(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022025097
(43)【公開日】2022-02-09
(54)【発明の名称】トランスポザーゼポリペプチド及びその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/62 20060101AFI20220202BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20220202BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20220202BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20220202BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20220202BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220202BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20220202BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20220202BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20220202BHJP
C07K 16/18 20060101ALN20220202BHJP
C07K 14/725 20060101ALN20220202BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20220202BHJP
C12N 5/0783 20100101ALN20220202BHJP
C12N 5/074 20100101ALN20220202BHJP
C12N 9/12 20060101ALN20220202BHJP
C12Q 1/00 20060101ALN20220202BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C07K19/00 ZNA
C12P21/08
C12N5/10
C12N15/09 Z
A61P35/00
A61P37/02
A61P31/00
A61K35/17 Z
C07K16/18
C07K14/725
C12N15/13
C12N5/0783
C12N5/074
C12N9/12
C12Q1/00
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021173757
(22)【出願日】2021-10-25
(62)【分割の表示】P 2020168936の分割
【原出願日】2016-03-10
(31)【優先権主張番号】62/131,827
(32)【優先日】2015-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】500039463
【氏名又は名称】ボード オブ リージェンツ,ザ ユニバーシティ オブ テキサス システム
【氏名又は名称原語表記】BOARD OF REGENTS,THE UNIVERSITY OF TEXAS SYSTEM
【住所又は居所原語表記】210 West 7th Street Austin,Texas 78701 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ローレンス ジェイ. クーパー
(72)【発明者】
【氏名】ナタリヤ ベルーソバ
【テーマコード(参考)】
4B050
4B063
4B064
4B065
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B050CC07
4B050KK07
4B050LL01
4B063QA01
4B063QQ42
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4C087AA01
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4C087CA12
4C087NA14
4C087ZB07
4C087ZB26
4C087ZB31
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
【課題】哺乳類細胞において高い活性を有するトランスポザーゼポリペプチド及びポリヌクレオチドを提供すること。
【解決手段】キメラ抗原T細胞のような細胞を、トランスポザーゼを利用して操作する方法も提供する。第一の実施形態では、哺乳類細胞内で高いトランスポザーゼ活性を有するかまたはそれからなる組換えポリペプチドを提供する。いくつかの態様では、実施形態のポリペプチドは、配列番号1(hSB110)または配列番号3(hSB81)と少なくとも90%同一である配列を含むかまたはそれからなる。ある特定の態様では、ポリペプチドは、配列番号1もしくは配列番号3の配列、または配列番号1もしくは配列番号3の全長と少なくとも90%同一である配列を含むかまたはそれからなり、哺乳類細胞内でトランスポザーゼ活性を示す。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2016年3月11日に出願された米国仮特許出願第62/131,827号の利益を主張し、前記文献はその全体を参照により本明細書に援用
【0002】
[配列表の援用]
2016年3月3日に作成された18KB(Microsoft Windows(登録商標)で計測)のファイル名「UTFCP1256WO_ST25.txt」のファイルに含まれる配列表を、電子データで本明細書とともに提出し、これを参照により本明細書に援用する。
【背景技術】
【0003】
1.発明の分野
本発明は、一般に、医学、免疫学、細胞生物学、及び分子生物学の分野に関する。ある特定の態様において、本発明の分野は、遺伝子操作におけるトランスポザーゼポリペプチド及びその使用に関する。
【0004】
2.関連技術の説明
機能的ゲノミクスの時代においては、細胞のゲノム中のコード配列を改変する効率的な手段が必要である。そのようなゲノム操作を用いて、導入遺伝子を安定して発現する細胞を産生するとともに、細胞を再プログラミングすることが可能である。ゲノム操作に用いる好適なツールの1つが、トランスポゾン/トランスポザーゼ系である。トランスポゾンすなわち転移性因子は、(短い)核酸配列であって、その上流及び下流に末端反復配列を有する核酸配列を含み、標的DNA配列に対する核酸の切除及び挿入を容易にする酵素をコードしている。いくつかのトランスポゾン/トランスポザーゼ系は、様々な脊椎動物培養細胞株、胚性幹細胞及びin vivoにおいて転移活性を示す魚類由来のTc1/マリナー様因子であるSleeping Beauty(SB)を含む異種DNA配列の遺伝子挿入に適合している(Ivics et al,1997)。しかしながら、これらの系はいずれも、ヒト/哺乳類細胞の操作には採用されていない。したがって、哺乳類細胞及び生物において高レベルの活性を有するトランスポゾン/トランスポザーゼ系が必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
第一の実施形態では、哺乳類細胞内で高いトランスポザーゼ活性を有するかまたはそれからなる組換えポリペプチドを提供する。いくつかの態様では、実施形態のポリペプチドは、配列番号1(hSB110)または配列番号3(hSB81)と少なくとも90%同一である配列を含むかまたはそれからなる。ある特定の態様では、ポリペプチドは、配列番号1もしくは配列番号3の配列、または配列番号1もしくは配列番号3の全長と少なくとも90%同一である配列を含むかまたはそれからなり、哺乳類細胞内でトランスポザーゼ活性を示す。さらなる態様では、ポリペプチドは、配列番号1または配列番号3と少なくとも90%同一の配列を含むかまたはそれからなり、哺乳類細胞内でトランスポザーゼ活性を示し、及び以下の特徴の1つ以上を含む:136位(hSB110における)に対応する位置にArg、253位(hSB110における)に対応する位置にHis、255位(hSB110における)に対応する位置にArg及び/または314位(hSB110における)に対応する位置にThr。さらなる態様では、上記の少なくとも90%同一のポリペプチドは、天然に存在するトランスポザーゼ酵素の配列を含まないか、または配列番号5(SB11)、配列番号6(SB10)もしくは配列番号7(SB100x)の配列を含まない。いくつかの態様では、実施形態のポリペプチドは、配列番号1(hSB110)または配列番号3(hSB81)と少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一の配列を含むかまたはそれからなる。いくつかの態様では、実施形態のポリペプチドは、配列番号1(hSB110)または配列番号3(hSB81)と少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一の配列を含むかまたはそれからなり、哺乳類細胞内でトランスポザーゼ活性を示す。いくつかの態様では、実施形態のポリペプチドは、配列番号1(hSB110)または配列番号3(hSB81)と少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一の配列を含むかまたはそれからなり、哺乳類細胞内でトランスポザーゼ活性を示し、及び以下の特徴の1つ以上を含むかまたはそれらからなる:136位(hSB110における)に対応する位置にArg、253位(hSB110における)に対応する位置にHis、255位(hSB110における)に対応する位置にArg及び/または314位(hSB110における)に対応する位置にThr。いくつかの態様では、上記の少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一のポリペプチドは、天然に存在するトランスポザーゼ酵素の配列を含まないか、または配列番号5(SB11)、配列番号6(SB10)もしくは配列番号7(SB100x)の配列を含まない。さらなる態様では、実施形態のトランスポザーゼポリペプチドは、トランスポザーゼ配列のN末端またはC末端に融合した異種ポリペプチド配列をさらに含むかまたはそれからなる。例えば、異種ポリペプチド配列は、レポーター、精製タグまたは細胞浸透性ポリペプチド(CPP)を含みかまたはそれからなっていてもよい。さらなる態様では、実施形態のポリペプチドがトランスポザーゼ活性を示す哺乳類細胞は、ヒト細胞である。さらなる態様では、ヒト細胞は免疫細胞である。さらなる態様では、ヒト免疫細胞はT細胞である。さらなる態様では、T細胞は、ヘルパーT細胞(TH細胞)、細胞傷害性T細胞(TC細胞またはCTL)、メモリーT細胞(TCM細胞)、エフェクターT細胞(TEM細胞)、調節性T細胞(Treg細胞;サプレッサーT細胞としても知られる)、ナチュラルキラーT細胞(NKT細胞)、MAIT細胞、αβT細胞(Tαβ細胞)、及び/またはγδT細胞(Tγδ細胞)である。
【0006】
さらに別の態様では、実施形態のポリペプチドは、配列番号1(hSB110)または配列番号3(hSB81)と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一の配列を含むかまたはそれからなり、以下の特徴の1つ以上を含み:136位(hSB110における)に対応する位置にArg、253位(hSB110における)に対応する位置にHis、255位(hSB110における)に対応する位置にArg及び/または314位(hSB110における)に対応する位置にThr、さらに以下のさらなる特徴の1つ以上を含む:14位(hSB110における)に対応する位置にArg、33位(hSB110における)に対応する位置にAla、115位(hSB110における)に対応する位置にHis、214位(hSB110における)に対応する位置にAsp、215位(hSB110における)に対応する位置にAla、216位(hSB110における)に対応する位置にVal、217位(hSB110における)に対応する位置にGln及び/または243位(hSB110における)に対応する位置にHis。いくつかの態様では、上記の少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一のポリペプチドは、天然に存在するトランスポザーゼ酵素の配列を含まないか、または配列番号5(SB11)、配列番号6(SB10)もしくは配列番号7(SB100x)の配列を含まない。いくつかの態様では、実施形態のポリペプチドは:14位(hSB110における)に対応する位置にArg、33位(hSB110における)に対応する位置にAla、115位(hSB110における)に対応する位置にHis、214位(hSB110における)に対応する位置にAsp、215位(hSB110における)に対応する位置にAla、216位(hSB110における)に対応する位置にVal、217位(hSB110における)に対応する位置にGln、及び243位(hSB110における)に対応する位置にHisからなる群から選択される2、3、4、5、6、7または8個の配列特徴を有する。さらなる態様では、上記の少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一のポリペプチドは、214~217位(hSB110における)に対応する位置に配列DAVQを含む。
