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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022025718
(43)【公開日】2022-02-10
(54)【発明の名称】信用照会方法及び信用照会システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 20/38 20120101AFI20220203BHJP
   G06Q 20/06 20120101ALI20220203BHJP
   G06Q 20/40 20120101ALI20220203BHJP
【FI】
G06Q20/38 310
G06Q20/06
G06Q20/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020128731
(22)【出願日】2020-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】519099416
【氏名又は名称】KING’S株式会社
(72)【発明者】
【氏名】玉木 秀樹
【テーマコード(参考)】
5L055
【Fターム(参考)】
5L055AA12
5L055AA71
5L055AA72
(57)【要約】
【課題】適切かつ産業上有利にデジタル通貨の信用照会を行うことができる新規かつ有用な信用照会方法及び信用照会システムを提供する。
【解決手段】信用照会するための取引装置と、信用情報を記憶している与信サーバーとが通信回線を介して通信可能に接続されており、前記取引装置は、ブロックチェーンネットワーク上のデジタル通貨のアドレスを前記与信サーバーに送信する手段を有しており、前記与信サーバーは、前記アドレスに対応して前記信用情報を予め記憶しており、前記取引端末から受信した前記アドレスを前記信用照会の処理に付す手段を有する信用照会システムを用いて、デジタル通貨での取引の際に信用情報を用いて前記取引が可能であるか否かの信用照会を行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
取引の際に信用情報を用いて前記取引が可能であるか否かの信用照会を行う信用照会方法であって、デジタル通貨のアドレスに対応させて前記信用情報を予め記憶するステップと、前記取引の際に、ブロックチェーンネットワーク上に記憶されている前記アドレスを前記信用照会の処理に付すステップを含むことを特徴とする信用照会方法。
【請求項2】
前記アドレスが、秘密鍵に対応する公開鍵によって識別される暗号アドレスである請求項1記載の信用照会方法。
【請求項3】
前記処理が、前記デジタル通貨のアドレスに対応して信用情報を記憶している与信サーバーに、通信回線を介して取引装置から前記アドレスを送信する処理を含む請求項1又は2に記載の信用照会方法。
【請求項4】
前記信用情報が、取引資格条件を含む請求項3記載の信用照会方法。
【請求項5】
前記与信サーバーは、前記取引装置から前記アドレスを受信すると、前記アドレスに対応する前記信用情報を抽出し、抽出した前記信用情報を与信処理に付す手段を有する請求項3又は4に記載の信用照会方法。
【請求項6】
前記与信サーバーは、前記デジタル通貨のアドレスに対応させて前記デジタル通貨の利用者を特定する利用者特定情報を記憶しているデータベースを含む請求項3~5のいずれかに記載の信用照会方法。
【請求項7】
前記与信サーバーは、前記取引装置から前記アドレスを受信すると、前記アドレスに対応する前記利用者特定情報を抽出し、ついで抽出した前記利用者特定情報に対応する前記アドレスを抽出した後、抽出した前記アドレスに対応する取引履歴を前記ブロックチェーンネットワークから収集して取引情報とし、前記取引情報を前記信用情報とともに与信処理に付す手段をさらに有している請求項6記載の信用照会方法。
【請求項8】
前記取引が商品又はサービスをデジタル通貨で決済するためのインターネット取引である請求項1~7のいずれかに記載の信用照会方法。
【請求項9】
前記取引が前記デジタル通貨とは異なる貨幣又は特典に交換するためのインターネット取引である請求項1~7のいずれかに記載の信用照会方法。
【請求項10】
前記デジタル通貨が法定通貨である請求項1~9のいずれかに記載の信用照会方法。
【請求項11】
信用照会するための取引装置と、信用情報を記憶している与信サーバーとが通信回線を介して通信可能に接続されており、取引の際に前記取引が可能であるか否かの信用照会を、前記信用情報を用いて行うための信用照会システムであって、
