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特開2022-25644生体コンディション管理装置、生体コンディション管理システム、生体コンディション管理方法、及びコンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022025644
(43)【公開日】2022-02-10
(54)【発明の名称】生体コンディション管理装置、生体コンディション管理システム、生体コンディション管理方法、及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/352 20210101AFI20220203BHJP
   A61B 5/16 20060101ALI20220203BHJP
   G16H 50/20 20180101ALI20220203BHJP
【FI】
A61B5/04 312U
A61B5/04 312R
A61B5/16 130
G16H50/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020128589
(22)【出願日】2020-07-29
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 公開の事実1-1:令和2(2020)年3月10日、2020 IEEE 2nd Global Conference on Life Sciences and Technologies(LifeTech)予稿集 公開の事実1-2:令和2(2020)年3月12日、2020 IEEE 2▲nd▼ Global Conference on Life Sciences and Technologies(LifeTech) 公開の事実2-1:令和2(2020)年5月、日本生体医工学会誌第59回日本生体医工学会大会 プログラム・抄録集 公開の事実2-2:令和2(2020)年5月26日、公益社団法人日本生体医工学会第59回日本生体医工学会大会
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和元年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、研究成果展開事業、センター・オブ・イノベーションプログラム『運動の生活カルチャー化により活力ある未来をつくるアクティブ・フォー・オール拠点』委託研究開発、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】593006630
【氏名又は名称】学校法人立命館
(74)【代理人】
【識別番号】100111567
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 寛
(72)【発明者】
【氏名】岡田 志麻
(72)【発明者】
【氏名】塩澤 成弘
(72)【発明者】
【氏名】増田 葉月
(72)【発明者】
【氏名】後藤 大輔
【テーマコード(参考)】
4C038
4C127
5L099
【Fターム(参考)】
4C038PP05
4C038PS00
4C127AA02
4C127GG02
4C127GG05
4C127GG11
4C127GG15
4C127GG18
5L099AA04
(57)【要約】      (修正有)
【課題】測定が簡易である心拍数を利用しつつも、生体のコンディションをより正確に分析する装置を提供する。
【解決手段】生体コンディション管理装置10は、生体の就寝期間における心拍数の経時変化を示す心拍数時系列データを取得し、前記心拍数時系列データにおいて前記心拍数が最も小さくなる第1低心拍点を求め、前記第1低心拍点に基づいて前記生体のコンディションを分析するよう構成された処理ユニット11を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体の就寝期間における心拍数の経時変化を示す心拍数時系列データを取得し、前記心拍数時系列データにおいて前記心拍数が最も小さくなる第1低心拍点を求め、前記第1低心拍点に基づいて前記生体のコンディションを分析するよう構成された処理ユニットを備える
生体コンディション管理装置。
【請求項2】
前記コンディションを分析することは、前記第1低心拍点の時刻である第1低心拍時刻を、第1基準時刻と比較することを含む
請求項1に記載の生体コンディション管理装置。
【請求項3】
前記第1基準時刻は、予め設定された時刻である
請求項2に記載の生体コンディション管理装置。
【請求項4】
前記第1基準時刻は、前記生体における過去の第1低心拍時刻から決定される
請求項2に記載の生体コンディション管理装置。
【請求項5】
前記コンディションを分析することは、前記第1低心拍時刻と前記第1基準時刻との差に基づいて、前記生体に推奨される就寝時刻を算出することを含む
請求項2から請求項4のいずれか1項に記載の生体コンディション管理装置。
【請求項6】
前記コンディションを分析することは、前記第1低心拍点の時刻である第1低心拍時刻に基づいて、前記生体が第1コンディションになる第1コンディション時刻を算出することを含む
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の生体コンディション管理装置。
【請求項7】
前記第1コンディション時刻は、前記第1低心拍時刻に12時間を加算した時刻である
請求項6に記載の生体コンディション管理装置。
【請求項8】
前記コンディションを分析することは、前記第1コンディション時刻と第2基準時刻との差に基づいて、前記生体に推奨される入眠時刻を算出することを含む
請求項6又は請求項7に記載の生体コンディション管理装置。
【請求項9】
前記コンディションを分析することは、前記第1低心拍点における心拍数である第1低心拍数を、基準心拍数と比較することを含む
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の生体コンディション管理装置。
【請求項10】
前記基準心拍数は、予め設定された心拍数である
請求項9に記載の生体コンディション管理装置。
【請求項11】
前記基準心拍数は、前記生体における過去の第1低心拍数から決定される
請求項9に記載の生体コンディション管理装置。
【請求項12】
前記コンディションを分析することは、就寝時刻における心拍数と前記第1低心拍点における心拍数である第1低心拍数との差を算出することを含む
請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の生体コンディション管理装置。
【請求項13】
前記コンディションを分析することは、就寝時刻から、前記第1低心拍点の時刻である第1低心拍時刻までの所要時間を算出することを含む
請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の生体コンディション管理装置。
【請求項14】
前記コンディションを分析することは、就寝時刻における心拍数と前記第1低心拍点における心拍数である第1低心拍数との差と、前記所要時間と、に基づく指標を算出することを含む
請求項13に記載の生体コンディション管理装置。
【請求項15】
前記処理ユニットは、前記心拍数時系列データにおいて前記心拍数が2番目に小さくなる第2低心拍点を更に求めるよう構成され、
前記コンディションを分析することは、更に、前記第2低心拍点に基づく
請求項1又は2に記載の生体コンディション管理装置。
【請求項16】
生体の心拍に関する生体信号を出力するセンサ装置と、
前記生体信号を前記センサ装置から取得し、前記生体信号から、前記生体の就寝期間における心拍数の経時変化を示す心拍数時系列データを取得し、前記心拍数時系列データにおいて前記心拍数が最も小さくなる第1低心拍点を求め、前記第1低心拍点に基づいて前記生体のコンディションを分析するよう構成された処理ユニットと、
を備える生体コンディション管理システム。
【請求項17】
生体の就寝期間における心拍数の経時変化を示す心拍数時系列データを取得し、
前記心拍数時系列データにおいて前記心拍数が最も小さくなる第1低心拍点を求め、
前記第1低心拍点に基づいて前記生体のコンディションを分析する
