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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022025306
(43)【公開日】2022-02-10
(54)【発明の名称】コラム裏当て金位置出し装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 37/04 20060101AFI20220203BHJP
   B23K 37/06 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
B23K37/04 H
B23K37/06 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020128051
(22)【出願日】2020-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】390025405
【氏名又は名称】株式会社鈴木勇商店
(74)【代理人】
【識別番号】100092923
【弁理士】
【氏名又は名称】石垣 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100187757
【弁理士】
【氏名又は名称】石垣 春樹
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 勇
(57)【要約】
【課題】短寸のコラムを使用したコラム裏当て金位置出し作業を効率良く、正確に行えるコラム裏当て金位置出し装置を提供すること。
【解決手段】本発明のコラム裏当て金位置出し装置1は、基台3と、第1の方向Xにスライドして接近・離間する一対のスライド台7L、7Rと、スライド台7L、7R上に設けられ、第2の方向Yの間隔Dを調整し得る一対の支柱9、10と、支柱9、10に対して設けられ、コラム103の中心位置Оを設定し、その後、所定量S離間して裏当て金107取付け位置Pの位置出しを行う位置出し定規11と、基台3上に設けられ、中心位置Oのコラム103を挟持して保持する一対のクリップブロック13、14と、セットされたコラム103を第1の方向X及び第2の方向Yに移動可能な状態で支持する支持面Aと、を備え、上記支持面Aは、一対のスライド台7L、7Rと一対の支柱9、10の動きに干渉しない、これらと独立した状態で設けられる支持フレーム17に対して形成されている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台と、
上記基台上に設けられ、コラムの軸方向となる第1の方向にスライドして接近・離間する一対のスライド台と、
上記スライド台上に設けられ、上記第1の方向と交差する第2の方向の間隔を調整し得る一対の支柱と、
上記各支柱に対して設けられ、直接コラムの開先に当接してコラムの中心位置を設定し、その後、所定量離間することによって裏当て金の取付け位置の位置出しを行う位置出し定規と、
上記一対のスライド台の中間位置であって、上記一対のスライド台と干渉しない位置の基台上に設けられ、上記位置出し定規によって設定された中心位置のコラムを、第2の方向から挟持して保持する一対のクリップブロックと、
セットされたコラムを第1の方向及び第2の方向に移動可能な状態で支持する支持面と、を備え、
上記支持面は、上記一対のスライド台と上記一対の支柱の動きに干渉しない、これらと独立した状態で設けられる支持フレームに対して形成されていることを特徴とするコラム裏当て金位置出し装置。
【請求項2】
上記支持フレームは、第2の方向に離間して配置される上記一対の支柱の中間位置を通り、第1の方向に離間して配置される上記一対のスライド台を跨ぐように第1の方向に架け渡された状態で設けられていることを特徴とする請求項1記載のコラム裏当て金位置出し装置。
【請求項3】
上記支持フレームは、第2の方向に並ぶように複数設けられており、これら複数の支持フレームは、第2の方向に移動して互いの間隔を調整できるように構成されていることを特徴とする請求項1または2記載のコラム裏当て金位置出し装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば鉄骨構造物の要素となる柱組立を製作する場合に使用されるコラム裏当て金位置出し装置に係り、特に長さが100mm以下の短寸のコラムに対しても使用できるコラム裏当て金位置出し装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から鉄骨構造物を構築する場合には、鉄骨構造物の要素となる柱組立を工場等で予め組み立てておき、組み立てた柱組立を現場に持ち込んで梁材等、他の要素と組み合わせることで鉄骨構造物を構築することが行われている。
