(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022025555
(43)【公開日】2022-02-10
(54)【発明の名称】切削方法及び切削装置
(51)【国際特許分類】
B26F 3/00 20060101AFI20220203BHJP
E01C 23/09 20060101ALI20220203BHJP
B28D 1/22 20060101ALI20220203BHJP
E04G 23/08 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
B26F3/00 R
E01C23/09 Z
B28D1/22
B26F3/00 M
E04G23/08 E
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020128447
(22)【出願日】2020-07-29
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-10-06
(71)【出願人】
【識別番号】593184363
【氏名又は名称】コンクリートコーリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】藤尾 浩太
(72)【発明者】
【氏名】梶原 英男
(72)【発明者】
【氏名】小倉 紀雄
【テーマコード(参考)】
2D053
2E176
3C060
3C069
【Fターム(参考)】
2D053AA26
2D053AC02
2D053AD03
2D053DA11
2E176AA03
2E176DD28
3C060AA14
3C060CE07
3C060CE11
3C060CE28
3C069AA01
3C069BA07
3C069BB03
3C069BC05
3C069CA07
3C069EA01
(57)【要約】
【課題】構造物の切削時間を短縮可能な切削方法及び切削装置を提供する。
【解決手段】ボイド管が埋設された構造物の上に、液体を噴射するノズル、該ノズルの移動を行う移動機構、及び該移動機構を支持する支持レールを有する切削装置を設置して、前記構造物を切削する切削方法において、切削方法は、前記支持レールが、前記ボイド管の直上にて、前記ボイド管に平行に配置されるように、前記切削装置を前記構造物に設置し、前記ノズルから液体を噴射し、前記構造物における前記支持レールの下側に位置する部分を残して、前記構造物を切削し、前記ノズルによる切削終了後に、前記部分を除去する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイド管が埋設された構造物の上に、液体を噴射するノズル、該ノズルの移動を行う移動機構、及び該移動機構を支持する支持レールを有する切削装置を設置して、前記構造物を切削する切削方法において、
前記支持レールが、前記ボイド管の直上にて、前記ボイド管に平行に配置されるように、前記切削装置を前記構造物に設置し、
前記ノズルから液体を噴射し、前記構造物における前記支持レールの下側に位置する部分を残して、前記構造物を切削し、
前記ノズルによる切削終了後に、前記部分を除去する
切削方法。
【請求項2】
前記切削装置は、前記移動機構を支持し、前記支持レールに平行な第2支持レールを有し、
前記支持レールを、前記構造物の中央部に埋設された前記ボイド管の直上に配置し、
前記第2支持レールを、前記構造物の縁部に沿って配置し、
前記ノズルから液体を噴射し、前記構造物における前記第2支持レールに沿う第2部分を残して、前記構造物を切削し、
前記ノズルによる切削終了後に、前記第2部分を除去する
請求項1に記載の切削方法。
【請求項3】
前記構造物は、コンクリート部材及び鉄筋部材を有し、
前記ノズルからの液体の噴射によって、前記部分を残して、前記コンクリート部材を切削し、
切削によって露出した前記鉄筋部材を除去する
請求項1又は2に記載の切削方法。
【請求項4】
ボイド管が埋設された構造物の上に設置される切削装置であって、
液体を噴射するノズルと、
該ノズルの移動を行う移動機構と、
前記ボイド管の直上にて、前記ボイド管に平行に配置され、前記移動機構を支持する支持レールと
を備える切削装置。
【請求項5】
前記移動機構及び支持レールの間に、回転体が設けられている
