(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022025012
(43)【公開日】2022-02-09
(54)【発明の名称】ポリイミド前駆体、ポリイミド前駆体組成物、ポリイミドフィルム、その製造方法およびその用途
(51)【国際特許分類】
C08J 5/18 20060101AFI20220202BHJP
C08G 73/10 20060101ALI20220202BHJP
C07D 493/10 20060101ALN20220202BHJP
C07D 335/12 20060101ALN20220202BHJP
【FI】
C08J5/18 CFG
C08G73/10
C07D493/10 F
C07D335/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021106699
(22)【出願日】2021-06-28
(31)【優先権主張番号】10-2020-0085890
(32)【優先日】2020-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】308007044
【氏名又は名称】エスケー イノベーション カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK INNOVATION CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 110-728 Republic of Korea
(71)【出願人】
【識別番号】519214271
【氏名又は名称】エスケー アイイー テクノロジー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK IE TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 03188 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】キム ジョン チャン
(72)【発明者】
【氏名】イ ソ ユン
【テーマコード(参考)】
4C071
4F071
4J043
【Fターム(参考)】
4C071AA04
4C071AA08
4C071BB01
4C071BB08
4C071CC12
4C071EE05
4C071FF15
4C071HH08
4C071LL02
4C071LL05
4F071AA60
4F071AA86
4F071AA88
4F071AF20Y
4F071AF21Y
4F071AF30Y
4F071AF34Y
4F071AF45Y
4F071AF62Y
4F071AH12
4F071AH13
4F071BA02
4F071BB02
4F071BC01
4F071BC12
4J043PA02
4J043PA04
4J043RA34
4J043SA06
4J043SA42
4J043SA54
4J043SB01
4J043TA22
4J043TB01
4J043TB03
4J043UA121
4J043UA122
4J043UA132
4J043UA312
4J043UA332
4J043UA662
4J043UA672
4J043UA682
4J043UA712
4J043XA16
4J043ZA31
4J043ZA34
4J043ZA35
4J043ZA52
4J043ZA60
4J043ZB11
4J043ZB60
(57)【要約】 (修正有)
【課題】耐熱性に優れ、透明性および低線熱膨張係数を満たすポリイミドフィルムを提供することができるポリイミド前駆体、ポリイミド前駆体溶液、ポリイミドフィルム、その製造方法およびその用途を提供する。
【解決手段】下記化学式で表されるテトラカルボン酸二無水物由来のポリイミド前駆体を含むポリイミド前駆体溶液を提供する。
[式中、Q
1は、単結合、-C(=O)-、-C(=O)O-、-C(=O)NH-、-NR’-、-S-、-SO
2-、-CH
2-またはこれらの組み合わせであり、前記R’は、水素またはC1-C10のアルキルであり、R
1およびR
2は、独立して、ハロゲン、ヒドロキシ、チオール、ニトロ、シアノ、C1-C10のアルキル、C1-C10のアルコキシ、C6-C20のアリールまたはこれらの組み合わせであるか、隣接した置換基と結合して環を形成してもよく、nおよびmは、独立して、0~4の整数である。]
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表されるテトラカルボン酸二無水物由来のポリイミド前駆体を含むポリイミド前駆体溶液。
[化学式1]
【化1】
[前記化学式1中、
Q
1は、単結合、-C(=O)-、-C(=O)O-、-C(=O)NH-、-NR’-、-S-、-SO
2-、-CH
2-またはこれらの組み合わせであり、前記R’は、水素またはC1-C10のアルキルであり、
R
1およびR
2は、互いに独立して、ハロゲン、ヒドロキシ、チオール、ニトロ、シアノ、C1-C10のアルキル、C1-C10のアルコキシ、C6-C20のアリールまたはこれらの組み合わせであるか、隣接した置換基と結合して環を形成してもよく、
nおよびmは、互いに独立して、0~4から選択される整数であり、前記nおよびmが2以上の整数である場合、それぞれの前記R
1およびR
2は、同一もしくは異なっていてもよい。]
【請求項2】
前記テトラカルボン酸二無水物は、
下記化学式2~化学式5で表される化合物から選択される、請求項1に記載のポリイミド前駆体溶液。
[化学式2]
【化2】
[化学式3]
【化3】
[化学式4]
【化4】
[化学式5]
【化5】
[前記化学式2~化学式5中、
R
1、R
2、R’、nおよびmは、請求項1に記載の化学式1での定義と同一である。]
【請求項3】
前記化学式1で表されるテトラカルボン酸二無水物およびジアミンを含む重合成分と、有機溶媒とを含む、請求項1に記載のポリイミド前駆体溶液。
【請求項4】
前記ジアミンは、
下記化学式6で表される単位を含む、請求項3に記載のポリイミド前駆体溶液。
[化学式6]
【化6】
[前記化学式6中、
R
3は、水素、C1-C10のアルキルまたはC1-C10のフルオロアルキルであり、
pは、1または2の整数である。]
【請求項5】
前記有機溶媒は、
アミド類から選択される、請求項3に記載のポリイミド前駆体溶液。
【請求項6】
前記有機溶媒は、
N,N-ジエチルアセトアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、N-エチルピロリドン、N,N-ジメチルプロピオンアミド、N,N-ジエチルプロピオンアミドまたはこれらの組み合わせである、請求項5に記載のポリイミド前駆体溶液。
【請求項7】
前記重合成分として、下記化学式7および化学式8で表される化合物から選択されるテトラカルボン酸二無水物をさらに含む、請求項3に記載のポリイミド前駆体溶液。
[化学式7]
【化7】
[化学式8]
【化8】
[前記化学式8中、
Q
2およびQ
3は、単結合、-O-、-C(=O)-、-C(=O)O-、-C(=O)NH-、-NR’-、-S-、-SO
2-、フェニレンまたはこれらの組み合わせであり、前記R’は、水素またはC1-C10のアルキルである。]
【請求項8】
下記化学式1で表されるテトラカルボン酸二無水物およびジアミン由来のポリイミド前駆体。
[化学式1]
【化9】
[前記化学式1中、
Q
1は、単結合、-C(=O)-、-C(=O)O-、-C(=O)NH-、-NR’-、-S-、-SO
2-、-CH
2-またはこれらの組み合わせであり、前記R’は、水素またはC1-C10のアルキルであり、
R
1およびR
2は、互いに独立して、ハロゲン、ヒドロキシ、チオール、ニトロ、シアノ、C1-C10のアルキル、C1-C10のアルコキシ、C6-C20のアリールまたはこれらの組み合わせであるか、隣接した置換基と結合して環を形成してもよく、
nおよびmは、互いに独立して、0~4から選択される整数であり、前記nおよびmが2以上の整数である場合、それぞれの前記R
1およびR
2は、同一もしくは異なっていてもよい。]
【請求項9】
下記化学式aで表される繰り返し単位を含む、請求項8に記載のポリイミド前駆体。
[化学式a]
【化10】
[前記化学式a中、
Q
1は、単結合、-C(=O)-、-C(=O)O-、-C(=O)NH-、-NR’-、-S-、-SO
2-、-CH
2-またはこれらの組み合わせであり、前記R’は、水素またはC1-C10のアルキルであり、
R
aおよびR
bは、互いに独立して、水素またはC1-C10のアルキルであり、
R
1およびR
2は、互いに独立して、ハロゲン、ヒドロキシ、チオール、ニトロ、シアノ、C1-C10のアルキル、C1-C10のアルコキシ、C6-C20のアリールまたはこれらの組み合わせであるか、隣接した置換基と結合して環を形成してもよく、
R
3は、水素、C1-C10のアルキルまたはC1-C10のフルオロアルキルであり、
pは、1または2の整数であり、
nおよびmは、互いに独立して、0~4から選択される整数であり、前記nおよびmが2以上の整数である場合、それぞれの前記R
1およびR
2は、同一もしくは異なっていてもよい。]
【請求項10】
総繰り返し単位を基準として、前記化学式aで表される繰り返し単位を10~100モル%含む、請求項9に記載のポリイミド前駆体。
【請求項11】
下記化学式bで表される繰り返し単位を含むポリイミドフィルム。
[化学式b]
【化11】
[前記化学式b中、
Q
1は、単結合、-C(=O)-、-C(=O)O-、-C(=O)NH-、-NR’-、-S-、-SO
2-、-CH
2-またはこれらの組み合わせであり、前記R’は、水素またはC1-C10のアルキルであり、
R
1およびR
2は、互いに独立して、ハロゲン、ヒドロキシ、チオール、ニトロ、シアノ、C1-C10のアルキル、C1-C10のアルコキシ、C6-C20のアリールまたはこれらの組み合わせであるか、隣接した置換基と結合して環を形成してもよく、
R
3は、水素、C1-C10のアルキルまたはC1-C10のフルオロアルキルであり、
pは、1または2の整数であり、
nおよびmは、互いに独立して、0~4から選択される整数であり、前記nおよびmが2以上の整数である場合、それぞれの前記R
1およびR
2は、同一もしくは異なっていてもよい。]
【請求項12】
下記化学式cまたは化学式dで表される繰り返し単位をさらに含む、請求項11に記載のポリイミドフィルム。
[化学式c]
