(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022025276
(43)【公開日】2022-02-10
(54)【発明の名称】使用済み衛生用品処理装置
(51)【国際特許分類】
B09B 5/00 20060101AFI20220203BHJP
B09B 3/70 20220101ALI20220203BHJP
B02C 18/00 20060101ALI20220203BHJP
B01D 29/00 20060101ALI20220203BHJP
B01D 29/17 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
B09B5/00 Z ZAB
B09B3/00 304Z
B02C18/00 105A
B01D23/02 A
B01D29/30 501
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020128005
(22)【出願日】2020-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】593047552
【氏名又は名称】株式会社フロム工業
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100133592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100162259
【弁理士】
【氏名又は名称】末富 孝典
(74)【代理人】
【識別番号】100168114
【弁理士】
【氏名又は名称】山中 生太
(72)【発明者】
【氏名】河津 樹典
(72)【発明者】
【氏名】尾畑 宇喜雄
(72)【発明者】
【氏名】松岡 修一
【テーマコード(参考)】
4D004
4D065
4D116
【Fターム(参考)】
4D004AA06
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4D116TT01
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4D116VV19
(57)【要約】
【課題】使用済み衛生用品に含まれる吸水性高分子材料を、効率良く、物理的に捕集することができる使用済み衛生用品処理装置を提供する。
【解決手段】使用済み衛生用品処理装置1は、衛生用品6を破砕する破砕機2bと、破砕機2bで破砕された衛生用品6の砕片を、脱水和剤を含む水溶液とを混合して固液混合物を生成する混合漕2cと、混合漕2cから排出される固液混合物から固体成分を分離する脱水装置3と、脱水装置3において固液混合物から固体成分が分離された残余の排液を貯留する第1のタンク4と、脱水装置3において固液混合物から分離された固体成分を貯留する第2のタンク5と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用済み衛生用品を破砕する破砕手段と、
前記破砕手段で破砕された前記衛生用品の砕片を、脱水和剤を含む水溶液と混合して固液混合物を生成する固液混合物生成手段と、
前記固液混合物生成手段から排出される前記固液混合物から固体成分を分離する固液分離手段と、
前記固液分離手段において前記固液混合物から前記固体成分が分離された残余の排液を貯留する排液貯留槽と、
前記固液分離手段において前記固液混合物から分離された前記固体成分を貯留する固体成分貯留槽と、を備える、
使用済み衛生用品処理装置。
【請求項2】
前記排液貯留槽に貯留された前記排液の上層から、前記排液を外部に排出する排水管と、
前記排水管の上流に配置されて、前記排水管に向かって流れる前記排液に含まれる吸水性高分子材料を濾し取って、前記吸水性高分子材料を前記排液貯留槽内に留める濾し器と、を備える、
請求項1に記載の使用済み衛生用品処理装置。
【請求項3】
前記排液貯留槽に貯留された前記排液の上層から、前記排液の一部を前記固体成分貯留槽に移送する排液移送手段を備える、
請求項1又は請求項2に記載の使用済み衛生用品処理装置。
【請求項4】
前記排液貯留槽に貯留された前記排液の上層から、前記排液の一部を前記固液混合物生成手段に還流させる排液還流手段を備える、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の使用済み衛生用品処理装置。
