(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022025263
(43)【公開日】2022-02-10
(54)【発明の名称】軸材と軸材取付対象部材との間の応力伝達機構
(51)【国際特許分類】
E04B 1/58 20060101AFI20220203BHJP
【FI】
E04B1/58 600F
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020127990
(22)【出願日】2020-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】000001317
【氏名又は名称】株式会社熊谷組
(74)【代理人】
【識別番号】100141243
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】増子 寛
【テーマコード(参考)】
2E125
【Fターム(参考)】
2E125AA01
2E125AA13
2E125AA53
2E125AB13
2E125AC14
2E125AE16
2E125AG12
2E125BB02
2E125CA03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】軸材が取付けられる軸材取付対象部材に対するめり込みを効果的に抑制できる軸材と軸材取付対象部材との間の応力伝達機構を提供する。
【解決手段】軸材2と軸材取付対象部材1との間の応力伝達機構は、軸材取付対象部材(木部材1)と、軸材取付対象部材に設けられた孔(貫通孔11)と、孔(貫通孔11)に取付けられた軸材2と、軸材2からの力を軸材取付対象部材(木部材1)の内部に伝達する力伝達手段(ねじ部材4,4…)とを備えた。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸材取付対象部材と、当該軸材取付対象部材に設けられた孔と、当該孔に取付けられた軸材と、当該軸材からの力を軸材取付対象部材の内部に伝達する力伝達手段とを備えたことを特徴とする軸材と軸材取付対象部材との間の応力伝達機構。
【請求項2】
力伝達手段は、軸材取付対象部材に設けられた孔の周面から軸材取付対象部材の内部まで延長するように設けられた棒状部材であることを特徴とする請求項1に記載の軸材と軸材取付対象部材との間の応力伝達機構。
【請求項3】
軸材取付対象部材と、当該軸材取付対象部材に設けられた孔と、当該孔の内側に設けられた軸受と、当該軸受の軸受孔に取付けられた軸材と、当該軸材からの力を軸受を介して軸材取付対象部材の内部に伝達する力伝達手段とを備えたことを特徴とする軸材と軸材取付対象部材との間の応力伝達機構。
【請求項4】
軸受は、軸受孔を有した内側軸受部材と、当該内側軸受部材の外周を囲むように設けられた外側軸受部材とを備えたことを特徴とする請求項3に記載の軸材と軸材取付対象部材との間の応力伝達機構。
【請求項5】
力伝達手段は、外側軸受部材の内周面から外側軸受部材を貫通して軸材取付対象部材の内部まで延長するように設けられた棒状部材であることを特徴とする請求項4に記載の軸材と軸材取付対象部材との間の応力伝達機構。
【請求項6】
内側軸受部材は、軸受孔を有した内側中央軸受部材と、当該内側中央軸受部材の左側に配置された左側軸受部材と、当該内側中央軸受部材の右側に配置された右側軸受部材とを備えたことを特徴とする請求項4に記載の軸材と軸材取付対象部材との間の応力伝達機構。
【請求項7】
力伝達手段は、内側中央軸受部材の左側面と接触する左側軸受部材の右側面から左側軸受部材及び外側軸受部材を貫通して軸材取付対象部材の内部まで延長するように設けられた左側棒状部材と、内側中央軸受部材の右側面と接触する右側軸受部材の左側面から右側軸受部材及び外側軸受部材を貫通して軸材取付対象部材の内部まで延長するように設けられた右側棒状部材とを備えたことを特徴とする請求項6に記載の軸材と軸材取付対象部材との間の応力伝達機構。
【請求項8】
力伝達手段は、内側軸受部材の表面と外側軸受部材の表面と軸材取付対象部材の表面とに跨るように設置された板材と、当該板材を内側軸受部材に固定したねじ部材と、当該板材を外側軸受部材に固定したねじ部材と、当該板材を軸材取付対象部材に固定したねじ部材とを備えたことを特徴とする請求項4又は請求項6に記載の軸材と軸材取付対象部材との間の応力伝達機構。
【請求項9】
軸受孔は、断面四角形の孔であり、
軸材は、軸受孔に内側に位置されて外周面が当該軸受孔の内周面と接触するよう当該軸受孔に取付けられた断面四角形の取付軸部と、当該取付軸部より軸受孔の外側に延長するように設けられた被取付軸部とを備え、
被取付軸部には、軸材に力を伝達する力伝達体が取付けられたことを特徴とする請求項3乃至請求項8のいずれか一項に記載の軸材と軸材取付対象部材との間の応力伝達機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸材と当該軸材が取付けられる軸材取付対象部材との間の応力伝達機構に関する。
【背景技術】
【0002】
軸材取付対象部材としての木質構造材に設けられた貫通孔にドリフトピン又はボルト等の軸材を貫通させて木質構造材と軸材とを結合する結合構造において、軸材が木質構造材にめり込むことを防止するために、軸材の外周面と貫通孔の周面との間に、木質構造材と同質の高強度木材製の補強材を設けて補強した構造が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そもそも、軸材が木質構造材にめり込む原因は木質構造材が軸材による支圧応力に耐えうる応力度を有していないために発生する。よって、めり込みを防止するためには木質構造材への支圧応力度を低減させることが効果的である。
しかしながら、特許文献1の構造では、軸材の外周面と補強材の内周面とが面接触しており、軸材による支圧応力は分散されることなく全て補強材の内周面に伝達されるため、軸材が補強材にめり込むことは避けることができない。また同様に、補強材の外周面と木質構造材の貫通孔の周面とが面接触しているので、補強材が木質構造材にめり込むことも十分予想される。
よって、特許文献1の構造では、補強材や木質構造材に対するめり込みを効果的に抑制できるものではない。
