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  • 特開-含油廃水の処理方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022025612
(43)【公開日】2022-02-10
(54)【発明の名称】含油廃水の処理方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/52 20060101AFI20220203BHJP
   B01D 21/01 20060101ALI20220203BHJP
   C02F 1/24 20060101ALI20220203BHJP
   B01F 23/20 20220101ALI20220203BHJP
【FI】
C02F1/52 F
B01D21/01 105
C02F1/24 D
B01F3/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020128529
(22)【出願日】2020-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】000154727
【氏名又は名称】株式会社片山化学工業研究所
(71)【出願人】
【識別番号】505112048
【氏名又は名称】ナルコジャパン合同会社
(71)【出願人】
【識別番号】000183646
【氏名又は名称】出光興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】河部 海
(72)【発明者】
【氏名】平野 康幸
(72)【発明者】
【氏名】橋口 大真
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 忠信
【テーマコード(参考)】
4D015
4D037
4G035
【Fターム(参考)】
4D015BA05
4D015BA19
4D015BA21
4D015BA28
4D015BB05
4D015CA06
4D015DB01
4D015DC07
4D015EA08
4D015EA33
4D037AA13
4D037AB06
4D037BA03
4D037BA04
4D037BB03
4D037CA08
4G035AB20
4G035AC23
4G035AE13
(57)【要約】      (修正有)
【課題】既存の排水処理設備を利用しつつ、攪拌手段等といった特別な設備が設置されていない槽又は設置できない槽においても、凝集剤を用いた浮上分離が可能となる新たな処理方法の提供。
【解決手段】ファインバブル導入手段以外の攪拌設備が設置されていない処理設備で行われる処理方法であって、凝集剤が添加された廃水を攪拌混合して廃水中にフロックを形成し、かつ、該フロックが気泡を包含してスカムを形成するように、廃水にファインバブルを導入すること、及び、スカムを除去することを含む、含油廃水の処理方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
含油廃水の処理方法であって、
凝集剤が添加された前記廃水を攪拌混合して前記廃水中にフロックを形成し、かつ、該フロックが気泡を包含してスカムを形成するように、前記廃水にファインバブルを導入すること、及び、
前記スカムを除去することを含む、処理方法。
【請求項2】
前記ファインバブルの導入は、水平方向に対して下方向にファインバブルを吐出することを含む、請求項1記載の処理方法。
【請求項3】
前記ファインバブルの導入は、鉛直下方向に対して10度~40度に傾斜した方向にファインバブルを吐出することを含む、請求項1又は2に記載の処理方法。
【請求項4】
前記ファインバブルの導入は、前記廃水が貯留された槽に対して斜め下方向に向かって前記ファインバブルが吐出されるように配置されたファインバブルの吐出口より行うことを含む、請求項1又は2に記載の処理方法。
【請求項5】
前記凝集剤を、前記ファインバブルの吐出口付近に供給することを含む、請求項4記載の処理方法。
【請求項6】
前記凝集剤の添加及びバブルの導入は、ファインバブル導入手段以外の攪拌設備が設置されていない処理設備で行われる、請求項1から5のいずれかに記載の処理方法。
【請求項7】
前記ファインバブルの導入は、水中ポンプを用いて行う、請求項1から6のいずれかに記載の処理方法。
【請求項8】
前記凝集剤は、カチオン系高分子凝集剤である、請求項1から7のいずれかに記載の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、製油所等から排出される含油廃水の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製油所等の産業で排出される含油廃水は、例えば、油分及び懸濁物質を含む。含油廃水中の油分及び懸濁物質を除去する方法としては、例えば、カチオン系凝集剤によるフロック分離処理方法等がある(例えば、特許文献1)。