請求項4に記載の切削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、ボイド管が埋設された床版を切削する切削方法及び切削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ノズルから高圧の水を噴射させることによって構造物を切削する切削装置が提案されている。切削装置は、ノズルをX方向及びY方向に移動させるための移動機構と、該移動機構を支持し、構造物に設置される固定レール(支持レール)とを備える。移動機構を固定レールに固定し、ノズルによって、構造物、例えば床版を切削することができる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
床版における固定レールを設置した部分は、切削されずに残される。前記部分を残すことによって、ノズルから噴射された水が構造物の外に流れ出すことを抑制することができるからである。ノズルによる構造物の切削後に、作業者が切削機を使用して、前記部分が除去される。しかし、作業者による除去は長時間を要する。
【0005】
本開示は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、構造物の切削時間を短縮可能な切削方法及び切削装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施形態に係る切削方法は、ボイド管が埋設された構造物の上に、液体を噴射するノズル、該ノズルの移動を行う移動機構、及び該移動機構を支持する支持レールを有する切削装置を設置して、前記構造物を切削する切削方法において、前記支持レールが、前記ボイド管の直上にて、前記ボイド管に平行に配置されるように、前記切削装置を前記構造物に設置し、前記ノズルから液体を噴射し、前記構造物における前記支持レールの下側に位置する部分を残して、前記構造物を切削し、前記ノズルによる切削終了後に、前記部分を除去する。
【0007】
本開示の一実施形態においては、支持レールがボイド管の直上にて、ボイド管に平行に配置されるように、構造物に設置する。支持レールの下側に位置する部分とボイド管との結合は弱い。そのため、ノズルによる切削終了後に、残存した前記部分は容易に除去される。
【0008】
本開示の一実施形態に係る切削方法は、前記切削装置は、前記移動機構を支持し、前記支持レールに平行な第2支持レールを有し、前記支持レールを、前記構造物の中央部に埋設された前記ボイド管の直上に配置し、前記第2支持レールを、前記構造物の縁部に沿って配置し、前記ノズルから液体を噴射し、前記構造物における前記第2支持レールに沿う第2部分を残して、前記構造物を切削し、前記ノズルによる切削終了後に、前記第2部分を除去する。
【0009】
本開示の一実施形態においては、第2支持レールに沿う第2部分を残し、ノズルによって、構造物を切削する。構造物の縁部に第2支持レールを配置する場合、第2支持レールの取り付けの為に、取付部材を前記縁部に設ける。取付部材によって、第2支持レールは強固に支持されるので、第2支持レールを支持する必要が無い第2部分の厚さは、構造物の中央部に配置された前記部分よりも小さくできる。そのため、ノズルによる切削終了後に、残存した第2部分は容易に除去される。
【0010】
本開示の一実施形態に係る切削方法は、前記構造物は、コンクリート部材及び鉄筋部材を有し、前記ノズルからの液体の噴射によって、前記部分を残して、前記コンクリート部材を切削し、切削によって露出した前記鉄筋部材を除去する。
【0011】
本開示の一実施形態においては、コンクリート部材を切削した後、鉄筋部材を除去するので、新たな鉄筋を設置することができる。
【0012】
本開示の一実施形態に係る切削装置は、ボイド管が埋設された構造物の上に設置される切削装置であって、液体を噴射するノズルと、該ノズルの移動を行う移動機構と、前記ボイド管の直上にて、前記ボイド管に平行に配置され、前記移動機構を支持する支持レールとを備える。
【0013】
本開示の一実施形態においては、支持レールはボイド管の直上にて、ボイド管に平行に配置される。支持レールの下側に位置する部分とボイド管との結合は弱い。そのため、ノズルによる切削終了後に、残存した前記部分は容易に除去される。
【0014】
本開示の一実施形態に係る切削装置は、前記移動機構及び支持レールの間に、回転体が設けられている。
【0015】
本開示の一実施形態においては、移動機構を支持レールに沿って移動させる場合、回転体が介在しているので、移動機構を円滑に移動させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本開示の一実施形態に係る切削方法及び切削装置にあっては、支持レールはボイド管の直上にて、ボイド管に平行に配置される。支持レールの下側に位置する部分とボイド管との結合は弱い。そのため、ノズルによる切削終了後に、残存した前記部分は容易に除去される。例えば、ハンマによって、前記部分をたたくだけで、前記部分はボイド管から外れる。作業者による前記部分の除去時間を短縮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】