【0007】
いくつかの態様では、実施形態のポリペプチドは、配列番号1(hSB110)と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一の配列を含むかまたはそれからなり、314位(hSB110における)に対応する位置にAsnを含み、以下の特徴の1つ以上を含む:136位(hSB110における)に対応する位置にArg、253位(hSB110における)に対応する位置にHis、及び/または255位(hSB110における)に対応する位置にArg。いくつかの態様では、上記の少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一のポリペプチドは、天然に存在するトランスポザーゼ酵素の配列を含まないか、または配列番号5(SB11)、配列番号6(SB10)もしくは配列番号7(SB100x)の配列を含まない。特定の態様では、ポリペプチドは、配列番号1の配列を含むかまたはそれからなる。
【0008】
他の態様では、実施形態のポリペプチドは、配列番号3(hSB81)に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一の配列を含むかまたはそれからなり、314位(hSB110における)に対応する位置にThrを含み、以下の特徴の1つ以上を含む:136位(hSB110における)に対応する位置にArg、253位(hSB110における)に対応する位置にHis、及び/または255位(hSB110における)に対応する位置にArg。いくつかの態様では、上記の少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一のポリペプチドは、天然に存在するトランスポザーゼ酵素の配列を含まないか、または配列番号5(SB11)、配列番号6(SB10)もしくは配列番号7(SB100x)の配列を含まない。特定の態様では、ポリペプチドは、配列番号3の配列を含むかまたはそれからなる。
【0009】
さらなる実施形態において、実施形態によるポリペプチドをコードする配列を含むかまたはそれからなるポリヌクレオチド分子を提供する。いくつかの態様では、この分子はDNA発現ベクターであってもよい。例えば、DNA発現ベクターは、ポリペプチドのin vitroでの発現用プロモーター(例えば、T7もしくはSP6プロモーター)またはポリペプチドの哺乳類細胞内での発現用プロモーターに作動可能に連結したトランスポザーゼコード配列を備えてもよい。いくつかの態様では、ポリヌクレオチド分子は、RNAまたはmRNAであってもよい。さらなる態様では、RNAは、5’‐キャップ、IRESモチーフ、(異種)5’UTR、(異種)3’UTR及び/またはポリ(A)配列を有してもよい。いくつかの態様では、RNAは、20~300ヌクレオチドのポリ(A)配列をさらに有してもよい。
【0010】
さらに別の実施形態では、本発明は、トランスポザーゼポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを細胞に形質移入し、ポリヌクレオチドからポリペプチドを発現させることを含む、上記のトランスポザーゼポリペプチドの作製方法を提供する。さらなる実施形態において、本発明は、実施形態のポリペプチドまたはポリヌクレオチド分子を保有する宿主細胞を提供する。場合によっては、細胞はヒト細胞のような哺乳類細胞である。ある特定の態様では、細胞は、幹細胞または誘導多能性幹(iPS)細胞である。さらなる態様では、細胞は、ナチュラルキラー(NK)細胞、NK細胞の前駆細胞、T細胞、T細胞の前駆細胞、または免疫細胞である。場合によっては、細胞は、実施形態のトランスポザーゼポリペプチドをコードするRNAを保有してもよい。さらに別の実施形態では、実施形態のポリペプチドまたはポリヌクレオチド分子を保有する細胞の集団を提供する。
【0011】
別の実施形態では:上記のようなトランスポザーゼポリペプチドまたはそのトランスポザーゼポリペプチドをコードする核酸、及びトランスポゾンリピートに隣接する選択した遺伝子因子をコードする配列を含むDNAベクターを細胞に形質移入し、そして(一過性または安定した)トランスポザーゼ活性に適した条件下で細胞をインキュベートし、それによって、選択した遺伝子因子を細胞のゲノム中に組み込み、操作した細胞を産生することを含む、細胞の遺伝子操作方法を提供する。ある特定の態様では、トランスポゾンリピートに隣接する選択した遺伝子因子をコードするDNAベクターは、実施形態のトランスポザーゼポリペプチドをコードする配列をさらに含む。したがって、ある特定の態様では、実施形態の方法は、トランスポゾンリピートに隣接する選択した遺伝子因子をコードする配列と、プロモーター配列の制御下にある実施形態のトランスポザーゼをコードする配列とを含むDNAベクターを細胞に形質移入し、次いでトランスポザーゼの発現及び活性に適した条件下で細胞をインキュベートし、それによって、選択した遺伝子因子を細胞のゲノムに組み込み、操作した細胞を産生することを含む。いくつかの態様では、この方法は、操作した細胞を単離または培養する第三の段階を含む。いくつかの態様では、選択した遺伝子因子はスクリーニング可能な、すなわち選択マーカーである。さらなる態様では、選択した遺伝子因子は、抗体、阻害性核酸(例えば、低分子干渉RNA(siRNA))、治療用ポリペプチド、T細胞受容体(TCR)、キメラ抗原受容体(CAR)、または免疫細胞機能のエンハンサーをコードしてもよい。特定の態様では、選択した遺伝子因子はCARまたはTCRをコードする。さらなる態様では、選択した遺伝子因子は、細胞由来の対応する遺伝子を置換または修飾するために(例えば、遺伝子の配列もしくは発現を改変するために、または細胞内の遺伝子発現を「ノックアウト」するために)用いる遺伝子またはその一部であってもよい。いくつかの態様では、形質移入する細胞は、ヒト細胞などの哺乳類細胞である。場合によっては、細胞は幹細胞またはiPS細胞であってもよい。ある特定の態様では、細胞は、NK細胞、T細胞、NK細胞の前駆細胞、またはT細胞の前駆細胞などの免疫系細胞もしくはその前駆細胞であってもよい。
【0012】
いくつかの態様では、細胞への形質移入は、化学物質ベースの形質移入試薬の使用、細胞の電気穿孔、または細胞の細胞質及び核への核酸及び/またはタンパク質の送達を提供する他の技術を含み得る。例えば、細胞は、塩沈殿物(例えば、CaPO4沈殿物)、脂質(例えば、荷電または非極性脂質)、カチオン性ポリマー、PEG複合体及び/またはタンパク質複合体(例えば、カチオン性ポリペプチド)を用いて形質移入することができる。いくつかの態様では、形質移入は、リン脂質リポソーム(例えば、グリセロリン脂質またはスフィンゴ脂質を含むリポソーム)などのリポソームの使用を含み得る。さらなる態様では、細胞を、ウイルスベクター(例えば、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルス(例えば、レンチウイルス)またはワクシニアウイルスベクター)で形質導入してもよい。ある特定の態様では、実施形態による使用のためのウイルスベクターは、非組込み型ウイルスベクターである。当業者であれば、ある特定の態様において、実施形態のトランスポザーゼを、トランスポゾンリピートをコードする核酸と共にまたは別々に細胞に送達してもよいことを認識するであろう。例えば、ある特定の態様において、トランスポザーゼを、タンパク質形質移入試薬を使用して組換えポリペプチドとして細胞に送達してもよく、トランスポゾンリピートを含む核酸分子を、核酸形質移入系またはウイルスベクターを用いて送達してもよい。さらなる態様では、トランスポザーゼをコードするRNAと、トランスポゾンリピート及び選択した遺伝子因子を有するDNAとを、同時形質移入する。
【0013】
さらなる態様において、本方法は、実施形態のトランスポザーゼポリペプチドまたはそのトランスポザーゼポリペプチドをコードする核酸と、トランスポゾンリピートに隣接する選択した遺伝子因子をコードする配列を有するDNAベクターとを細胞集団に形質移入し、次いで、トランスポザーゼの活性に適した条件下で集団をインキュベートし、それによって、選択した遺伝子因子を細胞のゲノムに組み込み、操作した細胞の集団を産生することをさらに含む。特定の態様では、本方法は、トランスポザーゼポリペプチドまたはそのトランスポザーゼポリペプチドをコードする核酸と、トランスポゾンリピートに隣接するCARをコードする配列を有するDNAベクターとをT細胞またはT細胞の前駆細胞の集団に形質移入し、トランスポザーゼの活性に適した条件下で集団をインキュベートし、それによって、細胞のゲノム中にCARを組み込み、操作したT細胞またはT細胞の前駆細胞の集団を産生することを含む。さらなる態様では、本方法は、トランスポゾンリピートに隣接するCARをコードする配列と、実施形態のトランスポザーゼをコードする配列(プロモーターに作動可能に連結している)とを有するDNAベクターを、T細胞またはT細胞の前駆細胞の集団に形質移入し、トランスポザーゼ活性に適した条件下で集団をインキュベートし、それによって細胞のゲノム中にCARを組み込み、操作したT細胞またはT細胞の前駆細胞の集団を産生することを含む。CARを発現するT細胞の増殖を選択的に促進する培地中での操作細胞の培養をいくつかの態様において追加的に実施してもよい。
【0014】
さらに別の実施形態では、前記実施形態に従って、第一に操作T細胞またはT細胞の前駆細胞の集団を取得し、必要に応じてCARを発現するT細胞の増殖を選択的に促進する培地中で細胞を培養して、次いで有効量のCAR発現T細胞を対象に投与してT細胞応答を提供することを含む、疾患を有するヒト対象におけるT細胞応答の提供方法を提供する。
【0015】
したがって、いくつかの態様では、実施形態の方法は:(a)対象から、T細胞またはT細胞の前駆細胞を含む細胞の試料を取得し;(b)トランスポゾンに隣接するキメラ抗原受容体(CAR)をコードするDNA、及びCARをコードするDNAを細胞ゲノムへ組み込むのに有効な実施形態のトランスポザーゼを細胞に形質移入し、CARを発現するトランスジェニック細胞集団を提供し;(c)必要に応じて、トランスジェニックCAR細胞の集団を生体外において、CARを発現するT細胞の増殖を選択的に促進する培地中で培養し;ならびに(d)有効量のトランスジェニックCAR細胞を対象に投与して、T細胞応答を提供することを含む。したがって、いくつかの態様では、トランスジェニックCAR細胞を、21日未満、例えば、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2日またはそれ未満の間、生体外で培養する。ある特定の態様では、CAR細胞を3~5日以内の間、生体外で培養する。さらに別の態様では、本方法の工程(a)~(d)(すなわち、CAR T細胞を投与するための細胞試料の取得)を、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、または5日以内に終結させる。さらなる態様では、対象由来の細胞試料は、約200ml未満の末梢血または臍帯血試料であってもよい。いくつかの態様では、アフェレーシスによって試料を収集してもよい。ある特定の態様では、アフェレーシスを伴わない方法(例えば、静脈穿刺による)によって試料を収集する。さらなる態様において、細胞試料は175ml未満、約175ml未満、150ml未満、約150ml未満、125ml未満、約125ml未満、100ml未満、約100ml未満、75ml未満、約75ml未満、50ml未満、約50ml未満、25ml未満、または約25ml未満の初期体積を有する(例えば、対象から取得する際、細胞試料は約50~約200ml、約50~約100ml、または約100~約200mlの初期体積を有する)。
【0016】
いくつかの態様では、実施形態の方法は、キメラ抗原受容体(CAR)及びトランスポザーゼをコードするDNAを細胞に形質移入することに関する。細胞の形質移入の方法は当該分野で周知であるが、ある特定の態様では、電気穿孔法のような非常に効率的な形質移入法を用いる。例えば、ヌクレオフェクション装置を用いて核酸を細胞に導入してもよい。ある特定の実施形態では、前記形質移入工程は、治療対象の対象内のウイルス配列保有細胞に対して、遺伝毒性を引き起こし、及び/または免疫応答をもたらし得るような、ウイルスを用いた細胞への感染または形質導入を含まない。
