(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022025160
(43)【公開日】2022-02-09
(54)【発明の名称】アンテナ装置
(51)【国際特許分類】
H01Q 21/28 20060101AFI20220202BHJP
H01Q 9/36 20060101ALI20220202BHJP
H01Q 1/32 20060101ALN20220202BHJP
【FI】
H01Q21/28
H01Q9/36
H01Q1/32 Z
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021197925
(22)【出願日】2021-12-06
(62)【分割の表示】P 2019501818の分割
【原出願日】2018-02-22
(31)【優先権主張番号】P 2017031778
(32)【優先日】2017-02-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006758
【氏名又は名称】株式会社ヨコオ
(74)【代理人】
【識別番号】100079290
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100136375
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 弘実
(72)【発明者】
【氏名】寺下 典孝
(72)【発明者】
【氏名】小野 元久
【テーマコード(参考)】
5J021
5J046
【Fターム(参考)】
5J021AA03
5J021HA10
5J021JA07
5J046AA02
5J046AA07
5J046AB06
5J046AB12
5J046MA09
(57)【要約】
【課題】共通のケース内に複数のアンテナを備え、アンテナ利得の低下を抑制しつつ小型化を図ることの可能なアンテナ装置を提供する。
【解決手段】アンテナ装置1Aは、共通のケース内に設けられた第1アンテナ及び容量装荷素子3を備える。容量装荷素子3は、当該容量装荷素子3の前縁部3gに、当該容量装荷素子3の前方上側から後方下側に向けて延びる傾斜部を有し、前記第1アンテナは、前記傾斜部の前方に設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースと、
前記ケース内に設けられた第1アンテナと第2アンテナと、を備え、
前記第2アンテナは、容量装荷素子を有し、
前記容量装荷素子は、当該容量装荷素子の前縁部に、当該容量装荷素子の前方上側から後方下側に向けて、または前方下側から後方上側に向けて延びる傾斜部を有し、
前記第1アンテナは、前記傾斜部の前方に設けられている、アンテナ装置。
【請求項2】
前記第1アンテナは、前記容量装荷素子に対して下方に設けられている、請求項1 に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記ケース内に設けられたベースを更に備え、
前記第1アンテナと前記第2アンテナは、前記ベース上に設けられている、請求項1または2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記第1アンテナと電気的に接続するアンプ基板を有し、
前記第1アンテナと前記アンプ基板との給電点は、前記ベースの左右方向中心に対してオフセットしている、請求項3に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記容量装荷素子は、前記ベースの左右方向に分割した左板状部と右板状部とを有し、
前記傾斜部は、前記左板状部と前記右板状部の前縁部に設けられている、請求項3または4に記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記容量装荷素子は、ミアンダ形状部を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共通のケース内に2つ以上のアンテナを備えるアンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、シャークフィンアンテナと呼ばれる車載用アンテナ装置が開発されている。車載用アンテナ装置には、AM/FMアンテナ等の放送系受信アンテナに加え、高度道路交通システム(ITS: Intelligent Transport System)用アンテナやTELアンテナ等の情報通信系アンテナを搭載する動きがある(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
