(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022025748
(43)【公開日】2022-02-10
(54)【発明の名称】焼成用治具搬送装置および焼成用治具
(51)【国際特許分類】
F27D 3/12 20060101AFI20220203BHJP
F27B 9/24 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
F27D3/12 S
F27B9/24 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020128808
(22)【出願日】2020-07-30
(71)【出願人】
【識別番号】507182807
【氏名又は名称】クアーズテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100187506
【弁理士】
【氏名又は名称】澤田 優子
(72)【発明者】
【氏名】前田 圭介
(72)【発明者】
【氏名】小林 啓祐
【テーマコード(参考)】
4K050
4K055
【Fターム(参考)】
4K050AA04
4K050BA07
4K050CG05
4K050CG29
4K055AA05
4K055HA02
4K055HA16
4K055HA29
(57)【要約】
【課題】搬送性に優れた、ローラーハースキルンで用いられる焼成用治具搬送装置及び焼成用治具を提供する。
【解決手段】ローラーハースキルンで用いられ、搬送部によって被搬送物を搬送する焼成用治具搬送装置において、前記被搬送物が被焼成体を載置した焼成用治具であり、前記焼成用治具が、板状のセッターと、前記セッターのローラーと対面する側に設けられた2個以上のリブとからなり、前記リブが、セッターの搬送方向と直交する相対向する2辺、又は、搬送方向に平行な方向と相対向する2辺及び搬送方向に直交する方向と相対向する2辺の全てに形成されており、前記搬送部がローラーであり、前記ローラーには前記リブと接触する範囲内において、搬送方向に向かって複数の溝が形成されており、前記溝の幅は、前記リブと接触する範囲全体の幅に対して0.1~0.25倍であり、前記溝の数は3本以上であり、各々の溝が平行に配置されている焼成用治具搬送装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローラーハースキルンで用いられ、搬送部によって被搬送物を搬送する焼成用治具搬送装置において、
前記被搬送物が、被焼成体を載置した焼成用治具であり、
前記焼成用治具が、板状のセッターと、前記セッターのローラーと対面する側に設けられた2個以上のリブとからなり、
前記リブが、セッターの搬送方向と直交する相対向する2辺、または、搬送方向に平行な方向と相対向する2辺および搬送方向に直交する方向と相対向する2辺のすべてに形成されており、
前記搬送部がローラーであり、前記ローラーには、前記リブと接触する範囲内において、搬送方向に向かって複数の溝が形成されており、
前記溝の幅は、前記リブと接触する範囲全体の幅に対して0.1倍から0.25倍であり、
前記溝の数は3本以上であり、それぞれの溝が平行に配置されていることを特徴とする焼成用治具搬送装置。
【請求項2】
セッターの搬送方向と直交する相対向する2辺、または、搬送方向に平行な方向と相対向する2辺および搬送方向に直交する方向と相対向する2辺のすべてに形成されるリブにおいて、前記ローラーと接触する面に、さらに複数のピラーが形成されており、
前記ピラーの幅は前記溝の幅に対して1.1倍以上1.3倍以下である
ことを特徴とする請求項1に記載の焼成用治具搬送装置。
【請求項3】
前記ローラーの回転軸に平行な断面を見たときに、ローラーに形成された複数の溝は、底部の幅が開口部より小さい台形が平行に配置された形状を有し、
前記リブに形成された複数のピラーが、前記ローラーの複数の溝と互いに咬み合うように形成されていることを特徴とする請求項2に記載の焼成用治具搬送装置。
【請求項4】
ローラーハースキルンの中をローラーによって被焼成体を搬送するのに用いる焼成用治具であって、
前記焼成用治具が、セッターと、前記セッターのローラーと対面する側に設けられた2個以上のリブとからなり、