ことを備える生体コンディション管理方法。
【請求項18】
生体の就寝期間における心拍数の経時変化を示す心拍数時系列データにおいて前記心拍数が最も小さくなる第1低心拍点を求め、前記第1低心拍点に基づいて前記生体のコンディションを分析する処理を、コンピュータに実行させるためのコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、生体コンディション管理装置、生体コンディション管理システム、生体コンディション管理方法、及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、連続記録した24時間の心拍数変動の時系列データから、その心拍変動に内在する24時間を一周期とする概日リズムまたはサーカディアンリズムを示す変動曲線を求めることを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-283523号公報
【発明の概要】
【0004】
人の体内にある体内時計によって調整されるリズムの中で、約24時間のリズムのことをサーカディアンリズム、又は概日リズムという。サーカディアンリズムは、生体コンディションに影響を与えるため、生体コンディションの分析には、サーカディアンリズムを正確に求めることが望まれる。
【0005】
一般に、サーカディアンリズムは、例えば、直腸温から得られる深部体温の計測から求められる。しかしながら、深部体温の計測は、高い侵襲があるため、日常的に計測するには適していない。そこで、特許文献1のように、測定が簡易である心拍数から、サーカディアンリズムを求めることがある。
【0006】
例えば、特許文献1は、連続24時間の心拍数変動を計測した時系列データを用いて、24時間全体のサーカディアンリズムを示す変動曲線を求めている。しかし、連続24時間の心拍数変動を計測した時系列データには、日中時間帯の外部要因によるノイズが多数含まれている。外部要因は、例えば、日中時間帯の生体の運動である。
【0007】
連続24時間の心拍数変動を計測した時系列データを用いてサーカディアンリズムを示す変動曲線を求めた場合、日中時間帯における外部要因によるノイズが影響し、求めた変動曲線は、実際のサーカディアンリズムに対して誤差が大きくなる。このような誤差は、生体コンディションの正確な分析を困難にする。日中の誤差を少なくしようとすると、被験者は日中において安静にしている必要がある。安静が必要であると、日常生活において生体コンディションを把握することが困難である。
【0008】
したがって、測定が簡易である心拍数を利用しつつも、生体のコンディションをより正確に分析することが望まれる。
【0009】
本開示のある側面は、生体コンディション管理装置である。開示の生体コンディション管理装置は、生体の就寝期間における心拍数の経時変化を示す心拍数時系列データを取得し、前記心拍数時系列データにおいて前記心拍数が最も小さくなる第1低心拍点を求め、前記第1低心拍点に基づいて前記生体のコンディションを分析するよう構成された処理ユニットを備える。
【0010】
本開示の他の側面は、生体コンディション管理システムである。開示の生体コンディション管理システムは、生体の心拍に関する生体信号を出力するセンサ装置と、前記生体信号を前記センサ装置から取得し、前記生体信号から、前記生体の就寝期間における心拍数の経時変化を示す心拍数時系列データを取得し、前記心拍数時系列データにおいて前記心拍数が最も小さくなる第1低心拍点を求め、前記第1低心拍点に基づいて前記生体のコンディションを分析するよう構成された処理ユニットと、を備える。
【0011】
本開示の他の側面は、生体コンディション管理方法である。開示の生体コンディション管理方法は、生体の就寝期間における心拍数の経時変化を示す心拍数時系列データを取得し、前記心拍数時系列データにおいて前記心拍数が最も小さくなる第1低心拍点を求め、前記第1低心拍点に基づいて前記生体のコンディションを分析することを備える。
【0012】
本開示の他の側面は、コンピュータプログラムである。開示のコンピュータプログラムは、生体の就寝期間における心拍数の経時変化を示す心拍数時系列データにおいて前記心拍数が最も小さくなる第1低心拍点を求め、前記第1低心拍点に基づいて前記生体のコンディションを分析する処理を、コンピュータに実行させる。
【0013】
更なる詳細は、後述の実施形態として説明される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、実施形態に係る生体コンディション管理装置を含む生体コンディション管理システムの概略構成図である。
図2図2は、実施形態に係る生体コンディション管理装置のコンディション評価処理のフローチャートである。
図3図3は、実施形態に係る生体コンディション管理装置の心拍数時系列データを求める処理のフローチャートである。
図4図4は、実施形態に係る生体コンディション管理装置のディスプレイにおいて表示される画面の一例を示す概略図である。
図5図5は、実施形態に係る生体コンディション管理装置のディスプレイにおいて表示される画面の他の例を示す概略図である。
図6図6は、実施形態に係る生体コンディション管理装置のディスプレイにおいて表示される画面のさらに他の例を示す概略図である。
図7図7は、実施形態に係る生体コンディション管理装置のコンディション調整処理のフローチャートである。
図8図8は、実施形態に係る生体コンディション管理装置のディスプレイにおいて表示される画面のさらに他の例を示す概略図である。
図9図9は、実施形態に係る生体コンディション管理装置のディスプレイにおいて表示される画面のさらに他の例を示す概略図である。
図10図10は、第1検証に係る心拍数時系列データ及び最低心拍数を示す図である。
図11図11は、心拍数時系列データから求めた最低点と深部体温時系列データから求めた最低点とを示す図である。
図12図12は、第2検証に用いた心拍数生データを示す図である。
図13図13は、第2検証における心拍数時系列データとクロスポイントとを示す図である。
図14図14は、第2検証に係る比較結果示す図である。
図15図15は、第3検証に係る平地と高地の最低心拍数の変化を示すグラフである。
図16図16は、第4検証に係る最低心拍時刻の変化のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<1.生体コンディション管理装置、生体コンディション管理システム、生体コンディション管理方法、及びコンピュータプログラムの概要>
【0016】
(1)実施形態に係る生体コンディション管理装置は、生体の就寝期間における心拍数の経時変化を示す心拍数時系列データを取得し、前記心拍数時系列データにおいて前記心拍数が最も小さくなる第1低心拍点を求め、前記第1低心拍点に基づいて前記生体のコンディションを分析するよう構成された処理ユニットを備える。
【0017】
特許文献1のように、心拍数からサーカディアンリズムを示す24時間全体の変動曲線を求めようとすると、外的要因の多い日中時間帯のノイズが、変動曲線全体に影響を与える。この結果、得られる変動曲線は、日中時間帯はもちろん、就寝期間中においても、実際のサーカディアンリズムからは誤差が大きいものになる。
【0018】
これに対して実施形態に係る生体コンディション管理装置では、24時間全体の変動曲線を求めるのではなく、外的要因の少ない就寝期間において心拍数が最も小さくなる点である第1低心拍点を求める。心拍数が最も小さくなる第1低心拍点は、就寝期間中に生じるため、外的要因の少ない就寝期間の心拍数時系列データから比較的正確に求めることができる。
【0019】
そして、サーカディアンリズムが約24時間で周期的に変動する正弦波状の波形であることを利用すると、心拍数が最も小さくなる第1低心拍点という1点を求めることで、任意の時刻における生体コンディションを把握可能である。例えば、心拍数が最も小さくなる第1心拍点の時刻は、生体コンディションが最も低下している状態といえる。すなわち、拍数が最も小さくなる第1心拍点の時刻は、サーカディアンリズムにおいて最低点をとる時刻、すなわち、最低コンディション時刻といえる。したがって、心拍数が最も小さくなる第1心拍点の時刻が正確に求まれば、その約12時間後に、サーカディアンリズムにおいておける最高点、すなわち、最高コンディションが生じることを推定できる。