限られたケース内の空間に複数のアンテナを設けると、アンテナ同士の距離を十分に確保出来ず、アンテナの利得が低下した。一方、ケース内においてアンテナ同士の距離を大きくしようとすると、ケースが大きくなり、小型化できなかった。
【0005】
本発明は、共通のケース内に複数のアンテナを備え、アンテナ利得の低下を抑制しつつ小型化を図ることの可能なアンテナ装置に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様は、アンテナ装置である。このアンテナ装置は、ケースと、前記ケース内に設けられた第1アンテナと第2アンテナと、を備え、
前記第2アンテナは、容量装荷素子を有し、
前記容量装荷素子は、当該容量装荷素子の前縁部に、当該容量装荷素子の前方上側から後方下側に向けて、または前方下側から後方上側に向けて延びる傾斜部を有し、
前記第1アンテナは、前記傾斜部の前方に設けられている。
【0007】
前記第1アンテナは、前記容量装荷素子に対して下方に設けられているとよい。
【0008】
前記ケース内に設けられたベースを更に備え、前記第1アンテナと前記第2アンテナは、前記ベース上に設けられているとよい。
【0009】
前記第1アンテナと電気的に接続するアンプ基板を有し、前記第1アンテナと前記アンプ基板との給電点は、前記ベースの左右方向中心に対してオフセットしているとよい。
【0010】
前記容量装荷素子は、前記ベースの左右方向に分割した左板状部と右板状部とを有し、前記傾斜部は、前記左板状部と前記右板状部の前縁部に設けられているとよい。
【0011】
前記容量装荷素子は、ミアンダ形状部を有するとよい。
【0012】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法やシステムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、共通のケース内に複数のアンテナを備え、アンテナ利得の低下を抑制しつつ小型化を図ることの可能なアンテナ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施の形態1に係るアンテナ装置1Aの分解斜視図。
【
図3】容量装荷素子3が左板状部3a及び右板状部3bに左右分割されている場合と左右分割されていない場合の各々における、AM/FMアンテナのFM波帯の周波数と平均利得との関係を示す、シミュレーションによる特性図。
【
図4】容量装荷素子3の左板状部3a及び右板状部3bの前縁部3gが左右方向から見て斜めに傾いている場合と傾いていない場合の各々における、AM/FMアンテナのFM波帯の周波数と平均利得との関係を示す、シミュレーションによる特性図。
【
図5】容量装荷素子3の左板状部3a及び右板状部3bが後方延長部3eを有する場合と有さない場合の各々における、AM/FMアンテナのFM波帯の周波数と平均利得との関係を示す、シミュレーションによる特性図。
【
図6】本発明の実施の形態2に係るアンテナ装置1Bの側面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態を詳述する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材等には同一の符号を付し、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は発明を限定するものではなく例示であり、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0016】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係るアンテナ装置1Aの分解斜視図である。
図2は、アンテナ装置1Aの斜視図である。
図1により、アンテナ装置1Aの前後、上下、左右の各方向を定義する。上下方向は、水平方向に対して垂直な方向である。前後方向は、アンテナ装置1Aの長手方向であり、左右方向は、アンテナ装置1Aの幅方向である。また、前方向は、アンテナ装置1Aを車両に取り付けた場合の進行方向であり、左右方向は、進行方向である前方を見た状態を基準に定めている。
【0017】
アンテナ装置1Aは、車載用シャークフィンアンテナであり、車両のルーフ等に取り付けられる。アンテナ装置1Aは、図示しないアウターケース内に、第1アンテナとしてのITSアンテナ2、第2アンテナとしての容量装荷素子3及びヘリカル素子(AM/FMコイル)5、並びに第3アンテナとしてのTELアンテナ4、を備える。第2アンテナは、AM/FMアンテナであり、AM/FM放送を受信可能とする。
【0018】