【請求項5】
厨芥を破砕して水と混合して厨芥スラリを生成して、前記固液分離手段に排出する厨芥スラリ生成手段を備える、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の使用済み衛生用品処理装置。
【請求項6】
前記排液貯留槽に貯留された前記排液の上層から、前記排液の一部を前記厨芥スラリ生成手段に還流させる第2の排液還流手段を備える、
請求項5に記載の使用済み衛生用品処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用済み衛生用品処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、使い捨ての紙おむつと尿取りパッドが多用されている。一般的な紙おむつは、吸水性高分子材料と、吸水性高分子材料を支持するパルプ材と、パルプ材の外側を被覆するプラスチックを素材とする防水材とを備えている。一般的な尿取りパッドは、吸水性高分子材料を支持するパルプ材を備えている。紙おむつと尿取りパッドにおいて、パルプ材と防水材は、吸水性高分子材料を支持する支持材料として機能する。
【0003】
さて、本明細書においては、使い捨ての紙おむつと尿取りパッド等を総称して、「衛生用品」と呼ぶことにする。本来、衛生用品は、医療・介護など健康に関わる目的で製造・使用される資器材の総称であるが、本明細書においては、吸水性高分子材料と当該吸水性高分子材料を支持する支持材料を備えて、使い捨てされる衛生用品を、単に「衛生用品」と呼ぶことにする。つまり、以下においては、「衛生用品」を、「吸水性高分子材料と当該吸水性高分子材料を支持する支持材料とを備えて、医療・介護など健康に関わる目的で製造・使用されて、使い捨てされる資器材」を指す用語として使用する。
【0004】
前述したように、衛生用品は使い捨てにされる。使用済みの衛生用品の吸水性高分子材料には尿等が保持されていて、その除去が難しいからである。そして、従来は、使用済みの衛生用品は、一般廃棄物として焼却処分等がされていた。しかしながら、近年は、省資源、省エネルギーの観点から、使用済みの衛生用品のリサイクルが試みられている。また、使用済みの衛生用品をリサイクルするために、使用済みの衛生用品の吸水性高分子材料から尿等を分離して再使用可能にする方法と装置が、種々、提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、使用済みの衛生用品に含まれる吸水性高分子材料を再生する方法が記載されている。特許文献1に記載の方法は、使用済みの吸水性高分子材料を多価金属塩水溶液で処理する工程と、多価金属塩水溶液で処理した高吸水性高分子材料をアルカリ金属塩水溶液で処理する工程とを有している。特許文献1によれば、使用済みの吸水性高分子材料を多価金属塩水溶液で処理することによって、吸水性高分子材料に担持されていた水分が分離されるとされている。また、多価金属塩水溶液で処理された吸水性高分子材料をアルカリ金属塩水溶液で処理すると、吸水性高分子材料の吸水性が回復するとされている。また、特許文献1には、多価金属塩の具体例が多数例示されていて、その中でも、塩化カルシウムが特に好ましいとされている。
【0006】
特許文献2には、使用済み衛生用品にカルシウム化合物を含む水溶液を加えて化学的に処理した後に、使用済み衛生用品を物理的に破砕して、使用済み衛生用品から汚物と水分とパルプとプラスチック片と分離する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第5996226号公報
【特許文献2】特許第6656551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述したように、特許文献1に記載の方法によれば、使用済みの吸水性高分子材料を化学的に処理して、吸水性高分子材料に担持されていた水分を除去することができる。また、水分が除去された吸水性高分子材料を化学的に処理して給水能力を回復させることができる。しかしながら、特許文献1においては、使用済み衛生用品を物理的に分解して、パルプ材と吸水性高分子材料を分離する具体的な方法と装置については、説明されていない。また、吸水性高分子材料を物理的に捕集して回収する具体的な方法と装置については、説明されていない。
