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特開2022-25564プログラム、清掃装置及び情報処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022025564
(43)【公開日】2022-02-10
(54)【発明の名称】プログラム、清掃装置及び情報処理方法
(51)【国際特許分類】
   G16H 40/00 20180101AFI20220203BHJP
   A47L 9/28 20060101ALI20220203BHJP
   G06Q 50/10 20120101ALI20220203BHJP
【FI】
G16H40/00
A47L9/28 E
G06Q50/10
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020128466
(22)【出願日】2020-07-29
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】517448489
【氏名又は名称】合同会社H.U.グループ中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】小▲高▼ 健之
(72)【発明者】
【氏名】松野 達樹
(72)【発明者】
【氏名】小見 和也
【テーマコード(参考)】
3B057
5L049
5L099
【Fターム(参考)】
3B057DE00
5L049CC11
5L099AA01
(57)【要約】
【課題】清掃の効率を向上させることができるプログラム等を提供する。
【解決手段】プログラムは、医療施設に設けられる撮像装置により前記医療施設内を撮像した画像又は前記医療施設内の作業内容に関する作業内容情報を取得し、取得した前記画像又は作業内容情報に基づき、前記医療施設内の清掃箇所及び清掃方法を特定し、特定した前記医療施設内の清掃箇所及び前記清掃方法に係る清掃命令を出力する処理をコンピュータに実行させる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療施設に設けられる撮像装置により前記医療施設内を撮像した画像又は前記医療施設内の作業内容に関する作業内容情報を取得し、
取得した前記画像又は作業内容情報に基づき、前記医療施設内の清掃箇所及び清掃方法を特定し、
特定した前記医療施設内の清掃箇所及び前記清掃方法に係る清掃命令を出力する
処理をコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項2】
前記画像又は作業内容情報に基づき、前記医療施設内の清掃経路又は重点的清掃箇所を含む前記清掃箇所と、清掃手段又は使用薬剤を含む前記清掃方法とを特定する
処理をコンピュータに実行させる請求項1に記載のプログラム。
【請求項3】
前記画像における前記医療施設内で作業を行う医療従事者の位置若しくは種類又は前記医療施設内の物品の位置若しくは種類により、前記医療施設内における汚染範囲及び汚染物質の種類を導出し、
導出した前記医療施設内における汚染範囲及び汚染物質の種類に基づき、前記医療施設内の清掃箇所及び清掃方法を特定する
処理をコンピュータに実行させる請求項1又は請求項2に記載のプログラム。
【請求項4】
前記画像は、前記医療施設内で作業を行う医療従事者を撮像対象に含み、
医療施設内で作業を行う医療従事者を撮像した画像を入力した場合に、前記医療従事者の作業状況を出力する学習モデルに、取得した前記画像を入力して、出力される前記医療従事者の作業状況を取得し、
取得した前記作業状況に基づき、前記医療施設内の清掃箇所及び清掃方法を特定する
処理をコンピュータに実行させる請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項5】
ハイパースペクトルカメラにより前記医療施設内を撮像したスペクトル値を取得し、
取得した前記スペクトル値に基づき、前記医療施設内の清掃箇所及び清掃方法を特定する
処理をコンピュータに実行させる請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項6】
前記スペクトル値に基づき、前記医療施設内に存在する水分、糖質、タンパク質及び核酸から選択される少なくとも1つを検出し、
検出結果に基づき前記医療施設内の清掃箇所及び清掃方法を特定する
処理をコンピュータに実行させる請求項5に記載のプログラム。
【請求項7】
前記作業内容情報は、前記医療施設内の作業に関するカルテデータを含み、
前記カルテデータにより特定される作業範囲、作業内容及び使用物品に基づき、前記医療施設内における汚染範囲及び汚染物質の種類を導出し、
導出した前記医療施設内における汚染範囲及び汚染物質の種類に基づき、前記医療施設内の清掃箇所及び清掃方法を特定する
処理をコンピュータに実行させる請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項8】
前記医療施設内の清掃後、前記医療施設とは異なる第2医療施設への移動を指示する
処理をコンピュータに実行させる請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項9】
前記第2医療施設に設けられる第2撮像装置により前記第2医療施設内を撮像した第2画像又は前記第2医療施設内の作業内容に関する第2作業内容情報を取得し、
取得した前記第2画像又は第2作業内容情報に基づき、前記第2医療施設内の清掃箇所及び清掃方法を特定し、
特定した前記第2医療施設内の清掃箇所及び前記清掃方法に係る第2清掃命令を出力する
処理をコンピュータに実行させる請求項8に記載のプログラム。
【請求項10】
ハイパースペクトルカメラにより前記第2医療施設内を撮像した第2スペクトル値を取得し、
取得した前記第2スペクトル値に基づき、前記第2医療施設内の清掃箇所及び清掃方法を特定する
処理をコンピュータに実行させる請求項9に記載のプログラム。
【請求項11】
前記医療施設内の清掃箇所及び清掃方法を含む清掃記録を生成する
処理をコンピュータに実行させる請求項1から請求項10のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項12】
移動機構及び清掃機構を備える清掃装置であって、
医療施設に設けられる撮像装置により前記医療施設内を撮像した画像又は前記医療施設内の作業内容に関する作業内容情報を取得する第1取得部と、
前記第1取得部が取得した画像又は作業内容情報に基づき、前記医療施設内の清掃箇所及び清掃方法を特定する第1特定部と、
前記第1特定部が特定した前記医療施設内の清掃箇所及び前記清掃方法に係る清掃命令を出力する出力部とを備え、