【化12】
[化学式d]
【化13】
[前記化学式cおよび化学式d中、
R
3は、水素、C1-C10のアルキルまたはC1-C10のフルオロアルキルであり、
pは、1または2の整数である。]
【請求項13】
熱膨張係数(CTE)が100~450℃で50ppm/℃以下である、請求項11に記載のポリイミドフィルム。
【請求項14】
ASTM E313によるYIが15以下であり、
ASTM D1003によるヘイズ(haze)が2以下であり、
ASTM D1746による380~780nmの区間での全光線光透過率が80%以上である、請求項11に記載のポリイミドフィルム。
【請求項15】
ASTM D882によるモジュラスが5.0以上であり、伸び率が15%以上である、請求項11に記載のポリイミドフィルム。
【請求項16】
熱膨張係数(CTE)が100~450℃で50ppm/℃以下であり、
ASTM E313によるYIが15以下であり、
ASTM D1003によるヘイズ(haze)が2以下であり、
ASTM D1746による380~780nmの区間での平均透過率が80%以上であり、
ASTM D882によるモジュラスが8.0以下であり、伸び率が15%以上である、請求項11に記載のポリイミドフィルム。
【請求項17】
請求項11から請求項16のいずれか一項に記載のポリイミドフィルムを含む積層体。
【請求項18】
請求項11から請求項16のいずれか一項に記載のポリイミドフィルムをフレキシブル基板として含む光電素子。
【請求項19】
請求項11から請求項16のいずれか一項に記載のポリイミドフィルムをフレキシブル基板として含むフレキシブルディスプレイ。
【請求項20】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のポリイミド前駆体溶液を基板に塗布およびコーティングした後、熱処理するステップを含むポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項21】
前記熱処理は、
100℃以下で行われる第1熱処理ステップと、
100℃超300℃以下で行われる第2熱処理ステップと、
300℃超500℃以下で行われる第3熱処理ステップとを含む、請求項20に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項22】
前記ポリイミド前駆体溶液は、
全重量を基準として、
固形分が10~13重量%含まれる、請求項20に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイミド前駆体、ポリイミド前駆体溶液、ポリイミドフィルム、その製造方法およびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
高度の耐熱性を有し、且つ軽くて柔軟な素材として、ポリイミドが着目されている。かかるポリイミドの分野において、優れた熱的寸法安定性を有する樹脂として、芳香族ポリイミドが注目されている。化学構造がリジッドで直線的な芳香族ポリイミドからなる成形体であるポリイミドフィルムは、フレキシブルプリント配線基板のベースフィルムや半導体の層間絶縁膜など、高い熱的寸法安定性(低線熱膨張係数)が求められる分野において広く使用されている。しかし、低線熱膨張係数を有する芳香族ポリイミドは、分子内の共役および分子内・分子間の電荷移動相互作用によって強く着色するため、光学用途としての適用が困難である。また、ポリイミドは、分子間力が非常に強いため、加工性が足りないという欠点がある。
【0003】
一方、フレキシブルデバイスは、搬送基板上にポリイミド前駆体組成物を塗布した後、硬化してフィルムを成膜し、薄膜トランジスタ(TFT)および有機膜蒸着などの後続の工程によりデバイスを完成した後、搬送基板から完成したデバイスを脱着する方法によって製造される。このように、高温工程を伴うフレキシブルデバイスは、高温での耐熱性が求められる。特に、低温ポリシリコン(Low Temperature Poly Silicon;LTPS)を用いた薄膜トランジスタ工程を使用する場合、工程温度が500℃近くなり得るため、搬送基板上に成膜されるポリイミドフィルムは、高温工程中にも加水分解による熱分解が起こらず、高耐熱性を満たす必要がある。また、貯蔵安定性だけでなく、加工後の透明性も確保する必要がある。
【0004】
したがって、フレキシブルデバイスの製造のためには、高耐熱性を満たすとともに加水分解が防止されて優れた耐薬品性および貯蔵安定性を示すことができ、光学的・機械的特性を向上させることができる新たなポリイミドの開発が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の一具現(実装)例は、耐熱性に優れ、透明性および低線熱膨張係数を満たすポリイミドフィルムを提供するためのポリイミド前駆体およびポリイミド前駆体溶液を提供する。
【0006】
本発明の他の一具現例は、前記ポリイミド前駆体溶液を用いたポリイミドフィルムの製造方法を提供する。
【0007】
本発明の他の一具現例は、高い寸法安定性が求められる分野に有用に適用可能なポリイミドフィルムおよびこれを含む積層体を提供する。
【0008】
本発明の他の一具現例は、前記ポリイミドフィルムを含む光電素子およびフレキシブルディスプレイを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一具現例によるポリイミド前駆体溶液は、下記化学式1で表されるテトラカルボン酸二無水物由来のポリイミド前駆体を含むポリイミド前駆体溶液であってもよい。
[化学式1]
【化1】
[前記化学式1中、
Q
1は、単結合、-C(=O)-、-C(=O)O-、-C(=O)NH-、-NR’-、-S-、-SO
2-、-CH
2-またはこれらの組み合わせであり、前記R’は、水素またはC1-C10のアルキルであり、
R
1およびR
2は、互いに独立して、ハロゲン、ヒドロキシ、チオール、ニトロ、シアノ、C1-C10のアルキル、C1-C10のアルコキシ、C6-C20のアリールまたはこれらの組み合わせであるか、隣接した置換基と結合して環を形成してもよく、
nおよびmは、互いに独立して、0~4から選択される整数であり、前記nおよびmが2以上の整数である場合、それぞれの前記R
1およびR
2は、同一もしくは異なっていてもよい。]
【0010】
前記ポリイミド前駆体溶液において、前記テトラカルボン酸二無水物は、下記化学式2~化学式5で表される化合物から選択されてもよい。
[化学式2]
【化2】
[化学式3]
【化3】
[化学式4]
【化4】
[化学式5]
【化5】
[前記化学式2~化学式5中、
R
1、R
2、R’、nおよびmは、前記化学式1での定義と同一である。]
【0011】
前記ポリイミド前駆体溶液において、前記ポリイミド前駆体溶液は、前記化学式1で表されるテトラカルボン酸二無水物およびジアミンを含む重合成分と、有機溶媒とを含んでもよい。
【0012】
前記ポリイミド前駆体溶液において、前記ジアミンは、下記化学式6で表される単位を含んでもよい。
[化学式6]
【化6】
[前記化学式6中、
R
3は、水素、C1-C10のアルキルまたはC1-C10のフルオロアルキルであり、
pは、1または2の整数である。]
【0013】
前記ポリイミド前駆体溶液において、前記有機溶媒は、アミド類から選択されてもよい。
【0014】
前記ポリイミド前駆体溶液において、前記有機溶媒は、N,N-ジエチルアセトアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、N-エチルピロリドン、N,N-ジメチルプロピオンアミド、N,N-ジエチルプロピオンアミドまたはこれらの組み合わせであってもよい。
【0015】
前記ポリイミド前駆体溶液において、前記重合成分として、下記化学式7および化学式8で表される化合物から選択されるテトラカルボン酸二無水物をさらに含むことができる。
[化学式7]
【化7】
[化学式8]
【化8】
[前記化学式8中、
Q
2およびQ
3は、単結合、-O-、-C(=O)-、-C(=O)O-、-C(=O)NH-、-NR’-、-S-、-SO
2-、フェニレンまたはこれらの組み合わせであり、前記R’は、水素またはC1-C10のアルキルである。]
【0016】
また、本発明のさらに他の具現例は、前記化学式1で表されるテトラカルボン酸二無水物およびジアミン由来のポリイミド前駆体であってもよい。
【0017】
前記ポリイミド前駆体は、下記化学式aで表される繰り返し単位を含んでもよい。
[化学式a]
【化9】
[前記化学式a中、
Q
1は、単結合、-C(=O)-、-C(=O)O-、-C(=O)NH-、-NR’-、-S-、-SO
2-、-CH
2-またはこれらの組み合わせであり、前記R’は、水素またはC1-C10のアルキルであり、
R
aおよびR
bは、互いに独立して、水素またはC1-C10のアルキルであり、
R
1およびR
2は、互いに独立して、ハロゲン、ヒドロキシ、チオール、ニトロ、シアノ、C1-C10のアルキル、C1-C10のアルコキシ、C6-C20のアリールまたはこれらの組み合わせであるか、隣接した置換基と結合して環を形成してもよく、
R
3は、水素、C1-C10のアルキルまたはC1-C10のフルオロアルキルであり、
pは、1または2の整数であり、
nおよびmは、互いに独立して、0~4から選択される整数であり、前記nおよびmが2以上の整数である場合、それぞれの前記R
1およびR
2は、同一もしくは異なっていてもよい。]
【0018】
前記ポリイミド前駆体は、総繰り返し単位を基準として、前記化学式aで表される繰り返し単位を10~100モル%含んでもよい。
【0019】
また、本発明のさらに他の具現例は、下記化学式bで表される繰り返し単位を含むポリイミドフィルムであってもよい。
[化学式b]
【化10】
[前記化学式b中、
Q
1は、単結合、-C(=O)-、-C(=O)O-、-C(=O)NH-、-NR’-、-S-、-SO
2-、-CH
2-またはこれらの組み合わせであり、前記R’は、水素またはC1-C10のアルキルであり、
R
1およびR
2は、互いに独立して、ハロゲン、ヒドロキシ、チオール、ニトロ、シアノ、C1-C10のアルキル、C1-C10のアルコキシ、C6-C20のアリールまたはこれらの組み合わせであるか、隣接した置換基と結合して環を形成してもよく、
R
3は、水素、C1-C10のアルキルまたはC1-C10のフルオロアルキルであり、
pは、1または2の整数であり、