【0017】
実施形態のさらなる態様は、CARをコードする発現ベクターを細胞に形質移入することに関する。広範囲のCAR構築物及びそれらのための発現ベクターは、当該技術分野で公知である。例えば、いくつかの態様において、CAR発現ベクターは、プラスミド、直鎖状発現ベクターまたはエピソームなどのDNA発現ベクターである。いくつかの態様では、ベクターは、CARの発現を促進する配列、例えばプロモーター、エンハンサー、ポリAシグナル、及び/または1つ以上のイントロンなどのさらなる配列を含む。ある特定の態様では、CARコード配列は、トランスポゾン配列と隣接しており、その結果、トランスポザーゼの存在により、形質移入した細胞のゲノムにコード配列を組み込むことが可能になる。
【0018】
上記に詳述したように、ある特定の態様において、形質移入した細胞のゲノムへのCARコード配列の組込みを促進する実施形態のトランスポザーゼを用いて、細胞にさらなる形質移入を行う。いくつかの態様では、トランスポザーゼを、DNA発現ベクターとして提供する。ある特定の態様では、トランスポザーゼを、発現可能なRNAまたはタンパク質として提供し、それによってトランスジェニック細胞内でトランスポザーゼの長期発現が起こらないようにする。例えば、いくつかの態様では、トランスポザーゼを、mRNA(例えば、キャップ及びポリAテールを有するmRNA)でコードして提供する。
【0019】
さらなる態様において、実施形態のトランスジェニックCAR細胞は、T細胞の増殖及び/または生存を刺激する膜結合サイトカインの発現のための発現ベクターをさらに含む。特に、そのようなサイトカインを有するCAR細胞は、サイトカインの発現によって生じる刺激のために、活性化及び増殖細胞(AaPC)または人工抗原提示細胞(aAPC)による生体外での培養をほとんどまたはまったく伴わずに増殖及び/または持続することができる。同様に、そのようなCAR細胞は、CARが認識する大量の抗原が存在しない場合でも(例えば、寛解中の癌患者または最小限の残存疾患を有する患者の場合のように)in vivoで増殖することができる。いくつかの態様において、CAR細胞は、Cγサイトカイン及び因子(例えば、膜貫通ドメイン)の発現のためのDNAまたはRNA発現ベクターを保有し、サイトカインの表面での発現を提供する。例えば、CAR細胞は、膜結合型のIL‐7、IL‐15またはIL‐21を含むことができる。いくつかの態様では、サイトカインコード配列とサイトカイン受容体とを融合させることによって、サイトカインを膜に繋ぎ止める。例えば、細胞は、IL‐15‐IL‐15Rα融合タンパク質の発現用ベクターを含むことができる。さらなる態様では、膜結合型Cγサイトカインをコードするベクターは、CAR細胞のゲノムに組み込まれたベクターまたは染色体外ベクター(例えば、エピソームベクター)などのDNA発現ベクターである。さらなる態様では、膜結合Cγサイトカインの発現は誘導性プロモーター(例えば、薬物誘導性プロモーター)の制御下にあり、プロモーター活性を誘導または抑制することによってCAR細胞内のサイトカインの発現(及びそれによるCAR細胞の増殖)を制御できる。
【0020】
実施形態の態様は、NK細胞、NKT細胞、T細胞またはT細胞の前駆細胞を有する患者からの試料を採取することに関する。例えば、場合によっては、試料は、臍帯血試料、末梢血試料(例えば、単核細胞画分)または多能性幹細胞を含む対象由来試料である。いくつかの態様では、対象由来の試料を培養して誘導多能性幹(iPS)細胞を生成させ、これらの細胞を用いてNK細胞、NKT細胞またはT細胞を産生することができる。細胞試料は、対象から直接培養してもよく、または使用前に凍結保存してもよい。いくつかの態様において、細胞試料を採取することは、細胞試料を収集することを含む。他の態様では、試料を第三者経由で入手する。さらなる態様では、対象由来の試料を処理して、試料中のT細胞またはT細胞の前駆細胞を精製または濃縮することができる。例えば、試料を勾配精製、細胞培養選択及び/または細胞選別に供することができる(例えば、蛍光標識細胞分取(FACS)を介して)。
【0021】
いくつかの態様では、実施形態の方法は、抗原提示細胞の使用(例えば、操作した細胞の増殖のための)をさらに含む。例えば、抗原提示細胞は、樹状細胞、活性化及び増殖細胞(AaPC)、または不活性化(例えば、照射した)人工抗原提示細胞(aAPC)であり得る。そのような抗原提示細胞を産生するための方法は、当該技術分野で周知であり、本明細書においてさらに詳述する。したがって、いくつかの態様では、CAR細胞集団を増殖させるために、限定的な期間の間、生体外でトランスジェニックCAR細胞を抗原提示細胞(例えば、不活性化aAPC)と共培養する。CAR細胞を共培養する工程は、例えばインターロイキン‐21(IL‐21)及び/またはインターロイキン‐2(IL‐2)を含む培地中で行うことができる。いくつかの態様では、CAR細胞と抗原提示細胞とを、約10:1~約1:10;約3:1~約1:5;または約1:1~約1:3の比率で共培養する。例えば、CAR細胞と抗原提示細胞との共培養は、約1:1、約1:2または約1:3の比率であり得る。
【0022】
いくつかの態様では、AaPCまたはaAPCなどのCAR細胞の培養のための細胞を操作し、特定のポリペプチドを発現させ、CAR細胞の増殖を促進する。例えば、細胞は、(i)CARが標的とする抗原(すなわち、トランスジェニックCAR細胞上で発現する);(ii)CD64;(ii)CD86;(iii)CD137L;及び/または(v)aAPCの表面上に発現する膜結合型IL‐15を有し得る。いくつかの態様では、AaPCまたはaAPCは、AaPCまたはaAPCの表面上に発現するCAR結合抗体またはその断片を含む。好ましくは、本発明の方法に使用するAaPCまたはaAPCについては、それが感染性物質を含まないことを検査して確認し、及び/または不活性化して非増殖性であることを検査して確認する。
【0023】
AaPCまたはaAPC存在下での増殖は、培養物中のCAR細胞の数または濃度を増加させることができるが、この手順は、労働集約的であり、高価である。さらに、いくつかの態様では、治療を必要とする対象に対し、可能な限り短時間でトランスジェニックCAR細胞を再注入すべきである。したがって、いくつかの態様では、トランスジェニックCAR細胞の生体外での培養期間は、14日、7日、または3日以内である。例えば、生体外での培養(例えば、AaPCまたはaAPCの存在下での培養)は、トランスジェニックCAR細胞の2倍未満の集団に対して実施することができる。さらなる態様では、AaPCまたはaAPCの存在下でのトランスジェニック細胞の生体外での培養は行わない。
【0024】
さらに別の態様では、実施形態の方法は、細胞の形質移入後、または細胞の生体外での増殖後に、CARを発現するT細胞の細胞集団を富化するための工程を含む。例えば、富化工程は、例えばCARまたはCAR結合抗体が結合する抗原を用いて細胞を選別する(例えば、FACSによる)ことを含み得る。さらなる態様では、富化工程は、非T細胞の枯渇またはCAR発現を欠損している細胞の枯渇を含む。例えば、CD56+細胞を培養集団から枯渇させることができる。さらなる態様では、細胞を対象に投与する際に、CAR細胞の試料を保存する(または培養物中で維持する)。例えば、後の増殖または分析のために、試料を凍結保存してもよい。
【0025】
ある特定の態様では、トランスジェニックCAR細胞を、内在性T細胞受容体及び/または内在性HLAの発現に関して、不活性化する。例えば、T細胞を操作して、内在性α/βT細胞受容体(TCR)の発現を排除することができる。特定の実施形態では、CAR+ T細胞を遺伝子改変して、TCRの発現を排除する。いくつかの態様では、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)を用いて、CARを発現するT細胞のT細胞受容体α/βを破壊する。ある特定の態様では、CARを発現するT細胞のT細胞受容体αβ鎖を、例えばジンクフィンガーヌクレアーゼを用いてノックアウトする。
【0026】
本明細書でさらに詳述するように、実施形態のCAR細胞を使用して、広範囲の疾患及び病態を治療することができる。本質的に、特定の抗原の特異的または増強された発現を含む任意の疾患は、CAR細胞を抗原に標的化することによって治療することができる。例えば、自己免疫疾患、感染症、及び癌を、本発明の方法及び/または組成物を用いて治療することができる。これらには、癌、例えば、原発性、転移性、再発性、治療感受性、難治性の癌(例えば、化学療法抵抗性の癌)が含まれる。癌は、血液、肺、脳、結腸、前立腺、乳房、肝臓、腎臓、胃、子宮頸部、卵巣、睾丸、脳下垂体、食道、脾臓、皮膚、骨などの癌であってもよい(例えば、B細胞リンパ腫またはメラノーマ)。癌を治療する場合に、CAR細胞は、一般的には、癌細胞抗原(腫瘍関連抗原(TAA)としても知られる)を標的とする。
【0027】
さらに別の態様では、実施形態のトランスジェニックCAR細胞を使用して、明白な寛解状態の癌患者のような最小限の残存疾患を有する対象(例えば、CAR標的抗原の提示が非常に少ない対象)を治療してもよい。新規高感度診断技術を使用して、顕性の癌症状を示さない患者において、癌関連抗原(または癌細胞)を検出することができる。本方法によってそのような患者を治療し、抗原標的化CAR細胞を用いて残存疾患を排除してもよい。ある特定の実施形態において、残存疾患を標的化するためのトランスジェニックCAR細胞は、標的抗原が少量であるにもかかわらずin vivoで増殖する能力を保持するため、膜結合型増殖性サイトカインの発現をさらに含む。
【0028】
実施形態のプロセスを利用して、様々な腫瘍抗原(例えば、CD19、ROR1、CD56、EGFR、CD33、CD123、c‐met、GD2)に対する結合特異性を有するCAR+ T細胞を製造することができる(例えば、臨床試験用)。本技術を用いて生成したCAR+ T細胞を用いて、白血病(例えば、AML、ALL、CML)、感染症及び/または固形腫瘍を有する患者を治療することができる。例えば、実施形態の方法を使用して、細胞増殖性疾患、真菌性、ウイルス性、細菌性または寄生虫の感染症を治療することができる。標的となる可能性のある病原体として、Plasmodium、トリパノソーマ、Aspergillus、Candida、HSV、RSV、EBV、CMV、JCウイルス、BKウイルス、またはエボラ病原体が挙げられるが、必ずしもこれらに限定するものではない。実施形態のCAR細胞が標的とすることができる抗原のさらなる例として、CD19、CD20、癌胎児性抗原、αフェトプロテイン、CA‐125、5T4、MUC‐1、上皮腫瘍抗原、メラノーマ関連抗原、変異型p53、変異型ras、HER2/Neu、ERBB2、葉酸結合タンパク質、HIV‐1エンベロープ糖タンパク質gp120、HIV‐1エンベロープ糖タンパク質gp41、GD2、CD123、CD23、CD30、CD56、c‐Met、メオテリン、GD3、HERV‐K、IL‐11Rα、κ鎖、λ鎖、CSPG4、ERBB2、EGFRvIII、またはVEGFR2が挙げられるが、必ずしもこれらに限定するものではない。ある特定の態様では、実施形態の方法は、CD19またはHERV‐K発現細胞の標的化に関する。例えば、HERV‐K標的化CAR細胞は、モノクローナル抗体6H5のscFv配列を有するCARを含み得る。さらなる態様において、実施形態のCARは、サイトカイン、例えば、IL‐2、IL‐7、IL‐15、IL‐21またはそれらの組合せと、複合体化または融合させることができる。
【0029】
いくつかの実施形態では、医学的病態を有する個体の治療方法を提供し、前記方法は、本明細書に記載する細胞集団由来の有効量の細胞を投与する工程を含み、いくつかの態様においては、1回超、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14日、またはそれ以上の間隔をおいて投与する。特定の態様において、癌は、膀胱、血液、骨、骨髄、脳、乳房、結腸、食道、胃腸管、歯肉、頭部、腎臓、肝臓、肺、鼻咽頭、頸部、卵巣、前立腺、皮膚、胃、精巣、舌、または子宮の癌である。ある特定の態様において、癌はリンパ腫、白血病、非ホジキンリンパ腫、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ球性白血病、またはB細胞関連自己免疫疾患である。
【0030】
本明細書及び特許請求の範囲において使用する場合、「a」または「an」は、1つまたはそれ以上を意味し得る。本明細書及び特許請求の範囲において使用する用語「a」または「an」は、「comprising(含む)」という用語と併せて用いる場合、1つまたはそれ以上を意味し得る。本明細書及び特許請求の範囲において使用する場合、「別の」または「さらなる」は、少なくとも第二の、またはそれ以上を意味し得る。
【0031】
