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特開2022-25716既存のダクトを利用した換気ユニット若しくはシステム及び換気方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022025716
(43)【公開日】2022-02-10
(54)【発明の名称】既存のダクトを利用した換気ユニット若しくはシステム及び換気方法
(51)【国際特許分類】
   F24F 7/007 20060101AFI20220203BHJP
   F24F 7/06 20060101ALI20220203BHJP
   F24F 11/74 20180101ALI20220203BHJP
   F24F 11/61 20180101ALI20220203BHJP
   F24F 11/80 20180101ALI20220203BHJP
   F24F 11/63 20180101ALI20220203BHJP
   F24F 110/10 20180101ALN20220203BHJP
   F24F 110/12 20180101ALN20220203BHJP
   F24F 140/00 20180101ALN20220203BHJP
【FI】
F24F7/007 B
F24F7/06 B
F24F11/74
F24F11/61
F24F11/80
F24F11/63
F24F110:10
F24F110:12
F24F140:00
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020128729
(22)【出願日】2020-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】593012310
【氏名又は名称】菱熱工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111707
【弁理士】
【氏名又は名称】相川 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】中野 智正
【テーマコード(参考)】
3L056
3L058
3L260
【Fターム(参考)】
3L056BC04
3L056BD02
3L056BD04
3L056BE04
3L056BE06
3L058BA02
3L058BC08
3L260AB15
3L260BA12
3L260BA41
3L260BA45
3L260BA50
3L260CA12
3L260CA15
3L260CA32
3L260CB51
3L260EA07
3L260EA11
3L260FA07
3L260FA13
3L260FC01
3L260HA06
(57)【要約】      (修正有)
【課題】新たな換気装置又はシステムとして、対象となる店舗等に改造工事をすることなく、従来の換気扇システムからアップグレード可能なユニット又はシステム並びに換気方法を提供する。
【解決手段】既存の換気扇システムのダクト等を利用して、双方向の送風ファン12及びその制御装置、並びに、熱交換エレメント14を追加することにより、既存の冷暖房による効能を利用する。既存システムの少なくとも一部を利用するので、安価に、簡便に、省エネを達成可能でとなり、換気扇システムの省エネ換気システムへのアップグレードができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋外側の外気開口部と、該外気開口部と連通する少なくとも1つのダクトと、該ダクト内に気流を生ぜしめるための装置のための機器スペースと、該ダクト内の気流を通じる室内側の開口部と、を既に備える施設に設置するための換気ユニットであって、
排気及び給気のために駆動可能な送風ファンと、
熱交換エレメントと、
送風ファン及び熱交換エレメントを収納可能なエンクロージャーと、該エンクロージャーを前記ダクトに接続可能な接続ダクトと、
前記送風ファンを給排気運転可能な制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記送風ファンが排気及び給気の期間からなるサイクルを繰り返す1サイクルにおいて排気期間中の総排気量に対して給気期間中の総給気量を70%以下となるように制御することを特徴とする換気ユニット。
【請求項2】
請求項1の換気ユニットにおいて、前記排気期間及び前記給気期間が、実質的に同じであることを特徴とする換気ユニット。
【請求項3】
請求項1又は2の換気ユニットにおいて、前記排気期間及び前記給気期間の少なくとも1つが、約1分間であることを特徴とする換気ユニット。
【請求項4】
前記給気期間の最終時点において、給気され室内に吹き込まれる空気の温度が、外気温度及び室内温度の温度差の90%以下の温度だけ室内温度から離れているように制御することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の換気ユニット。
【請求項5】
前記熱交換エレメントは、260J/Kから13kJ/Kの熱容量を備えることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の換気ユニット。
【請求項6】
前記熱交換エレメントは、紙製であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の換気ユニット。
【請求項7】
前記施設について、もう1つの、屋外側の外気開口部と、該外気開口部と連通する少なくとも1つのダクトと、該ダクト内に気流を生ぜしめるための装置のための機器スペースと、該ダクト内の気流を通じる室内側の開口部と、を既に備え、
それぞれもう1つの、排気及び給気のために駆動可能な送風ファンと、
熱交換エレメントと、
送風ファン及び熱交換エレメントを収納可能なエンクロージャーと、該エンクロージャーを前記ダクトに接続可能な接続ダクトと、
前記送風ファンを給排気運転可能な制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記送風ファンが排気及び給気の期間からなるサイクルを繰り返す1サイクルにおいて排気期間中の総排気量に対して給気期間中の総給気量を70%以下となるように制御することを特徴とするもう1つの換気ユニットを、更に備え、