nおよびmは、互いに独立して、0~4から選択される整数であり、前記nおよびmが2以上の整数である場合、それぞれの前記R
1およびR
2は、同一もしくは異なっていてもよい。]
【0020】
前記ポリイミドフィルムは、下記化学式cまたは化学式dで表される繰り返し単位をさらに含んでもよい。
[化学式c]
【化11】
[化学式d]
【化12】
[前記化学式cおよび化学式d中、
R
3は、水素、C1-C10のアルキルまたはC1-C10のフルオロアルキルであり、
pは、1または2の整数である。]
【0021】
前記ポリイミドフィルムは、熱膨張係数(CTE)が100~450℃で50ppm/℃以下であってもよい。
【0022】
前記ポリイミドフィルムは、ASTM E313によるYIが15以下であり、ASTM D1003によるヘイズ(haze)が2以下であり、ASTM D1746による380~780nmの区間での全光線光透過率が80%以上であってもよい。
【0023】
前記ポリイミドフィルムは、ASTM D882によるモジュラスが5.0以上であり、伸び率が15%以上であってもよい。
【0024】
前記ポリイミドフィルムは、熱膨張係数(CTE)が100~450℃で50ppm/℃以下であり、ASTM E313によるYIが15以下であり、ASTM D1003によるヘイズ(haze)が2以下であり、ASTM D1746による380~780nmの区間での平均透過率が80%以上であり、ASTM D882によるモジュラスが9.0以下であり、伸び率が15%以上であってもよい。
【0025】
また、本発明のさらに他の一具現例は、上述のポリイミドフィルムを含む積層体であってもよい。
【0026】
また、本発明のさらに他の一具現例は、上述のポリイミドフィルムをフレキシブル基板として含む光電素子であってもよい。
【0027】
また、本発明のさらに他の一具現例は、上述のポリイミドフィルムをフレキシブル基板として含むフレキシブルディスプレイであってもよい。
【0028】
また、本発明のさらに他の一具現例は、上述のポリイミド前駆体溶液を基板に塗布およびコーティングした後、熱処理するステップを含むポリイミドフィルムの製造方法であってもよい。
【0029】
前記ポリイミドフィルムの製造方法であって、前記熱処理は、100℃以下で行われる第1熱処理ステップと、100℃超300℃以下で行われる第2熱処理ステップと、300℃超500℃以下で行われる第3熱処理ステップとを含んでもよい。
【0030】
前記ポリイミドフィルムの製造方法であって、前記ポリイミド前駆体溶液は、全重量を基準として、固形分が10~13重量%含まれてもよい。
【発明の効果】
【0031】
本発明の一具現例によると、高い透明性と耐熱性を有し、且つ高い熱処理にも基板のストレスが上昇せず、熱的寸法安定性に優れたポリイミドフィルムを提供することができる。また、本発明の一具現例によるポリイミドフィルムは、光学異方性の減少によって光学的に非常に優れ、全光線に対する均一な透過率を具現することができる。
【0032】
本発明の一具現例よると、無色透明なポリイミドフィルムを提供することができる。本発明の一具現例によるポリイミドフィルムは、耐熱性、機械的強度および柔軟性などに優れ、素子用基板、フレキシブルディスプレイ用基板、光学フィルム、IC(integrated circuit)パッケージ、粘着フィルム(adhesive film)、多層FPC(flexible printed circuit)、テープ、タッチパネル、光ディスク用保護フィルムなどの様々な分野において有用に使用することができる。
【0033】
具体的には、本発明の一具現例によるポリイミドフィルムは、i)熱膨張係数(CTE)が100~450℃で50ppm/℃以下を満たし、ii)ASTM E313によるYIが15以下、ASTM D1003によるヘイズ(haze)が2以下、およびASTM D1746による380~780nmの区間での平均透過率が80%以上を満たし、iii)ASTM D882によるモジュラスが8.0以下、伸び率が15%以上を満たすことができ、これらの特性を同時に満たすことができる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明は、他に定義されない限り、すべての技術的用語および科学的用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。本発明において、説明に使用される用語は、単に特定の具体例を効果的に記述するためのものであって、本発明を制限することを意図しない。
【0035】
本明細書で使用される単数形態は、文脈で特別な指示がない限り、複数形態も含むことを意図することができる。
【0036】
また、本明細書で特別な言及なしに使用された単位は、重量を基準とし、一例として、%または比の単位は、重量%または重量比を意味し、重量%は、他に定義されない限り、全組成物のいずれか一つの成分が組成物内で占める重量%を意味する。
【0037】
また、本明細書で使用される数値範囲は、下限値と上限値とその範囲内でのすべての値、定義される範囲の形態と幅で論理的に誘導される増分、このうち限定されたすべての値および互いに異なる形態に限定された数値範囲の上限および下限のすべての可能な組み合わせを含む。本発明の明細書で特別な定義がない限り、実験誤差または値の四捨五入によって発生する可能性がある数値範囲以外の値も定義された数値範囲に含まれる。
【0038】
本明細書の用語「含む」とは、特別に逆の記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する開放型記載であり得る。
【0039】
本明細書の用語「誘導された」とは、化合物の官能基のうち少なくともいずれか一つが変形されたことを意味し、具体的には、化合物の官能基および/または脱離基が反応によって変形または脱離した形態を含むことであり得る。また、互いに異なる化合物から誘導された構造が互いに同一であれば、いずれか一つの化合物から誘導された構造は、他のいずれか一つの化合物から誘導されて同一の構造を有する場合も含み得る。
【0040】
本明細書の用語「ポリイミド前駆体溶液」は、ポリイミドを製造するための組成物を意味し、具体的には、ポリイミド前駆体は、アミド酸(amic acid)部分(moiety)を有する構造単位を含む重合体を意味し、ポリアミド酸と等価の意味を有してもよい。また、前記ポリイミド前駆体溶液は、ポリアミドイミドを製造するための組成物としても使用することができる。
【0041】
本明細書の用語「ポリイミドフィルム」は、ポリアミド前駆体溶液から誘導されたポリイミドの成形体であり、ポリイミドと等価の意味を有し得る。
【0042】
本明細書の用語「ハロゲン」は、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)またはヨウ素(I)原子を意味する。
【0043】
本明細書の用語「アルキル」は、一つの水素除去によって脂肪族炭化水素から誘導された有機ラジカルであり、直鎖または分岐鎖の形態をすべて含む。
【0044】
本明細書の用語「アルコキシ」は、*-O-アルキルで表され、前記アルキルは、上述の定義と同様である。
【0045】
本明細書の用語「ハロアルキル」および「ハロアルコキシ」は、前記アルキルまたはアルコキシで一つの水素がハロゲンで置換されたものを意味する。
【0046】
本明細書の用語「アリール」は、一つの水素除去によって芳香族炭化水素から誘導された有機ラジカルであり、単環または縮合環系を含み、多数個のアリールが単結合で連結されている形態まで含む。
【0047】
本発明者らは、光学的に透明で、優れた熱的寸法安定性、および高いTg値を有するポリイミドについて鋭意研究を重ねた結果、テトラカルボン酸二無水物の母核骨格によりリジッドな直線型構造を導入するとともにフルオレンを含むことによって、著しく向上した熱的寸法安定性を満たすことができることは言うまでもなく、透明度を増加させることができることを見出した。すなわち、本発明者らは、かかる構造的特徴を有するテトラカルボン酸二無水物から誘導されたポリイミドは、低線熱膨張係数を満たすことは言うまでもなく、優れた透明性および耐熱性を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0048】
以下、本発明の一具現例についてより詳細に説明する。
【0049】
本発明の一具現例によるポリイミド前駆体溶液は、新規なテトラカルボン酸二無水物である下記化学式1で表されるテトラカルボン酸二無水物由来のポリイミド前駆体を含み得る。
[化学式1]
【化13】
[前記化学式1中、
Q
1は、単結合、-C(=O)-、-C(=O)O-、-C(=O)NH-、-NR’-、-S-、-SO
2-、-CH
2-またはこれらの組み合わせであり、前記R’は、水素またはC1-C10のアルキルであり、
R
1およびR
2は、互いに独立して、ハロゲン、ヒドロキシ、チオール、ニトロ、シアノ、C1-C10のアルキル、C1-C10のアルコキシ、C6-C20のアリールまたはこれらの組み合わせであるか、隣接した置換基と結合して環を形成してもよく、
nおよびmは、互いに独立して、0~4から選択される整数であり、前記nおよびmが2以上の整数である場合、それぞれの前記R
1およびR
2は、同一もしくは異なっていてもよい。]
【0050】
上述の構造を満たすことにり、本発明の一具現例によるテトラカルボン酸二無水物由来のポリイミド前駆体は、優れた熱的寸法安定性を満たすことができる。すなわち、耐熱性に優れることができる。また、分子間のパッキング密度(packing density)を高めて、透明性を増加させ、黄色度が減少したポリイミドフィルムを提供することができる。しかし、前記化学式1で前記Q1が酸素原子である場合、分子内に曲げが発生し、これより誘導されたポリイミドは、リジッドな構造的特性が低下する。そのため、かかる構造的特性(Q1が酸素原子)を含むポリイミドは、熱的寸法安定性が低い。
【0051】
前記テトラカルボン酸二無水物は、下記化学式2~化学式5で表される化合物から選択され得る。
【0052】
【0053】
【0054】
【0055】
【0056】
[前記化学式2~化学式5中、
R1およびR2は、互いに独立して、ハロゲン、ヒドロキシ、チオール、ニトロ、シアノ、C1-C10のアルキル、C1-C10のアルコキシ、C6-C20のアリールまたはこれらの組み合わせであるか、隣接した置換基と結合して環を形成してもよく、
R’は、水素またはC1-C10のアルキルであり、