そこで、本発明は、軸材が取付けられる軸材取付対象部材に対するめり込みを効果的に抑制できる軸材と軸材取付対象部材との間の応力伝達機構を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る軸材と軸材取付対象部材との間の応力伝達機構は、軸材取付対象部材と、当該軸材取付対象部材に設けられた孔と、当該孔に取付けられた軸材と、当該軸材からの力を軸材取付対象部材の内部に伝達する力伝達手段とを備えたことを特徴とする。
力伝達手段は、軸材取付対象部材に設けられた孔の周面から軸材取付対象部材の内部まで延長するように設けられた棒状部材であることを特徴とする。
本発明に係る軸材と軸材取付対象部材との間の応力伝達機構によれば、軸材からの力を軸材取付対象部材の内部に伝達する力伝達手段を備えたので、軸材に伝達される力を軸材取付対象部材の内部にも伝達でき、軸材が取付けられる軸材取付対象部材に対するめり込みを効果的に抑制できる軸材と軸材取付対象部材との間の応力伝達機構を提供できる。
また、本発明に係る軸材と軸材取付対象部材との間の応力伝達機構は、軸材取付対象部材と、当該軸材取付対象部材に設けられた孔と、当該孔の内側に設けられた軸受と、当該軸受の軸受孔に取付けられた軸材と、当該軸材からの力を軸受を介して軸材取付対象部材の内部に伝達する力伝達手段とを備えたことを特徴とする。
軸受は、軸受孔を有した内側軸受部材と、当該内側軸受部材の外周を囲むように設けられた外側軸受部材とを備えたことを特徴とする。
また、力伝達手段は、外側軸受部材の内周面から外側軸受部材を貫通して軸材取付対象部材の内部まで延長するように設けられた棒状部材であることを特徴とする。
本発明に係る軸材と軸材取付対象部材との間の応力伝達機構によれば、軸材からの力を軸受を介して軸材取付対象部材の内部に伝達する力伝達手段を備えたので、軸材に伝達される力を軸材取付対象部材の内部にも伝達でき、軸材が取付けられる軸材取付対象部材に対するめり込みを効果的に抑制できる軸材と軸材取付対象部材との間の応力伝達機構を提供できる。
また、内側軸受部材は、軸受孔を有した内側中央軸受部材と、当該内側中央軸受部材の左側に配置された左側軸受部材と、当該内側中央軸受部材の右側に配置された右側軸受部材とを備えたことを特徴とする。
また、力伝達手段は、内側中央軸受部材の左側面と接触する左側軸受部材の右側面から左側軸受部材及び外側軸受部材を貫通して軸材取付対象部材の内部まで延長するように設けられた左側棒状部材と、内側中央軸受部材の右側面と接触する右側軸受部材の左側面から右側軸受部材及び外側軸受部材を貫通して軸材取付対象部材の内部まで延長するように設けられた右側棒状部材とを備えたことを特徴とする。
以上のように、内側軸受部材を、3つの部材に分けて構成すれば、各部材の加工性や取扱性等が向上するので、軸材取付対象部材と軸材との結合構造の組立性、加工精度等を向上できるようになる。
また、力伝達手段は、内側軸受部材の表面と外側軸受部材の表面と軸材取付対象部材の表面とに跨るように設置された板材と、当該板材を内側軸受部材に固定したねじ部材と、当該板材を外側軸受部材に固定したねじ部材と、当該板材を軸材取付対象部材に固定したねじ部材とを備えたことを特徴とするので、軸材に伝達される力を軸材取付対象部材の内部にも伝達でき、より大きな力に耐えることができる。即ち、軸材に伝達される力が、力伝達手段を構成するねじ部材と軸材取付対象部材との摩擦応力及びねじ部材のせん断力を組み合わせた力に変換されて軸材取付対象部材の内部にも伝達されることによって軸材取付対象部材に吸収されるので、軸材が取付けられる軸材取付対象部材に対するめり込みを効果的に抑制できる軸材と軸材取付対象部材との間の応力伝達機構を提供できる。
また、軸受孔は、断面四角形の孔であり、軸材は、軸受孔に内側に位置されて外周面が当該軸受孔の内周面と接触するよう当該軸受孔に取付けられた断面四角形の取付軸部と、当該取付軸部より軸受孔の外側に延長するように設けられた被取付軸部とを備え、被取付軸部には、軸材に力を伝達する力伝達体が取付けられたことを特徴とするので、力伝達体から軸材に力が伝達されると、当該力が、軸材の取付軸部の平面、軸受孔の平面を介して平面圧に分散されるとともに、力伝達手段を介して軸材取付対象部材の内部にも伝達されるため、軸材が取付けられる軸材取付対象部材に対するめり込みを効果的に抑制できる軸材と軸材取付対象部材との間の応力伝達機構を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】軸材と木部材(軸材取付対象部材)との間の応力伝達機構を採用した軸材と木部材との結合構造を示す正面図(実施形態1)。
【
図2】軸材と木部材との結合構造を示す断面図(実施形態1)。
【
図3】軸材と木部材との結合構造を示す分解斜視図(実施形態1)。
【
図4】軸材と木部材との結合構造を示す斜視図(実施形態1)。
【
図5】軸材と木部材との結合構造を示す正面図(実施形態2)。
【
図6】軸材と木部材との結合構造を示す分解斜視図(実施形態2)。
【
図7】軸材と木部材との結合構造を示す斜視図(実施形態2)。
【
図8】軸材と木部材との結合構造を示す正面図(実施形態4)。
【
図9】軸材と木部材との結合構造を示す正面図(実施形態5)。
【
図10】軸材と木部材との結合構造を示す正面図(実施形態6)。
【
図11】軸材と木部材との結合構造を示す正面図(実施形態6)。
【発明を実施するための形態】
【0007】
実施形態1
図1乃至
図4に示すように、実施形態1に係る軸材と軸材取付対象部材との間の応力伝達機構を採用した軸材と軸材取付対象部材との結合構造は、例えば、軸材取付対象部材としての木部材1と当該木部材1よりもヤング係数が大きい金属製の軸材2とを結合する結合構造である。
当該結合構造は、軸材取付対象部材としての木部材1と、木部材1に設けられた孔としての貫通孔11と、当該貫通孔11の内側に設けられた軸受3と、当該軸受3の軸受孔31に取付けられた軸材2と、当該軸材2からの力を軸受3を介して木部材1の内部に伝達する力伝達手段として機能する棒状部材としてのねじ部材4とを備えた結合構造である。
即ち、軸受3が、軸材2の外周面と貫通孔11の周面との間を塞ぐように設置されている。
【0008】
軸受3は、例えば、木部材1よりもヤング係数が大きい鋼材等の金属により形成される。
当該軸受3は、軸受孔31を有した内側軸受部材5と、内側軸受部材5の外周を囲むように設けられた外側軸受部材6とを備えて構成される。