前記もう1つの換気ユニットは給排気を違えて同期して制御することにより前記室内の気圧変化を小さくする、請求項1から6のいずれかに記載の換気ユニット。
【請求項8】
屋外側の外気開口部と、該外気開口部と連通する1つのダクトと、該ダクト内に気流を生ぜしめるための装置のための機器スペースと、該ダクト内の気流を通じる室内側開口部と、を既に備える施設を利用して行う省エネ型換気方法であって、
前記機器スペースに送風ファンを備えるステップと、
前記送風ファンからの気流が通過可能に熱交換エレメントを備えるステップと、
送風ファン及び熱交換エレメントを収納するエンクロージャーと前記ダクトを接続する接続ダクトを備えるステップと、
前記送風ファンを給排気のサイクル運転可能に制御装置をセットするステップと、及び、前記制御装置が、排気及び給気の期間からなるサイクルを繰り返すが、1サイクルにおいて排気期間中の総排気量に対して給気期間中の総給気量を70%以下となるように送風するようにプログラムするステップと、を備える換気装置の設置方法。
【請求項9】
屋外側の外気開口部と、該外気開口部と連通する1つのダクトと、該ダクト内に気流を生ぜしめるための装置のための機器スペースと、該ダクト内の気流を通じる室内側の開口部と、を既に備える施設に設置するための換気ユニットであって、
排気及び給気のために駆動可能な送風ファンと、
熱交換エレメントと、
送風ファン及び熱交換エレメントを収納可能なエンクロージャーと、
該エンクロージャーを前記ダクトに接続可能な接続ダクトと、を備える換気ユニットを用いて、
前記送風ファンが排気及び給気の期間からなる1サイクルにおいて排気期間中の総排気量に対して給気期間中の総給気量を70%以下となるように送風するように該1サイクルを複数回繰り返す換気方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既存のダクトを利用する換気ユニット若しくはシステム及び換気方法に関し、特に、外気との温度差を緩和できる省エネ型の換気ユニット若しくはシステム及び換気方法に関する。
【0002】
店舗等の空調に用いられる中大型の空気調和機による冷暖房以外に、換気が必要であり、新鮮な外気を導入するために換気ファンが設置されている。この換気ファンとしては、空気調和機の室内機内に換気ファンが組み込まれて一体化されているものと、換気ファンが空気調和機とは別に独立して設置されているものとがある。前者の例として、特許文献1に示されるように、外気温と室温とを検出し、低温の外気または高温の外気を導入することにより、外気冷房または外気暖房が行えるようにしたものが知られている。
【0003】
後者の例として、特許文献2のような、室内機とは別に換気ファンを備えて、外気温度との温度関係に基づいて、オンオフする空気調和機が開示されている。また、冷暖房機能を備える空調システムを備えた上で、別途設置、利用されるいわゆる換気扇等があげられる。特に、飲食店等では、調理により発生する蒸気、煙、臭い等を排出することが望まれる。一方、冬季においては、排気中にはこのような室外に排出すべき物がある一方、室温を維持するのに有益な熱エネルギーもある。また、夏季においては、室温を冷えたままにするのに有益ないわゆる負の熱エネルギーもある。
【0004】
近年、排気と給気が別経路で屋外へ排出及び屋外から給気されるが、排気及び給気の熱を交換するユニットを備える換気システムも市販されている。この場合、排気用及び給気用の経路(ダクト等)の少なくとも2つの経路が必要とされる。一方、建物の外壁に設置される換気ユニットを備え、当該換気ユニットは、建物の内部側に配置される換気ファンと、建物の外部側に配置される蓄熱エレメントと、当該蓄熱エレメントよりも建物の内部側に配置され建物の外部の環境状況を検出するセンサと、を有して構成されており、前記換気ファンの動作を制御すると共に、前記センサにて検出した検出値から建物の外部の環境状況を特定する制御装置を備え、前記制御装置は、前記換気ファンにて建物の外部から内部に給気しはじめてから所定時間が経過した後に前記センサにて検出した検出値を、建物の外部の環境状況として特定する、換気システムが開示されている(特許文献3)。この換気システムでは、給気に切り替わってから所定時間を経過すると蓄熱エレメント内の熱がなくなり、検出温度を屋外の温度として特定する。これにより、室内へと吸引される空気は屋外の温度となるため、室内の温度を維持するためにはヒーター等の使用が必須となる。また、蓄熱エレメント内の熱は周囲空気との温度差が小さくなると減り難くなるので、所定時間が長くなりがちである。そのため、益々ヒーター等による加熱が必要となる。蓄熱エレメント等へのヒーターの取り付けは、コストが嵩むだけでなく、ヒーターが与える熱による高温に耐えうる蓄熱エレメント等が材質及び/又は構造を有することが必要となる。
【0005】
このような換気システムでは、排気よりも給気が重要視されており、従来の換気扇等のような換気システムとは本質的に機能が共通しない。そのため、このような換気システムが既に設けられていたとしても、室内側の開口部やダクト等を再利用することが難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6-185785号公報
【特許文献2】特開2012-98009号公報
【特許文献3】特開2016-145673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
排気と給気が別経路であり、排気及び給気の熱を交換するユニットを備える換気システムでは、複数の経路が必要なためより大きな場所を必要とする。そのため、既存の換気扇等の換気システムの有効利用が難しく、対象となる店舗等に大規模な改造工事が必要である。建物の内部側に配置され建物の外部の環境状況を検出するセンサを備える換気システムでは、既存の換気扇等の換気システムの部分的利用も困難である。また、換気システムにおいて、どの程度の熱の回収や、どの程度の温度変化が生じるかの目安も必ずしも明らかではない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、既存の換気扇等の換気システムの少なくとも一部を利用して、熱利用が可能な換気システムにグレードアップできる、換気ユニット若しくはシステム及びその方法を提供する。また、かかる換気ユニット若しくはシステム及びその方法の効果予想方法や手段を提供することができる。
