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特開2022-25258オフショア環境におけるマイクロプラスチックの収集装置およびその応用方法
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  • 特開-オフショア環境におけるマイクロプラスチックの収集装置およびその応用方法 図1
  • 特開-オフショア環境におけるマイクロプラスチックの収集装置およびその応用方法 図2
  • 特開-オフショア環境におけるマイクロプラスチックの収集装置およびその応用方法 図3
  • 特開-オフショア環境におけるマイクロプラスチックの収集装置およびその応用方法 図4
  • 特開-オフショア環境におけるマイクロプラスチックの収集装置およびその応用方法 図5
  • 特開-オフショア環境におけるマイクロプラスチックの収集装置およびその応用方法 図6
  • 特開-オフショア環境におけるマイクロプラスチックの収集装置およびその応用方法 図7
  • 特開-オフショア環境におけるマイクロプラスチックの収集装置およびその応用方法 図8
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022025258
(43)【公開日】2022-02-10
(54)【発明の名称】オフショア環境におけるマイクロプラスチックの収集装置およびその応用方法
(51)【国際特許分類】
   E02B 15/00 20060101AFI20220203BHJP
   C02F 1/40 20060101ALI20220203BHJP
   B63B 35/32 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
E02B15/00 Z
C02F1/40 Z
B63B35/32 C
B63B35/32 Z
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020127982
(22)【出願日】2020-07-29
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】512000569
【氏名又は名称】華南理工大学
(71)【出願人】
【識別番号】520214134
【氏名又は名称】広州自然伝奇生態環境科技有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】520223723
【氏名又は名称】生態環境部華南環境科学研究所
(71)【出願人】
【識別番号】519080861
【氏名又は名称】広東石油化工学院
(74)【代理人】
【識別番号】100088063
【弁理士】
【氏名又は名称】坪内 康治
(72)【発明者】
【氏名】牛暁君
(72)【発明者】
【氏名】張冬青
(72)【発明者】
【氏名】房向陽
(72)【発明者】
【氏名】張茘
(72)【発明者】
【氏名】林▲すう▼
(72)【発明者】
【氏名】黄志偉
【テーマコード(参考)】
2D025
4D051
【Fターム(参考)】
2D025AA00
4D051AA06
4D051AB07
4D051DC02
4D051DD11
(57)【要約】      (修正有)
【課題】外部環境のサンプリング水域に対する干渉を低減し、サンプリングデータの精度を改善し、サンプリング効率の向上やサンプリング作業負荷の低減を実現できるオフショア環境におけるマイクロプラスチックの収集装置を提供する。
【解決手段】浮力を提供するための浮力プレート1と、浮力プレート1の中央部に配置され、上端が浮力プレート1の本体プレートと同じ高さで、海水を制限するための収集ボックスと、マイクロプラスチックを収集するための収集ネット4と、収集ネット4に運動動力を提供する駆動装置2で構成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
浮力を提供するための浮力プレート(1)と、
前記浮力プレート(1)の中央部に配置され、上端が浮力プレート(1)の本体プレー
トと同じ高さで、海水を制限するための収集ボックス(3)と、
前記収集ボックス(3)内に配置され、垂直方向に摺動可能で、マイクロプラスチック
を収集するための収集ネット(4)と、
前記浮力プレート(1)の外縁に回転可能に接続され、前記収集ネット(4)に運動動
力を提供する駆動装置(2)と、
を含むことを特徴とするオフショア環境におけるマイクロプラスチックの収集装置。
【請求項2】