前記リブが、セッターの搬送方向と直交する相対向する2辺、または、搬送方向に平行な方向と相対向する2辺および搬送方向に直交する方向と相対向する2辺のすべてに形成されていることを特徴とする焼成用治具。
【請求項5】
さらに、前記リブのローラーと接触する面に複数のピラーが形成されていることを特徴とする請求項3に記載の焼成用治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック製電子部品等の焼成に使用されるローラーハースキルンで用いられる焼成用治具搬送装置、および焼成用治具に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミック製電子部品等の焼成に使用されるローラーハースキルンでは、複数のローラーが略平行に配置され、この上を、板状または箱状の焼成用治具(セッターともいう)が転がりながら搬送され、その間に焼成が行われる。
【0003】
この焼成用治具は、ローラーの軸と垂直な方向に対して、搬送の最初から最後まで平行に移動することが理想的であるが、実際はどうしてもこのようにならず、従前から、焼成用治具が進行方向に対して蛇行する、あるいは、ローラーの端のほうに偏ってしまう、焼成用治具が滑ってしまい所定の焼成が行われない、という不具合があった。
【0004】
上記のような不具合を解決するため、例えば、特許文献1には、サヤもしくは台板の蛇行などの変位を防止するために、被焼成セラミックス搭載のサヤ又は台板を回転ローラー上に載置して搬送するローラーハース炉において、前記ローラーは、その周囲に少なくとも一つのガイド用突起を有し、前記サヤもしくは台板は、その底面に-(マイナス)状もしくは+(プラス)状の溝を有し、この溝が前記ローラーのガイド用突起に接触して誘導搬送されるローラーハース炉が開示されている。
【0005】
また、ローラーの表面にスパイラル状の溝を形成することで、ローラーの上を搬送するタイル等の被焼成物が滑りにくくなる、という技術が特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8-189774号公報
【特許文献2】実開昭62-122297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の技術は、すべてのローラーに一つ一つガイド用突起を設ける必要があり、コスト高になる。また、ローラーのガイド用突起と、ローラーの上を搬送する焼成用治具の溝の幅や隣り合う溝の間隔とが異なると、ローラーに設けられたガイド用突起が欠けるなど、耐久性の問題が生じるため、使用できる焼成用治具に制約が生じ、汎用性に欠ける。
【0008】
特許文献2に記載の技術は、ローラーの表面にスパイラル状の溝が形成されているため、ローラーとセッターが互いに滑りにくくなるが、スパイラル状の溝は、蛇行を防止する効果に直結するものではなく、このような溝を精度よくローラーの表面に形成しても、セッターの蛇行を完全に防止することはやはり困難である。またそもそもコスト高となる。一方、スパイラル状ではなく、例えば、進行方向に平行に溝を設けたとしても、何らかの理由でセッターが反って、セッターがローターの溝にうまく嵌まらなくなれば、少しずつ蛇行が発生し、全く効果が得られない。
【0009】
本発明は、上記を鑑みてなされたものであり、焼成用治具およびローラーに簡単な構造を付与することにより、ローラーハースキルン内で搬送する際の焼成用治具の蛇行を抑制することができる、焼成用治具の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の焼成用治具搬送装置は、ローラーハースキルンで用いられる、搬送部によって被搬送物を搬送する焼成用治具搬送装置であって、前記被搬送物が、被焼成体を載置した焼成用治具であり、前記焼成用治具が、板状のセッターと、前記セッターのローラーと対面する側に設けられた2個以上のリブとからなり、前記リブが、セッターの搬送方向と直交する相対向する2辺、または、搬送方向に平行な方向と相対向する2辺および搬送方向に直交する方向と相対向する2辺のすべてに形成されており、前記搬送部がローラーであり、前記ローラーには、前記リブと接触する範囲内において、搬送方向に向かって複数の溝が形成されており、前記溝の幅は、前記リブと接触する範囲全体の幅に対して0.1倍から0.25倍であり、前記溝の数は3本以上であり、それぞれの溝が平行に配置されていることを特徴とする。