前記取引装置は、ブロックチェーンネットワーク上のデジタル通貨のアドレスを前記与信サーバーに送信する手段を有しており、
前記与信サーバーは、前記アドレスに対応して前記信用情報を予め記憶しており、前記取引装置から受信した前記アドレスを前記信用照会の処理に付す手段を有することを特徴とする信用照会システム。
【請求項12】
前記アドレスが、秘密鍵に対応する公開鍵によって識別される暗号アドレスである請求項11記載の信用照会システム。
【請求項13】
前記取引装置が決済端末であり、前記取引が商品又はサービスをデジタル通貨で決済するためのインターネット取引である請求項11又は12に記載の信用照会システム。
【請求項14】
前記取引装置がデジタル通貨交換管理サーバーであり、前記取引が前記デジタル通貨とは異なる貨幣又は特典に交換するためのインターネット取引である請求項11又は12に記載の信用照会システム。
【請求項15】
前記信用情報が、取引資格条件を含む請求項11~14のいずれかに記載の信用照会システム。
【請求項16】
前記与信サーバーは、前記デジタル通貨のアドレスに対応させて前記デジタル通貨の利用者を特定する利用者特定情報を記憶しているデータベースを含む請求項11~15のいずれかに記載の信用照会システム。
【請求項17】
前記与信サーバーは、前記取引装置から前記アドレスを受信すると、前記アドレスに対応する前記利用者特定情報を抽出し、ついで抽出した前記利用者特定情報に対応する前記アドレスを抽出した後、抽出した前記アドレスに対応する取引履歴を前記ブロックチェーンネットワークから収集して取引情報とし、前記取引情報を前記信用情報とともに与信処理に付す手段をさらに有している請求項16記載の信用照会システム。
【請求項18】
前記デジタル通貨が法定通貨である請求項11~17のいずれかに記載の信用照会システム。
【請求項19】
取引の際に前記取引が可能であるか否かの信用照会するための取引装置を、ブロックチェーン上に記憶されているデジタル通貨のアドレスを前記信用照会の処理に付す手段として機能させるプログラム。
【請求項20】
信用情報を用いて、取引の際に前記取引が可能であるか否かの信用照会を行う与信サーバーを、ブロックチェーン上に記憶されているデジタル通貨のアドレスを前記信用照会の処理に付す手段として機能させるプログラム。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信用照会方法、信用照会システム又はこれらに適用されるプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、商品の購入時等においてデジタル通貨(ポイントを含む)を付与することが行われている。近年においては、電子マネーやポイント用の専用口座を用いて金融機関の管理サーバーにてポイントと貨幣とを交換できるように構成されたシステム等も検討されている(特許文献1)。
しかしながら、利便性が向上する一方で、インサイダー取引、マネーロンダリング、詐欺及びその他のデジタル通貨の悪用等の不正使用の問題があり、デジタル通貨の利便性を損なったり、管理負担を増やしたりすることなく、これら不正使用の問題を解決する方策が待ち望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-9315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、適切かつ産業上有利にデジタル通貨の信用照会を行うことができる新規かつ有用な信用照会方法及び信用照会システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、取引の際に信用情報を用いて前記取引が可能であるか否かの信用照会を行う信用照会方法において、デジタル通貨のアドレスに対応させて前記信用情報を予め記憶し、前記取引の際に、ブロックチェーンネットワーク上に記憶されている前記アドレスを前記信用照会の処理に付すようにすれば、適切かつ産業上有利にデジタル通貨の取引を行うことができることを知見し、このような信用照会方法及び信用照会システムが、上記した従来の問題を一挙に解決できるものであることを見出した。
また、本発明者らは、上記知見を得た後、さらに検討を重ねて、本発明を完成させるに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、以下の発明に関する。