本明細書及び特許請求の範囲で使用する場合、「約」という用語は、値が、その値を決定するために用いる装置、方法の誤差の固有の変動、または研究対象者の間に存在する変動を含むことを示すように用いられる。
【0032】
本発明の他の目的、特徴及び利点は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。しかしながら、詳細な説明及び特定の実施例は、本発明のある特定の実施形態を示してはいるが、これらは単に例示を目的としたものに過ぎず、なぜならば、この詳細な説明から、本発明の精神及び範囲内の様々な変更及び修正が、当業者には明らかになるであろうからである。
本発明の実施形態において、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
配列番号1に少なくとも90%同一の配列を有する組換えポリペプチドであって、前記ポリペプチドが、136位に対応する位置にArg;253位に対応する位置にHis及び/または255位に対応する位置にArgを有し、前記ポリペプチドが配列番号5の配列を含まない、前記組換えポリペプチド。
(項目2)
以下の特徴の1つ以上を有する、項目1に記載のポリペプチド:
(a)14位に対応する位置にArg;
(b)33位に対応する位置にAla;
(c)115位に対応する位置にHis;
(d)214位に対応する位置にAsp;
(e)215位に対応する位置にAla;
(f)216位に対応する位置にVal;
(g)217位に対応する位置にGln;及び/または
(h)243位に対応する位置にHis。
(項目3)
前記(a)~(h)の特徴のうちの1、2、3、4、5、6、7または8つを有する、項目2に記載のポリペプチド。
(項目4)
214~217位に対応する位置に配列DAVQを含む、項目2に記載のポリペプチド。(項目5)
314位に対応する位置にAsnを含む、項目1に記載のポリペプチド。
(項目6)
前記ポリペプチドが、配列番号1の配列と少なくとも95%同一である、項目5に記載のポリペプチド。
(項目7)
配列番号1の配列を含む、項目5に記載のポリペプチド。
(項目8)
314位に対応する位置にThrを含む、項目1に記載のポリペプチド。
(項目9)
前記ポリペプチドが、配列番号3の配列と少なくとも90%または少なくとも95%同一である、項目8に記載のポリペプチド。
(項目10)
配列番号3の配列を含む、項目9に記載のポリペプチド。
(項目11)
項目1~10のいずれか一項に記載のポリペプチドをコードする配列を含むポリヌクレオチド分子。
(項目12)
前記分子がDNAである、項目11に記載のポリヌクレオチド分子。
(項目13)
前記DNAが前記ポリペプチドの発現用プロモーターを含む、項目12に記載のポリヌクレオチド分子。
(項目14)
前記DNAが哺乳類細胞における前記ポリペプチドの発現用プロモーターを含む、項目12に記載のポリヌクレオチド分子。
(項目15)
前記分子がmRNAである、項目11に記載のポリヌクレオチド分子。
(項目16)
5’‐キャップ、IRESモチーフ及び/またはポリ(A)配列を含む、項目15に記載のポリヌクレオチド分子。
(項目17)
20~300ヌクレオチドのポリ(A)配列を含む、項目16に記載のポリヌクレオチド分子。
(項目18)
前記分子が、配列番号2または配列番号4と少なくとも90%または少なくとも95%同一の配列を有する、項目11に記載のポリヌクレオチド分子。
(項目19)
前記分子が、配列番号2または配列番号4の配列を有する、項目11に記載のポリヌクレオチド分子。
(項目20)
前記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを細胞に形質移入し、前記ポリヌクレオチドから前記ポリペプチドを発現させることを含む、項目1に記載のポリペプチドの作製方法。
(項目21)
項目1に記載のポリペプチドまたは項目11に記載のポリヌクレオチド分子を保有する宿主細胞。
(項目22)
前記細胞がヒト細胞である、項目21に記載の細胞。
(項目23)
前記細胞が、幹細胞または誘導多能性幹(iPS)細胞である、項目21に記載の細胞。(項目24)
前記細胞が免疫系細胞である、項目21に記載の細胞。
(項目25)
前記細胞が、ナチュラルキラー(NK)細胞、T細胞、またはNK細胞もしくはT細胞の前駆細胞である、項目24に記載の細胞。
(項目26)
前記細胞が、項目1に記載のポリペプチドを含む、項目21に記載の細胞。
(項目27)
前記細胞が、項目1に記載のポリペプチドをコードするmRNAを含む、項目21に記載の細胞。
(項目28)
細胞の遺伝子操作方法であって:
(a)前記細胞に、(i)項目1に記載のトランスポザーゼポリペプチドまたは前記ポリペプチドをコードする核酸;及び(ii)トランスポゾンリピートに隣接する選択した遺伝子因子をコードするDNAを形質移入し;ならびに
(b)一過性または安定なトランスポザーゼ活性に適した条件下で前記細胞をインキュベートし、それにより、前記選択した遺伝子因子を前記細胞のゲノムに組み込み、操作した細胞を産生することを含む、前記遺伝子操作方法。
(項目29)
項目28に記載の方法であって、さらに:
(c)前記操作した細胞を単離することを含む、前記方法。
(項目30)
前記選択した遺伝子因子が、スクリーニング可能または選択マーカーである、項目28に記載の方法。
(項目31)
前記選択した遺伝子因子が、治療用ポリペプチドまたは阻害性核酸をコードする、項目28に記載の方法。
(項目32)
前記選択した遺伝子因子が、抗体、T細胞受容体(TCR)、キメラ抗原受容体(CAR)をコードする、項目28に記載の方法。
(項目33)
前記選択した遺伝子因子がCARをコードする、項目32に記載の方法。
(項目34)
前記細胞がヒト細胞である、項目28に記載の方法。
(項目35)
前記細胞が幹細胞または誘導多能性幹(iPS)細胞である、項目28に記載の方法。
(項目36)
前記細胞が免疫系細胞またはその前駆細胞である、項目28に記載の方法。
(項目37)
前記細胞がナチュラルキラー(NK)細胞、T細胞、またはNK細胞もしくはT細胞の前駆細胞である、項目36に記載の方法。
(項目38)
前記細胞への形質移入が、ポリマー、ポリペプチドまたは脂質ベースの形質移入試薬の使用を含む、項目28に記載の方法。
(項目39)
前記細胞への形質移入が、細胞を電気穿孔することを含む、項目28に記載の方法。
(項目40)
項目28に記載の方法であって、さらに:
(a)細胞の集団に、(i)項目1に記載のトランスポザーゼポリペプチドまたは前記ポリペプチドをコードする核酸;及び(ii)トランスポゾンリピートに隣接する選択した遺伝子因子をコードするDNAを形質移入し;ならびに
(b)トランスポザーゼ活性に適した条件下で前記集団をインキュベートし、それにより、前記選択した遺伝子因子を前記細胞のゲノムに組み込み、操作した細胞の集団を産生することを含む、前記方法。
(項目41)
項目40に記載の方法であって、さらに:
(a)T細胞またはT細胞前駆細胞の集団に、(i)項目1に記載のトランスポザーゼポリペプチドまたは前記ポリペプチドをコードする核酸;及び(ii)トランスポゾンリピートに隣接するCARまたはTCRをコードするDNAを形質移入し;ならびに
(b)トランスポザーゼ活性に適した条件下で前記集団をインキュベートし、それにより、前記細胞のゲノム中に前記CARを組み込み、操作したT細胞またはT細胞前駆細胞の集団を産生することを含む、前記方法。
(項目42)
項目41に記載の方法であって、さらに:
(c)CARまたはTCRを発現するT細胞の増殖を選択的に促進する培地中で、前記操作した細胞を培養することを含む、前記方法。
(項目43)
疾患を有するヒト対象におけるT細胞応答の提供方法であって:
(a)項目41に従って、操作したT細胞またはT細胞前駆細胞の集団を取得し;
(b)必要に応じて、CARを発現するT細胞の増殖を選択的に促進する培地中で前記細胞を培養し;及び
(d)CARを発現するか、もしくはTCRを発現するか、または遺伝子操作した有効量のT細胞またはNK細胞または免疫細胞を前記対象に投与して、免疫応答を提供することを含む、前記提供方法。
【0033】
添付の図面は、本明細書の一部を形成し、本発明のある特定の態様をさらに示すために添付する。本明細書に提示する特定の実施形態の詳細な説明と組み合わせて、これらの図面のうちの1つ以上を参照することにより、本発明をよりよく理解し得る。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】トランスポザーゼに基づく細胞操作のための例示的な戦略。本実施例では、CARを発現する操作T細胞を産生する。トランスポゾンリピートに隣接するCARをコードするトランスポゾンDNA構築物を、トランスポザーゼをコードするmRNAと共に、T細胞に同時形質移入する。この場合、4D‐NUCLEOFECTOR(商標)電気穿孔システム(Lonza Group社、スイス)を形質移入に使用する。一旦細胞に導入されると、トランスポザーゼは一過性に発現し、CAR構築物のゲノムDNAへの組込みを媒介する。トランスポザーゼをコードするmRNAは細胞内で分解され、トランスポザーゼの長期発現が細胞内で起こらないことを保証する。
【
図2】ヒストグラムは、
図1に概略を示したCARを形質移入したヒトT細胞のフローサイトメトリーデータを示す。実施形態の2つの組換えトランスポザーゼ、hSB110及びhSB81のSB100xに対する結果を比較する。上パネルは、形質移入の8日後の、CAR陽性の細胞数(y軸)を、7AAD(7‐アミノアクチノマイシンD)染色によって評価した非生存細胞(x軸)と比較して示す。下のパネルは、形質移入の15日後の、CAR発現陽性の細胞数(y軸)、及びCD3を発現する細胞数(x軸)を示す。研究の結果は、実施形態の組換えトランスポザーゼが、SB100xよりも細胞操作において有意により効率的であることを示す。形質移入後8日目までに、hSB110及びhSB81をコードするmRNAを用いて電気穿孔した細胞の22%超がCARを発現するのに対し、SB100xを使用した細胞ではわずか15%にとどまる。同様に、15日目までに、hSB110及びhSB81を用いて電気穿孔した細胞集団の80%超がCAR及びCD3を同時発現したのに対し、SB100xを使用した細胞では73.4%にすぎなかった。
【発明を実施するための形態】
【0035】
[例示的な実施形態の説明]
I.細胞の遺伝子操作
細胞の遺伝子操作は、広範囲の細胞において所望の遺伝子を安定的に発現させるための有力な技術として登場した。近年、このような技術は、ある病状範囲における治療的介入に用いる細胞に対しても適用されるようになってきた。例えば、疾患関連抗原を標的とする受容体を発現する遺伝子操作T細胞は、現在、抗癌治療薬として臨床試験中である。トランスポザーゼ系は、特に治療薬として用いる細胞の場合、操作用途に望ましい系であって、これは細胞内で維持されている異種遺伝子因子を導入することがないためであり、このことはウイルスベースの操作系の共通の特徴である。しかしながら、治療介入に必要とされる十分な数の操作T細胞を提供するためには高い効率が必要である。
【0036】
本明細書における研究では、ヒト細胞の操作において有意に改善した効率を示すhSB110及びhSB81と呼ばれる新規組換えトランスポザーゼ酵素を示す。例えば、CAR発現構築物を初代ヒトT細胞に組み込むために使用する場合、新規トランスポザーゼは、形質移入後8日目までにその細胞の20%をはるかに上回るCAR発現を示す細胞集団を産生することができた(
図2)。さらに、15日目までに、形質移入した集団中の80%超の細胞がCAR発現に対して陽性であった(
図2)。このようなヒト細胞の高効率遺伝子操作は、従来のトランスポザーゼベースの操作系に比べて、有意に改善していることを意味している。
【0037】
実施形態のトランスポザーゼコード配列は、哺乳類細胞の高効率遺伝子操作に用いることができる。例えば、トランスポザーゼを、CAR発現T細胞集団の迅速な産生に用いることができる。一実施形態では、トランスポザーゼをコードするmRNAを、トランスポゾンリピートに隣接する所望のCAR発現カセットをコードするDNAベクターと共にT細胞(またはT細胞の前駆細胞)に同時形質移入する。次いで、CAR発現T細胞を精製及び/または選択的に増殖させてもよい。治療に使用するT細胞の場合、細胞調製の時間及びコストを低減するために、できるだけ僅かな増殖で済むことが望ましい。重要な点として、本明細書において提供するトランスポザーゼは、CARを安定的に発現する細胞の割合を高めることによってそのような操作手順を有意に改善し、したがって、そのような細胞をさらに増殖させるために利用可能である。
【0038】
II.トランスポザーゼポリペプチド及びコード配列