【0011】
セッターの搬送方向と直交する相対向する2辺、または、搬送方向に平行な方向と相対向する2辺および搬送方向に直交する方向と相対向する2辺のすべてに形成されるリブにおいて、前記ローラーと接触する面に、さらに複数のピラーが形成されていることが好ましく、前記ピラーの幅は前記溝の幅に対して1.1倍以上1.3倍以下であることが好ましい。
【0012】
前記ローラーの回転軸に平行な断面を見たときに、ローラーに形成された複数の溝は、底部の幅が開口部より小さい台形が平行に配置された形状を有し、前記リブに形成された複数のピラーが、前記ローラーの複数の溝と互いに咬み合うように形成されていることが好ましい。
【0013】
本発明の焼成用治具は、ローラーハースキルンの中をローラーによって被焼成体を搬送するのに用いられ、前記焼成用治具が、セッターと、前記セッターのローラーと対面する側に設けられた2個以上のリブとからなり、前記リブが、セッターの搬送方向と直交する相対向する2辺、または、搬送方向に平行な方向と相対向する2辺および搬送方向に直交する方向と相対向する2辺のすべてに形成されていることを特徴とする。
さらに、前記リブのローラーと接触する面には、複数のピラーが形成されていることが好ましい。
【0014】
かかる構成を有することで、ローラーハースキルンの内部を搬送される焼成用治具が、蛇行や偏りを起こすことがなく、適切な焼成がなされる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ローラーハースキルンの内部を搬送されるセッターが、ローラーに溝を形成し、セッターに設けられたリブにピラーを形成するという従来に比べて簡易な構造を付与することにより、蛇行あるいは偏りを起こすことがなくなり、また、滑ることもなくなるので、適切な焼成が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明で用いられるローラーの部分斜視図(1a)と、ローラーに設けられた溝の幅(W1)および隣接する溝同士の間隔(T1)を表すローラーの平面図(1b)である。
【
図2】本発明で用いられるリブが設けられたセッターの斜視図(2a)と、前記リブが設けられたセッターを裏返して拡大した部分斜視図(2b)である。
【
図3】リブが設けられたセッターの進行方向の正面からみたリブの断面図であり、リブに設けられたピラーの幅(W2)と隣接するピラー同士の間隔(T2)を表す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の焼成用治具搬送装置および焼成用治具について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明で示す図は、すべて説明のために形状を簡素化かつ強調したものであり、細部の形状、寸法、および比率は実際と異なる。また、本発明の説明に不要なその他の構成要素は、記載を省いている。また、同一の構成については矢印と記号の表示は省略する。
【0018】
本発明の焼成用治具搬送装置は、ローラーハースキルンで用いられる、搬送部によって被搬送物を搬送する焼成用治具搬送装置であって、前記被搬送物が、被焼成体を載置した焼成用治具14であり、前記焼成用治具14が、板状のセッター10と、前記セッター10のローラー1と対面する側に設けられた2個以上のリブ11とからなり、前記リブ11が、セッター10の搬送方向と直交する相対向する2辺、または、搬送方向に平行な方向と相対向する2辺および搬送方向に直交する方向と相対向する2辺のすべてに形成されており、前記搬送部がローラー1であり、前記ローラー1には、前記リブと接触する範囲内において、搬送方向に向かって複数の溝が形成されており、前記溝の幅は、前記リブ11と接触する範囲全体の幅に対して0.1倍から0.25倍であり、前記溝の数は3本以上であり、それぞれの溝が平行に配置されている。
【0019】
ローラーハースキルンは、公知のものを広く適用でき、特に限定されることを要しない。また、ローラー1以外の構成要素も、本発明に影響を及ぼさない限りは、任意に付与されてよい。
