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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022025187
(43)【公開日】2022-02-10
(54)【発明の名称】柱状物塗装装置
(51)【国際特許分類】
   B05C 3/10 20060101AFI20220203BHJP
   B05C 13/02 20060101ALI20220203BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
B05C3/10
B05C13/02
B05C11/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020127855
(22)【出願日】2020-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000220642
【氏名又は名称】東京電設サービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】特許業務法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上原 勇希
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼見 雅人
(72)【発明者】
【氏名】島田 喜明
(72)【発明者】
【氏名】西川 一基
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 一志
【テーマコード(参考)】
4F040
4F042
【Fターム(参考)】
4F040AA04
4F040AB04
4F040BA44
4F040CC02
4F040CC14
4F040CC15
4F040CC20
4F042AA18
4F042AB00
4F042BA12
4F042CA01
4F042CB08
4F042ED12
(57)【要約】
【課題】既設の柱状物の外周面の上下方向にわたって効率よく均一な塗装を行うことができる塗装装置を提供する。
【解決手段】柱状物の表面に塗料を塗布するための塗布ユニットと、該塗布ユニットを搭載し前記柱状物に沿って前記塗布ユニットを上下方向へ移送可能な移送ユニットと、を備えた柱状物塗装装置において、前記塗布ユニットは、塗装対象の柱状物の外径に対応した大きさの開口部を有し塗料を貯留可能な環状の塗料貯留部と、塗料を収納した複数個の塗料容器を有し前記塗料貯留部へ塗料を供給する塗料供給部とを備え、前記塗料貯留部の底部には、前記塗装対象の柱状物の外径とほぼ同じ大きさの開口を有し弾性材料で形成された弾性シートが設けられ、前記移送ユニットおよび前記塗料貯留部が水平方向に複数に分割可能に構成した。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱状物の表面に塗料を塗布するための塗布ユニットと、該塗布ユニットを搭載し前記柱状物に沿って前記塗布ユニットを上下方向へ移送可能な移送ユニットと、を備えた柱状物塗装装置であって、
前記塗布ユニットは、塗装対象の柱状物の外径に対応した大きさの開口部を有し塗料を貯留可能な環状の塗料貯留部と、塗料を収納した複数個の塗料容器を有し前記塗料貯留部へ塗料を供給する塗料供給部と、を備え、
前記塗料貯留部の底部には、前記塗装対象の柱状物の外径とほぼ同じ大きさの開口を有し弾性材料で形成された弾性シートが設けられ、
前記移送ユニットおよび前記塗料貯留部が水平方向に複数に分割可能に構成されていることを特徴とする柱状物塗装装置。
【請求項2】
前記移送ユニットは、角パイプによって内側に塗装対象の柱状物を挿通可能な空間を有し前記塗布ユニットを搭載可能に構成されたフレームを備え、
前記フレームには、前記柱状物の外周に沿って転動可能な複数のローラが周方向に所定の間隔をおいて設けられ、前記フレームが水平方向に2分割可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の柱状物塗装装置。
【請求項3】
前記塗布ユニットは、ベースプレートと下端がこのベースプレートに固着された筒状の壁体からなる塗料タンクを備え、前記ベースプレートと前記筒状の壁体とがそれぞれ水平方向に2分割可能に構成されていることを特徴とする請求項2に記載の柱状物塗装装置。
