(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022025344
(43)【公開日】2022-02-10
(54)【発明の名称】コンクリート舗装のひび割れ抑制方法
(51)【国際特許分類】
C04B 40/04 20060101AFI20220203BHJP
E01C 23/03 20060101ALI20220203BHJP
C04B 41/62 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
C04B40/04
E01C23/03
C04B41/62
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020128115
(22)【出願日】2020-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000232508
【氏名又は名称】日本道路株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141966
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 範彦
(74)【代理人】
【識別番号】100103539
【弁理士】
【氏名又は名称】衡田 直行
(71)【出願人】
【識別番号】301031392
【氏名又は名称】国立研究開発法人土木研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100141966
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 範彦
(72)【発明者】
【氏名】岸良 竜
(72)【発明者】
【氏名】丸田 浩
(72)【発明者】
【氏名】島影 亮司
(72)【発明者】
【氏名】藤井 洋志
【テーマコード(参考)】
2D053
4G028
4G112
【Fターム(参考)】
2D053AA16
4G028CA01
4G028CC01
4G112RD00
(57)【要約】
【課題】本発明は、コンクリート舗装のひび割れを抑制する効果が高いコンクリート舗装のひび割れ抑制方法を提供する。
【解決手段】本発明は、コンクリート舗装の表面の締固め後からコテ仕上げの間と、コテ仕上げ後から養生までの間に、水性養生剤をコンクリート舗装の表面に施工する、コンクリートのひび割れ抑制方法であり、好ましくは、コンクリート舗装の表面に対し、1m
2当たり水性養生剤を固形分換算で5~200g施工する、コンクリート舗装のひび割れ抑制方法である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート舗装の表面の締固め後からコテ仕上げの間と、コテ仕上げ後から養生までの間に、水性養生剤をコンクリート舗装の表面に施工する、コンクリートのひび割れ抑制方法。
【請求項2】
コンクリート舗装の表面に対し、1m2当たり水性養生剤を固形分換算で5~200g施工する、請求項1に記載のコンクリート舗装のひび割れ抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、養生剤を用いてコンクリート舗装のひび割れを抑制する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートの打設後、まだコンクリートが十分に硬化していないプラスティックな状態でコンクリート表面が乾燥すると、該表面に不規則なひび割れが発生する場合がある。このひび割れはプラスティックひび割れと呼ばれ、混練水の急激な蒸発によるコンクリートの乾燥収縮が主な原因である。そのため、プラスティックひび割れは、ブリーディングが少ないコンクリートで発生し易く、特に、コンクリート舗装では施工直後から発生する場合がある。
【0003】
コンクリートのプラスティックひび割れを抑制する方法として、一般に、コンクリート表面に養生剤を塗布する方法がある。例えば、特許文献1には、樹脂やパラフィン類が有機溶剤に溶解した膜養生剤(請求項1)と、これを施工後のコンクリート表面に塗布して皮膜を形成し、コンクリートの硬化の初期と後期における水分蒸発を抑制するコンクリートの養生方法(請求項3)が提案されている。そして、前記膜養生剤は、従来の水ベースの膜養生剤と異なり有機溶剤ベースであるため、気密性に優れた皮膜を形成でき、また、コンクリート表面の浮き水に影響されないため、コンクリートの表面水の消失を待たずに塗布できるとしている(段落0009)。
【0004】
しかし、有機溶剤は、作業員の健康を害するおそれがあること、火災の危険や悪臭があること、セメントの水和を阻害する等の問題がある。これらの問題について、特許文献1の出願人は、「使用する有機溶剤の可燃性、毒性等については十分に留意して適宜に対処することが必要である。」(段落0007)としている。したがって、前記コンクリートの養生方法は実用的とはいえない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明は、水を分散媒および/または溶媒として用いた養生剤(以下「水性養生剤」という。)を使用する方法であって、コンクリート舗装のひび割れの抑制効果が高い方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記目的にかなうコンクリート舗装のひび割れ抑制方法を検討したところ、下記の構成を有する方法はひび割れ抑制効果が高いことを見い出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は以下のとおりである。
【0008】
[1]コンクリート舗装の表面の締固め後からコテ仕上げの間と、コテ仕上げ後から養生までの間に、水性養生剤をコンクリート舗装の表面に施工する、コンクリートのひび割れ抑制方法。
ここで、前記「水性養生剤をコンクリート舗装の表面に施工する」とは、水性養生剤でコンクリート舗装の表面の全部または一部を覆う行為をいい、例えば、水性養生剤をコンクリー舗装の表面に噴霧、散布、または塗布等する行為が挙げられる。
[2]コンクリート舗装の表面に対し、1m2当たり水性養生剤を固形分換算で5~200g施工する、前記[1]に記載のコンクリート舗装のひび割れ抑制方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明のコンクリート舗装のひび割れ抑制方法は、簡易な方法によりコンクリート舗装のひび割れを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】コンクリートのひび割れ試験に用いた鋼製拘束型枠を示す図である。
【
図2】コンクリート表面の仕上げ前(比較例1)、または仕上げ後(比較例2)における養生剤の施工と、コンクリート表面の仕上げ前と仕上げ後(実施例)における養生剤の施工において、コンクリート表面に発生したひび割れの面積を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のコンクリート舗装のひび割れ抑制方法は、前記のとおり、コンクリート舗装の表面のコテ仕上げ前とコテ仕上げ後に、水性養生剤をコンクリート表面に施工してコンクリートのひび割れを抑制する方法である。
