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特開2022-25414熱転写インクリボン、画像形成方法およびプリンタ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022025414
(43)【公開日】2022-02-10
(54)【発明の名称】熱転写インクリボン、画像形成方法およびプリンタ
(51)【国際特許分類】
   B41J 31/00 20060101AFI20220203BHJP
   B41J 2/325 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
B41J31/00 C
B41J2/325 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020128219
(22)【出願日】2020-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】星野 文哉
【テーマコード(参考)】
2C065
2C068
【Fターム(参考)】
2C065AA01
2C065AB09
2C065AC01
2C065AF02
2C065DA17
2C065DA21
2C065DA22
2C068AA02
2C068AA06
2C068AA15
2C068BD23
2C068BD32
(57)【要約】
【課題】インクパネルを無駄にすることが少ない熱転写インクリボン、画像形成方法およびプリンタを提供する。
【解決手段】熱転写インクリボン10であって、耐熱性の基材上に、それぞれ熱転写インクからなるシアン、マゼンタ、イエロー、墨の4色のインクパネルと、接着層であるプライマパネル2つとを一組とするインクパネルセットが、面順次に複数組設けられ、前記インクパネルおよび2つのプライマパネルは、少なくとも画像が記録される記録媒体の被記録領域を覆う大きさを有している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱転写インクリボンであって、耐熱性の基材上に、それぞれ熱転写インクからなるシアン、マゼンタ、イエロー、墨の4色のインクパネルと、接着層であるプライマパネル2つとを一組とするインクパネルセットが、面順次に複数組設けられ、前記インクパネルおよび2つのプライマパネルは、少なくとも画像が記録される記録媒体の被記録領域を覆う大きさを有していることを特徴とする熱転写インクリボン。
【請求項2】
請求項1に記載の熱転写インクリボンから、支持体上に熱転写可能な転写層を有する中間転写フィルムに、画像サイズおよび記録位置のデータを含む画像データに基づき前記熱転写インクを転写して、第1の前記転写層上に記録媒体の表面の記録画像を、第2の前記転写層上に裏面の記録画像を、順次形成する1次転写工程と、前記中間転写フィルムから、画像が形成された第1と第2の転写層を記録媒体の表面と裏面にそれぞれ熱転写する二次転写工程と、を有する間接転写方式の画像形成方法であって、
前記1次転写工程の前に、記録される画像の記録位置情報と画像データから、表面の記録画像と裏面の記録画像の記録領域が重なるか否かを判定し、重ならない場合は、表面の記録画像の形成と裏面の記録画像の形成を、前記熱転写インクリボンの同一のインクパネルセットを使用して行うことを特徴とする画像形成方法。
【請求項3】
表面の記録画像と裏面の記録画像とで墨の記録領域が重なる場合、表裏で重なった領域の墨の画像データとシアン、マゼンタ、イエローの画像データを比較して、シアン、マゼンタ、イエローのいずれの画像データとも重ならないと判定されたとき、表裏で重なった領域の墨の画像データをシアン、マゼンタ、イエローのデータに合成し、かつ当該重なった領域の墨のデータを消去して、重なった領域の表裏いずれかの墨の画像をシアン、マゼンタ、イエローのインクを重ねることで記録することを特徴とする請求項2に記載の画像形成方法。
【請求項4】