【請求項4】
前記ベースプレートは、前記移送ユニットの前記フレームの上部に対応した形状を有し、
前記フレームの上面には、前記ベースプレートを水平方向に移動可能に支承する支承手段および前記ベースプレートの移動範囲を規制する規制手段が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の柱状物塗装装置。
【請求項5】
前記フレームは、角パイプによって上面視および正面視で矩形枠状をなしかつ側面視で逆直角三角形をなすように形成されていることを特徴とする請求項3または4に記載の柱状物塗装装置。
【請求項6】
前記ベースプレートは、前記フレームの上部に対応して矩形状をなし、
前記ベースプレートの四隅にそれぞれ前記塗料容器が設置され、各塗料容器には前記塗料貯留部へ塗料を供給する塗料吐出管がそれぞれ設けられ、
前記複数のローラは、矩形状をなす前記ベースプレートの各辺の中央に対応する位置に設けられていることを特徴とする請求項5に記載の柱状物塗装装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柱の外周面を塗装する塗装装置に関し、例えば既設の鋼管柱の外周面を上下方向全体に亘って塗装する塗装装置に利用して有用な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、屋外に立設されている既設の鋼管柱を塗装する作業は、刷毛やローラーブラシ、圧縮エアーを利用した塗装用ガンなどの工具による手作業が一般的であった。そのため、塗装面の仕上がりにムラが生じ易いとともに、場合によっては期待する膜厚が確保できず、 塗膜寿命の低下に繋がることがあった。また、塗装面が広範囲である場合、作業が長時間に及び、作業員にかかる負担が大きいという課題があった。
なお、円筒状の部材の表面を塗装する塗装装置や円筒状の部材の外周面に層形成材料を塗布する塗布装置、塗膜形成装置としては、例えば特許文献1や2、3に記載されているものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6236917号公報
【特許文献2】特許第5637625号公報
【特許文献3】特許第5428573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1や2、3に記載されている塗装装置は、塗装対象の柱状部材を垂直に支持し、塗料もしくは塗布液を収納したドーナツ状の容器(塗料槽)を上下方向へ移動させることによって、外周面に塗膜または層を形成できるように構成されている。
しかし、いずれの装置も、複写機やプリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置を構成する定着ローラのような比較的小型の部材を塗布対象としているとともに、塗装対象の柱状部材の下端を固定し上端をアーム等で支えており、工場などの室内で作業を行うことを前提としている。
【0005】
そのため、屋外に立設され上端に装柱類が取り付けられていたり上端に梁やビームに固着されていたりしている既設の鋼管柱の外周面を塗装するのに使用することが困難であるという課題がある。また、鋼管柱は鉄道の軌道脇や道路脇のような作業スペースを充分に確保することが困難な場所に立設されているため、塗装装置はそのような場所に設置できるのが望ましいが、特許文献1や2、3に記載されている塗装装置の発明は、そのような課題に留意してなされていない。
特に、特許文献3に記載されている塗装装置は、塗布ユニットと塗料タンクが別々に設けられているため、この発明を鋼管柱の塗装装置に適用すると装置が煩雑になり取り扱いが面倒で作業性が悪くなるという課題がある。
【0006】
本発明は上記のような課題に着目してなされたもので、その目的とするところは、既設の柱状物の外周面の上下方向にわたって効率よく均一な塗装を行うことができる塗装装置を提供することにある。
本発明の他の目的は、鉄道の軌道脇や道路脇のような作業スペースを充分に確保することが困難な場所に立設されている鋼管柱のような柱状物の外周面に塗装を行うことができる作業性の良い塗装装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本出願に係る発明は、