【0009】
木部材1は、例えば、CLT(Cross Laminated Timber(直交集成板))又は集成材又はLVL(Laminated Veneer Lumber(単層積層材))又は無垢材等の木により形成された板状部材(木製パネル)である。
尚、CLTとは、農林水産省告示第3079号に規定されたように、「ひき板又は小角材(これらをその繊維方向を互いにほぼ平行にして長さ方向に接合接着して調整したものを含む。)をその繊維方向を互いにほぼ平行にして幅方向に並べ又は接着したものを、主としてその繊維方向を互いにほぼ直角にして積層接着し3層以上の構造を持たせた一般材」である。
即ち、CLTは、一般に、張り合わせる板の繊維方向が直交するように複数の板を張り合わせて構成された木材であり、直交集成板と呼ばれている。
また、集成材は、一般に、張り合わせる板の繊維方向が並行方向となるように複数の板を張り合わせて構成された木材である。
また、LVLは、一般に、複数の単板(ベニヤ)を、単板の繊維方向に平行に積層して接着した木材である。
【0010】
木部材1の貫通孔11は、例えば、貫通孔11の中心線(中心軸)20(
図2参照)と直交する断面が四角形の貫通孔に形成される。
内側軸受部材5及び外側軸受部材6は、例えば、厚さ寸法が木部材1の厚さ寸法と同じ板状部材により形成される。
【0011】
外側軸受部材6は、例えば、中心線(中心軸)が貫通孔11の中心線20と一致するように貫通孔11の内側に嵌め込まれる四角形の環状板材により形成される。
外側軸受部材6が貫通孔11の内側に嵌め込まれた場合に、当該外側軸受部材6を構成する四角形の環体の外周面が当該貫通孔11の周面と接触するように、外側軸受部材6の外周面の径寸法と貫通孔11の周面の径寸法とがほぼ同じ寸法に形成される。
【0012】
内側軸受部材5は、例えば、中心線(中心軸)が貫通孔11の中心線20と一致するように外側軸受部材6の内側に嵌め込まれる四角形の環状板材、即ち、中心線(中心軸)が貫通孔11の中心線20と一致する軸受孔31が四角形の板材の中央部に形成された四角形の環状板材により形成される。
内側軸受部材5が外側軸受部材6の内側に設けられた場合に、当該内側軸受部材5の外周面52と当該外側軸受部材6の内周面61とが対向又は接触するように、内側軸受部材5の外周面の径寸法と外側軸受部材6の内周面61の径寸法とが設定される。
【0013】
力伝達手段は、例えば、外側軸受部材6の内周面61から外側軸受部材6を貫通して木部材1の内部まで延長するように設けられた棒状部材であるねじ部材4としてのスクリューボルトにより構成される。
具体的には、力伝達手段は、例えば
図1に示すように、外側軸受部材6の内周面61の左側面から当該外側軸受部材6の外周面62の左側面に貫通するように形成されたねじ孔63を貫通して、木部材1にねじ込まれたねじ部材4としてのスクリューボルト、及び、当該外側軸受部材6の内周面61の右側面から当該外側軸受部材6の外周面62の右側面に貫通するように形成されたねじ孔63を貫通して、木部材1にねじ込まれたねじ部材4としてのスクリューボルトにより構成される。
即ち、力伝達手段は、周面にねじが形成された棒状部材であるねじ部材4としてのスクリューボルトにより構成され、当該スクリューボルトのねじ部が木部材1の内部にまで延長して、かつ、スクリューボルトの頭部頂面が、外側軸受部材6の内周面61の左側面や右側面と同一平面上に位置されるか、又は、外側軸受部材6の内周面61の左側面よりも若干左側にずれた位置や外側軸受部材6の内周面61の右側面よりも若干右側にずれた位置にくるように、ねじ孔63及び木部材1の内部に螺着される。
【0014】
つまり、外側軸受部材6の内周面61における左側面からスクリューボルト(ねじ部材4)を外側軸受部材6のねじ孔63にねじ込んでいくことによって、当該スクリューボルト(ねじ部材4)のねじ部の先端側が、外側軸受部材6のねじ孔63を貫通して、木部材1の貫通孔11の周面の左面から木部材1の内部にねじ込まれて締結される。
同様に、外側軸受部材6の内周面61における右側面からスクリューボルト(ねじ部材4)を外側軸受部材6のねじ孔63にねじ込んでいくことによって、当該スクリューボルト(ねじ部材4)のねじ部の先端側が、外側軸受部材6のねじ孔63を貫通して、木部材1の貫通孔11の周面の右面から木部材1の内部にねじ込まれて締結される。
例えば、
図1に示すように、木部材1の板面(表面)と外側軸受部材6の板面(表面)とが同一平面上に位置するように、上下方向に沿って間隔を隔てて複数本のねじ部材4,4…としてのスクリューボルトを締結して外側軸受部材6の左部分を木部材1に固定するとともに、上下方向に沿って間隔を隔てて複数本のねじ部材4,4…としてのスクリューボルトを締結して外側軸受部材6の右部分を木部材1に固定することによって、木部材1と外側軸受部材6とが接合される。
尚、ねじ部材4としてのスクリューボルトの必要本数は、外側軸受部材6の大きさに応じて決めればよい。
【0015】
そして、内側軸受部材5の外周面52と外側軸受部材6の内周面61とが対向又は接触するように、内側軸受部材5が外側軸受部材6の内側に設置され、内側軸受部材5と外側軸受部材6とが接合される。
例えば、内側軸受部材5の外周面52と外側軸受部材6の内周面61とが対向するように、内側軸受部材5が外側軸受部材6の内側に設置された状態において、外側軸受部材6の内周面61の左側面と内側軸受部材5の左側面とが高強度接着剤や高強度グラウト等により接合されるとともに、外側軸受部材6の内周面61の右側面と内側軸受部材5の右側面とが高強度接着剤や高強度グラウト等により接合された構成とする。
あるいは、内側軸受部材5の外周面と外側軸受部材6の内周面61とが接触するように、内側軸受部材5が外側軸受部材6の内側に設置された状態において、外側軸受部材6の板面(表面)と内側軸受部材5の板面(表面)とに跨るように設置された鋼板等の板材を、内側軸受部材5と外側軸受部材6とに固定したことにより、内側軸受部材5と外側軸受部材6とが接合された構成としてもよい。この場合、外側軸受部材6の前側板面(表面)と内側軸受部材5の前側板面(表面)とを鋼板等の板材を用いて接合するとともに、外側軸受部材6の後側板面(表面)と内側軸受部材5の後側板面(表面)とを鋼板等の板材を用いて接合することが好ましいが、外側軸受部材6及び内側軸受部材5の前側板面同士、外側軸受部材6及び内側軸受部材5の後側板面同士のうちの、少なくとも一方の板面同士が、鋼板等の板材を用いて接合されていればよい。