図1に示すII-II線を切断線とした略示左側面断面図である。
【
図3】
図1に示すIII-III線を切断線とした略示背面断面図である。
【
図7】左側に切削装置1を設置した床版の略示正面断面図である。
【
図8】右側に切削装置1を設置した床版の略示正面断面図である。
【
図9】上面部のコンクリート部材を除去した床版の略示正面断面図である。
【
図10】不要な鉄筋を除去した床版の略示正面断面図である。
【
図11】壁を除去した床版の略示正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下本発明を、実施の形態に係る切削装置1及び切削方法を示す図面に基づいて説明する。以下の説明では、図中の上下前後左右を使用する。
図1は、切削装置1の略示平面図、
図2は、
図1に示すII-II線を切断線とした略示左側面断面図、
図3は、
図1に示すIII-III線を切断線とした略示背面断面図である。
【0019】
切削装置1は、左支持レール2及び右支持レール3を備える。左支持レール2及び右支持レール3は直線状のパイプである。左支持レール2及び右支持レール3は、切削現場で作業をするための足場用資材として用いられる単管パイプでもよい。この場合、左支持レール2及び右支持レール3を安価に入手することができる。左支持レール2及び右支持レール3は、前後方向を軸方向として、左右に対向配置される。
【0020】
左支持レール2の上側に、該左支持レール2に沿って移動可能な二つのスライド架台4、4が前後に設けてある。右支持レール3の上側に、該右支持レール3に沿って摺動可能な二つのスライド架台4、4が前後に設けてある。後述する固定ボルト5fによって、スライド架台4の左支持レール2及び右支持レール3への固定及び固定解除が実行される。
【0021】
左支持レール2の後側に取り付けられたスライド架台4と、右支持レール3の後側に取り付けられたスライド架台4とに、左右に延びる第1案内レール10が架設されている。左支持レール2の前側に取り付けられたスライド架台4と、右支持レール3の前側に取り付けられたスライド架台4とに、左右に延びる第2案内レール20が架設されている。
【0022】
第1案内レール10に、左右に延びるチェーン11が架設されている。左右方向に移動可能な第1スライダ12が第1案内レール10に取り付けられている。第1スライダ12は、チェーン11に噛合するスプロケット13と、該スプロケット13を回転させるモータ14とを備える。
【0023】
第2案内レール20に、左右に延びるチェーン21が架設されている。左右方向に移動可能な第2スライダ22が第2案内レール20に取り付けられている。第2スライダ22は、チェーン21に噛合するスプロケット23を備える。
【0024】
第1スライダ12及び第2スライダ22に、前後に延びる可動レール30が架設されている。可動レール30には、前後に延びるチェーン31が架設されている。可動レール30には、前後に移動可能な第3スライダ32が取り付けられている。第3スライダ32は、チェーン31に噛合するスプロケット33と、該スプロケット33を回転させるモータ34とを備える。
【0025】
第3スライダ32には、基台35が取り付けられている。基台35には、ノズル36、ポンプ37及びモータ38が設けられている。ノズル36は上下方向を軸方向としており、基台35から下方に突出する。ノズル36の突出端部は二股に分かれている。ポンプ37は、水源(図示略)からノズル36に高圧の液体を供給する。二股に分かれたノズル36の各端部から液体が噴出する。モータ38は、ノズル36を軸回りに回転させる。
【0026】
モータ34の回転によって、スプロケット33は回転し、第3スライダ32及びノズル36は前後方向に移動する。モータ14の回転によって、スプロケット13は回転し、第1スライダ12は左右方向に移動する。第2スライダ22のスプロケット23は、第1スライダ12の移動に従って、回転し、第2スライダ22は左右方向に移動する。第1スライダ12及び第2スライダ22の左右方向への移動によって、第3スライダ32及びノズル36は左右方向に移動する。
【0027】
ノズル36は、液体を噴出しながら、前後方向及び左右方向に移動し、第1案内レール10、第2案内レール20、左支持レール2及び右支持レール3によって、囲まれた領域において、構造物の切削を行う。
【0028】
図4は、スライド架台4の略示平面図、
図5は、スライド架台4の略示右側面図、