サーマルヘッドとプラテンローラを有し、請求項1に記載の熱転写インクリボンから中間転写フィルムに熱転写インクを転写して記録媒体の表面の記録画像と裏面の記録画像を順次形成する一次転写を行う一次転写部と、記録媒体に中間転写フィルムから画像を熱圧転写する二次転写を行うヒートローラを有する二次転写部と、記録媒体の表裏を反転させる反転部と、各色の画像データの表裏の記録位置を比較して記録位置の重なりの有無を判定する判定部を有し、前記一次転写の前に、記録される画像の記録位置情報と画像データから、表面の記録画像と裏面の記録画像の画像データの記録領域が重なるか否かを判定部で判定し、重ならない場合は、表面の記録画像の一次転写と裏面の記録画像の一次転写を、前記熱転写インクリボンの同一のインクパネルセットを使用して行うことを特徴とするプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱転写インクリボンを用いて中間転写フィルムに画像を記録し、記録された画像を記録媒体に再度転写することで記録媒体に画像を記録する間接転写記録方式に用いる熱転写インクリボン、それを用いた画像形成方法およびプリンタに関し、特に、使用する熱転写インクリボンの無駄を少なくできる熱転写インクリボン、画像形成方法およびプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
インク層を有する熱転写インクリボン(以下単に「インクリボン」ともいう)を用いて、サーマルヘッド印字による画像形成を行なう手法は既に公知の技術であり、カードへの印字や写真画像の出力、シール類への印字など多様な用途に用いられている。しかし、これらの印字手法の多くは、特定の受像層を媒体表面に設ける必要があり、その組合せが限定されるという問題があった。
【0003】
そこで、インクリボンを用いて、特定の受像層を有する中間転写フィルム上に画像を形成し、その後、記録媒体に再転写することにより、記録媒体のベース基材を選ばずに多色画像を形成することが可能な手法として、間接熱転写方式が提案されてきた(例えば、特許文献1)。
【0004】
間接熱転写方式は、主にパスポートやIDカードなどの個人認証媒体等の記録媒体に対して、多色画像を形成する手段として用いられてきた。その際、中間転写フィルムには記録媒体の記録面のサイズに合わせた記録エリアが設定され、熱転写インクリボンにはシアン、マゼンタ、イエロー、墨などの各色インクパネルが該記録エリアのサイズに合わせた大きさで面順次に形成されていた。そして各色の熱転写インクを記録エリアに重ねて熱転写することで、フルカラー画像や文字画像などを中間転写フィルム上に形成し、次いで記録媒体の記録面に熱圧転写して記録を完成していた。
【0005】
このような従来の間接転写方式においては、一般に、図6に例示した熱転写リボン70の様にシアン、マゼンタ、イエロー、墨などの各色のインクパネルおよび記録媒体への接着層となるプライマのインクパネルを1画面分のセットとして形成したものがインクリボンとして用いられ、記録媒体の両面に記録を行う場合に、表面用、裏面用で各1セットずつのインクリボンを使用されている。ところが、一般的なIDカードなどの記録媒体では、表面側にはフルカラー画像71、72を記録し、裏面側には墨文字画像73のみ、あるいは墨文字73と小さなカラーのロゴマーク74などを記録する場合が多い。そのため、実際に記録されるフルカラー画像のサイズがインクパネルの大きさに比して小さなものである場合などでも、表裏両面分のインクパネル全体が消費されたものとして扱われ、インクパネルの相当部分を占める未使用部分が無駄になってしまっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3063421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記のような問題点を解決するためなされたもので、間接熱転写方式で画像形成の際に、インクパネルを無駄にすることが少ない熱転写インクリボン、画像形成方法およびプリンタを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の第1の側面は、
熱転写インクリボンであって、耐熱性の基材上に、それぞれ熱転写インクからなるシアン、マゼンタ、イエロー、墨の4色のインクパネルと、接着層であるプライマパネル2つとを一組とするインクパネルセットが、面順次に複数組設けられ、前記インクパネルおよび2つのプライマパネルは、少なくとも画像が記録される記録媒体の被記録領域を覆う大きさを有していることを特徴とする熱転写インクリボンである。
【0009】
また本発明の第2の側面は、