【0020】
前記被搬送物は、被焼成体を載置した焼成用治具14である。
被焼成体は、電子部品用のセラミックスであり、焼成前の成形体である。これについても、材質や形状は特に限定されず、公知のセラミックスが用いられる。
【0021】
焼成用治具14は、セッター10と、該セッター10のローラー1と対面する側に設けられた2個以上のリブ11とからなる。具体的には、セッター10の被焼成体を載置する面の反対側、すなわち、ローラー1と対面する側にリブ11が形成されており、このリブ11とローラー1が接する形態を有する。セッター10は、焼成中に反ることがあり、これが、セッター10の搬送中に起こる蛇行や偏りの原因になる。本発明では、セッター10にリブ11を備え、かつ、リブ11に特定のピラー13を複数設け、前記特定のピラー13に対応して、ローラー1に特定の溝を複数設けることで、この影響を抑制している。
【0022】
セッター10およびリブ11も、セラミックスからなる。セラミックスの材質は特に限定されるものではないが、好適には、炭化ケイ素、または炭化ケイ素の表面にコーティングしたものが挙げられる。
【0023】
前記搬送部はローラー1である。複数本のローラーは、図示していないが、両端において支軸され、ローラーの端部と接続したジョイントからの駆動力により回転駆動するようになっている。
図1は、本発明の一態様に係るローラー1の模式図で、その一部を斜面および平面から見たものである(
図1a、1b)。
図2は、本発明の一態様に係る焼成用治具14の全体の斜視図(
図2a)、ならびに、リブ11が設けられたセッター10を裏返して拡大した部分斜視図である(
図2b)。
図3は、リブ11の断面から見た、ピラー13の幅W2と隣接するピラー同士の間隔T2を説明する模式図である。
【0024】
図1に示すように、ローラー1の表面には、ローラー1の円周方向に平行に、複数の細い溝2が形成されている。
【0025】
溝2は、できるだけ、ローラー1の円周方向と平行であることが望ましいが、円周方向を基準として、5°以内で左右にずれている程度は、本発明では許容される。
【0026】
溝2は、任意の1個のリブが当接する幅の範囲で3本以上であれば、その本数は特に限定されず、溝2の幅W1、及び、隣接する溝2同士の間隔T1に対応して、適時設定するのが好適である。
【0027】
溝2の幅W1は、通常0.8~1.2mm、好適には0.9~1.0mmである。また、隣接する溝2の間隔T1は、通常0.8~1.2mm、好適には0.9~1.1mmである。そして、溝2の幅W1は、リブ11と接触する範囲全体の幅に対して0.1倍から0.25倍、好適には0.12~0.24倍である。
溝2の深さは、特に限定されないが、浅すぎると蛇行防止効果が得られず、深すぎるとパーティクルの目詰まりが懸念されるので、好適には0.2~1mmであるとよい。
【0028】
溝2は、ローラー1の両端部を除く表面において、少なくともセッター10のリブ11と接触する領域に形成されていればよく、表面全体に形成されていてもよい。しかしながら、溝2の形成領域は、ローラー1の両端部を含む表面全体の65~85%であると、ローラー1にかかる負荷が分散されて、溝2によるローラー1の変形防止効果と、溝2部からの表面剥がれ抑制効果が、効率よくバランスが取れるので、より好ましい。
【0029】
次に、
図2に示すように、本発明に係るセッター10は、被焼成体を載置する面と、ローラー1と対面する反対面とを有し、前記反対面にリブ11が形成されている。
前記リブ11は、セッター10の搬送方向と直交する相対向する2辺、または、搬送方向に平行な方向と相対向する2辺および搬送方向に直交する方向と相対向する2辺のすべてに形成されている。つまり、板状のセッター10の進行方向の対向する2辺、または、セッター10の周縁部を囲むように4辺すべてにリブ11を有している。
【0030】
リブ11のローラー1との接触面12には、ピラー13が互いに略平行となるよう複数形成されている。ピラー13は細長い柱状、例えば、四角柱状の突起物である。
溝2とピラー13とが、互いに略平行に形成され、それぞれの凹凸が咬み合うように接触することで、ローラー1が回転する方向に対して、こちらも略平行にセッター10が真っ直ぐに移動する。