【0003】
フロック分離処理方法の一つとして、例えば、加圧浮上分離法等がある。加圧浮上分離法では、まず、凝集剤を被処理廃水に添加して撹拌混合して懸濁物質を含む凝集フロックを形成し、凝集フロックを含む被処理廃水を加圧浮上槽に導入し、そこで凝集フロックに気泡を付着させる。気泡を付着させた懸濁物質を含む凝集フロック(スカム)を浮上させることによって、懸濁物質の分離除去が行われる。加圧浮上分離法のその他の例として、マイクロナノバブル発生槽を用いて作製したマイクロナノバブル含有水を被処理水と混合し、さらに凝集剤を添加して混合した後、加圧浮上槽に導入し、加圧浮上槽で発生する微細気泡とマイクロナノバブルの両方とを用いて被処理水中の懸濁物質を浮上分離させる方法がある(例えば、特許文献2)。
【0004】
一方、上記の方法ではいずれも、特別な設備を必要とするため装置が大型化するという問題や、処理を行うための特別な設備を設置する必要があるという問題がある。具体的には、前者の方法では、凝集フロックを形成するための攪拌手段及び加圧浮上槽を予め設置する必要がある。後者の方法では、マイクロナノバブル含有水を作製するためのマイクロナノバブル発生槽及び加圧浮上槽を予め設置する必要がある。
【0005】
上記装置の大型化の課題を解決するために、撹拌手段が設置された撹拌混合槽において、凝集剤の添加とマイクロバブルとの導入と撹拌手段によるこれらの攪拌混合とを行う方法が提案されている(例えば、特許文献3)。しかし、この方法においても、攪拌手段が必須である、つまり、攪拌手段が設置されていない槽では、攪拌手段の設置といった装置改造を行わない限り、上記処理を行うことができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008-006382
【特許文献2】特開2009-034683
【特許文献3】特開2011-000583
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
製油所や工場等の排水処理設備は、そこで排出される廃水の性質に応じて処理工程が設定され、処理に用いる様々な装置等が設置されている。一方で、工場等の操業によっては廃水の性質が変化する場合があり、変化の度合いによっては、既存の設備では十分な処理効果が得られない場合があるという問題がある。また、排水処理設備で排出される廃水はほぼ一定に保つ必要があるが、排水処理設備に供給される廃水の性質が変化するごとに、排水処理設備における処理槽及び処理装置の改造を行うのは、コストが高いという問題がある。
【0008】
本開示は、一態様において、既存の排水処理設備を利用しつつ、攪拌手段等といった特別な設備が設置されていない槽又は設置できない槽においても、凝集剤を用いた浮上分離が可能となる新たな処理方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、一態様において、凝集剤が添加された含油廃水を攪拌混合して廃水中にフロックを形成し、かつ、該フロックが気泡を包含してスカムを形成するように、前記廃水にファインバブルを導入すること、及び、前記スカムを除去することを含む、含油廃水の処理方法に関する。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、一態様において、既存の排水処理設備を利用しつつ、攪拌手段等といった特別な設備が設置されていない槽又は設置できない槽においても、凝集剤を用いた浮上分離が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施例において実機における排水処理試験を行った製油所の二次排水処理設備において、ファインバブル発生器12及び凝集剤供給手段15が配置された貯留槽11の構成を示す概略図である。
図2図2は、実施例の結果の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示は、ファインバブルといった微細な気泡の吐出力を利用することで、凝集剤によるフロックの形成と、該フロックへの気泡の付着によるスカムの形成とを行うことができるという知見に基づく。
本開示は、一態様において、凝集剤が添加された廃水が貯留された槽において、ファインバブルの吐出口を水平方向に対して下方向、例えば、槽の角方向(例えば、槽の2つの側面と底面との交点付近)に向かってファインバブルを廃水中に吐出することにより、廃水中に激しい乱流を形成させることができ、それにより凝集剤が攪拌混合される。その結果、このファインバブルの吐出によって、攪拌手段を用いなくても、フロックの形成とスカムの形成とを同時に行うことができるという知見に基づく。