[1] 取引の際に信用情報を用いて前記取引が可能であるか否かの信用照会を行う信用照会方法であって、デジタル通貨のアドレスに対応させて前記信用情報を予め記憶するステップと、前記取引の際に、ブロックチェーンネットワーク上に記憶されている前記アドレスを前記信用照会の処理に付すステップを含むことを特徴とする信用照会方法。
[2] 前記アドレスが、秘密鍵に対応する公開鍵によって識別される暗号アドレスである前記[1]記載の信用照会方法。
[3] 前記処理が、前記デジタル通貨のアドレスに対応して信用情報を記憶している与信サーバーに、通信回線を介して取引装置から前記アドレスを送信する処理を含む前記[1]又は[2]に記載の信用照会方法。
[4] 前記信用情報が、取引資格条件を含む前記[3]記載の信用照会方法。
[5] 前記与信サーバーは、前記取引装置から前記アドレスを受信すると、前記アドレスに対応する前記信用情報を抽出し、抽出した前記信用情報を与信処理に付す手段を有する前記[3]又は[4]に記載の信用照会方法。
[6] 前記与信サーバーは、前記デジタル通貨のアドレスに対応させて前記デジタル通貨の利用者を特定する利用者特定情報を記憶しているデータベースを含む前記[3]~[5]のいずれかに記載の信用照会方法。
[7] 前記与信サーバーは、前記取引装置から前記アドレスを受信すると、前記アドレスに対応する前記利用者特定情報を抽出し、ついで抽出した前記利用者特定情報に対応する前記アドレスを抽出した後、抽出した前記アドレスに対応する取引履歴を前記ブロックチェーンネットワークから収集して取引情報とし、前記取引情報を前記信用情報とともに与信処理に付す手段をさらに有している前記[6]記載の信用照会方法。
[8] 前記取引が商品又はサービスをデジタル通貨で決済するためのインターネット取引である前記[1]~[7]のいずれかに記載の信用照会方法。
[9] 前記取引が前記デジタル通貨とは異なる貨幣又は特典に交換するためのインターネット取引である前記[1]~[7]のいずれかに記載の信用照会方法。
[10] 前記デジタル通貨が法定通貨である前記[1]~[9]のいずれかに記載の信用照会方法。
[11] 信用照会するための取引装置と、信用情報を記憶している与信サーバーとが通信回線を介して通信可能に接続されており、取引の際に前記取引が可能であるか否かの信用照会を、前記信用情報を用いて行うための信用照会システムであって、
前記取引装置は、ブロックチェーンネットワーク上のデジタル通貨のアドレスを前記与信サーバーに送信する手段を有しており、
前記与信サーバーは、前記アドレスに対応して前記信用情報を予め記憶しており、前記取引装置から受信した前記アドレスを前記信用照会の処理に付す手段を有することを特徴とする信用照会システム。
[12] 前記アドレスが、秘密鍵に対応する公開鍵によって識別される暗号アドレスである前記[11]記載の信用照会システム。
[13] 前記取引装置が決済端末であり、前記取引が商品又はサービスをデジタル通貨で決済するためのインターネット取引である前記[11]又は[12]に記載の信用照会システム。
[14] 前記取引装置がデジタル通貨交換管理サーバーであり、前記取引が前記デジタル通貨とは異なる貨幣又は特典に交換するためのインターネット取引である前記[11]又は[12]に記載の信用照会システム。
[15] 前記信用情報が、取引資格条件を含む前記[11]~[14]のいずれかに記載の信用照会システム。
[16] 前記与信サーバーは、前記デジタル通貨のアドレスに対応させて前記デジタル通貨の利用者を特定する利用者特定情報を記憶しているデータベースを含む前記[11]~[15]のいずれかに記載の信用照会システム。
[17] 前記与信サーバーは、前記取引装置から前記アドレスを受信すると、前記アドレスに対応する前記利用者特定情報を抽出し、ついで抽出した前記利用者特定情報に対応する前記アドレスを抽出した後、抽出した前記アドレスに対応する取引履歴を前記ブロックチェーンネットワークから収集して取引情報とし、前記取引情報を前記信用情報とともに与信処理に付す手段をさらに有している前記[16]記載の信用照会システム。
[18] 前記デジタル通貨が法定通貨である前記[11]~[17]のいずれかに記載の信用照会システム。
[19] 取引の際に前記取引が可能であるか否かの信用照会するための取引装置を、ブロックチェーン上に記憶されているデジタル通貨のアドレスを前記信用照会の処理に付す手段として機能させるプログラム。