【0009】
特許文献2には、使用済み衛生用品を、石灰水を主体とする「分解水」に浸すことによって、使用済み衛生用品に含まれる吸水性高分子材料が「分解」されると記載されている(明細書第0036段落)。しかしながら、吸水性高分子材料を石灰水で処理しても、吸水性高分子材料が別の物質に変化することはない。吸水性高分子材料を石灰水で処理することによって、吸水性高分子材料に担持されていた水分は除去されるが、水分が除去された吸水性高分子材料は、依然として、「分解水」中に存在する。しかしながら、特許文献2においては、吸水性高分子材料を物理的に捕集して回収する具体的な方法と装置については、説明されていない。特許文献2に記載の装置においては、「分解水」中に含まれる吸水性高分子材料は、回収されることなく、「分解水」と共に、装置の外部に排出されると考えられる。
【0010】
このように、特許文献1及び特許文献2に記載の方法あるいは装置においては、使用済み衛生用品に含まれる吸水性高分子材料を、効率良く、物理的に捕集することが出来ないという問題がある。
【0011】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり。使用済み衛生用品に含まれる吸水性高分子材料を、効率良く、物理的に捕集することができる使用済み衛生用品処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明に係る使用済み衛生用品処理装置は、使用済み衛生用品を破砕する破砕手段と、破砕手段で破砕された衛生用品の砕片を、脱水和剤を含む水溶液と混合して固液混合物を生成する固液混合物生成手段と、固液混合物生成手段から排出される固液混合物から固体成分を分離する固液分離手段と、固液分離手段において固液混合物から固体成分が分離された残余の排液を貯留する排液貯留槽と、固液分離手段において固液混合物から分離された固体成分を貯留する固体成分貯留槽と、を備える。
【0013】
使用済み衛生用品処理装置は、排液貯留槽に貯留された排液の上層から、排液を外部に排出する排水管と、排水管の上流に配置されて、排水管に向かって流れる排液に含まれる吸水性高分子材料を濾し取って、吸水性高分子材料を排液貯留槽内に留める濾し器と、を備えても良い。
【0014】
使用済み衛生用品処理装置は、排液貯留槽に貯留された排液の上層から、排液の一部を固体成分貯留槽に移送する排液移送手段を備えても良い。
【0015】
使用済み衛生用品処理装置は、排液貯留槽に貯留された排液の上層から、排液の一部を固液混合物生成手段に還流させる排液還流手段を備えても良い。
【0016】
使用済み衛生用品処理装置は、厨芥を破砕して水と混合して厨芥スラリを生成して、固液分離手段に排出する厨芥スラリ生成手段を備えても良い。
【0017】
使用済み衛生用品処理装置は、排液貯留槽に貯留された排液の上層から、排液の一部を厨芥スラリ生成手段に還流させる第2の排液還流手段を備えても良い。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、固液分離手段において固液混合物から固体成分が分離された残余の排液を貯留する排液貯留槽を備えるので、排液に含まれる吸水性高分子材料を排液貯留槽において沈殿させることができる。排液貯留槽において沈殿した吸水性高分子材料を纏めて取り出すことは容易である。その結果、本発明によれば、使用済み衛生用品に含まれる吸水性高分子材料を、効率良く、物理的に捕集することができるので、使用済み衛生用品のリサイクルが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る使用済み衛生用品処理装置の構成を示す構成図である。
【
図2】本発明の第2の実施形態に係る使用済み衛生用品処理装置の構成を示す構成図である。
【
図3】本発明の第3の実施形態に係る使用済み衛生用品処理装置の構成を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る使用済み衛生用品処理装置1の構成を示す構成図である。
図1に示すように、使用済み衛生用品処理装置1は、破砕装置2と脱水装置3と第1のタンク4と第2のタンク5とを備えている。
【0021】
