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特開2022-25303気流測定装置、気流測定方法及び気流測定プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022025303
(43)【公開日】2022-02-10
(54)【発明の名称】気流測定装置、気流測定方法及び気流測定プログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 5/232 20060101AFI20220203BHJP
   H04N 5/225 20060101ALI20220203BHJP
   G01P 5/20 20060101ALI20220203BHJP
   G01P 13/00 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
H04N5/232 290
H04N5/225 600
G01P5/20 F
G01P13/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020128045
(22)【出願日】2020-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】515086908
【氏名又は名称】株式会社トヨタプロダクションエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】110002516
【氏名又は名称】特許業務法人白坂
(72)【発明者】
【氏名】石田 雄貴
【テーマコード(参考)】
2F034
5C122
【Fターム(参考)】
2F034AA02
2F034AB01
2F034DA15
2F034DB14
5C122DA13
5C122EA01
5C122FA17
5C122FH09
5C122FH10
5C122FH12
5C122FH21
5C122GA23
5C122GC52
5C122GG05
5C122GG21
5C122HA88
5C122HB01
5C122HB02
(57)【要約】
【課題】気流の計測領域内の動体の影響を除去した気流解析可能な気流測定装置、気流測定方法及び気流測定プログラムを提供する。
【解決手段】動体を含む気流を観測する領域にパルス光を照射するレーザ光源装置と、領域を動画撮影するカメラと、パルス光と露光のタイミングとを制御する制御部と、動画データに基づいて動体の動作範囲を検出する検出部と、少なくとも動作範囲を含む範囲の画像をマスキングするマスクデータを生成する第1生成部と、マスクデータ及び動画データに基づいて気流を解析する動画データを生成する第2生成部と、気流の解析を行う解析部とを備え、レーザ光源装置は、カメラが撮影する際に、連続する2以上のフレームの露光時間内にパルス光を1回照射し、かつ、連続する2以上のフレームのうち少なくとも1つのフレームの露光時間内にはパルス光を照射しない。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動体を含む気流を観測する領域にパルス光を照射するレーザ光源装置と、
前記領域を撮影するカメラと、
前記レーザ光源装置が前記パルス光を照射するタイミングと、前記カメラの露光タイミングとを制御する制御部と、
前記カメラによって撮影された動画データを受信する受信部と、
前記動画データを記憶する記憶部と、
前記動画データに基づいて前記動体の動作範囲を検出する検出部と、
少なくとも前記動作範囲を含む範囲の画像をマスキングするためのマスクデータを生成する第1生成部と、
前記マスクデータ及び前記動画データに基づいて前記気流を解析するための動画データを生成するための第2生成部と、
前記気流を解析するための動画データに基づいて前記気流の解析を行う解析部と
を備え、前記レーザ光源装置の前記パルス光の照射時間は、前記動画データの各フレームを撮影するための露光時間と比較して短く、
前記レーザ光源装置は、前記カメラが撮影する際に、連続する2以上のフレームの露光時間内に前記パルス光を1回照射し、かつ、前記連続する2以上のフレームのうち少なくとも1つのフレームの露光時間内には前記パルス光を照射しないことを特徴とする気流測定装置。
【請求項2】
前記レーザ光源装置は、前記動画データのそれぞれのフレームの、一つ置きのフレームのそれぞれの露光時間内に1回となるように前記パルス光を照射することを特徴とする請求項1に記載の気流測定装置。
【請求項3】
前記レーザ光源装置の前記パルス光の照射時間は1回の非露光時間よりも長く、前記レーザ光源装置は、前記動画データのそれぞれのフレームの、連続する3以上のフレームの露光時間内に1回となるように前記パルス光を照射することを特徴とする請求項1に記載の気流測定装置。
