(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022025488
(43)【公開日】2022-02-10
(54)【発明の名称】吸引作業車及び吸引作業車の真空ポンプの保護方法
(51)【国際特許分類】
E03F 7/10 20060101AFI20220203BHJP
B60P 3/00 20060101ALI20220203BHJP
F04F 1/14 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
E03F7/10 Z
B60P3/00 Q
F04F1/14 C
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020128330
(22)【出願日】2020-07-29
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】594043166
【氏名又は名称】株式会社マツモト
(74)【代理人】
【識別番号】100114627
【弁理士】
【氏名又は名称】有吉 修一朗
(74)【代理人】
【識別番号】100182501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100175271
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 宣圭
(74)【代理人】
【識別番号】100190975
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 聡子
(72)【発明者】
【氏名】松本 養一
【テーマコード(参考)】
2D063
3H079
【Fターム(参考)】
2D063EB01
2D063EB04
2D063EB08
2D063EB12
2D063EB13
2D063EB25
3H079BB01
3H079BB04
3H079CC11
3H079CC24
3H079DD51
(57)【要約】
【課題】吸引作業中の真空ポンプの破損や焼き付きを自動的に抑止して、真空ポンプを保護することができる吸引作業車を提供する。
【解決手段】吸引作業車Aは、メインタンク1と、メインタンク1から真空ポンプ5に繋がり、経路中に制御バルブV2を有する第一の送給経路と、真空ポンプ5を通り、経路中に制御バルブV4を有する、冷却水を循環させる第二の送給経路と、第一の送給経路又は第二の送給経路に、各送給経路を通る流体の流量又は液位を監視するセンサS1、S2を有するサブタンク3、冷却水タンク4と、メインタンク1を傾けて、重力排出を行うダンプ機構部と、各送給経路を通る流体の流量又は液位が真空ポンプに不具合を生じる意味の変化をしたときに吸引作業を停止する制御部と、各送給経路の各制御バルブV1、V2、V3、V4を操作して各作業のモード切り替えが可能な操作部とを備える。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸引作業、加圧・圧送作業及び重力排出作業が可能であり、
メインタンクと、
前記メインタンクから真空ポンプにつながり、経路中に制御バルブを有する第一の送給経路と、
前記真空ポンプを通り、経路中に制御バルブを有する、冷却水を循環させる第二の送給経路と、
前記第一の送給経路又は前記第二の送給経路に、前記各送給経路を通る流体の流量又は液位を監視するセンサを有するキャッチャーと、
前記メインタンクを開口して傾けて、重力による排出を行うダンプ機構部と、
前記各送給経路を通る流体の流量又は液位が前記真空ポンプに不具合を生じる意味の変化をしたときに吸引作業を停止する制御部と、
前記各送給経路の各制御バルブを操作して前記各作業のモード切り替えが可能な操作部とを備える
吸引作業車。
【請求項2】
前記キャッチャーが前記第一の送給経路に設けられたサブタンクと前記第二の送給経路に設けられた冷却水タンクとからなり、前記センサが、前記サブタンクに設けてある第一の液位センサと、前記冷却水タンクに設けてある第二の液位センサとからなる
請求項1記載の吸引作業車。
【請求項3】
前記操作部が、前記制御バルブを自動操作するバルブ開閉装置を備える
請求項1又は2記載の吸引作業車。
【請求項4】
前記制御部による制御を遠隔操作で行うことが可能な携帯型の遠隔操作装置を備える
請求項1、2又は3記載の吸引作業車。
【請求項5】
真空ポンプによって、メインタンクに回収物を吸引する吸引工程と、
前記メインタンクから、前記メインタンクと前記真空ポンプの間の第一の送給経路に回収物が漏れ出て、前記第一の送給経路に設けてあるサブタンク内に所定量以上に回収物が溜まったときに、それを第一のセンサで検出して、吸引作業を停止させる作業停止工程とを備える
吸引作業車の真空ポンプの保護方法。
【請求項6】
前記真空ポンプを通り、冷却水を循環させる第二の送給経路の冷却水タンク内の水が所定量以下になったときに、それを第二のセンサで検出して、吸引作業を停止させる作業停止工程を備える
請求項5記載の吸引作業車の真空ポンプの保護方法。
【請求項7】
前記制御部による制御を遠隔操作で行うことが可能な遠隔操作装置により行い、作業モードの切り替えは前記操作部により手動で行う
請求項5又は6記載の吸引作業車の真空ポンプの保護方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸引作業車及び吸引作業車の真空ポンプの保護方法に関するものである。詳しくは、吸引作業中の真空ポンプの破損や焼き付きを自動的に抑止して、真空ポンプを保護することができる吸引作業車及び吸引作業車の真空ポンプの保護方法に関する。
【背景技術】
【0002】
吸引作業車は、各種作業現場にある回収が必要な粒状体、粉体、或いは液体などを吸引して回収することができるものである。吸引作業車は、吸引した回収物を一旦貯留するメインタンクを備えており、メインタンク内に貯留した回収物は、適宜排出できるようになっている。
【0003】
吸引作業車は、吸引ホースを使用し、きわめて強い吸引力で作業を行うので、作業には吸引ホースの作業者への吸着や作業者の手の吸い込みなど、大きな危険を伴う。そこで、近年では、特許文献1に記載されているような、作業者がリモコンなどを使用した遠隔操作によって、上記吸引ホースの作業者への吸着のような非常時においても作業停止を容易に行うことができるようにしたものが提案されている。
【0004】