ITSアンテナ2は、高度道路交通システム用の情報通信系アンテナである。ITSアンテナ2は、例えば錫めっき鋼板等の金属板(導体板)を加工して形成される板状部品であり、容量装荷素子3の前方に設けられる。ITSアンテナ2は、下端が接続脚部2aとなる棒状導体と棒状導体の上端に接続された容量装荷エレメントとを有し、接続脚部2aに対して前方に傾いた形状に配置されている。ITSアンテナ2が容量装荷エレメントを備えているので、ITSアンテナ2は、容量装荷エレメントを備えていないときに比べて同じアンテナサイズで電気長を長くすることができている。このため、ITSアンテナ2は、容量装荷エレメントを備えていないときに比べて小型化している。ITSアンテナ2は、その一部である棒状導体が容量装荷素子2の下方に配置されている。ITSアンテナ2の棒状導体は、ベース10の左右方向中心に対してオフセットしている(ずれている)。ITSアンテナ2は、接続脚部2aが後述の導体板バネ9aに接続されることで、アンプ基板9と電気的に接続される。ITSアンテナ2の棒状導体がオフセットしているので、接続脚部2aとアンプ基板9が電気的に接続している給電点もベース10の左右方向中心に対してオフセットしている。ホルダ7は、ITSアンテナ2を保持する例えば樹脂成形体である。ホルダ7が2本のネジ105によってインナーケース6に下方から取り付けられることで、ITSアンテナ2がインナーケース6の内面に固定される。ITSアンテナ2の容量装荷エレメントの前方の先端には孔が設けられており、ホルダ7の前方の先端にはその孔に嵌る突起が設けられている。これにより、ITSアンテナ2はホルダ7に強固に固定される。ITSアンテナ2の周波数帯は、例えば760MHz帯である。インナーケース6は、電波透過性の合成樹脂製(ABS樹脂等の樹脂製の成型品)である。インナーケース6は、6本のネジ103により後述するベース10に取り付けられる。
【0019】
容量装荷素子3は、例えばステンレス鋼等の金属板(導体板)を加工して形成される板状部品である。容量装荷素子3は、左板状部3a及び右板状部3bを有し、ITSアンテナ2の後方かつTELアンテナ4の前方に位置する。容量装荷素子3は、長手方向を前後方向として、ベース10の上方に配置される。容量装荷素子3が左板状部3a及び右板状部3bに左右分割されていることで、TELアンテナ4との間に現れる浮遊容量を抑制することができ、AM/FM帯における性能を高くすることができる(後述の
図3参照)。
【0020】
左板状部3a及び右板状部3bは、インナーケース6の左右方向中心を含み上下方向及び前後方向と平行な平面に対して互いに対称となる形状である。以下、左板状部3aの形状を中心に説明するが、右板状部3bにも同様の説明が成り立つ。左板状部3aは、上下方向及び前後方向と平行な接続部3fを有し、接続部3fを貫通するネジ101により、左方向からインナーケース6の上部に取り付けられる(固定される)。同様に、右板状部3bは、ネジ102により、右方向からインナーケース6の上部に取り付けられる(固定される)。インナーケース6には、接続部3fと対面接触する接続金具6aが一体成形等によりインナーケース6と一体的に設けられている。接続金具6aにより、左板状部3a及び右板状部3bが左右方向に連結されて互いに電気的に接続される。また、インナーケース6には外周に沿って外側に凸なリブが設けられており、左板状部3a及び右板状部3bは、このリブに接してインナーケース6に取り付けられている(固定されている)。このため、リブが設けられていないときに比べて、左板状部3a及び右板状部3bがインナーケース6に接触する面積は少なくなり、アンテナ装置1Aの振動により左板状部3a及び右板状部3bが振動しても、インナーケース6への接触による異音を抑制することができる。
【0021】
左板状部3aは、切込部3cを有する。切込部3cは、接続部3fの後方を起点とし、下方に延びてから前方に延びるL字形状である。切込部3cにより、左板状部3aの電流経路は、接続部3fを一端として前方に延びてから後方に折り返し、他端となる後述の後方延長部3eに至るようになる。このため、切込部3cが形成されない場合と比べて、波長が小さい周波数帯ほど電流経路が長くなっている。切込部3cが無い場合は、左板状部3aの前端部及び後端部がそれぞれ左板状部3aの電流経路の端部となる。しかし、切込部3cがある場合は、左板状部3aの電流経路の一端が、左板状部3aの前端部(ITSアンテナ2側の端部)から接続部3f(正確には、接続部3fの前後方向の端部の中で、後方延長部3eの反対側の端部)へずれている。また、切込部3cが無い場合は、左板状部3aの前端部及び後端部がそれぞれ、左板状部3aに発生するITSアンテナ2の周波数帯の定在波の電圧最大点となる。しかし、切込部3cがある場合は、左板状部3aに発生するITSアンテナ2の周波数帯の定在波の電圧最大点が、左板状部3aの前端部(ITSアンテナ2側の端部)から接続部3f(正確には、接続部3fの前後方向の端部の中で、後方延長部3eの反対側の端部)へずれている。これにより、ITSアンテナ2が容量装荷素子3に近接していても、容量装荷素子3がITSアンテナ2に与える影響を軽減でき、ITSアンテナ2のアンテナ利得がITSアンテナ2単体のアンテナ利得に対して悪化することを抑制できる。