柱状物の表面に塗料を塗布するための塗布ユニットと、該塗布ユニットを搭載し前記柱状物に沿って前記塗布ユニットを上下方向へ移送可能な移送ユニットと、を備えた柱状物塗装装置において、
前記塗布ユニットは、塗装対象の柱状物の外径に対応した大きさの開口部を有し塗料を貯留可能な環状の塗料貯留部と、塗料を収納した複数個の塗料容器を有し前記塗料貯留部へ塗料を供給する塗料供給部と、を備え、
前記塗料貯留部の底部には、前記塗装対象の柱状物の外径とほぼ同じ大きさの開口を有し弾性材料で形成された弾性シートが設けられ、
前記移送ユニットおよび前記塗料貯留部が水平方向に複数に分割可能に構成したものである。
【0008】
上記のような構成によれば、既設の鋼管柱のような柱の外周面の上下方向にわたって効率よく均一な塗装を行うことができるとともに、移送ユニットおよび塗料貯留部が水平方向に複数に分割可能に構成されているため、鋼管柱の下端部すなわち地上作業で塗装装置を塗装対象の柱に装着することができ、作業性に優れる。また、本発明の塗装装置とウインチのみで塗装作業を実施できるため、鉄道の軌道脇や道路脇のような作業スペースを充分に確保することが困難な場所に立設されている柱の外周面に塗装を行うことができる。
【0009】
ここで、望ましくは、前記移送ユニットは、角パイプによって内側に塗装対象の柱状物を挿通可能な空間を有し前記塗布ユニットを搭載可能に構成されたフレームを備え、
前記フレームには、前記柱状物の外周に沿って転動可能な複数のローラが周方向に所定の間隔をおいて設けられ、前記フレームが水平方向に2分割可能に構成する。
かかる構成によれば、移送ユニットが角パイプによって構成されたフレーム構成であるため、軽量化が可能であり作業性に優れる。また、柱の外周に沿って転動可能な複数のローラが設けられているため、移送ユニットおよびこれに搭載される塗布ユニットを安定して上下方向へ移動させることができる。
【0010】
また、望ましくは、前記塗布ユニットは、ベースプレートと下端がこのベースプレートに固着された筒状の壁体からなる塗料タンクを備え、前記ベースプレートと前記筒状の壁体とがそれぞれ水平方向に2分割可能に構成する。
かかる構成によれば、塗装装置を柱状物に装着する際に、塗布ユニットの組立てを容易に行うことができる。
【0011】
さらに、望ましくは、前記ベースプレートは、前記移送ユニットの前記フレームの上部に対応した形状を有し、
前記フレームの上面には、前記ベースプレートを水平方向に移動可能に支承する支承手段および前記ベースプレートの移動範囲を規制する規制手段が設けられているようにする。
かかる構成によれば、移動途中で移送ユニットが水平方向へ揺れたとしてもその揺れが塗布ユニットへ伝わるのを抑制することができ、膜厚ばらつきの少ない塗装を行うことができる。また、規制手段によってベースプレートが必要以上に搖動するのを防止することができる。
【0012】
また、望ましくは、前記フレームは、角パイプによって上面視および正面視で矩形枠状をなしかつ側面視で逆直角三角形をなすように形成されているようにする。
このようにすることにより、少ない本数の角パイプによって剛性の高いフレームを構成することができ、移送ユニットの軽量化を図ることができる。
【0013】
また、望ましくは、前記ベースプレートは、前記フレームの上部に対応して矩形状をなし、
前記ベースプレートの四隅にそれぞれ前記塗料容器が設置され、各塗料容器には前記塗料貯留部へ塗料を供給する塗料吐出管がそれぞれ設けられ、
前記複数のローラは、矩形状をなす前記ベースプレートの各辺の中央に対応する位置に設けられているようにする。
かかる構成によれば、ローラが塗料容器から離れた位置に設けられるため、塗装作業をしない塗装装置の上昇中に塗料貯留部の塗料が柱状物の外周に部分的に付着したとしてローラに塗料が付着するのを回避することができ、仕上がりの良好な塗装を実施することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る塗装装置によれば、既設の柱状物の外周面の上下方向にわたって効率よく均一な塗装を行うことができる。また、鉄道の軌道脇や道路脇のような作業スペースを充分に確保することが困難な場所に立設されている鋼管柱のような柱状物の外周面に塗装を行うことができる作業性の良い塗装装置を実現することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係る塗装装置の全体構成を示す斜視図である。