特許文献1に記載の従来の吸引作業車両は、吸引装置の状態を監視するセンサと、各センサ及び吸引装置に接続されて吸引装置の制御を行う制御装置と、制御装置と遠隔通信可能である遠隔操作装置とを備え、この遠隔操作装置が、制御装置と通信可能である通信部と、通信部に接続されて吸引装置の外観図に重ねて各センサによって監視した状態を表示する表示部と、制御装置の操作を入力する操作部とを有する。
【0005】
この吸引作業車両は、上記構成を有することにより、吸引作業現場において吸引作業を行う作業者が吸引装置を操作して吸引作業を行うことができると共に、吸引装置の異常をリアルタイムで確認し、非常時にも遠隔操作装置を使用して作業の停止操作を可能とすることで、安全に吸引作業を行うことができるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記吸引作業車両を含む、従来の一般的な吸引作業車には、旧来続く次のような重要な課題があった。
【0008】
すなわち、吸引作業車のメインタンクは、構造的に真空ポンプに繋がっており、回収物の吸引に使用されたエアは真空ポンプに入り、最終的には外気へ放出される。また、真空ポンプは、循環する冷却水によって冷却されるようになっている。
【0009】
そして、吸引作業において、メインタンク内の回収物の量が満量となったときは作業が停止するように制御される。しかし、この制御が何らかの原因で利かなかった場合は、回収物がオーバーフローしてしまうことがあり、これが真空ポンプへ送られて、真空ポンプが破損してしまう重大な故障が発生することがあった。
【0010】
また、真空ポンプには、吸引作業中、上記したように冷却水が供給されて冷却されているが、冷却水の量が維持されなくなって不足することがあり、これが原因で真空ポンプが焼き付きを起こして、重大な故障になることもあった。
【0011】
この対策として、吸引作業時において、作業者が吸引作業車の側(そば)で、常時エンジン音や真空ポンプの音に注意を払い、異常音が発生したときに、手動によって運転の停止操作を行うようにしていた。しかし、人の判断が伴うこの方法では、停止させるタイミングが遅れてしまうことがあり、少なくない確率で上記故障が起こっていた。
【0012】
本発明は、以上の点を鑑みて創案されたものであり、吸引作業中の真空ポンプの破損や焼き付きを自動的に抑止して、真空ポンプを保護することができる吸引作業車及び吸引作業車の真空ポンプの保護方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(1)上記の目的を達成するために本発明は、吸引作業、加圧・圧送作業及び重力排出作業が可能であり、メインタンクと、前記メインタンクから真空ポンプにつながり、経路中に制御バルブを有する第一の送給経路と、前記真空ポンプを通り、経路中に制御バルブを有する、冷却水を循環させる第二の送給経路と、前記第一の送給経路又は前記第二の送給経路に、前記各送給経路を通る流体の流量又は液位を監視するセンサを有するキャッチャーと、前記メインタンクを開口して傾けて、重力による排出を行うダンプ機構部と、前記各送給経路を通る流体の流量又は液位が前記真空ポンプに不具合を生じる意味の変化をしたときに吸引作業を停止する制御部と、前記各送給経路の各制御バルブを操作して前記各作業のモード切り替えが可能な操作部とを備える吸引作業車である。
【0014】
本発明の吸引作業車は、第一の送給経路と第二の送給経路の制御バルブを適宜開閉することにより、各作業モードに対応可能な流通経路を設定することができる。
吸引作業を行う際には、メインタンクから第一の送給経路を通り、真空ポンプへ吸引され、メインタンクに回収物が溜まる。
【0015】
第一の送給経路を通る流体の流量又は液位をセンサで監視することにより、流量又は液位の前記真空ポンプに不具合を生じる意味の好ましくない変化を検出して、制御部で吸引作業を停止することにより、この流量又は液位の変化に起因する不具合の発生を防止することができる。
【0016】
加圧・圧送作業を行う際には、第一の送給経路の流体の流れが、吸引作業とは逆方向の流れとなるように各制御バルブを設定し、メインタンク内の圧力を所定の圧力に上げることにより、回収物を排出口から外部へ排出することができる。
【0017】
また、重力排出作業を行う際には、メインタンクをダンプ機構部により、ハッチ(ハッチバック)を開放した開口部側に傾倒させてダンプアップすることにより、内部の回収物を自然落下させて排出することができる。
【0018】
(2)本発明に係る吸引作業車は、前記キャッチャーが前記第一の送給経路に設けられたサブタンクと前記第二の送給経路に設けられた冷却水タンクとからなり、前記センサが、前記サブタンクに設けてある第一の液位センサと、前記冷却水タンクに設けてある第二の液位センサとからなる構成とすることもできる。
【0019】
この場合、サブタンクに回収物が溜まると水位が上がるので、第一の液位センサでは、予め設定された水位の上限を監視する。水位が上限を超えると、制御部に信号が送られて、吸引作業は停止する。これにより、真空ポンプへ回収物の一部が送られて真空ポンプの破損が起こることが抑止され、重大な故障の発生を防止することができる。
【0020】
また、冷却水タンクに設けてある第二の液位センサでは、冷却水の水位の予め設定された下限を監視する。水位が下限以下になると、制御部に信号が送られて、吸引作業は停止する。これにより、真空ポンプの焼き付きが起こることが抑止され、重大な故障の発生を防止することができる。
【0021】
(3)本発明に係る吸引作業車は、前記操作部が、前記制御バルブを自動操作するバルブ開閉装置を備える構成とすることもできる。
【0022】
この場合は、操作部が制御バルブを自動操作するバルブ開閉装置を備えているので、操作開始から操作完了までのタイムラグをなくすことが可能になり、作業モードの切り替えが迅速にできる。また、作業者による手作業とは相違して、制御バルブの開閉ミスが起こらないので、これによる事故の発生も防止できる。
【0023】
(4)本発明に係る吸引作業車は、前記制御部による制御を遠隔操作で行うことが可能な携帯型の遠隔操作装置を備える構成とすることもできる。
【0024】
この場合は、例えば一人の作業者で吸引作業を行っているときに、吸引ホースが作業者に吸着して、作業者が身動きできなくなった場合でも、作業者が携帯している遠隔操作装置を操作して、吸引作業を停止させれば、危険回避が可能であり、安全性に寄与できる。
【0025】
(5)上記の目的を達成するために本発明は、真空ポンプによって、メインタンクに回収物を吸引する吸引工程と、前記メインタンクから、前記メインタンクと前記真空ポンプの間の第一の送給経路に回収物が漏れ出て、前記第一の送給経路に設けてあるサブタンク内に所定量以上に回収物が溜まったときに、それを第一のセンサで検出して、吸引作業を停止させる作業停止工程とを備える吸引作業車の真空ポンプの保護方法である。