図1に示すように、破砕装置2はホッパ2aと破砕機2bと混合漕2cを備えている。後述するように、破砕装置2によれば、使用済み衛生用品6を破砕して砕片を生成することができる。また、破砕装置2によれば、生成された砕片を、脱水和剤を含む水溶液と混合して固液混合物を生成することができる。
【0022】
ホッパ2aは、使用済み衛生用品6を投入する投入口である。破砕装置2に投入された使用済み衛生用品6は、ホッパ2aを通って破砕機2bに導かれる。破砕機2bは本発明にかかる破砕手段の具体例であって、図示しない破砕刃と、破砕刃を回転駆動する図示しない電動機を備えている。破砕装置2に投入された使用済み衛生用品6は破砕刃によって破砕される。使用済み衛生用品6が破砕されて生じた砕片は破砕機2bの下方に配置された混合漕2c内に落下する。なお、ホッパ2aの上方には給水管2dが配置されている。給水管2dは図示しない給水設備に接続されて、ホッパ2aに水道水を注ぐ配管である。破砕機2bに使用済み衛生用品6が投下されると、破砕機2bには水道水が注入される。そのため、使用済み衛生用品6が破砕されて生じた砕片は、水道水と混合された状態で、破砕機2bから排出されて、混合漕2c内に落下する。
【0023】
また、
図1に示すように、混合漕2cには脱水和剤供給管2eが接続されている。脱水和剤供給管2eは脱水和剤タンク2fに接続されて、脱水和剤タンク2fに貯蔵された脱水和剤を混合漕2cに注ぐ配管である。また、脱水和剤タンク2fと脱水和剤供給管2eの間にはポンプ2gが配置されていて、脱水和剤は当該ポンプによって、混合漕2cに送給される。また、混合漕2cの内部に図示しない攪拌羽根を備えている。そのため、混合漕2cにおいては、給水管2dから注水される水道水と脱水和剤供給管2eから供給される脱水和剤とが混合されて、脱水和剤を含む水溶液が生成される。そして、混合漕2cにおいては、破砕機2bから落下する使用済み衛生用品6の砕片と、脱水和剤を含む水溶液とが混合されて、固液混合物が生成される。このように、混合漕2cは本発明に係る固液混合物生成手段として機能する。なお、混合漕2cで生成された固液混合物は、ポンプ2hによって加圧されて、固液混合物送給管2iを通って、脱水装置3に送給される。なお、脱水和剤は使用済み衛生用品6に含まれる吸水性高分子材料に作用して、当該吸水性高分子材料の水和性を失わせる物質の総称である。脱水和剤の具体例については後述する。
【0024】
脱水装置3はいわゆるスクリュー脱水機であって、本願発明に係る固液分離手段の具体例である。脱水装置3は、
図1に示すように、外筒3aと、外筒3aの内部に嵌装されたスクリュー3bを備えている。外筒3aの先端には押え蓋3cが取り付けられている。外筒3aの外周には図示しない小穴が多数、穿設されている。スクリュー3bは電動機3dによって回転駆動される。押え蓋3cは図示しないばね要素を介して外筒3aに取り付けられている。そして、押え蓋3cは、該ばね要素によって外筒3aの先端の開口を塞ぐ方向に付勢されている。また、外筒3aには固液混合物送給管2iが接続されていて、混合漕2cから送給される固液混合物は、外筒3aの内部に流入する。
【0025】
脱水装置3は、上記のように構成されているので、電動機3dを動作させてスクリュー3bを回転させると、外筒3aの内部に流入した固液混合物は外筒3aの先端に向かって圧送される。一方、前述したように、押え蓋3cは外筒3aの先端の開口を塞ぐ方向に付勢されているので、固液混合物はスクリュー3bと押え蓋3cの間で圧縮される。そのため、固液混合物に含まれる水分は外筒3aの外周に穿設された小穴から排出される。その結果、外筒3aの内部には、パルプ材を主成分とする固体成分8が残留する。外筒3aの内部に残留した固体成分8は、外筒3aの先端の開口から押し出されて、その後、排出シュート3fを通って、第2のタンク5に落下する。外筒3aの外周に穿設された小穴から排出される水分、つまり、固液混合物から固体成分8が分離された残余の排液7は、配管3eを通って、第1のタンク4に排出される。このように、脱水装置3は、本願発明に係る固液分離手段として機能する。
【0026】
第1のタンク4は、脱水装置3から排出された排液7を貯留するタンクであって、本願発明に係る排液貯留槽の具体例である。
図1に示すように、第1のタンク4は、その上部にパンチングスクリーン4aと排水管4bとシャワー装置4cを備えている。
【0027】
第2のタンク5は、脱水装置3から排出される固体成分8を貯留するタンクであって、本願発明に係る固体成分貯留槽の具体例である。