前記浮力プレート(1)は円筒形であり、
浮力プレート(1)中央部に配置され、前記収集ボックス(3)を取り付けるための収
容チャンバー(11)と、
浮力プレート(1)側面に配置された第1の摺動溝(12)と、
浮力プレート(1)頂面の外縁に配置された制限溝(14)と、
浮力プレート(1)頂面に開設され、前記収容チャンバー(11)と制限溝(14)の
間に位置する4つの第1のスロット(13)と、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の収集装置。
【請求項3】
前記駆動装置(2)は、
前記制限溝(14)を介して浮力プレート(1)側面に回転可能に接続された回転リング
(21)と、
前記回転リング(21)の内側面に開設され、第1の摺動溝(12)との間に複数の第1
のボール(212)が嵌設される第2の摺動溝(211)と、
前記回転リング(21)の底面であって、第2の摺動溝(211)の回転リング(21)
の中央軸に近接する側に設けられ、噛合歯が内側に向かう歯リング(213)と、
前記回転リング(21)の底面の下に接続され、底面に複数のインペラ(221)が設け
られた駆動リング(22)と、
前記回転リング(21)外側面に設けられたインフレータブルバッグ(23)と、
を含むことを特徴とする請求項2に記載の収集装置。
【請求項4】
前記収集ボックス(3)は上面と下面のない中空の立方体形状であり、
収集ボックス(3)の4つの側面の外壁の中央部に設けられた第1のスライドレール(3
11)と、
前記第1のスライドレール(311)の中央部に開設され収集ボックス(3)の側面を貫
通する第3のスロット(3111)と、
前記第1のスライドレール(311)内にスライダー(312)が摺動可能に接続され、
前記スライダー(312)の第1のスライドレール(311)から離れた一側に回転可能
に接続されたその変位を駆動するためのクランク(313)と、
前記クランク(313)のスライダー(312)から離れた一端に第2のベベルギア(3
131)が設けられ、前記第2のベベルギア(3131)が浮力プレート(1)内部に設
けられた第1のベベルギア(15)を介して歯リング(213)と配合して回転可能であ
り、
収集ボックス(3)内部の4つの側面の接続箇所に設けられ、第2のボール(321)が
摺動可能に設けられた第2のスライドレール(32)と、
を含むことを特徴とする請求項3に記載の収集装置。
【請求項5】
前記収集ネット(4)は、
制限ハーフリングング(421)を介して前記第2のボール(321)に相互に配合され
、収集ボックス(3)内部に摺動可能に接続された収集ラック(42)と、
前記収集ラック(42)のフレーム外側の中央部に設けられ、スライダー(312)に接
続された接続ロッド(422)と、収集ラック(42)のフレーム内外側の上部に設けら
れた固定溝(423)と、
前記固定溝(423)内に吸着・固定された磁気材料からなるフィルタースクリーン棚(
41)と、
前記フィルタースクリーン棚(41)のフレーム外側の中央部に凹穴(4111)が設け
られ、内側に設けられたプランクトンネット(412)と、を含むことを特徴とする請求
項4に記載の収集装置。
【請求項6】
S1:マイクロプラスチックを監視する必要があるオフショア海域を選択し、本発明の収
集装置を間隔10~20mで、正方行列の形で関連海域に配置するステップと、
S2:収集装置が海水に投入されると、浮力プレート(1)とインフレータブルバッグ(
23)によって海面に浮遊可能であり、固定のサイズの収集ボックス(3)により固定量
の海水を収集ボックス(3)中に制限するステップと、
S3:収集ボックス(3)内部に制限された海水が外部の海水よりも静止しており、外部
の海の波が駆動リング(22)上のインペラ(221)に力を与え、回転リング(21)
を回転させるステップと、
S4:回転リング(21)は、歯リング(213)、第1のベベルギア(15)、第2の
ベベルギア(3131)を介して力を伝達し、クランク(313)を回転させるステップ
と、
S5:クランク(313)は回転力を収集ネット(41)の収集ボックス(3)での直線
往復運動の力に変換し、収集ネット(41)は収集ボックス(3)内部に制限された海水
中のマイクロプラスチックを繰り返し選別するステップと、
S6:最初の収集装置の水での時間が15~20minに達すると、投入順序に従って収
集装置中のフィルタースクリーン(41)を順番に取り出すステップと、
S7:フィルタースクリーン(41)に収集されたサンプルをステンレス鋼のふるいで洗