【請求項4】
前記第2生成部は、前記動画データに対して前記マスクデータを用いてマスク処理を行い、前記動画データのうち、前記レーザ光源装置によって前記パルス光を照射したフレームと、前記パルス光を照射したフレームの前後の前記パルス光を照射しないフレームとの差分を取ることで前記気流を解析するための動画データを生成することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の気流測定装置。
【請求項5】
前記パルス光を照射したフレームの前後の前記パルス光を照射しないフレームとの差分を取ることは、n番目のフレームと、n-1番目のフレームの前記パルス光を照射しないフレーム又はn+1番目のフレームの前記パルス光を照射しないフレームとの差分を取ることを特徴とする請求項4に記載の気流測定装置。
【請求項6】
前記パルス光を照射したフレームの前後の前記パルス光を照射しないフレームとの差分を取ることは、n番目のフレームと、n-1番目のフレームの前記パルス光を照射しないフレームとn+1番目のフレームの前記パルス光を照射しないフレームの平均値との差分を取ることを特徴とする請求項4に記載の気流測定装置。
【請求項7】
前記第2生成部は、前記マスク処理を行ったのち、前記差分を取ることを特徴とする請求項4乃至6のいずれかに記載の気流測定装置。
【請求項8】
前記第2生成部は、前記差分を取ったのち、前記マスク処理を行うことを特徴とする請求項4乃至6のいずれかに記載の気流測定装置。
【請求項9】
前記レーザ光はシートレーザであることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の気流測定装置。
【請求項10】
カメラで動体を含む気流を観測する領域を動画撮影し、前記カメラの連続する2以上のフレームの露光時間内に1回となるように、かつ前記連続する2以上のフレームのうち少なくとも1つのフレームの露光時間内にはパルス光が含まれないように、前記領域に前記パルス光を照射するステップと、
前記カメラによって撮影された動画データを受信するステップと、
前記動画データを記憶するステップと、
前記動画データに基づいて前記動体の動作範囲を検出するステップと、
前記動作範囲と同じ、又は前記動作範囲よりも広い範囲の画像をマスキングするためのマスクデータを生成するステップと、
前記マスクデータ及び前記動画データに基づいて前記気流を解析するための動画データを生成するステップと、
前記気流を解析するための動画データに基づいて前記気流の解析を行うステップと
を備え、前記パルス光の照射時間は、前記動画データのそれぞれのフレームのそれぞれの露光時間と比較して短い時間よりも長いことを特徴とする気流測定方法。
【請求項11】
コンピュータに、
カメラで動体を含む気流を観測する領域を動画撮影し、前記カメラの連続する2以上のフレームの露光時間内に1回となるように、かつ前記連続する2以上のフレームのうち少なくとも1つのフレームの露光時間内にはパルス光が含まれないように、前記領域に前記パルス光を照射する手順と、
前記カメラによって撮影された動画データを受信する手順と、
前記動画データを記憶する手順と、
前記動画データに基づいて前記動体の動作範囲を検出する手順と、
前記動作範囲と同じ、又は前記動作範囲よりも広い範囲の画像をマスキングするためのマスクデータを生成する手順と、
前記マスクデータ及び前記動画データに基づいて前記気流を解析するための動画データを生成する手順と、
前記気流を解析するための動画データに基づいて前記気流の解析を行う手順と
を備え、前記パルス光の照射時間は、前記動画データのそれぞれのフレームのそれぞれの露光時間と比較して短いことを実行させるための気流測定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気流測定装置、気流測定方法及び気流測定プログラムに関し、特に、観測領域に動体を含むときの気流測定装置、気流測定方法及び気流測定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
気流の流動状態を測定する方法として、気流にレーザ光を照射し、空気中のチリ等でレーザ光を散乱させ、散乱光をカメラを用いて撮影することで気流の向きや速度を測定する粒子画像流速測定法(Particle Image Velocimetry、PIV)という方法が知られている。
【0003】