【0009】
図6に、一例として、既に設置されている換気設備を模式的に示す。換気扇システム300は、屋外302から屋内を隔てる外壁304に設置されるもので、外壁304の屋外側に突き出る外部フード306内に開口部を有するフレキシブルダクト308が室内へと延びてゆき、天井扇本体310に接続される。天井扇本体310の排気ファンモータを駆動する電力を提供する電源線312が、電源及びスイッチへと延びてゆく。天井扇本体310を備える天井面314には、制気口316が設けられており、排気ファンを駆動すると、ここから室内の空気を排気することができる。これは、典型的な天井扇による換気扇システムであるが、上述のように、排気のみを行うことができる。一方、天井面314の上に延びるフレキシブルダクト308の新設は、大掛かりな設備工事を必要とすることもあり、このような既存のダクトが使用できれば、新しいシステムを設置する費用を抑えることができる。このようなフレキシブルダクト308としては、直径100mmから300mmが多く使われている。
【0010】
かかる換気扇システムにおいては、手動又は自動で、電源線312に電力を供給し、天井扇本体310内の換気扇ファンを駆動する。これにより、制気口316より室内の空気が排気され、フレキシブルダクト308を通って、外部フード306内の開口から屋外に排出される。これにより、室内の排気すべき空気が屋外に排出される。通常このような換気扇システムは、必要な時に駆動され、必要がなければシステムを停止する。連続稼働であると、室内の空気がどんどん排気されることになり、排気により室内にある熱がどんどん失われていくので、換気及び熱消費が必要以上に大きくなる。また、停止している期間は、室内にある熱消費は妨げられるが、換気は行われない。従って、適度な換気及び熱の保存の両立が求められる。
【0011】
そのため、換気に寄与し得る、排気及び屋外から空気の給気を行うと共に、蓄熱装置(例えば、熱交換エレメント)を給排気の通路に設けることにより、適度な換気及び熱の保存を行うことができる。このとき、既存の制気口316及び外部フード306内に開口部を有するフレキシブルダクト308の少なくとも一部を利用することができる。このようにすると、屋外に面する外壁304や天井面314等のような通常見ることができる部分の化粧直しのような体裁を整える必要がない。上述する換気扇システムでは換気は主に排気で行われるが、送風方向を逆転可能な換気ファンを備えることにより、屋外から空気を給気することによっても換気は可能である。仮に、この換気ファンが屋外から給気した空気を室内側に設けられた制気口316から室内に向けて吹き込むとする。一般に換気ファンから押し出された空気は比較的狭い通路内を一方向に向かって進むため慣性力が付きやすく、吹き込む空気により、制気口316近くでは思わぬ風力(動圧)を感じ、そこにあるものを吹き飛ばす恐れもある。特に、既存の換気扇システムでは、このような空気の給気を想定していないため、既存の制気口316を使用する場合は、思わぬ風力効果の影響を受ける場合もある。そのため、上述する換気扇システムの制気口316やダクト308等を利用する場合は、それらを設置したときの前提条件を加味することが好ましい。例えば、換気扇システムでの排気量の想定が、最大V(換気扇)m/hであった場合、それよりも少ない最大吹き込み量(室内から見れば吹き出し量又は給気量)であることが好ましい。例えば、最大V(換気扇)m/hの90%以下が好ましい。最大V(換気扇)m/hの80%以下が好ましい。最大V(換気扇)m/hの70%以下が好ましい。最大V(換気扇)m/hの60%以下が好ましい。最大V(換気扇)m/hの50%以下が好ましい。最大V(換気扇)m/hの40%以下が好ましい。最大V(換気扇)m/hの30%以下が好ましい。最大V(換気扇)m/hの20%以下が好ましい。最大V(換気扇)m/hの10%以下が好ましい。一方、換気効率が十分である吹き込み量(室内から見れば吹き出し量又は給気量)であることが好ましく、例えば、元々想定される排気量において、最大V(換気扇)m/hの1%以上が好ましい。
【0012】
また、既存の換気扇システムでの排気量の想定は、室内の不必要な風力を生じさせないようにするものであるが、制気口316は、室内側で大きく開口するので排気される空気の流れによる風力による影響は比較的小さい。即ち、上述するように、最大吹き込み量(室内から見れば吹き出し量又は給気量)に比べて最大排気量が大きくても問題がない場合が多い。一方、蓄熱装置内の空気の通路は、排気及び給気とも共通するので、蓄熱される熱量及び蓄熱された熱の放出熱量は、何れも通過する空気量が大きいほど、大きくなる。従って、排気時間及び給気時間が同じ又は同等と言えるのであれば、排気においてより多くの熱量を蓄熱装置に蓄えることができ、その多くの熱量を給気される空気に与えることができる。つまり、排気量と給気量の比に応じて、室内温度をより反映した空気を室内に吹き込むことが可能となる。また、室内への所望の吹き込み温度を得るために、排気量と給気量の比を調節することもできる。
【0013】
このように、本発明の実施例の換気ユニットは、既存の換気扇システム、空調システム、及びその他の換気システム等(以下、「換気システム等」)について、その一部を利用して、店舗等に設置可能に取り付けられる。このとき、既存の換気扇システム等のダクトと、外気の取り入れ口及び/又は排気口のような外気側の開口(フード等を含んでよい)と、室内側のスペースと、電源やスイッチ等の補器を利用してもよい。このように主に室内側において、変更を加えることで、アップグレードが可能である。また、既存の換気扇システムについて、想定される或いは仕様上の最大排気量(m/h)に対して、90%以下、80%以下、70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、又は30%以下、の最大給気量(m/h)を供給可能な双方向に切り替え可能な送風ファンを備えるようにアップグレードする方法を提供することができる。そして、最大排気量(m/h)に対して、最大給気量(m/h)を上述するいずれかの所定の量以下に制御するアップグレード方法を提供することができる。また、排気及び給気のそれぞれの期間をほぼ同じ、排気期間をより長く(例えば、10%以上、20%以上)、又は給気期間をより長く(例えば、10%以上、20%以上)、更に、それぞれの場合に、給排気をしない休止期間(例えば、排気/給気の合計期間に対して、10%以上、20%以上)を設けるようにするアップグレード方法を提供することができる。そして、排気期間中に排気により室内から排出される熱量と、給気期間中に外気に供給される熱量とを調整可能にするアップグレード方法を提供することができる。
