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特開2022-25237視覚検査装置、視覚検査システム及び視覚検査プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022025237
(43)【公開日】2022-02-10
(54)【発明の名称】視覚検査装置、視覚検査システム及び視覚検査プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/024 20060101AFI20220203BHJP
【FI】
A61B3/024
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020127947
(22)【出願日】2020-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】513190726
【氏名又は名称】株式会社クリュートメディカルシステムズ
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100091362
【弁理士】
【氏名又は名称】阿仁屋 節雄
(74)【代理人】
【識別番号】100161034
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 知洋
(74)【代理人】
【識別番号】100187632
【弁理士】
【氏名又は名称】橘高 英郎
(72)【発明者】
【氏名】井上 智
(72)【発明者】
【氏名】木村 伸司
(72)【発明者】
【氏名】江口 哲也
【テーマコード(参考)】
4C316
【Fターム(参考)】
4C316AA18
4C316FA01
4C316FA02
4C316FA04
4C316FB03
4C316FB07
4C316FB11
4C316FB16
(57)【要約】
【課題】動的固視での試験結果の変換処理を行うことなく視覚検査を行える。
【解決手段】タッチスクリーンを有し、検査開始から終了までの間、タッチスクリーン上での位置が固定された固視標を表示した状態で、タッチスクリーン上に視標を順次表示し、被検者が視標をタップしたか否かの結果に基づいて検査結果を得る、視覚検査装置及びその関連技術を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タッチスクリーンを有し、検査開始から終了までの間、前記タッチスクリーン上での位置が固定された固視標を表示した状態で、前記タッチスクリーン上に視標を順次表示し、被検者が前記視標をタップしたか否かの結果に基づいて検査結果を得る、視覚検査装置。
【請求項2】
検査開始から終了までの間、被検者に対して複数回視標を呈示する際に、一度に呈示される視標の数が複数である回を含み、呈示された全ての視標を被検者がタップしたときに正解とみなす、請求項1に記載の視覚検査装置。
【請求項3】
被検者と前記タッチスクリーンとの間に被検者の手が配置され続けないようにするための手の待機位置マークを更に有する、請求項1又は2に記載の視覚検査装置。
【請求項4】
検査開始から終了までの間、タッチスクリーン上での位置が固定された固視標を表示した状態で、前記タッチスクリーン上に視標を順次表示し、被検者が前記視標をタップしたか否かの結果に基づいて検査結果を得る、視覚検査システム。
【請求項5】
検査中、タッチスクリーン上での位置が固定された固視標を表示した状態で、前記タッチスクリーン上に視標を順次表示し、被検者が視標をタップしたか否かの結果に基づいて検査結果を得るようコンピュータを機能させる、視覚検査プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、視覚検査装置、視覚検査システム及び視覚検査プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
視覚検査の一つとして緑内障における視野欠損を検査するいわゆる視野検査が知られている。例えば、特許文献1のように、HMDを使用し、応答用のスイッチにて回答を行う視覚検査装置が知られている。また、特許文献2のように、タッチスクリーンを利用して緑内障における視野欠損を監視する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-000224号公報