【0028】
次に、使用済み衛生用品処理装置1の作用を説明する。前述したように、使用済み衛生用品6は、ホッパ2aから投入される。また、ホッパ2aには給水管2dから水道水が注がれる。そして、使用済み衛生用品6と水道水はホッパ2aを通って、破砕機2bに導かれる。破砕機2bに導かれた使用済み衛生用品6は破砕されて砕片となって、水道水とともに、破砕機2bから排出されて、混合漕2c内に落下する。このように、使用済み衛生用品6の砕片と水道水の混合物が、混合漕2c内に落下する。
【0029】
前述したように、混合漕2c内には脱水和剤が注入されて、使用済み衛生用品6の砕片と水道水の混合物が脱水和剤と混合される。そのため、混合漕2c内においては、水道水と脱水和剤が混合されて脱水和剤の水溶液が調製され、脱水和剤の水溶液は使用済み衛生用品6の砕片と混合される。その結果、混合漕2c内においては、固液混合物が生成される。なお、本実施形態においては、塩化カルシウム溶液が脱水和剤として使用される。混合漕2c内において、使用済み衛生用品6に含まれる吸水性高分子材料が塩化カルシウムと接触すると、吸水性高分子材料は水和性を失う。そして、吸水性高分子材料に担持されていた水分は吸水性高分子材料から分離される。
【0030】
前述したように、脱水装置3においては、破砕装置2から送給される固液混合物に含まれる液体成分が絞り出されて、第1のタンク4に排出される。吸水性高分子材料は固体材料であるが、変形が容易なので、外筒3aの外周に穿設された小穴を通り抜けて、液体成分と共に、第1のタンク4に排出される。使用済み衛生用品6に付着した汚物の固体粒子も、粒径が小さいので、外筒3aの外周に穿設された小穴を通り抜けて、液体成分と共に、第1のタンク4に排出される。従って、脱水装置3から排出されて、第1のタンク4に貯留される排液7には、吸水性高分子材料と汚物に由来する固体粒子が含まれている。なお、本実施形態において、外筒3aの外周に穿設された小穴の孔径は約2mmにされている。孔径を前記のように設定することによって、パルプ材を外筒3aの中に残すとともに、吸水性高分子材料を外筒3aの外に絞り出すことができる。
【0031】
吸水性高分子材料は比重が大きいので、排液7が第1のタンク4において貯留されると、排液7中に混在する吸水性高分子材料は第1のタンク4の底部に沈殿する。一方、汚物に由来する固体粒子は比重が小さいので、第1のタンク4に貯留された排液7の上澄み液中にあって浮遊する。そして、汚物に由来する固体粒子は上澄み液とともに、パンチングスクリーン4aと排水管4bを通って、外部に排出される。なお、パンチングスクリーン4aは、液体成分中に混在する汚物に由来する固体粒子以外の固体を濾し取る手段である。パンチングスクリーン4aを備えることによって、吸水性高分子材料、パルプ材料あるいはプラスチック材料の破片が、外部に排出されることが防止される。そのため、パンチングスクリーン4aの孔径は、吸水性高分子材料等の粒径よりも小さくされている。本実施形態では、パンチングスクリーン4aの孔径を、約0.3mmにしている。このように、パンチングスクリーン4aは、排水管4bの上流に配置されて、排水管4bに向かって流れる排液に含まれる吸水性高分子材料を濾し取って、第1のタンク4内に留める濾し器として機能する。
【0032】
シャワー装置4cは、図示しない温水供給手段から供給される温水をパンチングスクリーン4aの外表面に向けて、噴射する装置である。また、第1のタンク4は、パンチングスクリーン4aの内側と外側において、槽内の水位を検出する図示しないセンサを備えている。そして、シャワー装置4cは、図示しない制御装置によって制御されて、パンチングスクリーン4aの内側と外側における水位の差異が所定の閾値を超えた場合に、温水をパンチングスクリーン4aの外表面に向けて噴射する。そのため、例えば、汚物に由来する固体粒子によってパンチングスクリーン4aに目詰まりが生じて、その結果、パンチングスクリーン4aの内外において水位差が生じた場合に、パンチングスクリーン4aを温水で洗浄して、目詰まりを解消することができる。このように、シャワー装置4cは、パンチングスクリーン4aの目詰まりを解消する目詰まり解消手段として機能する。
【0033】