【0026】
本発明の吸引作業車の真空ポンプの保護方法によれば、第一の送給経路に設けてあるサブタンク内に所定量以上に回収物が溜まったときに、それを第一のセンサで検出して、吸引作業を停止させることができる。これにより、真空ポンプへ回収物の一部が送られて真空ポンプの破損が起こることが抑止され、重大な故障の発生を防止することができる。
【0027】
(6)本発明に係る吸引作業車の真空ポンプの保護方法は、前記真空ポンプを通り、冷却水を循環させる第二の送給経路の冷却水タンク内の水が所定量以下になったときに、それを第二のセンサで検出して、吸引作業を停止させる作業停止工程を備える構成とすることもできる。
【0028】
この場合は、第二の送給経路の冷却水タンク内の水が所定量以下になったときに、それを第二のセンサで検出して、真空ポンプへ送られる冷却水が、冷却機能を果たせなくなるまで減ってしまう前に、吸引作業を停止させることができる。これにより、真空ポンプの焼き付きが起こることが抑止され、重大な故障の発生を防止することができる。
【0029】
(7)本発明に係る吸引作業車の真空ポンプの保護方法は、前記制御部による制御を遠隔操作で行うことが可能な遠隔操作装置により行い、作業モードの切り替えは前記操作部により手動で行う構成とすることもできる。
【0030】
この場合は、遠隔操作装置では、作業モードの切り替えを行わないので、緊急時にも同じ作業モードでの危険回避操作、つまりは作業停止操作に集中すればよいので、操作が単純化し、危険回避をより確実に行うことができ、安全性に寄与できる。
【発明の効果】
【0031】
本発明は、吸引作業中の真空ポンプの破損や焼き付きを自動的に抑止して、真空ポンプを保護することができる吸引作業車及び吸引作業車の真空ポンプの保護方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明に係る吸引作業車の一実施の形態を示す側面視説明図である。
【
図3】
図1に示す吸引作業車の平面視説明図である。
【
図4】操作部を示し、(a)は作業モード切替パネルの正面視説明図、(b)は作業モード切替パネルを開いた状態のスイッチパネルの正面視説明図である。
【
図6】スロットル上下装置を示し、(a)は側面視要部断面説明図、(b)ロータリーソレノイドの説明図である。
【
図7】ハッチのロックとロック解除をするロック装置を示し、(a)はメインタンクのボディ側から見た要部断面説明図、(b)はハッチ側から見た説明図である。
【
図8】吸引作業車による吸引作業におけるエアと水の流れ、及び回収物の移動を示す説明図である。
【
図9】真空ポンプを保護する保護装置の構成を示す説明図である。
【
図10】吸引作業時における制御バルブの状態を示す説明図である。
【
図11】吸引作業車による加圧・圧送作業におけるエアの流れを示す説明図である。
【
図12】加圧・圧送作業時における制御バルブの状態を示す説明図である。
【
図13】重力排出作業時におけるエアの流れを示す説明図である。
【
図14】中立運転時におけるエアの流れを示す説明図である。
【
図15】中立運転時における制御バルブの状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1乃至
図15を参照して、本発明の実施の形態を更に詳細に説明する。
吸引作業車Aは、(1)各種作業現場で生じる回収物を吸引ホースで吸引してメインタンク1に積載する吸引作業、(2)メインタンク1内に積載した回収物を決められた場所に圧送ホースで送る加圧・圧送作業、及び(3)メインタンク1内に積載した回収物を、メインタンク1をダンプアップして自然落下によって排出する重力排出作業を行うことができる作業車である。
【0034】
吸引作業車Aは、自走車両であり、車台Cを有している。
車台Cの後部には、メインタンク1を有している。メインタンク1の、後部が開口し前部が閉塞した有底ドラム形状のボディ10は、その後端下部に設けられた支承部材(符号省略)が横軸100で軸支されている。
【0035】
ボディ10は、車台Cとボディ10間に、左右両側(
図3で上下側)に設けられた油圧シリンダー11の作動によって、前側が上下動することで回動可能である(
図13参照)。なお、メインタンク1と横軸100と各油圧シリンダー11は、ダンプ機構部を構成する。
【0036】
ボディ10の前部側の上部には、鉛直方向へダクト(符号省略)が設けられ、ダクトには移送ホース12の一端部が接続されている。移送ホース12は、可撓性を有すると共に、内部の急激で真空に近い減圧及び加圧時の高圧に耐える充分な強度を有している。また、移送ホース12は所定の長さに設定され、他端部は後述するサイクロン2の導入管20に接続されている。
【0037】
メインタンク1は、ボディ10の後部開口側に開閉可能なハッチ13を有している。ハッチ13は、ボディ10の後端上部に横軸101で軸支され、ボディ10とハッチ13間に、左右両側に設けられた油圧シリンダー14の作動によって上下方向へ回動して開閉可能である。
【0038】
ハッチ13の中央よりやや下側には、吸引接続管130が内外を貫通して設けられている。吸引接続管130は、常態(
図1、
図3の状態)において、前側が上がり傾斜して、その先端の排出口(符号省略)がボディ10の内天部の近傍に位置するようにしてある(
図8等参照)。
【0039】
吸引接続管130には、後述する吸引作業の際に、吸引ホース131が接続される。吸引ホース131は、可撓性を有すると共に、少なくとも内部の急激で真空に近い減圧に耐える充分な強度を有している。
【0040】
また、ハッチ13の左寄り(
図3で下側)、かつ下端近傍には、圧送接続管132が内外を貫通して設けられている。圧送接続管132には、後述する加圧・圧送作業を行う際に、圧送ホース(図示省略)が接続される。
【0041】
圧送ホースは、可撓性を有すると共に、少なくとも内部が急激に高圧になっても耐えられる充分な強度を有している。なお、上記吸引接続管130と圧送接続管132には、ホースを接続したときには開き、接続しないときには閉じる機能を有するボールコックが使用されている。
【0042】
ハッチ13には、ハッチ13を閉じたときに、その状態をロックしたり解除したりすることができるロック装置15を備えている(
図7参照)。ロック装置15は、ボディ10の左右両側の下寄りに設けられている。なお、
図7では、右側のロック装置15を表している。