気流を計測する領域内には、ロボットや作業対象物等が動作している場合がある。PIVにより散乱光をカメラを用いて撮影する際に、動作するロボットや作業対象物が画像に含まれると、ロボットや作業対象物の動作が気流と誤認され、正確な気流の解析が困難になる場合がある。従って、気流を計測するにあたって、このようなロボットや作業対象物の動作を気流の流れと区別する必要がある。ここで、移動する物体を検出する方法としては、例えば、特許文献1には、物体が記録される動画データにつき、過去の複数の画像を平均化することにより、物体の情報を取り除いた背景画像(標準画像)を生成する技術が開示されている。さらに、特許文献1には、動画データに基づく画像から背景画像(標準画像)を減算することにより、物体の画像を取得する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4-67276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、ロボットや作業対象物の動作が常にパターン化されている場合、レーザ光を照射せずにロボットや作業対象物の動作パターンを予め撮影し、PIVにより気流の解析を行う際に、ロボットや作業対象物の動作パターンを考慮して気流を解析する方法が考えられる。しかしながら、ロボットや作業対象物の動作がパターン化されていない場合は、こういった方法で気流を解析することが出来ない。
【0006】
上記問題点を鑑み、本発明は、PIVにより気流の解析を行う際に、気流を計測する領域内に位置する動体の影響を除去した気流の解析を実施可能な気流測定装置、気流測定方法及び気流測定プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、動体を含む気流を観測する領域にパルス光を照射するレーザ光源装置と、領域を撮影するカメラと、レーザ光源装置がパルス光を照射するタイミングと、カメラの露光タイミングとを制御する制御部と、カメラによって撮影された動画データを受信する受信部と、動画データを記憶する記憶部と、動画データに基づいて動体の動作範囲を検出する検出部と、少なくとも動作範囲を含む範囲の画像をマスキングするためのマスクデータを生成する第1生成部と、マスクデータ及び動画データに基づいて気流を解析するための動画データを生成するための第2生成部と、気流を解析するための動画データに基づいて気流の解析を行う解析部とを備え、レーザ光源装置のパルス光の照射時間は、動画データの各フレームを撮影するための露光時間と比較して短く、レーザ光源装置は、カメラが撮影する際に、連続する2以上のフレームの露光時間内にパルス光を1回照射し、かつ、連続する2以上のフレームのうち少なくとも1つのフレームの露光時間内にはパルス光を照射しないことを要旨とする。
【0008】
本発明の第1の態様において、レーザ光源装置は、動画データのそれぞれのフレームの、一つ置きのフレームのそれぞれの露光時間内に1回となるようにパルス光を照射してもよい。
【0009】
本発明の第1の態様において、レーザ光源装置のパルス光の照射時間は1回の非露光時間よりも長く、レーザ光源装置は、動画データのそれぞれのフレームの、連続する3以上のフレームの露光時間内に1回となるようにパルス光を照射してもよい。
【0010】
本発明の第1の態様において、第2生成部は、動画データに対してマスクデータを用いてマスク処理を行い、動画データのうち、レーザ光源装置によってパルス光を照射したフレームと、パルス光を照射したフレームの前後のパルス光を照射しないフレームとの差分を取ることで気流を解析するための動画データを生成してもよい。
【0011】
本発明の第1の態様において、パルス光を照射したフレームの前後のパルス光を照射しないフレームとの差分を取ることは、n番目のフレームと、n-1番目のフレームのパルス光を照射しないフレーム又はn+1番目のフレームのパルス光を照射しないフレームとの差分を取ることでもよい。
【0012】
本発明の第1の態様において、パルス光を照射したフレームの前後のパルス光を照射しないフレームとの差分を取ることは、n番目のフレームと、n-1番目のフレームの前記パルス光を照射しないフレームとn+1番目のフレームの前記パルス光を照射しないフレームの平均値との差分を取ることでもよい。
【0013】
本発明の第1の態様において、第2生成部は、マスク処理を行ったのち、差分を取ってよい。
【0014】
本発明の第1の態様において、第2生成部は、差分を取ったのち、マスク処理を行ってよい。
【0015】
本発明の第1の態様において、レーザ光はシートレーザであってよい。
【0016】