上記の要約に記載されているように、実施形態のある特定の態様は、組換えトランスポザーゼポリペプチド及びそれをコードする核酸に関する。ある特定の態様では、実施形態に従って使用するためのトランスポザーゼは、配列番号1または配列番号3と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一である配列を含むかまたはそれからなるポリペプチドである。ある特定の態様では、トランスポザーゼの実施形態は、配列番号1または配列番号3の配列に対して、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個のアミノ酸の置換、欠失または挿入を含んでいてもよい。例えば、実施形態のトランスポザーゼポリペプチドを、それらの酵素活性を維持させつつ、1か所以上のアミノ酸置換によってさらに改変してもよい。場合により、あるアミノ酸の位置を、異なるトランスポザーゼ配列の対応する位置のアミノ酸で置換することができる。例えば、追加的なトランスポザーゼの配列は、米国特許第6,489,458号;第7,148,203号;第8,227,432号;米国特許出願公開第2011/0117072号;Mates et al.,2009及びIvics et al.,1997に記載されており、前記文献の各々はその全体を参照により本明細書に援用する。
【0039】
いくつかの態様では、1か所以上の位置でアミノ酸置換を行うことができ、その置換は、同様の親水性を有するアミノ酸への置換である。相互作用的な生物学的機能性をタンパク質に付与する際のアミノ酸疎水性親水性指標の重要性は、当該技術分野で一般的に理解されている(Kyte and Doolittle,1982)。アミノ酸の相対的なヒドロパシー特性は、最終的なタンパク質の二次構造に寄与し、その二次構造が、タンパク質と他の分子、例えば、酵素、基質、受容体、DNA、抗体、抗原などとの相互作用を規定することが認められている。したがって、そのような保存的置換は、トランスポザーゼにおいて行うことが可能であり、その活性に僅かな影響しか及ぼさないと考えられる。米国特許第4,554,101号に詳述されているように、以下の親水性値がアミノ酸残基に割り当てられている:アルギニン(+3.0);リジン(+3.0);アスパラギン酸(+3.0±1);グルタミン酸(+3.0±1);セリン(+0.3);アスパラギン(+0.2);グルタミン(+0.2);グリシン(0);スレオニン(-0.4);プロリン(-0.5±1);アラニン(0.5);ヒスチジン-0.5);システイン(-1.0);メチオニン(-1.3);バリン(-1.5);ロイシン(-1.8);イソロイシン(-1.8);チロシン(-2.3);フェニルアラニン(-2.5);トリプトファン(-3.4)。これらの値は、規準として使用することができ、したがって、企図する実施形態は、親水性値が±2以内、±1以内、及び±0.5以内のアミノ酸置換を含む。したがって、あるアミノ酸を、それとは異なってはいるが同等の親水性値を有する相同なアミノ酸で置換することによって、本明細書に記載の任意のトランスポザーゼポリペプチドを操作してもよい。±1.0、または±0.5ポイント以内の親水性を有するアミノ酸は相同であると考えられる。
【0040】
さらなる態様では、実施形態のトランスポザーゼポリペプチドを、精製タグ(例えば、T7、ポリHisまたはGSTタグ)、レポーターまたはCPPなどの異種ポリペプチド配列に融合させる。例えば、ポリペプチドを、造影剤などのレポーターに融合(または複合体化)させてもよい。ある場合には、融合タンパク質がトランスポザーゼと異種ポリペプチドとの間の位置に追加のアミノ酸を含み得ることが理解される。通常、これらの配列は、「リンカー配列」または「リンカー領域」と互換的に呼ばれる。リンカー領域は鎖長1残基以上のアミノ酸であってよく、多くの場合、リンカーに柔軟性を付与する1つ以上のグリシン残基(複数可)を含むことは、当業者であれば理解するだろう。そのようなリンカー配列を、1、2、3、4、5、6回、もしくはそれ以上リピートするか、または1つ以上の異なるリンカーと組み合わせてリンカー配列のアレイを形成することができる。いくつかの応用例では、例えば、リンカー領域は、プロテアーゼ切断部位(例えば、精製タグまたはCPPの除去のための)を有してもよい。
【0041】
本明細書中で使用する場合、CPP及び膜移行ペプチド(MTP)という用語は、同じ意味で用い、細胞内に内部移行するポリペプチドの能力を高めるペプチド配列のことを指す。実施形態に従って使用するためのCPPの例として、HIV Tat、ヘルペスウイルスVP22、Drosophilaアンテナペディアホメオボックス遺伝子産物、プロテグリンI、T1 CPP、T2 CPP、またはIFN7 CPPに由来するペプチドセグメントが挙げられるが、必ずしもこれらに限定するものではない(例えば、参照により本明細書に援用する米国特許出願公開第20140140976号参照)。
【0042】
III.細胞工学
実施形態の態様は、実施形態のトランスポザーゼを用いた哺乳類細胞の遺伝子操作に関する。一般的に、そのような方法は、(i)トランスポザーゼ(またはトランスポザーゼポリペプチド)をコードする第一のベクター及び(ii)トランスポゾンリピートに隣接する所望の遺伝子因子をコードする第二のベクターを細胞に導入することを含む。このような方法によって、任意のタイプの哺乳類細胞を遺伝子操作することができる。しかしながら、ある特定の態様では、細胞(細胞集団)は、幹細胞、iPS細胞、免疫細胞またはこれらの細胞の前駆細胞である。以下に記載する方法は、CAR発現のためのT細胞(または他の免疫細胞)操作の具体例を扱う。しかしながら、当業者であれば、この方法論が任意の所定の細胞タイプまたは操作構築物に等しく適用し得ることを認識するであろう。
【0043】
したがって、ある特定の実施形態では、CARをコードするDNA構築物を含む発現ベクターをT細胞に形質移入することを含む、抗原特異性再配向(redirected)T細胞の作製及び/または増殖のための方法を提供する。必要に応じて、そのような細胞を、抗原陽性細胞、組換え抗原、または受容体に対する抗体で刺激して、細胞を増殖させる。
【0044】
別の態様では、T細胞を安定的に形質移入して再配向する方法を提供する。実施形態によるそのような形質移入は、当該分野で周知の任意の様々な形質移入技術によって行うことができる。いくつかの態様では、ウイルスベクターまたはウイルス粒子を用いて核酸を細胞に導入することができる。実際、多くの研究者が、ウイルスベクターを使用してT細胞に異種遺伝子を移行させてきた。しかしながら、いくつかの態様では、実施形態の形質移入は、ウイルスベクターの使用を伴わない。例えば、形質移入は、電気穿孔、荷電もしくは非荷電脂質、カチオン性ポリマーまたはポリペプチドの使用、塩沈殿または他の非ウイルス性核酸移送(限定はしないが、ソノポレーションなど)によって行うことができる。ある特定の態様では、形質移入は、裸のDNA(またはトランスポザーゼの場合はRNAもしくはタンパク質)を用いる。裸のDNAを用いることにより、再配向T細胞を産生するのに必要な時間を短縮することができる。「裸のDNA」とは、CARをコードするDNAが、発現のための適切な向きで発現カセットまたはベクターに含まれることを意味する。実施形態の電気穿孔法は、CARを発現し、細胞表面上にそれを保持する安定した形質移入体を産生する。
【0045】
いくつかの態様では、実施形態のCARを、「キメラTCR」としてさらに定義することができ、これはT細胞において発現する受容体であって、細胞内シグナル伝達、膜貫通及び細胞外ドメインを有し、その細胞外ドメインが、MHCに制限されない様式で、T細胞受容体がその様式では通常は結合しない抗原に特異的に結合する受容体を意味する。適切な条件下での抗原によるT細胞の刺激は、細胞の増殖(増大)及び/またはIL‐2の産生をもたらす。本方法は、任意の所与の標的抗原に特異的なキメラTCR、例えばHER2/Neu(Stancovski et al.,1993)、ERBB2(Moritz et al.,1994)、葉酸結合タンパク質(Hwu et al.,1995)、腎細胞癌(Weitjens et al.,1996)、ならびにHIV‐1エンベロープ糖タンパク質gp120及びgp41(Roberts et al.,1994)に特異的なキメラTCRなどを用いた形質移入に対して適用可能である。他の細胞表面標的抗原として、CD20、癌胎児性抗原、メソセリン、ROR1、c‐Met、CD56、GD2、GD3、αフェトプロテイン、CD23、CD30、CD123、IL‐11Rα、κ鎖、λ鎖、CD70、CA‐125、MUC‐1、EGFR及び変異体、上皮腫瘍抗原などが挙げられるが、必ずしもこれらに限定するものではない。
【0046】
ある特定の態様では、実施形態に従って使用するためのT細胞は、ヒト末梢血単核細胞(PBMC)、G‐CSFで刺激した後に回収するPBMC、骨髄、または臍帯血に由来するT細胞のような初代ヒトT細胞である。条件には、mRNA及びDNAならびに電気穿孔法の使用が含まれる。形質移入後、細胞を直ちに注入してもよいし、保存してもよい。ある特定の態様では、形質移入後、細胞への遺伝子移送から約1、2、3、4、5日またはそれ以上の範囲内にバルク集団として、数日、数週間、または数か月間、生体外で細胞を増殖させてもよい。さらなる態様では、形質移入後、形質移入体をクローニングし、単一の一体化型の、またはエピソーム的に維持された発現カセットもしくはプラスミド、及びキメラ受容体の発現の存在を示すクローンを生体外で増大させる。増殖のために選択したクローンは、抗原を発現する標的細胞を特異的に認識及び溶解する能力を示す。IL‐2または他のサイトカイン(例えば、IL‐7、IL‐12、IL‐15、IL‐21など)による刺激によって組換えT細胞を増殖させてもよい。人工抗原提示細胞による刺激によって組換えT細胞を増殖させてもよい。人工抗原提示細胞上で、またはT細胞表面上のCD3を架橋するOKT3のような抗体を用いて組換えT細胞を増殖させてもよい。人工抗原提示細胞上、またはT細胞表面上のCD52に結合するアレムツズマブのような抗体を用いて、組換えT細胞のサブセットを削除してもよい。さらなる態様では、遺伝子操作した細胞を凍結保存してもよい。
【0047】
注入後のT細胞増殖(生存)は:(i)トランスポゾン及び/またはCARに特異的なプライマーを用いたq‐PCR及び/またはデジタルPCR(例えば、Droplet Digital(商標)PCR(Bio‐Rad、ハーキュリーズ、カリフォルニア);(ii)CAR特異的抗体を用いたフローサイトメトリー;及び/または(iii)可溶性TAAを用いたフローサイトメトリーによって評価してもよい。
【0048】
本発明のある特定の実施形態において、CAR細胞を、それを必要とする個体、例えば、癌または感染症を有する個体に送達する。細胞は、その後、個体の免疫系を増強して、それぞれの癌細胞または病原性細胞を攻撃する。場合によっては、抗原特異的CAR T細胞を1回以上個体に投与する。抗原特異的CAR T細胞を2回以上個体に投与する場合、投与間の持続時間は、個体内で増殖する時間を許容するのに十分であるべきであり、具体的な実施形態では、投与間の持続時間は、1、2、3、4、5、6、7日間、またはそれ以上の日数である。
【0049】
キメラ抗原受容体(及び場合によっては機能性TCRを欠く)の両方を含むように改変した同種異系または自己T細胞の供給源は、いかなる種類のものでもよいが、具体的な実施形態では、例えば、臍帯血、末梢血、ヒト胚性幹細胞、または誘導多能性幹細胞バンクから細胞を取得する。治療効果を得るための適切な用量は、例えば、好ましくは一連の投与サイクルで、1回の投与あたり少なくとも105または約105~約1010細胞である。例示的な投薬レジメンは、用量を漸増させる1週間の投与サイクル4回からなり、0日目に少なくとも約105細胞で開始し、例えば患者内投与漸増スキームを開始してから数週間以内に、最大約1010細胞の標的用量まで漸増的に増加させる。適切な投与様式として、静脈内、皮下、腔内(例えばリザーバーアクセス装置による)、腹腔内、及び腫瘍塊への直接注射が挙げられる。
【0050】
本発明の医薬組成物は、単独で、または癌を治療するのに有用な他の確立された薬剤と組み合わせて使用することができる。単独で、または他の薬剤と組み合わせて送達するかどうかに関わらず、本発明の医薬組成物は、哺乳類、特にヒトの体内の様々な経路を介して様々な部位に送達され、特定の効果を達成することができる。当業者であれば、複数の経路を投与に使用することができるが、特定の経路が別の経路よりもより迅速かつより効果的な反応を提供し得ることを認識するであろう。例えば、メラノーマの治療に対しては、皮内送達のほうが吸入よりも有効に利用し得る。局所または全身送達は、体腔内への製剤の投与もしくは点滴、エアロゾルの吸入もしくは吹送、または、筋肉内、静脈内、門脈内、肝内、腹膜、皮下、もしくは皮内投与を含む非経口導入による投与によって達成することができる。
【0051】