図6は、スライド架台4の略示正面図である。以下、左支持レール2に取り付けられたスライド架台4について、説明する。スライド架台4は、左支持レール2に取り付けられるスライダ5を備える。スライダ5は、上板5aと、二つの側板5b、5bと、二つのローラ5c、5cとを有する。
【0029】
上板5aは平面視矩形をなし、左支持レール2の上部に隙間を空けて対向する。上板5aの左右縁部から二つの側板5b、5bがそれぞれ下方に突出する。左側の側板5bは、左支持レール2の左部に対向し、右側の側板5bは、左支持レール2の右部に対向する。各側板5bの前上隅部から斜め上前方に、前連結部5dが突出している。二つの前連結部5d、5dの間に、左右方向を軸方向としたローラ5cが支持されている。ローラ5cは左支持レール2の上部に接触する。各側板5bの後上隅部から斜め上前方に、後連結部5eが突出している。二つの後連結部5e、5eの間に、左右方向を軸方向としたローラ5cが支持されている。ローラ5cは左支持レール2の上部に接触する。二つのローラ5c、5cはスライダ5を支持する。ローラ5cによって支持されているので、スライダ5は、左支持レール2に沿って移動可能である。なおローラ5cは回転体の一例であり、ローラ5cに代えて、ボールを使用してもよい。
【0030】
各側板5bには、前後に並んだ二つの固定ボルト5f、5fが取り付けられている。固定ボルト5fは、側板5bを左右に貫通し、左支持レール2に対向する。左右の固定ボルト5fを左支持レール2に締め付けることによって、スライダ5は左支持レール2に固定される。
【0031】
上板5aの上面に、二つの取付板6、7が所定距離を空けて前後に並設されている。前側の取付板6は、上板5aに略直角な上方に延びた第1部分6aと、該第1部分6aの上端部から後方に延びた第2部分6bとを有する。第1部分6a及び第2部分6bは略直角をなす。後側の取付板7は、上板5aに略直角な上方に延びた第1部分7aと、該第1部分7aの上端部から前方に延びた第2部分7bとを有する。第1部分7a及び第2部分7bは略直角をなす。各第2部分6b、7bには、取付ボルト8が取り付けられている。取付ボルト8は、各第2部分6b、7bを上下に貫通する。
【0032】
二つの取付板6、7の間に、平面視矩形をなす案内板9が挿入されている。案内板9は左右に延び、スライダ5及び左支持レール2よりも左右に突出している。
【0033】
右支持レール3に取り付けられたスライド架台4の構成は、左支持レール2に取り付けられた上述のスライド架台4と同じであるので、その詳細な説明は省略する。
【0034】
第1案内レール10は、左支持レール2及び右支持レール3に取り付けられた前側の二つのスライド架台4、4に取り付けられる。第1案内レール10はH形鋼材であり、第1案内レール10の左右両端部が、二つのスライド架台4に挿入される。このとき、案内板9は第1案内レール10を案内する。取付ボルト8を締め付けることによって、第1案内レール10はスライド架台4に固定される。
【0035】
第2案内レール20は、左支持レール2及び右支持レール3に取り付けられた後側の二つのスライド架台4、4に取り付けられる。第2案内レール20はH形鋼材であり、第2案内レール20の左右両端部が、二つのスライド架台4に挿入される。このとき、案内板9は第2案内レール20を案内する。取付ボルト8を締め付けることによって、第2案内レール20はスライド架台4に固定される。
【0036】
第1案内レール10、第2案内レール20、可動レール30、チェーン11、21、31、モータ14、34、及びスプロケット13、23、33は、移動機構を構成する。固定ボルト5fを緩めて、スライダ5の固定を解除し、移動機構を左支持レール2及び右支持レール3に沿って移動させる場合、ローラ5cが介在しているので、移動機構を円滑に移動させることができる。
【0037】
次に構造物の切削方法について説明する。ここで、構造物は床版40である。
図7は、左側に切削装置1を設置した床版40の略示正面断面図、
図8は、右側に切削装置1を設置した床版40の略示正面断面図、
図9は、上面部のコンクリート部材41を除去した床版40の略示正面断面図、
図10は、不要な鉄筋を除去した床版40の略示正面断面図、
図11は、壁を除去した床版40の略示正面断面図である。
【0038】
床版40は、複数のボイド管43と、コンクリート部材41と、鉄筋部材42とを備える。コンクリート部材41には、前後に延びる複数のボイド管43が左右に間隔を空けて埋設されている。鉄筋部材42は、コンクリート部材41に埋設されており、ボイド管43の周囲に配置されている。なお床版40の表面にアスファルト部材が敷設されている場合、アスファルト部材は予め除去され、また床版40の左右の張出部分も、切削装置1を取り付けるために、予め除去される。