【0020】
このように、実施形態に係る生体コンディション装置では、サーカディアンリズムを示す24時間分の変動曲線を求めるのではなく、ノイズの影響が少なく、正確に求めるのが容易である第1低心拍点を求めることで、より正確に生体コンディションを分析することができる。
【0021】
(2)前記コンディションを分析することは、前記第1低心拍点の時刻である第1低心拍時刻を、第1基準時刻と比較することを含むことが好ましい。海外旅行などにより生活環境が変化すると、サーカディアンリズムが乱れることがある。サーカディアンリズムの乱れは、第1低心拍時刻の変動として生じる。そこで、第1低心拍時刻を基準となる時刻である第1基準時刻と比較することで、そのような乱れを分析することができる。
【0022】
(3)前記第1基準時刻は、予め設定された時刻であることが好ましい。この場合、予め設定された第1基準時刻と第1低心拍時刻との比較結果を用いて、生体コンディションを分析できる。
【0023】
(4)前記第1基準時刻は、前記生体における過去の第1低心拍時刻から決定されることが好ましい。この場合、生体における過去の第1低心拍時刻から決定された第1基準時刻と第1低心拍時刻との比較結果を用いて、生体コンディションを分析できる。
【0024】
(5)前記コンディションを分析することは、前記第1低心拍時刻と前記第1基準時刻との差に基づいて、前記生体に推奨される就寝時刻を算出することを含むことが好ましい。前記第1低心拍時刻が、第1基準時刻に対してずれていると、生活リズムが適切でない可能性がある、適切な生活リズムに戻すには、適切な時刻に就寝することが望まれる。実施形態に係る生体コンディション管理装置は、前記第1低心拍時刻と前記第1基準時刻との差を用いて、生体に推奨される就寝時刻を算出することができる。算出された就寝時刻は、生体コンディション管理装置によって、生体へ推奨される。これにより、生体は、適切な就寝時刻を把握できる。
【0025】
(6)前記コンディションを分析することは、前記第1低心拍点の時刻である第1低心拍時刻に基づいて、前記生体が第1コンディションになる第1コンディション時刻を算出することを含むことが好ましい。この場合、サーカディアンリズムが約24時間であることを利用することで、前記第1低心拍点の時刻である第1低心拍時刻を用いて、前記生体が第1コンディションになる第1コンディション時刻を算出することができる。これにより、生体が第1コンディションになる第1コンディション時刻に基づき、生体のコンディションを分析することができる。第1コンディションは、例えば、後述の最高コンディションであるが、最高コンディションに限られず、最高コンディションに対してX%(Xは、0以上100未満の値)となる任意コンディションであってもよい。
【0026】
(7)前記第1コンディション時刻は、前記第1低心拍時刻に12時間を加算した時刻であることが好ましい。一般的に約24時間のサーカディアンリズムの中で、生体が最も高いコンディションとなるのは、第1低心拍時刻の12時間後であることから、前記第1低心拍時刻に12時間を加算する。これにより、生体の最高コンディションになる前記第1コンディション時刻を算出することができる。
【0027】
(8)前記コンディションを分析することは、前記第1コンディション時刻と第2基準時刻との差に基づいて、前記生体に推奨される入眠時刻(就寝時刻)を算出することを含むことが好ましい。第1コンディション時刻が、第2基準時刻に対してずれていると、第1コンディション時刻が所望される時刻からずれている可能性がある。第1コンディション時刻を調整するには、適切な時刻に入眠することが望まれる。実施形態に係る生体コンディション管理装置は、前記第1コンディション時刻と第2基準時刻との差を用いて、生体に推奨される入眠時刻(就寝時刻)を算出することができる。算出された入眠時刻(就寝時刻)は、生体コンディション管理装置によって、生体へ推奨される。これにより、生体は、適切な入眠時刻(就寝時刻)を把握できる。
【0028】
(9)前記コンディションを分析することは、前記第1低心拍点における心拍数である第1低心拍数を、基準心拍数と比較することを含むことが好ましい。この場合、第1低心拍点の心拍数である第1低心拍数を、基準心拍数と比較し、その比較結果が得られる。この比較結果に基づき、生体のコンディションを分析することができる。
【0029】
(10)前記基準心拍数は、予め設定された心拍数であることが好ましい。この場合、予め設定された基準心拍数と第1低心拍数との比較結果を用いて、生体コンディションを分析できる。
【0030】
(11)前記基準心拍数は、前記生体における過去の第1低心拍数から決定されることが好ましい。この場合、生体における過去の第1低心拍数から決定された基準心拍数と第1低心拍数との比較結果を用いて、生体コンディションを分析できる。
【0031】
(12)前記コンディションを分析することは、就寝時刻における心拍数と前記第1低心拍点における心拍数である第1低心拍数との差を算出することを含むことが好ましい。この場合、就寝時刻における心拍数を第1低心拍数との差に基づき、生体のコンディションを分析することができる。
【0032】
(13)前記コンディションを分析することは、就寝時刻から、前記第1低心拍点の時刻である第1低心拍時刻までの所要時間を算出することを含むことが好ましい。この場合、就寝時刻から、前記第1低心拍点の時刻である第1低心拍時刻から就寝時刻までの所要時間に基づき、生体のコンディションを分析することができる。
【0033】
(14)前記コンディションを分析することは、就寝時刻における心拍数と前記第1低心拍点における心拍数である第1低心拍数との差と、前記所要時間と、に基づく指標を算出することを含むことが好ましい。この場合、就寝時刻における心拍数と前記第1低心拍点における心拍数である第1低心拍数との差と、前記所要時間と、に基づく指標に基づき、生体のコンディションを分析することができる。
【0034】
(15)前記処理ユニットは、前記心拍数時系列データにおいて前記心拍数が2番目に小さくなる第2低心拍点を更に求めるよう構成され、前記コンディションを分析することは、更に、前記第2低心拍点に基づくことが好ましい。この場合、第1低心拍点だけでなく、第2心拍点にも基づいて、生体コンディションを分析することができる。
【0035】
(16)実施形態に係る生体コンディション管理システムは、生体の心拍に関する生体信号を出力するセンサ装置と、前記生体信号を前記センサ装置から取得し、前記生体信号から、前記生体の就寝期間における心拍数の経時変化を示す心拍数時系列データを取得し、前記心拍数時系列データにおいて前記心拍数が最も小さくなる第1低心拍点を求め、前記第1低心拍点に基づいて前記生体のコンディションを分析するよう構成された処理ユニットと、を備えているのが好ましい。
【0036】
(17)実施形態に係る生体コンディション管理方法は、生体の就寝期間における心拍数の経時変化を示す心拍数時系列データを取得し、前記心拍数時系列データにおいて前記心拍数が最も小さくなる第1低心拍点を求め、前記第1低心拍点に基づいて前記生体のコンディションを分析する。
【0037】
(18)実施形態に係るコンピュータプログラムは、生体の就寝期間における心拍数の経時変化を示す心拍数時系列データにおいて前記心拍数が最も小さくなる第1低心拍点を求め、前記第1低心拍点に基づいて前記生体のコンディションを分析する処理を、コンピュータに実行させる。
【0038】
<2.生体コンディション管理装置、生体コンディション管理システム、生体コンディション管理方法、及びコンピュータプログラムの例>
【0039】
以下、図面を参照しつつ実施形態を説明する。図1は、生体コンディション管理システム1を示している。実施形態に係る生体コンディション管理システム1は、生体コンディション管理装置10と、センサ装置25と、を備える。センサ装置25は、例えば、スマートウェア20に取り付けられている。実施形態に係る生体コンディション管理システム1は、センサ装置25から送信された生体信号80を取得し、生体であるユーザのコンディションを分析する生体コンディション分析処理100を実行する。
【0040】