実施形態の組成物は、例えば注射などの各用量単位が、所定量の組成物を単独でまたは他の活性薬剤と適切に組み合わせて含む単位剤形で提供することができる。本明細書で使用する単位剤形という用語は、ヒト及び動物対象に対する単位用量として適切な物理的に別個の単位を指し、各単位は、所望の効果を生み出すのに十分な量を計算した所定量の本発明の組成物を、単独でまたは他の活性薬剤と組み合わせて、適切な場合には薬学的に許容可能な希釈剤、担体、またはビヒクルと共に含む。本発明の単位剤形の仕様は、特定の対象内での医薬組成物に関する特定の薬力学に依存する。
【0052】
望ましくは、有効量または十分な数の単離された形質導入T細胞が組成物中に存在し、対象に導入され、それによって長期の特異的な抗腫瘍応答を確立し、そのような治療がない場合よりも、腫瘍のサイズを縮小させるか、または腫瘍成長を排除するか、または腫瘍増殖または再増殖を阻害する。望ましくは、一定量の形質導入T細胞を対象に再導入することによって、腫瘍の元の、すなわち初期の(例えば、「治療0日目」の)サイズに比べて、腫瘍サイズを、約10%もしくは少なくとも約10%、約20%もしくは少なくとも約20%、約30%もしくは少なくとも約30%、約40%もしくは少なくとも約40%、約50%もしくは少なくとも約50%、約60%もしくは少なくとも約60%、約70%もしくは少なくとも約70%、約80%もしくは少なくとも約80%、約90%もしくは少なくとも約90%、約95%もしくは少なくとも約95%、約98%もしくは少なくとも約98%、または約100%もしくは100%縮小させる。
【0053】
したがって、投与する形質導入T細胞の量は、投与経路を考慮すべきであり、所望の治療応答を達成するために十分な数の形質導入T細胞を導入するようなものにすべきである。さらに、本明細書に記載する組成物に含まれる各活性剤の量(例えば、接触させる各細胞あたりの量またはある特定の体重あたりの量)は、異なる用途において変化し得る。一般的に、形質導入T細胞の濃度は、望ましくは、治療する対象に供給するのに十分な濃度、すなわち少なくとも約1×106~約1×109の形質導入T細胞、さらに望ましくは約1×107~約5×108の形質導入T細胞であるべきだが、しかし、それを上回る、例えば、5×108細胞を超えるか、またはそれを下回る、例えば、1×107細胞未満のいずれかの任意の適切な量で利用することは可能である。投薬計画は、十分に確立された細胞ベースの療法(例えば、Topalian and Rosenberg,1987;米国特許第4,690,915号参照)に基づくことができ、または交互の連続注入戦略を用いることができる。
【0054】
これらの値は、本発明の実施のための本発明の方法の最適化に際して、専門家が利用する形質導入T細胞の範囲についての一般的な指針を提供する。このような範囲に関する本明細書の記載は、特定の用途において保証し得るような、より多くのまたはより少量の成分の使用を決して排除するものではない。例えば、実際の用量及びスケジュールは、組成物を他の医薬組成物と併用して投与するかどうかに基づいて、または薬物動態、薬物素因及び代謝の個人間の差異に応じて変化し得る。当業者であれば、特定の状況の緊急性に応じて必要な調整を容易に行うことができる。
【0055】
IV.操作構築物
ある特定の具体的な態様では、実施形態のトランスポザーゼ系を用いて、選択した遺伝子因子を終結させる発現構築物で細胞を操作する。このような態様において、選択した遺伝子因子は、実施形態のトランスポザーゼによって機能するIR/DR配列のようなトランスポゾンリピートに隣接している。選択した遺伝子因子は、細胞に形質移入することを望む任意の配列を含み得るが、ある特定の態様では、その因子は、ポリペプチドコード配列及び哺乳類発現のための適切な発現制御配列をコードする。いくつかの特定の態様では、選択した遺伝的因子は、抗体、T細胞受容体またはキメラ抗原受容体(CAR)などの抗原結合部分をコードする。本明細書中で使用する場合、「抗原」という用語は、抗体またはT細胞受容体またはCARが結合し得る分子のことである。
【0056】
したがって、本発明の実施形態は、核酸、例えば、ヒト化して免疫原性を低下させたCAR(hCAR)をはじめとする抗原特異的CARポリペプチドをコードする核酸を包含し、前記ポリペプチドは、細胞内シグナル伝達ドメイン、膜貫通ドメイン、及び細胞外ドメインを備え、1つ以上のシグナル伝達モチーフを有する。ある特定の実施形態では、CARは、1つ以上の抗原が共有する空間を含むエピトープを認識し得る。デクチン‐1などのパターン認識受容体を使用して、炭水化物抗原に対する特異性を得てもよい。ある特定の実施形態では、結合領域は、モノクローナル抗体の相補性決定領域、モノクローナル抗体の可変領域、及び/またはその抗原結合断片を含み得る。別の実施形態では、その特異性は、受容体に結合するペプチド(例えば、サイトカイン)に由来する。相補性決定領域(CDR)は、抗原を補完する抗原受容体(例えば、免疫グロブリン及びT細胞受容体)タンパク質の可変ドメインに見出される短いアミノ酸配列であり、したがって特定の抗原に対する特異性を受容体にもたらす。抗原受容体の各ポリペプチド鎖は、3つのCDR(CDR1、CDR2、及びCDR3)を含む。抗原受容体は一般的には2つのポリペプチド鎖からなるため、各抗原受容体には、抗原と接触可能な6つのCDRが存在し、各重鎖及び軽鎖が3つのCDRを有する。免疫グロブリン及びT細胞受容体に関連するほとんどの配列変異はCDRにおいて見出されるため、これらの領域は超可変領域と呼ばれることがある。これらのうち、CDR3は、VJ(重鎖及びTCRαβ鎖の場合にはVDJ)領域の組換えによってコードされるため、最大の可変性を示す。
【0057】
ヒトCAR核酸は、ヒト患者に対する細胞免疫治療を促進するヒト遺伝子であることが企図される。特定の実施形態では、本発明は全長CAR cDNAまたはコード領域を含む。抗原結合領域またはドメインは、参照により本明細書に援用する米国特許第7,109,304号に記載されているような特定のヒトモノクローナル抗体に由来する一本鎖可変断片(scFv)のVH及びVL鎖の断片を有し得るか、または任意の他の抗原結合部分を有し得る。断片は、ヒト抗原特異的抗体の任意の数の異なる抗原結合ドメインであることも可能である。より具体的な実施形態では、断片は、ヒト細胞内での発現のためのヒトコドン使用に最適化した配列でコードした抗原特異的scFvである。
【0058】
配置は、二重特異性抗体または多量体などの多量体形式であり得る。多量体は、多くの場合、軽鎖及び重鎖の可変部分の交差対形成によって形成され、これはWintersによって二重特異性抗体と呼ばれるようになった。構築物のヒンジ部分は、丸ごと削除するものをはじめ、第一のシステインを維持するもの、セリンよりむしろプロリン置換をするもの、第一のシステインまでを切除するものなど、複数の選択肢を有し得る。Fc部分は削除することができる。任意の安定な及び/または二量体化するタンパク質が、この目的を果たすことができる。Fcドメインのうちの1つのみ、例えば、ヒト免疫グロブリン由来CH2またはCH3ドメインのいずれかを使用することができる。改変して二量体化を改善したヒト免疫グロブリンのヒンジ、CH2及びCH3領域を使用することもできる。免疫グロブリンのヒンジ部分だけを使用することもできる。CD8αの一部を使用することもできる。
【0059】
実施形態のキメラ抗原受容体の細胞内シグナル伝達ドメインは、キメラ受容体が配置されている免疫細胞の正常なエフェクター機能の少なくとも1つの活性化に関与する。「エフェクター機能」という用語は、分化した細胞の特殊な機能を指す。例えば、T細胞のエフェクター機能は、サイトカインの分泌を含む細胞溶解活性またはヘルパー活性であってもよい。ナイーブ、メモリー、または記憶型T細胞におけるエフェクター機能には、抗原依存性増殖が含まれる。したがって、「細胞内シグナル伝達ドメイン」という用語は、エフェクター機能シグナルを伝達し、特殊化した機能を細胞に行わせるタンパク質の部分を指す。通常、細胞内シグナル伝達ドメイン全体を用いるが、多くの場合、細胞内ポリペプチド全体を使用する必要はない。細胞内シグナル伝達ドメインの短縮部分を使用し得る範囲で、そのような短縮部分が依然としてエフェクター機能シグナルを伝達する限り、それを完全な鎖の代わりに用いてもよい。したがって、細胞内シグナル伝達ドメインという用語は、エフェクター機能シグナルを伝達するのに十分な、細胞内シグナル伝達ドメインの任意の短縮部分を含むことを意味する。例として、T細胞受容体のζ鎖またはその任意のホモログ(例えば、η、δ、γまたはε)、MB1鎖、B29、Fc RIII、 Fc RI、及びCD3ζとCD28などのシグナル伝達分子の組合せ、CD27、4‐1BB、DAP‐10、OX40、及びそれらの組合せ、ならびに他の同様の分子及び断片が挙げられる。活性化タンパク質のファミリーの他のメンバーの細胞内シグナル伝達部分、例えばFcγRIII及びFcεRIなどを使用することができる。これらの選択的膜貫通及び細胞内ドメインを用いたキメラT細胞受容体の開示については、Gross et al.(1992)、Stancovski et al.(1993)、Moritz
et al.(1994)、Hwu et al.(1995)、Weijtens et al.(1996)、及びHekele et al.(1996)参照。ある特定の実施形態では、ヒトCD3ζ細胞内ドメインを、活性化のために用いる。
【0060】
抗原特異的細胞外ドメイン及び細胞内シグナル伝達ドメインを、ヒトIgG4Fcヒンジ及びFc領域などの膜貫通ドメインによって連結してもよい。代替として、ヒトCD4膜貫通ドメイン、ヒトCD28膜貫通ドメイン、膜貫通ヒトCD3ζドメイン、もしくはシステイン変異ヒトCD3ζドメイン、またはCD16及びCD8ならびにエリスロポエチン受容体などの他のヒト膜貫通シグナル伝達タンパク質由来の他の膜貫通ドメインが挙げられる。さらなる修飾を膜貫通アミノ酸配列に付加することができる。
【0061】
いくつかの実施形態では、CAR核酸は、膜貫通ドメイン及び改変CD28細胞内シグナル伝達ドメインなどの他の共刺激受容体をコードする配列を含む。他の共刺激受容体としては、CD28、CD27、OX‐40(CD134)、DAP10、及び4‐1BB(CD137)の1つ以上が挙げられるが、必ずしもこれらに限定するものではない。CD3ζによって開始される一次シグナルに加えて、ヒトCARに挿入したヒト共刺激受容体が提供するさらなるシグナルは、T細胞の完全な活性化にとって重要であり、in vivo持続性及び養子免疫治療の治療上の成功を向上させるのに役立ち得る。
【0062】
特定の実施形態では、本発明は、CARをコードするDNA配列を組み込んだ単離核酸セグメント及び発現カセットに関する。本発明のベクターは、主に、調節された真核生物プロモーター、例えば、MNDU3プロモーター、CMVプロモーター、EF1αプロモーター、またはユビキチンプロモーターの制御下で免疫細胞、好ましくはT細胞に所望の遺伝子を送達するように設計されている。また、ベクターは、他の理由がなければ、in vitroでのそれらの操作を容易にするための選択マーカーを含み得る。他の実施形態では、in vitroでDNA鋳型から転写したmRNAからCARを発現させることができる。
【0063】
キメラ抗原受容体分子は組換え体であり、その抗原結合能力と、細胞質尾部に存在する免疫受容体活性化モチーフ(ITAM)を介した活性化シグナル伝達能力の両方によって区別される。抗原結合部分(例えば、一本鎖抗体(scFv)から生成される)を利用する受容体構築物は、それらがHLA非依存的様式で標的細胞表面上の天然抗原に結合するという点で「普遍的」であるというさらなる利点をもたらす。例えば、いくつかの研究室が、CD3複合体のζ鎖(ζ)、Fc受容体γ鎖、及びスカイチロシンキナーゼの細胞内部分をコードする配列に融合したscFv構築物を報告している(Eshhar et al.,1993;Fitzer‐Attas et al.,1998)。CTLによる腫瘍認識及び溶解を含む再配向されたT細胞エフェクター機構は、いくつかのマウス及びヒト抗原scFv:ζ系に記載されている(Eshhar,1997;Altenschmidt et al.,1997;Brocker et al.,1998)。
【0064】
現在まで、キメラ抗原受容体の構築には、通常、非ヒト抗原結合領域が利用されている。マウスモノクローナル抗体のような非ヒト抗原結合領域を用いることによる潜在的な問題は、ヒトエフェクター機能の欠如及び腫瘍塊への浸透能の欠如である。換言すれば、そのような抗体は、抗体依存性細胞毒性またはFc受容体媒介性食作用を介して、補体依存性溶解を媒介するか、またはヒト標的細胞を溶解し、CARを発現する細胞を破壊することができない場合があるということである。さらに、非ヒトモノクローナル抗体は、ヒト宿主によって外来タンパク質として認識され得るため、そのような外来抗体の反復注射は、有害な過敏反応を導く免疫応答の誘導をもたらし得る。マウスベースのモノクローナル抗体では、これはしばしばヒト抗マウス抗体(HAMA)応答と呼ばれる。したがって、ヒト抗体の使用は、マウス抗体と同様のHAMA応答を強く誘発しないため、より好ましい。同様に、CARにおけるヒト配列の使用は、免疫系を介した認識を避けることができ、したがって、レシピエントに存在し、HLAとの関連でプロセシングした抗原を認識する内在性T細胞による排除を回避することができる。