【0013】
本開示によれば、一又は複数の実施形態において、フロックの形成とスカムの形成とを同一の処理、すなわち、ファインバブルの導入により行うことができる。また、本開示によれば、一又は複数の実施形態において、ファインバブルの導入以外の攪拌手段を用いたフロックの形成を行わない場合であっても、気泡を含有するフロック(スカム)を形成でき、それを浮上分離することができうる。
【0014】
本開示によれば、一態様において、既存の排水処理設備を利用しつつ、攪拌手段等といった特別な設備が設置されていない槽又は設置できない槽においても、凝集剤を用いた浮上分離が可能となる。
本開示によれば、一又は複数の実施形態において、既存の排水処理設備を利用できかつ大型な処理装置を改めて設置する必要性がないため、排出される廃水の品質に応じた処理の変更を簡便に行うことができる。
【0015】
本開示の処理方法は、一又は複数の実施形態において、貯留槽、中間槽及び中継槽等といった、通常、撹拌混合設備及び加圧浮上装置等といった処理装置が配置されていない槽(タンク)等に好適に用いることができる。また、本開示の処理方法は、一又は複数の実施形態において、廃水の性質の変化に応じて迅速に対応し、後段の処理負荷を低減する点から、排水処理設備の上流側で行うことが好ましい。排水処理設備の上流側としては、一又は複数の実施形態において、油分離槽(又は油分離処理)よりも上流側、並びに凝集槽及び/又は沈殿槽(又は凝集/沈殿処理)よりも上流側等が挙げられる。
本開示の処理方法を行う槽は、一又は複数の実施形態において、槽内に次の槽との接続部を備え、槽内に形成された接続部(配管等)を通じて、槽内の廃水を次の槽に送液可能であってもよい。
【0016】
本開示において「ファインバブル」とは、一又は複数の実施形態において、直径100μm以下の浮遊性の気泡をいう。ファインバブルとしては、マイクロバブル(直径:1μm~100μm)、及びウルトラファインバブル(ナノバブルともいう、直径:1μm未満)がある。
【0017】
本開示において「含油廃水」とは、各種工業の工場等から排出される廃水であって、油分と水とを含む。含油廃水は、一又は複数の実施形態において、さらに懸濁物質(SS)等を含んでいてもよい。工場としては、一又は複数の実施形態において、製油所、鉄鋼所、石油化学プロセス、食品工場、自動車工場、整備工場、印刷工場、及び機械工場等が挙げられる。油分としては、一又は複数の実施形態において、鉱物油及び植物油等が挙げられる。
【0018】
[含油廃水の処理方法]
本開示は、一態様において、凝集剤が添加された含油廃水を攪拌混合して廃水中にフロックを形成し、かつ、該フロックが気泡を包含してスカムを形成するように、凝集剤が添加された前記廃水にファインバブルを導入すること、及び、前記スカムを除去することを含む、含油廃水の処理方法に関する。
【0019】
本開示においてファインバブルの導入は、凝集剤が添加された含油廃水に対し、該廃水を攪拌混合してフロックを形成し、かつ該フロックが気泡を包含してスカムを形成するように行う。本開示の処理方法は、一又は複数の実施形態において、廃水中でファインバブルを導入することを含む。廃水中へのファインバブルの導入は、一又は複数の実施形態において、ファインバブルを吐出する吐出口(例えば、ノズル)等を廃水中に配置してファインバブルを吐出すること等により行うことができる。
【0020】
ファインバブルの導入は、一又は複数の実施形態において、水平方向又は水平方向に対して下方向に向かってファインバブルを吐出することにより行うことができる。ファインバブルの吐出方向としては、一又は複数の実施形態において、鉛直下方向に対して0度~90度に傾斜した方向である。傾斜角は、より激しい乱流を発生させて撹拌混合を促進させる点から、好ましくは10度~60度、10度~50度、10度~45度、10度~40度、又は20度~40度である。本開示において「鉛直方向に対して○○度に傾斜した方向」とは、鉛直下方向とノズルの傾斜方向(ノズルの吐出口の軸)とのなす角が○○度であることをいう。なお、本開示において、「鉛直下方向に対して0度~90度」は、鉛直下方向に対して360度~270度とも解釈することができる。
【0021】
ファインバブルは、一又は複数の実施形態において、ファインバブル発生器を用いて行うことができる。ファインバブル発生器としては、一又は複数の実施形態としては、エジェクタ方式、キャビテーション方式、旋回流方式、加圧溶解方式、及び超音波方式等が挙げられる。ファインバブル発生器としては、一又は複数の実施形態において、特開2019-093375号公報に開示された混気用ノズルを使用できる。