実施形態に係る生体コンディション管理装置10は、アプリケーションがインストールされたタブレット又はスマートフォンなどのモバイル端末であるが、インターネット上の端末であってもよい。生体コンディション管理装置10は、自由に持ち運ぶことが出来てもよいし、飛行機の座席などに備わっていてもよい。図1に示す生体コンディション管理装置10は、一例として、生体コンディション管理のアプリケーションプログラムがインストールされたスマートフォン端末である。したがって、生体コンディション管理装置10は、用途に応じて自由に持ち運ぶことができる。
【0041】
実施形態に係る生体コンディション管理装置10は、処理ユニット11と、ディスプレイ18と、を備える。処理ユニット11は、センサ装置25から取得した生体信号80を用いて、生体コンディションの評価又は調整をする生体コンディション分析処理100を実行する。ディスプレイ18は、処理ユニット11における生体コンディション分析処理100において出力される分析結果を表示する。分析処理100は、後述のコンディション評価処理110及びコンディション調整処理150を含む。
【0042】
実施形態に係る処理ユニット11は、生体信号80に基づいて、生体のコンディションの評価を行う機能を有する。また、実施形態に係る処理ユニット11は、生体のコンディションの評価に基づいて、生体のコンディションの調整を行う機能を有する。処理ユニット11は、コンディション評価処理110を実行し、その生体のコンディション評価結果に基づき、生体のコンディションの調整を行うコンディション調整処理150を実行する。
【0043】
処理ユニット11は、プロセッサ12と、メモリ13と、を備えるコンピュータによって構成されている。プロセッサ12は、例えば、CPUである。メモリ13は、例えば、一次記憶装置、及び、二次記憶装置を有する。一次記憶装置は、例えば、RAMである。二次記憶装置は、例えば、フラッシュメモリである。
【0044】
メモリ13には、コンピュータを処理ユニット11として動作させるためのコンピュータプログラム13Aが格納されている。コンピュータプログラム13Aは、生体コンディション分析処理100をプロセッサ12に実行させるためのプログラムコードを備える。プロセッサ12は、メモリ13からコンピュータプログラム13Aを読み出して、実行する。コンディション評価処理110は、生体信号80から得られるユーザの心拍数時系列データに基づいて、ユーザの生体のコンディションを評価する処理である。コンディション調整処理150は、コンディション評価処理110によって分析された結果に基づき、ユーザのコンディションの調整を提案する処理である。コンディション評価処理110、及び、コンディション調整処理150については、後述する。
【0045】
実施形態に係るセンサ装置25は、センサ装置25が取り付けられたユーザの心拍に関する生体信号を出力する。生体信号は、例えば、心電波形信号であってもよいし、RRI信号であってもよいし、心拍数信号であってもよい。すなわち、センサ装置25は、心電図を計測する心電センサであってもよいし、心拍数を計測する心拍センサであってもよい。また、心拍数は、脈拍数として測定されてもよい。拍数と脈拍数は、正常に心臓が拍動している場合、対応している。したがって、心拍センサは、脈拍を計測する脈拍センサを含む。センサ装置25による測定方法は、直接測定であってもよいし、間接測定であってもよい。直接測定は、生体の一部である胸部、手首、及び足首などにセンサ装置25を直接装着し、測定する。間接測定は、スマートウェア20に編み込まれている電気を通す繊維、もしくはスマートウェア20に装着されたセンサ装置25から測定する。
【0046】
図1に示すスマートウェア20は、センサ装置25を用いて、心電図、又は心拍数といった生体信号を取得することができるよう構成された衣料である。スマートウェア20は、シャツのみであってもよいし、シャツ、及び、ズボンとのセットアップでもよい。図1に示すセンサ装置25は、一例として、心電センサ25である。ユーザがスマートウェア20を着用することにより、ユーザの生体信号を計測できるため、心電センサ25が計測に用いる配線が不要となる。これにより、長時間にわたる心電図計測がユーザへ与える負担を軽減させることができる。
【0047】
実施形態に係る心電センサ25は、取得した生体信号80を生体コンディション管理装置10に、無線ネットワーク30を介して送信するための通信装置25Aを備える。
【0048】
実施形態に係る無線ネットワーク30は、一つ、もしくは複数のセンサが接続される端末どうしを、無線通信によって相互に接続したネットワークである。無線ネットワーク30は、例えば、ワイヤレスLANであってもよいし、Bluetooth(登録商標)であってもよい。心電センサ25によって取得された生体信号80は、無線ネットワーク30を介して、生体コンディション管理装置10の処理ユニット11へ送信される。
【0049】
図2は、実施形態に係る処理ユニット11におけるコンディション評価処理110の手順を示している。コンディション評価処理110は、処理ユニット11のプロセッサ12によって実行される。コンディション評価処理110は、心電センサ25により取得した生体信号80を用いて、心拍数時系列データを求める。コンディション評価処理110は、該心拍数時系列データを用いて、生体のコンディションを分析する。これにより、ユーザは、自らのコンディションを把握することができる。
【0050】
実施形態に係る生体は、例えば、心電図、又は心拍数といった生体情報が取得され、コンディション管理が行われるユーザである。ユーザは、例えば、一般の人であってもよいし、スポーツ選手であってもよいし、病気などにより治療を受ける人であってもよい。
【0051】
実施形態に係る処理ユニット11におけるコンディション評価処理110は、まず、心拍数時系列データを求める(ステップS111)。図3は、心拍数時系列データを求める処理S111の手順を示している。
【0052】
心拍数時系列データを求める処理S111においては、処理ユニット11のプロセッサ12が、心電センサ25から生体信号80を取得する(ステップS211)。心電センサ25は、ユーザが就寝時に着用しているスマートウェア20に取り付けられている。ここでは、心電センサ25から取得される生体信号80は、ユーザの心電波形である。心電波形は、心臓の電気活動を波形で表したものである。
【0053】
なお、生体信号が示す生体情報は、スマートウェア20に取り付けられているセンサ装置25によって異なる。例えば、センサ装置25が心拍センサである場合は、生体信号80は、心拍数の生データ80となる
【0054】
ステップS121において、プロセッサ12は、ユーザの就寝時間帯の心電波形80に対して、高速フーリエ変換(Fast Fourier Transform(FFT))を用いて周波数変換し、0.6~40Hzでバンドパスフィルタをかけ、逆高速フーリエ変換(逆FFT)によって、心電波形の時系列データに戻す。高速フーリエ変換により、心電波形80の波形を分解し周波数領域データに変換し、0.6~40Hzでバンドパスフィルタをかけノイズを除去する。ノイズを除去した後、逆高速フーリエ変換によって、心電波形の時系列データに再度変換する。
【0055】
プロセッサ12は、心電波形の時系列データより、R波を検知する(ステップS213)。R波は、心室の収縮によって発生する電圧である。通常、R波は、他の心電図のピーク(P波やT波)よりも振幅が大きいという特徴があるため、正確な検出が可能となる。
【0056】
プロセッサ12は、R波に基づいて、RRI(R-R Interval)を算出する(ステップS214)。RRIとは、一つ前のR波から次のR波が生じるまでの時間[ms]である。
【0057】
プロセッサ12は、1心拍毎に取得したRRIを心拍数時系列データに変換する(ステップS215)。ステップS215において求めた心拍数時系列データは、ノイズ等を含んだ、すなわち、心拍数生データである。プロセッサ12は、さらに、ステップS215において求めた心拍数時系列データから、心拍数の変化率を算出する(ステップS216)。
【0058】