上記の熱転写インクリボンから、支持体上に熱転写可能な転写層を有する中間転写フィルムに、画像サイズおよび記録位置のデータを含む画像データに基づき前記熱転写インクを転写して、第1の前記転写層上に記録媒体の表面の記録画像を、第2の前記転写層上に裏面の記録画像を、順次形成する1次転写工程と、前記中間転写フィルムから、画像が形成された第1と第2の転写層を記録媒体の表面と裏面にそれぞれ熱転写する二次転写工程と、を有する間接転写方式の画像形成方法であって、
前記1次転写工程の前に、記録される画像の記録位置情報と画像データから、表面の記録画像と裏面の記録画像の記録領域が重なるか否かを判定し、重ならない場合は、表面の記録画像の形成と裏面の記録画像の形成を、前記熱転写インクリボンの同一のインクパネルセットを使用して行うことを特徴とする画像形成方法である。
【0010】
上記の画像形成方法において、
表面の記録画像と裏面の記録画像とで墨の記録領域が重なる場合、表裏で重なった領域の墨の画像データとシアン、マゼンタ、イエローの画像データを比較して、シアン、マゼンタ、イエローのいずれの画像データとも重ならないと判定されたとき、表裏で重なった領域の墨の画像データをシアン、マゼンタ、イエローのデータに合成し、かつ当該重なった領域の墨のデータを消去して、重なった領域の表裏いずれかの墨の画像をシアン、マゼンタ、イエローのインクを重ねることで記録する様にしても良い。
【0011】
また本発明の第3の側面は、
サーマルヘッドとプラテンローラを有し、上記の熱転写インクリボンから中間転写フィルムに熱転写インクを転写して記録媒体の表面の記録画像と裏面の記録画像を順次形成する一次転写を行う一次転写部と、記録媒体に中間転写フィルムから画像を熱圧転写する二次転写を行うヒートローラを有する二次転写部と、記録媒体の表裏を反転させる反転部と、各色の画像データの表裏の記録位置を比較して記録位置の重なりの有無を判定する判定部を有し、前記一次転写の前に、記録される画像の記録位置情報と画像データから、表面の記録画像と裏面の記録画像の画像データの記録領域が重なるか否かを判定部で判定し、重ならない場合は、表面の記録画像の一次転写と裏面の記録画像の一次転写を、上記の熱転写インクリボンの同一のインクパネルセットを使用して行うことを特徴とするプリンタである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、1次転写工程時に表裏の記録画像のレイアウトから画像データの記録領域の重なりの有無を判定し、重なりが無い場合は表面側の一次転写に使用したインクパネルを裏面側の一次転写にも使用することで、インクリボンを無駄にすることがなく記録媒体の表裏両面に画像形成することができる熱転写インクリボン、画像形成方法及びプリンタが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の熱転写インクリボンとそれを用いた画像形成の態様を示す説明図。
図2】画像データを画像メモリ上にマッピングした状態の模式図。
図3】本発明のプリンタの概略構成図。
図4】一次転写後の本発明の熱転写インクリボンの平面図。
図5】本発明の画像形成方法の一次転写工程のフローチャート。
図6】従来の熱転写インクリボンを用いた画像形成の態様の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。なお本発明は以下に説明する実施形態に限定されるものではない。また以下に示す実施形態では、発明を実施するために技術的に好ましい限定がなされているが、この限定は本発明の必須要件ではない。
【0015】
図1は、本発明の熱転写インクリボンとそれを用いた画像形成の態様を示す説明図である。本実施形態のインクリボン10は、耐熱性の基材フィルムの片面にシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、墨(Bk)の4色の熱転写インク層が設けられたインクパネルが面順次に設けられ、続いて接着層が設けられたプライマパネルが2つ設けられて一組のパネルセットを構成している間接熱転写記録用のインクリボンである。2つのプライマパネルは、記録媒体の表裏両面への転写のために設けられており、一組のインクパネルセットで記録媒体の表裏両面への記録が行えるものである。
【0016】