そして、工場等で行われる柱組立の組み立てに際しては、梁材等との接続部となる接合部ブロックの組み立てが行われ、該接合部ブロックの組み立てにおける最初の工程が所定の長さに切断し開先加工を行ったコラムの両端に対して裏当て金を取り付ける裏当て金取付け工程である。
【0003】
裏当て金取付け工程では、コラムの長さのばらつきや両端の開先の加工精度を補うために、コラムの開先からの裏当て金の張出し量を一定に保つ必要があり、裏当て金のコラムに対する位置出しを行う作業が重要になる。
このような作業は、従来作業者の技量と経験に頼っていたが、最近では下記の特許文献1に示すようなコラム裏当て金位置決め装置が開発されて、経験の浅い作業者でも裏当て金を精度良く、短期間でコラムに取り付けることができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4-200994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、近年は鉄骨構造物の設計仕様の多様化等もあってコラム長が100mm位と短寸のコラムを使いたいという要請がある。
しかし、上記特許文献1を含めた従来のコラム裏当て金位置出し装置は、コラムを支持する支持面がスライド台上に形成されていたため、接近できる距離に限りがあり、対応できる最短のコラム長が約200mmであった。従って、これより短いコラム長のコラムに対してはそのまま使用することができず、上記コラム長の短寸化の要請には応えることができなかった。
【0006】
本発明は、このような点に基づいてなされたもので、その目的とするところは、コラム長が100mm、あるいはそれ以下の短寸のコラムに対してもスライド台の動きに干渉するとこなく、裏当て金を精度良く、短時間で取り付けることができる、対応するコラム長の範囲の広いコラム裏当て金位置出し装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達すべく本発明の請求項1によるコラム裏当て金位置出し装置は、基台と、上記基台上に設けられ、コラムの軸方向となる第1の方向にスライドして接近・離間する一対のスライド台と、上記スライド台上に設けられ、上記第1の方向と交差する第2の方向の間隔を調整し得る一対の支柱と、上記各支柱に対して設けられ、直接コラムの開先に当接してコラムの中心位置を設定し、その後、所定量離間することによって裏当て金の取付け位置の位置出しを行う位置出し定規と、上記一対のスライド台の中間位置であって、上記一対のスライド台と干渉しない位置の基台上に設けられ、上記位置出し定規によって設定された中心位置のコラムを第2の方向から挟持して保持する一対のクリップブロックと、セットされたコラムを第1の方向及び第2の方向に移動可能な状態で支持する支持面と、を備え、上記支持面は、上記一対のスライド台と上記一対の支柱の動きに干渉しない、これらと独立した状態で設けられる支持フレームに対して形成されていることを特徴とするものである。
【0008】
また、請求項2によるコラム裏当て金位置出し装置は、請求項1記載のコラム裏当て金位置出し装置において、上記支持フレームは、第2の方向に離間して配置される上記一対の支柱の中間位置を通り、第1の方向に離間して配置される上記一対のスライド台を跨ぐように第1の方向に架け渡された状態で設けられていることを特徴とするものである。
【0009】
また、請求項3によるコラム裏当て金位置出し装置は、請求項1または請求項2記載のコラム裏当て金位置出し装置において、上記支持フレームは、第2の方向に並ぶように複数設けられており、これら複数の支持フレームは、第2の方向に移動して互いの間隔を調整できるように構成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
そして、上記手段によって以下のような効果が得られる。即ち、本発明のコラム裏当て金位置出し装置によると、構造上、接近距離に限界があるスライド台上に支持面を形成する場合や構造上スライド台の動きに支障を来たすおそれのある位置の基台上に直接、支持面を形成する場合と違って、これらの問題が生じない。これにより、一対のスライド台を従来よりも接近させることができるから、コラム長が100mm、あるいはそれ以下の短寸のコラムに対してもスライド台の動きに干渉することなく、裏当て金を精度良く、短時間で取り付けることが可能になる。
【0011】
また、支持フレームを、第2の方向に離間して配置される一対の支柱の中間位置を通り、第1の方向に離間して配置される一対のスライド台を跨ぐように第1の方向に架け渡された状態で設けられた場合には、支持フレームを一対の支柱と一対のスライド台の動きに干渉しない状態で配置することが可能になる。
【0012】
また、支持フレームの支持面が第1の方向の広い範囲に形成されるから、コラム長が短いコラムだけでなく、コラム長の長いコラムに対しても対応できるようになる。
【0013】