nおよびmは、互いに独立して、0~4から選択される整数であり、前記nおよびmが2以上の整数である場合、それぞれの前記R1およびR2は、同一もしくは異なっていてもよい。]
【0057】
一例として、前記化学式2で表される化合物のように、スピロビフルオレン(spirobifluorene)から誘導された母核骨格を有するテトラカルボン酸二無水物は、より向上した耐熱性により加工性にも優れることができる。
【0058】
一例として、前記化学式3~化学式5で表される化合物は、より向上した黄色度(YI)および380~780nmの区間での全光線透過率に優れ、低熱膨張係数および高い透明性を兼ねたポリイミドフィルムを提供することができる。
【0059】
本発明の一具現例によるポリイミド前駆体溶液は、前記化学式1の前記R1およびR2は、互いに独立して、ハロゲン、ヒドロキシ、チオール、ニトロ、シアノ、C1-C10のアルキル、C1-C10のアルコキシ、C6-C20のアリール、C1-C10のハロアルキルまたはC1-C10のハロアルコキシであり、前記nおよびmは、互いに独立して、0~2から選択される整数であるテトラカルボン酸二無水物由来のポリイミド前駆体を含んでもよい。
【0060】
一例として、前記化学式2~化学式5の前記R1およびR2は、互いに独立して、ハロゲン、ヒドロキシ、チオール、ニトロ、シアノ、C1-C10のアルキル、C1-C10のアルコキシ、C6-C20のアリール、C1-C10のハロアルキルまたはC1-C10のハロアルコキシであり、前記nおよびmは、互いに独立して、0~2から選択される整数であってもよい。
【0061】
本発明の一具現例によるポリイミド前駆体溶液は、前記化学式1の前記R1およびR2は、互いに独立して、ハロゲン、ヒドロキシ、チオール、ニトロ、シアノ、C1-C4のアルキル、C1-C4のアルコキシ、C6-C18のアリール、C1-C4のハロアルキルまたはC1-C4のハロアルコキシであり、前記nおよびmは、互いに独立して、0~2から選択される整数であってもよい。
【0062】
一例として、前記化学式2~化学式5の前記R1およびR2は、互いに独立して、ハロゲン、ヒドロキシ、チオール、ニトロ、シアノ、C1-C4のアルキル、C1-C4のアルコキシ、C6-C18のアリール、C1-C4のハロアルキルまたはC1-C4のハロアルコキシであり、前記nおよびmは、互いに独立して、0~2から選択される整数であってもよい。
【0063】
本発明の一具現例によるテトラカルボン酸二無水物において、前記化学式1の前記R1およびR2は、互いに独立して、ハロゲン、ニトロ、シアノ、C1-C4のアルキル、C1-C4のアルコキシ、C6-C12のアリール、C1-C4のハロアルキルまたはC1-C4のハロアルコキシであり、前記nおよびmは、互いに独立して、0~2から選択される整数であり、0≦n+m≦2であるテトラカルボン酸二無水物由来のポリイミド前駆体を含んでもよい。
【0064】
一例として、前記化学式2~化学式5の前記R1およびR2は、互いに独立して、ハロゲン、ニトロ、シアノ、C1-C4のアルキル、C1-C4のアルコキシ、C6-C12のアリール、C1-C4のハロアルキルまたはC1-C4のハロアルコキシであり、前記nおよびmは、互いに独立して、0~2から選択される整数であり、0≦n+m≦2であってもよい。
【0065】
一例として、前記化学式5の前記R’は、水素またはC1-C4のアルキルであってもよい。
【0066】
一例として、前記R1およびR2から選択される一つは、フルオレン環の2番、7番の位置またはこれらで置換されていてもよい。具体的には、前記R1およびR2から選択される一つの置換基は、下記化学式1-1の表示位置に置換されていてもよい。その場合、機械的強度および柔軟性においてより効果的であることができる。
【0067】
【0068】
[前記化学式1-1中、
Q1は、単結合、-NR’-、-S-または-SO2-であり、前記R’は、水素またはC1-C4のアルキルであり、
R1およびR2は、互いに独立して、ハロゲン、ニトロ、シアノ、C1-C4のアルキル、C1-C4のアルコキシ、C6-C12のアリール、C1-C4のハロアルキルまたはC1-C4のハロアルコキシであり、前記nおよびmは、互いに独立して、0~2から選択される整数であり、0≦n+m≦2であってもよい。]
【0069】
一例として、前記化学式1-1の前記R1またはR2は、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素から選択されるハロゲン;メチル、エチル、プロピルおよびブチルから選択されるアルキル;メトキシ、エトキシ、プロポキシおよびブトキシから選択されるアルコキシ;およびフェニルおよびナフチルから選択されるアリールから選択されてもよい。
【0070】
前記テトラカルボン酸二無水物は、下記構造から選択される少なくとも一つまたは二つ以上を含んでもよい。
【0071】
【化19】
【化20】
【化21】
【化22】
【化23】
【0072】
[前記構造において、Phは、フェニルである。]
【0073】
また、本発明の他の一具現例は、上述のテトラカルボン酸二無水物の製造方法であり得る。
【0074】
具体的には、本発明の一具現例によるテトラカルボン酸二無水物の製造方法は、下記化学式aで表される化合物を脱水剤の存在下で脱水閉環反応させるステップを含み得る。
【0075】
【0076】
[前記化学式A中、
Q1は、単結合、-C(=O)-、-C(=O)O-、-C(=O)NH-、-NR’-、-S-、-SO2-、-CH2-またはこれらの組み合わせであり、前記R’は、水素またはC1-C10のアルキルであり、
R1およびR2は、互いに独立して、ハロゲン、ヒドロキシ、チオール、ニトロ、シアノ、C1-C10のアルキル、C1-C10のアルコキシ、C6-C20のアリールまたはこれらの組み合わせであるか、隣接した置換基と結合して環を形成してもよく、
nおよびmは、互いに独立して、0~4から選択される整数であり、前記nおよびmが2以上の整数である場合、それぞれの前記R1およびR2は、同一もしくは異なっていてもよい。]
【0077】
一例として、前記脱水剤は、酸無水物であってもよい。
【0078】
一例として、前記酸無水物は、酢酸無水物(acetic anhydride)、フタル酸無水物(phthalic anhydride)およびマレイン酸無水物(maleic anhydride)などから選択されてもよく、好ましくは、酢酸無水物を含んでもよい。
【0079】
一例として、前記脱水剤は、ピリジン、イソキノリンおよびトリエチルアミンなどから選択される一つまたは二つ以上をさらに含むことができる。
【0080】
一例として、前記脱水剤は、前記化学式Aで表される化合物1モルに対して2~10モル投入されることができる。
【0081】
一例として、前記ステップは、60~130℃で2~12時間行われることができる。
【0082】
本発明の他の一具現例によるテトラカルボン酸二無水物の製造方法に対する一態様は、下記反応式1に図示したとおりであり得るが、通常の有機合成方法により多様に変形可能であることは言うまでもない。
【0083】
【0084】
また、本発明の他の一具現例は、上述のテトラカルボン酸二無水物の用途であり、この具体的な態様は後述する。
【0085】
本発明の第1態様は、前記化学式1で表されるテトラカルボン酸二無水物を含む組成物であってもよい。
【0086】
本発明の第2態様は、前記化学式1で表されるテトラカルボン酸二無水物由来のポリイミド前駆体を含むポリイミド前駆体溶液であってもよい。具体的には、前記ポリイミド前駆体は、前記化学式1で表されるテトラカルボン酸二無水物およびジアミンを含む重合成分の反応によって取得したポリアミド酸であってもよい。
【0087】
本発明の第3態様は、前記化学式1で表されるテトラカルボン酸二無水物由来のポリイミド前駆体を含むポリイミド前駆体溶液であり、公知のテトラカルボン酸二無水物をさらに含むポリアミド酸であってもよい。
【0088】
本発明の第4態様は、上述の第1態様~第3態様に有機溶媒をさらに含むものであり得る。
【0089】
具体的には、上述の第1態様~第4態様の組成物または溶液は、ポリイミドフィルムを提供するための用途に使用されてもよい。また、上述の第1態様~第4態様の組成物または溶液は、ポリアミドイミドフィルムを提供するための用途に使用されてもよい。
【0090】
上述のように、本発明によると、高い透明性と耐熱性を有し、且つ高い熱処理にも基板のストレスが上昇せず、熱的寸法安定性に優れたポリイミドフィルムを提供することができる。特に、本発明によると、公知のテトラカルボン酸二無水物を含まなくても、低い線熱膨張係数を有するポリイミドフィルムを提供することができる。また、公知のテトラカルボン酸二無水物をさらに含む場合、より著しく低くなった線熱膨張係数を有するポリイミドフィルムを提供することができる。
【0091】
本発明の一具現例による組成物またはポリイミド前駆体溶液は、ガンマ-ブチロラクトン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノンなどのケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコールエーテル類(セロソルブ);酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのアセテート類;エチルアルコール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、カルビトルなどのアルコール類;N,N-ジメチルプロピオンアミド(DMPA)、N,N-ジエチルプロピオンアミド(DEPA)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N-ジエチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジエチルホルムアミド(DEF)、N-メチルピロリドン(NMP)、N-エチルピロリドン(NEP)、N,N-ジメチルメトキシアセトアミドなどのアミド類;などから選択される一つまたは二つ以上の混合物であってもよい。
【0092】
一例として、前記有機溶媒は、上述のアミド類から選択される一つまたは二つ以上の混合物であってもよい。
【0093】