計測時の心電図には、寝返り等の外部要因によるノイズが発生していることがある。さらに、スマートウェア20着用による心電図計測のため、医療機器を用いた心電図計測に比べて外れ値が発生しやすい。そのため、プロセッサ12は、四分位範囲(IQR)を用いて、ステップS215において求めた心拍数時系列データから、外れ値、すなわち、ノイズの除去を行う。そして、プロセッサ12は、計測時の心拍数時系列データを、ノイズを除去した心拍数時系列データで割ることで、計測精度を算出する(ステップS217)。
【0059】
ステップS217求めた心拍数時系列データは、一様にサンプリングされていない。そこで、プロセッサ12は、30秒間隔で中央値を取得しながら(1/30)Hzでリサンプリングを行う(ステップS218)。リサンプリングの方法は、中央値を取得しながらリサンプリングを行う方法に限らない。例えば、スプライン補間のように、補間を行った後にリサンプリングを行う方法であってもよい。
【0060】
ここで、心拍数は、サーカディアンリズムに応じて変化する。サーカディアンリズムによって、就寝中は心拍数が少なくなり、日中の起床時は心拍数が多くなる。心拍数は、起床時は、サーカディアンリズム以外の多くの外部要因の影響を受けるが、就寝中は、安静にしているため、外部要因の影響は少ない。ただし、心拍数は、ウルトラディアンリズムの一つである睡眠リズムの影響を受けて変化する。ウルトラディアンリズムは、サーカディアンリズムよりも短い周期(数十分から数時間)で変化する。
【0061】
そこで、プロセッサ12は、ステップS218においてリサンプリングされた心拍数時系列データから睡眠リズムを除くため、一般的な人の睡眠リズムの周期として、120分以下の周期の変動を除去する。そこで、プロセッサ12は、FFTを用いて周波数変換し、1/(60×120)Hzを超える周波数の除去を行い、逆FFTによって、心拍数時系列データに戻す(ステップS219)。これにより、睡眠リズムの影響が除去された心拍数時系列データが得られる。
【0062】
なお、スマートウェア20に取り付けられているセンサ装置25が心拍センサ25である場合、生体信号80は、心拍数生データ80となる。この場合、プロセッサ12は、心拍数時系列データを求める処理として、ステップS216以降の処理を行えばよい。
【0063】
図2に戻り、プロセッサ12は、ステップS111において求められた心拍数時系列データに基づき、ユーザの就寝時刻、及び、起床時刻を算出する(ステップS112)。ユーザの就寝時刻は、ユーザが寝るために床に入る時刻である。ユーザの起床時刻は、ユーザが起床する時刻である。ユーザの就寝時刻、及び、起床時刻の算出は、心拍数時系列データに基づき、心拍数の変動によって求める。図2に示す処理フローでは、ステップS111によってユーザの就寝時間帯における心拍数時系列データが求まった後に、就寝時刻、及び、起床時刻を算出しているが、それに限られない。例えば、就寝時刻、及び、起床時刻を算出する別のアプリケーションによって算出してもよいし、ステップS111の中で算出してもよい。
【0064】
プロセッサ12は、ステップS111において求まった心拍数時系列データに基づいて、心拍数が低くなる1又は複数の心拍点が求められる(ステップS113)。ここでは、心拍数時系列データにおいて、少なくとも心拍数が最低となる第1低心拍点(最低心拍点)が求められる。第1低心拍点は、心拍数が最低となる最低点時刻(第1低心拍時刻)と、最低点時刻における心拍数(最低心拍数;第1低心拍数)と、によって示される。
【0065】
複数の心拍点が求められる場合、プロセッサ12は、心拍数時系列データに基づき、心拍数の小さい順に心拍点を抽出する。2番目に小さい心拍数は、第2低心拍数となる。第2低心拍数となる時刻が、第2低心拍時刻となる。心拍数時系列データにおいて、第2低心拍数、及び、第2低心拍時刻が示す点が、第2低心拍点となる。
【0066】
3番目に小さい心拍数が、第3低心拍数となる。第3低心拍数となる時刻が、第3低心拍時刻となる。心拍数時系列データにおいて、第3低心拍数、及び、第3低心拍時刻が示す点が、第3低心拍点となる。
【0067】
複数の心拍点を求めることで、第1低心拍点の信頼性を評価できる。第1低心拍点を含む複数の心拍点が近接している場合には、第1低心拍点は、最低コンディションを示す点として信頼性が高いといえる。一方、第1低心拍点を含む心拍点が分散している場合、眠りが浅く、第1低心拍点は、最低コンディションを示す点としての信頼性が比較的低いといえる。
【0068】
また、複数の心拍点は、ユーザの生体コンディションの評価の一つであるユーザの睡眠の質の評価の一つに用いることができる。例えば、心拍数時系列データにおいて、複数の心拍点が近接している場合には、深い眠りを取得することが出来ていると評価することができる。一方で、心拍数時系列データにおいて、複数の心拍点が分散している場合には、深い眠りを取得する時間が分散しているため、全体として浅い眠りとなっていると評価することができる。
【0069】
このように、就寝期間における複数の心拍点から、ユーザの約24時間の生体のコンディションを分析することができる。就寝期間とは、ユーザの就寝時刻から起床時刻までの期間をいう。
【0070】
なお、ステップS113では、就寝期間における第1心拍点、第2心拍点、及び第3心拍点の計3点を求めたが、第1心拍点のみ、又は第1心拍点と第2心拍点のみを求める方法でもよい。
【0071】
生体コンディション管理装置10は、ユーザの生体コンディションの評価の一つとしてユーザの睡眠の質を、指標に基づいて評価することができる。プロセッサ12は、睡眠の質を評価する指標として、ユーザの就寝時刻と最低点時刻との傾きを求める(ステップS114)。まず、プロセッサ12は、ステップS113までに求めている就寝時心拍数(sleepHR)と最低心拍数(minHR)を用い、差分をsleepHR-minHRとして、求める。差分(sleepHR-minHR)の大きさによって、眠りの深さを評価することができる。例えば、差分(sleepHR-minHR)が小さいと、最低心拍数まで十分に心拍数が落ちていないため、眠りが浅いと評価される。また、差分(sleepHR-minHR)が大きいと、最低心拍数まで十分に心拍数が落ちているため、眠りが深いと評価される。
【0072】
つぎに、プロセッサ12は、ステップS113までに求めている就寝時刻と最低点時刻とを用い、就寝時刻から最低点時刻に到達する時間[h]をdtとして求める。時間(dt)の長さによって、眠つきの良さを評価することができる。例えば、時間(dt)が長いと、最低点時刻に到達するまでに時間を要しているため、眠つきが悪いと評価される。また、時間(dt)が短いと、最低点時刻に到達するまでに時間を要していないため、眠つきが良いと評価される。
【0073】
差分(sleepHR-minHR)と時間(dt)を用いて、就寝時心拍数と最低心拍数を結ぶ線分の傾き(Gradient)を求める。傾き(Gradient)は、Gradient=(sleepHR-minHR)/dtによって求まる。傾き(Gradient)の大きさは、眠りの深さを評価する指標である。例えば、傾き(Gradient)が小さいと、ユーザの眠りは浅いと評価される。すなわち、生体コンディションが良くないと評価される。また、傾き(Gradient)が大きいと、ユーザの眠りは深いと評価される。すなわち、ユーザは生体コンディションが良いと評価される。
【0074】
プロセッサ12は、ステップS114にて求めた傾き(Gradient)に基づき、評価結果をディスプレイ18に出力する(ステップS115)。ディスプレイ18における評価結果の表示画面300を図4に示す。表示画面300は、ユーザの当日情報表示枠301、ユーザデータ表示枠303、最低点情報表示枠304、睡眠評価表示枠306、最高コンディション時刻表示枠308、及び、分析結果表示枠310と、を備える。
【0075】
ユーザの当日情報表示枠301には、ユーザの計測当日の就寝時刻、及び、起床時刻を表示する。図4に示すユーザの当日情報表示枠301からは、ユーザの就寝時刻が23:00、起床時刻が07:00であることがわかる。
【0076】
ユーザデータ表示枠303には、基準心拍数、及び、基準時刻を表示する。基準心拍数は、ユーザの過去の複数の日の最低心拍数の平均、又は、前日の最低心拍数でもよい。さらに、メーカなどが初期値として設定している年齢別などの標準的な最低心拍数が表示されている。基準時刻は、ユーザの過去の複数の日の最低点時刻の平均、又は、前日の最低点時刻でもよい。さらに、ユーザに限らず、メーカなどが設定している年齢別などの予め設定された標準的な最低点時刻が表示されてもよい。予め設定された標準的な最低点時刻は、例えば午前2時から午前4時などといった、時間範囲であってもよい。図4に示すユーザデータ表示枠303では、最低心拍数が56bpm、最低心拍数の時刻は、03:30であることが示されている。