中間転写フィルム20は、耐熱性の支持体の片面に、剥離層と受像層を含む2層以上の多層構造からなる転写層を有している。中間転写フィルム20の幅と各記録エリアの搬送方向の長さ、およびインクリボン10の幅と各インクパネルの搬送方向の長さは、少なくとも最終的に記録が行われる記録媒体の被記録領域を覆う大きさを有する様に設定される。これにより、後述する様に一組のインクパネルセットで記録媒体の表裏両面へ記録を行う場合に支障がない。また1つの記録エリアごとに、記録エリアの位置検出のためにセンサマーク20mを設けても良い。
【0017】
上記のインクリボンおよび中間転写フィルムを用いた画像形成工程の概要を、図3に示す本発明のプリンタの概略構成図を用いて説明する。まず記録媒体の表面側に記録される画像の一次転写工程では、一次転写部501において、インクリボン10と中間転写フィルム20は、中間転写フィルム20の受像層とインクリボン10のインクパネルが対向する様に重ねてサーマルヘッド50Tとプラテンローラ50Pに挟持されながら搬送方向に搬送されつつ、サーマルヘッド50Tで加熱されて中間転写フィルム20の表面用パネルの受像層に所定の画像を熱転写記録する。同様に、各インクパネルの熱転写インクが、順次受像層に重ねて記録され、最後にプライマパネルから接着層が重ねて転写される。同様にして記録媒体の裏面側に記録される画像情報が中間転写フィルムの裏面用パネルに記録される。なお、表面用パネル、裏面用パネルの名称は、説明の便宜のためのもので、実際には特段の差異はない。インクリボン10および中間転写フィルム20は通常ロール状に巻かれた態様で供給され、ロールから順次巻き出されながら使用される。
【0018】
次いで一次転写工程を終了した中間転写フィルム20が二次転写部502に搬送され、二次転写工程では、記録媒体508の表面側にまず表面用パネルがヒートローラ50Hにより熱圧転写され、続いて記録媒体508は反転部503に搬送されて表裏を反転され、二次転写部502に戻され、裏面側に裏面用パネルがヒートローラ50Hにより熱圧転写される。
【0019】
このとき、中間転写フィルム20の記録媒体の表面側の画像を記録する記録エリアには、例えば顔写真などの一般的なカラー画像21がインクパネルの一般的な3原色であるシアン、マゼンタ、イエローの熱転写インクの色重ねにより記録される。また顔写真以外にもカラーの文字、ロゴやマーク等22が記録されることがある。また墨インクによる文字情報が記録されることもある。またそれに続く裏面側の画像を記録する記録エリアには、例えば墨インクによる文字情報23が記録され、またシアン、マゼンタ、イエローの色重ねによりカラーのマーク24が記録されることがある。
【0020】
上記の一次転写工程に先立って、本発明の画像形成方法では、表裏の記録画像の記録位置の重なりの有無の判定を判定部504で行う。判定部504は、機構部分の制御や他のデータの処理を行う制御部(図示せず)の一部に組み込まれた態様でも良い。
【0021】
判定部504での判定方法の概要を説明する。図2は、表面側の記録画像用の画像メモリと裏面側の記録画像用の画像メモリを、空間的な記録位置をメモリ上で合わせる様にして便宜的に重ねて模式的に表示したものである。ここで、画像メモリ40に画像データを展開したときに、表面側に記録する画像41と裏面側に記録される画像42が離間した位置に記録されて重なりが無い場合は、表面側の画像41の記録後のインクリボンにおいて、裏面側の画像42の記録に使用される領域は未使用であり、従って同じインクパネルセットを再度使用しても支障なく裏面側の画像42の記録が行え、表裏の共用印刷モードとなる。
【0022】
これに対し、表面側に記録する画像41と裏面側に記録される画像43が少なくともその一部の領域44で重なっている場合、すなわち、記録された記録媒体の表裏面をそれぞれ平面視したとき、表裏で重なる位置に画像が記録される場合、表面側に画像記録を行った後に同じインクパネルセットを使用して裏面側の画像記録を行うと、重なった領域44ではインクが使用されてしまっているため、裏面側の画像がその領域で欠損してしまうので、同じインクパネルセットを再度使用するのは好ましくない。従ってその場合は裏面側の画像記録のために新たなインクパネルセットを使用する必要があり、表裏の非共用印刷モードとなる。以上の様にして判定が行われる。
【0023】