い、次にふるい中の残留物を脱イオン水を経って清浄な収集ボトルに移し、番号付けて封
止し、低温で光から保護されて保管するステップと、
S8:一次のマイクロプラスチック収集が完了したら、清浄なフィルタースクリーン(4
1)を交換して他のエリアのサンプリング収集を行うか、収集装置を直接回収してサンプ
リングを完了するステップと、
を含むことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の収集装置の応用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境汚染物収集の技術分野に関し、具体的にはオフショア環境におけるマイク
ロプラスチックの収集装置およびその応用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロプラスチックとは、直径が5mm以下のプラスチック粒子を指し、中国でのマイ
クロプラスチック汚染の研究は遅れて始まり、マイクロプラスチックの現状と傾向、生態
学的影響などは不明であり、オフショア環境でのマイクロプラスチック汚染およびその生
物学的蓄積と毒性の研究も少ない。したがって、本発明は、オフショア環境における海水
マイクロプラスチックの収集装置を提供し、オフショア環境におけるマイクロプラスチッ
クの汚染研究および監視管理に対する基本的なデータと科学的根拠を提供することを目的
とする。
【発明の概要】
【0003】
現在、中国の研究者はトロールによって海水中のマイクロプラスチックをサンプリングし
ているが、具体的な操作方法は以下の通りであり:ロープの一端を船尾の欄杆に結び付け
、ロープの長さをできるだけ長く保つようにして、他端をプランクトントロールの前部ネ
ットサークルのロープに結び付け、鉄のブロックを前部ネットサークルに結び付けて海に
入り、同時にネットサークルの半分が海面に沈んで、半分が海面の上に露出することを確
保する。トロールの前にGPSでポイントを記録し、3~4ノットの速度で約15min
ドラグする。ドラグの後、GPSでポイントを記録し、ドラグ距離を算出して海水の単位
面積内のマイクロプラスチックの存在量を算出する。
【0004】
このような方式は以下の問題がある。
1)船自体の操作プロセスは、サンプリングエリアの水域を妨害し、トロールによって収
集されるサンプルの数に影響し、現在の解決策は、ロープの長さを通常15m以上できる
だけ長くすることであるが、このような方式はネット放出、ネット回収およびサンプル収
集に不便である。
2)後でデータを処理する場合、ドラグ距離と船の航行時間から単位面積内の海水中のマ
イクロプラスチック存在量を算出するが、GPSの誤差と船の航行速度の不確により、後
のデータの偏差が大きく、多くの場合、同じエリアで何度もサンプル収集を行う必要があ
り、サンプリング量を増やすことで誤差を修正するためにかなり手間がかかる。
【0005】
上記の2つの問題に対して、本発明は、オフショア環境におけるマイクロプラスチックの
収集装置を提供し、現在海水マイクロプラスチックのサンプリング方式を改良することを
目的とし、便利な使用を前提として、外部環境のサンプリング水域に対する干渉を低減し
、サンプリングデータの精度を高め、サンプリング効率の向上やサンプリング作業負荷の
低減を実現し、具体的な技術的解決策は以下の通りである。
【0006】
オフショア環境におけるマイクロプラスチックの収集装置は以下を含む。
浮力を提供するための浮力プレートは、その製造材料が表面疎水処理された金属材料であ
り、浮力を提供する同時に海水の腐食に強く、収集されたデータの正確度に影響を与えな
い。
【0007】
浮力プレートの中央部に配置され、上端が浮力プレートの本体プレートと同じ高さで、海
水を制限するための収集ボックスは、その材料が浮力プレート材料と同じである。収集ボ
ックスは、ボックス内の海水を外部の海水から分離し、ボックス内への外部海水の影響を
低減するだけでなく、船の航行時のボックス内への海水の干渉を低減することができる。
【0008】
収集ボックス内に垂直方向に摺動可能に配置され、マイクロプラスチックを収集するため
の収集ネットは、収集されたマイクロプラスチックの数を単位体積の海水中のマイクロプ
ラスチック存在量とする。
【0009】
浮力プレートの外縁に回転可能に接続され、収集ネットに運動動力を提供する駆動装置は
、潮汐によって引き起こされる海の波の運動エネルギーを主な動力とする。
【0010】
本発明の1つの態様として、浮力プレートは円筒形であり、