【0077】
最低点情報表示枠304には、昨夜のユーザの第1心拍点である最低心拍数、及び、最低点時刻を表示する。図4に示す最低点情報表示枠304では、最低心拍数58bpm、最低心拍数の時刻は、03:40であることが示されている。
【0078】
睡眠評価表示枠306には、ステップS114にて求めた傾き(Gradient)の大きさに基づき、A、B、又は、Cで評価した結果が表示される。例えば、傾き(Gradient)の大きさがx時間以内であれば評価A、差分がx~y時間の範囲内であれば評価B、差分がy時間以上であれば評価Cとなるように評価が判定される。図4に示す睡眠評価表示枠306では、睡眠の評価はAであることが示されている。
【0079】
最高コンディション時刻表示枠308には、最低点時刻から最高点時刻を求めるステップS124の結果を表示する。最高コンディション時刻表示枠308は、ユーザがユーザの所望の最高コンディション時刻を入力するための画面へ遷移する、時刻調整ボタン308Aを備える。
【0080】
分析結果表示枠310は、ステップS114の処理結果に基づいて、処理結果に応じたコメントを表示する。図4に示す分析結果表示枠310からは、処理結果より質の良い睡眠が得られていることから、「質の良い睡眠が得られています。この調子で、質の良い睡眠を維持しましょう。」と表示する。ユーザが質の良い睡眠とは、ユーザが深い睡眠を確保できていることをいう。これにより、ユーザの睡眠の質からユーザのコンディションの評価を行うことができる。
【0081】
生体コンディション管理装置10は、ユーザの生体コンディションの評価の一つとして、ユーザのコンディションに応じて推奨される就寝時刻を、提案することができる。例えば、ユーザの時差ぼけの度合いを評価し、ユーザのコンディションに合わせて就寝時刻を提案することができる。
【0082】
まず、プロセッサ12は、心拍数が最小となる最低点時刻と基準時刻(第1基準時刻15)を比較し、差分を求める(ステップS116)。
【0083】
ステップS116における基準時刻は、例えば、ユーザの過去の複数の日の最低点時刻の平均とする。これにより、ユーザの生活リズムに応じたユーザに適した基準時刻を算出することができる。ユーザの基準時刻である最低心拍数の時刻は、図5のユーザデータ表示枠303に示すように、03:30とする。昨夜の最低心拍数の時刻は、図5の最低点情報表示枠304に示すように、05:40である。したがって、ステップS116によって算出された差分は、05:40-03:30、すなわち、02:10となる。これにより、ユーザは基準時刻よりも02:10遅く、最低心拍数の時刻を迎えたことがわかる。
【0084】
プロセッサ12は、ステップS116によって求めた差分である02:10に基づいて、理想の就寝時刻を求める(ステップS117)。プロセッサ12は、ユーザの計測当日の就寝時刻01:00と差分である02:10に基づき、理想の就寝時刻を求める。すなわち、就寝時刻である01:00から差分の02:10ほど早く就寝すれば、ユーザに適した最低心拍数の時刻を迎えることができる。したがって、プロセッサ12は、ユーザにとって推奨される就寝時刻として、01:00の02:10ほど前である22:50を算出する。
【0085】
プロセッサ12は、ステップS116にて求めた理想の就寝時刻に基づき、評価結果をディスプレイ18に出力する(ステップS118)。ディスプレイ18における評価結果の表示画面320を図5に示す。表示画面320は、ユーザの当日情報表示枠321、ユーザデータ表示枠303、最低点情報表示枠324、睡眠評価表示枠326、最高コンディション時刻表示枠308、推奨就寝時刻表示枠329、及び、分析結果表示枠330と、を備える。同じ符号の箇所には、図4と同じ情報が表示されるため説明を省略する。
【0086】
ユーザの当日情報表示枠321には、ユーザの計測当日の就寝時刻、及び、起床時刻が表示される。図5に示すユーザの当日情報表示枠321は、ユーザの就寝時刻が01:00、起床時刻が09:00であることを示している。
【0087】
最低点情報表示枠324には、昨夜のユーザの第1心拍点である最低心拍数、及び、最低点時刻が表示される。図5に示す最低点情報表示枠324は、最低心拍数65bpm、最低心拍数の時刻は、05:40であることを示している。
【0088】
睡眠評価表示枠326には、最低点時刻と基準時刻の差分の大きさに基づき、A、B、又は、Cで評価した結果が表示される。例えば、差分の大きさがx時間以内であれば評価A、差分がx~y時間の範囲内であれば評価B、差分がy時間以上であれば評価Cとなるように判定される。したがって、差分の大きさが大きければ大きいほど、時差ぼけの度合いが大きいことがわかる。図5に示す睡眠評価表示枠326における差分睡眠の評価はCであるため、時差ぼけの度合いが大きいことがわかる。したがって、ユーザは、時差ぼけの影響を受け、質の悪い睡眠になっていることを把握できる。
【0089】
推奨就寝時刻表示枠329には、ユーザのコンディションに基づき、推奨される就寝時刻を求めるステップS117の結果が表示される。図5に示す推奨就寝時刻表示枠329には、「おすすめ就寝時刻: 22:50」と表示される。
【0090】
分析結果表示枠330には、ステップS117の処理結果に基づいて、処理結果に応じたコメントが表示される。ステップS117の処理結果によれば、質の悪い睡眠であると判定されるため、図5に示す分析結果表示枠310には、例えば、「質の悪い睡眠になっています。就寝時刻を調整し、睡眠の質を改善しましょう。」と表示される。これにより、ユーザは、ユーザのコンディションに時差ぼけが影響を及ぼしていることを把握できる。さらに、ユーザは、ユーザの推奨就寝時刻を知ることができる。
【0091】
生体コンディション管理装置10は、ユーザの心拍数の変化に基づいて、ユーザの生体コンディションの評価を行うことができる。例えば、ユーザがスポーツ選手であった場合、生体コンディション管理装置10を高地トレーニングへの順応の度合いの評価に用いることができる。
【0092】
さて、高地トレーニングのように高地に一定期間滞在すると、滞在当初は心拍数が高くなる。しかし、日数が経過するにつれ、徐々に心拍数が戻る。この変化を利用し、高地トレーニングへの順応の度合いの評価を行う。すなわち、ユーザの最低心拍数が基準心拍数17に近似となったとき、高地への順応ができていると評価される。
【0093】
上記のような評価を行うため、図2に示すように、プロセッサ12は、心拍数が最小となる最低心拍数と基準心拍数を比較し、差分を求める(ステップS121)。
【0094】
ステップS121における基準心拍数は、例えば、ユーザの過去の複数の日の最低心拍数の平均とする。これにより、ユーザの生活リズムに応じたユーザに適した基準心拍数を算出することができる。ユーザの最低心拍数は、一例として、図6のユーザデータ表示枠303に示すように、56bpmとする。昨夜の最低心拍数は、図6の最低点情報表示枠344に示すように、75bpmである。したがって、ステップS121によって算出された差分は、75bpm-56bpm、すなわち、19bpmとなる。これにより、ユーザは基準時刻よりも心拍数が19bpm高いことがわかる。したがって、高地へ順応できたていないと評価される。
【0095】
プロセッサ12は、ステップS121にて求めた理想の就寝時刻に基づき、評価結果をディスプレイ18に出力する(ステップS122)。ディスプレイ18における評価結果の表示画面340を図6に示す。表示画面340は、ユーザの当日情報表示枠301、ユーザデータ表示枠303、最低点情報表示枠344、睡眠評価表示枠346、最高コンディション時刻表示枠308、及び、分析結果表示枠350と、を備える。同じ符号の箇所には、図4と同じ情報が表示されるため説明を省略する。
【0096】
最低点情報表示枠344には、昨夜のユーザの第1心拍点である最低心拍数、及び、最低点時刻を表示する。図6に示す最低点情報表示枠344は、最低心拍数75bpm、最低心拍数の時刻は、04:00であることを示している。