また、墨画像は通常は墨インクパネルを転写して記録が行われるが、シアン、マゼンタ、イエローの3色のインクを重ねて減色混合することで墨色を再現することも可能であることから、上記の様な判定に加えて、墨画像の画像データが表面側と裏面側で重なっている場合に、重なっている領域を墨インクパネルではなくシアン、マゼンタ、イエローのインクパネルの色重ねで記録可能か否かの判定を行い、可能であればその部分の墨画像のデータをシアン、マゼンタ、イエローの画像データに移行させて合成し、同時に重なった部分の墨画像データを削除することで、表裏の墨画像を一つのインクパネルセットの一つの墨インクパネルで記録できるようにすることができる。
【0024】
図1に例示した本発明のインクリボン10を使用した画像形成方法では、上記の様な判定を一次転写前に行うことで、表面側と裏面側で同じインクパネルセットが使用できる場合は同じインクパネルセットを使用し、使用できない場合は次のインクパネルセットを使用する様にし、トータルでのインクリボンの使用量を抑制し、無駄を少なくすることができる。インクリボン10の幅と各インクパネルの搬送方向の長さは、少なくとも最終的に記録が行われる記録媒体の被記録領域を覆う大きさを有するため、記録媒体の表裏のどの領域に画像が記録されても、表裏の領域が重なっていなければ同じインクパネルセットを使用して記録が行える。
【0025】
具体的に裏面側の画像記録に表面側の画像記録と同じインクパネルセットを使用するには、表面側の一次転写工程の終了後、使用したインクパネルセットの先頭までインクリボンを巻き戻して、裏面側の一次転写工程を中間転写フィルムの次の記録エリアに行えば良い。なお、図1に例示した本発明のインクリボンは、プライマパネルが表裏用に2つ設けられているので、表裏用それぞれのプライマパネルを使用する。
【0026】
上述の画像形成方法の一次転写工程をより詳細に説明するのが図5に示すフローチャートである。以下にフローチャートに従って処理工程を説明する。
S1:印刷開始指示。
S2:プリンタの画像データを収納するバッファメモリに記録画像データおよび付随するデータが送られる。
S3:表面に印刷されるフルカラー画像のデータが、CMYの3色のデータとして各色の表面用バッファメモリに印刷イメージとして展開される。
S4:裏面に印刷されるフルカラー画像のデータが、CMYの3色のデータとして各色の裏面用バッファメモリに印刷イメージとして展開される。
S5:表面と裏面のフルカラー画像のCMYデータの位置に重なりがあるか否かを判定部で判定する。
:No(重なりがない)と判定されたらS6へ。
:Yes(重なりがある)と判定されたらS10へ。
S6:表面に印刷される墨画像のデータが、墨データとして表面用墨バッファメモリに印刷イメージとして展開される。
S7:裏面に印刷される墨画像のデータが、墨データとして裏面用墨バッファメモリに印 刷イメージとして展開される。
S8:表面と裏面の墨画像の墨データの位置に重なりがあるか否かを判定部で判定する。
:No(重なりがない)と判定されたらS11へ。
:Yes(重なりがある)と判定されたらS9へ。
S9:S8でYes(重なりがある)と判定されたら、重なりがある部分をCMYのイ ンクパネルの色重ねで記録可能か否かの判定を行う。
:No(不可能)と判定されたらS12へ。
:Yes(可能)と判定されたらS10へ。
S10:重複した領域の墨画像のデータをCMYの画像データに移行させて合成し、同時に重なった部分の墨画像データを削除し、S11へ。
S11:表裏面を一つのインクパネルセットで記録することができる表裏の共用印刷モードとして、バッファメモリに展開されたデータに基づき一次転写工程が開始される。
S12:S5でYes(重なりがある)、S9でNo(不可能)と判定されたら、表裏面を、一つのインクパネルセットで記録することができないので、表面側と裏面側を
別々のインクパネルセットで記録する非共用印刷モードとして、
バッファメモリに展開されたデータに基づき一次転写工程が開始される。
一次転写工程終了後、二次転写工程へと進む。
【0027】
図4は、前述の様にして同一のインクパネルセットを使用して表面側、裏面側の記録を行った後のインクリボンの平面図である。表裏両面の画像記録を一つのインクパネルセットで行ったインクリボン30では、その結果、例えばシアン色のインクパネルで説明すれば、表面側に記録されたフルカラー画像により使用された領域31、同じくカラー文字により使用された領域32と、裏面側のカラーマークにより使用された領域34があるが、これらはいずれもその位置が重なっておらず、支障なく画像記録が行われたことが分かる。マゼンタ、イエローのインクパネルにおいても同様である。