前記出力部が出力した清掃命令に基づき、前記移動機構及び清掃機構を用いて、前記清掃方法により前記医療施設内の前記清掃箇所を清掃する
清掃装置。
【請求項13】
ハイパースペクトルカメラを備え、
前記ハイパースペクトルカメラにより前記医療施設内を撮像したスペクトル値を取得する第2取得部と、
前記第2取得部が取得したスペクトル値に基づき、前記医療施設内の清掃箇所及び清掃方法を特定する第2特定部とを備える
請求項12に記載の清掃装置。
【請求項14】
医療施設に設けられる撮像装置により前記医療施設内を撮像した画像又は前記医療施設内の作業内容に関する作業内容情報を取得し、
取得した前記画像又は作業内容情報に基づき、前記医療施設内の清掃箇所及び清掃方法を特定し、
特定した前記医療施設内の清掃箇所及び前記清掃方法に係る清掃命令を出力する
情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、プログラム、清掃装置及び情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被清掃面としての床面上を自律走行しながら床面を清掃する、いわゆる自律走行型の清掃装置が知られている(例えば、特許文献1)。また、近年、自律走行体が移動すべき領域であって、周囲の環境に応じた地図を作成する機能を有する自律走行体が開発されている。
【0003】
特許文献2には、操作者が清掃用ロボットを手動で操作することで、清掃用ロボットが自律走行すべき領域を表す地図を生成する教示走行モードを機能として有する自律移動可能な清掃用ロボットが開示されている。特許文献2によれば、清掃用ロボットは教示走行モードにおいて適切な走行スケジュールを設定し、それにより再現走行モードにおいて走行スケジュールに沿った自律走行を完了できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-360480号公報
【特許文献2】特開2014-219723号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2に開示された清掃用ロボットでは、地図情報に基づき清掃対象領域の全体が清掃されるため、汚れていない箇所に対しても清掃が行われ効率的ではないという問題がある。
【0006】
本開示の目的は、清掃の効率を向上させることができるプログラム等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係るプログラムは、医療施設に設けられる撮像装置により前記医療施設内を撮像した画像又は前記医療施設内の作業内容に関する作業内容情報を取得し、取得した前記画像又は作業内容情報に基づき、前記医療施設内の清掃箇所及び清掃方法を特定し、特定した前記医療施設内の清掃箇所及び前記清掃方法に係る清掃命令を出力する処理をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、清掃の効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態における清掃システムの概要を示す説明図である。
図2】清掃装置の構成を示すブロック図である。
図3】清掃箇所及び清掃方法の特定方法を説明する説明図である。
図4】清掃装置が実行する処理手順の一例を示すフローチャートである。
図5】第2実施形態における清掃装置の構成を示すブロック図である。
図6】学習モデルの概要図である。
図7】第2実施形態における清掃装置が実行する処理手順の一例を示すフローチャートである。
図8】第3実施形態における清掃装置の構成を示すブロック図である。
図9】第3実施形態における清掃装置が実行する処理手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明をその実施の形態を示す図面を参照して具体的に説明する。
【0011】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態における清掃システムSの概要を示す説明図である。清掃システムSは、医療施設内を清掃する清掃装置1と、医療施設内を撮像する撮像装置2とを含む。
【0012】
清掃装置1は、外殻をなす本体100と、前記本体を移動させる移動機構101と、被清掃面を清掃する清掃機構102とを備え、医療施設内を自動で移動しながら清掃する。本体100は、例えば円柱形状を有する筐体である。
【0013】
撮像装置2は、例えばカメラである。撮像装置2は、医療施設に設けられ、医療施設内の物品や医療従事者を含む撮像対象の動画又は静止画を撮像する。撮像装置2は、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ等の撮像素子及びレンズ等を有し、レンズを介して入射した光を撮像素子にて光電変換し画像データとして出力する。撮像装置2は、複数の撮像素子からなるステレオカメラであってもよい。撮像装置2は、複数台設けられ、様々な角度から医療施設内全体を撮像するものであってよい。撮像装置2は、通信機能を備え、動画像又は周期的に撮像した静止画像である画像データを清掃装置1へ送信する。撮像装置2は、医療施設に設けられるものに限定されず、清掃装置1に設けられてもよい。
【0014】
医療施設には、その他温度情報を検出する温度センサ、音声を検出する集音マイク等が設けられ、医療施設内のおける多様な情報を検出する構成であってよい。
【0015】
清掃システムSでは、医療施設内の作業を撮像した画像や、作業内容に関する作業内容情報に基づき、医療施設内で実際に行われた作業に対する汚染状況を導出し、汚染状況に応じた清掃箇所及び清掃方法に基づき清掃装置1が自動で医療施設内を清掃する。清掃システムSが適用される医療施設は例えば病院である。本実施形態において、医療施設は、例えば病院における手術室、診察室、待合室等の部屋それぞれであってもよく、複数の部屋を含む施設全体であってもよい。なお、本清掃システムSは医療施設に限定されず、例えば研究所、実験所等の施設に適用することができる。
【0016】
図2は、清掃装置1の構成を示すブロック図である。清掃装置1は、上述の移動機構101及び清掃機構102に加え、制御部10、記憶部11、通信部12、位置情報取得部13、電源部14等を備える。
【0017】
制御部10は、一又は複数のCPU(Central Processing Unit )又はGPU(Graphics Processing Unit)を用いたプロセッサであり、内蔵するROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等のメモリを用い、各構成部を制御して処理を実行する。
【0018】