即ち、内側軸受部材5から外側軸受部材6への力の伝達、又は、外側軸受部材6から内側軸受部材5への力の伝達が、確実に行われるように、内側軸受部材5と外側軸受部材6とが接合される。
尚、鋼板等の板材を、内側軸受部材5と外側軸受部材6とに固定する固定手段としては、例えば、ねじ部材及び接着剤、あるいは、ねじ部材又は接着剤を用いればよい。
【0016】
また、外側軸受部材6の外周面62の角部と対応する貫通孔11の隅部、及び、内側軸受部材5の外周面52の角部と対応する外側軸受部材6の内周面61の隅部には、それぞれ、応力集中回避手段としてのリリースホール19,19…が形成されている(
図1参照)。
【0017】
内側軸受部材5の軸受孔31は、例えば、内側軸受部材5の板面の上下左右の中央側に形成されている。軸受孔31は、例えば、軸受孔31の中心線(中心軸)と直交する断面が四角形の貫通孔に形成される。
【0018】
内側軸受部材5の軸受孔31に内側に位置される軸材2の取付軸部21は、外周面が当該軸受孔31の内周面と接触する断面四角形の軸部に形成され、この取付軸部21の一方の端面から延長するように例えば断面円形の被取付軸部22が設けられる。
即ち、軸材2は、中心線が一致する断面四角形の取付軸部21と断面円形の被取付軸部22とを備えた軸材である。
【0019】
そして、
図2に示すように、内側軸受部材5の軸受孔31に内側に軸材2の取付軸部21を嵌め込んだ後に、当該取付軸部21の一方の端面より延長する被取付軸部22には、当該軸材2に力を伝達する力伝達体25を連結する。例えば、力伝達体25に形成された貫通孔26に被取付軸部22を貫通させる。
そして、取付軸部21の他方の端面より延長する他端軸部23の外周に形成されたねじ部にナット27を締結することにより、軸材2と内側軸受部材5とが連結されるとともに、被取付軸部22の先端側の外周に形成されたねじ部にナット28を締結することにより、軸材2と力伝達体25とが連結される。
【0020】
軸材2に取付けられて当該軸材2に力を伝達する力伝達体25は、例えば、木部材1としての壁板(壁パネル)の一部が建物の躯体に固定された構成において軸材2の被取付軸部22に揺動可能に連結された揺動体、木部材1としての壁板や梁材等を建物躯体に連結するための連結部材、木部材1同士を軸材2で連結する場合の木部材1等である。
例えば、上述した壁板と軸材2との結合構造と揺動体とを組み合わせた場合、制振壁を構成できる。
【0021】
即ち、軸受孔31は、断面四角形の孔であり、軸材2は、軸受孔31の内側に位置されて外周面が当該軸受孔31の内周面と接触するよう当該軸受孔31に取付けられた断面四角形の取付軸部21と、当該取付軸部21より軸受孔の外側に延長するように設けられた被取付軸部22とを備え、当該被取付軸部22には、軸材2に力を伝達する力伝達体25が取付けられる。
【0022】
以上のように構成された実施形態1に係る軸材取付対象部材としての木部材1と金属製の軸材2との結合構造によれば、軸材2の被取付軸部22に取付けられた力伝達体25から軸材2に力が伝達されると、当該力が、軸材2の取付軸部21の左側面、軸受孔31の左側面、内側軸受部材5の左側面、外側軸受部材6の左側面、貫通孔11の左面を介して平面圧に分散されるとともに、ねじ部材4としてのスクリューボルトと木部材1との摩擦応力に変換されて木部材1の内部に伝達されることによって木部材1に吸収されたり、あるいは、軸材2の取付軸部21の右側面、軸受孔31の右側面、内側軸受部材5の右側面、外側軸受部材6の右側面、貫通孔11の右面を介して平面圧に分散されるとともに、ねじ部材4としてのスクリューボルトと木部材1との摩擦応力に変換されて木部材1の内部に伝達されることによって木部材1に吸収される。
つまり、軸材2に伝達される力に起因して木部材1の貫通孔11の左面及び右面に加わる支圧応力の一部が、力伝達手段として機能するねじ部材4としてのスクリューボルトと木部材1との摩擦応力に変換されて木部材1の内部に伝達されることによって木部材1に吸収されるため、軸材2に伝達される力に起因して木部材1の貫通孔11の左面及び右面に加わる支圧応力を低減できるようになり、軸材2に伝達される力に起因する木部材1の貫通孔11の左面及び右面に対するめり込みを効果的に抑制できるようになる。
また、軸材2からの力を、木部材1の貫通孔11の左面及び右面だけではなく、ねじ部材4としてのスクリューボルトを介して木部材1の内部に伝達できるようになるので、ねじ部材4に相当する部材を備えずに、軸材からの力が木質構造材の貫通孔の周面に集中する特許文献1の構造と比較して、より大きな力に耐えることができる木部材1と軸材2との結合構造となる。
即ち、実施形態1に係る金属製の軸材2と軸材取付対象部材としての木部材1との間の応力伝達機構を採用した、軸材2と木部材1との結合構造によれば、軸材2からの力を、木部材1の貫通孔11の左面及び右面だけではなく、ねじ部材4としてのスクリューボルトを介して木部材1の内部に伝達できるように構成したので、軸材2、内側軸受部材5、外側軸受部材6を介して木部材1の貫通孔11の左面及び右面に伝達される支圧応力を低減できて、当該木部材1の貫通孔11の左面及び右面のめり込みを効果的に抑制できるようになり、より大きな力に耐えることができる木部材1と軸材2との結合構造を提供できる。
【0023】
また、外側軸受部材6を備えた構成としたので、力を内側軸受部材5の左右の側面を介して平面圧に分散できるとともに、左右のスクリューボルト(ねじ部材4)と木部材1とによる摩擦応力に変換できるようになり、力をより効率的に木部材1に吸収させることができる。
即ち、例えば、内側軸受部材5及び外側軸受部材6を左方向に押圧する力が当該内側軸受部材5に加わった場合、外側軸受部材6の左側に連結された
図1の左側のスクリューボルト(ねじ部材4,4…)が左方向に移動しようとする力による当該左側のスクリューボルト(ねじ部材4,4…)と木部材1との摩擦応力が得られるとともに、内側軸受部材5が外側軸受部材6により左方向に押圧されて外側軸受部材6の右側に連結された
図1の右側のスクリューボルト(ねじ部材4,4…)が左方向に移動しようとする力による当該右側のスクリューボルト(ねじ部材4,4…)と木部材1との摩擦応力が得られるようになる。