【0014】
より具体的には、以下のようなものを提供することができる。
(1)屋外側の外気開口部と、該外気開口部と連通する少なくとも1つのダクトと、該ダクト内に気流を生ぜしめるための装置のための機器スペースと、該ダクト内の気流を通じる室内側の開口部と、を既に備える施設に設置するための換気ユニットであって、 排気及び給気のために駆動可能な送風ファンと、 熱交換エレメントと、 送風ファン及び熱交換エレメントを収納可能なエンクロージャーと、 該エンクロージャーを前記ダクトに接続可能な接続ダクトと、 前記送風ファンを給排気運転可能な制御装置と、を備え、 前記制御装置は、前記送風ファンが排気及び給気の期間からなるサイクルを繰り返す1サイクルにおいて排気期間中の総排気量に対して給気期間中の総給気量を70%以下となるように制御することを特徴とする換気ユニット。
(2)上記(1)の換気ユニットにおいて、前記排気期間及び前記給気期間が、実質的に同じであることを特徴とする換気ユニット。
(3)上記(1)又は(2)の換気ユニットにおいて、前記排気期間及び前記給気期間の少なくとも1つが、約1分間であることを特徴とする換気ユニット。
(4)前記給気期間の最終時点において、給気され室内に吹き込まれる空気の温度が、外気温度及び室内温度の温度差の90%以下の温度だけ室内温度から離れているように制御することを特徴とする上記(1)から(3)のいずれかに記載の換気ユニット。
(5)前記熱交換エレメントは、260J/Kから13kJ/Kの熱容量を備えることを特徴とする上記(1)から(4)のいずれかに記載の換気ユニット。
(6)前記熱交換エレメントは、紙製であることを特徴とする上記(1)から(5)のいずれかに記載の換気ユニット。
(7)前記施設について、もう1つの、屋外側の外気開口部と、該外気開口部と連通する少なくとも1つのダクトと、該ダクト内に気流を生ぜしめるための装置のための機器スペースと、該ダクト内の気流を通じる室内側の開口部と、を既に備え、 それぞれもう1つの、排気及び給気のために駆動可能な送風ファンと、 熱交換エレメントと、 送風ファン及び熱交換エレメントを収納可能なエンクロージャーと、 該エンクロージャーを前記ダクトに接続可能な接続ダクトと、 前記送風ファンを給排気運転可能な制御装置と、を備え、 前記制御装置は、前記送風ファンが排気及び給気の期間からなるサイクルを繰り返す1サイクルにおいて排気期間中の総排気量に対して給気期間中の総給気量を70%以下となるように制御すことを特徴とするもう1つの換気ユニットを、更に備え、 前記もう1つの換気ユニットは給排気を違えて同期して制御することにより前記室内の気圧変化を小さくすることを特徴とする上記(1)から(6)のいずれかに記載の換気ユニット。
(8)屋外側の外気開口部と、該外気開口部と連通する1つのダクトと、該ダクト内に気流を生ぜしめるための装置のための機器スペースと、該ダクト内の気流を通じる室内側開口部と、を既に備える施設を利用して行う省エネ型換気方法であって、 前記機器スペースに送風ファンを備えるステップと、 前記送風ファンからの気流が通過可能に熱交換エレメントを備えるステップと、 送風ファン及び熱交換エレメントを収納するエンクロージャーと前記ダクトを接続する接続ダクトを備えるステップと、 前記送風ファンを給排気のサイクル運転可能に制御装置をセットするステップと、及び、前記制御装置が、排気及び給気の期間からなるサイクルを繰り返すが、1サイクルにおいて排気期間中の総排気量に対して給気期間中の総給気量を70%以下となるように送風するようにプログラムするステップと、を備える換気装置の設置方法。
(9)屋外側の外気開口部と、該外気開口部と連通する1つのダクトと、該ダクト内に気流を生ぜしめるための装置のための機器スペースと、該ダクト内の気流を通じる室内側の開口部と、を既に備える施設に設置するための換気ユニットであって、 排気及び給気のために駆動可能な送風ファンと、 熱交換エレメントと、 送風ファン及び熱交換エレメントを収納可能なエンクロージャーと、該エンクロージャーを前記ダクトに接続可能な接続ダクトと、を備える換気ユニットを用いて、前記送風ファンが排気及び給気の期間からなる1サイクルにおいて排気期間中の総排気量に対して給気期間中の総給気量を70%以下となるように送風するように該1サイクルを複数回繰り返す換気方法。
【0015】
ここで、上述の送風ファンは、3.6m/h(=0.001m/s)以上の空気を単位時間あたり送風可能であってもよい。送風能力が大きい送風ファンは、巨大化しやすいので、実用的には、360000m/h(=100m/s)以下の空気を単位時間あたり送風可能であってもよい。上述する屋外側の外気開口部と、該外気開口部と連通する1つのダクトと、該ダクト内に気流を生ぜしめるための装置のための機器スペースと、該ダクト内の気流を通じる室内側の開口部と、からなる構成は、換気扇、例えば、天井扇により備えられていてもよい。送風ファンと、熱交換エレメントと、エンクロージャーと、接続ダクトと、制御装置と、からなる換気ユニットは、前記換気扇を置換する換気装置であってもよい。例えば、1サイクルにおいて、排気期間(例えば、1分間)中の総排気量が8.47mであった場合、70%以下となる総給気量は5.93mである。60%以下とすれば5.08mであり、50%以下とすれば4.24mであり、40%以下とすれば3.39mである。例えば、排気期間中の単位時間あたり平均風量が508m/hであれば、給気期間中の単位時間あたり平均風量を313m/hとしてもよい(62%)。単位時間あたり平均風量は、それぞれの期間中に送った総風量をその期間の長さで割ったものであってよい。例えば、給排気期間がそれぞれ70秒で、総排気量が9.88mであれば、単位時間あたり平均風量は、8.47m/分=508m/hであってよい。6.09mだけ給気したとすれば、単位時間あたり平均風量は、5.21m/分=313m/hであってよい。