本発明の第2の態様は、気流測定方法であって、カメラで動体を含む気流を観測する領域を動画撮影し、連続する2以上のフレームの露光時間内に1回となるように、かつ連続する2以上のフレームのうち少なくとも1つのフレームの露光時間内にはパルス光が含まれないように、領域にパルス光を照射するステップと、カメラによって撮影された動画データを受信するステップと、動画データを記憶するステップと、動画データに基づいて動体の動作範囲を検出するステップと、動作範囲と同じもしくはより広い範囲の画像をマスキングするためのマスクデータを生成するステップと、マスクデータ及び動画データに基づいて気流を解析するための動画データを生成するステップと、気流を解析するための動画データに基づいて気流の解析を行うステップとを備え、パルス光の照射時間は、動画データのそれぞれのフレームのそれぞれの露光時間と比較して短いことを要旨とする。
【0017】
本発明の第3の態様は、気流測定プログラムであって、コンピュータに、カメラで動体を含む気流を観測する領域を動画撮影し、連続する2以上のフレームの露光時間内に1回となるように、かつ連続する2以上のフレームのうち少なくとも1つのフレームの露光時間内にはパルス光が含まれないように、領域にパルス光を照射するステップと、カメラによって撮影された動画データを受信するステップと、動画データを記憶するステップと、動画データに基づいて動体の動作範囲を検出するステップと、動作範囲と同じもしくはより広い範囲の画像をマスキングするためのマスクデータを生成するステップと、マスクデータ及び動画データに基づいて気流を解析するための動画データを生成するステップと、気流を解析するための動画データに基づいて気流の解析を行うステップとを備え、パルス光の照射時間は、動画データのそれぞれのフレームのそれぞれの露光時間と比較して短いことを実行させることを要旨とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、PIVにより気流の解析を行う際に、気流を計測する領域内に位置する動体の影響を除去した気流の解析を実施可能な気流測定装置、気流測定方法及び気流測定プログラムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1の実施形態に係る気流測定装置の構成の一例を示すブロック図である。
図2】第1の実施形態に係る気流測定装置によるレーザ光の照射タイミングとカメラの露光タイミングを説明するタイミング図である。
図3】第1の実施形態に係る気流測定装置により撮影された動画を示す図である。
図4】第1の実施形態に係る気流測定方法を説明するフローチャートである。
図5】第1の実施形態に係る気流測定装置によるレーザ光の照射タイミングとカメラの露光タイミングの、レーザ光の照射タイミングがずれた場合を説明するタイミング図である。
図6】第2の実施形態に係る気流測定装置によるレーザ光の照射タイミングとカメラの露光タイミングを説明するタイミング図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。実施形態に係る図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。但し、図面は模式的なものであり、平面寸法等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0021】
又、実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、各構成要素の構成や配置、レイアウト等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0022】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る気流測定装置の構成の一例を図1に示す。図1に示す気流測定装置10は、レーザ光源装置101、カメラ102、制御部103、取得部104、記憶部105、検出部106、第1生成部107、第2生成部108、解析部109とから構成される。
【0023】
レーザ光源装置101は、気流を計測する領域にレーザ光を照射する。レーザ光は、例えばシートレーザ光である。照射されたレーザ光は、気流を計測する領域内に位置する、空気中のチリによって散乱される。カメラ102は、この散乱光、及び動体を含んだ背景を撮影する。制御部103はレーザ光源装置101及びカメラ102に接続され、レーザ光源装置101によって照射されるレーザ光の照射タイミング及び散乱光をカメラ102によって撮影する露光タイミングを制御する。
【0024】
カメラ102は、さらに取得部104に接続され、カメラ102によって撮影された動画データは取得部104に送信される。記憶部105は取得部104に接続され、カメラ102によって撮影された動画データは記憶部105に記憶される。