浮力プレート中央部に配置され、収集ボックスを取り付けるための収容チャンバーと、
浮力プレートの側面に配置され、第1のボールを制限するための第1の摺動溝と、
浮力プレートの頂面の外縁に配置され、浮力プレートおよび回転リングに支持構造を提供
するための制限溝と、
浮力プレート頂面に開設され、収容チャンバーと制限溝との間に位置し、クランクの回転
のための可動空間を提供する4つの第1のスロットとを含む。
【0011】
本発明の1つの態様として、駆動装置は、
制限溝を介して浮力プレート側面に回転可能に接続され、海の波の運動エネルギーを駆動
装置の運動エネルギーに変換するための回転リングと、
回転リングの内側面に開設され、回転リングと浮力プレート間の摩擦を低減してエネルギ
ー消費を削減するように、第1の摺動溝との間に複数の第1のボールが嵌設される第2の
摺動溝と、
回転リング底面であって、第2の摺動溝の回転リングの中央軸に近接する側に、回転リン
グの動力を伝達するための、噛合歯が内側に向かう歯リングと、
回転リング底面の下に接続され、海の波の作用力を受け、海の波の作用力を駆動リングに
伝達するように、底面に複数のインペラが設けられた駆動リングと、
回転リング外側面に設けられ、装置全体の浮力を高めるためのインフレータブルバッグと
、を含む。
【0012】
本発明の1つの態様として、収集ボックスは上面と下面のない中空の立方体形状であり、
以下を含む。
収集ボックスの4つの側面の外壁中央部に設けられた第1のスライドレールは、その中央
部に収集ボックスの側面を貫通する第3のスロットが開設され、第1のスライドレール内
にスライダーが摺動可能に接続され、スライダーの第1のスライドレールから離れる側に
その変位を駆動するためのクランクが回転可能に接続され、クランクのスライダーから離
れる端に第2のベベルギアが設けられ、第2のベベルギアは浮力プレート内部に設けられ
た第1のベベルギアを介して歯リングと配合して回転可能である。
【0013】
以上の構造によって、回転リングの回転をスライダーの第1のスライドレールでの直線往
復運動に変換し、収集ネットの収集機能に構造の基礎を提供する。
【0014】
収集ボックス内部の4つの側面の接続箇所に配置された第2のスライドレールは、第2の
スライドレール内に第2のボールが摺動可能に設置され、第2のスライドレールと第2の
ボールの設置によって、収集ネットが収集ボックス内に低い摩擦力でマイクロプラスチッ
クの選別を行うのを確保することができる。
【0015】
本発明の1つの態様として、収集ネットは、以下を含む。
制限ハーフリングングを介して第2のボールと互いに配合され、収集ボックス内部に摺動
可能に接続された収集ラックは、そのフレーム外側の中央部にスライダーに接続された接
続ロッドが設けられ、収集ラックのフレームの外側上部に固定溝が設けられ、収集ラック
はスライダーによってドラグされ、収集ボックス内に垂直方向に往復運動することができ
る。
【0016】
磁気材料からなるフィルタースクリーン棚は固定溝内のフィルタースクリーンに吸着され
、強い磁力で吸着されるため、ねじやスナップ構造が不要で、研究者によるフィルタース
クリーンの交換に非常に便利である。
【0017】
フィルタースクリーン棚のフレームの外側中央部に凹穴が設けられ、研究者によるフィル
タースクリーンの交換の時作業点を提供し、その内側に切断されたプランクトンネット浅
水II型であり、メッシュの径が160 μmである。
【0018】
本発明の動作原理の具体的な流れは以下の通りである。
S1:マイクロプラスチックを監視する必要があるオフショア海域を選択し、本発明の収
集装置を間隔10~20mで、正方行列の形で関連海域に配置する、
S2:収集装置が海水に投入されると、浮力プレートとインフレータブルバッグによって
海面に浮遊可能であり、固定のサイズの収集ボックスにより固定量の海水を収集ボックス
中に制限する、
S3:収集ボックス内部に制限された海水が外部の海水よりも比較的静止しており、外部
の海の波が駆動リング上のインペラに力を与え、回転リングを回転させる、
S4:回転リングは、歯リング、第1のベベルギア、第2のベベルギアを介して力を伝達
し、クランクを回転させる、
S5:クランクは回転力を収集ネットの収集ボックスでの直線往復運動の力に変換し、収
集ネットは収集ボックス内部に制限された海水中のマイクロプラスチックを何度も繰り返
し選別する、
S6:最初の収集装置の水での時間が15~20minに達すると、投入順序に従って収
集装置中のフィルタースクリーンを順番に取り出す、