【0016】
1サイクル中において、前記給気期間は、10秒以上、20秒以上、30秒以上、40秒以上、50秒以上、60秒以上、90秒以上、又は120秒以上であってもよい。前記排気期間は、10秒以上、20秒以上、30秒以上、40秒以上、50秒以上、60秒以上、90秒以上、又は120秒以上であってもよい。前記給気期間は、5分以下であってもよい。前記排気期間は、5分以下であってもよい。給排気の期間は、それぞれ同じ又は同程度であることが好ましい。本発明の実施例にかかる換気ユニットを1つの室内に対となるように設置したとすると、給排気運転を相互的に行うことが好ましい。対の一方が排気期間であるところ、他方は給気期間となり、両者の制気口が設置される室内を横切る空気の流れが生じやすくなる。
【0017】
例えば、外気温度が室内温度より10℃低い場合、給気期間の最終時点において、給気され室内に吹き込まれる空気の温度が室内温度より5℃(又はそれ以下)だけ低い温度であってもよい(例えば、室内温度:20℃、外気温度:10℃、吹き込み空気の温度:15℃以上(室内温度から5℃だけ低い温度))。この時5℃以下は、温度差の50%以下に相当する。仮に、同条件で吹き込み空気の温度が12℃(室内から8℃だけ低い温度)であれば、温度差の80%に相当する。また、熱交換エレメントは、100J/K以上、200J/K以上、又は250J/K以上の熱容量を有してもよい。熱交換エレメントは、200kJ/K以下、100kJ/K以下、又は5k0J/K以下の熱容量を有してもよい。ここで、一般に紙とは、植物などの繊維を絡ませながら薄く平(たいら)に成形したものとされる。日本工業規格(JIS)では、「植物繊維その他の繊維を膠着させて製造したもの」と定義されている。繊維素材には、植物性天然繊維、動物性天然繊維、人造繊維などがある。植物性天然繊維の成分には、セルロース・ヘミセルロース・リグニン等がある。動物性天然繊維では羊毛や絹などが利用される。人造繊維は、レーヨン、ナイロン、ビニロン、ポリエステル、アクリロニトリル等の化学繊維を含んでもよい。一方、無機質紙、無機繊維紙、セラミック紙等のように無機物質を主体とするものも紙の一部とされてもよい。このような紙から、熱交換エレメントを構成することもできる。適切な熱特性や耐久性を上げるための処理剤やカビ防止剤を含んでもよい。
【発明の効果】
【0018】
上述のように、既存の換気扇システムを利用するので、店舗等の改造を最小限に抑えることができる。また、既存の冷暖房による効能を利用するシステムであるので、安価に、換気扇システムを室内気温を活用可能な換気システムへのグレードアップができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施例に係る省エネ換気ユニットを模式的に示す図。
図2】本発明の実施例に関し、考察されたモデルを模式的に示す図。
図3】本発明の実施例に関し、モデル的な実験例についての温度の経時変化のグラフ。
図4】本発明の実施例に関し、適用可能なエレメントの断面を模式的に示す図。
図5】本発明の実施例について、適用した例を模式的に示す図。
図6】設置される換気設備を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施例を説明するが、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例0021】
図1は、本発明の実施例に係る省エネ換気ユニットを模式的に示す。この省エネ換気ユニット10は、双方向給排気ファン12と、熱交換エレメント14と、エレメント14を収納する収納チャンバー16と、収納チャンバー16はエレメント14から室内側に配置される開口部18を備え、エレメント14から屋外側に開口する開口部を備え、該開口部に接続される接続部20を介して通気可能に接続される給排気ファン12を内部に備える管22と、該管22は屋外側の開口部に接続部24を備える。また、該接続部24を介して屋外に連通するフレキシブルダクト26は、既存の設備であってもよい。新たに新設することも可能である。省エネ換気ユニット10は、特に、室内の換気用に既に設置された天井扇のような換気扇のダクト等を利用可能にすることを特徴としてもよい。例えば、天井扇のように室内側に開口があり、そこにフード等の給気口が設けられ、通気可能にダクトが接続され、その先に排気用のファンが備えられた排気管が設けられ、その先に排気用のダクトがあり、該ダクトの先が屋外に開口し、雨除けのフード等でおおわれている既存の設備があった場合に、適用が可能である。即ち、この天井扇のうち室内側の開口のフード及び屋外に通じる開口部にフードを備えるダクトを除き、撤去し、該開口を省エネ換気ユニット10の開口部を該開口に合わせるように省エネ換気ユニット10を設置し、長さを適宜調整したうえで、屋外に通じる上述のダクトの室内側の開口に上記接続部24を取り付け、省エネ換気ユニット10を備えるようにする。もともと、天井扇には排気用のファンが備えられていたため、ファンのための電源や制御装置へと接続される配線や配線カバーを備える。これらも有効利用可能である。排気ファンは、オンオフの制御しか必要がなかったが、新たに設置される給排気ファン12には、給気及び排気の両方の機能を担保することが好ましい。例えば、再利用する配線や配線カバーの先に備えられてよい新たな制御装置を設けることができる。この制御装置は、給排気ファン12を給気及び排気のサイクル運転を連続的にさせることができる。
【0022】