【特許文献2】特表2015-502238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献2に記載の内容では、検査開始から終了までの間、システムがタッチスクリーンに表示されたターゲットを選択し、被検者が該ターゲットを捕捉した後、該ターゲットを固視標とし、システムが別のターゲットを選択することを繰り返すことにより検査がなされる。つまり、固視標をタッチスクリーン上の一点に固定しない動的固視を採用している(段落0024、0054等)。
【0005】
動的固視を採用すると、視野欠損の状態を把握するためには、被検者の視線の初期位置がタッチスクリーン上の一つの位置(例えば中央)にある場合へと試験結果を変換しなければならない。また、その変換を考慮に入れたうえで、ターゲットを予めタッチスクリーン上の所定位置に配置しなければならない。
【0006】
本発明は、動的固視での試験結果の変換処理を行うことなく視覚検査を行う技術を提供することを、主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様は、
タッチスクリーンを有し、検査開始から終了までの間、前記タッチスクリーン上での位置が固定された固視標を表示した状態で、前記タッチスクリーン上に視標を順次表示し、被検者が前記視標をタップしたか否かの結果に基づいて検査結果を得る、視覚検査装置である。
【0008】
第2の態様は、第1の態様に記載の態様であって、
検査開始から終了までの間、被検者に対して複数回視標を呈示する際に、一度に呈示される視標の数が複数である回を含み、呈示された全ての視標を被検者がタップしたときに正解とみなす。
【0009】
第3の態様は、第1又は第2の態様に記載の態様であって、
被検者と前記タッチスクリーンとの間に被検者の手が配置され続けないようにするための手の待機位置マークを更に有する。
【0010】
第4の態様は、
検査開始から終了までの間、タッチスクリーン上での位置が固定された固視標を表示した状態で、前記タッチスクリーン上に視標を順次表示し、被検者が前記視標をタップしたか否かの結果に基づいて検査結果を得る、視覚検査システムである。
【0011】
第5の態様は、
検査中、タッチスクリーン上での位置が固定された固視標を表示した状態で、前記タッチスクリーン上に視標を順次表示し、被検者が視標をタップしたか否かの結果に基づいて検査結果を得るようコンピュータを機能させる、視覚検査プログラムである。
【0012】
上記各態様と組み合わせ可能な他の態様は以下の通りである。
【0013】
タッチスクリーン上に一度に表示される視標の数は1つでもよいし複数でもよい。検査開始から終了までの間、被検者に対して複数回視標を呈示する際に、一度に表示される視標の数を少なくとも1回は変動させてもよい。その一方、検査開始から終了までの間、視標の数は1つのままでもよいし、複数のままでもよいし、例えば1回目の視標の呈示のときの視標の数は1つ、2回目のときの視標の数は2つ、3回目のときの視標の数は3つというように、検査開始から終了までの間、視標の数を変動させてもよい。これらのパターンを組み合わせてもよい。なお、被検者に対して複数の視標が呈示された場合は、呈示された全ての視標を被検者がタップしたときに正解とみなすのが好ましい。
【0014】
タッチスクリーンの中央からの視標の偏心度に応じて視標のタップ感度を変動させてもよい。
【0015】
例えば、偏心度が大きいほど、視標の画素に付与されたタップ判定機能を視標の周囲の画素にも拡大して付与する際の拡大度合いを増加させてもよい。
【0016】
タップ感度を増加すべく、視標の画素に付与されたタップ判定機能を視標の周囲の画素にも拡大して付与してもよい。そして、その際の拡大度合いを、タッチスクリーンの中央の画素から視標の画素までの画素数が多いほど増加させてもよい。
【0017】
拡大度合いの増加の具体的態様としては、タップ判定機能を付与する範囲を視標の画素からの画素数で規定してもよい。例えば、タッチスクリーンの中央の画素からの画素数を少、中、多の3段階にわけ、「少」の場合は、視標の画素のみにタップ判定機能を付与し、「中」の場合は、視標の画素を包囲する周囲1画素分にもタップ判定機能を付与し、「多」の場合は、視標の画素を包囲する周囲2画素分にもタップ判定機能を付与してもよい。なお、本発明はこの態様に限定されず、拡大画素数にも限定は無い。
数値を用いた一例を挙げると、偏心度(視角)と視力との関係を考慮し、偏心度(視角)が20°相当の画素数においては、偏心度(視角)が10°相当の画素数の場合に比べ、タップ判定機能を付与する拡大画素数の面積を4倍程度にすることが望ましい。
【0018】
視覚検査装置は、視標の偏心度に応じ、タップ感度の変動度合いを演算する演算部を備えてもよい。演算部は、公知のタブレット型端末の演算機能を利用してもよい。該演算機能は、公知のタブレット型端末の制御部により制御してもよい。