記憶部11は、フラッシュメモリ、ハードディスク、SSD(Solid State Drive )等の記憶装置を含む。記憶部11には、プログラム1Pを含む制御部10が参照するプログラム及びデータが記憶されている。制御部10は、プログラム1Pに基づき、後述する自動清掃に関する処理を実行する。
【0019】
記憶部11に記憶されるプログラム1Pは、当該プログラム1Pを読み取り可能に記録した非一時的な記録媒体1Aにより提供されてもよい。記録媒体1Aは、例えば、CD-ROM、USB(Universal Serial Bus)メモリ、SD(Secure Digital)カード、マイクロSDカード、コンパクトフラッシュ(登録商標)などの可搬型メモリである。この場合、制御部10は、不図示の読取装置を用いて記録媒体1Aからプログラム1Pを読み取り、読み取ったプログラム1Pを記憶部11に記憶する。また、記憶部11に記憶されるプログラム1Pは、通信部12を介した通信により提供されてもよい。この場合、制御部10は、通信部12を通じてプログラム1Pを取得し、取得したプログラム1Pを記憶部11に記憶する。なお記憶部11は、複数の記憶装置により構成されていてもよく、清掃装置1に接続された外部記憶装置であってもよい。
【0020】
通信部12は、例えばBluetooth(登録商標)、Wi-Fi(登録商標)、その他の無線LAN(Local Area Network)、並びに、4G、5G、LTE(Long Term Evolution)等の通信規格に準じた無線通信デバイスである。制御部10は、通信部12を介して撮像装置2との間の通信を行い、画像を取得する。
【0021】
位置情報取得部13は、医療施設内における清掃装置1の位置情報を取得する。位置情報取得部13は、例えばGPS(Global Positioning System)受信装置、ビーコン信号の受信装置、超音波センサ、レーダセンサ、画像センサ、ライダー(LIDAR:Laser Imaging Detection and Ranging )、ジャイロセンサ、加速度センサ等を備える。位置情報取得部13は、移動機構のモータの回転数を検出することで清掃装置1の走行速度や走行距離を検出するロータリエンコーダ等を備えていてもよい。
【0022】
電源部14は、例えば、リチウムイオン電池等の蓄電池を備え、清掃装置1の各機能要素に電力を供給する。電源部14は、接続端子を備え、外部の給電器(図示せず)に設けられる接続端子と接続されることにより蓄電池に電力が供給される。
【0023】
移動機構101は、例えば車輪、モータ、ギヤ等を含む。モータによって供給される動力がギヤによりは車輪へ伝達され、車輪が被清掃面に接触することで駆動力を発生させ、被清掃面上を移動する。
【0024】
清掃機構102は、例えば吸引部102a、拭取部102b、噴霧部102c、送気部102d、照射部102e等を備える。各構成部は、例えば本体の底面又は側面にそれぞれ設けられ、医療施設内の床面である被清掃面を清掃する。
【0025】
吸引部102aは、例えば吸込モータ及び吸引口を含む。吸引部102aは、吸込モータの駆動により集塵等のごみを空気と共に吸引口から吸引し、捕集する。拭取部102bは、例えば拭き取り布等を用いて、被清掃面を拭き取る。噴霧部102cは、薬剤タンク及び噴霧口を含み、当該薬剤タンクから供給される薬剤を噴霧口から被清掃面に向かって噴霧する。噴霧部102cにより散布される薬剤は、例えば次亜塩素酸やエタノールなどが挙げられる。噴霧部は、複数の薬剤タンクを備え、被清掃面の汚染内容に応じた薬剤を噴霧するものであってよい。送気部102dは、被清掃面に対し空気を送り出す。送気部102dは、ヒーター等を備え、当該ヒーターにより加熱された空気を送り出すことにより、被清掃面を乾燥させるものであってよい。照射部102eは、被清掃面に紫外線を放射する殺菌灯を含み、被清掃面の様々な細菌を殺菌する。清掃装置1は、上記の清掃機構102の各構成部を用いて、被清掃面の清掃及び殺菌を行う。
【0026】
上述の清掃機構102の各構成部は、本体の底面又は側面にそれぞれ設けられるものに限定されない。清掃装置1は、例えばアームを備え、当該アームの先端に設けられる清掃機構102の構成部により、医療施設内の壁面・天井や、ベッド・机等の配置物を清掃するものであってよい。すなわち、被清掃面は、二次元の平面のみでなく三次元空間を含んでよい。この場合、位置情報取得部13は、清掃装置1の位置情報に加え、清掃機構102の各構成部の位置情報を取得することが好ましい。
【0027】
以上のように構成される清掃システムSでは、医療施設内の清掃において、医療施設内の状態に応じた清掃箇所及び清掃方法を特定し、特定した清掃方法により清掃箇所を清掃する。清掃装置1は、医療施設内の状態に応じて適切な清掃箇所及び清掃方法を特定することで、医療施設内を効率的に清掃する。
【0028】
清掃箇所及び清掃方法は、例えば医療施設内の作業を撮像した画像、医療施設内の作業内容に関する作業内容情報等に基づき特定される。より具体的には、清掃装置1は、画像又は作業内容情報等に基づき医療施設内における汚染状況を特定し、特定した汚染状況に応じて清掃箇所及び清掃方法を決定する。図3は、清掃箇所及び清掃方法の特定方法を説明する説明図である。図3を用いて清掃箇所及び清掃方法の特定に関して具体的に説明する。
【0029】
清掃箇所及び清掃方法の特定要素となる画像は、医療施設内を撮像領域とするものであり、撮像画像には医療施設内における物品や医療従事者が含まれている。清掃装置1の制御部10は、例えばパターンマッチング等の手法を用いて、画像の特徴量と予め記憶する物品又は医療従事者の特徴量とに基づき、画像に含まれる物品又は医療従事者を抽出する。制御部10は、抽出結果に基づき、医療施設内における物品の位置、物品の種類、医療従事者の位置、医療従事者の種類等を特定する。制御部10は、その他機械学習の手法を用いて画像に含まれる物品又は医療従事者を判定してもよい。制御部10は、取得した動画像の各フレーム又は複数の静止画像それぞれに対して上述の処理を実行する。
【0030】
制御部10は、取得したデータに基づき、医療施設内における汚染範囲及び汚染物質の種類を含む汚染状況を導出する。制御部10は、予め医療施設のMAP情報を記憶している。医療施設内は、図3に示す如く、位置座標に基づき複数の領域に区分されており、制御部10は、各領域における汚染状況を対応付けた汚染状況MAPを生成する。
【0031】