また、支持フレームを、第2の方向に並ぶように複数設けた場合には、使用するコラムの口径の大小によって複数設けた支持フレームの間隔を調整することで、支持フレームによる安定したコラムの支持が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施の形態を示す図で、コラム裏当て金位置出し装置を示す斜視図である。
図2】本発明の実施の形態を示す図で、コラム裏当て金位置出し装置を示す正面図である。
図3】本発明の実施の形態を示す図で、コラム裏当て金位置出し装置を示す右側断面図である。
図4】本発明の実施の形態を示す図で、コラム裏当て金位置出し装置を示す平面図である。
図5】本発明の実施の形態を示す図で、コラム裏当て金位置出し装置を示す図4中のA-A断面図である。
図6】本発明の実施の形態を示す図で、コラム裏当て金位置出し装置を示す図4中のB-B断面図である。
図7】本発明の実施の形態を示す図で、コラム裏当て金位置出し装置を示す図4中のC-C断面図である。
図8】本発明の実施の形態を示す図で、コラム裏当て金位置出し装置を示す図7中のD-D断面図である。
図9】本発明の実施の形態を示す図で、コラム裏当て金位置出し装置の作業手順を示す斜視図である。
図10】柱組立の組立プロセスにおける前半の工程を示す斜視図である。
図11】柱組立の組立プロセスにおける後半の工程を示す斜視図である。
図12】柱組立を示す側面図である。
図13】本発明の実施の形態を示す図で、支持フレームの支持構造の2種の態様を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図示の実施の形態を例にとって、本発明のコラム裏当て金位置出し装置の構成と、該コラム裏当て金位置出し装置を使用したコラム裏当て金位置出し作業の作業手順並びに柱組立の組立て手順について具体的に説明する。
尚、以下の説明では、最初に本実施の形態によるコラム裏当て金位置出し装置の全体構成の概略について説明する。次に、該コラム裏当て金位置出し装置の構成部材について具体的に説明する。次に、該コラム裏当て金位置出し装置を使用したコラム裏当て金位置出し作業の作業手順について説明する。次に、上記作業手順で製作したダイヤフラム仮組を使用して組み立てる柱組立の組立て手順について説明する。最後に、上記実施の形態とは部分的構成を異にする他の実施の形態について言及する。
【0016】
(1)コラム裏当て金位置出し装置の全体構成の概略(図1図4及び図8参照)
本発明のコラム裏当て金位置出し装置1は、例えば鉄骨構造物の要素となる柱組立101を製作する場合に、その組立プロセスの前半の工程で行われるコラム103の開先105に対して裏当て金107を取り付ける作業において使用される。
具体的には、剛性のある矩形状の機枠によって構成される基台3と、該基台3上のレール5、5に沿ってコラム103の軸方向となる第1の方向(本実施の形態では左右方向)Xにスライドして接近・離間する一対のスライド台7L、7Rと、これら2基のスライド台7L、7R上に設けられ、上記第1の方向Xと交差する第2の方向(本実施の形態では前後方向)Yの間隔を調整し得る一対の支柱9、10と、上記各支柱9、10に対して設けられ、直接コラム103の開先105の端面に当接してコラム103の中心位置Oを設定し、その後、所定量S離間することによって裏当て金107の空出量Sを設定し、裏当て金107の取付け位置Pの位置出しを行う位置出し定規11A、11B、11C、11Dと、上記一対のスライド台7L、7Rの中間位置であって、上記一対のスライド台7L、7Rと干渉しない位置の基台3上に設けられ、上記位置出し定規11A、11B、11C、11Dによって設定された中心位置Oのコラム103を、第2の方向Yから挟持して保持するクリップブロック13、14と、セットされたコラム103を第1の方向X及び第2の方向Yに移動可能な状態で支持する支持面Aと、を備えることによって基本的に構成されている。
【0017】
そして、本発明では、上記支持面Aは上記一対のスライド台7A、7Bと、上記一対の支柱9、10の動きに干渉しない、これらと独立した状態で設けられる支持フレーム17に対して形成されている。
また、基台3には上記一対のスライド台7L、7Rを左右対称に接近・離間させる操作ハンドル19と、上記一対のクリップブロック13、14の距離を調整してコラム103を固定状態で保持する固定ハンドル21が設けられている。更に、基台3上の適宜の位置には、上記操作ハンドル19の回転を図8に示すロータリーエンコーダー79によって計測して数値として表示する表示部23が設けられている。
【0018】
(2)コラム裏当て金位置出し装置の具体的構成(図1図8参照)
基台3は、上下面が大きく開口された基台本体25を有しており、基台本体25の下面のコーナ部には脚部27が設けられている。基台本体25の左右の側板には、間隙Eを隔てて矩形平板状のガイドバー29が第2の方向Yに延びるように取り付けられており、上記間隙Eに後述する支持フレーム17の垂直バー33が係合することで支持フレーム17は、ガイドバー29に沿って第2の方向Yに往復移動できるように構成されている。