【0019】
視覚検査装置は、タップ感度の変動度合いをタッチスクリーンに反映させるタップ感度調整部を備えてもよい。タップ感度調整部は、演算部と構成を兼ねてもよい。タップ感度機能は、公知のタブレット型端末の制御部により制御してもよい。
【0020】
タッチスクリーンの中央からの視標の偏心度に応じて視標の注目度を変動させてもよい。
【0021】
「視標の注目度」は、被検者が視標を視認しやすくなる度合いを意味する。「視標の注目度を変動させる」とは、被検者が視標を視認しやすくなる度合いを変動させることを意味する。
【0022】
前記偏心度が大きいほど、前記視標の注目度を増加させ、
前記視標のコントラスト、輝度、若しくは大きさを増加させる、又は前記視標の呈示時間を増加させる、又はそれらのいずれかを組み合わせることにより、前記視標の注目度を増加させてもよい。
【0023】
視標の注目度を変動させる具体例としては、視標のコントラスト、輝度、若しくは大きさを増加させる、又は前記視標の呈示時間を増加させる、又はそれらのいずれかを組み合わせることが挙げられる。
【0024】
視標の注目度を増加させるべく視標の輝度を増加させる場合、図3に示すように、偏心度が小さい視標Aに比べ、偏心度が中程度の視標Bの輝度を増加させる。同様に、偏心度が中程度の視標Bに比べ、偏心度が大きい視標Cの輝度を増加させる。
数値を用いた一例を挙げると、コントラスト及び輝度に関しては、偏心度と人間の感覚との関係を考慮し、偏心度が20画素数においては、偏心度が10画素数の場合に比べ、6dB±4dB(2dB~10dB)程度、コントラストを高くすることが望ましい。
また、呈示時間に関しては、偏心度が20画素数においては、偏心度が10画素数の場合に比べ、2±0.5倍(1.5~2.5倍)程度、呈示時間を長くすることが望ましい。
【0025】
なお、視標の注目度を増加させる他の具体例である視標のコントラスト及び/又は大きさを増加させる場合、及び/又は視標の呈示時間を増加させる場合については、上段落の「輝度」を「視標のコントラスト、大きさ及び/又は視標の呈示時間」に置き換えればよい。
【0026】
視覚検査装置は、視標の偏心度に応じ、注目度の変動度合いを演算する演算部を備えてもよい。演算部は、公知のタブレット型端末の演算機能を利用してもよい。該演算機能は、公知のタブレット型端末の制御部により制御してもよい。
【0027】
視覚検査装置は、注目度の変動度合いをタッチスクリーンに反映させる注目度調整部を備えてもよい。注目度調整部は、演算部と構成を兼ねてもよい。注目度機能は、公知のタブレット型端末の制御部により制御してもよい。
【0028】
コンピュータであるところのタブレット型端末は、表示部と入力部と制御部とを備えてもよい。制御部が所定プログラムを実行することで、タブレット型端末は、固視標表示部、視標表示部、タップ検知部、演算部、(タップ感度、注目度調整部、及び/又は回答制限時間の)調整部として機能するのがよい。
【0029】
視覚検査装置が、検査開始から終了までの間、タッチスクリーン上での位置が固定された固視標を表示した状態で、被検者に視標を呈示して回答制限時間内に前記視標をタップさせるタッチスクリーンを有し、
検査開始から終了までの間において、複数回視標を呈示する際の被検者に与える回答制限時間は各回で可変としてもよい。
【0030】
検査開始から終了までの間、被検者に対して複数回視標を呈示する際に、前記回答制限時間は、各回での一度に呈示される視標の数に応じて可変としてもよい。
【0031】
前記一度に呈示される視標の数が複数の回を含み、呈示された全ての視標を被検者がタップしたときに正解とみなすのが好ましい。
【0032】
前記回答制限時間は、過去に被検者が要した回答時間に応じて可変としてもよい。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、動的固視での試験結果の変換処理を行うことなく視覚検査を行える。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1図1は、本実施形態の視覚検査装置のタッチスクリーンに視標を表示した際の概略図である。
図2図2は、本実施形態の視覚検査装置のタッチスクリーンの中央の画素からの画素数の数え方を説明する図である。
図3図3は、本実施形態の視覚検査装置の視標の偏心度を小(図3(a))、中(図3(b))、大(図3(c))の3段階に分けたときの視標及びタップ判定機能付与領域の配置を説明する図である。
図4図4は、本実施形態の視覚検査装置の視標の偏心度を小(図4(a))、中(図4(b))、大(図4(c))の3段階に分けたときの視標の輝度の違いを説明する図である。