【0043】
上記ハッチ13は、自身の外周縁に設けられたフランジ134を、ボディ10の開口側の外周縁に設けられたフランジ102にパッキン(図示省略)を介して密着させた状態でロックされる。ロックは、回動する軸150の先端に固定されたロック片151によって行われる。また、ハッチ13のロック状態は、図示していない近接センサにより検出されるようになっている。
【0044】
軸150は、ボディ10側に固定された軸受部材152に貫通して軸支され、その一端部は、フランジ102を回転可能に貫通している。軸150の貫通した側の先端部には、上記したようにロック片151が固定されている。また、軸150のロック片151とは反対側の端部には、アーム片153が固定されている。
【0045】
一方、ボディ10の外面には、ロッドを下方へ向け、シリンダーの基端を取付部材154に回動可能に軸支して、油圧シリンダー155が取り付けられている。油圧シリンダー155のロッド先部とアーム片153の先部は、ボルトピン156で回動可能に接続されている。
【0046】
なお、ロック片151とアーム片153は、油圧シリンダー155のロッドが伸長したときに、ロック片151が、閉じたハッチ13のフランジ134に強く抑えるように被さり、ロッドが縮んだときにフランジ134から外れるところまで回る、軸回転方向の角度を以て軸150に固定されている。
【0047】
また、車台Cの前部には、サブタンク3と冷却水タンク4が左右に並んで設けられている。冷却水タンク4は、冷却水を溜めるタンクであり、内部に所定量の水を溜めた状態を維持できるようにしている。
【0048】
冷却水タンク4のやや後方には、サイクロン方式の遠心分離機であるサイクロン(サイクロン集塵器)2が設けられている。サイクロン2は導入管20が接続されており、導入管20には、後述するように移送ホース12が接続される。
【0049】
ここで
図8、
図11、
図13及び
図14を合わせて参照する。
サイクロン2とサブタンク3の上部は送給管30で接続されている。送給管30の経路途中には、電磁式バタフライ弁である制御バルブV2が設けられている。
【0050】
また、車台Cのほぼ中央には真空ポンプ5が設置されている。真空ポンプ5は、油圧ポンプ(符号省略)と共に、吸引作業車AのエンジンのPTO(動力取出軸)から動力を取り、駆動される(
図10、
図12、
図15参照)。真空ポンプ5は、エンジンの回転力によって回収物の吸引又は圧送を行うものであり、エンジンの回転数によって流量の調整が可能である。また、油圧ポンプは、油圧シリンダー等の油圧機器にオイルを供給して駆動する。
【0051】
真空ポンプ5の吸引口(符号省略)とサブタンク3の上部は、送給管50で接続されている。送給管50の経路途中には、送給管51が接続されており、その経路途中には、制御バルブV1が設けられている。なお、サブタンク3は、正常状態では内部に空間(符号省略)があり、送給管50には、サブタンク3の液位がオーバーフローしない間はエアが通るようになっている。
【0052】
真空ポンプ5の排出口(符号省略)と上記冷却水タンク4の上部側は、送給管40で接続されている。送給管40の経路途中には、制御バルブV4が設けられている。冷却水タンク4の上部側には、エアを抜く排気管41が設けられている。
【0053】
また、冷却水タンク4の底部からは、冷却水を送る送給管42が導出され、送給管50の経路中に接続されている。なお、上記移送ホース12、導入管20、及び送給管50は、第一の送給経路を構成している。また、上記送給管40、送給管42、及び送給管50は、第二の送給経路を構成している。
【0054】
そして、送給管30のサブタンク3から制御バルブV2より遠い部分と、送給管40の冷却水タンク4から制御バルブV4より遠い部分とが、接続管31により接続されており、接続管31の経路途中には、制御バルブV3が設けられている。
【0055】
また、サブタンク3の内部には、上部寄りの所定の高さに、第一のセンサである液位センサS1が設けられている。液位センサS1は、サブタンク3の内部にメインタンク1でオーバーフローした回収物をキャッチし、その量が所定量を超えたときに、上がった水位を検知するセンサである(
図8、
図11、
図13、
図14参照)。
【0056】
更に、冷却水タンク4の内部には、下部寄りの所定の高さに、第二のセンサである液位センサS2が設けられている。液位センサS2は、冷却水タンク4の内部の冷却水が所定の量以下になったときに、下がった水位を検知するセンサである(
図8、
図11、
図13、
図14参照)。
【0057】
液位センサS1、S2は、
図9に示すように、何れも、運転の正常状態からの水位の変化を検知したときには、後述する制御部72に停止信号を入力し、吸引作業を初めとする真空ポンプが作動する各作業が中立状態(アイドリング状態)となり作業を停止させる。また、何れも、水位が運転の正常状態に戻ったときには、制御部72に電源入信号を入力し、各作業を再開させるようにしてある。
【0058】
なお、本実施の形態では、第一、第二のセンサとして液位センサを使用し、液位センサS1にはニュートラルオープン型、液位センサS2にはニュートラルクロス型のセンサを採用したが、これに限定するものではなく、センシングの方法が異なる公知の各種センサを採用することも可能である。
【0059】
また、上記各制御バルブV1、V2、V3、V4は、上記各作業モード、(1)吸引作業モード、(2)加圧・圧送作業モード、(3)重力排出作業モード、又は中立状態に対応して開閉制御が行われる。この際の各制御バルブV1、V2、V3、V4の開閉は、以下説明するように開閉装置9、9a、9b、9cにより行われる。
【0060】
なお、制御バルブV1は開閉装置9により開閉操作され、制御バルブV2は開閉装置9aにより開閉操作され、制御バルブV3は開閉装置9bにより開閉操作され、制御バルブV4は開閉装置9cにより開閉操作される(
図1乃至
図3参照)。
【0061】
ここで、開閉装置9、9a、9b、9cについて、主に要部拡大図である
図2を参照して説明する。なお、開閉装置9、9a、9b、9cは同様の構造であるので、以下の構造の説明は開閉装置9を例に取り説明し、他の装置については説明を省略する。
【0062】
開閉装置9は、送給管に固定されている縦に長い基盤90を有し、基盤90にはエアシリンダー91がロッドを下に向けて取り付けてある。基盤90の下部には、上記制御バルブV1の開閉操作を行う揺動レバー92が設けてある。エアシリンダー91のロッド先端部は、揺動レバー92の先端部に回動可能に軸支されている。
【0063】