図2】(A)は実施形態に係る塗装装置の移動式浸漬タンクの構成を示す斜視図、(B)は移送フレームの構成を示す斜視図である。
図3】実施形態に係る塗装装置の移動式浸漬タンクの構成を示すもので、(A)は平面図、(B)は側面図である。
図4】塗料タンクに設けられる仕切弁とその操作片の構成例を示すもので、(A)は拡大正面図、(B)は断面図である。
図5】実施形態に係る柱状物塗装装置による鋼管柱の塗装の様子を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る柱状物塗装装置の一実施形態について説明する。
図1には、実施形態に係る柱状物塗装装置の構成が示されている。
本実施形態の塗装装置は、塗装対象の柱状物としての鋼管柱Cに沿って上下に走行する移送ユニットとしての移送フレーム10と、該移送フレーム10に保持され内部に塗料を貯留する塗布ユニットとしての移動式浸漬タンク20と、から構成されている。
【0017】
移送フレーム10は、上方視で正方形をなし内側を鋼管柱Cが挿通可能にされ、側方視で逆直角三角形をなし上部に移動式浸漬タンク20を載置することが可能に構成されている。また、移動式浸漬タンク20は、塗装対象の鋼管柱Cの外径よりも少し径の大きな開口を有する環状をなすとともに、分割可能に構成されており、鋼管柱Cの下端部において鋼管柱Cの外周に装着できるようになっている。
【0018】
図2(B)には、移送フレーム10の構成の詳細が示されている。
図2(B)に示すように、本実施形態における移送フレーム10は、剛性の高い材料で形成された4本の角パイプ11a~11dの端部同士を結合してなる矩形枠11Aと、該矩形枠11Aの一辺を構成する角パイプ11aの両端にそれぞれ鉛直方向下向きに固着された2本の角パイプ11e,11fと、角パイプ11e,11fの下端間に横架された角パイプ11gと、矩形枠11Aを構成する左右の角パイプ11b,11dの先端と鉛直方向の角パイプ11e,11fの下端との間に斜め方向に配設された方杖用の角パイプ11h,11iとにより構成されている。従って、本実施形態の移送フレーム10は、上面視と前面視でそれぞれ矩形枠をなし、側面視で逆直角三角形の枠をなすこととなる。
【0019】
上記角パイプ11a~11iのうち11a,11c,11gは、それぞれ2本の短パイプを突き合わせた状態で結合部材12a,12b,12cによって連結されており、これにより移送フレーム10は鉛直面に沿って左右2分割可能に構成されている。
また、角パイプ11a~11iのうち11a~11dおよび11gの内側面には、鋼管柱Cの周面に接して転動する誘導ローラ13a~13eが回転自在に装着されており、誘導ローラ13a~13eによって移送フレーム10は鋼管柱Cに沿って上下方向へ円滑に移動することができる。
【0020】
さらに、角パイプ11a~11dからなる矩形枠11Aの四隅の上面には、フリーボールベアリング14a~14dが上向き姿勢で固着されており、これらの上に載置される移動式浸漬タンク20のベースプレート21を水平方向移動自在に支承することが可能になっている。
また、上部の矩形枠11Aを構成する左右の角パイプ11b,11dの中央上面には、ベースプレート21の移動範囲を制限するためのヘッド付きピン15a,15bが止着されているとともに、角パイプ11cの中央上面にはワイヤの一端を係止するためのリング状の頭部を有するアイボルト16が固着されている。
【0021】
図2(A)には、移動式浸漬タンク20の構成の詳細が示されている。なお、図2(A)においては、図2(B)の移送フレーム10に対して90°反時計回りに回転させた状態を示している。つまり、図1に示されている移動式浸漬タンク20とは見る方向が90°異なっている。
図2(A)に示すように、本実施形態における移動式浸漬タンク20は、上記移送フレーム10の上部の矩形枠11Aに対応した大きさを有する矩形状のベースプレート21と、該ベースプレート21の四隅に載置された塗料容器22a~22dと、これらの塗料容器22a~22dの内側に設置され下端が溶接等により上記ベースプレート21の上面に固着された円筒状の塗料タンク23とを備えている。塗料容器22a~22dの下端には塗料吐出管24a~24dが接続され、塗料吐出管24a~24dによって塗料容器22a~22dと塗料タンク23の内側空間と連通可能にされている(図3(A)参照)。
【0022】