図5図5は、本実施形態の視覚検査装置において一度に表示される視標の数に応じて回答制限時間を変動させる様子を示す説明図である。
図6図6は、本実施形態の視覚検査装置の制御系の構成を含むブロック図である。
図7図7(a)は、本実施形態の視覚検査装置において、被検者に対して視標が呈示されたときに、被検者と前記タッチスクリーンとの間に被検者の手が配置され続けた場合を示す図であり、図7(b)は、手の待機位置マークを設け、被検者が該マークに従った場合を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施の形態について説明する。本実施形態においては、視覚検査装置が視野計である場合を例示する。
【0036】
本実施形態においては、視覚検査装置がタブレット型端末である場合について述べる。本実施形態の視覚検査装置は、被検者に視標を呈示して視標をタップさせるタッチスクリーンを有する。このタッチスクリーンは、タブレット型端末の表示面を包含する。
【0037】
ここで記述する「視標」とは、被検者の視覚を検査するにあたって、被検者の眼球に光による刺激を与えるために表示されるものである。視標に関しては、特に大きさ、形状等の制限はない。たとえば、緑内障検査の際には、所定の大きさで光の点を視標として表示するとともに、その光の点の位置を変動させることにより、欠損した視野の有無や欠損場所を検査(特定)することができる。
【0038】
視標の画素にはタップ判定機能が付与される。「タップ判定機能」とは、タッチスクリーン上に表示された視標、詳しく言うとタッチスクリーン上にて周囲より高輝度にて表示された画素部分を被検者がタップして加圧したときに正解と判定する機能である。タップ判定機能を当たり判定機能と称してもよい。ここでいう「正解」とは、被検者が所定の視野において視標を視認可能であることを意味する。一定時間以内にタップ判定機能が付与された視標の画素が感圧しなかった場合、視覚検査装置は不正解と判定する。ここでいう「不正解」とは、被検者が所定の視野において視標を視認不可能であることを意味する。
【0039】
タッチスクリーン上に一度に表示される視標の数は1つでもよいし複数でもよい。検査開始から終了までの間、被検者に対して複数回視標を呈示する際に、一度に表示される視標の数を少なくとも1回は変動させてもよい。その一方、検査開始から終了までの間、視標の数は1つのままでもよいし、複数のままでもよいし、例えば1回目の視標の呈示のときの視標の数は1つ、2回目のときの視標の数は2つ、3回目のときの視標の数は3つというように、検査開始から終了までの間、視標の数を変動させてもよい。なお、被検者に対して複数の視標が呈示された場合は、該複数の視標全てをタップさせるのが好ましい。
【0040】
図1は、本実施形態の視覚検査装置のタッチスクリーンに視標を表示した際の概略図である。
【0041】
タブレット型端末を利用する場合、ハードウェアとしての機能は既存のタブレット型端末(スマートフォン、タブレットパソコン等)を利用すればよい。本実施形態は、タブレット型端末のタップ感度に係る機能を調整するプログラムにより実施してもよい。
【0042】
以下、本実施形態の好適例を列挙する。
【0043】
(タップ感度)
本実施形態の特徴の一つは、固視標からの視標の偏心度に応じて視標のタップ感度を変動させることである。
【0044】
タッチスクリーンの中央の画素は、通常、固視標を構成する画素となる。検査開始から終了までの間、タッチスクリーン上での位置が固定された固視標(一例としてタッチスクリーン上の中央位置。以降、この場合を例示。但しそれ以外の位置は排除しない。)を表示した状態で、前記タッチスクリーン上に視標を順次表示する。被検者は固視標を固視した状態で呈示される視標をタップする。被検者が前記視標をタップしたか否かの結果に基づいて検査結果を得る。固視標の形状は任意であり、十字であってもよいが、説明の便宜上、本明細書中では点でも表示する。なお、固視標は常にタッチスクリーン上に表示されていてもよいし、点滅表示でもよい。「固視標を表示した状態」はいずれの状態も含む。結局、被検者が視標をタップする際に被検者が固視標を固視できる状態であれば、固視標の表示態様に限定は無い。
【0045】
「タッチスクリーンの中央からの視標の偏心度」とは、タッチスクリーンの中央から、タッチスクリーンの表示限界又はタッチスクリーンのうち視覚検査の際に使用する部分の最端部分且つ最も離れた部分までの、タッチスクリーンの中央からの視標の離れ度合いを意味する。
【0046】