【0022】
左板状部3aは、自身の前端部と後方延長部3eとの間に、ミアンダ形状部3dを有する。ミアンダ形状部3dは、上下方向に延びる複数の切込部により電流経路が上下に曲げられた部分であり、左板状部3aの電気長を調整するために設けられる。ミアンダ形状部3dを有することにより、左板状部3aの電気長をGNSSアンテナ21の所望周波数帯に対して、共振しない電気長へ調整している。これにより、容量装荷素子3とGNSSアンテナ21との干渉を抑制し、GNSSアンテナ21の利得を向上させている。同様にITS帯、TEL帯の所望周波数に対しても容量装荷素子3が共振しない電気長としている。左板状部3aの前縁部3g(ITSアンテナ2側に臨む端縁)は、左方向から見て斜めに傾いている(図示の例では前方上側から後方下側に向かって延びている)。前縁部3gが斜めに傾いていることにより、左板状部3aとITSアンテナ2との距離が大きくなり、浮遊容量が抑制され、AM/FM帯における性能を高くすることができる(後述の
図4参照)。前縁部3gが左方向から見て前方下側から後方上側に向かって延びるように斜めに傾いていても浮遊容量は抑制されて、この場合も同様の効果を奏することができる。
【0023】
左板状部3aは、後端部(TELアンテナ4側の端部)に、後方延長部3eを有する。後方延長部3eは、左板状部3aの上部後端を後方に延長した部分(突出させた部分)である。後方延長部3eを有することにより、後方延長部3eが無い場合と比較して左板状部3aの面積を大きくできる。また、後方延長部3eを有することにより、左板状部3aの後端を全体的に後方延長部3eの後端部まで延伸した場合と比較してTELアンテナ4との間の浮遊容量を抑制でき、AM/FM帯の利得を向上させることができる。
【0024】
ヘリカル素子5は、ボビン5aに線状導体を巻回して形成したものである。ボビン5aの上部には、端子部(端子金具)17が設けられる。ボビン5aの下部には、端子部(端子金具)18が設けられる。巻線の一端は、端子部17に半田付け等により電気的に接続され、他端は端子部18に半田付け等により電気的に接続される。端子部17は、ネジ104により、接続金具6aに取り付けられ(固定され)、接続金具6aに電気的に接続される。これにより、容量装荷素子3とヘリカル素子5が互いに電気的に接続される。ボビン5aは、2本のネジ107により、インナーケース6の内面に取り付けられ(固定され)、ITSアンテナ2の後方かつ容量装荷素子3の下方に位置する。端子部18の接続脚部18aは、後述の導体板バネ9bに接続され、アンプ基板9と電気的に接続される。これにより、ヘリカル素子5とアンプ基板9とが互いに電気的に接続される。
【0025】
TELアンテナ4は、例えば錫めっき鋼板等の金属板(導体板)を加工して形成される板状部品で電話に用いられるアンテナあり、好ましくはAMPS帯/PCS帯を送受信可能なワイドバンドアンテナである。AMPS帯の周波数は、824~894MHzの範囲である。PCS帯の周波数は、1850~1990MHzの範囲である。TELアンテナ4は、AMPS帯とPCS帯のいずれか一方のみを送受信するものであってもよい。また、TELアンテナ4がLTEに用いられてもよい。TELアンテナ4は、容量装荷素子3の後方に位置する。TELアンテナ4は、接続脚部4aが後述の導体板バネ9cに接続されることで、アンプ基板9と電気的に接続される。TELアンテナ4は、前後方向と垂直な平面部にU字状の切欠きを有し、この切欠きによりできた突起が後方に飛び出している。TELアンテナ4の突起にインナーケース6の突起を引っ掛けることで、TELアンテナ4は、ベース10に対して略垂直になるよう配置されている。TELアンテナ4は、容量装荷素子3との浮遊容量を減らす為に、前後方向と垂直な平面が一番広い面積を持つ構成としAM/FM帯の利得を向上させている。また、TELアンテナ4は前後方向と垂直な平面部に加え、該平面部に対して折り曲げられた部分を該平面部の左右両端に設けている。このような構成により、TELアンテナ4の利得を向上すると共に広帯域化を図っている。