尚、上記ガイドバー29の前後の端部には、ストッパ35が設けられていて、上記支持フレーム17の移動範囲を規制している。
【0019】
基台本体25の前板の中央付近には前方に突出するように上述した操作ハンドル19が設けられている。操作ハンドル19には軸部37が第2の方向Yの後方に延びるように取り付けられており、該軸部37の中間付近の位置にウォームギヤ39が取り付けられている。
また、上記ウォームギヤ39の回転は、上下方向Zに延びる伝達軸41の下部に取り付けられたウォームホイール43に伝達され、更に伝達軸41の上部に取り付けられた伝達ギヤ45を介して、該伝達ギヤ45と噛み合う第1の方向Xに延びる前後のラック47、49に回転運動を直線運動に変えて伝達されるように構成されている。そして、これら2本のラック47、49のうち、前方のラック47が上記左側のスライド台7Lに一例として接続され、後方のラック49が上記右側のスライド台7Rに一例として接続されている。
【0020】
スライド台7L、7Rは、それぞれ第2の方向Yに延びる一例として断面形状が台形の長尺部材である。スライド台7L、7Rに上面の前端には、固定支柱9が固定状態で設けられている。また、スライド台7L、7Rの上面には、第2の方向Yに沿って延びるレール51が敷設されており、該レール51と係合して第2の方向Yに沿って移動するスライドベース52上に可動支柱10が設けられている。
スライド台7L、7Rの下面の前端と後端には、上述した基台本体25の上面の前端と後端に敷設されている第1の方向Xに延びるレール5、5と係合するスライダ55が一例として2個ずつ取り付けられており、スライド台7L、7Rの下面の中間位置に上述したラック47、49が歯面をそれぞれ内側に向けた状態で取り付けられている。
【0021】
左右そして前後に設けられる各支柱9、10の上方には、上述した位置出し定規11A、11B、11C、11Dが回動軸57を中心に一例として水平方向X、Yに所定の角度回動できるように設けられている。また、図中符号59で示す部材は、位置出し定規11A、11B、11C、11Dの回動を規制して使用時の位置で固定する場合に締め付けるのに使用する固定ノブであり、裏当て金107を仮止めした後、位置出し定規11A、11B、11C、11Dを外方に回動させる場合等には、その固定を解除して緩めるのに使用する。
【0022】
位置出し定規11A、11B、11C、11Dは、一例として正方形断面をした上下方向Zに長い柱状の支持ポスト53と、該支持ポスト53に対して上下方向Zに一例として等間隔で配置した取付け用の複数のネジ穴53aと、これらのネジ穴53aを利用して上記支持ポスト53に取り付けられる当接コマ54と、上記各支柱9、10と上記支持ポスト53とを連結する連結部50と、を備えることによって一例として構成されている。
尚、当接コマ54は、一例としてL字形断面をした金具状の部材で、その基部側の平板部が取付けボルト78によって上記支持ポスト53に取り付けられる取付けベース54a、その自由端側の平板部がコラム103の開先105の端面や裏当て金107の端面に当接して、直接定規として機能する定規作用部54bになっている。そして当接コマ54は、各支持ポスト53に対して2個ずつ計8個設けられている。
【0023】
一対のクリップブロック13、14は、基台本体25の上面の前端部中央に立ち上げられている固定側クリップブロック13と、スライドブロック65上に立ち上げられた可動側クリップブロック14と、を備えることによって構成されている。尚、可動側スライドブロック14には、基台本体25の上面の後端部中央から前端部に向けての中間位置との間に敷設されている第2の方向Yに沿って延びるレール61と係合するスライダ63が一例として2個備えられている。
固定側クリップブロック13の前面には、前方に向けて突出するように固定ハンドル21が設けられていて、該固定ハンドル21から第2の方向Yに沿って後方に向けて延びるネジ軸67が設けられている。また、該ネジ軸67と螺合する図示しない雌ネジが上述したスライドブロック65に対して形成されている。更に、一対のクリップブロック13、14の対向する内面側の上部には、直接コラム103の胴部に当接してコラム103を保持する当接板69が取り付けられており、これら2枚の当接板69によって挟持できる最大のコラム径Wは、一例として約600mmに設定されている。
【0024】
支持フレーム17は、コラム長Lの短いコラム103にも対応できるように設けた本発明の特徴的構成部材である。本実施の形態では、正面視門形をしたフレーム構造が採用されており、第1の方向Xに延びるように水平に配設された水平バー31と、該水平バー31の左右両端部からそれぞれ下方に向けて垂直に延びる垂直バー33、33と、を備えた支持フレーム17が開示されている。