また、逆に、内側軸受部材5及び外側軸受部材6を右方向に押圧する力が当該内側軸受部材5に加わった場合、外側軸受部材6の右側に連結された
図1の右側のスクリューボルト(ねじ部材4,4…)が右方向に移動しようとする力による当該右側のスクリューボルト(ねじ部材4,4…)と木部材1との摩擦応力が得られるとともに、内側軸受部材5が外側軸受部材6により右方向に押圧されて外側軸受部材6の左側に連結された
図1の左側のスクリューボルト(ねじ部材4,4…)が右方向に移動しようとする力による当該左側のスクリューボルト(ねじ部材4,4…)と木部材1との摩擦応力が得られるようになる。
即ち、外側軸受部材6を備えたので、左側のスクリューボルト(ねじ部材4,4…)と木部材1との摩擦応力と右側のスクリューボルト(ねじ部材4,4…)と木部材1との摩擦応力とを同時に得ることができる。つまり、左右のスクリューボルト(ねじ部材4,4…)が同時に効くため、軸材2からの力が、木部材1の内部により多く伝達されて当該木部材1に吸収されることになり、相応に支圧応力が緩和されることになるため、当該木部材1の貫通孔11の左面及び右面のめり込み抑制効果がさらに向上する。
【0024】
さらに、木部材1の貫通孔11の周面と外側軸受部材6の外周面とが平面で接触する平面接触面に構成されたことで、力伝達体25から軸材2に伝達される力を平面圧に分散でき、木部材1の貫通孔11の周面に対する支圧応力を軽減できる。
また、軸材2と軸受孔31との接触面のすべてが平面に構成されたことで、軸材2から内側軸受部材5に対する支圧応力、又は、内側軸受部材5から軸材2に対する支圧応力を軽減できる。
また、内側軸受部材5と外側軸受部材6との対向面又は接触面のすべてが平面に構成されたことで、内側軸受部材5から外側軸受部材6に対する支圧応力、又は、外側軸受部材6から内側軸受部材5に対する支圧応力を軽減できる。
【0025】
即ち、実施形態1によれば、例えば力伝達体25から軸材2に伝達される力を、軸受3及び力伝達手段として機能する棒状部材としてのねじ部材4(例えばスクリューボルト)を介して軸材取付対象部材としての木部材1の内部にも伝達できるように構成したので、当該木部材1の貫通孔11の左面及び右面のめり込みを効果的に抑制できるようになり、より大きな力に耐えることができる軸材2と木部材1との結合構造を提供できるようになった。
【0026】
実施形態2
内側軸受部材は、
図5乃至
図7に示すように、軸受孔31を有した内側中央軸受部材7と、内側中央軸受部材7の左側に配置された左側軸受部材8と、内側中央軸受部材7の右側に配置された右側軸受部材9とを備えた構成の内側軸受部材5Aであってもよい。
尚、
図5乃至
図7において、実施形態1の
図1乃至
図4と同じ部分には同一符号を付しており、当該同じ部分の詳細な説明は省略する。
【0027】
内側軸受部材5Aを構成する内側中央軸受部材7、左側軸受部材8、右側軸受部材9は、例えば、それぞれ厚さ寸法が木部材1の厚さ寸法と同じ板状部材により形成される。
そして、左側軸受部材8の左側面と外側軸受部材6の内周面61の左面とが接触し、左側軸受部材8の上側面と外側軸受部材6の内周面61の上面とが接触し、かつ、左側軸受部材8の下側面と外側軸受部材6の内周面61の下面とが接触するように、左側軸受部材8が外側軸受部材6の内周面61の内側の左側に設置される。
また、右側軸受部材9の右側面と外側軸受部材6の内周面61の右面とが接触し、右側軸受部材9の上側面と外側軸受部材6の内周面61の上面とが接触し、かつ、右側軸受部材9の下側面と外側軸受部材6の内周面61の下面とが接触するように、右側軸受部材9が外側軸受部材6の内周面61の内側の右側に設置される。
【0028】
図5,
図6に示すように、力伝達手段は、例えば、左側軸受部材8の右側面から左側軸受部材8の左側面に貫通するように形成されたねじ孔81と、外側軸受部材6の内周面61の左側面から外側軸受部材6の外周面62の左側面に貫通するように形成されたねじ孔63とを貫通して、木部材1にねじ込まれたねじ部材4としてのスクリューボルト、及び、右側軸受部材9の左側面から右側軸受部材9の右側面に貫通するように形成されたねじ孔91と、外側軸受部材6の内周面61の右側面から外側軸受部材6の外周面62の右側面に貫通するように形成されたねじ孔63とを貫通して、木部材1にねじ込まれたねじ部材4としてのスクリューボルトにより構成される。
即ち、力伝達手段は、棒材の周面にねじが形成された棒状部材としてのねじ部材4である例えばスクリューボルトにより構成され、当該ねじ部材4のねじ部が木部材1の内部にまで延長して、かつ、ねじ部材4の頭部頂面が、左側軸受部材8の右側面や右側軸受部材9の左側面と同一平面上に位置されるか、又は、左側軸受部材8の右側面よりも若干左側にずれた位置や右側軸受部材9の左側面よりも若干右側にずれた位置にくるように、ねじ孔81,63やねじ孔91,63及び木部材1の内部に螺着される。
【0029】
つまり、外側軸受部材6の内周面61の内側の左側に設置された左側軸受部材8の右側面側から力伝達手段としてのスクリューボルト(ねじ部材4)をねじ孔81にねじ込んでいくことによって、当該スクリューボルト(ねじ部材4)のねじ部の先端側が、ねじ孔81、及び、外側軸受部材6のねじ孔63を貫通して、木部材1の貫通孔11の周面の左面から木部材1の内部にねじ込まれて締結される。
同様にして、外側軸受部材6の内周面の内側の右側に設置された右側軸受部材9の左側面側から力伝達手段としてのスクリューボルト(ねじ部材4)をねじ孔91にねじ込んでいくことによって、当該スクリューボルト(ねじ部材4)のねじ部の先端側が、ねじ孔91、及び、外側軸受部材6のねじ孔63を貫通して、木部材1の貫通孔11の周面の右面から木部材1の内部にねじ込まれて締結される。
例えば、
図5に示すように、木部材1の板面(表面)と外側軸受部材6の板面(表面)と左側軸受部材8の板面(表面)とが同一平面上に位置するように、上下方向に沿って間隔を隔てて複数本のねじ部材4,4…としてのスクリューボルトを締結することによって、外側軸受部材6の左部分及び左側軸受部材8が木部材1に固定され、同様に、木部材1の板面(表面)と外側軸受部材6の板面(表面)と右側軸受部材9の板面(表面)とが同一平面上に位置するように、上下方向に沿って間隔を隔てて複数本のねじ部材4,4…としてのスクリューボルトを締結することによって、外側軸受部材6の右部分及び右側軸受部材9が木部材1に固定される。