例えば、給排気ファン12を給気方向に運転し約60秒間給気を行い、この給気運転を止めて、次に、排気方向に運転し約60秒間排気する。そして、この排気運転を止めて、給気方向に運転し約60秒間給気を行い、以下同様に、運転を続けることができる。ここで、例えば、室内温度が25℃で、外気温度が、5℃である場合を考える。上記サイクルにおいて、熱交換エレメント14は、排気の際に、室温25℃により室温に近い温度まで温められ、給気の際には、導入される外気5℃により冷却され、外気温に近い温度まで冷却される。即ち、導入される外気が室温に近い温度の熱交換エレメント14により、温められる。このような熱交換を模式的に示したものを図2に示す。
【0023】
図2は、このような考察されたモデルを模式的に示す。熱交換モデル30は、室内32と屋外34と図1のエレメントに相当する熱交換器36とから構成される。室内の室温Trは一定とし、外気温Toも一定とする。ここでは、Tr>Toの時を例にする。熱交換器36の温度は、代表的な温度Tで表せるものとし、熱交換器は、比熱Cp(ex)及び重量Wを有するとする。給気時の温度変化は、Aにおいてグラフで示され、排気時の温度変化は、Bにおいてグラフで示される。給気を開始するときには、熱交換器36の温度はT(t1)と室温に近い温度であったとする。給気を開始すると、t1時には熱交換器36の温度はT(t1)で、その時に室内に吹き込む吹込温度(熱交換器36の室内側に取りつけられた温度計の温度)はTin(t1)であり、熱交換器36が冷却されてt2時には温度はT(t2)であり、吹込温度はTin(t2)である。更に、給気を続ければ、熱交換器36が導入される外気温Toの外気により冷却されて温度はT(t2)よりも低くなるため、室内への吹込温度もTin(t2)よりも低くなる。そのため、外気に与えられ得る熱量も小さくなるので、給気を止めるように制御する。このとき、熱交換器36の温度は外気温Toに近い低い温度となる。次に、排気運転を開始する。開始後の時間t3の熱交換器36温度は外気温Toに近いT(t3)であり屋外に吹き出される吹出温度はTout(t3)であるが、T(t3)が低いので室温Trから大きく低下する。排気を続けると、室温Trで排出される内気により熱交換器36が温められ時間t4においてT(t4)になり吹出温度はTout(t4)である。なお、この時、吹込温度に相当する熱交換器36の室内側に取りつけられた温度計の温度は、室温Trを直接受けるので、室温とほぼ同じレベルの温度となる。更に、排気を続けると、熱交換器36が導入される内気温Trの内気により温められて温度はT(t4)よりも高くなるため、屋外への吹出温度もTout(t4)よりも高く、室温Tr近くのT(t1)と同等になる。
【0024】
一般に、熱交換器36のエレメントから通過する空気への熱の移動は、エレメント及び空気の温度差が大きいと大きくなり、エレメント表面での熱伝達率が大きいと大きくなる。一方、蓄熱材としては、熱容量が大きいと大きな熱量を蓄積しやすいが、熱容量が大きいと同じ熱量の放出/吸収があった場合、温度差が小さくなる。即ち、効率よく熱量を放出し、効率よく熱量を吸収する蓄熱材は、温められる気体(空気)や冷却される気体(空気)と、同様な熱特性を備えることが好ましいと考えられる。例えば、熱交換器36のエレメントの代表的な温度をT(t)とし、高温側の温度T1と低温側の温度T3の間で熱量の放出及び吸収がなされるとして、重量をWとし、その比熱をCp(ex)とし、給気時の空気の単位時間当たりの流量をv(m/s)とし、その比熱をCp(g)(J/kgK)とし、密度をρ(kg/m)として給気期間中の熱バランスをとれば、以下のようになると考えられる。

W・Cp(ex)・(T3-T1)=-∫ρ・v・Cp(g)・(Tin(t)-To(const))dt

また、排気期間中の熱交換器36のエレメントについて、屋外に排出される排気の温度をTout(t)として熱バランスを考えると、比熱や密度が一定として、以下のようになると考えられる。

W・Cp(ex)・(T1-T3)=-∫ρ・v・Cp(g)・(Tout(t)-Tr(const))dt

ここで、図2に示すように、T1及びT3は、室温Tr及び外気温Toの間の温度である必要がある。
【0025】
図3は、モデル的な実験例についての温度の経時変化のグラフを示している。熱交換器36には、D100×W280×H280 重量610gの紙製のエレメントを用いた。紙の構成成分は、木材繊維、填料(タルク、酸化チタン(IV))、ポリアミド・エピクロロヒドリン系樹脂、珪酸ナトリウム、硫酸アルミニウム、ポリビニルアルコール、塩化リチウム、スルファミン酸グアニジン等であった。このエレメントは、D100mm×W280mm×H280mmで、重量が610gのものであった。断面形状は、段ボールのようないわゆるトラス構造であり、段の高さは2mmであり、ピッチは4.8mmであった(5号段)。図4は、このように適用可能なエレメントの断面を模式的に示す図である。既存の換気扇を取り外し、残っていた排気ダクト(直径150mm(150mmから200mmであってもよい))を利用した。屋外側には雨除けのフードが備えられていた。また、室内側には300mm×400mmの排気口が設けられていたが、収納チャンバー16の室内側の開口として用いた。この収納チャンバー16は、上述するエンクロージャーに含まれてもよい。上記排気ダクトとは、開口断面の大きさを合わせることができるフレキシブルな接続ダクトにより接続された。
【0026】
図3において、約12℃一点鎖線は、屋外の外気温を示し、約22℃の一点鎖線は室内の温度を示している。サイクル状に変化する温度は、室内側で吹き込む温度をモニターしたものであるが、実線がエレメント有の状態で測定した温度であり、破線がエレメント無の状態で測定したものである。このサイクルでは、給気及び排気がほぼ瞬時に切り替わり、給気の際の平均風速は、1.11m/s(=3996m/h)であり、排気の際の平均風速は、1.80m/s(=6480m/h)であった。給排気が通過するエレメントの断面積が、0.28m×0.28mであるので、平均風量はそれぞれ、313m/h(=0.0869m/s)(給気時)及び508m/h(=0.1411m/s)(排気時)であった。このとき、給気する外気の温度をToとし、室内に吹き込む温度をTinとし、給気期間及び排気期間をそれぞれ60秒とすれば、エレメントから受けるべき熱量は、ρ×Cp(g)×0.0869m/s(=313m/h)×60s×(Tin-To)であり、室温をTrとし屋外に排出される排気温度をToutとすれば、エレメントが受けるべき熱量は、ρ×Cp(g)×0.1411m/s(=508m/h)×60s×(Tr-Tout)である。エレメントの代表的な温度は、給気時にT3からT1に上昇し、排気時にT1からT3に低下すると考えられ、その熱量は、W×Cp(ex)×(T1-T3)となると考えられる。サイクルが定常運転をしているとすれば、これらは同じになるので、次のようになると考えられる。