この「偏心度」は、タッチスクリーンの中央の画素から視標の画素に至るまでの画素数(即ち絶対数)(画素数の数え方については後掲)で表してもよいし、タッチスクリーンの中央から、視標を通過して、タッチスクリーンの表示限界又はタッチスクリーンのうち視覚検査の際に使用する部分の最端部分且つ最も離れた部分までの画素のうちの、タッチスクリーンの中央からの視標の画素に至るまでの画素数の割合(即ち相対数)で表してもよい。以降、偏心度は、該絶対数の場合も該相対数の場合も包含する。また、「偏心度」は、タッチスクリーンの中央の画素に対する視線と、所定の画素に対する視線との間の角度(即ち視角)で表してもよい。その場合、偏心度(視角)と記載する。
【0047】
タッチスクリーンを利用する場合、被検者にとっては、タッチスクリーンの中央部分はタッチしやすく、タッチスクリーンの端部分はタッチしにくい。その一方、この構成を採用することにより、タッチスクリーンの中央部分と端部分との間の操作性の差を、中央部分と端部分との間でのタッチスクリーン上での視標のタップ感度の差で埋めることが可能となる。その結果、タッチスクリーンを利用した場合の検査精度を向上させられる。
【0048】
中央部分と端部分との間でのタップ感度の差を設ける一具体例は以下の通りである。本発明は以下の具体例に限定されない。
【0049】
例えば、偏心度が大きいほど、視標の画素に付与されたタップ判定機能を視標の周囲の画素にも拡大して付与する際の拡大度合いを増加させてもよい。
【0050】
図2は、本実施形態の視覚検査装置のタッチスクリーンの中央の画素からの画素数の数え方を説明する図である。
【0051】
「タッチスクリーンの中央の画素から視標の画素までの画素数」の数え方の一例としては、タッチスクリーンの中央の画素から、タッチスクリーン上に表示された視標の中央を包含する画素までの最短直線上を通過する画素数であってもよいし(図2中(1))、該視標の中央を包含する画素に至るまでの画素数を合計してもよい(図2中(2))。
【0052】
タップ感度を増加すべく、視標の画素に付与されたタップ判定機能を視標の周囲の画素にも拡大して付与してもよい。そして、その際の拡大度合いを、タッチスクリーンの中央の画素から視標の画素までの画素数が多いほど増加させてもよい。
【0053】
図3は、本実施形態の視覚検査装置の視標の偏心度を小(図3(a))、中(図3(b))、大(図3(c))の3段階に分けたときの視標及びタップ判定機能付与領域の配置を説明する図である。
【0054】
拡大度合いの増加の具体的態様としては、タップ判定機能を付与する範囲を視標の画素からの画素数で規定してもよい。例えば、タッチスクリーンの中央の画素からの画素数を少、中、多の3段階にわけ、「少」の場合は、視標の画素のみにタップ判定機能を付与し、「中」の場合は、視標の画素を包囲する周囲1画素分にもタップ判定機能を付与し、「多」の場合は、視標の画素を包囲する周囲2画素分にもタップ判定機能を付与してもよい。
数値を用いた一例を挙げると、偏心度(視角)と視力との関係を考慮し、偏心度(視角)が20°相当の画素数においては、偏心度(視角)が10°相当の画素数の場合に比べ、タップ判定機能を付与する拡大画素数の面積を4倍程度にすることが望ましい。
なお、本発明はこれらの態様に限定されず、拡大画素数にも限定は無い。
【0055】
上記の態様以外にも以下の態様を採用しても構わない。例えば、タッチスクリーンの中央の画素から離れた画素数に応じ、視標の画素に付与されたタップ判定機能の発揮に必要な押圧度合いを低下させることにより、タップ感度を増加させてもよい。つまり、タッチスクリーンの中央に表示された視標の画素は、しっかり押さえないとタップ判定機能が発揮されない一方、タッチスクリーンの端に表示された視標の画素は、わずかに触れるだけでタップ判定機能が発揮されるようにしてもよい。
【0056】
この構成を採用することにより、タッチスクリーンの中央部分と端部分との間の操作性の差を、中央部分と端部分との間でのタッチスクリーン上での視標のタップ感度の差で埋めることが可能となる。その結果、タッチスクリーンを利用した場合の検査精度を向上させられる。
【0057】
(視標注目度)
本実施形態の特徴の一つは、固視標からの視標の偏心度に応じて視標の注目度を変動させることである。以下に記載が無い内容は、(タップ感度)で述べた内容を適用可能である。
【0058】
「視標の注目度」は、被検者が視標を視認しやすくなる度合いを意味する。「視標の注目度を変動させる」とは、被検者が視標を視認しやすくなる度合いを変動させることを意味する。
【0059】
視標の注目度を変動させる具体例としては、視標のコントラスト、輝度、若しくは大きさを変動させる、又は前記視標の呈示時間を変動させる、又はそれらのいずれかを組み合わせることが挙げられる。