制御部10は、画像から抽出した物品又は医療従事者の位置の情報に基づき、MAP上の対応する位置を含む領域における汚染ポイントをそれぞれ算出する。医療従事者が抽出された位置を含む領域は、汚染物質が付着している可能性が高いことから、当該領域に対して汚染ポイントが付与される。この場合において、例えば医療従事者の種類に応じた重み付けが行われてよい。例えば医者が抽出された場合には、看護師が抽出された場合より高い汚染ポイントが付与される。制御部10は、取得した各画像に対する汚染ポイントの合計値を算出する。同一箇所に対する医療従事者の滞在時間が長い程汚染ポイントの合計値が高くなる。同様に、作業に使用される手術台、洗し台、装置等の物品が抽出された位置を含む領域は、汚染物質が付着している可能性が高いことから当該領域に対して汚染ポイントが付与される。制御部10は、汚染ポイントが付与された領域又は汚染ポイントが閾値以上である領域を、汚染範囲として導出する。制御部10は、汚染ポイントに基づき、当該汚染範囲の汚染の程度を示す汚染度を導出してもよい。図3では、汚染度に応じて異なるハッチングを施して、汚染範囲と特定された領域を示している。なお、通常、固定位置に配置されている物品に関しては、MAP情報に基づき位置情報を取得してよい。
【0032】
また、制御部10は、汚染範囲に対応する物品の種類に基づき、当該汚染範囲に付着する汚染物質の種類を導出する。例えば、物品が手術台である場合、汚染物資は体液(血液)を含むと判定される。物品が流し台である場合、汚染物資は水分を含むと判定される。制御部10は、画像における医薬品のラベルに基づき物品の種類を特定し、汚染物質の種類を判定してもよい。上述の処理により、制御部10は画像に基づき汚染範囲及び汚染物質の種類を含む汚染状況を特定する。例えば、図3に示す例にて、医療施設の中央付近に示される手術台を含む4つの領域の汚染状況は、高い汚染ポイントが付与された汚染範囲であり、汚染物質の種類は体液を含むと特定されていることを示す。
【0033】
制御部10は、特定した汚染状況に基づき、清掃箇所及び清掃方法を決定する。制御部10は、医療施設内の汚染範囲と、当該汚染範囲における汚染物質の種類とに基づき、医療施設内における重点的清掃箇所、当該重点的清掃箇所に対する清掃手段、使用薬剤の種類等を特定する。重点的清掃箇所は、汚染範囲に基づき決定される。図3にてハッチングで示された汚染範囲に相当する領域が重点的清掃箇所と決定される。清掃手段は、汚染物質の種類、重点的清掃箇所の形状・材質等に基づき決定され、例えば吸引、拭き取り、薬剤噴霧、エアブロー(送気)、紫外線照射等から、1又は複数の手段が選択される。使用薬剤は、汚染物質の種類、重点的清掃箇所の材質等に基づき決定される。制御部10は、予め記憶する汚染状況と清掃方法とを関連付けたテーブルを参照して、これら清掃方法を特定する。例えば、図3に示す例にて、医療施設の中央付近に示される手術台を含む4つの領域は、重点的清掃箇所であり、清掃方法は薬剤b噴霧、紫外線照射、拭き取りが選択されていることを示す。
【0034】
また、制御部10は、特定された重点的清掃箇所と、予め記憶する医療施設内のMAP情報とに基づき、医療施設内における清掃経路を特定する。清掃装置1は、医療施設内の全域を清掃するものであってもよく、又は、重点的清掃箇所のみを清掃するものであってもよい。全域を清掃する場合においては、特定された重点的清掃箇所以外の箇所では吸引等の基本清掃を行い、重点的清掃箇所では特定された清掃方法による重点的清掃を行うものであってよい。制御部10は、例えば清掃対象となる複数の清掃箇所を最短距離で繋ぐ経路を、清掃経路として導出する。図3の例では、矢印にて示される順序で各重点的清掃箇所を繋ぐ経路が、清掃経路として導出されている。なお制御部10は、ルールベースの手法を用いるものに限定されず、その他機械学習の手法を用いて清掃箇所及び清掃方法を判定してもよい。
【0035】
制御部10は、清掃箇所及び清掃方法の特定要素として、医療施設内の作業内容に関する作業内容情報を用いてもよい。作業内容情報は、例えば医療施設内の作業を記録したカルテデータである、カルテデータには、医療施設内の作業に関する情報が記録されており、例えば手術内容、手術時間、患者の出血量等が含まれている。カルテデータに含まれる体温・血圧等の測定時刻から、測定に関する作業内容や、体温計・血圧計等の使用物品を特定してもよい。制御部10は、取得したカルテデータに基づき汚染状況を導出する。例えば、制御部10は、手術内容に基づき医療従事者の作業範囲、作業内容及び作業を担当する医療従事者の種類等を特定し、特定したデータに基づき医療施設内における汚染範囲や汚染物質の種類を導出する。制御部10は、手術内容に基づき特定される使用機器、使用薬品等の物品の位置又は種類に基づき、汚染範囲や汚染物質の種類を導出する。患者の出血の有無(出血量)に基づき、汚染物質の種類を導出する。
【0036】
例えば、カルテデータから、作業内容が出血を伴う手術と特定された場合には、作業範囲には手術台が含まれ、医療従事者の種類には手術担当医及び助手が含まれると特定される。この場合、手術台を含む領域に所定の汚染ポイントが付与され、当該領域に対する汚染物資は体液を含むと判定される。手術内容から、特定の機器が使用されたことが特定された場合には、当該機器を含む領域に汚染ポイントが付与される。制御部10は、手術時間、作業に関わった医療従事者数等に基づき、汚染ポイントを加算してもよい。例えば手術時間が長く、作業担当者数が多い程、汚染の程度が高いと判定され、より多くの汚染ポイントが付与される。
【0037】
制御部10は、清掃箇所及び清掃方法の特定要素として、その他医療施設内における温度、湿度、日照時間等の環境情報を用いてもよい。制御部10は、清掃装置1の現在地、搭載薬剤の種類及び残量、電池残量、紫外線灯の種類等の装置情報を用いてもよい。制御部10は、その他医療施設内に設けられるサーモセンサ、集音マイク等の検出装置による検出値を用いてもよい。上述のように、清掃システムSでは、医療施設内における医療従事者の作業内容や使用された物品の種類等に基づき、医療施設の使用状況に応じて清掃箇所及び清掃方法を特定する。清掃が必要な箇所に対し、効果的な手段を用いて清掃を行うことで、清掃効率を向上させることができる。
【0038】
図4は、清掃装置1が実行する処理手順の一例を示すフローチャートである。清掃装置1の制御部10は、プログラム1Pに従って以下の処理を実行する。制御部10は、例えば外部から清掃開始指示等を取得し以下の処理を開始する。制御部10は予め記憶する清掃スケジュールに基づき所定のタイミングで以下の処理を実行してもよい。
【0039】
清掃装置1の制御部10は、作業対象である医療施設の識別情報に関連付けられる作業内容情報を取得する(ステップS11)。制御部10は、例えば医療施設のサーバと通信することによりカルテデータを作業内容情報として取得する。この場合において制御部10は、清掃開始指示に係る医療施設の識別情報に基づき清掃対象である医療施設を特定し、特定した医療施設において前回の清掃終了時から今回の清掃開始時までに行われた、各作業に関する複数のカルテデータを取得する。制御部10は、その他環境情報、装置情報、検出値を取得してもよい。
【0040】