ρ×Cp(g)×0.0869m/s(=313m/h)×60s×(Tin-To)=ρ×Cp(g)×0.1411m/s(=508m/h)×60s×(Tr-Tout)=W×Cp(ex)×(T1-T3)

このようにして、TinとToutの関係が求められ得る。

Tout=Tr-0.616(Tin-To)

エレメント及び接触空気間の熱交換効率が一定として、1サイクルにおいて、総排気量及び総給気量の比が大きくなると、エレメントに保持される室内温度条件を保持する熱量(負の意味での熱量を含んでよい)が相対的に大きくなり、換気を十分に行えると共に、給気の際に室内へ吹き込まれる空気の温度をより室内温度に近いものとすることができる。
【0027】
図3においては、時間1分40秒あたりで排気が開始され、2分40秒あたりで給気が開始され、3分40秒あたりで再び排気が開始されていたことが分かる。即ち、上述のように室内の空気を直接受けるので吹込温度に相当するTinは、排気開始時に急激に室温迄上昇しほぼ室温と同じになる。一方、給気を開始すると、吹込温度に相当するTinは、外気温度Toの屋外から外気を取り入れるので、急激に低下する一方、徐々に低下の度合いが小さくなる。そして、排気が開始されると、吹込温度に相当するTinは、急激に室温迄上昇する。具体的には、図3から、室温Tr=21.2℃、外気温To=12℃、吹込み温度Tin=21.5℃、また、エレメント有の場合、給気時の最低の吹込み温度Tin(有)=15℃とも読め、エレメント無の状態では、給気時の最低の吹込み温度Tin(無)=12℃である。ここで、室内外の温度差は、9.2℃であり、15℃は、室内温度から6.2℃(温度差の67%)だけ低い温度に相当する。このようにエレメントを使用すると、給気時の最低の吹込み温度Tinが3℃程度上昇する。ところで、上述のTout=Tr-0.616(Tin-To)を用いると、排気時の排気温度Tout=21.2-0.616×(21.5-12)=15.3となる。これは、給気開始時のTinを用いたものだが、終了時のTinを用いると、Tout=21.2-0.616×(15-12)=19.4となる。このように、仮に同じ時間だけ給気及び排気期間を割り当てたとしても、風量(又は風速)を排気期間においてより高くすれば、給気時のTinを高くする(室内温度に近くする)ことができる。上述のように室温と外気温度の差が約9℃であり、吹込み温度Tinの最低温度は、この温度差の約2/3だけ室温から低く離れるに過ぎない。また、給気時は、面積の小さな給排気口から慣性を持った空気が噴出されることもあり、思わず強すぎる空気が室内に吹き込まれることもある。従って、給気時の風量(又は風速)を排気時の風量(又は風速)よりも小さくすることが好ましい。例えば、給気時の風量(又は風速)より排気時の風量(又は風速)を20%以上高くすることが好ましい。50%以上高くすることが好ましい。70%以上高くすることが好ましい。100%以上高くすることが好ましい(例えば、1m/s(=3600m/h)であれば、2m/s(=7200m/h))。一方、高くしすぎると、ファンの能力を高める必要があり、技術的に或いは工業的に可能な範囲内に収めることが順当である。例えば、300%以下が好ましい。例えば、送風ファンは、60m/h(=0.01m/s)以上、72m/h(=0.02m/s)以上、108m/h(=0.03m/s)以上、144m/h(=0.04m/s)以上の空気を送風可能であってよい。送風ファンの能力が大きくなると必要以上に装置重量が大きくなるので、備え付けることができる程度までの重さの送風ファンであってよい。例えば、最大送風能力が360000m/h(=100m/s)以下であってもよい。
【0028】
また、給気期間及び排気期間は、同じであってもよく、例えば、約60秒ずつであってもよく、給気及び排気の切り替えに、その1/5程度の時間をかけてもよい。また、給気期間及び排気期間を異なるようにしてもよく、互いに、独立して又は相互依存して、可変としてもよい。別の実施例において、外気温度5.4℃室内温度20.2℃の条件で、60秒ずつの給排気運転を行ったところ、60秒の給気の開始時にTin=19.1℃であったが、その終了時(60秒時)にはTin=13.6℃となった。室内外の温度差が、14.8℃であるところ、室温から6.6℃(温度差の約45%に相当)だけ低い温度で留まった。給気開始時の吹込温度Tinを、及び終了時の吹込温度Tinを、用いると、排気温度Tout=20.2-0.616×(19.1-5.4)=11.8℃、及び排気温度Tout=20.2-0.616×(13.6-5.4)=15.1℃、となる。
【0029】
次に、室温が20℃であり、外気温度が35℃の場合を考える。排気を開始すると、吹込温度Tinは、約20℃であり、エレメントの温度は20℃よりも高いが近い温度T1になると考えられ、いわゆる吹込温度Tinは、T1より低い温度になると考えられる。運転を給気に換えると、外気温35℃をダクトから吸込み、エレメント温度T1は、上昇し外気温よりは低いT3となり、吹込温度Tinは、T3よりも高い温度Tinとなる。即ち、エレメントは、W・Cp(ex)・(T3-T1)=-∫ρ・v・Cp(g)・(Tin(t)-To(const))dtの熱量を吸収し、W・Cp(ex)・(T1-T3)=-∫ρ・v・Cp(g)・(Tout(t)-Tr(const))dtの熱量を放出する。このようにすることにより、エレメントには、いわゆる冷機として機能し、或いは、外気の熱の室内への流入を該熱を吸収することにより緩和することができる。このとき、上述のようなサイクルで給排気が行われたとすると、Tin=20℃として、Tout=Tr-0.616(Tin-To)=29.2℃となる。更に別の実施例において、外気35.7℃室内27.0℃の条件で、60秒ずつの給排気運転を行ったところ、60秒の給気の開始時にTin=27.7℃であったが、その終了時(60秒時)にはTin=34.7℃となった。室内外の温度差が、8.7℃であるところ、室温から7.7℃(温度差の約88%に相当)高い温度で留まった。給気開始時のTinを、及び終了時のTinを、用いると、排気温度Tout=27.0-0.616×(27.7-35.7)=31.9℃、及びTout=27.0-0.616×(34.7-35.7)=27.6℃、となる。