これにより、エアシリンダー91が作動してロッドが伸縮することにより、揺動レバー92が回動し、負荷開放弁である制御バルブV1の開閉操作を行うことができる。そして、同様に、制御バルブV2、V3、V4も、それぞれ対応する開閉装置9a、9b、9cによって開閉操作を行うことができる。
【0064】
制御バルブV1、V2、V3、V4は、
図10、
図12、
図15に示すようにエアタンク8の空気圧を利用し、エアシリンダー91を作動させて、電磁切替バルブであるイ弁80、ロ弁81、ハ弁82により、各作業モードに対応する開閉操作が行われる。イ弁80は、3ポート電磁切替弁であり、エアタンク8に接続されている。
【0065】
ロ弁81とハ弁82は、何れも5ポート電磁切替弁であり、エア経路がイ弁80に並列で接続されている。ロ弁81は、制御バルブV1の開閉操作を行い、ハ弁82は、制御バルブV2、V3、V4の開閉操作を行う。このように、制御バルブV1、V2、V3、V4は、各ポートにイ弁80、ロ弁81、ハ弁82により、適宜エアが送られることにより、開閉操作が行われる。
【0066】
吸引作業車Aの左側の開閉装置9、9a、9b、9cの下方には、後述する制御部72の操作を入力する操作盤7が設けられている(
図1、
図2参照)。
操作盤7は、
図4に示すように、二重構造となった作業モード切替パネル70とスイッチパネル71を有している。
【0067】
作業モード切替パネル70は、
図4(a)に示すように、右側にトグルスイッチであるモード切替スイッチ700が設けられ、吸引作業(上位置)と加圧・圧送作業(下位置)、及び重力排出作業(中間位置)のモード切換を行うことができる。
【0068】
また、吸引作業モードでは左側の上段の緑色のパイロットランプ701が点灯し、加圧・圧送作業モードでは下段の赤色のパイロットランプ703が点灯し、重力排出作業モードでは中段の黄色のパイロットランプ702が点灯する。なお、吸引作業モードにおいてスロットル上げ時には、パイロットランプ704が赤色点灯するようになっている。
【0069】
そして、作業モード切替パネル70を右方へ開くと、スイッチパネル71が表れる。スイッチパネル71は、
図4(b)に示すように、四つの押しボタンスイッチを備えている。左上の「1」のスタートスイッチ710は、吸引作業、加圧・圧送作業時に「入」の操作を行うことができ、右上の「2」の停止スイッチ711は、同じく「切」の操作を行うことができる。
【0070】
また、左下の「3」のスイッチ712は、吸引作業時のみ「スロットル上げ」の操作を行うことができ、右下の「4」のスイッチ713は、同じく「スロットル下げ」の操作を行うことができる。そして、スイッチパネル71の内部には、作業モード切替パネル70とスイッチパネル71の操作によって吸引作業車の各部の作動制御を行う制御部72を備えている。
【0071】
図5を参照し、制御部72により作動制御される吸引作業車の各部について簡単に説明する。操作盤7につながる制御部72は、吸引作業、加圧・圧送作業、及びエンジンスロットルを制御する制御回路(符号省略)と、重力排出作業を制御する制御回路(符号省略)を備えている。
【0072】
制御部72は、吸引作業、加圧・圧送作業、及びエンジンスロットルを制御する制御回路によって、「A」吸引作業、「B」加圧・圧送作業、「C」メイン切替弁、「D」エンジンスロットル上下用モーター(吸引作業時)の各制御を行う。
【0073】
また、「E」エンジンスロットル上下用ロータリーソレノイド(吸引作業時)、及び「F」エンジンスロットル上下用ロータリーソレノイド(加圧・圧送作業、重力排出作業、ハッチ開閉、ダンプ上下時)の各制御を行う。
【0074】
ここで、
図6を参照して、エンジンスロットルを上下させて調整するスロットル上下装置6について説明する。スロットル上下装置6は、基盤(符号省略)に固定されたガイドフレーム60を有し、ガイドフレーム60の内部側には、ガイド62に沿って昇降可能な昇降フレーム63が設けてある。
【0075】
昇降フレーム63にはロータリーソレノイド64Aが保持されている。ロータリーソレノイド64Aの作動アーム640の先端部は、所定の長さに設定されガイドフレーム60に固定された固定ワイヤ600に接続されている。
【0076】
昇降フレーム63の下部は、ガイドフレーム60との間に取り付けられたバネ65によって下方へ付勢されている。昇降フレーム63の上面には支軸66が設けられ、支軸66には、先端部がガイドフレーム60上部のブラケット67に回転可能に軸支された駆動アーム68の中間部が回動可能に嵌め入れてある。
【0077】
また、ガイドフレーム60に隣接してストロークモーター61が固定され、ストロークモーター61のロッド69の先端部は、駆動アーム68の基端部に回動可能に軸支されている。
【0078】
これによれば、ストロークモーター61の作動により、昇降フレーム63とロータリーソレノイド64Aが昇降し、固定ワイヤ600に規制された作動アーム640が回動して、スロットルを上下させて調整することができる。
【0079】
そして、制御部72は、重力排出作業を制御する制御回路によって、「イ」ハッチ開、「ロ」ハッチ閉、「ハ」ハッチロック開放、「ニ」ハッチロック:「ヌ」ロック入完了ブザー、「ホ」ダンプ上、「ヘ」ダンプ下、「ト」ハッチロック開放完了、リードスイッチ左右、「チ」ハッチロック完了、リードスイッチ左右、「リ」ハッチ閉確認近接スイッチ、の各制御を行う。
【0080】
また、操作盤7には、リモコン送信機74からの信号を受信するリモコン受信機73が接続されている。リモコン送信機74は、上記操作盤7のスイッチパネル71と同様に、四つの押しボタンスイッチを備えている。なお、符号744は電源スイッチである。
【0081】
左上の「1」のスタートスイッチ740は、吸引作業、加圧・圧送作業で「入」の操作を行うことができ、右上の「2」の停止スイッチ741は、同じく「切」の操作を行うことができる。また、左下の「3」のスイッチ742は、吸引作業時に「スロットル上げ」の操作を行うことができ、右下の「4」のスイッチ743は、吸引作業時のみ「スロットル下げ」の操作を行うことができる。このように、リモコン送信機74は、操作盤7とほぼ同様の操作が可能である。
【0082】
(作用)
吸引作業車Aによる〔1〕吸引作業、〔2〕加圧・圧送作業、〔3〕重力排出作業について、主に
図8乃至
図15を参照して説明する。
【0083】
吸引作業の対象となる回収物は、例えば汚水槽、排水槽、湧水槽、防火水槽等の各種水槽、或いはコンクリート打設面などの平面、路面など種々の吸引作業現場に貯留又は堆積しているものであり、砂利を含む比較的大きな固体の粒子体、微細な粒子からなる粉体、コロイド溶液からなるゲルやゾルなどのジェル、汚水などの泥状の不純物を含む流体及びこれらの混合物からなるものである。