[20] 信用情報を用いて、取引の際に前記取引が可能であるか否かの信用照会を行う与信サーバーを、ブロックチェーン上に記憶されているデジタル通貨のアドレスを前記信用照会の処理に付す手段として機能させるプログラム。
【発明の効果】
【0007】
本発明の信用照会方法及び信用照会システムによれば、適切かつ産業上有利にデジタル通貨の信用照会を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の信用照会システムの好適な実施態様の一例を示す図である。
図2】信用情報のデータベースであり、本発明において好適に用いられる信用情報の実施態様の一例を模式的に示す図である。
図3】取引情報のデータベースであり、本発明において好適に用いられる取引情報の実施態様の一例を模式的に示す図である。
図4】本発明において好適に用いられる決済端末の実施態様の一例を機能的ブロック図として示す模式図である。
図5】本発明において好適に実施される信用照会処理のフローチャートを模式的に示す図である。
図6】本発明の信用照会システムの好適な実施態様の一例を示す図である。
図7】本発明において好適に実施される信用照会処理のフローチャートを模式的に示す図である。
図8】本発明において好適に用いられるブロックチェーンの構成の一例を説明する図である。
図9】本発明において好適に用いられるブロックチェーンのトランザクションの構成の一例を説明する図である。
図10】本発明において好適に用いられるブロックチェーンのトランザクションのデータ構造の一例を説明する図である。
図11】本発明において好適に用いられるブロックチェーンのトランザクションのスクリプトの一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の信用照会方法は、取引の際に信用情報を用いて前記取引が可能であるか否かの信用照会を行う信用照会方法であって、デジタル通貨のアドレスに対応させて前記信用情報を予め記憶するステップと、前記取引の際に、ブロックチェーンネットワーク上に記憶されている前記アドレスを前記信用照会の処理に付すステップを含むことを特長とする。
【0010】
「取引」とは、経済的活動を意味し、前記経済的活動としては、例えば、店舗や営業所等における商品又はサービスの提供や金融機関や交換所等におけるデジタル通貨と貨幣やその他資産との交換などの経済的活動が挙げられる。本発明においては、前記取引が、商品若しくはサービスをデジタル通貨で決済するためのインターネット取引、又は前記デジタル通貨とは異なる貨幣若しくは特典に交換するためのインターネット取引であるのが好ましい。
前記貨幣は、何らかの値に交換され得る任意の媒体をいい、前記貨幣としては、例えば、特に限定されないが、紙幣、硬貨、為替またはキャッシャーチェック等が挙げられ、種々の通貨(デジタル通貨を含む)も含まれる。本発明においては、前記貨幣が、政府が承認または発行した通貨であるのが好ましい。
前記特典は、本発明の目的を阻害しない限り限定されず商品またはサービスにおいて付与される公知の特典であってよい。前記特典としては例えば景品等との引換に用いる特典(たとえば、ポイント等)や、投票券の代金の支払いに用いる特典(たとえば、値引や割引等)等があげられる。本発明においては、前記特典がポイントであるのが好ましい。前記ポイントは、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されず、商取引において付与等がされる公知のポイントであってよい。有効期限があってもよいし、有効期限がなくてもよい。
【0011】
「信用照会」とは、取引の際に信用情報を用いて前記取引が可能であるか否かの照会であれば特に限定されず、与信等も含まれる。
「信用情報」とは、与信情報ともいい、前記信用照会において、前記取引が可能であるか否かを判定するための基準となる情報であれば特に限定されず、例えば、取引可能であることを確認する確認情報等が挙げられる。本発明においては、前記信用情報が、取引資格条件を含むのが、より効率よく信用照会を行うことができるので好ましい。
【0012】
「デジタル通貨」は、金融トランザクションを含むトランザクションに対する支払いの通貨として用いることが可能な価値の単位であれば特に限定されない。前記デジタル通貨は、通常、電子的に生成されてその中に格納される通貨であるが、法定通貨であってよく、暗号通貨であってもよい。なお、前記デジタル通貨には、ポイント、電子マネー、仮想通貨が含まれる。本発明においては、前記デジタル通貨が法定通貨であるのがより経済的活動を適切かつ効率的に推進し、前記信用照会をより利活用できるので好ましい。