制御部10は、撮像装置2から医療施設内を撮像した画像を取得する(ステップS12)。この場合において制御部10は、清掃対象である医療施設内で、前回の清掃終了時から今回の清掃開始時までの間に行われた各作業を撮像した動画又は複数の静止画を取得する。なお、画像情報は、撮像装置2が新たな画像を撮像する都度撮像装置2から送信され、清掃装置1により取得されてもよい。制御部10は、取得した作業内容情報と画像データとを関連付けて一時的に記憶する。
【0041】
制御部10は、取得した作業内容情報及び画像に基づき、医療施設内の汚染範囲及び汚染物質の種類を含む汚染状況を導出する(ステップS13)。具体的には、制御部10は、各カルテデータにより特定される作業範囲、作業内容及び使用物品等に基づき、医療施設内の各領域における汚染ポイントを算出し、汚染ポイントの合計点に基づき汚染範囲を導出する。さらに制御部10は、各領域に対する汚染物質の種類を導出する。また、制御部10は、画像に含まれる物品又は医療従事者を抽出し、物品の位置又は種類、医療従事者の位置又は種類等を特定する。制御部10は、特定した物品の位置又は種類、医療従事者の位置又は種類等に基づき、医療施設内の各領域における汚染ポイントを算出し、汚染ポイントの合計点に基づき汚染範囲を導出する。さらに制御部10は、各領域に対する汚染物質の種類を導出する。制御部10は汚染の程度を取得してもよい。制御部10は、作業内容情報又は画像のいずれか一方に基づき汚染状況を導出してよい。
【0042】
制御部10は、導出した汚染状況に基づき、医療施設内の清掃箇所及び清掃方法を特定する(ステップS14)。具体的には、制御部10は、汚染範囲に基づき重点的清掃箇所又は清掃経路を含む清掃箇所を特定する。また制御部10は、汚染物質の種類及び重点的清掃箇所の形状・材質と、清掃手段又は使用薬剤の種類とを関連付けたテーブルを参照して、各重点的清掃箇所に対する清掃方法をそれぞれ特定する。
【0043】
制御部10は、特定した清掃方法により清掃箇所を清掃する清掃命令を各構成部へ出力する(ステップS15)。移動機構101は、清掃経路に従い清掃装置1を走行させる。清掃機構102は、清掃方法に従い対象となる清掃箇所をそれぞれ清掃する。この場合において、制御部10は、SLAM(Simultaneous Localization and Mapping )等の技術により自己位置の推定と同時に地図データの作成を行い、自律移動するものであってよい。
【0044】
制御部10は、清掃を終了するか否かを判定する(ステップS16)。第2の医療施設に係る清掃命令を取得していることにより、清掃を終了しないと判定した場合(ステップS16:NO)、制御部10は、第2の医療施設への移動指示を移動機構101に出力する(ステップS17)。第2の医療施設へ移動した後、制御部10は、処理をステップS11に戻しループ処理を実行する。制御部10は、第2の医療施設内に設けられる撮像装置2の画像と、第2の医療施設内における作業内容情報とを取得し、取得した情報に基づき特定した清掃箇所及び清掃方法に従い清掃命令を出力し、第2の医療施設内の清掃を実行する。
【0045】
一方、第2の医療施設に係る清掃命令を取得していないことにより、清掃を終了すると判定した場合(ステップS16:YES)、制御部10は、清掃記録を生成する(ステップS18)。清掃記録には、清掃装置1が行った清掃に関する情報が記録され、例えば医療施設における清掃時間、清掃箇所、清掃方法等が含まれる。制御部10は、生成した清掃記録を記憶部11に記憶し(ステップS19)、一連の処理を終了する。清掃装置1は、清掃後に給電器等を備える給電ステーションに戻り、給電、薬剤の補充等を行うものであってよい。
【0046】
上述の処理において、制御部10は、清掃記録を医療施設のサーバ等に送信してもよい。医療施設の管理者は、受信した清掃記録に基づき、清掃結果を確実に認識することができる。
【0047】
上述の処理において、制御部10は、撮像装置2が撮像する画像又は作業内容情報を作業中にリアルタイムで取得し、取得した画像又は作業内容情報から導出される汚染状況に応じて、随時清掃命令を出力してもよい。例えば清掃対象が待合室やナースステーション等の場合において、作業が継続的に実行されるときは、機器の使用状況等から導出される汚染状況に応じて、当該機器の消毒等の清掃が適宜のタイミングにて実行されることが好ましい。タブレット機器、血圧計等は、汚染度の閾値が設定され、汚染度が所定値以上となった場合に清掃命令が出力されることで、汚染状況の監視と清掃を並行して実行することができる。
【0048】
上述の処理によれば、清掃装置1は医療施設内の作業状況を撮像した画像及び作業内容に基づき、清掃対象である医療施設内の作業毎に汚染状況を導出する。清掃装置1は、汚染状況に応じた清掃箇所及び清掃方法を特定し、自律移動しながら自動で清掃を行う。清掃装置1は、汚染状況の実態に即して清掃箇所及び清掃方法を特定することで、効率的且つ効果的に清掃を行うことができる。また清掃装置1は、被清掃面に対する過度な清掃を回避することで、被清掃面の劣化を防止すると共に、電力や薬剤等の効率的な利用が可能となる。
【0049】
(第2実施形態)
第2実施形態では、学習モデルを用いて医療従事者の作業状況を推定する構成を説明する。以下では、第2実施形態について、第1実施形態と異なる点を説明する。後述する構成を除く他の構成については第1実施形態の清掃システムSと同様であるので、共通する構成については同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0050】
図5は、第2実施形態における清掃装置1の構成を示すブロック図である。清掃装置1の記憶部11には、学習モデル1Mが記憶されている。学習モデル1Mは、撮像装置2からの画像に基づき、医療施設内の医療従事者の作業状況を推定する処理に用いられる学習モデルである。学習モデル1Mは、その定義情報によって記述される。学習モデル1Mの定義情報は、学習モデル1Mの構造情報、学習モデル1Mで用いられるノード間の重み及びバイアスなどの各種パラメータ等を含む。本実施形態では、撮像装置2が撮像する画像と、医療従事者の作業状況を示すラベルデータとを訓練データとして、所定の学習アルゴリズムによって予め学習された学習モデル1Mが記憶部11に記憶される。
【0051】
図6は、学習モデル1Mの概要図である。学習モデル1Mは予め、清掃装置1又は外部装置において、ニューラルネットワークを用いた深層学習によって、生成され、学習される。学習アルゴリズムは、例えばCNN(Convolution Neural Network)である。
【0052】
学習モデル1Mは、撮像装置2により撮像された、医療施設内で作業を行う医療従事者を含む画像を入力する入力層と、当該医療従事者の作業状況を示す情報を出力する出力層と、特徴量を抽出する中間層(隠れ層)とを備える。中間層は、入力データの特徴量を抽出する複数のノードを有し、各種パラメータを用いて抽出された特徴量を出力層に受け渡す。入力層に、画像データが入力された場合、学習済みパラメータによって中間層で演算が行なわれ、出力層から、作業状況に関する出力情報が出力される。