【0097】
睡眠評価表示枠346には、ステップS121にて求めた心拍数が最小となる最低心拍数と基準心拍数の差分の大きさに基づき、A、B、又は、Cで評価した結果が表示される。例えば、差分の大きさがp[bpm]時間以内であれば評価A、差分p~q[bpm]の範囲内であれば評価B、差分がq[bpm]以上であれば評価Cとなるように判定される。したがって、差分が大きいほど、高地へ順応できていないことを示す。図6に示す睡眠評価表示枠346における差分睡眠の評価は3段評価のBであるため、高地への順応は認められていないが、あと少しで順応が認められる段階にいることがわかる。したがって、ユーザは、ユーザのコンディションに高地という環境が及ぼす影響の度合いを把握することができる。
【0098】
分析結果表示枠350は、ステップS121の処理結果に基づいて、処理結果に応じたコメントを表示する。最低心拍数と基準心拍数の差分が大きい場合、図6に示す分析結果表示枠350には、例えば、「最低心拍数がやや高い傾向が見られます。」と表示される。これにより、ユーザは、ユーザのコンディションに高地という環境が影響を及ぼしていることを把握することができる。
【0099】
生体コンディション管理装置10は、ユーザの生体コンディションの評価の一つとして、ユーザの最高コンディションを求めることができる。例えば、ユーザがスポーツ選手であった場合、ユーザは1日のうちで最も高いパフォーマンスを発揮できる時間を把握することができる。
【0100】
まず、プロセッサ12は、最低点時刻から最高点時刻を求める(ステップS124)。1周期約24時間であるサーカディアンリズムに基づくと、最低心拍数の時刻の12時間後が、最も高いパフォーマンスを発揮する時刻、すなわち最高コンディション時刻となる。したがって、図4に示すユーザの最高コンディション時刻は、ユーザの最低心拍数の時刻03:40に12:00を加算した時刻である、15:40となる。
【0101】
プロセッサ12は、ステップS124にて求めた最高コンディション時刻を、評価結果をディスプレイ18に出力する(ステップS125)。ディスプレイ18における評価結果の表示画面300を図4に示す。表示画面360は、ユーザの当日情報表示枠301、ユーザデータ表示枠303、最低点情報表示枠304、睡眠評価表示枠306、最高コンディション時刻表示枠308、及び、分析結果表示枠310と、を備える。
【0102】
最高コンディション時刻表示枠308には、ステップS124によって求めた最高コンディション時刻 15:40が表示される。
【0103】
図7は、実施形態に係るコンディション調整処理150の手順を示している。コンディション調整処理150は、処理ユニット11のプロセッサ12によって実行される。実施形態に係る処理ユニット11におけるコンディション調整処理150は、コンディション評価処理110によって算出された最高点時刻と、第2基準時刻と、の差に基づいて、生体に推奨される入眠時刻(就寝時刻)を算出する。ここで、入眠時刻(就寝時刻)は、ユーザが眠りにつく時刻である。ここでは、第2基準時刻は、一例として、ユーザが所望する最高コンディション時刻とする。また、コンディション調整処理150は、コンディション評価処理110によって算出された最高点時刻と、第2基準時刻でとの差に基づいて、生体に推奨される起床時間を算出してもよい。
【0104】
入眠時刻(就寝時刻)の算出のため、プロセッサ12は、コンディション評価処理110によって算出された最高点時刻を取得する(ステップS151)。図7に示す最高点時刻は、前日の最低点時刻に基づいて算出した15:40である。
【0105】
また、プロセッサ12は、ユーザが所望する最高コンディション時刻を取得する(ステップS152)。プロセッサ12は、最高コンディション時刻を、ユーザの入力操作に基づいて取得する。最高コンディション時刻は、例えば、日時データによって構成される。最高コンディション時刻は、例えば、ユーザが所望する日と、ユーザが所望する日においてユーザが最高コンディションを迎えたい時刻と、によって構成される。ユーザが所望する日は、例えば、スポーツ選手であるユーザが参加する試合日である。ユーザが所望する日においてユーザが最高コンディションを迎えたい時刻は、例えば、試合時刻である。
【0106】
図8の表示画面380は、図4に示す分析結果表示画面300の最高コンディション時刻表示枠308の時刻調整ボタン308Aを押下した際に、表示される表示画面380である。表示画面380は、ユーザの当日情報表示枠301、ユーザデータ表示枠303、最低点情報表示枠304、睡眠評価表示枠306、最高コンディション時刻表示枠308、及び、最高コンディション時刻設定枠381と、を備える。同じ符号の箇所には、図4と同じ情報が表示されるため説明を省略する。
【0107】
最高コンディション時刻設定枠381は、ユーザが、ユーザの所望する日及び時刻を入力可能に構成されている。最高コンディション時刻設定枠381は、ユーザがユーザの所望する日時を入力した後に押下するための設定ボタン381Aを、備える。ユーザが設定ボタン381Aを押下することにより、プロセッサ12は、ステップS152以降の処理を行う。
【0108】
プロセッサ12は、コンディション評価処理110によって算出された最高点時刻とユーザが入力した第2基準時刻を比較し、差分を求める(ステップS153)。
【0109】
例えば、最高点時刻が、図8に示すように、15:40であり、第2基準時刻が13:40である場合、最高点時刻と第2基準時刻との差分は、2時間であることがわかる。したがって、現在の日付である5月13日からユーザが所望する5月15日までの2日間で、計2時間ほど、ユーザは、入眠時刻を早めることで、最高点時刻を、ユーザが所望する最高コンディション時刻に合わせることができる。
【0110】
プロセッサ12は、ステップS153において求めた差分に基づいて、ユーザに推奨される入眠時刻を求める(ステップS154)。推奨される入眠時刻は、例えば、ステップS253で求められた差分と、昨日の入眠時刻と、から求められる。例えば、ステップS243で求められた差分が2時間であり、昨晩の入眠時刻が23:00である場合、推奨される入眠時刻は、23:00を2時間早めた、21:00として求められる。
【0111】
推奨される入眠時刻は、さらに、現在の日付からユーザが所望する日付までの日数に基づいて求められてもよい。より具体的には、ステップS153において求められた差分が2時間であり、現在の日付からユーザが所望する日付までの日数が2日である場合、2日かけて入眠時間を2時間早めればよい。そこで、プロセッサ12は、1日あたり何時間入眠をずらせばよいかを求める。ここでは、2時間を2日で割ることで、1日あたり1時間入眠を早めればよいことが求まる。したがって、昨日である2020/5/12の入眠時刻が23:00であるから、2020/5/13の推奨入眠時間は1時間早い22:00であり、2020/5/14の推奨入眠時間はさらに1時間早い21:00であることが求まる。
【0112】
プロセッサ12は、ステップS154にて求めた推奨入眠時刻(推奨就寝時刻)をディスプレイ18に出力する(ステップS155)。図9は、推奨入眠時刻(推奨就寝時刻)を含む表示画面390を示す。表示画面390は、ユーザの当日情報表示枠301、ユーザデータ表示枠303、最低点情報表示枠304、睡眠評価表示枠306、及び最高コンディション時刻表示枠308のほか、推奨入眠時刻(推奨就寝時刻)表示枠329、を備える。同じ符号の箇所には、図4と同じ情報が表示されるため説明を省略する。
【0113】
推奨入眠時刻(推奨就寝時刻)表示枠329には、ユーザが入力した第2基準時刻に基づき、推奨される入眠時刻(就寝時刻)を求めるステップS154の結果が表示される。図9に示す推奨入眠時刻(推奨就寝時刻)表示枠329には、「おすすめ入眠時刻: 21:00」と表示されている。ステップS154において、推奨される就寝時刻を求める場合は、図9に示す推奨入眠(就寝)時刻表示枠329には、「おすすめ就寝時刻: 21:00」と表示される。
【0114】