【0025】
検出部106は記憶部105に接続され、記憶部105に記憶された動画データに基づいて動体の動作範囲を検出する。この際、検出部106は、フレーム間差分法により、動画データのフレーム間の差分を取ることによって、動体の動作範囲を検出してもよい。ここで、フレーム間差分法とは、動画データの各フレームの画像の各ピクセルの輝度値の差から動体の検出を行う方法である。以下、フレーム間の差分を取るとは、フレーム間差分法に基づき、動画データの各フレームの画像の各ピクセルの輝度値の差を算出することを指す。また、検出部106は、動画データの時間的に異なる複数のフレームに基づいて差分画像を生成することにより、動体の動作範囲を検出してもよい。
【0026】
第1生成部107は、検出部106において検出された動体及び動体の動作範囲の画像をマスキングするためのマスクデータを生成する。この際、第1生成部107は、検出部106によって検出された動体及び動体の動作範囲よりも広い範囲において動体のマスクを生成してもよい。広い範囲としては、例えば、動体の外縁又は動体の動作範囲よりも数ピクセルから数十ピクセル、もしくはそれ以上広い範囲であってよい。第1生成部107は、動体に対してマスク処理を施すこと、及び、空間内の気流を取得することが出来る範囲をより広げること等を考慮して、マスク処理を施す範囲を適宜設定してもよい。
【0027】
第2生成部108は、記憶部105に記憶された動画データ及び第1生成部107において生成されたマスクデータに基づいて、空気中のチリのみが写された動画データを生成する。後述するように、本実施形態において、カメラ102によって撮影された動画データは、奇数番目のフレームには空気中のチリによる散乱光及び動体を含む背景が、偶数番目のフレームには動体を含む背景のみが記録されている。従って、第2生成部108は、フレーム間差分法により、偶数番目のフレームと、そのフレームの直前又は直後の奇数番目のフレームとの差分を取ることで、空気中のチリによる散乱光のみが写された動画データを生成する。偶数番目のフレームと、そのフレームの直前又は直後の奇数番目のフレームとの差分を取る際、動体の動作範囲を考慮して、偶数番目のフレームと、そのフレームの直前又は直後の奇数番目のフレームのそれぞれに対して、第1生成部107において生成されたマスクデータを用いてマスク処理を行い、差分を取る。これにより、第2生成部108は、空気中のチリによる散乱光のみが写された動画データを生成することが出来る。ここで、偶数番目のフレームと、そのフレームの直前又は直後の奇数番目のフレームとは、偶数番目のフレームをn番目のフレームとすると、そのフレームの直前の奇数番目のフレームとはn-1番目のフレームであり、そのフレームの直後の奇数番目のフレームとはn+1番目のフレームである。ただし、nは整数である。
【0028】
解析部109は、第2生成部108に接続され、第2生成部108において生成された、空気中のチリによる散乱光のみが写された動画データをもとに、気流の流動状態が解析される。
【0029】
次に、本実施形態に係る気流測定装置によるレーザ光の照射タイミングとカメラの露光タイミングを図2を参照しながら説明する。図2に示すタイミング図の横軸は時間tであり、縦軸はレーザ光源装置101の照射タイミング、及びカメラ102の露光タイミングである。
【0030】
図2に示すように、カメラ102の露光タイミングである、フレーム1、フレーム2、フレーム3…のうち、奇数番目の露光タイミングであるフレーム1、フレーム3、フレーム5…に合わせて、レーザ光源装置101からパルス光を照射する。奇数番目のフレームは、パルス光を照射したフレーム、即ちパルス光を照射したときに撮影されたフレームである。これに対して、偶数番目のフレームは、パルス光を照射しないフレーム、即ちパルス光を照射せずに撮影されたフレームである。レーザ光源装置101からパルス光を照射するタイミングは、カメラ102の奇数番目の各露光の露光時間内にそれぞれ一回あればよく、カメラ102の奇数番目の露光の露光時間内であれば、パルス光の照射タイミングは、どの時間でも構わない。
【0031】
また、レーザ光源装置101のパルス光の照射時間は、カメラ102の各露光時間と比較してごく短時間とする。このため、カメラの露光方式が、露光の際に上の画素から下の画素へ向かって順番に露光する、いわゆるローリングシャッタ方式である場合、レーザ光源装置101のパルス光によって得られる情報がカメラの一部の画素にしか記録されず、パルス光によって得られる情報の一部しか得られない。従って、本実施形態においては、露光方式がローリングシャッタ方式ではなく、全ての画素が同時に露光されるいわゆるグローバルシャッタ方式のカメラを用いる。