一例として、前記有機溶媒は、沸点が300℃以下であってもよい。具体的には、一例として、前記有機溶媒は、N,N-ジエチルホルムアミド(DEF)、N,N-ジエチルアセトアミド(DEAc)、N-エチルピロリドン(NEP)、N,N-ジメチルプロピオンアミド(DMPA)、N,N-ジエチルプロピオンアミド(DEPA)またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0094】
本発明の一具現例によるポリイミド前駆体溶液は、芳香族ジアミンを含んでもよい。具体的には、本発明による芳香族ジアミンは、下記化学式6で表される単位を含んでもよい。
【0095】
【0096】
[前記化学式6中、
R3は、水素、C1-C10のアルキルまたはC1-C10のフルオロアルキルであり、
pは、1または2の整数である。]
【0097】
一例として、前記芳香族ジアミンは、直鎖状の芳香族ジアミンであってもよく、具体的には、下記化学式6-1および化学式6-2で表される化合物から選択されてもよい。この際、前記芳香族ジアミンは、一つまたは二つ以上の混合物として使用可能であることは言うまでもない。
【0098】
【0099】
【0100】
[前記化学式6-1および化学式6-2中、
R3は、互いに独立して、水素、C1-C10のアルキルまたはC1-C10のフルオロアルキルである。]
【0101】
一例として、前記芳香族ジアミンは、フルオロアルキルを含むフルオロ系芳香族ジアミンであってもよい。
【0102】
一例として、前記芳香族ジアミンは、前記化学式6-1または化学式6-2で表される化合物であり、前記R3は、互いに独立して、C1-C7のフルオロアルキルであってもよい。
【0103】
一例として、前記芳香族ジアミンは、前記化学式6-1または化学式6-2で表される化合物であり、前記R3は、互いに独立して、C1-C3のフルオロアルキルであってもよい。
【0104】
本発明の一具現例によるポリイミド前駆体溶液は、より向上した耐熱性で優れた加工性を付与するため、前記化学式2で表される化合物のように、スピロビフルオレン(spirobifluorene)から誘導された母核骨格を有するテトラカルボン酸二無水物を含むことができる。
【0105】
本発明の一具現例によるポリイミド前駆体溶液は、より向上した黄色度(YI)および380~780nmの区間での優れた全光線透過率の具現のため、前記化学式3~化学式5で表される化合物から選択される一つ以上のテトラカルボン酸二無水物を含むことができる。
【0106】
本発明の一具現例によるポリイミド前駆体溶液は、より向上した機械的強度および柔軟性を具現するため、前記化学式1-1の前記R1またはR2は、C1-C4のアルキルであるテトラカルボン酸二無水物を含んでもよい。
【0107】
本発明の一具現例によるポリイミド前駆体溶液は、重合成分として、下記化学式7および化学式8で表される化合物から選択される公知のテトラカルボン酸二無水物をさらに含むことができる。
【0108】
【0109】
【0110】
[前記化学式8中、
Q2およびQ3は、単結合、-O-、-C(=O)-、-C(=O)O-、-C(=O)NH-、-NR’-、-S-、-SO2-、フェニレンまたはこれらの組み合わせであり、前記R’は、水素またはC1-C10のアルキルである。]
【0111】
本発明の一具現例によるポリイミド前駆体溶液は、上述のように、前記化学式1で表されるテトラカルボン酸二無水物およびジアミンを重合成分として含んでもよい。具体的には、前記重合成分は、前記ジアミン1モルに対して0.9~1.1範囲の前記化学式1で表されるテトラカルボン酸二無水物を含んでもよい。
【0112】
また、本発明の一具現例によるポリイミド前駆体溶液が、前記のような公知のテトラカルボン酸二無水物をさらに含む場合、前記化学式1で表されるテトラカルボン酸二無水物および公知のテトラカルボン酸二無水物の全含量と前記ジアミンの含量に対するモル比は、1:0.99~0.99:1、具体的には1:0.98~0.98:1であり得る。
【0113】
また、本発明の一具現例によるポリイミド前駆体溶液が、前記のような公知のテトラカルボン酸二無水物をさらに含む場合、前記化学式1で表されるテトラカルボン酸二無水物および公知のテトラカルボン酸二無水物の全含量に対して、前記化学式1で表されるテトラカルボン酸二無水物は、10~99モル%含まれることができる。または10~90モル%、または15~80モル%、または20~50モル%、または20~30モル%含まれることができる。
【0114】
具体的には、本発明の一具現例によるポリイミド前駆体溶液は、上述の重合成分の重合生成物である下記化学式aで表される繰り返し単位を含むポリイミド前駆体、すなわち、ポリアミド酸を含んでもよい。
【0115】
【0116】
[前記化学式a中、
Q1は、単結合、-C(=O)-、-C(=O)O-、-C(=O)NH-、-NR’-、-S-、-SO2-、-CH2-またはこれらの組み合わせであり、前記R’は、水素またはC1-C10のアルキルであり、
RaおよびRbは、互いに独立して、水素またはC1-C10のアルキルであり、
R1およびR2は、互いに独立して、ハロゲン、ヒドロキシ、チオール、ニトロ、シアノ、C1-C10のアルキル、C1-C10のアルコキシ、C6-C20のアリールまたはこれらの組み合わせであるか、隣接した置換基と結合して環を形成してもよく、
R3は、水素、C1-C10のアルキルまたはC1-C10のフルオロアルキルであり、
pは、1または2の整数であり、
nおよびmは、互いに独立して、0~4から選択される整数であり、前記nおよびmが2以上の整数である場合、それぞれの前記R1およびR2は、同一もしくは異なっていてもよい。]
【0117】
一例として、本発明の一具現例によるポリイミド前駆体溶液は、全重量に対して、前記化学式aで表される繰り返し単位を含むポリイミド前駆体を含む固形分の含量が10~40重量%、または10~30重量%、または10~20重量%、または10~13重量%であってもよい。ここで、前記固形分は、前記ポリアミド酸であってもよく、残量は有機溶媒であってもよい。
【0118】
一例として、本発明の一具現例によるポリイミド前駆体溶液の粘度は、2,000~10,000cpsを満たしてもよい。前記粘度は、具体的には、8,000cps以下、より具体的には、7,000cps以下を満たしてもよい。かかる粘度範囲を満たす場合、ポリイミドフィルムの加工時に脱泡の効率性に優れ、工程上利点を提供することができる。これにより、より均一な表面を具現することができ好ましい。この際、前記粘度は、ブルックフィールド(Brookfield RVDV-III)粘度計スピンドル(Spindle)No.52を使用して常温(25℃)で試料を載置し、トルク(Torque)値が80%になった時点で、2分間安定化作業に経て測定した値を意味する。
【0119】
本発明の一具現例によるポリイミド前駆体溶液は、上述の重合成分を重合して、前記化学式aで表される繰り返し単位を含むポリアミド酸を製造した後、イミド化したものであり得る。一例として、前記アミド化は、化学イミド化または熱イミド化方法により行われることができる。
【0120】
本発明の一具現例によるイミド化は、熱イミド化方法によるものであり得る。かかる方法により、高温で熱によってイミド化する場合、フィルムの全体に均一な機械的な物性を付与することができる。具体的には、本発明の一具現例によるポリイミドフィルムは、上述のポリイミド前駆体溶液を基板に塗布およびコーティングした後、熱処理するステップを含む製造方法により製造され得る。
【0121】
一例として、前記熱処理は、500℃以下で行われてもよい。
【0122】
一例として、前記熱処理は、100℃以下で行われる第1熱処理ステップと、100℃超300℃以下で行われる第2熱処理ステップと、300℃超500℃以下で行われる第3熱処理ステップとを含んでもよいが、これに限定されるものではない。
【0123】
一例として、前記基板は、ガラス基板、金属基板またはプラスチック基板などが特に制限なく使用可能である。中でも、ポリイミド前駆体溶液に対するイミド化および硬化工程中に熱および化学的安定性に優れ、別の離型剤の処理がなくても、硬化後に形成されたポリイミドフィルムに対して損傷なく容易に分離することができるガラス基板であり得る。
【0124】
一例として、前記塗布およびコーティングのための方法は、特に限定されるものではないが、一例として、スピンコーティング法、浸漬法、スプレー法、ダイコーティング法、バーコーティング法、ロールコーティング法、メニスカスコーティング法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、ビードコーティング法、エアナイフコーティング法、リバースロールコーティング法、ブレードコーティング法、キャスティングコーティング法およびグラビアコーティング法などから選択されるいずれか一つ以上の方法を使用することができる。
【0125】
一例として、前記熱処理するステップの後、乾燥するステップおよび基板上で分離するステップなどをさらに含むこともできる。
【0126】
一例として、前記化学式aで表される繰り返し単位を含むポリアミド酸の分子量は、特に限定されるものではないが、一例として、重量平均分子量を20,000~150,000g/molの範囲にする場合、より優れた物性を得ることができる。
【0127】
また、本発明の一具現例によるポリイミド前駆体溶液は、レベリング剤、難燃剤、接着力向上剤、無機粒子、酸化防止剤、紫外線防止剤および可塑剤などの添加剤をさらに含むこともできる。
【0128】
具体的には、本発明の一具現例によるポリイミド前駆体溶液から製造されたポリイミドフィルム、すなわち、ポリイミドは、下記化学式bで表される繰り返し単位を含むことができる。
【0129】
【0130】
[前記化学式b中、
Q1は、単結合、-C(=O)-、-C(=O)O-、-C(=O)NH-、-NR’-、-S-、-SO2-、-CH2-またはこれらの組み合わせであり、前記R’は、水素またはC1-C10のアルキルであり、
R1およびR2は、互いに独立して、ハロゲン、ヒドロキシ、チオール、ニトロ、シアノ、C1-C10のアルキル、C1-C10のアルコキシ、C6-C20のアリールまたはこれらの組み合わせであるか、隣接した置換基と結合して環を形成してもよく、
R3は、水素、C1-C10のアルキルまたはC1-C10のフルオロアルキルであり、
pは、1または2の整数であり、
nおよびmは、互いに独立して、0~4から選択される整数であり、前記nおよびmが2以上の整数である場合、それぞれの前記R1およびR2は、同一もしくは異なっていてもよい。]
【0131】