【0013】
「アドレス」とは、ブロックチェーンネットワークにおいて前記デジタル通貨を送受信する際に使用される英数字からなる識別子であり、公知のものであってよい。通常、前記デジタル通貨の移動元又は移動先を指定する際に用いられる。なお、前記アドレスは、秘密鍵と対応付けられているのが好ましく、秘密鍵とペアになる公開鍵から生成されるものであるのがより好ましく、秘密鍵に対応する公開鍵によって識別される暗号アドレスであるのが最も好ましい。
【0014】
「通信回線」は、特に限定されず、通信可能であれば無線回線であっても、有線回線であってもよいが、電話網又はインターネット網を含むことが、双方向で通信が行えるので好ましい。
「ブロックチェーンネットワーク」とは、所定の通信プロトコルに従って通信する2以上の情報処理装置によって構成されたブロックチェーンに関する情報を共有するネットワークをいう。ブロックチェーンネットワークの好適な一例としては、P2Pネットワークが挙げられる。
【0015】
前記信用照会方法は、信用照会するための取引装置と、信用情報を記憶している与信サーバーとが通信回線を介して通信可能に接続されており、取引の際に前記取引が可能であるか否かの信用照会を、前記信用情報を用いて行うための信用照会システムであって、前記取引装置は、ブロックチェーンネットワーク上のデジタル通貨のアドレスを前記与信サーバーに送信する手段を有しており、前記与信サーバーは、前記アドレスに対応して前記信用情報を予め記憶しており、前記取引装置から受信した前記アドレスを前記信用照会の処理に付す手段を有する信用照会システムを用いることにより、好適に実施することができる。
【0016】
前記取引装置は、信用照会するための装置であれば特に限定されないが、通常、前記デジタル通貨を用いる前記取引に関する処理を行うための装置であり、取引端末であってよい。前記取引装置としては、例えば、決済端末又はデジタル通貨交換管理サーバー等が好適な例として挙げられる。
前記与信サーバーは、信用情報を記憶している管理サーバーであれば特に限定されず、前記デジタル通貨の発行者の管理サーバーであってもよいし、与信業者の管理サーバーであってもよい。通常、前記与信サーバーは、取引の際に前記取引端末から信用照会の要求を受け付けると、前記信用情報に基づいて、前記取引が可能であるか否かを判定し、判定結果を信用照会結果又は与信結果として前記取引端末に送出するサーバーである。本発明においては、前記与信サーバーが、前記デジタル通貨のアドレスに対応させて前記デジタル通貨の利用者を特定する利用者特定情報を記憶しているデータベースを含むのが好ましく、前記取引装置から前記アドレスを受信すると、前記アドレスに対応する前記利用者特定情報を抽出し、ついで抽出した前記利用者特定情報に対応する前記アドレスを抽出した後、抽出した前記アドレスに対応する取引履歴を前記ブロックチェーンネットワークから収集して取引情報とし、前記取引情報を前記信用情報とともに与信処理に付す手段をさらに有しているのがより好ましい。
【0017】
図1は、本発明の信用照会システムの好適な実施態様の一例を模式的に示す。図1の信用照会システムは、デジタル通貨を利用しようとする利用者の利用者端末11と、信用照会を受け付け、信用照会結果を送出する与信装置(与信サーバー)12と、利用者との取引の際に信用照会を行うための店舗や営業所等の決済端末13とがブロックチェーンネットワーク19を含む通信回線18を介してそれぞれ通信可能に接続されている。
【0018】
与信装置(与信サーバー)12は、前記アドレスに対応させて信用情報及び取引情報が記憶されているデータベースを有している。図2は、本発明において好適に用いられる信用情報の一例を模式的に示す。図2の信用情報は、アドレス、利用者ID、国籍、取引資格、取引条件、取引制限地域、取引限度額等からなり、例えば、前記アドレスから、利用者ID又は国籍等の個人情報、及び取引資格、取引条件、取引制限地域又は取引限度額等の取引資格情報がそれぞれ紐付けられており、前記アドレスがわかると、前記個人情報又は前記取引資格情報が抽出できるように構成されている。
図3は、本発明において好適に用いられる取引情報の一例を模式的に示す。図3の取引情報は、アドレス、取引日時、取引種別、取引額、取引先アドレス等からなり、例えば、前記アドレスから、取引日時、取引種別又は取引額等の取引履歴、及び取引先アドレス等の取引先情報がそれぞれ紐付けられており、前記アドレスがわかると、前記取引履歴又は前記取引先情報が抽出できるように構成されている。