【0065】
いくつかの実施形態では、キメラ抗原受容体は:a)細胞内シグナル伝達ドメイン、b)膜貫通ドメイン、及びc)抗原結合領域を含む細胞外ドメインを含む。
【0066】
特定の実施形態では、CARにおける細胞内受容体シグナル伝達ドメインとして、CD3のζ鎖などのT細胞抗原受容体複合体のもの、ならびに単独でまたはCD3ζと直列に配置したFcγRIII共刺激シグナル伝達ドメイン、CD28、CD27、DAP10、CD137、OX40、CD2などが挙げられる。特定の実施形態では、細胞内ドメイン(細胞質ドメインと呼ぶ場合がある)は、TCRζ鎖、CD28、CD27、OX40/CD134、4‐1BB/CD137、FcεRIγ、ICOS/CD278、IL‐2Rβ/CD122、IL‐2Rα/CD132、DAP10、DAP12、及びCD40の1つ以上のうちの一部またはすべてを含む。いくつかの実施形態では、内在性T細胞受容体複合体の任意の部分を細胞内ドメインに用いる。いわゆる第3世代のCARは、例えば、相加効果または相乗効果を得るために融合した少なくとも2つまたは3つのシグナル伝達ドメインを有するため、1つまたは複数の細胞質ドメインを用いてもよい。
【0067】
キメラ抗原受容体のある特定の実施形態では、受容体の抗原特異的部分(抗原結合領域を含む細胞外ドメインと呼ぶ場合がある)は、デクチン‐1などのパターン認識受容体によって認識される炭水化物抗原を含む腫瘍関連抗原または病原体特異的抗原に対する結合ドメインを有する。腫瘍関連抗原は、腫瘍細胞の細胞表面上に発現するものであれば、いかなる種類のものであってもよい。腫瘍関連抗原の実施形態の例として、CD19、CD20、癌胎児性抗原、αフェトプロテイン、CA‐125、MUC‐1、CD56、EGFR、c‐Met、AKT、Her2、Her3、上皮腫瘍抗原、メラノーマ関連抗原、変異型p53、変異型rasなどが挙げられる。ある特定の実施形態では、CARを膜結合サイトカインと同時発現させ、少量の腫瘍関連抗原が存在する場合に持続性を向上させることができる。例えば、CARを膜結合型IL‐15と同時発現させることができる。
【0068】
ある特定の実施形態では、HA‐1、サバイビン、WT1、及びp53などの細胞内腫瘍関連抗原を標的としてもよい。これは、HLAとの関連で細胞内腫瘍関連抗原に基づいて、記載するプロセシングしたペプチドを認識する普遍的なT細胞上に発現するCARによって達成することができる。さらに、普遍的なT細胞を遺伝子改変して、HLAとの関連で細胞内プロセシングした腫瘍関連抗原を認識するT細胞受容体対を発現させてもよい。
【0069】
病原体は、いかなる種類のものであってもよいが、特定の実施形態では、病原体は、例えば、真菌、細菌、またはウイルスである。ウイルス病原体の例として、アデノウイルス科、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、サイトメガロウイルス(CMV)、RSウイルス(RSV)、JCウイルス、BKウイルス、HSV、HHVファミリーのウイルス、ピコルナウイルス科、ヘルペスウイルス科、ヘパドナウイルス科、フラビウイルス科、レトロウイルス科、オルトミクソウイルス科、パラミクソウイルス科、パポバウイルス科、ポリオーマウイルス、ラブドウイルス科、及びトガウイルス科のものが挙げられる。例示的な病原性ウイルスは、天然痘、インフルエンザ、流行性耳下腺炎、麻疹、水痘、エボラ、及び風疹を引き起こす。病原真菌の例として、Candida、Aspergillus、Cryptococcus、Histoplasma、Pneumocystis、及びStachybotrysが挙げられる。病原菌の例として、Streptococcus、Pseudomonas、Shigella、Campylobacter、Staphylococcus、Helicobacter、E.coli、Rickettsia、Bacillus、Bordetella、Chlamydia、Spirochetes、及びSalmonellaが挙げられる。一実施形態では、病原体受容体デクチン‐1を用いて、真菌の細胞壁上の炭水化物構造を認識するCARを生成することができる。デクチン‐1の特異性に基づいてCARを発現するように遺伝子改変したT細胞は、Aspergillusを認識し、菌糸増殖を標的とすることができる。別の実施形態では、ウイルス決定基(例えば、CMV及びエボラ由来の糖タンパク質)を認識する抗体に基づいてCARを作製し、ウイルス感染及び病理を阻止することができる。
【0070】
いくつかの実施形態では、病原性抗原は、Aspergillusの炭水化物抗原であり、それについてCARの細胞外ドメインは、例えばデクチン‐1を介して、真菌細胞壁の炭水化物のパターンを認識する。
【0071】
本発明によるキメラ免疫受容体は、当該技術分野で公知の任意の手段によって産生することができるが、好ましくは組換えDNA技術を用いて産生する。キメラ受容体のいくつかの領域をコードする核酸配列を調製し、分子クローニングの標準技術(ゲノムライブラリースクリーニング、PCR、プライマー支援ライゲーション、酵母及び細菌由来のscFvライブラリー、部位特異的突然変異誘発など)によって完全なコード配列に組み立てることができる。得られたコード領域を発現ベクターに挿入し、適切な同種異系の発現宿主T細胞株を形質転換するために使用することができる。
【0072】
本明細書中で使用する場合、核酸構築物または核酸配列またはポリヌクレオチドとは、T細胞に形質転換または導入し、転写、翻訳して、産物(例えば、キメラ抗原受容体)を産生することが可能なDNA分子を意味することを意図している。
【0073】
実施形態に用いる例示的な核酸構築物(ポリヌクレオチド)において、プロモーターは、キメラ受容体をコードする核酸配列に作動可能に連結しており、すなわち、それらはキメラ受容体をコードするDNAからのメッセンジャーRNAの転写を促進するように配置される。プロモーターは、ゲノム起源のものであっても、合成的に生成するものであってもよい。T細胞において使用するための様々なプロモーターが、当該技術分野で周知である(例えば、Marodon et al.(2003)によって開示されたCD4プロモーター)。プロモーターは、構成的または誘導性であることができ、誘導は、特定の細胞型または特定の成熟レベルに関連する。あるいは、多くの周知のウイルスプロモーターも適している。目的のプロモーターとして、β‐アクチンプロモーター、SV40初期及び後期プロモーター、免疫グロブリンプロモーター、ヒトサイトメガロウイルスプロモーター、レトロウイルスプロモーター、脾フォーカス形成ウイルスプロモーターが挙げられる。プロモーターはエンハンサーと会合していてもいなくてもよく、エンハンサーは特定のプロモーターと天然に会合していてもよく、または異なるプロモーターと会合していてもよい。
【0074】
キメラ受容体をコードするオープンリーディングフレームの配列は、ゲノムDNA供給源、cDNA供給源から取得可能か、もしくは合成可能であるか(例えば、PCRを介して)、またはそれらの組合せである。イントロンがmRNAを安定化するか、またはT細胞特異的発現をもたらすことが見出されているため、ゲノムDNAのサイズ及びイントロンの数に応じて、cDNAまたはその組合せを使用することが望ましい場合がある(Barthel and Goldfeld,2003)。また、内在性または外因性の非コード領域を使用してmRNAを安定化させることがさらに有効である場合がある。
【0075】
本発明のキメラ抗原受容体の発現のために、キメラ受容体のN末端成分をコードする核酸配列の天然または内在性の転写開始領域を用いて、標的宿主中にキメラ受容体を生成することができる。あるいは、構成的または誘導性発現を可能にする外因性の転写開始領域を用いることができ、発現を、標的宿主、所望の発現レベル、標的宿主の性質などに応じて制御することができる。
【0076】
同様に、キメラ受容体を表面膜に指向させるシグナル配列は、キメラ受容体のN末端成分の内在性シグナル配列であり得る。場合によっては、この配列を異なるシグナル配列と交換することが望ましい場合がある。しかしながら、選択したシグナル配列は、キメラ受容体がT細胞の表面上に提示されるように、T細胞の分泌経路と適合していなければならない。
【0077】
同様に、キメラ受容体のC末端成分をコードする核酸配列の天然に存在するか、または内在性の転写終止領域によって終止領域を提供してもよい。あるいは、終止領域は、異なる供給源に由来してもよい。大部分において、終止領域の供給源は、一般的に、組換えタンパク質の発現に重要であるとは考えられず、広範囲の終止領域を、発現に悪影響を及ぼすことなく用いることができる。
【0078】
本発明のキメラ構築物は、癌を有するかまたは有すると疑われる対象において、腫瘍のサイズを縮小するか、または腫瘍の増殖または再増殖を予防することによって、これらの対象に応用することができる。したがって、本発明はさらに、本発明のキメラ構築物を対象の単離T細胞に導入し、形質転換したT細胞を対象に再導入することによって、抗腫瘍応答に影響を与え、対象の腫瘍を低減または排除することにより、対象における増殖を低減するか、または腫瘍形成を予防する方法に関する。使用可能な適切なT細胞として、細胞傷害性リンパ球(CTL)または破壊を必要とするT細胞受容体を有する任意の細胞が挙げられる。当業者に周知であるように、これらの細胞を対象から単離するための様々な方法が容易に利用可能である。例えば、細胞表面マーカー発現を使用すること、または市販のキット(例えば、Pierce(ロックフォード、イリノイ)からのISOCELL(商標))を使用することが挙げられる。
【0079】
キメラ構築物は、他の試薬(脂質、カチオン性ポリマー、PEG複合体、タンパク質複合体が挙げられるが必ずしもこれらに限定するものではない)と組み合わせた裸のDNAとして、または適切なベクターに組み込んで、対象自身のT細胞に導入することができることが企図される。裸のDNAを用いて電気穿孔によってT細胞を安定に形質移入する方法は、当該技術分野で公知である。例えば、参照により本明細書に援用する米国特許第6,410,319号参照。裸のDNAとは、通常、本発明のキメラ受容体をコードし、発現のために適切な向きでプラスミド発現ベクター中に組み込むDNAのことを指す。利点として、裸のDNAの使用は、本発明のキメラ受容体を発現するT細胞の産生に必要な時間を短縮する。
【0080】
形質移入または形質導入したT細胞が、キメラ受容体を表面膜タンパク質として所望の調節及び所望のレベルで発現可能であることが確立されると、所望のシグナル誘導を提供するために、キメラ受容体が宿主細胞において機能的であるかどうかを決定することができる。続いて、形質導入したT細胞を対象に再導入または投与して、対象における抗腫瘍応答を活性化する。投与を容易にするために、本発明に従って形質導入したT細胞は、さらに薬学的に許容可能であり得る適切な担体または希釈剤を用いて、薬学的組成物にするか、またはin vivoでの投与に適したインプラントにすることができる。このような組成物またはインプラントを製造する手段は、当該分野において記載されている(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,16th Ed.,Mack,ed.(1980)参照)。適切な場合には、形質導入したT細胞は、半固体または液体形態の調製物、例えば、カプセル、溶液、注射液、吸入剤、またはエアロゾルなどに、それらのそれぞれの投与経路のための通常の方法で製剤化することができる。当該技術分野で公知の手段を利用して、標的組織もしくは器官に到達するまで組成物の放出及び吸収を防止もしくは最小化するか、または組成物の時限放出を確実にすることができる。しかしながら、望ましくは、キメラ受容体を発現する細胞を無効にしない薬学的に許容可能な形態を用いる。したがって、望ましくは、形質導入したT細胞を、平衡塩類溶液、好ましくはハンクス平衡塩類溶液または生理食塩水を含有する医薬組成物にすることができる。
【0081】
V.実施形態のキット
本明細書に記載する任意の組成物を、キットに含めてもよい。いくつかの態様では、実施形態のトランスポザーゼポリペプチド、またはそれをコードする核酸をキットに提供する。そのようなキットには、トランスポゾンリピートをコードするDNAベクター、形質移入試薬、細胞、CAR発現構築物、培地、aAPC、増殖因子、抗体(例えば、CAR T細胞の選別または特徴付けのための)及び/またはCARもしくはトランスポザーゼをコードするプラスミドなどの様々な追加要素を含めてもよい。
【0082】