【0039】
床版40の上面部のコンクリート部材41を切削する場合、例えば、
図7に示すように、床版40の上面左側に切削装置1が設置される。床版40の左側面には、取付部材51が固定される。取付部材51には、左支持レール2が取り付けられる。右支持レール3は、床版40の左右方向中央部に固定される。右支持レール3は、ボイド管43の直上に配置される。以下、右支持レール3の直下に位置するボイド管43を、中央ボイド菅とも称する。スライド架台4のスライダ5は左支持レール2及び右支持レール3に固定されている。切削装置1は、液体の飛散及び騒音防止のために、養生枠50で覆われる。
【0040】
ノズル36は高圧の液体を噴出し、床版40の上面部左側において、コンクリート部材41を切削する。なお噴出される液体の圧力、流速、流量は、所定の深さまでコンクリート部材41を切削するように、予め設定されている。ノズル36は、コンクリート部材41を切削しつつ、可動レール30に沿って前後方向に移動し、第1案内レール10及び第2案内レール20に沿って左右方向に移動する。
【0041】
第1案内レール10及び第2案内レール20に挟まれた領域において、コンクリート部材41の切削が完了した場合、左支持レール2及び右支持レール3に対するスライダ5の固定が解除され、切削装置1の移動機構が、左支持レール2及び右支持レール3に沿って前側又は後側に移動される。前述したように、ローラ5cが介在しているので、移動機構は円滑に移動される。なお、左支持レール2及び右支持レール3は、直線状のパイプを継ぎ足すことによって、前後に延長させることができる。移動機構は、コンクリート部材41が切削されていない箇所に移動し、スライダ5が固定され、その箇所にてコンクリート部材41の切削が行われる。
【0042】
コンクリート部材41の切削は、左支持レール2及び右支持レール3の下側に位置するコンクリート部材41を残して行われる。コンクリート部材41における左支持レール2に沿った部分は、前後に延びる薄い壁として、残される。以下、この残された薄い壁を左壁41aと称する(
図9参照)。左壁41aによって、ノズル36から噴射された液体が床版40の外に流れ出ることを抑制することができる。
【0043】
床版40の上面部左側での切削が完了した場合、
図8に示すように、切削装置1は床版40の上面部右側に配置される。左支持レール2は、中央ボイド管44の直上にて、床版40の上面部に固定される。床版40の右側面には、取付部材51が固定される。取付部材51には、右支持レール3が取り付けられる。切削装置1は養生枠50で覆われる。
【0044】
床版40の上面部右側においても、左側と同様に、ノズル36は高圧の液体を噴出し、コンクリート部材41を切削する。また第1案内レール10及び第2案内レール20に挟まれた領域において、コンクリート部材41の切削が完了した場合、左支持レール2及び右支持レール3に対するスライダ5の固定が解除され、切削装置1の移動機構が、左支持レール2及び右支持レール3に沿って前側又は後側に移動される。
【0045】
床版40の上面部右側での切削が完了した場合、
図9に示すように、中央ボイド管44の直上にて、コンクリート部材41は、前後に延びる壁として、残される。以下、この壁を中央壁41cと称する。またコンクリート部材41における右支持レール3に沿った部分は、前後に延びる薄い壁として、残される。以下、この残された薄い壁を右壁41bと称する。中央壁41c及び右壁41bによって、ノズル36から噴射された液体が床版40の外に流れ出ることを抑制することができる。
【0046】
次に、
図10に示すように、不要な鉄筋部材42を除去する。そして、
図11に示すように、左壁41a、中央壁41c及び右壁41bを除去する。左壁41a及び右壁41bは薄く、作業者が、例えばハンドカッターを使用して容易に除去することができる。また、中央壁41cは、鉄筋部材42の除去によって、周囲から隔絶され、更に、中央壁41cと中央ボイド管44とを連結する部材も存在しないので、作業者が、例えば、ハンマ53でたたくだけで、容易に除去することができる。
【0047】
実施の形態に係る切削装置1及び切削方法にあっては、左支持レール2又は右支持レール3は中央ボイド管44の直上にて、中央ボイド管44に平行に配置される。左支持レール2又は右支持レール3の下側に位置する部分、即ち中央壁41cと中央ボイド管44との結合は弱い。そのため、ノズル36による切削終了後に、残存した中央壁41cは容易に除去される。例えば、ハンマ53によって、中央壁41cをたたくだけで、中央壁41cは中央ボイド管44から外れる。故に、作業者による中央壁41cの除去時間を短縮させることができる。