【0019】
決済端末13は、与信サーバー12と通信回線を介して通信可能に接続される端末であって、前記デジタル通貨で決済処理できる端末であれば特に限定されないが、本発明においては、通信回線18を介してブロックチェーンネットワーク19上に記憶されている前記アドレスを与信サーバー12に送信する手段を含むのが好ましい。前記決済端末13としては、例えば店舗又は営業店の管理サーバー、券売機又は金銭登録機等が挙げられる。前記決済端末13としては、より具体的に例えば、図4に示すように、記憶部1101、処理部1102、入力部1103、出力部1104、表示部1105及び通信部1106を含んで構成されるもの等が好適な例として挙げられる。すなわち、前記決済端末13は、サーバーやコンピュータの基本構成を備えていれば特に限定されず、例えば、店舗又は営業店の管理サーバー、券売機又は金銭登録機等とすることができる。本発明においては、前記決済端末13が、与信サーバー12からブロックチェーン・ネットワーク19のデータを部分的に受信して処理を行うSPVクライアントとして機能するのが好ましい。
【0020】
図4において、処理部1102は、CPU等の演算処理を行う手段を含む。処理部1102は、記憶部1101に記憶されている信用照会プログラムや決済プログラム等を実行することによって、本実施の形態における信用照会等に関する処理を実現する。記憶部1101は、半導体メモリ、ハードディスク等の記憶装手段を含む。記憶部1101は、処理部1102とアクセス可能に接続され、各種処理に供されるデータ等を記憶する。入力部1103は、決済端末11に情報を入力する手段を含む。入力部1103は、例えば、店舗等の従業員等から入力を受けるタッチパネルやキーボードを備える。また、入力部1103は、外部から情報を受け取るネットワークインターフェース等を含み、処理に供されるデータを受信する。出力部1104は、決済端末11で処理された情報を出力する手段を含む。出力部1104は、例えば、管理者に対して画像を呈示するディスプレイを備える。また、出力部1104は、通信回線18を介して、決済端末11の外部へ情報等を送信するネットワークインターフェース等を含む。表示部1105は例えば、液晶ディスプレイ、ディスプレイパネルなどのディスプレイデバイスである。入力部1103と表示部1105とは、別体であってもよいし、一体化されたタッチパネルとして構成されてもよい。通信部1106は、例えば、通信インタフェースである。
【0021】
図5は、図1の信用照会システムにおいて好適に実施される情報処理フローの一例を模式的に示す図である。かかる情報処理は、例えば図4に示される決済端末13の各機能が、CPUにて所定のプログラムを実行されることにより実行される。なお、利用者端末11は、決済端末13と各機能が同様であってよい。
【0022】
利用者は、デジタル通貨を利用可能とするため、例えばインターネット上の利用登録画面から、利用者端末11を用いて、デジタル通貨のアドレス及び利用者情報等を与信サーバー12に送信する(S101)。与信サーバー12は、利用者端末11から利用登録のためのデジタル通貨のアドレス及び利用者情報等を受信すると、利用者情報から信用情報を作成し(S102)、前記アドレスに対応させて信用情報をデータベースに記憶する(S103)。
【0023】
利用者は、例えばインターネットショッピングの店舗において、商品の購入又はサービスの利用を行うため、利用者端末11を用いて、デジタル通貨での決済を要求する(S104)。店舗は、決済端末13が利用者端末11からデジタル通貨での決済要求を受信すると、デジタル通貨の発行者又は与信業者の与信サーバー12に、取引(商品の購入又はサービスの利用)に関する信用照会を、ブロックチェーンの取引先アドレスとともに、決済端末13から与信サーバー12に送信する(S105)。与信サーバー12は、図2の信用情報及び図3の取引情報を記憶しているデータベースを有しており、決済端末13から、取引(商品の購入又はサービスの利用)に関する信用照会を、ブロックチェーンの取引先アドレスとともに受信すると、アドレスに対応する信用情報をデータベースから抽出する(S106)。そして、アドレスに対応する信用情報の利用者IDから取引情報を収集し(S107)、必要により取引額等を記憶した後、信用情報から取引可能かどうかを判定する(S108)。判定後、与信サーバー12は、判定結果を信用照会結果として決済端末13に送信する(S109)。決済端末13は、与信サーバー12から信用照会結果を受信すると、信用照会結果が「取引可能」である場合には決済処理に付し(S110)、信用照会結果が「取引不可」である場合にはエラー情報を作成する(S111)。そして、決済端末13は、利用者端末11に対し、決済処理結果又はエラー情報を送信する(S112)。