S7:フィルタースクリーンに収集されたサンプルをステンレス鋼のふるいで洗い、次に
ふるい中の残留物を脱イオン水を経って清浄な収集ボトルに移し、番号付けて封止し、低
温で光から保護され保管する、
S8:一次のマイクロプラスチック収集が完了したら、清浄なフィルタースクリーンを交
換して他のエリアのサンプリング収集を行うか、収集装置を直接回収してサンプリングを
完了することができる。
【0019】
本発明によって設計された収集装置は、係留設備を追加することにより、長期間海に浮か
ぶことができ、使用するとき清浄なフィルタースクリーンを交換してから、海に戻すれば
よいため、オフショア環境におけるマイクロプラスチックの周期性監視装置として使用さ
れ、研究者がサンプルを取るたびの準備作業を大幅に減らすことができる。
【0020】
既存のマイクロプラスチック収集装置と比較すると、本発明の有益な効果は以下の通りで
ある。
(1)本発明は、収集装置内の海水を外部海水から隔離することで、外部環境の収集サン
プル海水のマイクロプラスチックの数への影響を回避し、収集データの精度を高める。
(2)本発明は、特定仕様の収集ボックスを設置することで、単位体積の海水中のマイク
ロプラスチックの存在量を容易に取得でき、従来のトロールによる収集時のGPS誤差お
よび船の航行速度の誤差に起因する最後収集データ誤差を避ける。
(3)本発明によって設計された収集装置は、長期間海に配置することができ、使用する
とき収集ネットを交換すれば海水中のマイクロプラスチックの存在量を調査でき、研究者
による特定のオフショア海域の長期間監視が非常に容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の外観図である。
図2】本発明の上面視での断面図である。
図3】本発明の平面視での断面図である。
図4】本発明の本体プレートの分解図である。
図5】本発明の収集ボックスの外観図である。
図6】本発明の収集ボックスの構造概略図である。
図7】本発明の収集ネットの構造概略図である。
図8】本発明の収集ラックの部分拡大図である。
【0022】
[符号の説明]
1 浮力プレート
11 収容チャンバー
111 第2のスロット
12 第1の摺動溝
13 第1のスロット
14 制限溝
15 第1のベベルギア
2 駆動装置
21 回転リング
211 第2の摺動溝
212 第1のボール
213 歯リング
22 駆動リング
221 インペラ
23 インフレータブルバッグ
3 収集ボックス
31 拡張腔
311 第1のスライドレール
3111 第3のスロット
312 スライダー
313 クランク
3131 第2のベベルギア
32 第2のスライドレール
321 第2のボール
4 収集ネット
41 フィルタースクリーン
411 フィルタースクリーン棚
4111 凹穴
412 プランクトンネット
42 収集ラック
421 制限ハーフリングング
422 接続ロッド
423 固定溝
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の方法および効果をさらに説明するために、以下図面を参照して本発明の技術的解
決策を明確かつ完全に説明する。
【0024】
実施例
1、技術的解決策を説明する前に、まず本発明の関連標準を統一する。
1)特性評価単位の統一
マイクロプラスチック量の表現単位について、現在学術文献によって大きな違いがあり、
一般的には、数量上の特性評価(存在量)および品質上の特性評価がある。堆積物サンプ
ルの場合、通常特性評価数量および品質の単位がそれぞれ「個/m2」または「個/kg
(堆積物)」および「g/kg (堆積物)」などであり、海洋表面サンプルの場合、良く
使用される数量単位は「個/m2」および「個/m3」で、品質単位は「g/m2」また
は「g/m3」である。
単位の多様化により、データ結果間の比較が困難であるため、本発明では、海水中のマイ
クロプラスチック量の表現を存在量特性評価で表現し、単位を「個/m3」に統一する。
2)サンプリングエリアの統一
中国の河口オフショアエリアは、主に渤海エリアおよび南シナ海エリアに分かれている。
渤海の平均水深は20~25mであり、平均潮汐範囲は約2~3mである。
南シナ海は、香港を南へ60海里以上離れて水深が約100mに達し、平均潮汐範囲が3
m未満である。また、100海里以上離れると水深が200mに達し、19°54N以上
の南では、水深が2000mまで達する可能性がある。
サンプリングの便利性と潮汐範囲を考慮すると、本発明は、渤海オフショア水域でのサン
プリング装置のサンプリング実験のみを行う。