【0084】
吸引接続管130に接続された所定長さの吸引ホース131の先端には、吸引先端口(図示省略)を備える。作業者は複数でもよいが、以下の説明では、作業者が最小限の一人の場合で説明する。作業者は、リモコン送信機74を携帯している。
【0085】
〔1〕吸引作業
この作業では、真空ポンプ5を吸引ポンプとして使用する。
まず、PTO(動力取出軸)のスイッチを入れ、操作盤7のモード切替スイッチ700を吸引作業側へ入れる。PTOは、真空ポンプ5、及び油圧ポンプを回転させる。
【0086】
パイロットランプ701の点灯確認後、作業モード切替パネル70を開き、スイッチパネル71のスタートスイッチ710を押すか、リモコン送信機74の1ボタンのスタートスイッチ740を押すと、制御バルブV1の負荷解放弁が閉じ、ロータリーソレノイド64Aが作動し、エンジン回転数が所定の回転数に上昇し、吸引作業が開始される。
【0087】
なお、エンジン回転数は、現場の状況に合わせて適宜調整される。この調整は、スイッチパネル71の「3」のスイッチ712と「4」のスイッチ713を操作して行う。なお、リモコン送信機74でも、「3」のスイッチ742と「4」のスイッチ743で操作可能である。
【0088】
また、エンジン回転の上限は、適宜設定された回転数に設定される。このようにして、吸引作業が開始される。なお、スロットルを調整する上記各スイッチを押し続けても、安全のため設定された回転数以上には上がらないようになっている。
【0089】
なお、吸引作業では、上記制御バルブV1と同時に制御バルブV2、V3、V4が吸引作業に対応して開閉操作される。詳しくは、制御バルブV1、V2、V3、V4は、
図10に示すように開閉装置9、9a、9b、9cにより操作され、制御バルブV1は「閉」、制御バルブV2は「開」、制御バルブV3は「閉」、制御バルブV4は「開」となって、
図8に示す吸引作業のための送給経路が形成される。
【0090】
これにより、吸引ホース131から吸引された回収物は、メインタンク1に入り、固形分は下層となり、液分とエアは上層となる。エア及び液分の一部は、移送ホース12、導入管20、サイクロン2を通り、制御バルブV2を通過してサブタンク3に入る。サブタンク3内では、液位センサS1が液位を常時監視している。
【0091】
更に、サブタンク3内の上層のエアが送給管50を通り、真空ポンプ5に入り、送給管40を通って制御バルブV4を通過し、冷却水タンク4に入る。そして、冷却水タンク4内の上層のエアは排気管41から大気に放出され、水量が維持されている下層の水(冷却水)は送給管42を通り、送給管50に合流し、真空ポンプ5に入って真空ポンプ5を冷却する。
【0092】
吸引作業中に何らかの不具合(例えば、作業者に対する吸引ホース131の吸着など)が発生し、吸引作業を中断しなければならない場合、操作盤7の「2」の停止スイッチ711を押すか、リモコン送信機74の「2」の停止スイッチ741を押すと制御バルブV1(負荷解放弁)が開になって、送給経路が
図14に示す経路となり、同時にエンジン回転数は中立状態(アイドリング状態)の所定の回転数になる。
【0093】
中立状態では、
図14、
図15に示すように、制御バルブV1は「開」、制御バルブV2は「開」、制御バルブV3は「閉」、制御バルブV4は「開」となり、中立状態とするための送給経路が形成される。すなわち、送給管51の制御バルブV1を通過したエアが真空ポンプ5に入り、送給管40を通り、制御バルブV4を通過して冷却水タンク4に入り、上層のエアは排気管41から大気へ放出される。
【0094】
これにより、吸引ホース131の吸着が解除され、作業者は自由に動くことができるようになり、周囲の状況を確認して再度吸引作業を始めることができる。再開すると、エンジン回転数も元に戻り、吸引作業が継続される。
【0095】
作業終了後は、操作盤7の「4」のスイッチ713又はリモコン送信機74の「4」のスイッチ743によりスロットルを下げて、次回の吸引作業時のエンジン回転数の急激な上昇を防止するために、スロットル上げのランプを消灯しておく。
【0096】
(真空ポンプ5の保護)
吸引作業中に、メインタンク1が満量になっても、バルブに固形物が詰まる不具合などで吸引作業が停止せずに、回収物がサブタンク3に送られてしまうことがある。こうなると、サブタンク3に溜まることになり、回収物が流入し、オーバーフローして、送給管50を通り真空ポンプ50に入ってしまう恐れがある。
【0097】
本発明の吸引作業車Aでは、サブタンク3に回収物が流入すると液位が上がることを利用して、液位が予め設定した所要量以上になると、それを液位センサS1で検知して、制御部72に信号を送り、吸引作業を停止させる。これにより、真空ポンプ5へ回収物の一部が送られて真空ポンプ5の破損が起こることが抑止され、重大な故障の発生を防止することができる。
【0098】
また、吸引作業中に、気化することにより、冷却水タンク4内の冷却水の量が維持されなくなって、減ってしまうことがある。この場合、真空ポンプ5へ送られる冷却水が足りずに真空ポンプ5が焼き付いてしまうことがあった。
【0099】
本発明の吸引作業車Aでは、冷却水タンク4内の冷却水の水位が予め設定した所要量以下になると、それを液位センサS2で検知して、制御部72に信号を送り、吸引作業を停止させる。これにより、真空ポンプ5へ送られる冷却水が足りない状態で真空ポンプ5が作動を続けて焼き付いてしまうことが抑止され、重大な故障の発生を防止することができる。
【0100】
〔2〕加圧・圧送作業
この作業では、真空ポンプ5を加圧ポンプとして使用する。
加圧・圧送作業においては、回収物は必ず流動性のあるもので、ホースで排出できるものが対象となる。
【0101】
まず、圧送接続管132に接続した圧送ホース(図示省略)を排出する箇所にセットする。次に、PTO(動力取出軸)のスイッチを入れ、操作盤7のモード切替スイッチ700を加圧・圧送作業側へ入れる。PTOは、真空ポンプ5、及び油圧ポンプを回転させる。
【0102】
パイロットランプ703の点灯確認後、作業モード切替パネル70を開き、スイッチパネル71のスタートスイッチ710を押すか、リモコン送信機74の1ボタンのスタートスイッチ740を押すと、各バルブが作動し、ロータリーソレノイド64Bが作動し、エンジン回転数が所定の回転数に上昇し、加圧・圧送作業が開始される。
【0103】