【0024】
以下、本発明の他の好適な実施態様につき説明する。図6は、本発明の信用照会システムの好適な実施態様の一例を模式的に示しており、図1の信用照会システムとは、決済端末13の代わりに、デジタル通貨交換所のデジタル通貨交換管理サーバー14と、金融機関の管理サーバー15とがブロックチェーンネットワーク19を含む通信回線18に接続されている点で異なる。前記金融機関は、好適には前記利用者の金融機関であり、前記金融機関の管理サーバー15とデジタル通貨交換管理サーバー14とが通信回線18を介して通信可能に接続されて、前記デジタル通貨と前記貨幣等との交換取引が可能となるように構成されている。そして、図7は、図6の信用照会システムにおいて好適に実施される情報処理フローの一例を模式的に示す図である。
【0025】
利用者は、デジタル通貨を利用可能とするため、例えばインターネット上の利用登録画面から、利用者端末11を用いて、デジタル通貨のアドレス及び利用者情報等を与信サーバー12に送信する(S201)。与信サーバー12は、利用者端末11から利用登録のためのデジタル通貨のアドレス及び利用者情報等を受信すると、利用者情報から信用情報を作成し(S202)、前記アドレスに対応させて信用情報をデータベースに記憶する(S203)。
【0026】
利用者は、例えばインターネット取引のデジタル通貨交換所WEBサイトにおいて、デジタル通貨の貨幣等との交換を行うため、利用者端末11を用いて、デジタル通貨を貨幣等と交換するように、デジタル通貨と貨幣等との交換要求をデジタル通貨交換管理サーバー14に対し送信する(S204)。デジタル通貨交換所は、デジタル通貨交換管理サーバー14が利用者端末11からデジタル通貨と貨幣等との交換要求を受信すると、デジタル通貨の発行者又は与信業者の与信サーバー12に、取引(デジタル通貨と貨幣等との交換)に関する信用照会を、ブロックチェーンの取引先アドレスとともに、デジタル通貨交換管理サーバー14から与信サーバー12に送信する(S205)。与信サーバー12は、図2の信用情報及び図3の取引情報を記憶しているデータベースを有しており、デジタル通貨交換管理サーバー14から、取引に関する信用照会を、ブロックチェーンの取引先アドレスとともに受信すると、アドレスに対応する信用情報をデータベースから抽出する(S206)。そして、アドレスに対応する信用情報の利用者IDから取引情報を収集し(S207)、必要により取引額等を記憶した後、信用情報から取引可能かどうかを判定する(S208)。判定後、与信サーバー12は、判定結果を信用照会結果としてデジタル通貨交換管理サーバー14に送信する(S209)。デジタル通貨交換管理サーバー14は、与信サーバー12から信用照会結果を受信すると、信用照会結果が「取引可能」である場合には交換処理に付し(S210)、金融機関の管理サーバー15に対し、例えば、前記デジタル通貨の交換処理(例えばデジタル通貨の送金等)を行う。信用照会結果が「取引不可」である場合にはエラー情報を作成する(S211)。そして、デジタル通貨交換管理サーバー14は、利用者端末11に対し、交換処理結果又はエラー情報を送信する(S212)。
【0027】
ここで、本発明において好適に用いられるブロックチェーンについて説明する。本発明においては、ブロックは、デジタル通貨に関する情報を含む取引データベースとして機能する。具体的には、各ブロックは、ダイジェストデータ及び取引に関する情報であるトランザクションのリストを含む。ダイジェストデータは、1つ前のブロックから算出された新たなハッシュ値を含む。すなわち、図8に示すように、ブロックが1つ前のブロックに含まれる情報から算出されたハッシュ値を含むことによって、各ブロックがチェーンのように繋がった状態で取引データベース(ブロックチェーン)として記憶される。取引履歴データベースは、サーバーのみにて管理されるのではなく、利用者端末11や決済端末13等においても検証及び追加される。
【0028】