尚、ねじ部材4,4…としてのスクリューボルトの必要本数は、左側軸受部材8や右側軸受部材9の大きさに応じて決めればよい。
【0030】
そして、内側中央軸受部材7の上側面と外側軸受部材6の内周面61の上面とが接触し、内側中央軸受部材7の下側面と外側軸受部材6の内周面61の下面とが接触し、内側中央軸受部材7の左側面と左側軸受部材8の右側面とが対向又は接触し、内側中央軸受部材7の右側面と右側軸受部材8の左側面とが対向又は接触するように、内側中央軸受部材7が外側軸受部材6の内側に設置される。
即ち、内側中央軸受部材7と左側軸受部材8と右側軸受部材9とで構成された内側軸受部材5Aが、外側軸受部材6の内周面61の内側に設けられた場合に、当該内側軸受部材5Aの外周面が外側軸受部材6の内周面61と対向又は接触するように、内側軸受部材5Aの外周面の径寸法と外側軸受部材6の内周面61の径寸法とが設定される。
【0031】
尚、内側中央軸受部材7と左側軸受部材8とが接合され、かつ、内側中央軸受部材7と右側軸受部材9とが接合される。
例えば、内側中央軸受部材7の左側面と左側軸受部材8の右側面とが対向し、かつ、内側中央軸受部材7の右側面と右側軸受部材9の左側面とが対向するように、内側中央軸受部材7が設置された状態において、内側中央軸受部材7の左側面と左側軸受部材8の右側面とが高強度接着剤や高強度グラウト等により接合されるとともに、内側中央軸受部材7の右側面と右側軸受部材9の左側面とが高強度接着剤や高強度グラウト等により接合された構成とする。
あるいは、内側中央軸受部材7の左側面と左側軸受部材8の右側面とが接触し、かつ、内側中央軸受部材7の右側面と右側軸受部材9の左側面とが接触するように、内側中央軸受部材7が設置された状態において、内側中央軸受部材7の板面(表面)と左側軸受部材8の板面(表面)とに跨るように設置された鋼板等の板材を、内側中央軸受部材7と左側軸受部材8とに固定するとともに、内側中央軸受部材7の板面(表面)と右側軸受部材9の板面(表面)とに跨るように設置された鋼板等の板材を、内側中央軸受部材7と右側軸受部材9とに固定することによって、内側中央軸受部材7と左側軸受部材8と右側軸受部材9とが接合された構成としてもよい。この場合、内側中央軸受部材7の前側板面(表面)と左側軸受部材8や右側軸受部材9の前側板面(表面)とを鋼板等の板材を用いて接合するとともに、内側中央軸受部材7の後側板面(表面)と左側軸受部材8や右側軸受部材9の後側板面(表面)とを鋼板等の板材を用いて接合することが好ましいが、各部材7,8,9の前側板面同士、各部材7,8,9の後側板面同士のうちの、少なくとも一方の板面同士が、鋼板等の板材を用いて接合されていればよい。
即ち、内側中央軸受部材7から左側軸受部材8や右側軸受部材9への力の伝達、及び、左側軸受部材8や右側軸受部材9から内側中央軸受部材7への力の伝達が、確実に行われるように、内側中央軸受部材7と左側軸受部材8と右側軸受部材9とが接合される。
尚、鋼板等の板材を内側中央軸受部材7と左側軸受部材8とに固定する固定手段、鋼板等の板材を内側中央軸受部材7と右側軸受部材9とに固定する固定手段としては、例えば、ねじ部材及び接着剤、あるいは、ねじ部材又は接着剤を用いればよい。
【0032】
また、外側軸受部材6の外周面62の角部と対応する貫通孔11の隅部、左側軸受部材8の角部と対応する外側軸受部材6の内周面61の隅部、右側軸受部材9の角部と対応する外側軸受部材6の内周面61の隅部、内側中央軸受部材7の外周面の角部と対応する外側軸受部材6の内周面61には、それぞれ、応力集中回避手段としてのリリースホール19,19…が形成されている(
図5参照)。
【0033】
そして、
図6に示すように、内側中央軸受部材7の軸受孔31に内側に軸材2の取付軸部21を嵌め込んだ後に、当該取付軸部21の一方の端面より延長する被取付軸部22には、当該軸材2に力を伝達する力伝達体25を連結する。例えば、力伝達体25に形成された貫通孔26に被取付軸部22を貫通させる。
そして、取付軸部21の他方の端面より延長する他端軸部23の外周に形成されたねじ部にナット27を締結することにより、軸材2と内側中央軸受部材7とが連結されるとともに、被取付軸部22の先端側の外周に形成されたねじ部にナット28を締結することにより、軸材2と力伝達体25とが連結される(
図7参照)。
【0034】
実施形態2に係る金属製の軸材2と軸材取付対象部材としての木部材1との間の応力伝達機構を採用した、当該軸材2と木部材1との結合構造によれば、実施形態1と同様に、軸材2からの力を、木部材1の貫通孔11の左面及び右面だけではなく、ねじ部材4としてのスクリューボルトを介して木部材1の内部に伝達できるように構成したので、軸材2、内側中央軸受部材7と左側軸受部材8と右側軸受部材9とで構成された内側軸受部材5A、外側軸受部材6を介して木部材1の貫通孔11の左面及び右面に伝達される支圧応力を低減できて、当該木部材1の貫通孔11の左面及び右面のめり込みを効果的に抑制できるようになり、より大きな力に耐えることができる軸材2と木部材1との結合構造を提供できる。
さらに、実施形態2に係る軸材2と木部材1との結合構造によれば、内側軸受部材として、内側中央軸受部材7と左側軸受部材8と右側軸受部材9とに分けて構成された内側軸受部材5Aを用いたので、内側軸受部材が大型化した場合、軸材2と木部材1との結合構造の組立性、加工精度等を向上できるようになる。
即ち、実施形態1のように、内側軸受部材が1つの内側軸受部材5で構成される場合において、当該内側軸受部材5が大型化した場合は、当該内側軸受部材5の加工や取扱等が困難になる可能性があるが、実施形態2のように、内側軸受部材として、3つの部材7,8,9に分けて構成された内側軸受部材5Aを採用すれば、各部材7,8,9の加工性や取扱性等が向上するので、軸材2と木部材1との結合構造の組立性、加工精度等を向上できるようになる。
【0035】
実施形態3
実施形態1,2では、力伝達手段として機能する棒状部材として、スクリューボルト等のねじ部材4を用いた例を示したが、力伝達手段として鉄筋及びグラウト等により形成された棒状部材を用いてもよい。
例えば、木部材1の貫通孔11の周面から木部材1の内部に延長するように有底孔を形成するとともに、この有底孔と連通する貫通孔を、外側軸受部材6、又は、外側軸受部材6及び左側軸受部材8や外側軸受部材6及び右側軸受部材9に形成する。