以上のプロセスを経て、第1のタンク4の底部には、吸水性高分子材料が沈殿し、蓄積される。そのため、第1のタンク4の底部に溜まった吸水性高分子材料を、適宜、纏めて取り出すことできるので、吸水性高分子材料を効率よく回収することができる。なお、第1のタンク4に排出される排液7には、少量のパルプ材あるいはプラスチック材の破片が混在することがあるが、これらの破片は比重が小さいので、排液7の上層に浮遊する。そのため、第1のタンク4の底部に溜まった吸水性高分子材料を纏めて取り出す際に、これらの破片を事前に除去することは容易である。
【0034】
なお、使用済み衛生用品処理装置1の第1のタンク4から回収される吸水性高分子材料は、塩化カルシウムによる処理の結果、吸水性を失っている。しかしながら、回収後に、特許文献1に記載の処理を行えば、吸水性は回復する。すなわち、吸水性を失った吸水性高分子材料にアルカリ金属塩水溶液を作用させれば、吸水性高分子材料の吸水性は回復する。吸水性を回復した吸水性高分子材料は衛生用品の材料としてリサイクルすることができる。吸水性を回復した吸水性高分子材料は他の用途に転用することもできる。例えば、吸水性を回復した吸水性高分子材料を、農園芸用保水材、土木用保水材、食品用鮮度保持材、食品用ドリップ吸収材として利用することもできる。
【0035】
また、前述したように、脱水装置3において、固液混合物から液体成分が絞り出された後に残る固体成分8は、排出シュート3fを通って、第2のタンク5に落下する。なお、本実施の形態において、第2のタンク5に落下する固体成分8は、主として使用済み衛生用品6に由来するパルプ材料の砕片で構成される。また、固体成分8には、使用済み衛生用品6の外皮を構成するプラスチックフィルムの砕片が含まれる。
【0036】
第2のタンク5に落下した固体成分8は、第2のタンク5に貯留され、適宜、回収される。固体成分8の処分方法は、特に限定されないが、固体成分8の大部分はパルプ材で構成されているので、プラスチックフィルムの砕片等の異物を除去した上で、洗浄及び殺菌することによって、衛生用品の素材として再利用することができる。固体成分8から取り出されたパルプ材を製紙原料として再利用することもできる。固体成分8をバイオマス発電の燃料として利用することができる。
【0037】
図2は、本発明の第2の実施形態に係る使用済み衛生用品処理装置1の構成を示す図である。
図2に示すように、第2の実施形態に係る使用済み衛生用品処理装置1は、破砕装置2と脱水装置3と第1のタンク4と第2のタンク5に加えて、ディスポーザ付きシンク11を備える点で、第1の実施形態に係る使用済み衛生用品処理装置1と相違する。
【0038】
図2に示すように、ディスポーザ付きシンク11は、シンク11aとシンク11aの下方に配置されたディスポーザ11bと厨芥スラリ送給ポンプ11cを備えている。ディスポーザ11bはシンク11aから投下される厨芥を粉砕して水と混合して、厨芥スラリを生成する公知の装置であって、本願発明に係る厨芥スラリ生成手段の例示である。ディスポーザ11bで生成された厨芥スラリは、厨芥スラリ送給ポンプ11cで加圧されて、厨芥スラリ送給管11dを通って、脱水装置3に送給される。厨芥スラリは脱水装置3において脱水され、厨芥スラリ中の水分は、第1のタンク4に排出される。厨芥スラリから水分が除去された残り、つまり厨芥スラリ中の固体成分は、第2のタンク5に排出される。このように、第2の実施形態に係る使用済み衛生用品処理装置1によれば、前述した使用済み衛生用品の処理に加えて、厨芥スラリの脱水処理を行うことができる。
【0039】
また、
図2に示すように、第2の実施形態に係る使用済み衛生用品処理装置1は、排液還流手段12を備える。排液還流手段12は、第1のタンク4に貯留された液体成分の上澄み液の一部を、破砕装置2とディスポーザ11bに還流させる装置であって、本願発明に係る排液還流手段と第2の排液還流手段の具体例である。
図2に示すように、排液還流手段12は、第1及び第2の還流ポンプ12a,12bと第1及び第2の還流管12c,12dを備えている。第1の還流ポンプ12aで吸い上げられた上澄み液は第1の還流管12cを通って破砕装置2に還流される。第2の還流ポンプ12bで吸い上げられた上澄み液は第2の還流管12dを通って破砕装置2に還流される。このように、第2の実施形態に係る使用済み衛生用品処理装置1は、排液還流手段12を備えるので、第1のタンク4に貯留された液体成分の上澄み液の一部を、破砕装置2とディスポーザ11bに還流させることができる。そのため、破砕装置2とディスポーザ11bにおいて、注入される水道水の量を節減することができる。その結果、節水型の使用済み衛生用品処理装置1と厨芥処理装置が実現される。