なお、加圧・圧送作業では、上記制御バルブV2、V3、V4が加圧・圧送作業に対応して開閉操作される。詳しくは、制御バルブV1、V2、V3、V4は、
図12に示すように開閉装置9、9a、9b、9cにより操作され、制御バルブV1は「開」、制御バルブV2は「閉」、制御バルブV3は「開」、制御バルブV4は「閉」となって、
図11に示す加圧・圧送作業のための送給経路が形成される。
【0104】
これにより、エアが送給経路50から制御バルブV1を通過して真空ポンプ5に入り、送給管40を通り、制御バルブV4を通過し、送給管31の制御バルブV3を通過して、サイクロン2、導入管20、移送ホース12を通り、メインタンク1に入る。これにより、メインタンク1内の圧力が上がり、回収物が圧送接続管132に接続された圧送ホースから排出される。
【0105】
そして、圧送接続管132のボールバルブに回収物などが詰まり排出不能となった場合、加圧空気はメインタンク1の調圧弁21より吹き出し、メインタンク1や真空ポンプ5の不具合発生を防止している。なお、調圧弁21の作動は、例えば0.05-0.07Mpaで設定されている。
【0106】
加圧・圧送作業が終了したとき、操作盤7の「2」の停止スイッチ711を押すか、リモコン送信機74の「2」の停止スイッチ741を押すと、制御バルブV1、V2、V3、V4が開閉操作されて、送給経路が
図14に示す経路となり、同時にエンジン回転数は中立状態(アイドリング状態)の所定の回転数になる。
【0107】
なお、回収物の圧送は、圧送ホースを接続した定められた場所に排出して行われる。このとき、回収物の固形分と液分の比重の差が大きいと、固形分などの重いものが下に溜まり、排出が困難になる。この対策として、以下の方法がある。
【0108】
まず、圧送接続管132に吸引ホース131を接続してセットし、モード切替スイッチ700を吸引側へ入れ、パイロットランプ701の点灯確認後、操作盤7の「1」のスタートスイッチ710を押すか、リモコン送信機74の「1」のスタートスイッチ740を押し、吸引ホース131が接続された圧送接続管132のボールバルブを開けると、吸引ホース131から急激に空気が流入する。
【0109】
この風圧により、メインタンク1内の回収物が撹拌され、固形分の中の比重に差があるもの同士が液分と混ざり合い、圧送ホース(吸引接続管130側を外した上記撹拌を行った吸引ホース131でも代用可)によって排出可能となる。
【0110】
この後、吸引作業を停止し、モード切替スイッチ700を加圧・圧送側へ入れて、メインタンク1内を加圧し、圧送ホースを通して排出する。これが有効なのは、吸引から加圧の切り替えがごく短時間で行うことができるので、撹拌による混合状態が維持され、その状態で圧送可能なためである。
【0111】
〔3〕重力排出作業
吸引作業で吸引した回収物をメインタンク1内に収容して積載した後、回収物の中で流動性に乏しい固形分などを排出する場合は、
図13に示すようにメインタンク1の後部のハッチ13を開き、メインタンク1の前部をダンプアップして、内部の固形分を自然落下させて排出する。具体的には次のように行われる。
【0112】
まず、エンジン回転数を、指定された回転数にセットし、ハッチ13のロックを、ハッチロックレバー(図示省略)を操作してロック装置15を作動させて解除する。次に、油圧切替レバー(図示省略)をハッチ開の方向へ操作し、制御部72によって油圧シリンダー14を作動させてハッチ13を開く。
【0113】
ハッチ全開後、ダンプレバー(図示省略)を上昇側に操作し、制御部72により油圧シリンダー11を作動させて、ダンプアップする。なお、ダンプアップの際、移送ホース12は自由に変形するので、無理に動くところはなく、作業に支障は生じない。
【0114】
メインタンク1内の回収物の固形分が完全に排出されたことを確認後、油圧シリンダー11を作動させて、ダンプダウンし、油圧切替レバーをハッチ閉の方向へ操作する。ハッチ閉の確認後、ハッチロックレバーを操作しロック装置15を作動させてハッチ13をロックする。そして、エンジン回転数を中立状態にして、重力排出作業を完了する。
【0115】
なお、重力排出作業は、操作盤7の各スイッチとリモコン送信機74の各スイッチの操作でも行うことができる。本発明の吸引作業車Aでは、ロック装置15によるハッチ開閉、ダンプ上げ下げを行う油圧シリンダー11、14に三連電磁切替弁を使用し、電気信号により各油圧シリンダー11、14を連動させるようにしている。
【0116】
また、上記したようにハッチ13の上部側に取り付けられた近接センサ(図示省略)を有し、近接センサはハッチ閉の信号を出力する。更に、ハッチ13のロック開放・ロックを感知するスイッチ、ハッチ13のロック完了を知らせるブザー、エンジン回転を制御するロータリーソレノイド64B、これらを制御する制御回路などを備える(何れも図示省略)。加圧・圧送作業、及び重力排出作業は、エンジン回転数が1000回転(rpm)と定められているので、そのためにロータリーソレノイド64Bが作動する。
【0117】
(重力排出作業の際の操作盤7の各スイッチとリモコン送信機74の各スイッチの操作)
PTO(動力取出軸)のスイッチを入れ、モード切替スイッチ700を中立・重力排出作業モードに切り替え、パイロットランプ702の点灯を確認する。このとき、制御部72の制御回路は中立・重力排出制御回路に変わり、電源は投入されている。
【0118】
排出作業の手順は、ハッチ13のロック開放⇒ハッチ開⇒ダンプアップ、の手順で行われる。まず、ハッチ13のロック開放とハッチ開を、操作盤7の「1」のスタートスイッチ710又はリモコン送信機74の「1」のスタートスイッチ740の操作で同時に行う。
【0119】
スイッチパネル71のスタートスイッチ710を押し続けるか、リモコン送信機74の「1」のスタートスイッチ740を押し続けると、スイッチからの信号は電磁切り替え弁及びアクセル操作のロータリーソレノイド64Bへ入力されて、エンジン回転数は設定された回転数になり、油圧シリンダー14は、閉側へ作動し、ロック装置15の油圧シリンダー155も同時にロック開放側へ作動し、ハッチ13のロック開放はスムーズに行われる。
【0120】
ハッチ13のロック開放が完了すると、ロックの開放信号が制御回路に入力され、制御回路から電磁弁に信号が入力されて、油圧シリンダー14がハッチ開の方向へ作動してハッチ13が開く。
【0121】
ハッチ開を確認後、ダンプ上げスイッチ(操作盤7の「3」のスイッチ712)を押し続けるか、リモコン送信機74の「3」のスイッチ742を押し続けると、制御回路からの信号は電磁切替弁、アクセル操作のロータリーソレノイド64Bへ入力されて、エンジン回転は適宜設定された回転数になり、油圧シリンダー11はダンプ上げ方向に作動し、メインタンク1の前側が上昇して、回収物を自然落下させて排出する。