3)サンプリング装置仕様の統一
サンプリングのカウントを容易にするために、本発明によって設計された収集ボックス3
の容積は1m3であり、つまり、単一の収集装置の収集ネット4によって収集されたマイ
クロプラスチックの量は、1m3海水中のマイクロプラスチック量であり、後期データを
使用するとき「(収集ネット4によって収集されたマイクロプラスチック量)個/m3」
を直接特性評価データとして使用することができる。
【0025】
2、関連標準を統一した後、以下は、本発明の具体的な実施形態である。
図1に示すように、オフショア環境におけるマイクロプラスチックの収集装置は、以下を
含む。
浮力を提供するための浮力プレート11は、その製造材料が表面疎水処理された金属材料
であり、浮力を提供する同時に海水の腐食に強く、収集されたデータの正確度に影響を与
えない。
設置在浮力プレート1の中央部に配置され、上端が浮力プレート1の本体プレートと同じ
高さで、海水を制限するための収集ボックス3は、その材料が浮力プレート1の材料と同
じであり、具体的な容積は1m3である。収集ボックス3はボックス内の海水を外部海水
から隔離し、外部海水のボックス内への影響を低減し、船の航行時海水のボックス内への
干渉を低減することもできる。
収集ボックス3内に垂直方向に摺動可能に配置され、マイクロプラスチックを収集するた
めの収集ネット4は、収集されたマイクロプラスチックの数を1m3海水中のマイクロプ
ラスチック存在量とする。
浮力プレート1の外縁に回転可能に接続され、収集ネット4に運動動力を提供する駆動装
置2は、潮汐によって引き起こされる海の波の運動エネルギーを主な動力とする。
【0026】
図4に示すように、浮力プレート1は円筒形であり、
浮力プレート1の中央部に配置され、収集ボックス3を取り付けるための収容チャンバー
11と、
浮力プレート1の側面に配置され、第1のボール212を制限するための第1の摺動溝1
2と、
浮力プレート1の頂面の外縁に配置され、浮力プレート1および回転リング21に支持構
造を提供するための制限溝14と、
浮力プレート1頂面に開設され、収容チャンバー11と制限溝14との間に位置し、クラ
ンク313の回転のための可動空間を提供する4つの第1のスロット13と、を含む。
【0027】
図2、3、4に示すように、駆動装置2は、
制限溝14を介して浮力プレート1側面に回転可能に接続され、海の波の運動エネルギー
を駆動装置2の運動エネルギーに変換するための回転リング21と、
回転リング21内側面に開設され、回転リング21と浮力プレート1の間の摩擦を低減し
てエネルギー消費を削減するように、第1の摺動溝12との間に複数の第1のボール21
2が嵌設される第2の摺動溝211と、
回転リング21底面であって、第2の摺動溝211の回転リング21の中央軸に近接する
側に、回転リング21の動力を伝達するための、噛合歯内側に向かう歯リング213と、
回転リング21底面の下に接続され、海の波の作用力を受け、海の波の作用力を駆動リン
グ22に伝達するように、底面に複数のインペラ221が設けられた駆動リング22と、
回転リング21外側面に設けられ、装置全体の浮力を高めるためのインフレータブルバッ
グ23と、を含む。
【0028】
図5、6に示すように、収集ボックス3は上面と下面のない中空の立方体形状であり、以
下を含む。
収集ボックス3の4つの側面の外壁中央部に設けられた第1のスライドレール311は、
その中央部に収集ボックス3の側面を貫通する第3のスロット3111が開設され、第1
のスライドレール311内にスライダー312が摺動可能に接続され、スライダー312
の第1のスライドレール311から離れる側にその変位を駆動するためのクランク313
が回転可能に接続され、クランク313のスライダー312から離れる端に第2のベベル
ギア3131が設けられ、第2のベベルギア3131は浮力プレート1内部に設けられた
第1のベベルギア15を介して歯リング213と配合して回転可能である。
以上の構造によって、回転リング21の回転をスライダー312の第1のスライドレール
311での直線往復運動に変換し、収集ネット4の収集機能に構造基礎を提供する。
収集ボックス3内部の4つの側面接続箇所に配置された第2のスライドレール32は、第
2のスライドレール32内に第2のボール321が摺動可能に設置され、第2のスライド
レール32と第2のボール321の設置によって、収集ネット4が収集ボックス3内で低
い摩擦力でマイクロプラスチックの選別を行うのを確保することができる。
【0029】