非限定的な例において、キットは、実施形態のトランスポザーゼポリペプチドまたはそれをコードする核酸、CAR発現構築物(隣接してトランスポゾンリピートを有する)を生成するための1つ以上の試薬、発現構築物の形質移入用の細胞、及び/または発現構築物の形質移入用の細胞を得るための1つ以上の器具(そのような器具は、注射器、ピペット、鉗子、及び/または同様の医学的に承認された装置であってもよい)を含む。さらに別の態様では、電気穿孔装置のような形質移入用装置を含む。
【0083】
いくつかの実施形態では、内在性TCRα/β発現を排除するための発現構築物、構築物を生成するための1つ以上の試薬、及び/またはCAR+ T細胞をキットに提供する。いくつかの実施形態では、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(複数可)をコードする発現構築物を含む。
【0084】
キットは、本発明の組成物を生成するために適切に分取した本発明の1つ以上の組成物または試薬を含み得る。キットの成分を、水性媒体または凍結乾燥形態のいずれかで包装してもよい。キットの収容手段には、少なくとも1つのバイアル、試験管、フラスコ、ボトル、シリンジ、または他の収容手段が含まれ得るが、その中に成分を配置し、好ましくは適切に分注してもよい。キット中に複数の成分がある場合、キットは、通常、追加の成分を別々に配置し得る第二の、第三の、または他の追加の容器も含む。しかしながら、成分を様々に配合して一つのバイアルに含めてもよい。本発明のキットはまた、通常、キメラ受容体構築物の収容手段及び任意の他の試薬容器を、市販向けに密閉した状態で含む。そのような容器に、射出またはブロー成形したプラスチック容器を備えてもよく、例えばその内部に所望のバイアルを保持する。
【実施例0085】
VI.実施例
以下の実施例は、本発明のある特定の実施形態を示すために含まれる。以下の実施例に開示する技術は、本発明の実施において良好に機能するように発明者が見出した技術を表しており、したがってその実施のための好ましい様式を構成するとみなし得ることは、当業者は理解すべきである。しかしながら、本開示に照らして、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、開示する特定の実施形態において多くの変更が可能であり、そうした場合でも同様のまたは類似の結果が得られることを当業者は認識すべきである。
【0086】
実施例1‐ヒト細胞において高活性を有する組換えトランスポザーゼ
Salmo salar(タイセイヨウサケ)由来トランスポザーゼをコードするDNA配列を操作及びヒト化し、ヒト細胞内での効率を高めた酵素を産生することを試みた。生成したトランスポザーゼの2つの配列(及びそれらの核酸コード配列)を以下に示し、それらをhSB110及びhSB81と命名した。
hSB110(配列番号1):
1 mgkskeisqd lrkrivdlhk sgsslgaisk rlavprssvq tivrkykhhg ttqpsyrsgr
61 rrvlsprder tlvrkvqinp rttakdlvkm leetgtkvsi stvkrvlyrh nlkghsarkk
121 pllqnrhkka rlrfarahgd kdrtfwrnvl wsdetkielf ghndhryvwr kkgeackpkn
181 tiptvkhggg simlwgcfaa ggtgalhkid gimdavqyvd ilkqhlktsv rklklgrkwv
241 fqhdndpkht skhvrkwlkd nkvkvlewps qspdlnpien lwaelkkrvr arrptnltql
301 hqlcqeewak ihpnycgklv egypkrltqv kqfkgnatky
hSB110(配列番号2):
1 ATGGGCAAGA GCAAAGAGAT CAGCCAGGAC CTGCGGAAGC GGATCGTGGA CCTGCACAAG
61 AGCGGCTCTA GCCTGGGCGC CATCAGCAAG AGACTGGCCG TGCCTAGAAG CAGCGTGCAG
121 ACCATCGTGC GGAAGTACAA GCACCACGGC ACCACCCAGC CCAGCTACAG ATCTGGAAGG
181 CGGAGAGTGC TGAGCCCCAG GGACGAGAGA ACACTCGTGC GCAAGGTGCA GATCAACCCC
241 CGGACCACCG CCAAGGACCT CGTGAAGATG CTGGAAGAGA CAGGCACCAA GGTGTCCATC
301 AGCACCGTGA AGCGGGTGCT GTACCGGCAC AACCTGAAGG GCCACAGCGC CAGAAAGAAG
361 CCCCTGCTGC AGAACAGACA CAAGAAGGCC CGGCTGAGAT TCGCCAGAGC CCACGGCGAC
421 AAGGACAGAA CCTTCTGGCG GAACGTGCTG TGGAGCGACG AGACAAAGAT CGAGCTGTTC
481 GGCCACAACG ACCACAGATA CGTGTGGCGG AAGAAGGGCG AGGCCTGCAA GCCCAAGAAC
541 ACCATCCCCA CAGTGAAGCA CGGCGGAGGC AGCATCATGC TGTGGGGCTG TTTTGCCGCT
601 GGCGGCACAG GCGCCCTGCA CAAAATCGAC GGCATCATGG ACGCCGTGCA GTACGTGGAC
661 ATCCTGAAGC AGCACCTGAA AACCTCTGTG CGGAAGCTGA AGCTGGGCCG GAAATGGGTG
721 TTCCAGCACG ACAACGACCC CAAGCACACC AGCAAGCACG TGCGGAAATG GCTGAAGGAC
781 AACAAAGTGA AAGTGCTGGA ATGGCCCAGC CAGTCCCCCG ACCTGAACCC CATCGAAAAC
841 CTGTGGGCCG AGCTGAAGAA AAGAGTGCGG GCCAGACGGC CCACCAACCT GACACAGCTG
901 CACCAGCTGT GCCAGGAAGA GTGGGCCAAG ATCCACCCCA ACTACTGCGG CAAGCTGGTG
961 GAAGGCTACC CCAAGAGGCT GACCCAAGTG AAACAGTTCA AGGGCAACGC CACCAAGTAC
1021 TGA
hSB81(配列番号3):
1 mgkskeisqd lrkrivdlhk sgsslgaisk rlavprssvq tivrkykhhg ttqpsyrsgr
61 rrvlsprder tlvrkvqinp rttakdlvkm leetgtkvsi stvkrvlyrh nlkghsarkk
121 pllqnrhkka rlrfarahgd kdrtfwrnvl wsdetkielf ghndhryvwr kkgeackpkn
181 tiptvkhggg simlwgcfaa ggtgalhkid gimdavqyvd ilkqhlktsv rklklgrkwv
241 fqhdndpkht skhvrkwlkd nkvkvlewps qspdlnpien lwaelkkrvr arrptnltql
301 hqlcqeewak ihptycgklv egypkrltqv kqfkgnatky
hSB81(配列番号4):
1 ATGGGCAAGA GCAAAGAGAT CAGCCAGGAC CTGCGGAAGC GGATCGTGGA CCTGCACAAG
61 AGCGGCTCTA GCCTGGGCGC CATCAGCAAG AGACTGGCCG TGCCTAGAAG CAGCGTGCAG
121 ACCATCGTGC GGAAGTACAA GCACCACGGC ACCACCCAGC CCAGCTACAG ATCTGGAAGG
181 CGGAGAGTGC TGAGCCCCAG GGACGAGAGA ACACTCGTGC GCAAGGTGCA GATCAACCCC
241 CGGACCACCG CCAAGGACCT CGTGAAGATG CTGGAAGAGA CAGGCACCAA GGTGTCCATC
301 AGCACCGTGA AGCGGGTGCT GTACCGGCAC AACCTGAAGG GCCACAGCGC CAGAAAGAAG
361 CCCCTGCTGC AGAACAGACA CAAGAAGGCC CGGCTGAGAT TCGCCAGAGC CCACGGCGAC
421 AAGGACAGAA CCTTCTGGCG GAACGTGCTG TGGAGCGACG AGACAAAGAT CGAGCTGTTC
481 GGCCACAACG ACCACAGATA CGTGTGGCGG AAGAAGGGCG AGGCCTGCAA GCCCAAGAAC
541 ACCATCCCCA CAGTGAAGCA CGGCGGAGGC AGCATCATGC TGTGGGGCTG TTTTGCCGCT
601 GGCGGCACAG GCGCCCTGCA CAAAATCGAC GGCATCATGG ACGCCGTGCA GTACGTGGAC
661 ATCCTGAAGC AGCACCTGAA AACCTCTGTG CGGAAGCTGA AGCTGGGCCG GAAATGGGTG
721 TTCCAGCACG ACAACGACCC CAAGCACACC AGCAAGCACG TGCGGAAATG GCTGAAGGAC
781 AACAAAGTGA AAGTGCTGGA ATGGCCCAGC CAGTCCCCCG ACCTGAACCC CATCGAAAAC
841 CTGTGGGCCG AGCTGAAGAA AAGAGTGCGG GCCAGACGGC CCACCAACCT GACACAGCTG
901 CACCAGCTGT GCCAGGAAGA GTGGGCCAAG ATCCACCCCA CCTACTGCGG CAAGCTGGTG
961 GAAGGCTACC CCAAGAGGCT GACCCAAGTG AAACAGTTCA AGGGCAACGC CACCAAGTAC
1021 TGA
【0087】
次に、hSB110及びhSB81トランスポザーゼ、ならびに対照トランスポザーゼを、遺伝子組み込みCARによって操作ヒトT細胞を産生するそれらの能力について試験した。これらの研究用のプロトコールを
図1に示す。トランスポゾンリピートが隣接するCARをコードするトランスポゾンDNA構築物を、トランスポザーゼポリペプチドをコードするmRNAとともに、ヒトT細胞に共形質移入した。形質移入には、4D‐NUCLEOFECTOR(商標)電気穿孔システム(Lonza)を使用した。電気穿孔後、細胞を培養し、フローサイトメトリーによってCAR発現を評価した。
【0088】
これらの研究の結果を
図2に示す。上のパネルのヒストグラムは、形質移入の8日後における、7AAD染色によって評価した生存不能となった細胞(x軸)に対するCAR陽性細胞の数(y軸)を示す。下のパネルは、形質移入の15日後における、CAR陽性細胞の数(y軸)、及びCD3を発現する細胞の数(x軸)を示す。これらの結果は、hSB110及びhSB81トランスポザーゼがSB100xよりも、細胞操作において有意により効率的であることを明白に示している。形質移入後8日目までに、hSB110及びhSB81で電気穿孔した細胞のうちの22%超がCARを発現する。この時点では、SB100xで電気穿孔した細胞のうち、15%のみがCARを発現した。いずれの試験構築物(7AAD染色によって評価した)でも、生存不能細胞の数に有意差は認められなかった。さらに、15日目までに、hSB110及びhSB81で電気穿孔した細胞集団の80%超がCAR及びCD3を共発現した。
【0089】
本明細書に開示し、特許請求するすべての方法は、本開示に照らして過度の実験をすることなく作製し、実施することができる。本発明の組成物及び方法を、ある特定の実施形態の形式で記載しているが、本発明の概念、精神及び範囲から逸脱することなく、方法及び工程または本明細書に記載する方法の工程の順序に変形を適用し得ることは当業者には明らかであろう。より具体的には、化学的にも生理学的にも関連するある特定の薬剤を、本明細書に記載の薬剤と置き換えても、同様または類似の結果が得られるであろうことは明らかである。当業者に明らかなそのような類似の置換及び修飾のすべては、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の精神、範囲及び概念の範囲内であるとみなされる。[参考文献]
以下の参考文献は、本明細書の記載を補足する例示的手順または他の詳細を提供する限りにおいて、参照により本明細書に具体的に援用する。
米国特許第4,554,101号
米国特許第4,690,915号
米国特許第6,410,319号
米国特許第6,489,458号
米国特許第7,148,203号
米国特許第8,227,432号
米国特許出願公開第2011/0117072号
米国特許出願公開第2014/0140976号
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