TELアンテナ4の該平面部に対して折り曲げられた部分は該平面部の左右方向のいずれか一方のみに設けられていてもよい。さらに、TELアンテナ4の容量装荷素子3に近い上部付近は折り曲げられた部分を設けない構成とし、容量装荷素子3との干渉を抑制する形状にしてAM/FM帯の利得を向上させることもできる。TELアンテナ4は、容量装荷素子3及びヘリカル素子5よりも後方向に位置する。前後方向で見たときに、TELアンテナ4とITSアンテナ2との間に容量装荷素子3及びヘリカル素子5が位置している。これは、TELアンテナ4の周波数帯域とITSアンテナ2の周波数帯域が近いため、TELアンテナ4とITSアンテナ2との距離を確保するためである。これにより、TELアンテナ4とITSアンテナ2との相互干渉を抑制すると共に、TELアンテナ4とITSアンテナ2との間に容量装荷素子3及びヘリカル素子5が位置していないときに比べて、アンテナ装置1Aの前後方向の長さを短くしている。TELアンテナ4をヘリカル素子5よりも後方向に位置することでTELアンテナ4の高さを高くすることができ、TELアンテナ4の性能を高くすることができる。
【0026】
アンプ基板9は、9本のネジ106によりベース10に取り付けられる。アンプ基板9上には、導体板バネ9a~9c、GNSS(Global Navigation Satellite System)アンテナ21、並びに、不図示のAM/FM/GNSS増幅器及びTEL/ITSマッチング回路が設けられる。防水パッド(水密封止材)8は、エラストマーやゴム等の環状の弾性部材であり、ベース10上に設けられる。防水パッド8は、ベース10にネジ止め等で固定されたインナーケース6の下端部によって全周に渡って押圧され、ベース10とインナーケース6との間を水密封止する。シール部材15は、エラストマーやウレタンやゴム等の環状の弾性部材である。シール部材15は、ベース10の下面とアンテナ装置1Aの取付け先の車体(例えば車両ルーフ)との間に挟持され、両者の間を水密封止する。また、シール部材15は水密を強化するために車両ルーフと接する面にリブが設けられた構造としてもよい。ボルト(車体取付用ネジ)11は、ワッシャー12及びホルダ14を介してベース10に螺合し、アンテナ装置1Aを車両のルーフ等に固定する。ベース10は、アルミ等の金属製であって、ワッシャー12を介して車両とのグランドを取得する。
【0027】
図3は、容量装荷素子3が左板状部3a及び右板状部3bに左右分割されている場合と左右分割されていない場合の各々における、AM/FMアンテナのFM波帯の周波数と平均利得との関係を示す、シミュレーションによる特性図である。
図3に示す2つの特性はいずれも、
図1及び
図2と異なり、左板状部3a及び右板状部3bの前縁が左右方向から見て傾いておらず、かつ後方延長部3eが存在しない場合の特性である。
図3より、容量装荷素子3を左板状部3a及び右板状部3bに左右分割することで、AM/FMアンテナのFM波帯の平均利得を向上させることができる。
【0028】
図4は、容量装荷素子3の左板状部3a及び右板状部3bの前縁部3gが左右方向から見て斜めに傾いている場合(斜めカットあり)と傾いていない場合(斜めカットなし)の各々における、AM/FMアンテナのFM波帯の周波数と平均利得との関係を示す、シミュレーションによる特性図である。斜めカットの方向は、前方上側から後方下側に向かう方向である。
図4に示す2つの特性はいずれも、
図1及び
図2と異なり、後方延長部3eが存在しない場合の特性である。
図4より、左板状部3a及び右板状部3bの前縁部3gを左右方向から見て斜めに傾けることで、AM/FMアンテナのFM波帯の平均利得を向上させることができる。
【0029】
図5は、容量装荷素子3の左板状部3a及び右板状部3bが後方延長部3eを有する場合と有さない場合の各々における、AM/FMアンテナのFM波帯の周波数と平均利得との関係を示す、シミュレーションによる特性図である。
図5に示す2つの特性はいずれも、
図1及び
図2と異なり、左板状部3a及び右板状部3bの前縁が左右方向から見て傾いていない場合の特性である。
図5より、左板状部3a及び右板状部3bに後方延長部3eを設けることで、AM/FMアンテナのFM波帯の平均利得を向上させることができる。
【0030】
本実施の形態によれば、下記の効果を奏することができる。
【0031】
(1) 切込部3cにより、ITSアンテナ2の周波数帯の定在波の電圧最大点が、容量装荷素子3の前端部(ITSアンテナ2側の端部)からずれている。このため、ITSアンテナ2が容量装荷素子3に近接していても、容量装荷素子3がITSアンテナ2に与える影響を軽減でき、ITSアンテナ2のアンテナ利得がITSアンテナ2単体のアンテナ利得に対して悪化することを抑制できる。