ファインバブル発生器は、一又は複数の実施形態において、処理対象の廃水中に配置し、ファインバブル発生器に加圧水と該加圧水の導入により発生した負圧により吸引された空気とを導入することによって、廃水中にファインバブル(ファインバブルを含む水(混気水))を導入(吐出)することができる。
【0022】
ファインバブル発生器は、一又は複数の実施形態において、そのノズルの吐出口が、廃水が貯留された槽に対して斜め下方向に向かってファインバブルが吐出されるように配置されていてもよい。これにより、該廃水の攪拌混合によるフロックの形成と、かつ該フロックが気泡を包含することによるスカムの形成とをより効率的に行うことができる。ファインバブル発生器は、一又は複数の実施形態において、1つの側面と底面との交線方向、又は被処理廃水が貯留された槽(タンク)の角方向(例えば、槽の2つの側面と底面との交点付近)に向かってファインバブルが吐出されるように、槽内に配置されていてもよい。
【0023】
廃液にファインバブルを導入する槽が、槽内に次の槽との接続部を備える場合(槽内に形成された接続部(配管等)を通じて、槽内の廃水を送液可能である場合)、ファインバブルは、一又は複数の実施形態において、該接続部が形成された側面とは反対側の側面方向又は該側面と該側面と隣り合う側面との交線方向に向かって導入してもよいし、接続部が形成された側面方向又は該側面と該側面と隣り合う側面との交線方向に向かって導入してもよい。
【0024】
ファインバブル発生器に供給される気体は、一又は複数の実施形態において、空気、酸素及びオゾンガス並びにそれらの混合物等が挙げられる。
【0025】
ファインバブルの供給量(流量)は、一又は複数の実施形態において、10mL/min~200mL/min、又は15mL/min~200mL/minであり、撹拌効率及び/又はフロックの形成効率を向上させる点からは、15mL/min~100mL/min、25mL/min~90mL/min又は28mL/min~55mL/minである。
【0026】
ファインバブル発生器は、一又は複数の実施形態において、ポンプに接続して使用することができる。ポンプとしては、一又は複数の実施形態において、水中ポンプ及び陸上ポンプが挙げられる。ファインバブル発生器とポンプとは、一又は複数の実施形態において、加圧給水管を介して接続されてもよい。
【0027】
凝集剤としては、一又は複数の実施形態において、高分子凝集剤が挙げられる。高分子凝集剤としては、一又は複数の実施形態において、カチオン系の高分子凝集剤が挙げられる。カチオン系の高分子凝集剤としては、一又は複数の実施形態において、カチオン系ディスパージョン型(共)重合体が挙げられる。カチオン系ディスパージョン型(共)重合体は、一又は複数の実施形態において、特開昭62-015251号公報に記載の方法によって製造することができる。
【0028】
本開示の処理方法は、一又は複数の実施形態において、被処理対象である廃水に凝集剤を添加することを含んでいてもよい。凝集剤の添加量としては、一又は複数の実施形態において、1ppm~500ppm、3ppm~200ppm、又は5ppm~100ppmである。
【0029】
撹拌混合及び/又はフロックの形成を促進する点から、一又は複数の実施形態において、凝集剤を、ファインバブルが吐出される吐出口の上方から添加することを含んでいてもよい。撹拌混合及び/又はフロックの形成をより促進する点から、一又は複数の実施形態において、凝集剤を、ファインバブル発生器のノズルの吐出口付近に供給することが好ましい。
【0030】
本開示の処理方法は、一又は複数の実施形態において、凝集剤の添加及びバブルの導入を、ファインバブル導入手段以外の攪拌設備が設置されていない処理設備で行うことを含む。本開示の処理方法は、一又は複数の実施形態において、廃水の攪拌混合を、ファインバブル導入手段を使用して実質的に行うことを含み、その他の態様において、ファインバブル導入手段以外の攪拌設備を使用して行う態様を実質的に含んでいてもよく、含まなくてもよい。
【0031】
本開示の処理方法は、形成された気泡を包含するフロック(スカム)を除去することを含む。スカムの除去は、一又は複数の実施形態において、オーバーフローにより行ってもよいし、ポンプ等で抜き取ることにより行ってもよい。
【0032】
本開示の処理方法は、一又は複数の実施形態において、各種排水処理設備における二次廃水の処理に用いることができる。本開示において「二次廃水」とは、スクリーンや自然沈降などの一次廃水処理によって比較的大きな浮遊物質を取り除いた後の廃水を指す。本開示の処理方法は一次処理廃水に使用しても二次廃水に使用してもよく、凝集剤の使用量を抑制する点からは、簡単に除去可能な浮遊物質ができるだけ除かれている二次廃水に用いるほうが好ましい。本開示において「二次排水処理設備」とは、一次廃水処理が施された廃水を処理するための設備であって、一次処理より高度な凝集沈殿や生物処理などの高度な廃水処理を行う設備を指す。