【0122】
メインタンク1内の回収物が完全に落下したことを確認後、ダンプ下のスイッチ(操作盤7の「4」のスイッチ713)を押し続けるか、リモコン送信機74の「4」のスイッチを押し続けると、制御回路からの信号が電磁切替弁・ロータリーソレノイドに入力され、エンジン回転が指定された回転数になり、油圧シリンダー11はダンプ下げの方向に作動し、メインタンク1の前側が降下する。
【0123】
メインタンク1が完全に降下したことを確認後、ハッチ閉のスイッチ(操作盤7の「2」の停止スイッチ711)を押し続けるか、リモコン送信機74の「2」の停止スイッチ741を押し続けると、制御回路からの信号は、ロータリーソレノイドに入力され、エンジン回転は指定された回転数になり、ハッチ13は閉方向に動き、ハッチ閉になると、メインタンク1上部側に取り付けられたハッチ閉完了スイッチである近接センサが作動する。
【0124】
ハッチ13を完全に閉にするため、近接センサが作動後、1.5-2秒間、油圧シリンダー14は閉の方向へ作動した後、ハッチ閉信号が制御回路に入力され、制御回路から電磁切替弁に電気信号が入力され、油圧シリンダー14は閉方向へ作動して、ロック装置15によりハッチ13のロックが行われる。このとき、ハッチ13のロック完了リードスイッチ(左右)が入になると、ロック完了を知らせるブザーが鳴り、排出作業が完了する。
【0125】
このように、重力排出作業は、回収物(積載物)を一気に自然落下させて排出するため、特に危険を伴う作業である。この作業では、車両近くに人がいないか、排出された回収物が周りに飛散しないか、充分に注意を払わなければならない。
【0126】
本発明の吸引作業車Aでは、この作業を上記のようにリモコン送信機74を操作して行うことにより、車両周りを充分に監視することができ、万一不具合が発生した場合でも、車両側の操作盤7での操作は必ずしも必要なく、直ちに作業を中断できるので、安全性が高い。
【0127】
本明細書及び特許請求の範囲で使用している用語と表現は、あくまでも説明上のものであって、何ら限定的なものではなく、本明細書及び特許請求の範囲に記述された特徴及びその一部と等価の用語や表現を除外する意図はない。また、本発明の技術思想の範囲内で、種々の変形態様が可能であるということは言うまでもない。
【符号の説明】
【0128】
A 吸引作業車
C 車台
1 メインタンク1
10 ボディ
100 横軸
11 油圧シリンダー
12 移送ホース
102 フランジ
13 ハッチ
101 横軸
130 吸引接続管
131 吸引ホース
132 圧送接続管
134 フランジ
14 油圧シリンダー
15 ロック装置
150 軸
151 ロック片
152 軸受部材
153 アーム片
154 取付部材
155 油圧シリンダー
156 ボルトピン
2 サイクロン
20 導入管
21 調圧弁
3 サブタンク
30 送給管
31 接続管
4 冷却水タンク
40 送給管
41 排気管
42 送給管
V1、V2、V3、V4 制御バルブ
5 真空ポンプ
50 送給管
51 送給管
S1 液位センサ
S2 液位センサ
6 スロットル上下装置
60 ガイドフレーム
600 固定ワイヤ
61 ストロークモーター
62 ガイド
63 昇降フレーム
64A ロータリーソレノイド
64B ロータリーソレノイド
640 作動アーム
65 バネ
66 支軸
67 ブラケット
68 駆動アーム
7 操作盤
70 作業モード切替パネル
700 モード切替スイッチ
701 パイロットランプ
702 パイロットランプ
703 パイロットランプ
704 パイロットランプ
71 スイッチパネル
710 スタートスイッチ
711 停止スイッチ
712 スイッチ
713 スイッチ
72 制御部
73 リモコン受信機
74 リモコン送信機
740 スタートスイッチ
741 停止スイッチ
742 スイッチ
743 スイッチ
744 電源スイッチ
8 エアタンク
80 イ弁
81 ロ弁
82 ハ弁
9、9a、9b、9c 開閉装置
90 基盤
91 エアシリンダー
92 揺動レバー
【手続補正書】
【提出日】2021-05-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸引作業、加圧・圧送作業及び重力排出作業が可能であり、
回収物を収容可能で、ダンプアップとダンプダウンが可能なメインタンクと、
前記メインタンクから真空ポンプにつながり、経路中に開閉可能な制御バルブと、経路を通る流体を収容するサブタンクを設けた第1の送給経路と、
前記真空ポンプと冷却水タンクとをつなぎ、経路中に開閉可能な制御バルブを有する、冷却水を循環させる第2の送給経路と、
前記第1の送給経路と第2の送給経路を接続し、経路中に開閉可能な制御バルブを有する第3の送給経路と、
前記サブタンクに設けられ、前記サブタンクに収容された流体の液位を監視する第1のセンサと、
前記冷却水タンクに設けられ、前記冷却水タンクに貯留された冷却水の液位を監視する第2のセンサと、
前記メインタンクを開口しダンプアップして、重力による前記回収物の排出を行うことが可能なダンプ機構部と、
前記吸引作業、加圧・圧送作業及び重力排出作業を制御し、前記第1のセンサ又は前記第2のセンサが前記真空ポンプに不具合を生じる意味の液位の変化を検出したときに、前記吸引作業を停止する制御部と、
前記第1の送給経路、第2の送給経路及び第3の送給経路の前記各制御バルブを操作して前記吸引作業、加圧・圧送作業及び重力排出作業の各作業モードの切り替えが可能な操作部と、
前記各作業モードに対応する操作を遠隔で行うことが可能な携帯型の遠隔操作装置とを備えており、
前記操作部は、前記制御部の操作を入力するための、作業モード切替パネルとスイッチパネルの両方が操作可能に二重構造となった操作盤を有し、前記作業モード切替パネルには、前記吸引作業、前記加圧・圧送作業及び前記重力排出作業の各作業モードの切り替えを行うことができるモード切替スイッチと、前記各作業モードに対応するパイロットランプが設けられ、前記スイッチパネルには、前記各作業モードに対応するスタートスイッチ、停止スイッチ、スロットルの上げスイッチ及びスロットルの下げスイッチが設けられており、
前記遠隔操作装置は、前記各作業モードに対応するスタートスイッチ、停止スイッチ、スロットル上げスイッチ及びスロットル下げスイッチを有し、該各スイッチによるスタート、停止、スロットル上げ、及びスロットル下げをする操作を行うことが可能な
吸引作業車。