以下、コンクリート舗装のコテ仕上げ前とコテ仕上げ後における養生剤の施工と、水性養生剤に分けて詳細に説明する。
1.コンクリート舗装のコテ仕上げ前とコテ仕上げ後における養生剤の施工
(1)コンクリート舗装
本発明の方法の対象となるコンクリートは、特に限定されず、普通コンクリート舗装、連続鉄筋コンクリート舗装、繊維補強コンクリート舗装、転圧コンクリート舗装、およびアスファルト舗装の上にコンクリート舗装を重ねたホワイトトッピング舗装等が挙げられる。
前記コンクリート舗装は、コンクリートの硬化後のひび割れを防止するために、さらに膨張材や収縮低減剤を含んでもよい。前記膨張材は、水和により水酸化カルシウムやエトリンガイト等の水和生成物の結晶が成長して、嵩体積が大きくなる材料であればよく、例えば、生石灰、カルシウムサルホアルミネート、石膏、マグネシア、石灰系膨張材、およびエトリンガイト系膨張材から選ばれる1種以上が挙げられる。また、前記収縮低減剤は、硬化後のコンクリートのひび割れ発生を抑制する効果が高いことから、後記のポリオキシアルキレンアルキルエーテルが好適である。
【0012】
(2)コテ仕上げ
本発明の方法において、水性養生剤をコンクリート表面に施工する時期は、コンクリート舗装の表面の締固め後からコテ仕上げの間と、コテ仕上げ後から養生までの間である。
一般に、コンクリート舗装の工事は、コンクリートの舗設(打設)→コンクリートの敷きならし→コンクリートの締固め→コテ仕上げ(表面仕上げ)→養生の順に行われる。そして、従来、養生剤を用いた養生は、コンクリート表面に形成された養生剤の層が、表面仕上げにより破損して、水分の蒸発を十分に防止できないと予想されるため、コテ仕上げ後に行われていた。ところが、本発明の方法では、コテ仕上げの前と後に養生剤を施工すると、コテ仕上げの前のみ、または、コテ仕上げの後のみに施工した場合と比べ、後掲の
図2に示すように、従来の予想に反して、ひび割れ抑制効果が高くなる。
【0013】
2.水性養生剤
本発明で用いる水性養生剤は、樹脂およびパラフィンから選ばれる1種以上を水に分散および/または溶解した状態で含む養生剤である。
前記樹脂は、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン-ブタジエン樹脂、スチレン-アクリル樹脂、メチルメタクリレート-ブタジエン樹脂、塩化ビニリデン樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール、およびエチレン-酢酸ビニル樹脂等の合成樹脂、セルロース誘導体、および化工澱粉等の半合成樹脂、並びに、ロジン等の天然樹脂から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0014】
また、前記パラフィンの平均粒径は、好ましくは0.9μm以下、より好ましくは0.7μm以下、さらに好ましくは0.5μm以下である。該値が0.9μm以下であれば、液中での分散性およびコンクリートへの浸透性に優れ、コンクリート表面を均質に覆うことができる。なお、パラフィン粒子の平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定した50%通過径(D50:平均粒径)として求めることができる。
【0015】
さらに、本発明で用いる水性養生剤は、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルを含んでもよい。該化合物は、主に、コンクリートの硬化後の乾燥収縮を低減する効果を有する。該化合物は、例えば、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノエチルエーテル、ポリエチレングリコールモノエチルエーテル、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ポリエチレングリコールモノプロピルエーテル、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノブチルエーテル、ポリエチレングリコールモノブチルエーテル等から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0016】
前記ポリオキシアルキレンアルキルエーテルの含有率は、好ましくは10~30質量%、より好ましくは15~25質量%、さらに好ましくは13~23質量%である。該値が10質量%未満ではコンクリートの乾燥収縮の低減効果が低く、30質量%を超えるとコスト高になる。
【0017】
水性養生剤を施工する量は、コンクリート舗装の表面1m2当たり、好ましくは固形分換算で5~200g、より好ましくは5~100g、さらに好ましくは10~70gである。該値が5~200gの範囲であれば、ひび割れ抑制効果が高く費用対効果に優れている。前記養生剤の施工は、スプレー、吹き付け装置、および刷毛等を用いて行うことができる。
【実施例0018】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
1.使用材料
表1に示す材料を用いた。
【0019】
【0020】
2.コンクリートの調製と各種物性の測定
一般的な舗装コンクリートの配合である表2の配合に従い、セメント、細骨材、および粗骨材を強制練りミキサーに投入して15秒間空練りした後、さらに混和剤を溶解した水を投入して120秒間混練しコンクリートを調製した。
【0021】
【0022】
3.ひび割れ面積の測定
前記調製したコンクリートを、
図1に示す鋼製拘束型枠に打設した後、水性養生剤を、コンクリート表面の締固め後からコテ仕上げの間に100g/m
2(固形分換算で15g)、また、コテ仕上げ後から養生までの間に、さらに100g/m
2(固形分換算で15g)、スプレーを用いてコンクリート表面に噴霧した(実施例)。
また、比較のために、水性養生剤200g/m
2を、それぞれ、コンクリート表面の締固め後からコテ仕上げの間(比較例1)と、コテ仕上げ後から養生までの間(比較例2)に、スプレーを用いてコンクリート表面に噴霧した。
次に、前記養生剤を噴霧したコンクリート表面に、白熱電球を用いて光を照射するとともに、気温40℃、相対湿度30%、および風速3m/秒の条件下で送風してひび割れの発生を促進した。そして、打設後24時間経過した時に、クラックスケールを用いてひび割れの幅と長さを測定し、ひび割れ面積を求めた。その結果を
図2に示す。
【0023】
図2に示すように、ひび割れ面積は、比較例1では560mm
2/m
2、比較例2では1300mm
2/m
2であるが、実施例ではゼロであった。したがって、本発明の方法を用いれば、養生剤のひび割れ抑制効果が著しく高まり、コンクリート表面のひび割れを抑制することができる。