また、本発明の一具現例によるポリイミドフィルムは、下記化学式cまたは化学式dで表される繰り返し単位をさらに含んでもよい。
【0132】
【0133】
【0134】
[前記化学式cおよび化学式d中、
R3は、水素、C1-C10のアルキルまたはC1-C10のフルオロアルキルであり、
pは、1または2の整数である。]
【0135】
上述のように、本発明の一具現例よると、前記化学式1で表されるテトラカルボン酸二無水物由来の繰り返し単位を含むことによって、光学性、耐熱性、機械的強度および柔軟性がいずれも優れたポリイミドフィルムを提供することができる。これにより、素子用基板、ディスプレイ用カバー基板、光学フィルム、IC(integrated circuit)パッケージ、粘着フィルム、多層FRC(flexible printed circuit)、テープ、タッチパネル、光ディスク用保護フィルムなどの様々な分野において使用することができる。
【0136】
本発明の一具現例によるポリイミドフィルム、すなわち、ポリイミドの重量平均分子量は、10,000~200,000g/mol、または20,000~100,000g/mol、または30,000~100,000g/molであってもよい。また、本発明によるポリイミドの分子量分布(Mw/Mn)は、1.1~2.5の範囲を満たしてもよい。上述のポリイミドの重量平均分子量と分子量分布を満たす場合、光学性、耐熱性、機械的強度および柔軟性など、ポリイミドフィルムの特性に有利である。
【0137】
本発明の一具現例によるポリイミドフィルムの厚さは5~15μmであってもよい。
【0138】
本発明の一具現例によるポリイミドフィルムは、温度の変化による耐熱特性に優れることができる。具体的には、前記ポリイミドフィルムは、上述の厚さ範囲で100℃~450℃の温度範囲で5℃/minの昇温速度で1次昇温工程を行った後、400℃~100℃の温度範囲で4℃/minの冷却速度で冷却する時の熱膨張変化様相をTMA(TA社製のTMA450)で測定した結果、50ppm/℃以下を満たしてもよい。具体的には、前記熱膨張係数(CTE)は、45ppm/℃以下を満たしてもよく、より具体的には-15~45ppm/℃の範囲を満たしてもよい。
【0139】
本発明の一具現例によるポリイミドフィルムは、上述の厚さ範囲で、ASTM D1003によるヘイズ(haze)が2以下を満たしてもよく、具体的には1以下、より具体的には0.5以下、最も具体的には0.01~0.3の範囲を満たしてもよい。かかるヘイズ値を満たすことによって、透明性が改善したポリイミドフィルムを提供することができる。
【0140】
また、本発明の一具現例によるポリイミドフィルムは、優れた光透過率および黄色度を有することで、著しく改善した透明度および光学特性を示すことができる。具体的には、前記ポリイミドフィルムは、ASTM E313によるYIが15以下であり、ASTM D1746による380~780nmの区間での全光線光透過率が80%以上であってもよく、より具体的には、YIが13以下であり、全光線光透過率が85%以上であってもよく、最も具体的にはYIが11以下であり、全光線光透過率が87%~99%の範囲であってもよい。
【0141】
本発明の一具現例によるポリイミドフィルムは、上述の厚さ範囲で、ASTM D882によるモジュラスが5.0以上であり、伸び率が15%以上であってもよい。具体的には、前記ポリイミドフィルムは、モジュラスが5.5以上であり、伸び率が15%以上であってもよく、より具体的には、モジュラスが6.0以上であり、伸び率が15%以上であってもよい。かかる特性を満たす場合、ポリイミドフィルムの剛性に優れ、より十分な柔軟性を確保することができ、外部衝撃から柔軟な特性を有する。
【0142】
本発明の一具現例によるポリイミドフィルムは、上述の物性をいずれも同時に満たすことが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0143】
本発明の一具現例によるポリイミドフィルムは、前記化学式1で表されるテトラカルボン酸二無水物由来のリジッドな構造によって、優れた光学性、耐熱性、機械的強度および柔軟性を同時に満たすことができる。特に、高熱工程時に発生し得る熱収縮挙動に対して優れた耐熱性を示すだけでなく、優れた無色透明な光学性を示すことができ、素子用基板、ディスプレイ用基板、光学フィルム(optical film)、IC(integrated circuit)パッケージ、粘着フィルム(adhesive film)、多層FRC(flexible printed circuit)、テープ、タッチパネル、光ディスク用保護フィルムなどの様々な分野において使用することができる。
【0144】
本発明の一具現例によるポリイミドフィルムは、2以上の層が積層された形態で使用されることもできる。
【0145】
また、本発明の他の一具現例は、上述のポリイミドフィルムまたはこれらが積層された形態の積層体をフレキシブル基板として含む光電素子およびフレキシブルディスプレイであってもよい。
【0146】
一例として、前記光電素子は、光学部品、スイッチおよび光変調器などが挙げられ、同時に微細パターン形成特性が求められる高耐熱性基板素材に適する。
【0147】
一例として、前記フレキシブルディスプレイは、液晶表示装置(liquid crystal display device、LCD)、有機発光ダイオード(organic light emitting diode、OLED)などが挙げられ、特に、高温工程を要するLTPS(low temperature polysilicon)工程を使用するOLEDデバイスに適することができるが、これに限定されるものではない。
【0148】
以下、本発明の具体的な実施例および比較例により本発明を説明する。下記実施例は、本発明の技術思想を説明するためのものであって、これに限定されないことは、当業者にとって明らかである。
【0149】
(評価方法)
1.線熱膨張係数(CTE)およびガラス転移温度(Tg)
TMA(TA instrument社製、Discovery 450)を用いて、TMA-methodによって線熱膨張係数を測定した。試験片の大きさは5mm×20mm、荷重は0.02Nと、昇温速度は5℃/minとした。CTE値は、100℃~450℃の温度範囲の昇温区間で測定した。
【0150】
Tg値は、100℃~450℃の昇温区間でTMAグラフ変曲点で測定した。
【0151】
2.ヘイズ
ASTM D1003規格に準じて、厚さ50μmのポリイミドフィルムを基準として、Spectrophotometer(Nippon Denshoku社製、COH-400)を用いて測定した。単位は%である。
【0152】
3.黄色度(YI)
ASTM E313規格に準じて、厚さ10μmのポリイミドフィルムを基準としてColorimeter(HunterLab社製、ColorQuest XE)を用いて測定した。
【0153】
4.全光線透過率
ASTM D1746規格に準じて、厚さ10μmのポリイミドフィルムに対してSpectrophotometer(SHIMADZU社製、mpC-3100)を用いて、380~780nm波長領域全体で測定された全光線光透過率を測定した。単位は%である。
【0154】
5.モジュラスおよび伸び率
ASTM D882に準じて、厚さ10μm、長さ40mmおよび幅5mmであるポリイミドフィルムを25℃で10mm/minで引っ張る条件で、Instron社製のUTM 3365を用いて測定した。モジュラス単位はGPa、伸び率単位は%である。
【0155】
6.厚さ
0.5T glassにPAAをコーティングした後、硬化した基板をKLA社製のフィルム厚さ測定装置(Alpha step D500)を使用して測定した。単位はμmである。
【0156】
7.粘度
ブルックフィールド(Brookfield RVDV-III)粘度計スピンドル(Spindle)No.52を使用して、常温(25℃)で試料を載置し、トルク値が80%になった時点で2分間放置した後、安定化させて測定した値を意味する。単位はcpsである。
【0157】
8.C.R.テスト(chemical resistance test)
ポリイミドフィルム硬化条件:multi-step(80℃/30min、220℃/30minおよび450℃/60min)
○:フィルム変形なし、△:部分的にフィルム変形発生、×:フィルム変形発生、と評価した。
【0158】
9.重量平均分子量
0.05M LiBrを含有するDMAc溶離液にフィルムを溶解して測定した。GPCは、Waters GPC system、Waters 1515 isocratic HPLC Pump、Waters 2414 Reflective Index detectorを用いており、カラム(Column)はOlexis、Polyporeおよびmixed Dカラムを連結し、標準物質としてポリメチルメタクリレート(PMMA STD)を使用し、35℃、1mL/minの流速(flow Rate)で分析した。
【0159】
【0160】
ステップ1.物質A
窒素環境で、3,4-ジメチルフェニルボロン酸(3,4-Dimethylphenylboronic Acid、7.95g、53.0mmol)、1,2-ジブロモ-4,5-ジメチルベンゼン(1,2-dibromo-4,5-dimethylbenzene、14g、53.0mmol)、トリフェニルホスフィン(triphenylphosphine、0.42g、1.59mmol)とK2CO3(21.9g、159mmol)をガスが除去された水100mlおよびテトラヒドロフラン(THF)70ml混合溶液に添加した。温度を80℃に上げ、Pd(PPh3)4(0.61g、0.53mmol)を添加した後、30時間撹拌した。温度を常温に下げ、減圧蒸留により有機溶媒を除去した後、ジクロロメタン(DCM)100mlと水50mlを添加して有機層を水で洗浄した後、無水MgSO4を用いて水分を除去した。MgSO4フィルタリングの後、溶媒を除去し、カラムクロマトグラフィで物質を分離し、収率75%で物質Aを取得した。
【0161】
HRMS (EI, m/z): [M+] calculated for C16H13Br, 288.05; found, 269.16
1H-NMR (ppm, CDCl
3): 7.44 (1H, s), 7.15-7.20 (3H, m), 7.10 (1H, s), 2.33 (6H, s), 2.29 (3H, s), 2.25 (3H, s).