【0060】
「タッチスクリーンの中央からの視標の偏心度」とは、タッチスクリーンの中央から、タッチスクリーンの表示限界又はタッチスクリーンのうち視覚検査の際に使用する部分の最端部分且つ最も離れた部分までの、タッチスクリーンの中央からの視標の離れ度合いを意味する。
【0061】
タッチスクリーンを利用する場合、被検者にとっては、タッチスクリーンの中央部分は視認しやすく、タッチスクリーンの端部分は視認しにくい。その一方、この構成を採用することにより、タッチスクリーンの中央部分と端部分との間の視認しやすさの差を、中央部分と端部分との間でのタッチスクリーン上での視標の注目度の差で埋めることが可能となる。その結果、タッチスクリーンを利用した場合の検査精度を向上させられる。
【0062】
中央部分と端部分との間での注目度の差を設ける一具体例は以下の通りである。本発明は以下の具体例に限定されない。
【0063】
図4は、本実施形態の視覚検査装置の視標の偏心度を小(図4(a))、中(図4(b))、大(図4(c))の3段階に分けたときの視標の輝度の違いを説明する図である。
【0064】
前記偏心度が大きいほど、前記視標の注目度を増加させ、前記視標のコントラスト、輝度、若しくは大きさを増加させる、又は前記視標の呈示時間を増加させる、又はそれらのいずれかを組み合わせるのが好ましい。前記視標の注目度を増加させるべく、視標の輝度を増加させる場合、図4に示すように、偏心度が小さい視標Aに比べ、偏心度が中程度の視標Bの輝度を増加させる。同様に、偏心度が中程度の視標Bに比べ、偏心度が大きい視標Cの輝度を増加させる。
数値を用いた一例を挙げると、コントラスト及び輝度に関しては、偏心度と人間の感覚との関係を考慮し、偏心度が20画素数においては、偏心度が10画素数の場合に比べ、6dB±4dB(2dB~10dB)程度、コントラストを高くすることが望ましい。
また、呈示時間に関しては、偏心度が20画素数においては、偏心度が10画素数の場合に比べ、2±0.5倍(1.5~2.5倍)程度、呈示時間を長くすることが望ましい。
【0065】
なお、視標の注目度を増加させる他の具体例である視標のコントラスト及び/又は大きさを増加させる場合、及び/又は視標の呈示時間を増加させる場合については、上段落の「輝度」を「視標のコントラスト、大きさ及び/又は視標の呈示時間」に置き換えればよい。
【0066】
(回答制限時間)
本実施形態の特徴の一つは、視覚検査装置が、被検者に視標を呈示して回答制限時間内に前記視標をタップさせるタッチスクリーンを有し、そのうえで、検査開始から終了までの間において、複数回視標を呈示する際の被検者に与える回答制限時間は各回で可変であることにある。
【0067】
「回答制限時間」とは、被検者に視標を呈示してから被検者がタッチスクリーン上の視標を押すことにより正解とみなされるまでの時間である。この時間内に視標をタップできなければ不正解とみなす。この時間が過ぎた後に即座に別の視標を被検者に呈示してもよいし、以前の視標を一度非表示にして間をおいて該別の視標を被検者に呈示してもよい。
【0068】
検査開始から終了までの間において、視標の呈示の際の被検者に与える回答制限時間を可変とする際の具体的な態様について列挙する。
【0069】
検査開始から終了までの間、被検者に対して複数回視標を呈示する際に、前記回答制限時間は、各回での一度に呈示される視標の数に応じて可変としてもよい。
【0070】
この態様では、被検者に対して複数回視標を呈示する。1回目の呈示の際には視標の数を1つとする一方、2回目の呈示の際には視標の数を4つとし、しかも回答制限時間は一律とする場合を想定する。1回目の呈示では被検者のタップが間に合ったとしても、2回目の呈示では被検者のタップが間に合わないおそれがある。そこで、2回目の呈示の際には回答制限時間を1回目に比べて長くする。なお、どれくらい長くするかは適宜設定可能であるが、過去に被検者が要した回答時間を参照してもよい(詳しくは後述)。
【0071】
先に述べたように一度に呈示される視標の数には限定は無い。但し、一度に呈示される視標の数は複数であれば、本実施形態を適用しない場合だと被検者のタップが間に合わないおそれがある。ところが、本実施形態を適用することにより回答制限時間を適切な長さに設定できる。しかも、一律に回答制限時間を長くするわけではなく、一度に呈示される視標の数に応じて可変とするため、むやみに回答制限時間を長くせずに済み、ひいては検査開始から終了までの時間をむやみに長くせずに済む。
【0072】
回答制限時間は、過去に被検者が要した回答時間に応じて可変としてもよい。
