている。
【0031】
気泡生成を回避するための慎重なIREプロトコル
図2は、本発明の実施形態による、
図1のシステム20を使用する不可逆電気穿孔(IRE)パルスを与える方法を概略的に図示したフロー図である。提示された実施形態では、このアルゴリズムは、医師30が、バルーンカテーテルナビゲーション工程80において、例えば、電極50をACL感知電極として使用して、PV開口部51などの患者の器官内の標的組織位置へとバルーンカテーテル40をナビゲートする場合に開始するプロセスを実行する。
【0032】
次に、IRE計画工程82において、プロセッサ41は、組織に適用するIREパルスのパラメータを用いて、医師30によって最初に設定されたプロトコルをアップロードする。開示されたバルーン40を使用して心臓組織をアブレーションするために使用され得る初期プロトコルにおけるIREアブレーション設定の例を表Iに示す。
【0033】
【0034】
次に、通知工程84において、プロセッサ41は、初期IREプロトコルが血液中に気泡を生成し得るという通知を医師30に提供する。それに応じて、医師は、プロトコル決定工程86において、プロトコルをそのまま使用する(すなわち、初期プロトコルを使用する)ことを決定することがある。あるいは、プロトコル交換決定工程88において、医師は、プロトコルを、例えば、表IIに示される代替プロトコルに変更することを決定する。
【0035】
【0036】
表IIに見られるように、より慎重なプロトコルでは、表Iの一連のパルスを、パルス列間で2秒の最小休止を伴うそれぞれ5つのパルスの8つのパルス列に分ける。
【0037】
一実施形態では、医師30は、ユーザインタフェース47から、表IIのパラメータのいずれか、具体的にはパルス列の数、及びパルス列間の最小の休止を修正することができる。代替的に、代替プロトコルのパラメータは、プロセッサ41によって自動的に設定されてもよい。1つのこのような実施形態では、プロセッサ41は、サポートされる初期プロトコルごとに、それぞれの代替プロトコルを保持する。別の実施形態では、プロセッサ41は、いくつかの既定のルール又は方法に従って、初期プロトコルのパラメータから代替プロトコルのパラメータを導出する。
【0038】
IREプロトコルが選択されると(工程86による初期プロトコル又は工程88による代替プロトコル)、プロセッサ41は、IRE治療工程90において、IREパルスを組織に与えるように発生器38に命令する。IREパルスは、バルーン40の選択された電極間に与えられて、開口部51を介して発生又は伝播する不整脈を分離する。
【0039】
本明細書に記載される実施形態は、主に心臓用途に対処するものであるが、本明細書に記載される方法及びシステムは、神経や耳鼻咽喉などの他の医療用途で用いることもできる。
【0040】
したがって、上記に述べた実施形態は、例として引用したものであり、また本発明は、上記に具体的に示し説明したものに限定されないことが理解されよう。むしろ、本発明の範囲は、上記の明細書に記載される様々な特徴の組み合わせ及び部分的組み合わせの両方、並びに前述の記載を一読すると当業者が着想すると思われるそれらの変形及び修正であって、先行技術に開示されていない変形及び修正を含む。参照により本特許出願に援用される文献は、これらの援用文献において、いずれかの用語が本明細書において明示的又は暗示的になされた定義と矛盾して定義されている場合には、本明細書における定義のみを考慮するものとする点を除き、本出願の一部と見なすものとする。
【0041】
〔実施の態様〕
(1) 不可逆電気穿孔(IRE)方法であって、
器官内の組織と接触して配置されたカテーテルの電極によってIREパルスを与えるための初期IREプロトコルを設定することと、
前記初期IREプロトコルが血液中の気泡を引き起こすことが予期されると判定すると、ユーザに通知を発行することと、
前記通知に応じて、前記初期IREプロトコルと、前記気泡を引き起こすことが予期されない代替プロトコルとのいずれかを選択するユーザ入力を前記ユーザから受信することと、
前記ユーザ入力に応じて、前記初期IREプロトコル又は前記代替IREプロトコルに従って前記IREパルスを与えることと、
を含む、方法。
(2) 前記ユーザ入力を受信することが、パルス列間のそれぞれの所与の休止を伴う所与の数の前記パルス列への、前記初期IREプロトコルの一連の前記IREパルスの分割を受信することを含む、実施態様1に記載の方法。
(3) 前記初期IREプロトコル及び前記代替IREプロトコルが、同じ合計数の前記IREパルスを有する、実施態様1に記載の方法。
(4) 前記代替IREプロトコルが、前記初期IREプロトコルよりも少数の前記IREパルスを有する、実施態様1に記載の方法。
(5) 不可逆電気穿孔(IRE)システムであって、
器官内の組織と接触して配置されたカテーテルの電極によってIREパルスを与えるためのIREプロトコルを設定するように構成されたユーザインタフェースと、
プロセッサと、を備え、前記プロセッサは、
初期IREプロトコルが血液中の気泡を引き起こすことが予期されると判定すると、ユーザに通知を発行し、
前記通知に応じて、前記初期IREプロトコルと、前記気泡を引き起こすことが予期されない代替プロトコルとのいずれかを選択するユーザ入力を、前記ユーザインタフェースを介して受信し、
前記ユーザ入力に応じて、前記初期IREプロトコル又は前記代替IREプロトコルに従って前記IREパルスを与える
ように構成されている、システム。
【0042】
(6) 前記プロセッサが、前記ユーザ入力において、パルス列間のそれぞれの所与の休止を伴う所与の数の前記パルス列への、一連の前記IREパルスの分割を受信するように構成されている、実施態様5に記載のシステム。
(7) 前記初期IREプロトコル及び前記代替IREプロトコルが、同じ合計数の前記IREパルスを有する、実施態様5に記載のシステム。
(8) 前記代替IREプロトコルが、前記初期IREプロトコルよりも少数のパルスを有する、実施態様5に記載のシステム。
【外国語明細書】