【0053】
学習モデル1Mの出力層から出力される出力データは、医療従事者の作業状況である。作業状況は、画像における医療従事者の作業状況に関する情報であり、例えば医療従事者の作業内容及び作業レベル等を含む。作業内容には、例えば手術、診察、採血等が含まれる。作業レベルとは、作業の激しさを示すものであり、医療従事者の動作度合いに応じて例えば1から5の5段階に分別される。作業レベルの数値が大きい程、作業状況が激しいことを示す。
【0054】
学習モデル1Mは、作業状況として、作業内容及び作業レベルをそれぞれ出力する複数の出力層を有する。作業内容を出力する出力層は、設定されている作業内容に各々対応するノードを含み、各作業内容に対する確度をスコアとして出力する。清掃装置1は、スコアが最も高い作業内容、あるいはスコアが閾値以上である作業内容を、作業内容を出力する出力層の出力値とすることができる。なお出力層は、それぞれの作業内容の確度を出力する複数の出力ノードを有する代わりに、最も確度の高い作業内容を出力する1個の出力ノードを有してもよい。作業レベルの出力層からは、作業レベルの数値を示す出力値が出力される。このように、学習モデル1Mは、医療施設内で作業を行う医療従事者を含む画像が入力された場合に、作業状況を示す情報を出力する。
【0055】
制御部10は、過去に収集した大量の画像に、既知の作業状況が付与された情報群を訓練データとして予め収集して学習モデル1Mを学習する。作業状況は、例えば当該作業に対応するカルテデータから得られるデータや、作業担当者が行った判断等を正解ラベルとしてよい。制御部10は、画像に応じた作業状況を出力するよう、例えば誤差逆伝播法を用いて、学習モデル1Mを構成する各種パラメータ及び重み等を学習する。
【0056】
学習モデル1Mは、CNNに限定されるものではない。学習モデル1Mは、時系列データを取得した場合にはリカレントニューラルネットワーク(RNN:Recurrent Neural Network)でもよい。学習モデル1Mは、ニューラルネットワークを用いないサポートベクタマシン、回帰木等、他の学習アルゴリズムで構築された学習モデルであってよい。
【0057】
制御部10は、上述の学習モデル1Mの推定結果に基づき医療施設内における汚染状況を特定する。例えば、作業内容により、医療従事者の作業範囲、使用する医療器具及び医薬品、出血の有無等が異なる。出血を伴う手術が行われた医療施設内においては、手術台周辺に血液が付着している可能性が高い。また作業レベルが大きい程、医療従事者が激しく身体を動かしたため、体液や医薬品の付着量が多く、付着範囲が広い可能性が高い。このような観点から、制御部10は、学習モデル1Mによる作業状況の推定結果に基づき医療施設内における汚染状況を特定し、作業終了後の医療施設内における清掃箇所及び清掃方法を取得する。
【0058】
図7は、第2実施形態における清掃装置1が実行する処理手順の一例を示すフローチャートである。第1実施形態の図4と共通する処理については同一のステップ番号を付してその詳細な説明を省略する。
【0059】
清掃装置1の制御部10は、撮像装置2から医療施設内を撮像した画像を取得し(ステップS12)、一時的に記憶する。
【0060】
制御部10は、取得した画像を学習モデル1Mに入力し(ステップS21)、学習モデル1Mから出力される作業状況を取得する(ステップS22)。制御部10は、作業内容及び作業レベルを含む作業状況に基づき、医療施設内の汚染範囲、汚染の程度、汚染物質の種類等を含む汚染状況を導出する(ステップS13)。
【0061】
制御部10は、導出した汚染状況に基づき、医療施設内の清掃箇所及び清掃方法を特定する(ステップS14)。以降、制御部10は、第1実施形態と同様にステップS15からステップ19の処理を実行し、一連の処理を終了する。
【0062】
本実施形態によれば、清掃装置1は、学習モデル1Mを用いて画像データから作業状況を精度よく推定することができる。作業状況に応じて適切に決定された清掃箇所及び清掃方法に基づき清掃が行われるため、清掃効率をより向上させ得る。
【0063】
(第3実施形態)
第3実施形態では、ハイパースペクトルカメラを用いて医療施設内の汚染状況を特定する構成を説明する。以下では、第3実施形態について、第1実施形態と異なる点を説明する。後述する構成を除く他の構成については第1実施形態の清掃システムSと同様であるので、共通する構成については同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0064】
図8は、第3実施形態における清掃装置1の構成を示すブロック図である。清掃装置1は、ハイパースペクトルカメラ15をさらに備える。ハイパースペクトルカメラ15は、可視光領域から近赤外領域までの広い波長領域を細かい波長域で区分けし、それぞれの波長域での光強度(スペクトル値)を計測することができる撮像装置である。ハイパースペクトルカメラ15を用いることにより、二次元の位置情報だけではなくスペクトル値を得ることができる。物質を構成している分子は、様々な運動をしており、運動している分子に光をあてると、運動状態に合わせて特定の波長の光のみが吸収される。従って、ハイパースペクトルカメラ15の撮像データによるスペクトル分析を取得することにより、測定対象物がどのような分子を含んでいるかを知ることが可能である。例えば、水分は1450nm付近、糖質は230nm付近、タンパク質は280nm付近、核酸(例えば、細菌やウイルスなどの病原体に由来するものなど)は260nm付近においてそれぞれ特徴的な吸収が示される。また、血液中のヘモグロビンは、広範な可視光領域と、940nm付近及び660nm付近において特徴的な吸収が示される。清掃装置1は、ハイパースペクトルカメラ15を用いて医療施設内を撮像しスペクトル値を取得することにより、被清掃面に存在する汚染物質を特定する。なお、ハイパースペクトルカメラ15は、清掃装置1に備えられる構成に限定されず、例えば医療施設内に設置されてもよい。
【0065】
清掃装置1は、清掃対象となる医療施設内において、ハイパースペクトルカメラ15を用いて医療施設内を撮像しスペクトル値を取得することにより、被清掃面に存在する汚染物質を特定する。
【0066】
図9は、第3実施形態における清掃装置1が実行する処理手順の一例を示すフローチャートである。第1実施形態の図4と共通する処理については同一のステップ番号を付してその詳細な説明を省略する。
【0067】
清掃装置1の制御部10は、例えば医療施設のサーバと通信すること等により作業内容情報を取得する(ステップS11)。制御部10は、撮像装置2から医療施設内を撮像した画像を取得する(ステップS12)。