【0048】
また、左支持レール2又は右支持レール3の下側に左壁41a又は右壁41bを残して、ノズル36によって、構造物を切削する。構造物の縁部に左支持レール2又は右支持レール3を配置する場合、左支持レール2又は右支持レール3の取り付けの為に、取付部材51を前記縁部に設ける。取付部材51によって、左支持レール2又は右支持レール3は強固に支持されるので、左支持レール2又は右支持レール3を支持する必要がない左壁41a又は右壁41bの厚さは、中央壁41cよりも小さくできる。そのため、ノズル36による切削終了後に、残存した左壁41a又は右壁41bは容易に除去される。また、コンクリート部材41を切削した後、鉄筋部材42を除去するので、新たな鉄筋を設置することができる。
【0049】
また移動機構を左支持レール2及び右支持レール3に沿って移動させる場合、ローラ5cが介在しているので、移動機構を円滑に移動させることができる。なお床版40は構造物の一例であり、ビル、坑道などを切削装置1によって切削してもよい。
【0050】
今回開示した実施の形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。各実施例にて記載されている技術的特徴は互いに組み合わせることができ、本発明の範囲は、特許請求の範囲内での全ての変更及び特許請求の範囲と均等の範囲が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0051】
1 切削装置
2 左支持レール(支持レール、第2支持レール)
3 右支持レール(支持レール、第2支持レール)
4 スライド架台
5c ローラ(回転体)
10 第1案内レール(移動機構)
11、21、31 チェーン(移動機構)
13、23、33 スプロケット(移動機構)
14、34 モータ(移動機構)
20 第2案内レール(移動機構)
30 可動レール(移動機構)
36 ノズル
40 床版(構造物)
41 コンクリート部材
41a 左壁(第2部分)
41b 右壁(第2部分)
41c 中央壁(部分)
42 鉄筋部材
43 ボイド管
44 中央ボイド管
53 ハンマ
【手続補正書】
【提出日】2021-08-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイド管が埋設された構造物の上に、液体を噴射するノズル、該ノズルの移動を行う移動機構、及び該移動機構を支持する支持レールを有する切削装置を設置して、前記構造物を切削する切削方法において、
前記支持レールが、前記ボイド管の直上にて、前記ボイド管に平行に配置されるように、前記切削装置を前記構造物に設置し、
前記ノズルから液体を噴射し、前記構造物における前記支持レールの下側に位置する部分を残して、前記構造物を切削し、
前記ノズルによる切削終了後に、前記部分を除去する
切削方法。
【請求項2】
前記切削装置は、前記移動機構を支持し、前記支持レールに平行な第2支持レールを有し、
前記支持レールを、前記構造物の中央部に埋設された前記ボイド管の直上に配置し、
前記第2支持レールを、前記構造物の縁部に沿って配置し、
前記ノズルから液体を噴射し、前記構造物における前記第2支持レールに沿う第2部分を残して、前記構造物を切削し、
前記ノズルによる切削終了後に、前記第2部分を除去する
請求項1に記載の切削方法。
【請求項3】
前記構造物は、コンクリート部材及び鉄筋部材を有し、
前記ノズルからの液体の噴射によって、前記部分を残して、前記コンクリート部材を切削し、
切削によって露出した前記鉄筋部材を除去する
請求項1又は2に記載の切削方法。
【請求項4】
請求項1に記載の切削方法において使用される切削装置であって、
液体を噴射する前記ノズルと、
該ノズルの移動を行う前記移動機構と、
前記ボイド管の直上にて、前記ボイド管に平行に配置され、前記移動機構を支持する前記支持レールと、
前記移動機構を支持し、前記支持レールに平行な第2支持レールと、
を備え、
前記移動機構は、
前記支持レール及び第2支持レールに交差する互いに平行な二つの案内レールと、
前記二つの案内レールに亘って配置され、前記案内レールに沿って案内される前記支持レールに平行な可動レールと
を備え、
前記ノズルは前記可動レールに沿って移動可能であり、
前記二つの案内レールと前記支持レールとの間、及び、前記二つの案内レールと前記第2支持レールとの間にローラが設けられており、
前記二つの案内レールは前記ローラを介して前記支持レール及び第2支持レール上を移動可能である
切削装置。