【0073】
「過去に被検者が要した回答時間」とは、別の日に行われた視野検査における、視標が呈示された際の実際の回答時間であってもよいし、検査開始から終了までの間の1回目や2回目における視標の呈示の際に要した実際の回答時間であってもよい。
【0074】
いずれにせよ、先に述べた態様、即ち一度に呈示される視標の数に応じて回答制限時間を可変とする態様での回答制限時間を長くする度合いを決定すべく、実際の回答時間に対してその際の視標の数を紐づけし、視覚検査装置内の記憶部又はネットワーク上のクラウド等に紐づけデータを保存しておくのがよい。そして、該データに基づき、一度に呈示される視標の数に応じて回答制限時間を長くする度合いを決定してもよい。
【0075】
以下、「過去に被検者が要した回答時間」が、検査開始から終了までの間の1回目や2回目における視標の呈示の際に要した実際の回答時間である場合を例示して詳述する。
【0076】
検査開始から終了までの間に被検者に視標を呈示する回数はn回(nは3以上の整数)以上とし、k回目(kは2以上の整数且つk<n)の視標の呈示の場合を想定する。なお、視標の数は複数の固定値と想定する。その場合、1回目からk-1回目までの視標の呈示の際に被検者が要した実際の各回答時間の少なくともいずれかに基づいて、回答制限時間を設定してもよい。
【0077】
一例としては、1回目での実際の回答時間と2回目での実際の回答時間との平均値を、3回目以降の回答制限時間又はその時間にコンマ数秒程度の余裕を付加した時間に設定してもよい。もちろん本発明はこの例には限定されず、例えば平均値ではなく1回目の実際の回答時間のみを参考にしてもよいし、2回目の実際の回答時間と3回目での実際の回答時間との平均値を参考にしてもよい。
【0078】
図5は、本実施形態の視覚検査装置において一度に表示される視標の数に応じて回答制限時間を変動させる様子を示す説明図である。
【0079】
例えば、1回目の視標の呈示のときの視標の数は1つ、2回目のときの視標の数は2つ、3回目のときの視標の数は3つの場合を想定し、1回目の回答制限時間をt1[秒]としたとき、2回目の回答制限時間はt1+α[秒]、3回目の回答制限時間はt1+α+β[秒]としてもよい。
【0080】
以下、数値を用いた一例を挙げる。
最初の回答制限時間は2500[msec]とし、視標呈示個数が増える毎に回答制限時間を1000[msec]増加させる。その後、3回目までの回答時間が1500[msec]を下回った場合、回答制限時間を2000[msec]とし、視標呈示個数による増加を800[msec]とすることが考えられる。以降回答時間に伴い、回答制限時間・視標呈示個数による変動量を増減させる。
【0081】
視覚検査装置の構成の一具体例は以下の通りである。本発明は以下の具体例に限定されない。
【0082】
図6は、本実施形態の視覚検査装置の制御系の構成を含むブロック図である。
【0083】
コンピュータであるところのタブレット型端末1は、表示部10と入力部20と制御部30とを備えてもよい。制御部30が所定プログラムを実行することで、タブレット型端末1は、固視標表示部40、視標表示部50、タップ検知部60、演算部70、調整部80として機能するのがよい。
【0084】
表示部10は、固視標と視標とを表示することにより被検者に呈示する部分でありいわゆるディスプレイとなる部分である。入力部20は、被検者が該視標をタップしたことを受け付ける部分でありいわゆるタッチスクリーンとなる部分である。タブレット型端末だと、タッチスクリーン自体がディスプレイになっている。
【0085】
制御部30は、視野検査に際して各種の機能(手段)を実現するものである。制御部30は、公知のタブレット型端末に搭載された制御部を活用してもよい。
【0086】
制御部30は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard disk drive)、各種インタフェース等の組み合わせがコンピュータ(以降、コンピュータはタブレット型端末を指す。)に搭載されている。また、制御部30は、CPUがROM又はHDDに格納された所定のプログラムを実行することにより、各種の機能を実現するように構成されている。各機能を実現するための所定のプログラムは、コンピュータにインストールして用いられるが、そのインストールに先立ち、コンピュータで読み取り可能な記憶媒体に格納して提供されてもよいし、あるいはコンピュータと接続する通信回線を通じて提供されてもよい。
【0087】
制御部30は、上記プログラムの実行によって実現される機能(手段)の一例として、固視標表示部40、視標表示部50、タップ検知部60、演算部70、調整部80を備える。