トランザクションは、デジタル通貨の交換を記録するデータである。トランザクションは、インプット情報とアウトプット情報とを含む。インプット情報は、交換元となる利用者が取引対象となるデジタル通貨の交換を受けたときのトランザクションのアウトプット情報(トランザクションを特定する識別情報(トランザクションのハッシュ値や配列番号等))と、利用者がそのデジタル通貨を所有することを証明するための情報(当該アウトプットを使用する条件を満たすスクリプト等)を含む。アウトプット情報は、交換されたデジタル通貨の種類及び数、交換先を特定するアドレスにおいて交換されたデジタル通貨を使用するためのスクリプト等の情報を含む。
【0029】
図9は、本発明において好適に用いられるブロックチェーンのトランザクションの構成の一例を示す。デジタル通貨は、取引履歴、すなわち、通貨が今まで経てきた取引のまとまりとして表現される。それぞれのトランザクション(通貨の取引)では、前のトランザクションのハッシュ値や、新たな所有者の公開鍵を含み、元の所有者の暗号鍵によってデジタル署名されている。全てのトランザクションに関する情報は、P2Pネットワーク全体で共有される。このようにトランザクションを表現することで、元の所有者の許可なく、通貨を本人以外が勝手に譲渡することはできず、また、第三者は、通貨の譲渡を客観的に確認できるといった利点を有する。
【0030】
図10は、本発明において好適に用いられるブロックチェーンのトランザクションのデータ構造の一例を示す。トランザクションのデータ構造は、「出力 (出金する通貨)」と、「入力 (入金に用いる通貨)」とを有している。送金には、相手に渡す通貨(額面)及び宛先(アドレス)が必要であるが、それらを表現したものが出力である。自分に宛てられた通貨を使うか、又は誰かに送金するためには、過去のトランザクションの出力を参照しなければならず、それが今回のトランザクションにおける入力に相当する。一つのトランザクションにおいて、出力および入力はそれぞれ複数指定できる。任意の額の送金を行うためには、過去の自分宛のトランザクションの出力を集め、これから行う取引の入力として指定する必要がある。
【0031】
図11は、本発明において好適に用いられるブロックチェーンのトランザクションのスクリプトの一例を示す。図11のデジタル通貨では、スクリプトによって、入力元のアドレス及び出力元のアドレスを含むトランザクションが記述される。同図に示したトランザクションは、過去に利用者から自分宛に送金されたデジタル通貨を用いて、他の利用者宛てに所定の額面の通貨を送金することを意味している。トランザクションには、そのトランザクション固有のトランザクション識別子が付されており、通常、トランザクションのハッシュ値が用いられる。「OutputScript」には複数の出力が指定できるところ、「出力2」は、入力のデジタル署名を検証する通常の記述であるのに対し、「出力1」は、バイト配列を付加するための記述である。スクリプトでは、「OP_RETURN」というコードが用意されており、これは、一般的なプログラミングのreturnと同様、そこに来るとスクリプトをストップし、その出力の参照を許さない、とするものである。そして、「OP_RETURN」に続き、「OP_PUSHDATA」を用いてバイト配列を付加すれば、デジタル署名に悪影響を及ぼすことなく、「出力1」をバイト配列の記述欄として利用することができる。なお、「OP_PUSHDATA」を用いて付加できるバイト配列のバイト数には上限がある関係上、ファイルについてはハッシュ値を用い、テキストメッセージについては上限値を超えないことが条件となる。
【0032】
上記のように構成することで、取引の際に前記取引が可能であるか否かの信用照会するための取引装置を、ブロックチェーン上に記憶されているデジタル通貨のアドレスを前記信用照会の処理に付す手段として機能させることができ、また、信用情報を用いて、取引の際に前記取引が可能であるか否かの信用照会を行う与信サーバーを、ブロックチェーン上に記憶されているデジタル通貨のアドレスを前記信用照会の処理に付す手段として機能させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の信用照会方法、信用照会システム又はこれらに適用されるプログラムは、デジタル通貨での決済の利活用にとりわけ有用である。
【符号の説明】
【0034】
11 利用者端末
12 与信装置(与信サーバー)
13 決済端末
14 デジタル通貨交換管理サーバー
15 金融機関の管理サーバー
18 通信回線
19 ブロックチェーン・ネットワーク
1101 記憶部
1102 処理部
1103 入力部
1104 出力部
1105 表示部
1106 通信部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11