【0040】
また、
図2に示すように、第2の実施形態に係る使用済み衛生用品処理装置1は、第1のタンク4に貯留された液体成分の上澄み液の一部を、第2のタンク5に移送する排液移送手段13を備える。排液移送手段13は、移送ポンプ13aと移送管13bを備えている。移送ポンプ13aで吸い上げられた上澄み液は移送管13bを通って第2のタンク5を移送される。このように、第2の実施形態に係る使用済み衛生用品処理装置1は、排液移送手段13を備えるので、脱水されて第2のタンク5に貯留された固体成分を、必要に応じて、再度、スラリ化することができる。固体成分を再スラリ化すれば、固体成分のバキュームカー14による吸引が容易になる。
【0041】
図3は、本発明の第3の実施形態に係る使用済み衛生用品処理装置1の構成を示す図である。
図3に示すように、第3の実施形態に係る使用済み衛生用品処理装置1の基本的な構成は、第2の実施形態に係る使用済み衛生用品処理装置1と同一である。第3の実施形態に係る使用済み衛生用品処理装置1の基本的な作用も、第2の実施形態に係る使用済み衛生用品処理装置1と同一である。しかしながら、第3の実施形態に係る使用済み衛生用品処理装置1は、パンチングスクリーン4aと排水管4bを備えない点で、第2の実施形態に係る使用済み衛生用品処理装置1と相違する。
【0042】
第3の実施形態に係る使用済み衛生用品処理装置1においては、破砕装置2とディスポーザ11bに、所定量の水道水が注水された後で、水道水の注水を停止する。そして、その後は、排液還流手段12を動作させて、第1のタンク4に貯留された排液を、破砕装置2及びディスポーザ11bとの間で循環させて運転を続ける。このような動作を行うので、第1のタンク4における水位の上昇は抑制される。そのため、第3の実施形態に係る使用済み衛生用品処理装置1においては、パンチングスクリーン4aと排水管4bを必要としない。また、第3の実施形態に係る使用済み衛生用品処理装置1によれば、第2の実施形態に係る使用済み衛生用品処理装置1に比べて、水道水の使用量が節減される。
【0043】
なお、第3の実施形態に係る使用済み衛生用品処理装置1において、第1のタンク4に吸水性高分子材料が溜まって、第1のタンク4の水位が限界に達した場合には、吸水性高分子材料を回収除去する。吸水性高分子材料が回収除去されると、第1のタンク4の水位が低下するので、使用済み衛生用品6の処理を続けることができる。
【0044】
以上、説明したように、第1~3の実施形態に係る使用済み衛生用品処理装置1によれば、破砕装置2と脱水装置3において使用済み衛生用品6から吸水性高分子材料を物理的に分離することができる。使用済み衛生用品6から分離された吸水性高分子材料は第1のタンク4に底部に沈殿して蓄積される。そのため、第1のタンク4に底部に蓄積された吸水性高分子材料を、適宜、纏めて取り出すことができる。このように、使用済み衛生用品処理装置1によれば、使用済み衛生用品6から吸水性高分子材料を分離するとともに、分離された吸水性高分子材料を効率良く捕集して回収することができる。その結果、使用済み衛生用品6のリサイクルが容易になる。
【0045】
第2,3の実施形態に係る使用済み衛生用品処理装置1は、ディスポーザ付きシンク11を備えるので、ディスポーザ付きシンク11から排出される厨芥を脱水回収する装置としても機能する。
【0046】
なお、第1~3の実施形態においては、脱水和剤として、塩化カリウムを例示したが、本発明の技術的範囲は、塩化カリウムを脱水和剤として使用するものには限定されない。脱水和剤は、塩化カリウム以外の多価金属塩、例えば、硝酸カルシウム、塩化マグネシウム、硝酸マグネシウム、水酸化カルシウム等であっても良い。脱水和剤は、各種の鉄塩、コバルト塩、ニッケル塩、銅塩、あるいは、乳酸鉄、酢酸コバルト、ステアリン酸コバルト、酢酸ニッケル、酢酸銅等の有機酸塩類であっても良い。そもそも、脱水和剤は、吸水性高分子材料に作用して、当該吸水性高分子材料の水和性を失わせる物質であれば十分であり、多価金属塩あるいは金属塩には限定されない。
【0047】