そして、これら連通する貫通孔及び有底孔にグラウトを充填した後にグラウト内に鉄筋を挿入して鉄筋及びグラウトで構成された力伝達手段として機能する棒状部材を形成する。
あるいは、これら連通する貫通孔及び有底孔に鉄筋を挿入した後にこれら連通する貫通孔及び有底孔内にグラウトを充填して鉄筋及びグラウトで構成された力伝達手段として機能する棒状部材を形成する。
実施形態3によれば、例えば力伝達体25から軸材2に力が伝達されると、当該力が、鉄筋及びグラウトで構成された力伝達手段として機能する棒状部材と木部材1の有底孔の周面との摩擦応力に変換されて木部材1の内部にも伝達されることによって木部材1に吸収されるので、実施形態1,2と同様に、木部材1の貫通孔11の左面及び右面に伝達される支圧応力を低減できて、当該木部材1の貫通孔11の左面及び右面のめり込みを効果的に抑制できるようになり、より大きな力に耐えることができる軸材2と木部材1との結合構造を提供できる。
【0036】
実施形態4
実施形態1乃至3で説明した力伝達手段の代わりに、
図8に示すように、力伝達手段として、内側軸受部材5A,5の板面(表面)と外側軸受部材6の板面(表面)と木部材1の板面(表面)とに跨るように設置された板材としての鋼板等のカバープレート10と、当該カバープレート10を内側軸受部材5A(あるいは内側軸受部材5)に固定したねじ部材としての平ビス15と、当該カバープレート10を外側軸受部材6に固定したねじ部材としての平ビス15と、当該カバープレート10を木部材1に固定したねじ部材としてのスクリューボルト16とを備えた構成の力伝達手段4Aを用いてもよい。
この場合、内側軸受部材5A(あるいは内側軸受部材5)の前側板面(表面)と外側軸受部材6の前側板面(表面)と木部材1の前側板面(表面)とにカバープレート10を接合するとともに、内側軸受部材5A(あるいは内側軸受部材5)の後側板面(表面)と外側軸受部材6の後側板面(表面)と木部材1の後側板面(表面)とにカバープレート10を接合することが好ましいが、各部材5A(あるいは部材5),6,1の前側板面同士、各部材5A(あるいは部材5),6,1の後側板面同士のうちの、少なくとも一方の板面同士が、鋼板カバープレート10等の板材及び平ビス15、スクリューボルト16等のねじ部材を備えた構成の力伝達手段4Aを用いて接合されていればよい。
このように、板材とねじ部材とで構成された力伝達手段4Aを用いた実施形態4によれば、例えば力伝達体25から軸材2に力が伝達されると、当該力が、力伝達手段4Aを構成するスクリューボルト16と木部材1との摩擦応力及びスクリューボルト16のせん断力を組み合わせた力に変換されて木部材1の内部にも伝達されることによって木部材1に吸収されるので、木部材1の貫通孔11の周面に伝達される支圧応力を低減できて、当該木部材1の貫通孔11の周面のめり込みを効果的に抑制できるようになり、より大きな力に耐えることができる軸材2と木部材1との結合構造を提供できる。
【0037】
尚、上記では、内側軸受部材5や内側中央軸受部材7及び力伝達体25をナット27;28を用いて軸材2に取付けた例を示したが、軸材2の取付軸部21の外周面と軸受孔31の内周面とを高強度接着剤や高強度グラウト等により接合するとともに、軸材2の被取付軸部22の外周面と力伝達体25の貫通孔26の内周面とを高強度接着剤や高強度グラウト等により接合するようにしてもよい。
【0038】
また、外側軸受部材6を木材で形成してもよい。
【0039】
実施形態5
上述した実施形態1乃至4では、内側軸受部材5又は内側軸受部材5Aと外側軸受部材6とを備えて構成された軸受3及び力伝達手段を介して、軸材2からの力を軸材取付対象部材としての木部材1の内部に伝達するように構成された構造を例示したが、
図9に示すように、単一の軸受3及び力伝達手段(スクリューボルト等のねじ部材(棒状部材)4、あるいは、鉄筋及びグラウト等により形成された棒状部材、あるいは、板材とねじ部材とで構成された力伝達手段4A)を介して、軸材2からの力を軸材取付対象部材としての木部材1の内部に伝達するように構成された軸材と軸材取付対象部材との間の応力伝達機構を採用した軸材2と木部材1との結合構造としてもよい。
【0040】
実施形態5の場合、軸受3は、例えば、中心線(中心軸)が貫通孔11の中心線20と一致するように貫通孔11の内側に嵌め込まれる四角形の環状板材により形成される。
図9に示すように、軸受3が貫通孔11の内側に嵌め込まれた場合に、当該軸受3を構成する四角形の環体の外周面32が当該貫通孔11の周面と接触するように、軸受3の外形寸法と貫通孔11の径寸法とがほぼ同じ寸法に形成される。
力伝達手段として、例えば、周面にねじが形成されたスクリューボルト等のねじ部材(棒状部材)4を使用する場合、
図9に示すように、当該ねじ部材4のねじ部が木部材1の内部にまで延長して、かつ、ねじ部材4の頭部頂面が、木部材1の貫通孔11の左側面や右側面と同一平面上に位置されるように、当該ねじ部材4が木部材1の内部に螺着される。
【0041】
実施形態5によれば、外側軸受部材6を備えたことによる上述した特有の効果は得られないが、実施形態1乃至4と同様に、軸材2に伝達される力を、軸受3及び力伝達手段を介して木部材1の内部にも伝達できるように構成されているため、木部材1の貫通孔11の左面及び右面や周面に伝達される支圧応力を低減できて、当該木部材1の貫通孔11の左面及び右面や周面のめり込みを効果的に抑制できるようになり、より大きな力に耐えることができる軸材2と木部材1との結合構造を提供できるようになる。
【0042】
実施形態6
例えば、
図10,
図11に示すように、軸受3を設けないように構成された軸材と軸材取付対象部材との間の応力伝達機構を採用した軸材と軸材取付対象部材との結合構造としてもよい。
即ち、軸材取付対象部材としての例えば木部材1と、当該木部材1に設けられた貫通孔11と、当該貫通孔11に取付けられた軸材2と、当該軸材2からの力を木部材1の内部に伝達する力伝達手段とを備えた構成の応力伝達機構を採用した結合構造としてもよい。
【0043】