【化36】
【0162】
ステップ2.物質B
窒素環境で、物質A(5.65g、19.5mmol)を無水テトラヒドロフラン(THF)80mlに溶解してn-ブチルリチウム(n-Butyl lithium、9.37ml of a solution 2.5 M in Hexane、23.4mmol)を-78℃で1時間徐々に添加した。この溶液に無水CO2を4時間吹き込み、60mlの水を添加して反応を終了した後、減圧蒸留により有機溶媒を除去した。水100mlとDCM50mlを添加して水層をDCMで洗浄し、水層に0.1N HCl溶液を添加してpH4にした後、析出された有機物をエーテルで抽出した。無水MgSO4を用いて水分を除去し、フィルタリングの後、溶媒除去してカラムクロマトグラフィで物質を分離し、収率65%で物質Bを取得した。
【0163】
HRMS (EI, m/z): [M+] calculated for C17H18O2, 254.13; found, 255.32
1H-NMR (ppm, CDCl
3): 7.75 (1H, s), 7.12-7.15 (3H, m), 7.07 (1H, s), 2.34 (s, 6H), 2.31 (6H, s).
【化37】
【0164】
ステップ3.物質C
窒素環境で、物質B(4.73g、18.6mmol)をMeSO3H 50gに溶解し、50℃で18時間撹拌した。反応物を0℃の水500mlに注入した後、生成された固体をフィルタリングし、メタノール(MeOH)を用いて再結晶して物質Cを収率85%で取得した。
【0165】
HRMS (EI, m/z): [M+] calculated for C17H16O, 236.12; found, 237.25
1H-NMR (ppm, CDCl
3): 7.24 (2H, s), 2.33 (6H, s), 2.28 (6H, s).
【化38】
【0166】
ステップ4.物質D
窒素環境で、2-ブロモ-1,1’-ビフェニル(2-Bromo-1,1’-biphenyl、4.0g、17.16mmol)を無水テトラヒドロフラン(THF)80mlに溶解し、n-ブチルリチウム(7.5ml of a solution 2.5 M in Hexane、18.7mmol)を-78℃で10分間徐々に添加した。1時間撹拌の後、物質C(3.69g、15.6mmol)を反応物に添加した後、常温に温度を上げながら12時間撹拌した。水80mlを添加した後、減圧して溶媒を除去し、ジクロロメタン(DCM)100mlを添加して有機物を抽出した。無水MgSO4を用いて水分を除去し、フィルタリングして溶媒を除去した後、0℃の酢酸50mlに物質を添加した。35wt% HCl 1mlを添加した後、4時間加熱還流した後、常温で1時間撹拌した。反応物を氷水200mlに注入した後、生成された固体をフィルタリングし、メタノール(MeOH)を用いて析出撹拌し、物質Dを収率87%で取得した。
【0167】
HRMS (EI, m/z): [M+] calculated for C29H24, 372.19; found, 373.05
1H-NMR (ppm, CDCl
3): 7.84-7.91 (4H, m), 7.59 (2H, s), 6.73-6.80 (4H, m), 6.49 (2H, s), 2.35 (6H, s), 2.11 (6H, s).
【化39】
【0168】
ステップ5.物質E
物質D(3.95g、10.6mmol)をピリジン(Py)50mlおよび水50mlの混合溶媒に溶解し、水100mlに溶解したKMnO4(33.5g、212mmol)を4時間徐々に添加した。6時間加熱還流した後、フィルタリングし、固体物質を除去した後、常温に温度を下げた後、減圧して溶媒を除去した。水層に0.1N HCl溶液を添加してpH4にした後、析出された固体物質をフィルタリングおよび乾燥し、収率80%で物質Eを取得した。
【0169】
HRMS (EI, m/z): [M+] calculated for C29H16O8, 492.08; found, 493.00
1H-NMR (ppm, D
2O): 7.97 (8H, s), 7.91 (4H, s).
【化40】
【0170】
ステップ6.物質F
窒素環境で、物質E(3.80g、7.72mmol)を無水酢酸(Acetic anhydride、100ml)に溶解し、6時間加熱還流した後、常温に温度を下げた。生成された固体をフィルタリングし、無水酢酸を用いて洗浄した後、物質Fを収率90%で取得した。
【0171】
HRMS (EI, m/z): [M+] calculated for C29H12O6, 456.06; found, 457.11
【0172】
【0173】
ステップ1.物質G
物質A(5.0g、17.47mmol)を無水テトラヒドロフラン(THF)100mlに溶解し、温度を-78℃に下げた後、ブチルリチウム(n-Butyl lithium、7.6ml of a solution 2.5 M in Hexane、18.8mmol)を10分間徐々に添加した。1時間撹拌した後、9H-チオキサンテン-9-オン(9H-Thioxanthen-9-one、3.375g、15.9mmol)を反応物に添加した後、常温に温度を上げながら12時間撹拌した。水100mlを添加した後、減圧して溶媒を除去し、ジクロロメタン(DCM)100mlを添加して有機物を抽出した。無水MgSO4を用いて水分除去し、フィルタし溶媒を除去した後、0℃の酢酸50mlに物質を添加した。35wt% HCl 1ml添加した後、4時間加熱還流した後、常温で1時間撹拌した。反応物を0℃の水200mlに注入した後、生成された固体をフィルタリングし、MeOHを用いて析出撹拌し、物質Gを収率88%で取得した。
【0174】
HRMS (EI, m/z): [M+] calculated for C29H24S, 404.16; found, 405.15
【化42】
【0175】
ステップ2.物質H
物質G(4.6g、10.88mmol)を酢酸(Acetic acid)100mlに溶解し、30wt%H2O2 9mlを30分間徐々に添加した。100℃に上げて8時間撹拌した後、常温に温度を下げた。生成された固体物質をフィルタリングし、さらに、酢酸20mlとヘプタン(Heptane)20mlを用いて洗浄した後、乾燥し、物質Hを収率89%で取得した。
【0176】
HRMS (EI, m/z): [M+] calculated for C29H24S, 404.16; found, 405.15
【化43】
【0177】
ステップ3.物質I
物質H(4.0g、9.89mmol)をピリジン(Py)50mlおよび水50mlの混合溶媒に溶解し、水100mlに溶解したKMnO4(31.6g、200mmol)を4時間徐々に添加した。6時間加熱還流した後、フィルタリングし、固体物質を除去した後、常温に温度を下げた後、減圧して溶媒を除去した。水層に0.1N HCl溶液を添加してpH4にした後、析出された固体物質をフィルタリングし、乾燥して収率85%で物質Iを取得した。
【0178】
HRMS (EI, m/z): [M+] calculated for C29H16O10S, 556.05; found, 557.04
【化44】
【0179】
ステップ4.物質J
窒素環境で、物質I(3.6g、6.47mmol)を無水酢酸(Acetic anhydride、80ml)に溶解し、6時間加熱還流した後、常温に温度を下げた。生成された固体をフィルタリングし、無水酢酸を用いて洗浄し、乾燥した後、物質Jを収率90%で取得した。
【0180】
HRMS (EI, m/z): [M+] calculated for C29H12O6, 556.05; found, 557.03
【0181】
【0182】
ステップ1.物質K
窒素環境で、2-ブロモ-4’-t-ブチル-1,1’-ビフェニル(2-Bromo-4’-tert-butyl-1,1’-biphenyl、5.0g、17.29mmol)を無水テトラヒドロフラン(THF)80mlに溶解し、温度を-78℃に下げた後、n-ブチルリチウム(7.6ml of a solution 2.5 M in Hexane、18.8mmol)を10分間徐々に添加した。1時間撹拌した後、物質C(3.73g、15.8mmol)を反応物に添加した後、常温に温度を上げながら12時間撹拌した。水80mlを添加した後、減圧して溶媒を除去し、ジクロロメタン(DCM)100mlを添加して有機物を抽出した。無水MgSO4を用いて水分除去し、フィルタリングして溶媒を除去した後、0℃の酢酸50mlに物質を添加した。35wt%のHCl 1ml添加した後、4時間加熱還流した後、常温で1時間撹拌した。反応物を0℃の水200mlに注入した後、生成された固体をフィルタリングし、メタノール(MeOH)を用いて析出撹拌し、物質Kを収率85%で取得した。
【0183】
HRMS (EI, m/z): [M+] calculated for C33H32, 428.25; found, 428.20
【化46】
【0184】
ステップ2.物質L
物質K(3.95g、9.22mmol)をピリジン(Py)50mlおよび水50mlの混合溶媒に溶解し、水100mlに溶解したKMnO4(31.0g、190mmol)を4時間徐々に添加した。6時間加熱還流した後、フィルタリングし、固体物質を除去した後、常温に温度を下げた後、減圧して溶媒を除去した。水層に0.1NのHCl溶液を添加してpH4にした後、析出された固体物質をフィルタリングし、乾燥し収率81%で物質Lを取得した。