【0088】
固視標表示部40は、固視標を表示部10に表示するための構成である。視標表示部50は、視標を表示部10に表示するための構成である。固視標表示部40及び視標表示部50は、既存のタブレット型端末のタッチスクリーンに画像を表示する機能を採用すればよい。
【0089】
タップ検知部60は、被検者が視標をタップした際にタップを検知する部分であり、既存のタブレット型端末の感圧機能を採用すればよい。
【0090】
演算部70は、以下のいずれか又はそれらの組み合わせであってもよい。
・視標の偏心度に応じ、タップ感度の変動度合いを演算するための部分である。
・視標の偏心度に応じ、注目度の変動度合いを演算するための部分である。
・各回で一度に呈示される視標の数に応じ、回答制限時間を演算する部分である。
なお、演算部70は、公知のタブレット型端末の演算機能を利用してもよい。
【0091】
調整部80は、以下のいずれか又はそれらの組み合わせであってもよい。
・タップ感度の変動度合いをタッチスクリーンに反映させるための部分である。
・注目度の変動度合いをタッチスクリーンに反映させるための部分である。
・視覚検査装置内の記憶部又はネットワーク上のクラウド等に保存された、実際の回答時間に対してその際の視標の数が紐づけされたデータ(例えばマトリクス)から、これから行われるk回目の視標の呈示にて採用する回答制限時間を決定する部分である。
なお、調整部80は、演算部と構成を兼ねてもよい。
【0092】
本実施形態の技術的思想は、タッチスクリーンを構成の一部とした視覚検査装置に限定されない。例えば、公知のタブレット型端末に対し、有線又は無線ネットワークでつながった視覚検査システムにより、上記各機能を発揮させるようにしてもよい。また、上記各機能を発揮させるようコンピュータ(例えばタブレット型端末)を機能させるプログラム及びその格納媒体にも本発明の技術的思想は反映されているといえる。
【0093】
なお、視覚検査装置を用いた検査は、両眼視の状態で行ってもよいし、片眼を遮蔽した片眼視の状態で行ってもよい。
【0094】
本発明の技術的範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の構成要件やその組み合わせによって得られる特定の効果を導き出せる範囲において、種々の変更や改良を加えた形態も含む。
【0095】
被検者と前記タッチスクリーンとの間に被検者の手が配置され続けないようにするための手の待機位置マークを更に有するのが好ましい。
【0096】
図7(a)は、本実施形態の視覚検査装置において、被検者に対して視標が呈示されたときに、被検者と前記タッチスクリーンとの間に被検者の手が配置され続けた場合を示す図であり、図7(b)は、手の待機位置マークを設け、被検者が該マークに従った場合を示す図である。
【0097】
図7(a)に示すように、本実施形態の視覚検査装置により被検者に対して複数回の視標の呈示が行われる場合、手の位置を戻すのを忘れ、タッチスクリーンの近傍に手を配置し続けるおそれがある。これにより、回答時間の短縮化がもたらされ、実際の検査結果に影響を及ぼすおそれがある。それを防ぐべく、図7(b)に示すように、手の待機位置マークを設け、被検者が該マークの位置に手を戻すように促す。
【0098】
また、タッチスクリーンと被検者の眼との位置関係を維持するため、被検者の顎を載せる顎台(不図示)を設けてもよい。
【0099】
また、手の待機位置マークの形状は任意である。手の形でもよいし、単に直線等でもよい。手の待機位置マークを付すのは、別途用意した板状部材であってもよい。その場合、該板状部材の先端を屈曲させ、タブレット型端末の傾斜姿勢を維持するスタンドの役割を担ってもよい。その場合、タブレット型端末の傾斜角度を固定できる。また、該板状部材の上に顎台を設ければ、被検者の眼とタブレット型端末のタッチスクリーンとの間の位置関係を固定できる。
【0100】
上記実施形態においては、視覚検査装置をタブレット端末型の検査装置として説明したが、これに限らず、例えばタッチスクリーンを備えたディスプレイに検査画像を表示して視野検査を行う検査装置に適用してもよい。
【0101】
また、予めタップ感度の変動度合い、視標注目度の変動度合い、及び/又は回答制限時間の変動度合いを設定していれば、演算部は不要となる。
【符号の説明】
【0102】
1…タブレット型端末
10…表示部
20…入力部
30…制御部
40…固視標表示部
50…視標表示部
60…タップ検知部
70…演算部
80…調整部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7