図10では、例えば木部材1に設けられた貫通孔11が断面四角形(例えば断面正四角形)の孔であり、軸材2は、当該貫通孔11の内側に位置されて外周面が当該貫通孔11の周面と接触するよう当該貫通孔11に取付けられた断面四角形の取付軸部21と、当該取付軸部21より貫通孔11の外側に延長するように設けられた被取付軸部22及び他端軸部23とを備え、当該被取付軸部22には、軸材2に力を伝達する力伝達体25が取付けられる構成において、力伝達手段として、木部材1に設けられた貫通孔11の周面から木部材1の内部まで延長するように設けられて貫通孔11の周面側に位置される頭部(端部)が軸材2の取付軸部21の周面と接触するように設けられた棒状部材であるねじ部材4を使用した構成を例示した。
尚、ねじ部材4は、貫通孔11内で工具等を用いて貫通孔11の周面から木部材1の内部にねじ込むことが可能な長さのものを用いればよい。
例えば、
図10に示すように、木部材1に設けられた断面四角形の貫通孔11の周面を形成する上下左右の面から木部材1の内部にそれぞれねじ部材4,4…をねじ込んで、これらねじ部材4の頭部頂面が、木部材1の貫通孔11の周面を形成する上下左右の面と同一平面上に位置されるように、当該ねじ部材4が木部材1の内部に螺着された構成とする。
尚、力伝達手段として、実施形態3で説明した鉄筋及びグラウト等により形成された棒状部材、実施形態4で説明した板材とねじ部材とで構成された力伝達手段4Aを用いてもかまわない。
実施形態4で説明した板材とねじ部材とで構成された力伝達手段4Aを用いる場合は、板材に軸材2の被取付軸部22や他端軸部23を通す貫通孔を形成して、当該軸材2の被取付軸部22や他端軸部23を板材の貫通孔に通した後に当該軸材2と当該板材とを溶接やねじ部材などで接合するとともに、木部材1の表面に沿うように配置された板材と木部材とをねじ部材で接合した構成とすればよい。
【0044】
図11では、木部材1に設けられた貫通孔11が断面円形(例えば断面正円形)の孔であり、軸材2は、当該貫通孔11の内側に位置されて外周面が当該貫通孔11の周面と接触するよう当該貫通孔11に取付けられた断面円形の軸材2である構成において、力伝達手段として、木部材1に設けられた貫通孔11の周面から木部材1の内部まで延長するように設けられて貫通孔11の周面側に位置される頭部(端部)が軸材2の周面と接触するように設けられた棒状部材であるねじ部材4を使用した構成を例示した。
尚、ねじ部材4は、貫通孔11内で工具等を用いて貫通孔11の周面から木部材1の内部にねじ込むことが可能な長さのものを用いればよい。
例えば、
図11に示すように、木部材1に設けられた断面円形の貫通孔11の周面から放射状に延長するように、貫通孔11の周面から木部材1の内部にそれぞれねじ部材4,4…をねじ込んで、これらねじ部材4の頭部頂面が、木部材1の貫通孔11の周面と同一面上に位置されるように、当該ねじ部材4,4…が木部材1の内部に螺着された構成とする。
尚、力伝達手段として、実施形態2で説明した鉄筋及びグラウト等により形成された棒状部材、実施形態4で説明した板材とねじ部材とで構成された力伝達手段4Aを用いてもかまわない。
実施形態4で説明した板材とねじ部材とで構成された力伝達手段4Aを用いる場合は、板材に軸材2を通す貫通孔を形成して、当該板材の貫通孔に通された軸材2と当該板材とを溶接などで接合するとともに、木部材1の表面に沿うように配置された板材と木部材とをねじ部材で接合した構成とすればよい。あるいは、板材に軸材2を通す貫通孔と当該貫通孔に連続する筒孔を設けるようにして、当該板材の貫通孔及び筒孔に通された軸材2と当該板材とを溶接などで接合したり、軸材2と筒孔とを溶接やねじ部材などで接合するとともに、木部材1の表面に沿うように配置された板材と木部材とをねじ部材で接合した構成とすればよい。
【0045】
尚、
図10,
図11においては、ねじ部材4の頭部頂面が、木部材1の貫通孔11の周面と同一平面上に位置されるように構成する例を説明したが、ねじ部材4の頭部頂面が、部材1の貫通孔11の周面より窪んだ位置に設置されるように、当該ねじ部材4をねじ込んだ後に、このねじ部材4の頭部頂面が底面となる窪み(凹部)に詰め物を充填して、この詰め物の貫通孔11側の表面が貫通孔11の周面と同一面上に位置されるように構成してもよい。
即ち、実施形態6において力伝達手段として機能する棒状部材は、木部材1の貫通孔11の周面から木部材1の内部まで延長するように設けられたねじ部材により形成された棒状部材、あるいは、木部材1の貫通孔11の周面から木部材1の内部まで延長するように設けられたねじ部材と詰め物等とで形成された棒状部材、あるいは、木部材1の貫通孔11の周面から木部材1の内部まで延長するように設けられた鉄筋とグラウト等とで形成された棒状部材等で構成されていればよい。
【0046】
実施形態6のように、軸受3を設けないように構成された軸材2と軸材取付対象部材としての木部材1との間の応力伝達機構を採用した軸材と軸材取付対象部材との結合構造であっても、軸材2に伝達される力を、力伝達手段を介して木部材1の内部にも伝達できるように構成されているため、木部材1の貫通孔11の周面に伝達される支圧応力を低減できて、当該木部材1の貫通孔11の周面のめり込みを効果的に抑制できるようになり、より大きな力に耐えることができる軸材2と木部材1との結合構造を提供できるようになる。
【0047】
尚、上述したような木部材1,1を所定の間隔を隔てて配置して、木部材1,1を連結する軸材2に力伝達体25を取付けるようにしてもよい。
【0048】
また、木部材1に形成する孔、軸受3に形成する軸受孔31、力伝達体25に形成する孔は、貫通孔ではなく、有底孔であってもよい。
【0049】
また、軸材取付対象部材は、木部材1以外の部材、例えば、金属により形成された部材、その他の材料により形成された部材であってもよい。
【0050】
また、実施形態1乃至5において、例えば、軸材取付対象部材、軸受、軸材のすべてが金属で形成された構成としたり、あるいは、軸材取付対象部材、軸受、軸材のすべてが木材で形成された構成としても良い。
【0051】
また、実施形態6において、例えば、軸材取付対象部材、軸材のすべてが金属で形成された構成としたり、あるいは、軸材取付対象部材、軸材のすべてが木材で形成された構成としても良い。
【0052】
1 木部材(軸材取付対象部材)、2 軸材、3 軸受、
4 ねじ部材(棒状部材(力伝達手段))、4A 力伝達手段、
5,5A 内側軸受部材、6 外側軸受部材、7 内側中央軸受部材、
8 左側軸受部材、9 右側軸受部材、10 カバープレート(板材)、
11 貫通孔(孔)、15 平ビス(ねじ部材)、
16 スクリューボルト(ねじ部材)、21 取付軸部、22 被取付軸部、
25 力伝達体。