水平バー31には、その中間位置に2個と、所定距離離れてその左方位置と右方位置に2個ずつ、計8個の球状コロ71が設けられており、これらの球状コロ71の頂点がコラム103の胴部を支える支点になっている。また、これらの支点を含んだ平面が支持フレーム17の支持面Aになっている。
【0025】
中間位置の2個の球状コロ71は、コラム長Lが80mm程度の短寸のコラム103にも対応できるように接近した位置に設けられており、左方位置と右方位置の残りの4個の球状コロ71は、コラム長Lが450mm程度までのコラム103に対応できるよう、ほぼ等間隔に配置されている。
水平バー31はスライド台7L、7Rのレール51に支持され、水平な状態で設置されている。
そして、左右の垂直バー33、33は、上述した基台本体25とガイドバー29との間に形成された間隙Eにその先端が入って係合される長さに一例として形成されている。
【0026】
そして、このように構成される支持フレーム17は、本実施の形態では第2の方向Yに並ぶように一例として2組設けられており、これら2組の支持フレーム17は、第2の方向Yに移動して互いの間隔を調整できるように構成されている。
これにより、コラム径Wの大きなコラム103を使用する場合には、2組の支持フレーム17の間隔を広げ、コラム径Wの小さなコラム103を使用する場合には、2組の支持フレーム17の間隔を狭くすることで、使用するコラム103のコラム径Wに最適な間隔でコラム103を支持できるように構成されている。
【0027】
そして、本実施の形態では、このような2組の支持フレーム17、17は、第2の方向Yに離間して配置される上述した一対の支柱9、10の中間位置を通り、第1の方向Xに離間して配置される上述した一対のスライド台7L、7Rを跨ぐように第1の方向Xに架け渡された状態で設けられている。
【0028】
(3)コラム裏当て金位置出し作業の作業手順(図9及び図10参照)
次に、このようにして構成される本発明のコラム裏当て金位置出し装置1を使用して行うコラム裏当て金位置出し作業の作業手順について図9に基づいて具体的に説明する。
最初に、図9(a)に示すように、操作ハンドル19を回して左右のスライド台7L、7Rをコラム103のコラム長Lよりも広くなるよう、幾分離間させた状態にする。次に、クランプバー52aを緩めてスライドベース52を移動させ、使用するコラム103のコラム径Wよりも大きめの収容空間が形成されるよう、支柱9、10の間隔を広めに設定しておく。次に、固定ハンドル21を回して可動側クリップブロック14を移動させ、使用するコラム103のコラム径Wよりも大きめのクリップブロック13、14間の距離に設定しておく。更に、使用するコラム103のコラム径Wに合わせて2組の支持フレーム17、17の位置と間隔を調整する。
【0029】
次に、離間した状態の左右のスライド台7L、7Rと、同じく離間した状態の前後のクリップブロック13、14及び前後の支柱9、10と、によって区画された収容空間にコラム103を搬入してセットする。
次に、図9(b)に示すように、使用するコラム103のコラム径Wに合わせて可動支柱10の位置を決めてクランプバー52aでスライドベース52の位置を固定し、当接コマ54の取付け位置を決めて固定する。この状態で操作ハンドル19を回して左右のスライド台7L、7Rを接近させて行き、当接コマ54の定規作用部54bをコラム103の開先105の端面に当接させてコラム103を中心位置Oに移動させる。
そして、固定ハンドル21を回して可動側クリップブロック14を固定側クリップブロック13側に移動させて、コラム103を一対のクリップブロック13、14で挟持して保持する。
【0030】
次に、図9(c)に示すように操作ハンドル19を回して左右のスライド台7L、7Rを徐々に離間させる。この際、作業者は表示部23の数値を見ながら予め定められた突出量Sになったところで操作ハンドル19の回転を停止する。
これにより、一対のクリップブロック13、14によって胴部が保持されたコラム103の開先105の両端面と、位置出し定規11A、11B、11C、11D間には、上記突出量S分の空間が形成される。
【0031】
次に、作業者は図9(d)に示すように一例として4つに分割された裏当て金107の1つのピース109をコラム103の内壁面に宛って、該ピース109の端面を位置出し定規11A、11B、11C、11Dの定規作用面に押し当てた状態で仮固定する。
以下、同様に残りの3つのピース109も当該コラム103に仮固定する。そして、全てのピース109の仮固定の完了後、固定ノブ59を緩めて4つの位置出し定規11A、11B、11C、11Dを、回動軸57を中心に外方に回動させて退避させ、コラム103と裏当て金107の本溶接工程に移行する。
【0032】
(4)柱組立の組立て手順(図10図12参照)
コラム103の両端の開先105に裏当て金107を本溶接したものに対して、更に、図10に示すように2枚のダイヤフラム111を溶接によって取り付けてダイヤフラム仮組113を製作する。