図7、8に示すように、収集ネット4は以下を含む。
制限ハーフリングング421を介して第2のボール321と互いに配合され、収集ボック
ス3内部に摺動可能に接続された収集ラック42は、そのフレーム外側の中央部にスライ
ダー312に接続された接続ロッド422が設けられ、収集ラック42のフレームの外側
上部に固定溝423が設けられ、収集ラック42はスライダー312によってドラグされ
、収集ボックス3内に垂直方向に往復運動することもできる。
磁気材料からなるフィルタースクリーン棚41は固定溝423内のフィルタースクリーン
41に吸着され、強い磁力で吸着されるため、ねじやスナップ構造が不要で、研究者によ
るフィルタースクリーン41の交換に非常に便利である。
フィルタースクリーン棚41のフレームの外側中央部に凹穴4111が設けられ、研究者
によるフィルタースクリーン41の交換の時作業点を提供し、その内側にプランクトンネ
ット412が設けられ、使用するフィルタースクリーン41は切断されたプランクトンネ
ット浅水II型であり、メッシュの径が160 μmである。
【0030】
応用例
本応用例は実施例1中の構造を基礎とし、本発明の動作原理を説明するものであり、具体
的な流れは以下の通りである。
S1:マイクロプラスチックを監視する必要があるオフショア海域を選択し、本発明の収
集装置を間隔10~20mで、正方行列の形で関連海域に配置する、
S2:収集装置が海水に投入されると、浮力プレート1とインフレータブルバッグ23に
よって海面に浮遊可能であり、容積が1m3の収集ボックス3によって1m3の海水を収
集ボックス3中に制限する、
S3:収集ボックス3内部に制限された海水が外部の海水よりも比較的静止しており、外
部の海の波が駆動リング22上のインペラ221に力を与え、回転リング21を回転させ
る、
S4:回転リング21は、歯リング213、第1のベベルギア15、第2のベベルギア3
131を介して力を伝達し、クランク313を回転させる、
S5:クランク313は回転力を収集ネット41の収集ボックス3での直線往復運動の力
に変換し、収集ネット41は収集ボックス3内部に制限された海水中のマイクロプラスチ
ックを何度も繰り返し選別する、
S6:最初の収集装置の水での時間が15~20minに達すると、投入順序に従って収
集装置中のフィルタースクリーン41を順番に取り出す、
S7:フィルタースクリーン41に収集されたサンプルをステンレス鋼のふるいで洗い、
次にふるい中の残留物を脱イオン水を経って清浄な収集ボトルに移し、番号付けて封止し
、低温で光から保護され保管する、
S8:一次のマイクロプラスチック収集が完了したら、清浄なフィルタースクリーン41
を交換して他のエリアのサンプリング収集を行うか、収集装置を直接回収してサンプリン
グを完了することができる。
【0031】
本発明によって設計された収集装置は、係留設備を追加することにより、長期間海に浮か
ぶことができ、使用するとき清浄なフィルタースクリーン41を交換してから、海に戻す
ればよいため、オフショア環境におけるマイクロプラスチックの周期性監視装置として使
用され、研究者がサンプルを取るたびの準備作業を大幅に減らすことができる。
【0032】
実験例1
本実験例は、上記応用例中の使用方法を基礎として本発明のサンプル処理方式を説明する
ものであり、具体的な流れは以下の通りである。
S1:渤海トロールサンプル中の2つの収集点を選択し:点Aは沿岸に近く、約10km
であり、点Bは渤海の中央海域の近くにあり、沿岸から約70km離れる、
S2:A、Bの2つの収集点(20個収集装置)のトロールサンプルをそれぞれ採用し、
10mlを100mlハイタイプビーカー中に入る、
S2:飽和塩化ナトリウム塩溶液(真空吸引フィルター装置と2umフィルターで予備濾
過)を加え、一晩静置して上澄液を収集し、本実験で使用した消化試薬は30% H2O
2および65% HNO3体積比1:3の混合液であり、消化液体が透明になるまで、
S3:溶液が透明になった後超純水を加え、真空ポンプで吸引濾過し、超純水で塩を洗浄
し、吸引濾過された後の径が2 μmニトロセルロースフィルター膜を収集し、フィルタ
ー膜をガラス皿に置き、実体顕微鏡下に置きマイクロプラスチックを観察する、
S4:観察されたマイクロプラスチックを形態と色で分類し、プラグメント、粒子、繊維
およびフィルムの4つのタイプに分類できる。
【0033】
実験例2
実験例2は実験例1で調製されたサンプルを測定し、サンプル中のマイクロプラスチック
の関連パラメータを説明し、A収集点をA組とし、B収集点をB組とし、具体的なパラメ