【0033】
本開示はさらに以下の一又は複数の実施形態に関する。
[1] 含油廃水の処理方法であって、
凝集剤が添加された前記廃水を攪拌混合して前記廃水中にフロックを形成し、かつ、該フロックが気泡を包含してスカムを形成するように、前記廃水にファインバブルを導入すること、及び、
前記スカムを除去することを含む、処理方法。
[2] 前記ファインバブルの導入は、水平方向に対して下方向にファインバブルを吐出することを含む、[1]記載の処理方法。
[3] 前記ファインバブルの導入は、鉛直下方向に対して10度~40度に傾斜した方向にファインバブルを吐出することを含む、[1]又は[2]に記載の処理方法。
[4] 前記ファインバブルの導入は、前記廃水が貯留された槽に対して斜め下方向に向かって前記ファインバブルが吐出されるように配置されたファインバブルの吐出口より行うことを含む、[1]又は[2]に記載の処理方法。
[5] 前記凝集剤を、前記ファインバブルの吐出口付近に供給することを含む、[4]記載の処理方法。
[6] 前記凝集剤の添加及びバブルの導入は、ファインバブル導入手段以外の攪拌設備が設置されていない処理設備で行われる、[1]から[5]のいずれかに記載の処理方法。
[7] 前記ファインバブルの導入は、水中ポンプを用いて行う、[1]から[6]のいずれかに記載の処理方法。
[8] 前記凝集剤は、カチオン系高分子凝集剤である[1]から[7]のいずれかに記載の処理方法。
【0034】
以下、実施例を用いて本開示をさらに説明する。ただし、本開示は以下の実施例に限定して解釈されない。
【実施例0035】
[実機における排水処理試験]
製油所の二次排水処理設備において、排水処理試験を行った。
図1に示すように、二次排水処理設備において、もっとも上流側に配置されかつ二次廃水が貯留される貯留槽11に、ファインバブル発生器12と凝集剤供給手段15とを設置した。なお、当該貯留槽には、廃水を貯留するための設備であるため、撹拌設備は設置されていない。
貯留槽11の廃水は、貯留槽11内に形成されたパイプ17を通じてさらなる貯留槽(例えば、オーバーフロー受槽)に送液される。
【0036】
ファインバブル発生器12は、水中ポンプ13と給気管14と接続し、貯留槽11内に設置した。ファインバブル発生器12は、吐出口(ノズルの先端)が貯留槽11への廃水導入口16の下側に位置し、かつファインバブルが斜め下方向かつ貯留槽11のパイプ17が形成された側面に相対する側面とそれと隣接する一方の側面と底面との交点付近(貯留槽の角)に向かって吐出されるように設置した(鉛直下方向とノズルの軸とのなす角:30~35度程度)。また、ファインバブル発生器12の吐出口付近に凝集剤が供給されるように、凝集剤供給手段15の供給口を配置した。
ファインバブル発生器は、マイクロバブル・ナノバブル発生装置YJノズル(形式:YK-9、ノズル径:9mm、最小ポンプ流量:80L/min、吸引空気流量:25L/min、エンバイロ・ビジョン株式会社製)を使用した。水中ポンプ13は、S-500N(寺田ポンプ製作所製、吐出量:120L/min)を使用した。
凝集剤としては、カチオン系高分子凝集剤(商品名:フロクランSC640、株式会社片山化学工業研究所製)を使用した。
【0037】
試験は、下記条件で行った。マイクロバブル(ファインバブル)を吐出することにより凝集剤を攪拌してフロックの形成を促進させるとともに、かつ、該フロック内に気泡を包含させた。水面に浮上したフロック(スカム)はポンプで抜き取った。
[試験条件]
マイクロバブル供給量:80L/min
凝集剤添加量:0~20ppm
【0038】
処理前及び処理後の排水について目視観察及び写真撮影を行うとともに、懸濁物質及びn-ヘキサン抽出物質量を、以下の方法により測定した。その結果の一例を下記表及び図2に示す。
【0039】
[懸濁物質の測定方法]
JIS K0101-16.1に準拠して測定を実施した。
[n-ヘキサン抽出物質量の測定方法]
JIS K0102-24に準拠して測定を実施した。
【0040】
【表1】
【0041】
図2に、貯留槽に供給する直前の廃水(処理前)及び貯留槽から排出される排水(処理後)を撮影した写真を示す。上記表及び図2に示すように、凝集剤及びファインバブルを上記のように廃水中に供給することによって廃水中に多量のフロックが形成させ、かつ該フロックに気泡を含有させることができたことにより、懸濁物質及びn-ヘキサン抽出物質量のいずれにおいても、凝集剤単独(比較例)よりも優れた処理効果を示すことができ、また、目標値(基準値)を満たすことができた。
図1
図2