【0028】
また墨のインクパネルには、裏面側の文字記録に使用された領域33がある。プライマパネル35、35は表裏面のそれぞれに使用されたため、いずれも使用済みとなった態様である。
【0029】
本発明の画像形成方法で記録される画像データは、顔写真のようなカラー画像情報や、
これに付随する指紋情報、氏名、住所、各種番号情報といった個人情報、更には画像形成媒体に印画する際の背景画像情報や、カードなどを発行する発行元などを示すためのロゴ情報などを例示することができるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0030】
また、本発明の熱転写インクリボンは、これまで説明した間接熱転写記録方式に限らず、記録媒体に熱転写インクリボンから直接、熱転写インクを転写する直接熱転写記録方式にも適用可能である。上記に説明した間接転写方式における一次転写工程と同様の判定を、記録媒体への直接転写工程に適用すればよい。その場合にも、間接熱転写方式の場合と同様に、熱転写リボンを無駄に使用しない効率的な記録が行える。
【0031】
なお、本発明の熱転写インクリボンには、各インクパネルの搬送方向の位置、幅方向の搬送ズレ、熱転写インクリボンの先端および終端を公知のセンサ類で検出するためのセンサマークを適宜設けても良い。
【0032】
本発明の熱転写インクリボンの色剤としては、カラー画像形成用として昇華性染料を用いることもできるが、パスポートやIDカードといった個人認証媒体に用いるためには、より耐久性の高い色材が望ましく、顔料を用いた熱溶融型インク層とすることが望ましい。
【0033】
各インクパネルに用いる顔料としては、種々の公知の顔料を使用することができ、例えばカーボンブラック、アゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン系、チオインジゴ系、アンスラキノン系、イソインドリノン系等の顔料が挙げられる。これらは、2種類以上を組み合わせて使用することも可能であり、また色相調整のために公知の染料を添加しても良い。
【0034】
これら色材を有する各インク層のバインダー樹脂としては、例えば、ブチラール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレンイミン樹脂、スルホンアミド樹脂、ポリエステルポリオール樹脂、石油系樹脂、エポキシ樹脂、スチレン樹脂、スチレン及びその誘導体、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ヒドロキシメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート等のメタクリル酸エステル類及びメタクリル酸、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート等のアクリル酸エステル、塩化ビニル、酢酸ビニル等のビニル系単量体の単独あるいは共重合体などを用いることができる。また、これらの樹脂は2種類以上混合して用いることもできる。
【0035】
また、各色のインクパネルの熱転写インクには前記顔料やバインダー樹脂の他に、適宜、離型剤、軟化剤、界面活性剤といった添加剤を添加することができる。
【0036】
このようにして形成される本発明の熱転写インクリボンの基材としては、コンデンサペーパー等の紙、またはポリエステルフィルム、ポリスチレン、ポリカーボネート、アクリル、ポリプロピレンフィルム、あるいはセロファン等が挙げられるが、特に耐熱性や取り扱いの容易性等を顧慮するとポリエステルフィルムが好ましく、具体的にはPET(ポリエチレンテレフタレート)やPEN(ポリエチレンナフタレート)等が好ましい。尚、基材の厚みは、機械的強度、取り扱いの容易さ、あるいは入手の容易性等から2~50μmが良いが、より好ましくは2~16μmが好適である。
【0037】