【0185】
HRMS (EI, m/z): [M+] calculated for C33H24O8, 548.15; found, 548.12
【化47】
【0186】
ステップ3.物質M
窒素環境で、物質L(3.00g、5.47mmol)を無水酢酸(80ml)に溶解し、6時間加熱還流した後、常温に温度を下げた。生成された固体をフィルタリングし、無水酢酸を用いて洗浄した後、物質Mを収率90%で取得した。
【0187】
HRMS (EI, m/z): [M+] calculated for C33H20O6, 512.13; found, 513.12
【0188】
(実施例1)
TFMB(0.999)/実施例1(1.0)、単位:モル比
窒素気流が流れる撹拌機内にN,N-dimethylpropionamide(DMPA)176gを満たした後、反応器の温度を25℃に維持した状態で、2,2’-Bis(trifluoromethyl)-4,4’-biphenyl diamine(TFMB)14.03gを溶解させた。これに新規なmonomer1(製造例1、物質F)20gを同じ温度で添加し、一定時間溶解しながら撹拌した。次に、固形分濃度を13重量%になるようにDMPAを添加してポリイミド前駆体溶液1を製造した。前記ポリイミド前駆体溶液1の粘度は4,500cpであった。
【0189】
(実施例2)
TFMB(0.999)/実施例1(0.2)/PMDA(0.8)、単位:モル比
窒素気流が流れる撹拌機内にN,N-dimethylpropionamide(DMPA)175gを満たした後、反応器の温度を25℃に維持した状態で、2,2’-Bis(trifluoromethyl)-4,4’-biphenyl diamine(TFMB)18.33gを溶解させた。これに新規なmonomer1(製造例1、物質F)5.22gおよびPyromellitic Dianhydride(PMDA)10gを同じ温度で添加し、一定時間溶解しながら撹拌した。次に、ポリイミド前駆体溶液の固形分濃度を13重量%になるようにDMPAを添加してポリイミド前駆体溶液2を製造した。前記ポリイミド前駆体溶液2の粘度は5、200cpであった。
【0190】
(実施例3)
TFMB(0.999)/実施例2(1.0)、単位:モル比
窒素気流が流れる撹拌機内にN,N-dimethylpropionamide(DMPA)169gを満たした後、反応器の温度を25℃に維持した状態で、2,2’-Bis(trifluoromethyl)-4,4’-biphenyl diamine(TFMB)12.29gを溶解させた。これに新規なmonomer2(製造例2、物質J)20gを同じ温度で添加し、一定時間溶解しながら撹拌した。次に、固形分濃度を13重量%になるようにDMPAを添加してポリイミド前駆体溶液3を製造した。前記ポリイミド前駆体溶液3の粘度は4、200cpであった。
【0191】
(実施例4)
TFMB(0.999)/実施例3(1.0)、単位:モル比
窒素気流が流れる撹拌機内にN,N-dimethylpropionamide(DMPA)170gを満たした後、反応器の温度を25℃に維持した状態で、2,2’-Bis(trifluoromethyl)-4,4’-biphenyl diamine(TFMB)12.48gを溶解させた。これに新規なmonomer3(製造例3、物質M)20gを同じ温度で添加し、一定時間溶解しながら撹拌した。次に、固形分濃度を13重量%になるようにDMPAを添加してポリイミド前駆体溶液4を製造した。前記ポリイミド前駆体溶液4の粘度は4、300cpであった。
【0192】
(実施例5)
TFMB(0.999)/実施例2(0.2)/PMDA(0.8)、単位:モル比
窒素気流が流れる撹拌機内にN,N-dimethylpropionamide(DMPA)180gを満たした後、反応器の温度を25℃に維持した状態で、2,2’-Bis(trifluoromethyl)-4,4’-biphenyl diamine(TFMB)18.33gを溶解させた。これに新規なmonomer2(製造例2、物質J)5.96gおよびPyromellitic Dianhydride(PMDA)10gを同じ温度で添加し、一定時間溶解しながら撹拌した。次に、固形分濃度を13重量%になるようにDMPAを添加してポリイミド前駆体溶液5を製造した。前記ポリイミド前駆体溶液5の粘度は5,200cpであった。
【0193】
(実施例6)
TFMB(0.999)/実施例3(0.2)/PMDA(0.8)、単位:モル比
窒素気流が流れる撹拌機内にN,N-dimethylpropionamide(DMPA)179gを満たした後、反応器の温度を25℃に維持した状態で、2,2’-Bis(trifluoromethyl)-4,4’-biphenyl diamine(TFMB)18.33gを溶解させた。これに新規なmonomer3(製造例3、物質M)5.87gおよびPyromellitic Dianhydride(PMDA)10gを同じ温度で添加し、一定時間溶解しながら撹拌した。次に、固形分濃度を13重量%になるようにDMPAを添加してポリイミド前駆体溶液6を製造した。前記ポリイミド前駆体溶液6の粘度は5、200cpであった。
【0194】
(比較例1)
TFMB(0.999)/BPAF(1.0)、単位:モル比
窒素気流が流れる撹拌機内にN,N-dimethylpropionamide(DMPA)173gを満たした後、反応器の温度を25℃に維持した状態で、2,2’-Bis(trifluoromethyl)-4,4’-biphenyl diamine(TFMB)13.96gを溶解させた。これに9,9’-Bis(3,4-dicaroxyphenyl)fluorene dianhydride(BPAF)20gを同じ温度で添加し、一定時間溶解しながら撹拌した。次に、固形分濃度を13重量%になるようにDMPAを添加してポリイミド前駆体溶液Aを製造した。前記ポリイミド前駆体溶液Aの粘度は4,200cpであった。
【0195】
(比較例2)
TFMB(0.999)/BPAF(0.2)/PMDA(0.8)、単位:モル比
窒素気流が流れる撹拌機内にN,N-dimethylpropionamide(DMPA)176gを満たした後、反応器の温度を25℃に維持した状態で、2,2’-Bis(trifluoromethyl)-4,4’-biphenyl diamine(TFMB)18.33gを溶解させた。これに9、9’-Bis(3,4-dicaroxyphenyl)fluorene dianhydride(BPAF)5.25gおよびPyromellitic Dianhydride(PMDA)10gを同じ温度で添加し、一定時間溶解しながら撹拌した。次に、固形分濃度を13重量%になるようにDMPAを添加してポリイミド前駆体溶液Bを製造した。前記ポリイミド前駆体溶液Bの粘度は4,600cpであった。
【0196】
(ポリイミドフィルムの製造)
前記実施例1~実施例6および比較例1~比較例2のポリイミド前駆体溶液のそれぞれをガラス基板にスピンコーティングした。ポリイミド前駆体溶液が塗布されたガラス基板をオーブンに入れて4℃/minの速度で加熱し、80℃で30分間、220℃で30分間および450℃で1時間を維持して硬化工程を行った。硬化工程の完了後、ガラス基板を水に浸してガラス基板上に形成されたフィルムを剥がし、100℃のオーブンで乾燥し、ポリイミドフィルムを製造した。
【0197】
前記方法により製造されたポリイミドフィルムの物性は、前記評価方法により測定し、下記表1に図示した。
【0198】
【0199】
前記表1に示されているように、本発明によるテトラカルボン酸二無水物由来のポリイミドフィルムである実施例1、3、4の場合、熱膨張係数が35~43ppm/℃であり、ヘイズが0.1~0.2であり、黄色度(YI)が7.2~7.5であり、全光線透過率が88~90%であり、モジュラスが6.1~6.8であり、伸び率が15~27%であり、各項目別の特性は類似する水準に測定された。
【0200】
また、PMDA(Pyromellitic Dianhydride)由来の繰り返し単位をさらに含むポリイミドフィルムである実施例2、5、6の場合、熱膨張係数が6.5~8.3ppm/℃であり、ヘイズが0.1であり、黄色度(YI)が7.4~10.8であり、全光線透過率が87~88%であり、モジュラスが7.1~7.5であり、伸び率が23~29%であり、各項目別の特性は類似する水準に測定された。
【0201】
かかる効果は、比較例1または比較例2に比べて著しく向上した耐熱性、光学性および機械的特性である。
【0202】
以上、本発明は、特定された事項と限定された実施例によって説明されているが、これは、本発明のより全般的な理解を容易にするために提供されたものであって、本発明は、前記の実施例に限定されるものではなく、本発明が属する分野において通常の知識を有する者であれば、かかる記載から様々な修正および変形が可能である。
【0203】
したがって、本発明の思想は、上述の実施例に限定して定められてはならず、後述する特許請求の範囲だけでなく、本特許請求の範囲と均等または等価的な変形があるすべてのものなどは、本発明の思想の範疇に属すると言える。