【0068】
制御部10は、ハイパースペクトルカメラ15により医療施設内を撮像し、スペクトル値を含む撮像データを取得する(ステップS31)。制御部10は、取得した作業内容情報、画像及び撮像データを関連付けて一時的に記憶する。
【0069】
制御部10は、取得した作業内容情報、画像及び撮像データに基づき、医療施設内の汚染範囲及び汚染物質の種類を含む汚染状況を導出する(ステップS13)。制御部10は、ハイパースペクトルカメラ15による撮像データの位置情報に基づき、汚染物質の付着範囲を取得し、取得した付着範囲に対応する領域に汚染ポイントを付与し汚染範囲として導出する。また、制御部10は取得したスペクトル値に基づき、当該位置情報に対応する汚染物質の種類を導出する。
【0070】
制御部10は、導出した汚染状況に基づき、医療施設内の清掃箇所及び清掃方法を特定する(ステップS14)。以降、制御部10は、第1実施形態と同様にステップS15からステップS19の処理を実行し、一連の処理を終了する。
【0071】
上述の処理において、制御部10は、作業内容情報及び画像を取得することなく、スペクトル値を含む撮像データのみを取得するものであってもよい。すなわち、制御部10は、ハイパースペクトルカメラ15による撮像データのみを用いて医療施設内の汚染範囲及び汚染物質の種類を含む汚染状況を導出し、導出した汚染状況に基づき特定される清掃箇所及び清掃方法により清掃を行ってもよい。清掃装置1は、撮像装置2の画像又は作業内容情報に基づき特定された清掃箇所及び清掃方法による清掃と、ハイパースペクトルカメラ15を用いて特定される清掃箇所及び清掃方法による清掃とを独立して行うものであってよい。清掃装置1は、第1実施形態又は第2実施形態にて説明した清掃を行った後、ハイパースペクトルカメラ15を起動し、第3実施形態にて説明した清掃を行うものであってよい。本実施形態によれば、ハイパースペクトルカメラ15により医療施設内の汚染物質の内容を正確に取得することで、より効果的な清掃箇所及び清掃方法を特定することができる。
【0072】
第1実施形態から第3実施形態に示した例は、各実施形態に示した構成の全部又は一部を組み合わせて他の実施の形態を実現することが可能である。
【0073】
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0074】
S 清掃システム
1 清掃装置
10 制御部
11 記憶部
12 通信部
13 位置情報取得部
14 電源部
15 ハイパースペクトルカメラ
101 移動機構
102 清掃機構
1P プログラム
1M 学習モデル
2 撮像装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2021-06-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療施設に設けられる撮像装置により前記医療施設内を撮像した静止画若しくは動画を含む画像又は前記医療施設内の作業内容に関する作業内容情報を取得し、
取得した前記画像又は作業内容情報に基づき、前記医療施設内の清掃箇所及び清掃方法を特定し、
特定した前記医療施設内の清掃箇所及び前記清掃方法に係る清掃命令を出力し、
前記画像における前記医療施設内で作業を行う医療従事者の位置若しくは種類又は前記医療施設内の物品の位置若しくは種類により、前記医療施設内における汚染範囲及び汚染物質の種類を導出し、
導出した前記医療施設内における汚染範囲及び汚染物質の種類に基づき、前記医療施設内の清掃箇所及び清掃方法を特定する
処理をコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項2】
医療施設に設けられる撮像装置により前記医療施設内を撮像した静止画若しくは動画を含む画像又は前記医療施設内の作業内容に関する作業内容情報を取得し、
取得した前記画像又は作業内容情報に基づき、前記医療施設内の清掃箇所及び清掃方法を特定し、
特定した前記医療施設内の清掃箇所及び前記清掃方法に係る清掃命令を出力し、
前記画像は、前記医療施設内で作業を行う医療従事者を撮像対象に含み、
医療施設内で作業を行う医療従事者を撮像した画像を入力した場合に、前記医療従事者の作業状況を出力する学習モデルに、取得した前記画像を入力して、出力される前記医療従事者の作業状況を取得し、
取得した前記作業状況に基づき、前記医療施設内の清掃箇所及び清掃方法を特定する
処理をコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項3】
医療施設に設けられる撮像装置により前記医療施設内を撮像した静止画若しくは動画を含む画像又は前記医療施設内の作業内容に関する作業内容情報を取得し、
取得した前記画像又は作業内容情報に基づき、前記医療施設内の清掃箇所及び清掃方法を特定し、
特定した前記医療施設内の清掃箇所及び前記清掃方法に係る清掃命令を出力し、
前記作業内容情報は、前記医療施設内の作業に関するカルテデータを含み、
前記カルテデータにより特定される作業範囲、作業内容及び使用物品に基づき、前記医療施設内における汚染範囲及び汚染物質の種類を導出し、
導出した前記医療施設内における汚染範囲及び汚染物質の種類に基づき、前記医療施設内の清掃箇所及び清掃方法を特定する
処理をコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項4】
前記画像又は作業内容情報に基づき、前記医療施設内の清掃経路又は重点的清掃箇所を含む前記清掃箇所と、清掃手段又は使用薬剤を含む前記清掃方法とを特定する
処理をコンピュータに実行させる請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項5】
ハイパースペクトルカメラにより前記医療施設内を撮像したスペクトル値を取得し、
取得した前記スペクトル値に基づき、前記医療施設内の清掃箇所及び清掃方法を特定する
処理をコンピュータに実行させる請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項6】
前記スペクトル値に基づき、前記医療施設内に存在する水分、糖質、タンパク質及び核酸から選択される少なくとも1つを検出し、
検出結果に基づき前記医療施設内の清掃箇所及び清掃方法を特定する
処理をコンピュータに実行させる請求項5に記載のプログラム。
【請求項7】
前記医療施設内の清掃後、前記医療施設とは異なる第2医療施設への移動を指示する
処理をコンピュータに実行させる請求項1から請求項のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項8】