また、基材には、前記各色のインクパネルに対して反対面側にバックコート層を必要に応じて設けることができ、バックコート層としてはサーマルヘッドの熱源に密着する層であり、主に耐熱性や滑り性が求められるが、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、ウレタンシリコーン樹脂、あるいはこれらにシリコーンオイルやワックス、油脂、微粒子などを添加した公知のものを適宜選択することができる。
【0038】
熱転写インクリボンを用いて多色画像が形成される中間転写フィルムは、前述の様に剥離層と受像層を含む2層以上の多層構造からなる転写層を有している。
【0039】
中間転写フィルムの支持体は、熱転写インクリボンなどの基材と同様、PETやPENが好ましく、その厚さには特に制限はないが、プリンタの搬送性等を考慮すると一般的には9~300μmであり、サーマルヘッドによる多色画像の形成及び記録媒体への転写時の熱ロール加熱などを考慮すると、12~100μmがより好ましい。
【0040】
剥離層は、光透過性を有しており、典型的には透明であることが望ましい。そこで、剥離層の材料としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、アクリル系樹脂、フッ素系アクリル樹脂、アクリルシリコーン樹脂、エポキシアクリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、シクロオレフィンポリマー、メチルスチレン樹脂、フルオレン樹脂、セルロース系樹脂、ポリアセタール樹脂、あるいはUV硬化樹脂等の各種樹脂を用いることができ、これらの樹脂にシリコンやフッ素系のパウダーや添加剤、あるいはポリエステル樹脂や各種天然ワックス類、合成炭化水素系ワックス、脂肪族アルコールと酸系ワックス、脂肪酸エステルとグリセライト系ワックス、アミン及びアマイド系ワックス、高級脂肪酸金属塩などを添加したものなどを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0041】
受像層としては、熱可塑性樹脂で、ポリスチレン、ポリα-メチルスチレン等のスチレン樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル等のアクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸エチル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルプチラール、ポリビニルアセタール等のビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、石油樹脂、エチレンアクリル共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体等の合成樹脂、ロジン、スチレンブタジエンゴム、ブチルゴム、ブタジエンアクリロニトリルゴム、ポリ塩素化オレフィン、セルロース誘導体等の1種又は2種以上の熱可塑性樹脂を主成分として用いることができる。
【0042】
また、剥離層と受像層の間にアンカー層や印刷層、OVD層などを設けてもなんら問題はない。
【0043】
以上説明したように、本発明よれば、記録媒体表裏の画像データの位置に重なりがなく、インクパネルの使用領域が重ならない場合は、一周期分のインクパネルセットのインクリボンで表裏両面に画像形成ができ、インクリボンの無駄を抑制でき、表裏のインクパネルの使用領域が重なっている場合も従来とインクリボン使用量があまり変わらず、トータルでインクリボンの使用量を抑制でき、効率的に画像形成が行える。また画像形成が可能な記録媒体の数に対するインクリボンの長さを抑制でき、インクリボンをロール状としたときの直径が大きくならず、プリンタにとっても好ましい。
【符号の説明】
【0044】
10・・・インクリボン
20・・・中間転写フィルム
21・・・カラー画像
22・・・ロゴやマーク等
23・・・文字情報
24・・・カラーのマーク
30・・・一次転写後のインクリボン
31、32、33、34・・・使用された領域
35・・・プライマパネル
40・・・画像メモリ
41・・・表面側に記録する画像
42、43・・・裏面側に記録する画像
44・・・重なった領域
501・・・一次転写部
502・・・二次転写部
503・・・反転部
504・・・判定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6