【0032】
(2) 容量装荷素子3が左板状部3a及び右板状部3bに左右分割されている。このため、TELアンテナ4との間に現れる浮遊容量を抑制することができ、AM/FM帯における性能(AM/FMアンテナのFM波帯の平均利得)を高くすることができる。
【0033】
(3) 左板状部3a及び右板状部3bの前縁部3gが左右方向から見て斜めに傾いている。このため、容量装荷素子3とITSアンテナ2との間の距離が大きくなり、浮遊容量が抑制され、AM/FM帯における性能(AM/FMアンテナのFM波帯の平均利得)を高くすることができる。
【0034】
(4) 左板状部3a及び右板状部3bが後方延長部3eを有する。このため、容量装荷素子3の面積の確保と、容量装荷素子3とTELアンテナ4との間の浮遊容量の抑制と、をバランス良く実現でき、AM/FM帯における性能(AM/FMアンテナのFM波帯の平均利得)を高くすることができる。
【0035】
(実施の形態2)
図6は、本発明の実施の形態2に係るアンテナ装置1Bの側面図である。アンテナ装置1Bは、実施の形態1のものと比較して、
図1及び
図2に示す後方延長部3eが、
図6に示す後方延長部3hに替わった点で相違し、その他の点で一致する。後方延長部3hは、左板状部3aの下部後端を後方に延長した部分(突出させた部分)であり、右板状部3bにも同様に設けられる。後方延長部3hは、後方延長部3eと同様の効果を奏する。
図6では、
図1及び
図2との比較において、左板状部3aの切込部3c及びミアンダ形状部3d、並びにインナーケース6の図示を省略している。本実施の形態も、実施の形態1と同様に効果を奏することができる。
【0036】
以上、実施の形態を例に本発明を説明したが、実施の形態の各構成要素や各処理プロセスには請求項に記載の範囲で種々の変形が可能であることは当業者に理解されるところである。以下、変形例について触れる。
【0037】
容量装荷素子3は、左板状部3a及び右板状部3bに左右分割されている場合に限定されず、左右一体構造として断面が上方に凸となる形状であってもよい。容量装荷素子3は、インナーケース6に溶着や接着などで取り付けられていてもよく、インナーケース6と一体成形等により保持されてもよい。容量装荷素子3は、防錆の点でSUS(ステンレス鋼)としているが、絶縁性のフィルムに挟まれた導電体を容量装荷素子3としてインナーケース6に張り付けられてもよい。容量装荷素子3は、フレシキブルな基板に導電パターンとして印刷されたものであってもよい。さらに、インナーケース6に金属粉を蒸着させて容量装荷素子3としてもよい。
【0038】
TELアンテナ4は、TVアンテナ、キーレスエントリー用アンテナ、車々間通信用アンテナ又はWiFi用アンテナに替えてもよい。AM/FMアンテナは、DAB(Digital Audio Broadcast)受信アンテナに替えてもよい。ITSアンテナ2は、TEL(LTE)アンテナ、TVアンテナ、キーレスエントリー用アンテナ又はWiFi用アンテナに替えてもよい。
【0039】
TELアンテナ4が電話の送受信用のプライマリーアンテナとして用いられ、ITSアンテナ2が電話の受信用のセカンダリーアンテナとして用いられていてもよい。この場合、プライマリーアンテナとしてのTELアンテナ4が後方に配置され、セカンダリーアンテナとしてのITSアンテナ2が前方に配置される。このため、プライマリーアンテナとしてのTELアンテナ4が前方に配置され、セカンダリーアンテナとしてのITSアンテナ2が後方に配置されるときに比べて、GNSSアンテナ21とプライマリーアンテナとしてのTELアンテナ4との間の距離を長くすることができる。これにより、プライマリーアンテナとしてのTELアンテナ4が電話の送信も行うので、GNSSアンテナ21とプライマリーアンテナとしてのTELアンテナ4の相互干渉を抑制することができる。
【符号の説明】
【0040】
1A アンテナ装置、2 ITSアンテナ(第1アンテナ)、2a 接続脚部、3 容量装荷素子、3a 左板状部、3b 右板状部、3c 切込部、3d ミアンダ形状部、3e 後方延長部、3f 接続部、3g 前縁部、3h 後方延長部、4 TELアンテナ(第3アンテナ)、4a 接続脚部、5 ヘリカル素子(AM/FMコイル)、5a ボビン、6 インナーケース、6a 接続金具、7 ホルダ、8 防水パッド(水密封止材)、9 アンプ基板、9a~9c 導体板バネ(ターミナル)、10 ベース、11 ボルト(車体取付用ネジ)、12 ワッシャー(キャプチャー部)、14 ホルダ、15 シール部材、17,18 端子部(端子金具)、18a 接続脚部、21 GNSSアンテナ、101~107 ネジ