また、第1~3の実施形態に示した使用済み衛生用品処理装置1の機械的構成、特に、破砕装置2、脱水装置3及びディスポーザ付きシンク11の機械的構成は例示である。本願発明の技術的範囲は、これらの例示された機械的構成によっては限定されない。
【0048】
第1~3の実施形態においては、使用済み衛生用品の破砕と、固液混合物の生成を、異なる場所で行う例を示した。すなわち、破砕手段として破砕機2bを、固液混合物生成手段として混合漕2cを、それぞれ備える例を示した。しかしながら、本発明の技術的範囲は、使用済み衛生用品の破砕と、固液混合物の生成を、異なる場所で行うものには限定されない。使用済み衛生用品の破砕と固液混合物の生成を、同じ場所で同時に行うようにしても良い。例えば、破砕機2bに水道水と脱水和剤を投入して、破砕機2bにおいて、使用済み衛生用品6の破砕と固液混合物の生成を同時に行うようにしても良い。
【0049】
第1~3の実施形態においては、水道水と脱水和剤を別個に供給して、混合漕2cにおいて脱水和剤の水溶液が調製される例を示した。しかしながら、本発明の技術的範囲は、水道水と脱水和剤が別個に供給されるものには限定されない。水道水と脱水和剤を予め混合して、脱水和剤の水溶液を調製しても良い。例えば、事前に調製された脱水和剤の水溶液を破砕機2bに投入するようにしても良い。
【0050】
使用済み衛生用品処理装置1における処理の過程において、脱水和剤の水溶液、固液混合物あるいは排液に、他の物質を添加することは任意である。例えば、使用済み衛生用品処理装置1のいずれかの部位に、処理対象に消臭あるいは消毒を目的とする物質を添加する手段を設けることは任意である。
【0051】
第1~3の実施形態に示した使用済み衛生用品処理装置1に、例示されていない構成要素を追加することは任意である。例えば、使用済み衛生用品6を搬送して破砕装置2に投下する搬送装置を使用済み衛生用品処理装置1に追加しても良い。吸水性高分子材料を第1のタンク4から搬出する搬出装置、あるいはパルプ材を第2のタンク5から搬出する搬出装置を、使用済み衛生用品処理装置1に追加しても良い。あるいは、使用済み衛生用品処理装置1の構成要素をそれぞれ制御して、使用済み衛生用品処理装置1の自動運転を実現する制御装置を備えても良い。また、あるいは、第1のタンク4及び第2のタンク5の重量を計測する重量計を備えて、各タンクの重量が基準値を超えた場合に、搬出装置を動作させて、吸水性高分子材料あるいはパルプ材を搬出するようにしても良い。
【0052】
上記において、本願発明の処理対象である衛生用品の具体例として、紙おむつと尿取りパッドを例示したが、衛生用品は紙おむつと尿取りパッドには限定されない。本願発明の処理対象である衛生用品には、医療・介護など健康に関わる目的で製造・使用される資器材であって、吸水性高分子材料と当該吸水性高分子材料を支持する支持材料とを備える各種の資器材が広く包含される。なお、上記において、支持材料の具体例として、パルプ材とプラスチックフィルムを例示したが、支持材料はパルプ材とプラスチックフィルムには限定されない。支持材料は吸水性高分子材料を支持する機能を備えていれば十分であり、その材質は限定されない。支持材料は複数の材料で構成されていても良いし、単一の材料で構成されていても良い。
【0053】
以上、本願発明の応用変形例を説明したが、本願発明の応用あるいは変形される範囲はこれらには限定されない。本願発明は、特許請求の範囲に記載の技術的思想の限りにおいて、自由に、応用変形あるいは改良して実施することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 使用済み衛生用品処理装置、2 破砕装置、2a ホッパ、2b 破砕機、2c 混合漕、2d 吸水管、2e 脱水和剤供給管、2f 脱水和剤タンク、2g ポンプ、2h ポンプ、2i 固液混合物送給管、3 脱水装置、3a 外筒、3b スクリュー、3c 押え蓋、3d 電動機、3e 配管,3f 排出シュート 4 第1のタンク、4a パンチングスクリーン、4b 排水管、4c シャワー装置、5 第2のタンク、6 使用済み衛生用品、7 排液、8 固体成分、11 ディスポーザ付きシンク、11a シンク、11b ディスポーザ、11c 厨芥スラリ送給ポンプ、11d 厨芥スラリ送給管、12 排液還流手段、12a 第1の還流ポンプ、12b第2の還流ポンプ、12c 第1の還流管、12d 第2の還流管、13 排液移送手段、13a 移送ポンプ、13b 移送管、14 バキュームカー