【0032】
本実施形態に係る気流測定装置を用いて、図2に示すタイミングによって撮影した動画の一部を図3に示す。図2に示すように、カメラ102のフレーム1の露光タイミングに合わせて、レーザ光源装置101からパルス光を、気流を計測する領域に照射する。パルス光を照射したことにより、気流を計測する領域に位置する空気中のチリによって散乱光が生じる。図3のフレーム1の画像には、気流を計測する領域の背景301に加えて、パルス光によって生じた空気中のチリによる散乱光302が写されている。
【0033】
図2に示すように、カメラ102のフレーム2の露光タイミングでは、レーザ光源装置101からパルス光は照射しない。従って、図3のフレーム2の画像には、空気中のチリによる散乱光は写っていない。このように、制御部103によって、カメラ102の奇数番目のフレームの露光時間内に、レーザ光源装置101からパルス光を照射し、偶数番目のフレームの露光時間内には、レーザ光源装置101からパルス光を照射しないという動作を繰り返し行うことにより、図3に示すように、奇数番目のフレームの画像には気流を計測する領域の背景及び空気中のチリによる散乱光が写り、偶数番目のフレームの画像には空気中のチリによる散乱光が写らず、気流を計測する領域の背景のみが写る動画を得ることが出来る。
【0034】
図3に示すように、偶数番目のフレームの画像には、気流を計測する領域の背景が記録されている。また、奇数番目のフレームの画像には、気流を計測する領域の背景に加えて、空気中のチリによる散乱光が記録されている。レーザ光源装置101のパルス光の照射時間をカメラ102の各露光時間と比較してごく短時間とすることから、奇数番目のフレームの画像に記録された気流を計測する領域の背景は、このフレームの直前、又は直後の偶数番目のフレームの画像に記録された気流を計測する領域の背景と、ほぼ同一であるとみなすことができる。ただし、気流を計測する領域の背景には動作する動体が含まれるため、奇数番目のフレームと、このフレームの直前、又は直後の偶数番目のフレームの間で、動体の動作による差異が生じる。従って、奇数番目のフレームと、このフレームの直前、又は直後の偶数番目のフレームの間で生じる動体の動作による差異を網羅するように、動体及び動体の動作範囲よりも広い範囲において動体のマスクを生成し、偶数番目のフレームと、そのフレームの直前又は直後の奇数番目のフレームのそれぞれに対して、第1生成部107において生成されたマスクデータを用いてマスク処理を行い、フレーム間差分法により、偶数番目のフレームと、そのフレームの直前又は直後の奇数番目のフレームの差分を取る。その結果、空気中のチリによる散乱光のみが写された動画データを得ることが出来る。この動画データを用いることにより、気流を計測する領域に含まれる動体の動作に影響されることなく気流の流動状態を解析することが出来る。
【0035】
なお、本実施形態においては、空気中のチリによる散乱光のみが写された動画データを得る際、偶数番目のフレームと、そのフレームの直前又は直後の奇数番目のフレームのそれぞれに対して、マスクデータを用いてマスク処理を行い、偶数番目のフレームと、そのフレームの直前又は直後の奇数番目のフレームの差分を取っているが、偶数番目のフレームと、そのフレームの直前又は直後の奇数番目のフレームの差分を取ったのちに、マスク処理を行っても構わない。
【0036】
また、本実施形態においては、空気中のチリによる散乱光のみが写された動画データを得る際、偶数番目のフレームと、そのフレームの直前又は直後の奇数番目のフレームの差分を取っているが、偶数番目のフレームの、直前及び直後の奇数番目のフレームの平均値をとり、偶数番目のフレームとの差分を取ってもよく、又は奇数番目のフレームの、直前及び直後の偶数番目のフレームの平均値をとり、奇数番目のフレームとの差分を取っても構わない。ここで、偶数番目のフレームの直前及び直後の奇数番目のフレームの平均値とは、偶数番目のフレームの直前及び直後の奇数番目のフレームの画像の各ピクセルの輝度値の平均値である。
【0037】
さらに、本実施形態においては、制御部103によって、カメラ102の奇数番目のフレームの露光時間内に、レーザ光源装置101からパルス光を照射し、偶数番目のフレームの露光時間内には、レーザ光源装置101からパルス光を照射しないという動作を行っているが、偶数番目のフレームの露光時間内にパルス光を照射し、奇数番目のフレームの露光時間内にはパルス光を照射しないという動作でも構わない。
【0038】
次に、図4に示すフローチャートを参照しながら、気流測定方法を説明する。ステップS401において、カメラ102で気流を計測する領域の動画を撮影する。カメラ102で動画を撮影すると同時に、カメラ102の奇数番目のフレームのそれぞれの露光時間内に、レーザ光源装置101からパルス光を照射する。