上記ベースプレート21の中央には、被塗装物である鋼管柱Cの外径よりも若干大きな径を有する開口部21cが形成されており、塗料タンク23はこの開口部21cの径よりも若干大きな径を有するように形成されている。このようにベースプレート21の中央の開口部21cの径が鋼管柱Cの外径よりも大きいため、塗料タンク23の移動の際にベースプレート21が鋼管柱Cの外周に接触して破損したり摩滅したりするのを回避することができる。
【0023】
また、上記ベースプレート21と塗料タンク23は、それぞれ中心を通る鉛直面に沿って2分割可能に構成されている。そして、塗料タンク23を構成する半円筒状のタンク壁の突き合せ部には、両者を結合するとともに塗料の洩れを防止する連結プレート25a,25bが係合されている。連結プレート25a,25bのうち一方(25a)はほぼ平坦な形状をなし、他方(25b)は側方視でL字形をなすように形成されている。
【0024】
さらに、上記ベースプレート21の左右の縁部の中央には、図3(A)に示すように、前記移送フレーム10の角パイプ11b,11dの中央上面のピン15a,15bの軸部が遊嵌可能なベースプレート移動範囲規制用の穴26a,26bが形成されている。また、ベースプレート21の前端側縁部の中央には、上記角パイプ11cの中央上面のアイボルト16が臨む切欠き21dが形成されている。
また、塗料タンク23を構成する半円筒状のタンク壁の上記塗料吐出管24a~24dに対応する部位には、塗料の供給を制御する仕切弁およびその操作片27a~27dが上下方向へスライド可能に設けられている。
【0025】
さらに、ベースプレート21の下面には、図3(B)に示すように、鋼管柱Cの外径と同じもしくは若干大きな径の開口部28a(図3(A)参照)を有しゴムのような弾性材料で薄板状に形成された弾性シート28が接合されている。この弾性シート28の開口端が鋼管柱Cの外周に接することで隙間をなくし、塗料タンク23内に流入された塗料を貯留するとともに、塗料タンク23を下方向へ移動させることで鋼管柱Cの外周に塗膜を形成することができる。
【0026】
図4には、塗料タンク23に設けられる仕切弁とその操作片27a~27dの構成例が示されている。図4のうち、(A)は拡大正面図、(B)は断面側面図であり、それぞれ塗料の流出を遮断している状態を示している。
図4に示すように、仕切弁は、塗料吐出管24a~24dの先端部に形成された上下方向のスリットに、操作片27a~27dの下端部が挿入された構造を有しており、操作片27a~27dを上方へ移動させて下端部を塗料吐出管24a~24dの流路から引き抜くと塗料が流出可能になるように構成されている。
【0027】
上記塗料吐出管24a~24dの先端部は塗料タンク23の壁体を貫通しており、塗料タンク23の壁体には、操作片27a~27dが挿入され上下方向へスライド可能に案内するガイド溝が形成されている。従って、操作片27a~27dの下端部が、塗料吐出管24a~24dの塗料通路を遮断したり開通したりする仕切弁として機能する。
なお、図4に示す塗料の仕切弁の構成は一例であって、このような構成に限定されるものでなく、塗料吐出管24a~24dの途中に回転式のバルブを設けても良い。
さらに、上記塗料吐出管24a~24dの入口等にメッシュフィルタを設けて、塗料に含まれている空気の泡を除去(脱泡)するように構成しても良い。
【0028】
上述したように、本実施形態の塗装装置においては、塗料タンク23の周囲に塗料容器22を配置してタンクと共に昇降させる構成であるため、特許文献3に記載されている塗装装置のような塗布ユニットと塗料タンク(塗料容器)を別々に設ける方式に必要とされる、塗布ユニットと塗料タンクとを接続するホースが不要であるため、装置の取り扱いが容易であるという利点がある。また、塗料容器を複数個(図では4個)に分けて設けているため、塗料タンク23内に均等に塗料を供給することができるという利点がある。
【0029】
次に、上記実施形態の柱状物塗装装置を用いた既設の鋼管柱の外周の塗装処理の手順について説明する。
上記実施形態の柱状物塗装装置を用いた鋼管柱の塗装に際しては、図5に示すように、鋼管柱Cの上端に先ず滑車101を、電柱固定用バンド102等を用いて取り付ける。また、鋼管柱Cの下端に移送フレーム10を取り付け、この移送フレーム10の上に移動式浸漬タンク20を載置する。続いて、鋼管柱Cの近傍にウインチ103を設置し、ウインチ103より引き出したワイヤロープ104の端部を、鋼管柱Cの上端の滑車101に捲回してから引き下げて移送フレーム10の角パイプ11cに設けられているアイボルト16に係止する。