ダイヤフラム仮組113の製作後、固定ハンドル21を回して緩め、一対のクリップブロック13、14に保持されていたダイヤフラム仮組113をコラム裏当て金位置出し装置1から取り外す。
【0033】
次に、図11に示すように製作したダイヤフラム仮組113に対してブラケット115を必要な数、溶接により取り付けて接合部ブロック117を製作する。次に、製作した接合部ブロック117と、所定の長さに切断した柱119と、を必要な数、用意して、これらを溶接により接合して組み立てることによって図示のように柱組立101が組み立てられる。
以下、同様に建造する鉄骨構造物に必要な数、柱組立101を組み立てる。そして、このようにして組み立てられた柱組立101は、図12に示すようにコラム103のコラム長Lが従来のものよりも短くなっており、このような設計仕様の鉄骨構造物の建設にも対応できるようになっている。
【0034】
そして、このようにして構成される本発明のコラム裏当て金位置出し装置1によれば、コラム長Lが100mm、あるいはそれ以下の短寸のコラム103に対しても左右のスライド台7L、7Rの動きに干渉することなく、裏当て金107を精度良く、短時間で取り付けることができる。また、このようにコラム長Lが極めて短い短寸のコラム103を使用した柱組立101を組み立てることができるようになる。これにより、設計仕様の異なる種々の鉄骨構造物の建設に利用して工期の短縮や施工コストの削減を図ることが可能になる。
【0035】
[他の実施の形態]
本発明のコラム裏当て金位置出し装置1は、上述した実施の形態のものに限定されず、その発明の要旨内での変更が可能である。
例えば、支持フレーム17の設置態様としては図1図12及び図13(a)に示すようにレール51による支持と基台3の基台本体25の側面に設けたガイドバー29との間隙Eを利用した設置態様の他、図13(b)に示すように、基台本体25の上面を剛性の高い天板75等で補強して、その天板75の上面に形成した溝77やレール等を利用して支持フレーム17を設置することも可能である。
【0036】
また、支持フレーム17の垂直バー33の下部にコロ等を設けて支持フレーム17の第2の方向Yへの移動を容易にすること、また、設置した支持フレーム17の位置を固定するロック手段等を設けることも可能である。
また、支持フレーム17を複数設ける場合としては、一例として2組としたが、3組以上としても良い。
また、支持フレーム17は、上述した実施の形態では門形構造とし、レール51に支持されるように設置したが、レール51に設置したカバー部材に支持させるようにしても良い。
この他、支持フレーム17の構造は、上述した実施の形態で述べた門形構造に限らず、例えば基台本体25から立ち上げた別途の支柱等によって支持される場合には、水平な板状あるいは溝形鋼、角パイプ等によって支持フレーム17を構成することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明のコラム裏当て金位置出し装置は、現場での鉄骨構造物の組み立てに先立って、工場等で行われる柱組立の製作現場で利用でき、特にコラム長が短い短寸のコラムを使用した柱組立を効率良く、正確に製作したい場合に利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0038】
1 コラム裏当て金位置出し装置
3 基台
5 レール
7 スライド台
9 固定支柱
10 可動支柱
11 位置出し定規
13 固定側クリップブロック
14 可動側クリップブロック
17 支持フレーム
19 操作ハンドル
21 固定ハンドル
23 表示部
25 基台本体
27 脚部
29 ガイドバー
31 水平バー
33 垂直バー
35 ストッパ
37 軸部
39 ウォームギヤ
41 伝達軸
43 ウォームホイール
45 伝達ギヤ
47 ラック
49 ラック
50 連結部
51 レール
52 スライドベース
52a クランプバー
53 支持ポスト
53a ネジ穴
54 当接コマ
54a 取付けベース
54b 定規作用部
55 スライダ
57 回動軸
59 固定ノブ
61 レール
63 スライダ
65 スライドブロック
67 ネジ軸
69 当接板
71 球状コロ
75 天板
77 溝
78 取付けボルト
79 ロータリーエンコーダー
101 柱組立
103 コラム
105 開先
107 裏当て金
109 ピース
111 ダイヤフラム
113 ダイヤフラム仮組
115 ブラケット
117 接合部ブロック
119 柱
X 第1の方向(左右方向)
Y 第2の方向(前後方向)
X、Y 水平方向
A 支持面
O 中心位置
P 取付け位置
S 所定量(突出量)
Z 上下方向
E 間隙
L コラム長
W コラム径
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13