分析結果表示枠310は、ステップS154の処理結果に基づいて、処理結果に応じたコメントを表示する。図9に示す分析結果表示枠310には、「5/15のコンディション時刻に向けて、計画的に日々の入眠時刻を調整しましょう。5/13は、入眠時刻22:00をおすすめします。5/14は、入眠時刻21:00をおすすめします。」と表示される。このように、ステップS154に基づき、本日2020/5/13よりユーザが所望する日時の前日2020/5/14の計2日間で、入眠時刻を徐々に調節することを提案する表示を行うことができる。これにより、ユーザの生体のコンディションを保ちながら、ユーザの入眠時刻を調整することができる。
【0115】
<3.検証>
【0116】
<3.1 第1検証>
【0117】
図10及び図11は、第1検証の結果を示している。第1検証では、実施形態に係る生体コンディション管理装置10によって第1低心拍点53を求めた。図10において、黒色の実線51は、図3に示すステップS217の外れ値除去後の心拍数の時系列データ、すなわち、心拍数生データ51を示し、灰色の点線52は、図3に示すステップS219を施した後の心拍数時系列データ52を示す。灰色の点53は、図2に示すステップS113によって算出された最低心拍数53(第1低心拍点)を示す。なお、図10において、横軸は時刻、縦軸は心拍数を示す。
【0118】
図11は、図3に示す処理S111によって得られた心拍数時系列データと深部体温時系列データとを示す。図11において、実線56は、深部体温の時系列データ56を示す。図11においては、深部体温の最低点56Aも示されている。図11において、点線57は、心拍数時系列データ57を示す。図11においては、最低心拍数57Aも示されている。図11に示すように、実施形態に係る生体コンディション管理装置10によって求められた最低心拍数57Aは、深部体温の最低点56Aに良く近似している。したがって、実施形態に係る生体コンディション管理装置10によって求められた最低心拍数57Aは妥当であることが確認された。
【0119】
<3.1 第2検証>
【0120】
図12から図14は、第2検証の結果を示している。第2検証では、特許文献1に記載されている方法でサーカディアンリズムを求めた。
【0121】
第2検証では、スマートウェア20に装着されている心拍センサ25によって、被験者の心拍数を24時間計測した。図12は、心拍センサ25によって取得された心拍数が時系列に並んだ生データ60を示している。特許文献1の手法に則り、図12の心拍数が時系列に並んだ生データ60に移動平均処理を施し、FFT変換を行うことで高周波成分がカットされた心拍数時系列データを抽出した。その心拍数時系列データを逆FFT変換し、正規化処理することで、図13に示す心拍数時系列データ63を求めた。心拍数時系列データ63に基づいて、心拍数の最大値、及び最小値を求め、平均値64を算出した。特許文献1の手法では、心拍数時系列データ63の曲線と平均値64が交差するクロスポイント65の2個になるまで処理が繰り返される。
【0122】
図13に示すように、特許文献1の手法で求めた心拍数時系列データ63は、サーカディアンリズムを示す変動曲線としては、非常に乱れている。
【0123】
図14に、特許文献1の手法で求めた心拍数時系列データ63(比較データ)と、図3に示す手順で求めた就寝期間中の心拍数時系列データ52と、を示す。なお、心拍数時系列データ52は、就寝期間中の心拍数生データ51から求めたものである。
【0124】
図14では、特許文献1の手法で求めた心拍数時系列データ63における最低心拍数63A及び、図3に示す手順で求めた就寝期間中の心拍数時系列データ52の最低心拍数52Aも示されている。最低心拍数63Aの時刻(最低心拍時刻)は4:13であり、最低心拍数52Aの時刻(最低心拍時刻)は7:53であった。このように、最低心拍数63Aの時刻と最低心拍数52Aの時刻との間には、約4時間もの差がある。
【0125】
第2検証における被験者の深部体温が最低点をとる時刻を数日にわたって調べたところ、6:30前後であった。したがって、図3に示す手順で求めた就寝期間中の心拍数時系列データ52の最低心拍数52Aの時刻のほうが、特許文献1の手法で求めた心拍数時系列データ63における最低心拍数63Aの時刻よりも適切であることが確認された。
【0126】
<3.3 第3検証>
【0127】
図15は、第3検証の結果を示している。第3検証では、実施形態に係る方法で求めた最低心拍数(第1低心拍数)が、スポーツ選手であるユーザの高地トレーニングへの順応度合いの指標になり得るかの検証を行った。図15には、第3検証の結果として、平地と高地における、ユーザ1の最低心拍数の変化70A、ユーザ2の最低心拍数の変化70B、ユーザ3の最低心拍数の変化70Cが示されている。図15の横軸は、日を示す。横軸における「Flat Day」は、ユーザが平地に滞在している日を示し、「High Day」は、ユーザが高地に滞在している日を示す。図15の縦軸は、最低心拍数を示す。
【0128】
図15に示すように、ユーザが平地から高地へ移動すると、各ユーザの最低心拍数が大きく変動していることがわかる。なお、ユーザが高地の環境に順応すると最低心拍数は下がった。したがって、最低心拍数は、ユーザが高地の環境に順応できているかの分析(生体コンディションの分析)をするための指標として有効であることがわかる。
【0129】
<3.4 第4検証>
【0130】
図16は、第4検証の結果を示している。第4検証では、実施形態に係る方法で求めた最低心拍時刻(第1低心拍時刻)が、時差ぼけの度合いの評価のための指標になり得るかの検証を行った。図16は、ユーザ1が、7月19日から8月3日までの間に、日本、ベルリン、再び日本に滞在した場合における、ユーザ1の最低心拍時刻の変化72Aと、ユーザ2の最低心拍時刻の変化72Bと、を示している。図16において、横軸は、最低心拍点が求められた睡眠から起床した日を示し、縦軸は、最低心拍時刻を示している。ユーザ1及びユーザ2にとっての適切な最低心拍時刻は5:00頃であるが、図16によると、各ユーザが日本からベルリンへ移動、及びベルリンから日本へ移動すると、最低心拍時刻が、時差ぼけのため、5:00からの誤差が大きくなっている。また、図16によると、時差ぼけが解消すると、最低心拍時刻は5:00付近に戻っている。
【0131】
したがって、最低心拍時刻は、時差ぼけの度合いを示す指標として有効であることがわかる。
【0132】
<4.付記>
【0133】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【符号の説明】
【0134】
1 :生体コンディション管理システム
10 :生体コンディション管理装置
11 :処理ユニット
12 :プロセッサ
13 :メモリ
13A :コンピュータプログラム
15 :第1基準時刻
17 :第1基準心拍数
18 :ディスプレイ
20 :スマートウェア
25 :センサ装置
25A :通信装置
30 :無線ネットワーク
51 :心拍数生データ
52 :心拍数時系列データ
52A :最低心拍数
53 :第1低心拍点(最低心拍点)
56 :深部体温時系列データ
56A :最低点
57 :心拍数時系列データ
57A :最低心拍数
60 :生データ
63 :心拍数時系列データ
63A :最低心拍数
64 :平均値
65 :クロスポイント
70A :変化
70B :変化
70C :変化
72A :変化
72B :変化
80 :心拍数生データ
80 :生体信号
100 :生体コンディション分析処理
110 :コンディション評価処理
150 :コンディション調整処理
300 :分析結果表示画面
301 :当日情報表示枠
303 :ユーザデータ表示枠
304 :最低点情報表示枠
306 :睡眠評価表示枠
308 :最高コンディション時刻表示枠
308A :時刻調整ボタン
310 :分析結果表示枠
320 :表示画面
321 :当日情報表示枠
324 :最低点情報表示枠
326 :睡眠評価表示枠
329 :推奨入眠時刻(推奨就寝時刻)表示枠
330 :分析結果表示枠
340 :表示画面
344 :最低点情報表示枠
346 :睡眠評価表示枠
350 :分析結果表示枠
360 :表示画面
380 :表示画面
381 :最高コンディション時刻設定枠
381A :設定ボタン
390 :表示画面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16