【0030】
次に、移動式浸漬タンク20の塗料タンク23に設けられている塗料の仕切弁を開けてと塗料容器22a~22dより塗料の流出を開始させてから、ウインチ103を起動してワイヤロープ14の巻き取りを開始して移送フレーム10とこれに載置された移動式浸漬タンク20を鋼管柱Cの上端まで上昇させる。その後、ウインチ103を逆転させてワイヤロープ104を緩めて、移送フレーム10と移動式浸漬タンク20を自重で降下させる。この際、塗布する塗料の粘性に応じて降下速度を設定することで所望の厚みの塗膜を鋼管柱の外周に形成することができる。そして、本実施形態の塗装装置で塗り残した鋼管柱の上端部や下端部は刷毛やローラーブラシ、圧縮エアーを利用した塗装用ガンなどの工具を用いた手作業により塗装を行なって完了する。
【0031】
また、既設の鋼管柱には、小型のものから大型のものまで各種の装柱が装着されているので、塗装を開始する前に、小型の装柱金物は外し、アングル材などからなる腕金のような大型の装柱金物は鋼管柱に付けたままにして、下方部分のみ上記塗装装置を用いて塗装を実施するようにしてもよい。そして、大型の装柱金物の装着箇所よりも上方部分は、工具を用いた手作業により塗装を行う。
【0032】
なお、原理的には移動式浸漬タンク20を上昇させながら塗装を行うことも可能であるが、その場合、誘導ローラ13a~13eが塗膜の上を走行することになり、形成された塗膜の膜厚がばらつくことになるが、上記のように移動式浸漬タンク20を降下させながら塗装を行うことで、誘導ローラ13a~13eが先に移動することとなるため、均一な塗膜を形成することができる。
また、ウインチ103を地上に設置する代わりに鋼管柱の上端部に取り付けて塗装装置をワイヤロープで吊り上げて移動させるようにしてもよい。
【0033】
また、上記実施形態の柱状物塗装装置は、塗料容器22a~22dと塗料吐出管24a~24dが、誘導ローラ13a~13eから離れた位置に設けられているため、使用する塗料として粘性が高めのものを選択しておくことで、塗装を実施しない上昇中に塗料容器22a~22dから流出した塗料が鋼管柱の表面に付着したり、誘導ローラ13a~13eの位置まで到達したりすることがないようにすることができ、それによって塗膜にムラが発生するのを防止することができる。
【0034】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば前記実施形態では、塗料容器の数を4個としているが、塗料容器の数は4個に限定されず何個であっても良い。また、前記実施形態では、移送フレーム10と移動式浸漬タンク20をそれぞれ2分割可能に構成したが、3分割あるいは4分割可能に構成しても良い。なお、各塗料容器の容量は、全容器トータルの量が、鋼管柱の外周全体に塗布するのに必要な量よりも少し多くなるように設定される。
【0035】
また、前記実施形態では、地上に設置したウインチ103でワイヤロープ104を巻き取ったり緩めたりすることで、移送フレーム10と移動式浸漬タンク20を昇降させているが、移送フレーム10に、鋼管柱の外周を転動する駆動輪とそれを回転駆動するモータおよび制御装置を有する自走装置を搭載するように構成してもよい。
さらに、前記実施形態では、移送フレーム10と移動式浸漬タンク20をそれぞれ2分割可能に構成したものを説明したが、完全に分離するのではなくヒンジを用いて一辺が開放可能になるように構成してもよい。
また、前記実施形態では、本発明を鋼管柱の塗装装置に適用した場合について説明したが、本発明は鋼管柱以外の柱の塗装などにも利用することができる。また、塗装対象の柱は円柱に限定されず、角柱であってもよい。
【符号の説明】
【0036】
10 移送フレーム(移送ユニット)
11a~11i 角パイプ
12a,12b,12c 結合部材
13a~13e 誘導ローラ
14a~14d フリーボールベアリング
15a,15b 移動範囲規制用のピン
16 アイボルト
20 移動式浸漬タンク(塗布ユニット)
21 ベースプレート
22a~22d 塗料容器
23 塗料タンク
24a~24d 塗料吐出管
25a,25b 連結プレート
26a,26b 移動範囲規制用の穴
27a~27d 操作片
28 弾性シート
101 滑車
102 電柱固定用バンド
103 ウインチ
104 ワイヤロープ
図1
図2
図3
図4
図5