【0031】
ピラー13は、後述するように、ローラー1の表面に形成された溝2の、幅W1と間隔T1に対応して形成されている。ただし、前記した要件以外については、格別の制約なく自由に設計されても問題ない。
【0032】
前記のとおり、ピラー13は、ローラー1の表面に接触したときに、ローラー1の溝2と咬み合うように設計される。そのため、複数のピラー13は、ローラー1の円周方向と略平行であることが望ましいが、こちらも、円周方向を基準として、5°以内で左右にずれている程度は、本発明では許容される。
【0033】
ピラー13は、具体的には、リブ1個当たりにピラーの数が3本以上あれば、その本数は特に限定されず、適時設定すればよい。ここで、溝2の幅W1、及び、隣接する溝2同士の間隔T1に対応して、3~5本程度設けるのが好適である。
【0034】
ピラー13の幅W2は、通常0.6~1.0mm、好適には0.7~0.9mmである。また、隣接するピラー13の間隔T2は、通常0.6~1.4mm、好適には1.0~1.3mmである。
ピラー13の深さは、特に限定されないが、浅すぎると蛇行防止効果が得られず、深すぎるとパーティクルの目詰まりが懸念されるので、好適には0.2~1.0mmであるとよい。
【0035】
ピラー13は、リブ11とローラー1との接触面12の全体(100%)に形成されているが、必ずしも100%形成されていることまでは要せず、90%以上であれば、本発明の効果が得られる。より好適には、接触面12の面積を100%としたときに、ピラー13の形成された面積が93~96%であると、ローラー1との接触抵抗が緩和されるので、セッター10をローラー1上で蛇行せず搬送できるとともに、転がり抵抗が低減されるので、ピラー13と溝2との引っ掛かりのリスクを低減できる。
【0036】
そして、本発明では、溝の幅W1は、ピラーの幅W2の1.1倍以上1.3倍以下であることが好ましい。W1/W2が1.1倍未満では、ピラー13が溝2に嵌りにくく、うまく嵌らないと、セッター1が搬送方向に直進する効果が得られないことがある。しかし、W1/W2が1.3倍を超えると、ピラー13が溝2の隙間で左右にがたつくことが想定され、搬送中のセッターの振動が懸念される。
【0037】
本発明では、リブ11のピラー13の形状(幅W2および間隔T2)に対して、ローラー1の溝2を多少遊びのあるサイズとすることで、焼成用治具を搬送開始から終了まで、蛇行せずに直進させることができる。
【0038】
なお、本発明の変形例として、セッター10の直進性をより高められるよう、セッター10の4辺に沿ってリブ11を形成したときに、リブ11とローラー1との接触面12に形成するピラー13を、搬送方向と平行な接触面ではローラー1の溝と平行に、進行方向と垂直な接触面では斜め、すなわち、進行方向に対して40~60°にすれば、直進安定性とすべり抑制効果とが重畳的に発揮され、好ましい。
【実施例0039】
以下、本発明を実施例に基づき具体的に説明するが、本発明は下記に示す実施例により制限されるものではない。
【0040】
[共通条件~焼成用治具14の作製]
市販の炭化ケイ素粉末原料に、メチルセルロース系バインダを添加して混合し、混合物を得た。前記混合物に水を加えて混練し、プレス成形により、150mm×150mm×厚さ2mmの板状体とその四辺に5mm×150mm×厚さ0.5mmのリブ11が形成された多孔質成形体を得た。
【0041】
(実施例1)
市販の炭化ケイ素粉末原料に、バインダとしてフェノールレジンを、焼結助剤として炭化ホウ素を添加して混合し、混合物を得た。前記混合物に水を加えて混練し、外径34mm×全長2300mmの長尺円柱形のローラー1を成形した。このとき、ローラー1の両端から50mmを除く表面全体に、溝の幅W1を1.0mmとし、隣接する溝同士の間隔T1を1.0mmとし、深さ0.5mmの溝を形成した。そして、これを2200℃で焼結させて、ローラー1を作製した。
前記のように得られた多孔質成形体のリブ11のローラー1との接触面12全体に、プレス成形を用いて、ピラー13の幅W2を0.8mmとし、隣接するピラー同士の間隔T2を1.2mmとし、深さ0.5mmのピラーを3本形成し、これを2300℃で焼結させて、実験用の焼成用治具14を作製した。