【0039】
ステップS402において、カメラ102によって撮影された動画データを取得部104に送信する。
【0040】
ステップS403において、取得部104に送信された動画データを記憶部105に記憶させる。
【0041】
ステップS404において、検出部106が、記憶部105に記憶された動画データに基づいて動体の動作範囲を検出する。
【0042】
ステップS405において、第1生成部107が、検出部106において検出された動体及び動体の動作範囲の画像をマスキングするためのマスクデータを生成する。ここで、動画データの奇数番目のフレームと、このフレームの直前、又は直後の偶数番目のフレームの間で生じる動体の動作による差異を網羅するように、動体及び動体の動作範囲よりも広い範囲において動体のマスクデータを生成する。
【0043】
ステップS406において、第2生成部108が、偶数番目のフレームと、そのフレームの直前又は直後の奇数番目のフレームのそれぞれに対して、第1生成部107において生成されたマスクデータを用いてマスク処理を行い、偶数番目のフレームと、そのフレームの直前又は直後の奇数番目のフレームの差分を取る。これにより、空気中のチリによる散乱光のみが写された動画データを得ることが出来る。
【0044】
ステップS407において、空気中のチリによる散乱光のみが写された動画データを用いて、気流の流動状態を解析する。
【0045】
以上述べたように、本実施形態に係る気流測定装置、気流測定方法及び気流測定プログラムによれば、気流を計測する領域に含まれる動体の動作に影響されることなく気流の流動状態を解析することが出来る。
【0046】
(第2の実施形態)
第2の実施形態に係る気流測定装置の構成は、図1に示す第1の実施形態における構成と同様であるが、第2の実施形態に係る気流測定装置によるレーザ光の照射タイミングとカメラの露光タイミングが、図2に示す第1の実施形態におけるレーザ光の照射タイミングとカメラの露光タイミングとは異なり、図6に示すタイミングとなる。
【0047】
第1の実施形態においては、図2に示すように、カメラ102の奇数番目の露光タイミングである、フレーム1、フレーム3、フレーム5…に合わせて、レーザ光源装置101からパルス光を照射している。しかしながら、レーザ光源装置101からのパルス光照射のタイミングがずれて、図5に示すように、カメラ102の隣り合う露光タイミングにわたってパルス光が照射されると、カメラ102の全ての露光タイミングである、フレーム1、フレーム2、フレーム3…においてレーザ光源装置101からパルス光が照射され、パルス光が照射されないフレームを得ることが出来ない。
【0048】
本発明の第2の実施形態においては、図6に示すように、カメラ102の露光タイミングの、3フレームに1回の割合でレーザ光源装置101からパルス光を照射する。図6には、カメラ102の露光タイミングであるフレーム1とフレーム2にわたってパルス光が照射されており、フレーム3においてはパルス光は照射されない。同様に、フレーム4とフレーム5にわたってパルス光が照射されており、フレーム6においてはパルス光は照射されない。これにより、第1の実施形態における方法と同様に、パルス光が照射されたフレームと、パルス光が照射されないフレームとから、パルス光、即ち空気中のチリによる散乱光のみが写された動画データを得ることが出来る。
【0049】
本実施形態においては、カメラ102の露光タイミングの、3フレームに1回の割合でレーザ光源装置101からパルス光を照射するが、レーザ光源装置101のパルス光の照射時間tは、各フレームの露光時間tonよりも短く、かつ隣り合うフレームの間の露光していない時間toffより長くなるように照射する。ここで、3フレームに1回の割合でパルス光を照射するとは、連続する3つのフレームのうちの、最初のフレームの露光開始時間から、最後のフレームの露光終了時間までの間に1回、パルス光を照射することを意味する。なお、本実施形態において、露光タイミングの、3フレームに1回の割合でレーザ光源装置101からパルス光を照射しているが、4フレーム以上に1回であっても構わない。
【0050】
以上、本発明はここでは記載していない様々な実施形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0051】
10 気流測定装置
101 レーザ光源装置
102 カメラ
103 制御部
104 取得部
105 記憶部
106 検出部
107 第1生成部
108 第2生成部
109 解析部
301 背景
302 散乱光
図1
図2
図3
図4
図5
図6