前記第2医療施設に設けられる第2撮像装置により前記第2医療施設内を撮像した静止画若しくは動画を含む第2画像又は前記第2医療施設内の作業内容に関する第2作業内容情報を取得し、
取得した前記第2画像又は第2作業内容情報に基づき、前記第2医療施設内の清掃箇所及び清掃方法を特定し、
特定した前記第2医療施設内の清掃箇所及び前記清掃方法に係る第2清掃命令を出力する
処理をコンピュータに実行させる請求項に記載のプログラム。
【請求項9】
ハイパースペクトルカメラにより前記第2医療施設内を撮像した第2スペクトル値を取得し、
取得した前記第2スペクトル値に基づき、前記第2医療施設内の清掃箇所及び清掃方法を特定する
処理をコンピュータに実行させる請求項に記載のプログラム。
【請求項10】
前記医療施設内の清掃箇所及び清掃方法を含む清掃記録を生成する
処理をコンピュータに実行させる請求項1から請求項のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項11】
移動機構及び清掃機構を備える清掃装置であって、
医療施設に設けられる撮像装置により前記医療施設内を撮像した静止画若しくは動画を含む画像又は前記医療施設内の作業内容に関する作業内容情報を取得する第1取得部と、
前記第1取得部が取得した画像又は作業内容情報に基づき、前記医療施設内の清掃箇所及び清掃方法を特定する第1特定部と、
前記第1特定部が特定した前記医療施設内の清掃箇所及び前記清掃方法に係る清掃命令を出力する出力部とを備え、
前記出力部が出力した清掃命令に基づき、前記移動機構及び清掃機構を用いて、前記清掃方法により前記医療施設内の前記清掃箇所を清掃し、
前記第1特定部は、前記画像における前記医療施設内で作業を行う医療従事者の位置若しくは種類又は前記医療施設内の物品の位置若しくは種類により、前記医療施設内における汚染範囲及び汚染物質の種類を導出し、
導出した前記医療施設内における汚染範囲及び汚染物質の種類に基づき、前記医療施設内の清掃箇所及び清掃方法を特定する
清掃装置。
【請求項12】
移動機構及び清掃機構を備える清掃装置であって、
医療施設に設けられる撮像装置により前記医療施設内を撮像した静止画若しくは動画を含む画像又は前記医療施設内の作業内容に関する作業内容情報を取得する第1取得部と、
前記第1取得部が取得した画像又は作業内容情報に基づき、前記医療施設内の清掃箇所及び清掃方法を特定する第1特定部と、
前記第1特定部が特定した前記医療施設内の清掃箇所及び前記清掃方法に係る清掃命令を出力する出力部とを備え、
前記出力部が出力した清掃命令に基づき、前記移動機構及び清掃機構を用いて、前記清掃方法により前記医療施設内の前記清掃箇所を清掃し、
前記画像は、前記医療施設内で作業を行う医療従事者を撮像対象に含み、
前記第1特定部は、医療施設内で作業を行う医療従事者を撮像した画像を入力した場合に、前記医療従事者の作業状況を出力する学習モデルに、取得した前記画像を入力して、出力される前記医療従事者の作業状況を取得し、
取得した前記作業状況に基づき、前記医療施設内の清掃箇所及び清掃方法を特定する
清掃装置。
【請求項13】
移動機構及び清掃機構を備える清掃装置であって、
医療施設に設けられる撮像装置により前記医療施設内を撮像した静止画若しくは動画を含む画像又は前記医療施設内の作業内容に関する作業内容情報を取得する第1取得部と、
前記第1取得部が取得した画像又は作業内容情報に基づき、前記医療施設内の清掃箇所及び清掃方法を特定する第1特定部と、
前記第1特定部が特定した前記医療施設内の清掃箇所及び前記清掃方法に係る清掃命令を出力する出力部とを備え、
前記出力部が出力した清掃命令に基づき、前記移動機構及び清掃機構を用いて、前記清掃方法により前記医療施設内の前記清掃箇所を清掃し、
前記作業内容情報は、前記医療施設内の作業に関するカルテデータを含み、
前記第1特定部は、前記カルテデータにより特定される作業範囲、作業内容及び使用物品に基づき、前記医療施設内における汚染範囲及び汚染物質の種類を導出し、
導出した前記医療施設内における汚染範囲及び汚染物質の種類に基づき、前記医療施設内の清掃箇所及び清掃方法を特定する
清掃装置。
【請求項14】
ハイパースペクトルカメラを備え、
前記ハイパースペクトルカメラにより前記医療施設内を撮像したスペクトル値を取得する第2取得部と、
前記第2取得部が取得したスペクトル値に基づき、前記医療施設内の清掃箇所及び清掃方法を特定する第2特定部とを備える
請求項11から請求項13のいずれか1項に記載の清掃装置。
【請求項15】
医療施設に設けられる撮像装置により前記医療施設内を撮像した静止画若しくは動画を含む画像又は前記医療施設内の作業内容に関する作業内容情報を取得し、
取得した前記画像又は作業内容情報に基づき、前記医療施設内の清掃箇所及び清掃方法を特定し、
特定した前記医療施設内の清掃箇所及び前記清掃方法に係る清掃命令を出力し、
前記画像における前記医療施設内で作業を行う医療従事者の位置若しくは種類又は前記医療施設内の物品の位置若しくは種類により、前記医療施設内における汚染範囲及び汚染物質の種類を導出し、
導出した前記医療施設内における汚染範囲及び汚染物質の種類に基づき、前記医療施設内の清掃箇所及び清掃方法を特定する
処理をコンピュータが実行する情報処理方法。
【請求項16】
医療施設に設けられる撮像装置により前記医療施設内を撮像した静止画若しくは動画を含む画像又は前記医療施設内の作業内容に関する作業内容情報を取得し、
取得した前記画像又は作業内容情報に基づき、前記医療施設内の清掃箇所及び清掃方法を特定し、
特定した前記医療施設内の清掃箇所及び前記清掃方法に係る清掃命令を出力し、
前記画像は、前記医療施設内で作業を行う医療従事者を撮像対象に含み、
医療施設内で作業を行う医療従事者を撮像した画像を入力した場合に、前記医療従事者の作業状況を出力する学習モデルに、取得した前記画像を入力して、出力される前記医療従事者の作業状況を取得し、
取得した前記作業状況に基づき、前記医療施設内の清掃箇所及び清掃方法を特定する
処理をコンピュータが実行する情報処理方法。
【請求項17】
医療施設に設けられる撮像装置により前記医療施設内を撮像した静止画若しくは動画を含む画像又は前記医療施設内の作業内容に関する作業内容情報を取得し、
取得した前記画像又は作業内容情報に基づき、前記医療施設内の清掃箇所及び清掃方法を特定し、
特定した前記医療施設内の清掃箇所及び前記清掃方法に係る清掃命令を出力し、
前記作業内容情報は、前記医療施設内の作業に関するカルテデータを含み、
前記カルテデータにより特定される作業範囲、作業内容及び使用物品に基づき、前記医療施設内における汚染範囲及び汚染物質の種類を導出し、
導出した前記医療施設内における汚染範囲及び汚染物質の種類に基づき、前記医療施設内の清掃箇所及び清掃方法を特定する
処理をコンピュータが実行する情報処理方法。