【0042】
(実施例2)
溝の幅W1を0.8mm、隣接する溝同士の間隔T1を1.2mmとし、それ以外は、実施例1と同様にしてローラーを作製した。一方、ピラーの幅W2を0.6mmとし、隣接するピラー同士の間隔T2を0.6mmとし、それ以外は、実施例1と同様にして、実験用の焼成用治具14を作製した。
【0043】
(実施例3)
溝の幅W1を1.2mm、隣接する溝同士の間隔T1を0.8mmとし、それ以外は、実施例1と同様にしてローラーを作製した。一方、ピラーの幅W2を1.0mmとし、隣接するピラー同士の間隔T2を1.0mmとし、それ以外は、実施例1と同様にして、実験用の焼成用治具14を作製した。
【0044】
(実施例4)
溝の幅W1を1.0mm、隣接する溝同士の間隔T1を1.0mm、深さ0.4mmとし、それ以外は、実施例1と同様にしてローラーを作製した。一方、ピラーの幅W2を0.8mmとし、隣接するピラー同士の間隔T2を1.2mm、深さ0.6mmとし、それ以外は、実施例1と同様にして、実験用の焼成用治具14を作製した。
【0045】
(実施例5)
溝の幅W1を1.0mm、隣接する溝同士の間隔T1を1.0mm、深さ0.6mmとし、それ以外は、実施例1と同様にしてローラーを作製した。一方、ピラーの幅W2を0.8mm、隣接するピラー同士の間隔T2を1.2mmとし、深さ0.4mm、それ以外は、実施例1と同様にして、実験用の焼成用治具14を作製した。
【0046】
(比較例1)
リブ11とローラー1との接触面12に、ピラーを形成せず平面とし、それ以外は実施例1と同様にしてローラーを作製した。セッターは、実施例1で作製した焼成用治具14を用いた。
【0047】
(比較例2)
ローラー1の表面に、実施例1のローラーの溝と同じ幅W1および間隔T1で、スパイラルの溝をローラー1の回転軸方向に対して45°でクロスさせ、それ以外は実施例1と同様にしてローラーを作製した。セッターは、実施例1で作製した焼成用治具14を用いた。
【0048】
(評価)
得られた実施例1~5および比較例1、2のセッターについて、汎用のローラーハースキルンにて通炉試験(最高昇温速度(℃/H)=100,000)を行った。そして、セッターの直進性、進行速度、温度追従性を評価した。直進性は、セッターを1400℃に加熱したローラーハースキルンに通し、蛇行しなかったものを◎、やや蛇行したもの(目視レベルで、セッターの幅の半分程度の進行方向と垂直の方向に動く)を△、大幅に蛇行したもの(目視レベルで、セッターの幅以上に進行方向と垂直の方向に動く)を×とした。進行速度は、ローラー回転数から予想される所定の時間で出口に到達したものを◎、やや遅れたものを△、大幅に遅れたものを×とした。温度追従性は、温度追従性が良好で目視レベルで焼成むらの発生がないものを◎、温度追従性がやや遅れたため、焼成むらが点在してできたものを△、温度追従性が大幅に遅れたため焼成むらが面の1/3以上に発生したものを×とした。そして、総合評価は、全て◎のものを◎、一つでも×があるものを×、これら以外を△とし、△と◎を合格とした。これらの条件と結果をまとめて表1に示す。
【0049】
【0050】
表1の結果から明らかなように、本発明の範囲内にあるものは、セッターが蛇行や偏りをほとんど起こさずに搬送され、また、ローラー1および焼成用治具14の滑りに起因する温度追従性の悪化も少ないものといえる。
【0051】
ここで、実施例1が、本発明における理想的な形状といえるものである。これに対して、実施例2、実施例3は、溝またはピラーの幅が、本発明のより好ましい範囲の上下限にあり、実施例1との比較では、直進性で、若干ではあるが見劣りするものといえる。
【0052】
また、実施例4,実施例5は、溝またはピラー深さを、実施例1の値から変更したものであるが、搬送の際に、少し滑りが発生して進行速度が遅くなり、実施例1との比較では、相対的に追従性が低下する傾向が見られた。
【0053】
これに対して、ピラーを設けない比較例1は、やはり直進性が悪いものであった。また、ローラーの進行方向に対してクロスする溝を設けた比較例2は、比較例1との比較では直進性が多少改善されてはいるものの、セッターの進行速度と温度追従性の面では、やはり満足のいくものといえなかった。