ータは表1に示される。
【0034】
表1 A組、B組サンプル中のマイクロプラスチック関連パラメータ

【0035】
表1のデータから分かるように、A点のマイクロプラスチックは主に繊維からなり、B点
のマイクロプラスチックは主にフラグメントからなり、上記の違いの利用は次の通りであ
り:A点の収集装置はほとんど河口域にあり、その周辺には海水養殖場があり、漁網、釣
り糸が壊れると大量の繊維状マイクロプラスチックになり、つまり主に沿岸での人間の活
動によって引き起こされ、B点は人間の活動エリアから遠く離れ、海水中のマイクロプラ
スチックはほとんど海流によって引き起こされ、海水によって壊れたフラグメントのマイ
クロプラスチックの含有量が高い。
【0036】
実験例3
実験例3は実験例1で調製されたサンプルを測定し、サンプル中のマイクロプラスチック
の存在量を説明し、具体的に表2に示される。
【0037】
表2 A組、B組サンプル中のマイクロプラスチック存在量
【0038】
表2のデータから分かるように、A点のマイクロプラスチックの存在量がB組よりも高く
、A組、B組のマイクロプラスチック存在量の違いの理由は以下の通りであり:B点は海
路と海岸近くから遠く離れ、渤海の中央エリアに近いため、人間の活動による直接影響が
小さい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2020-09-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
浮力を提供するための浮力プレート(1)と、
前記浮力プレート(1)の中央部に配置され、上端が浮力プレート(1)の本体プレー
トと同じ高さで、海水を制限するための収集ボックス(3)と、
前記収集ボックス(3)内に配置され、垂直方向に摺動可能で、マイクロプラスチック
を収集するための収集ネット(4)と、
前記浮力プレート(1)の外縁に回転可能に接続され、前記収集ネット(4)に運動動
力を提供する駆動装置(2)と、
を含むことを特徴とするオフショア環境におけるマイクロプラスチックの収集装置。
【請求項2】
前記浮力プレート(1)は円筒形であり、
浮力プレート(1)中央部に配置され、前記収集ボックス(3)を取り付けるための収
容チャンバー(11)と、
浮力プレート(1)側面に配置された第1の摺動溝(12)と、
浮力プレート(1)頂面の外縁に配置された制限溝(14)と、
浮力プレート(1)頂面に開設され、前記収容チャンバー(11)と制限溝(14)の
間に位置する4つの第1のスロット(13)と、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の収集装置。
【請求項3】
前記駆動装置(2)は、
前記制限溝(14)を介して浮力プレート(1)側面に回転可能に接続された回転リング
(21)と、
前記回転リング(21)の内側面に開設され、第1の摺動溝(12)との間に複数の第1
のボール(212)が嵌設される第2の摺動溝(211)と、
前記回転リング(21)の底面であって、第2の摺動溝(211)の回転リング(21)
の中央軸に近接する側に設けられ、噛合歯が内側に向かう歯リング(213)と、
前記回転リング(21)の底面の下に接続され、底面に複数のインペラ(221)が設け
られた駆動リング(22)と、
前記回転リング(21)外側面に設けられたインフレータブルバッグ(23)と、
を含むことを特徴とする請求項2に記載の収集装置。
【請求項4】
前記収集ボックス(3)は上面と下面のない中空の立方体形状であり、
収集ボックス(3)の4つの側面の外壁の中央部に設けられた第1のスライドレール(3
11)と、
前記第1のスライドレール(311)の中央部に開設され収集ボックス(3)の側面を貫
通する第3のスロット(3111)と、
前記第1のスライドレール(311)内にスライダー(312)が摺動可能に接続され、
前記スライダー(312)の第1のスライドレール(311)から離れた一側に回転可能
に接続されたその変位を駆動するためのクランク(313)と、
前記クランク(313)のスライダー(312)から離れた一端に第2のベベルギア(3
131)が設けられ、前記第2のベベルギア(3131)が浮力プレート(1)内部に設
けられた第1のベベルギア(15)を介して歯リング(213)と配合して回転可能であ
り、
収集ボックス(3)内部の4つの側面の接続箇所に設けられ、第2のボール(321)が
摺動可能に設けられた第2のスライドレール(32)と、
を含むことを特徴とする請求項3に記載の収集装置。