【0030】
熱エネルギーの蓄積及び放出を行うエレメントは、W×Cp(ex)×(T1-T3)の熱量を温度T1及びT3間でサイクルすることができる。上述の例において、T1は、室温Trや吹込温度Tinに近い温度であってよい。このサイクルの低温側の温度T3は、外気温Toよりも高く、また、排気温度Toutよりも高くなる。温度T3が低い方が、エレメントが蓄積及び放出できる熱エネルギーは大きくなるが、種々の要因で制約される。一方、エレメントの重量及びその比熱は、この換気システムが効率的に機能するように適宜選択することが好ましい。例えば、紙製のエレメントであれば、重量は、典型的には、200g以上であることが好ましい。300g以上であることが好ましい。400g以上であることが好ましい。500g以上であることが好ましい。設置の容易性等から、10kg以下が好ましい。5kg以下が好ましい。2kg以下が好ましい。紙の比熱はおよそ1.3kJ/kgKであり、密度は約900kg/mであり、エレメント構造の構造密度を5%程度と見積もると、熱容量は、260J/K以上であってよい。390J/K以上であってよい。520J/K以上であってよい。650J/K以上であってよい。また、13kJ/K以下であってよい。6.5kJ/K以下であってよい。2.6kJ/K以下であってよい。例えば、セラミック製のエレメントの場合、0.8kJ/kgK程度の比熱を有するが、密度が3000kg/m程度で、5%程度と見積もって、エレメント(D100mm×W280mm×H280mm)程度の大きさであれば、1.2kg程度と考えられる。この時の熱容量は、1kJ/K程度であり、紙製のエレメントに比べて大きい。また、金属(例えば鉄)製のエレメントの場合、0.5kJ/kgK程度、密度が紙の8倍ほど高く、エレメントとして使用すると3kg程度で、1.5kJ/K程度である。また、プラスチック製のエレメントの場合、1.5kJ/kgK程度、密度は約1200kg/mであり、エレメントとして使用すると400g程度で、600J/K程度である。熱容量が大きいと、その温度を維持しやすいが、逆に温度変化が好ましい場合は、熱容量はあまり大きすぎない方がよい。例えば、温度が10℃程度変化することが好ましい場合は、紙製エレメントの熱容量程度の熱容量を有する材料で作られたエレメントが好ましいともいえる。
【0031】
以上のようにして、既存の換気扇システムを備え、外気に通じるダクトが利用可能な店舗等において、省エネ換気ユニットを取り付けることにより、換気システムをアップグレードすることができる。この際には、既存のダクトの径が、所定の範囲(例えば、直径100から300mm)内にあり、1m/s(=3600m/h)又はそれ以上の空気を送ることで、屋外に排気又は屋外から外気を給気できる程度のダクト長さ(例えば、5mであれば5秒間(給排気サイクルの給気又は排気時間の1/10から1/5以下であってもよい)の送風で屋外排気が可能)を有し、そのための双方向送風ファンを備える場所が確保できる場合において、室温及び外気温度をもとに、想定する吹込温度、排気温度を求め、それに合った熱交換エレメント素材を選択し、給気から排気へと送風ファンの運転を切り替えて給気及び排気サイクルを実行可能な制御を行い得る制御装置を準備して、換気システムをアップグレードする方法を提供することができる。或いは、給排気サイクルの給気及び/又は排気時間をダクト内の残気を十分に屋外又は室内に押し出すことができるだけの長さに設定してもよい。
【0032】
図5は、本発明の実施例について、適用した例を模式的に示す図である。図6は、既に設置される換気設備を模式的に示す図である。図5に示す換気ユニット100は、既存のフレキシブルダクト309の天井扇側を切断し短くして接続部102にて双方向運転ファン104を備える管に接続される。双方向運転ファン104を駆動する電力やコントロール信号を供給する電源線106が接続されるが、これには既存の換気扇システム300のものを利用可能である。双方向運転ファン104を備える管は、更に、接続部110を介してエレメント収納チャンバー112に接続され、その中に収納された熱交換器エレメント114が、排気及び給気の空気が通過して熱交換をするように配置される。このような排気及び給気の空気は、既存の換気扇システム300の制気口316を利用することができる。このように既存の換気扇システム300の部品を再利用可能であるので、本発明の実施例について換気ユニット100の導入コストを抑制することができる。また、換気ユニット100の運転は、既存の換気扇システム300と違い、給気及び排気を行うことができ、このような制御は、電源線106を延長し、室内の制御装置120へと、配線122によって接続可能である。この制御装置は、双方向運転ファン104を自在に制御できるだけでなく、オプションとして、備えられる制気口316付近等に設置される温度計による温度をモニタしたり、その温度に基づく制御を行うことができる。例えば、上述するように吹込温度が低い又は高い場合に、双方向運転ファン104のサイクルタイムの調整や、給気及び/又は排気ファンの風量を変化させることも可能である。
【符号の説明】
【0033】
10 換気ユニット 12 双方向給排気ファン 14 熱交換エレメント
16 収納チャンバー 18 開口部 26 フレキシブルダクト
30 熱交換モデル 32 室内 34 屋外 36 熱交換器
100 換気ユニット 104 双方向運転ファン 106、312 電源線
112 エレメント収納チャンバー 114 熱交換器エレメント
120 制御装置 122 配線 300 換気扇システム
302 屋外 304 外壁 306 外部フード
308、309 フレキシブルダクト 310 天井扇本体 316 制気口
図1
図2
図3
図4
図5
図6